マイクロ波子宮内膜アブレーション手術の説明

マイクロ波子宮内膜アブレーション手術の説明
神戸アドベンチスト病院
どういう手術か
月経の量が多くひどい貧血になり健康が害されるか、日常の生活が制限されるような
病的な過多月経*の患者さんの治療を対象としています。
月経は子宮内膜がホルモンの作用で周期的ないはがれ落ちるときに起こる出血です
が、その月経の発生場所である子宮内膜をマイクロ波で熱凝固させ永続的に子宮内膜
をなくしてしまうか、あるいは著しく減らして月経がなくなるか、あるいは非常に少
なくしてしまう治療法です。
ただし、子宮内膜は月経の発生する場所であるとともに妊娠するための大切な場所で
すから子宮内膜が焼かれると妊娠は出来なくなります。ですから、これからまだ妊娠
を考えている方には向きません。
*過多月経の原因となる疾患とマイクロ波子宮内膜アブレーションの適用
子宮筋腫特に子宮内膜に近いところにある子宮筋腫(粘膜下筋腫)子宮腺筋症、良性の子宮内膜増殖症など
にマイクロ波子宮内膜アブレーションが適用されます。
実際の手術方法
1
麻酔をかける**。
**全身麻酔の場合:通常はプロポフォールという静脈麻酔薬をコンピュータ制御で静脈から注入します。患者さ
んの脳内の麻酔薬の濃度と麻酔深度をモニターしながら最も安全なプログラムで麻酔がかかるようにします。
プロポフォールは導入時に少し速い速度で注入されますのでこのとき短時間の血管痛があります。
脊髄麻酔の場合:背中から脊椎に針を刺して脊髄の周りを覆っているくも膜腔の中に
マーカインという局所麻酔薬を注入します。
1
超音波で子宮内が正確にモニターできるようにするために膀胱内に 200ml の生
2
理的食塩水を満たして子宮が超音波で膀胱内の水の中浮き上がって見えるようにし
ます。
3
子宮鏡で子宮腔内をくまなく調べマイクロ波子宮内膜アブレーションが安全に出
来るか、確認のチェックを行います。
4
お腹のうえから超音波でモニターしながら、マイクロ波子宮内膜アブレーション
のアプリケーターを子宮に挿入します。
5
安全にアプリケーターが正しい位置にあることを確認してからマイクロ波発生
装置のスイッチを入れます。安全性と効果が最適の条件が内蔵のコンピュータで設定
され自動的にマイクロ波が送られて子宮内膜が熱凝固します。第1回目のアブレーシ
ョンが終了すると直ちに子宮鏡を入れて安全に内膜凝固が出来ているかを直接確認
します。次に子宮内に少し位置を変え第2回目のアプリケーターを設置して2回目の
アブレーションを前回と同じように行います。そのあと同じように子宮鏡検査を行い
ます。
この1と2の繰り返しを位置を変えながら5回から最大7回繰り返します。最後に子
宮鏡検査を終えて安全に手術が行われたかを確認して終了します。通常出血はありま
せん。
6手術終了
麻酔を切って患者さんが安全なレベルまで覚醒したことを確認してお部屋に帰りま
す。
7手術直後の疼痛対策
術後の疼痛は個人差がありますが、手術後一晩は痛みが強い場合もあるので術後疼痛
コントロール***をさせていただきます。通常一晩過ぎれば痛みはほとんど無くなる
ので疼痛対策も翌日の朝までで終了します。
***疼痛コントロールの方法
鎮痛剤の座薬やフェンタニールの微量点滴(PCA 併用)などがあります。
いずれかの方法で術後の疼痛を抑えます。
ただ翌日朝になればほとんどの患者さんで疼痛コントロールの必要なほどの痛みは無くなります。
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術後の吐き気
上記の疼痛コントロールの薬剤(特にフェンタニール)や、手術中の麻酔薬により術後
吐き気が出る方があります。その都度吐き気止めを使ったり、痛み止めの薬を減らした
りで対処させていただきます。
退院と退院後の生活
翌日診察後退院となります。
子宮の中にはマイクロ波子宮内膜アブレーションで変性した組織がまだ残っています
ので、それが感染の原因にならないように退院後の抗生物質は5日間必ず飲んでいただ
き入浴は最初の1週間はシャワーだけとしてください。
起こりえる合併症
日本国内で行われているマイクロ波子宮内膜アブレーションは器具や手技が非常に安
全なものに改良され、国内で大きな合併症はまだ報告されていません。
ただし、海外では誤って子宮を穿孔させ腸管を損傷せたという報告があります。
小さな合併症としては術後、上で述べたように子宮感染を起こすことがあります。術後
の抗生剤 5 日間飲んでいただき、また体力が落ちて抵抗力を失わないように健康な生活
をしていただく事、出来る限り清潔にしていただき、性交や湯船に直接つかるのを退院
後1週間は控えていただく事が大切です。
術後の予想される経過
①
弱い腹痛が 2,3 日ある方が多いようです。2,3 日後には大部分消失します。
②
少し血液が混じる水分の多い帯下に 2 週間ほど持続します。
その間、予定の月経が来る方もおられますが、元々水気の多い帯下が出ているので月経
が来るとそれと合わさってかなり月経の量が多いように感じられる方もおられます。こ
れは特に心配なくその次に来る月経は来ないか、来ても非常に少なくなっていますので
ご心配入りません。
③ 子宮感染は退院後 10 日目ぐらいから発症することが多く、その場合一度無くなってい
た痛みが出たり、臭いのある帯下が大量に出るようなことがあればすぐに来院してくだ
さい。
④ 手術後の月経の変化
マイクロ波子宮内膜アブレーションを行ってから月経が起こらなくなる場合も多いの
3
ですが、月経が来る人もあります。ただ月経が来ても過多月経はほとんどの例で良くな
ります。少数ながらもあまり効果が無かったとか、月経の量は少なくなったが月経痛が
残るなど十分ご満足いただけない場合もあります。その場合もう一度マイクロ波子宮内
膜アブレーションを追加したり、それ以外の治療法、たとえばホルモン療法や、他の手
術療法について検討することもあります。
もしこの治療法で月経が無くなってしまっても、卵巣の働きに影響はありませんから、
更年期が過ぎて卵巣から女性ホルモンが出なくなるまで、子宮筋腫や子宮内膜症は残り
ますので定期的な検診は必要です。
入院と社会復帰
原則的に手術前日入院、手術翌日退院の 2 泊 3 日です。
社会復帰は短期間で可能です。
費用
3割負担の健康保険で入院時のお部屋の希望に依りますが、大体 11 万円から 14 万円の
費用です。
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