大学院説明会配布資料

融合医工学分野(木村研究室)紹介
初めに
本研究室では、産婦人科の研究として日本の横浜理化学研究所、イギリスのキングズカ
レジやメルボルン大学、アメリカの MIT 生命工学など広く世界と交流しながら、分化発生
途上の胎児に関する世界最先端の研究とそれによって生み出される新規医療機器や疾患マ
ーカー、創薬などの新規医療創成を行い、臨床応用を目標に研究を続けています。また、
ビルゲイツの国際グラントのサポートを得てアフリカの発展途上国における医療福祉の充
実を支援するために携帯電話を端末とした胎児監視システムの構築を進めています。
本研究室の目指すもの
本研究室では胎児の視点から全生涯にわたる病気を考える研究を行っています。近年、
小児領域で、小児喘息や自閉症、若年性糖尿病が増加しています。これらの疾患をもつこ
どもたちは、成人後も高率でうつ病や糖尿病、心血管障害、本態性高血圧などの生活習慣
病に移行する傾向があり大変な社会問題になっています。しかし、この原因がお母さんの
おなかの中、胎児期にあることはあまり知られていなせん。
ヒトの体ができるのは当然お母さんのおなかの中です。また、血圧や栄養代謝、免疫や
感染防御それを調節する種々の調節機構(エピゲネティックス)ができるのも胎児期です。
大気汚染や化学物質などの環境変化、お母さんの低栄養や過栄養、感染などの胎児を取
り巻く環境の悪化は胎盤での遺伝子調節異常を通し胎児の発生に大きな痕跡を残してしま
います。最近、この胎児期の遺伝子調節の異常が、生まれたのちに上記した小児期や成人
期の種々の異常を引き起こす 1 つの大きな原因であることが分かってきました。
しかし、胎児期は、分化発生と成長が同時に起きる時期です。iPS 細胞、ES 細胞、体性
幹細胞などの研究の後押しで、発生の謎が少しずつ解き明かされていますが、まだ、まだ、
未開拓の領域です。これに病的状態がどうかかわっていくかとなると大変難しい問題にな
るわけです。
問題の解決のために
私たちは、マウス胎仔を用い網羅的な全ゲノム解析を行っています。これから、心臓と
脳などの重要臓器の個体発生と胎盤機能の関係を探ろうとしています。ゲノムの二十三億
年の進化と比較することで胎児病理が生ずる際に進化の痕跡が見られることを期待してい
ます。また、臨床では高解像度の超音波を用い妊娠初期の胎児のスクリーニングと母体血
中にある胎児からの遺伝子解析を用い、発生と病理の関係を進めようと考えております。
興味をもたれた皆様へ(出身分野を問わず募集中です。)
お母さんのおなかの中の胎児は、数十年前までは完全なブラックボックスで、アンタチ
ャブルの領域でした。超音波で見えるようになっては来ていますが、まだまだ解明されて
いない大きな未知の領域です。ぜひ、一緒に研究を進めていただければと研究室一同お待
ちしております。(連絡先:電話 022-717-7575、[email protected])