アナログTV帯域跡地の特徴と 期待される利用技術 -電波伝搬と周波数共用東京工業大学 高田潤一 2007年電子情報通信学会ソサイエティ大会 パネル討論 AP-2 アナログTV帯域での新サービスの可能性 2007年9月13日 鳥取大学 本日の講演者の立場 • 東京工業大学 国際開発工学専攻 教授 – 電波伝搬およびアンテナの研究に従事 – 国際開発工学:地域開発・環境問題などを含む • 情報通信審議会情報通信技術分科会 電波有効利用方策委員会 VHF/UHF帯電波有効利用作業班 自営通信システム(基地局-端末間)構成員 – ルーラル地域向けブロードバンド無線アクセスシステムを 提案~梅比良先生,JRC竹内様と共同提案 – ただし本日の講演での立場は提案自体と直接関係なし • 電子情報通信学会ソフトウェア無線研究会委員長 – コグニティブ無線研究の旗振り役 – ソフトウェア無線のセッションを欠席 アナログTV帯域の再配分 • VHF: 72 MHz http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/denpa_riyou/pdf/070621_1_8-2.pdf アナログTV帯域の再配分 • UHF: 60 MHz http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/denpa_riyou/pdf/070621_1_8-2.pdf 再配分されるアナログTV帯域の特徴 • 今回開放される周波数 – VHF-LB 90-108 MHz – VHF-HB 170-222 MHz – UHF 710-770 MHz • 移動系に対して開拓され つつある周波数 – 広帯域移動無線アクセス 2545-2625 MHz – IMT-Advanced 3400-4200 MHz 4400-4990 MHz ほか アナログTV跡地の周波数は低い割に 帯域が広い 周波数は低い ⇒ 電波伝搬上のメリット 800MHz帯の攻防 ソフトバンク、800MHz帯問題で行政訴訟 ITmediaニュース 2004年10月13日付*より引用 • ...ソフトバンクは10月13日、携帯電話用電波の 800MHz帯を総務省がNTTドコモとKDDIに優先的に 割り当てる方針を不服とし、割り当ての実施の差し止 めなどを同省に求める行政訴訟を東京地裁に起こし た。... • ...新規参入を希望する事業者には2GHz帯などを割り 当てる方針。だが800MHz帯は建物内などに電波が通 じやすい上、低コストでの事業展開が可能になるなど の有利な点があるとして、... *http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0410/13/news037.html アナログTV帯域の伝搬とアンテナ • 伝搬損失のメカニズム • チャネルの広がり • 基地局アンテナ • 端末アンテナ 本当に周波数が低いほど使いやすいのか? ~特にVHFに注目 伝搬損失のメカニズム • フリスの公式と自由空間伝搬損失 波長 Pr G= = P t 4 d 距離 2 自由空間伝搬損失 G t Gr 送受 アンテナ 利得 自由空間伝搬損失 • 周波数が低いほど「よく飛ぶ」と言われる根拠のひとつ 2 4 2 Lf = f d c 同じ損失を実現する 距離は周波数に反比例 自由空間伝搬の適用範囲 第1フレネルゾーンが遮蔽されないこと – エネルギーの殆どは第1フレネルゾーン内で伝送される d 1 d2 d 1 d 2 例: 200 MHz / 10 km の中点 ~ 61 m 回折 • 第1フレネルゾーンの遮蔽~影領域への回り込み n= h d1d2 d 1d 2 第1フレネルゾーン半径 回折損失 FIGURE 7 • nの値は周波数の 平方根に比例 J [dB] –2 00 2 44 6 88 J(ν ) (dB) • 見通し線の遮蔽 ~ -6 dB • 第1フレネルゾーン の遮蔽 ~ -16 dB Knife-edge diffraction loss 10 1212 14 1616 18 低い周波数ほど 影領域に回りこむ 2020 22 24 –3 -3 –2 -2 –1 -1 0 0ν n 2 n 1 1 2 2 3 3 0526-07 ITU-R Rec. P526-9 伝搬損失が周波数特性を持つ理由 • 秘密は受信アンテナにあり Pr G= = P t 4 d 2 G t Gr f r 同じ利得を実現するアンテナの 大きさは λ2 に比例 同じ開口面積の受信アンテナなら 伝送損失は一定 2f r 2 基地局アンテナ • 同じ指向性・利得を実現するためのアンテナ長は 波長に比例 200MHz 2GHz 2m 13 dBi 20 m 13 dBi 2m 3 dBi 端末アンテナ:小形アンテナの限界 • アンテナ効率はアンテナ の電気的体積にほぼ 比例 400MHz 業務無線機の例 – 特にVHFでは内蔵型 アンテナは困難 • 効率と帯域幅の積は ほぼ一定 – VHFでは1チャネル6MHz でも比帯域3% 10 cm http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn070328-1/jn070328-1.html 無線チャネルとしての振る舞い • 遅延スプレッドが周波数および伝搬距離に対して どのように変化するかは,様々なケースがあり 一般化されているとは言いがたい. • ドプラ広がりは移動速度が一定であれば キャリア周波数に比例~むしろUHFより伝送は楽. 広帯域ディジタル伝送は地上デジタル放送で実証済み 電波防護指針の観点から 電波の強さが人体に好ましくない作用を及ぼさないレベ ルであるのかどうかを、十分な安全率を考慮して判断 するための基本的な考え方と、それに基づく指針値 電磁界強度指針 • 放送局、携帯電話基地 局等に適用 • 評価する空間の電波の 強度で規定(電界強度、 磁界強度、電力束密度) 局所吸収指針 • 携帯電話端末等、体に近 接して使用する無線機器 に適用 • 比吸収率(SAR:Specific Absorption Rate)で規 定 http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/060123_3.html 電磁界強度指針 • VHFは人体自体が共振する大きさ – 電波防護指針でも規定値が低い(30-300MHz) 電波防護指針 諮問第89 号「電波利用における人体防護の在り方」 平成9 年4 月24 日 局所吸収指針 • 300-3000MHzの頭部近傍以外は測定法が規定され ていない.