中国における土地取得と工場建設の流れについて

日刊華鐘通信 No.1650
華鐘コンサルタントグループ会員専用
2007 年 6 月 15 日(金)
★ 中国ビジネス相談Q&A
中国における土地取得と工場建設の流れについて
Q:中国で土地を取得して工場建設をしようと思います。概略の土地取得と工場建設の流れを
教えてください。
<工場建設><会社設立>
A:中国で工場を建設する場合、おおきく土地取得段階、施工準備段階、施工段階、竣工検査
段階、生産開始後の環境保護検査合格段階などに分ける事ができますが、各段階の具体的
作業の内容はかなり複雑で、場所・地域などによっても異なります。
一般的に必要となる手続きなどを以下に解説いたします。
1.土地取得段階
外資系企業にとっては、建設工事の開始はまず土地取得段階から始まりますが、中国での土地取得は一
般に 50 年間の土地使用権の取得であり、土地そのものの所有権が取得できるわけではありません。中国
の土地所有権は国家が保有しており、国務院が全土を統括的に管轄することになっており、その所管は「国
土資源部(日本の省)」であり、地方ではいろいろな呼称が用いられていますが、一般に「土地管理局」
あるいは「土地建物管理局」などが、地方の行政系統とは独立して直接管轄しています。
外資系企業が取得できる土地使用権の土地には厳しい条件があり、①国有土地であること、②工業用地
であること、③地元の産業計画や地域開発計画に符合しており、工場建設することが合法化されているこ
と、④国が割り当てる土地使用の数量範囲内であること、など様々な条件を満たさなければなりません。
一方地方政府は産業誘致、外資系企業誘致に走るあまり、これらの条件を満たしていないにもかかわら
ず、外資系企業に正規の手順を踏まないで土地使用権を売りつけることが頻発しており、外資系企業も土
地使用権を買ったつもりでいるが、実際は法律的に全く無権利者であるという情況は決して珍しくありま
せん。そこで 2004 年より国務院は、そのような乱開発、乱販売を防止し土地資源をより有効に利用する
ために土地開発と土地使用権譲渡に関する違法行為を厳しく規制しており、2007 年からは土地使用権の
購入は①国が決めた単位面積当たりの最低価格、最低投資額を上回る、②当事者が勝手に相談して土地使
用権売買契約を行なうことを禁じて、必ず入札、競売、掲示等の方式を通じて行なう、という形に変わり、
全国的にはかなり実施され始めました。
この入札に参加して土地使用権を取得する為には先ず土地管理部門に対して「計画用地選定意見書」を
申請して、土地使用権を取得しようとしている土地が国家及び地元の土地に対して規定している産業計画
に符合しているか否かを確認して、その後都市計画管理部門に対し、
「建設用地計画許可証」を申請し、入
札、競売で落札すれば土地管理部門と『土地使用権譲渡又は移転譲渡契約書』を締結して、土地代金を支
払って最後に土地管理部門が交付する『国有土地使用権証』を取得します。
以上の土地使用権取得の過程は大変複雑であり、これまで地方政府による違反行為も数々行なわれてき
たことから、最終的に瑕疵がない『国有土地使用権証』を取得することは簡単ではありません。やはり情
況に習熟したコンサルティング会社などに相談されてそのサポートを受けながら行なわれることを強く
お勧めします。
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2007 年 6 月 15 日(金)
2.施工準備段階
中国における建設工事は大きく分類して、地質調査業務、設計業務、建設施工業務、監理(建設監督)
業務に分かれ、全て別々に独立の契約を締結しなければならないために、それらを統括するゼネコン会社
に一括発注するか、経済的に建設しようとすれば、必要な契約書作成や各種の政府許可取得など、建設の
全体管理(CM:Construction Management)を建設主に替って行う CM 会社に委託する場合もあります。
施工準備段階の作業の重点は、土地、工事等に関する各分野の必要な認可手続きの実施であり、工事の
合法的着工条件を取得した後、正式に建設工事を開始する事が可能となります。入札、競売で落札すれば、
土地関連手続を実施すると同時に、相応の資格を持つ地質調査機関、設計機関を選定して、土地に対する
地質調査、建設工事プロジェクトの方案設計、初歩設計の委託を行います。方案設計、初歩設計は共に安
全、衛生、環境保護、消防等の政府関連部門の審査確認後、正式な施工図設計が可能となり、正式な施工
図は資格のある図面審査機関及び消防、防雷等の各政府主管部門の審査に合格しなければなりません。
上記完了後、施工図及び政府関係部門の審査意見に基づき、計画管理部門に対して『建設工事計画許可
証』の申請が可能となり、相応の資格を持った施工及び監理業者を選定する事ができ、その後、建設主管
部門に対して『建設許可証』を申請し、同時に建設工事品質監督及び安全監督等の手続を実施して、これ
が完了した後、建設工事プロジェクトは正式に施工開始が可能となります。当然の事ながら、必要な用水、
電気使用、天然ガス使用、防空、外観、緑化等の申請及び登記作業も実施しなければなりません。
3.施工段階
施工段階は施工場所及び施工項目に基づき、基礎、主体、据付、内装等の段階に分ける事ができ、施主
と施工、設計、監理及び各関連業者とが一体となって、建設工事プロジェクトの現場施工を実行します。
施工過程では、施工場所及び施工項目に基づき、相応の段階毎の検収及び確認検査等の作業が必要です。
必要な途中検査などを正しく受けていなければ、最終的に建物所有権が登記できない場合もあります。
4.竣工検査段階、生産開始後の環境保護検査段階
建設工事プロジェクト施工完了後、まず建物の竣工検査に合格しなければ、その建物を使用することが
出来ません。建設局や質量監督部門による工場建物、生産設備等に対する初歩的検収が行われ、同時に消
防等の施設は生産要件を満たした後、試運転生産に入る事ができます。
試運転生産の過程では、建設工事プロジェクトの対する計画、建築、緑化、消防、防雷、環境保護、安
全、職業病防止、用水、電気使用、天然ガス使用等全分野の竣工検収を実施しますが、この中で、環境保
護、安全、職業病防止等は、プロジェクトの試運転生産の実状に基づき、相応の竣工検収評価を実施しな
ければなりません。
全ての竣工検収に合格後、建設工事プロジェクトの竣工検収届出手続が可能となり、相応の建設ファイ
ルが都市建設档案部門にてファイル保管され、建設工事プロジェクトは正式な生産が可能となります。
最後に工場建物、事務所棟等の建築物、構築物の『房地産権証』の手続を実施して、この『房地産権証』
を取得してはじめて工場建物等の建築物、構築物は正真正銘、合法的資格を得たことになり、『国有土地
使用権証』と併せて、すなわち工場の土地建物の財産権が確立されたと言うことができます。
以
上
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