(現在IECで検討中) 電波防護指針 諮問第89 号「電波利用における人体防護の在り方」 平成9 年4 月24 日 ここまでのまとめ 伝搬・アンテナから見たアナログTV跡地(特にVHF) • 伝搬損失は小さい • アンテナは形状・損失ともに大きい • 確かに影への回り込みは有利 • 広帯域チャネル特性は環境にも依存するが十分に 判っていない • 端末で大電力を使用するのは防護指針上難しい? 跡地へのシステム提案(第1段階) 突出して多く 互いに譲らず 自営 通信 放送 ITS 電気 通信 http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/denpa_riyou/pdf/070621_1_8-2.pdf 各類型の特徴 • 自営通信 – 多種多様なニーズ – センサから画像まで 様々な情報 – 基地局-端末,端末間 など通信形態も多様 – 安全・安心のための 排他的利用を主張 • 放送 共用が不可避 – 時間的には連続運用 (共用に不適) • ITS – 車車間通信 – 出会い頭衝突を避ける ためのセンシングが主 • 電気通信 – 700MHz/900MHzの ペアバンドの3Gへの供用 は規定路線 自営通信関連システム(報告書より) ...自営通信については、次のような電波の有効利用方策 を講じることが重要である。 • 限られた周波数帯域により多くの電波利用を収容でき るよう、複数の利用者が一定の周波数帯域において時 間等を分割することにより通信を実現する共同利用型 間等を分割 システムを構築すること • 移動通信を優先すること 移動通信 • 公共性の高い安全・安心の確保に必要な電波利用の 安全・安心の確保 実現を優先すること 自営通信関連システム(報告書より) • 非常災害時等特定の時間にトラフィックが集中する電 波利用とその他の電波利用を効率的に収容できるよう トラフィック制御手段を講じること トラフィック制御手段 • 非常災害時において複数の機関が同一の映像情報等 を伝送する必要がある場合に、可能な限り効率的に電 波利用が可能となるような方策を検討すること また、今後、自営通信システムの検討を進めていくに当 たっては ... 2011 年度までの実用化が望まれた被災 現場等における災害対策・救援用のブロードバンド移 動通信システムをベースとすることが適当である。 動通信システムをベース 自営通信関連システム(報告書より) 「安心・安全な社会の実現に向けた情報通信技術のあり方に関する調査研究会」最終報告書 導入すべきシステムの姿 • 貴重な広帯域を不必要に分割すべきでない – 一旦分けてしまった帯域を元に戻すのは極めて困難 – ガードバンドにより分割損が生じる – 空いた周波数の回収・再利用も念頭 • 多様なユーザを収容できる柔軟なシステム – – – – QoSと優先度に応じた制御 異なる業務間の相互通信も可能:非常時対応 利害の対立を克服(メーカ/ユーザ/主管庁) ユーザ側の妥協も少しは必要 • 端末間通信のサポート – 隠れ端末問題の解消に課題 導入すべきシステムの姿 • どうしても単一システムでは無理な場合 – 集中制御型コグニティブ無線が望ましい • • • • システム毎に専用の帯域は割り当てない:分割損 制御専用チャネル 優先度に応じた動的な周波数配分:優先度の判断? 端末間通信はセンシングに頼らざるを得ない:通信品質の確保? • 運用母体の問題 – 単一システムもしくは周波数配分制御の運用者は誰か? • 「自営」でなくなる 米国FCCのケース • 常に先進的なスペクトル政策 – 必ずしも国際協調は考慮せず デジタルTVへの移行 (コグニティブ無線による2次利用) 跡地再割当 (オークション) http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/denpa_riyou/pdf/070621_1_8-2.pdf 米国FCCのケース • これまでの方針 http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/denpa_riyou/pdf/070621_1_8-2.pdf 米国FCCのケース • 新しい方針(2007年7月, FCC07-132) バンドD •事業者免許(2×5MHz, 全国,オークション) •公共安全と隣接 米国FCCのケース • 新しい方針(2007年7月, FCC07-132) 公共安全 •ブロードバンド(下側2×5MHz,全国,単一免許) •ナローバンド(上側2×6MHz) 米国FCCのケース • 新しい方針(2007年7月, FCC07-132) “Public Safety / Private Partnership” – 隣接する 全国単一の事業者免許帯域(2×5 MHz)と 全国単一の公共安全ブロードバンド免許帯域(2×5 Mhz) • 免許人は異なる – 事業者が相互運用な公共安全ネットワークを構築 • 非常時には警察・消防など異なる公共機関の相互通信を提供 事業者帯域にも優先アクセス権設定 • 平時には事業者が公共安全帯域を二次利用可能 – 非常時の公共安全通信帯域を最大限に確保しつつ, ネットワークの共有によるコスト低減が図れる. 米国FCCのケース • 新しい方針(2007年7月, FCC07-132) “Public Safety / Private Partnership” 単一のネットワークインフラ 事業者用 5 MHz 公共用 5 MHz 優先度 平時の運用 非常時の運用 周波数 論点 • 本当にVHFは移動通信向けといえるのか? – 伝搬・アンテナ・EMCの観点から • 自営通信に関して新しい技術・新しい利用の枠組みを 導入して周波数利用効率を上げる意思があるのか? • 放送やITSの帯域見積は適正か? – 音声放送はテレビ同様アナログからの移行で帯域を返還 すべきではないか? – 車車間通信(センシング)に必要な周波数と帯域幅の見積は 適正か?
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