テーマ1 顎下型ガマ腫に対する超音波ガイド下穿刺吸引の経験 高橋 章 1)、菅原千恵子 1)、前田直樹 1)、岩崎裕一 1)、鎌田伸之 2) 1):徳島大学歯学部歯科放射線学講座、2):徳島大学歯学部口腔外科学第一講座 US-guided aspiration of plunging ranula Akira Takahashi 1), Chieko Sugawara 1), Naoki Maeda 1), Hirokazu Iwasaki 1), and Nobuyuki Kamata 2) 1):The University of Tokushima, school of Dentistry, department of oral radiology, 2):The University of Tokushima, school of Dentistry, department of Oral and Maxillofacial Surgery I 貯留嚢胞のうち、顎下隙に進展した顎下型ガマ腫(plunging ranula, diving ranula)に対して は、穿刺吸引による治療では再発率が高く、外科的摘出が第一選択となる。今回、患者の事情によ り顎下型ガマ腫に対して超音波画像ガイド下で穿刺吸引を行った。 患者は男性、本学附属病院初診時 48 歳。初診 4 カ月前より右顎下部の腫脹・軽減を繰り返したた め他院受診。ガマ腫と診断されるが、転居のため紹介。 初診時所見:右顎下部に弾性軟腫瘤を触れる。圧痛、硬結、自発痛、唾疝痛なく、舌下小丘から の唾液流出は良好であった。他院検査画像(CT,MRI,US)と併せ、顎下型ガマ腫と診断。 患者背景:仕事が多忙で、治療のための時間を十分にとれない。以前より、針で刺す光景や血を 見ると気分不良、血圧低下を起こす。 治療方針:第一選択として口腔内からの摘出を説明するが同意を得られなかった。口腔内からの 開窓、口腔外からの吸引、OK-432 局所注入に関して、再発の可能性も含めて説明したところ、口腔 外からの吸引を患者が希望した。 治療経過:穿刺前の B モード超音波画像(US)にて、顎下隙に無エコーの液貯留を、オトガイ付近 から顎下腺の内側および皮膚側にかけて観察した。舌下隙には液貯留は観察されなかった。顔面動 静脈は液貯留に接して皮膚側を走行していた。 顎下部皮膚および皮下組織への浸潤麻酔後、US 画像でのガイド下に 18 ゲージ針にて顔面動静脈 を避けながら液貯留部位に穿刺した。帯黄色透明で粘稠な液を約 10cc 吸引した。吸引後、顎下腺外 側に少量の液貯留を認めるのみで穿刺を終了し、弾性包帯で顎下部を圧迫した。穿刺吸引に要した 時間は約 20 分であった。 吸引 4 日後での US 検査では液貯留は認められなかった。 吸引 2 カ月後での US 検査では、顎下腺から離れて前方の顎下隙に液貯留を観察したが、穿刺直前 と比較して体積は小さかった。 吸引 10 か月後、初診時と同程度の顎下部腫脹を認めた。US にて液貯留は初診時と同程度であっ た。穿刺吸引を再施行した。初回穿刺時と同様の手技で実施し、帯黄色透明で粘稠な液を約 10cc 吸引した。吸引後、顎下隙に液貯留は観察されなかったため穿刺を終了し、シリコン印象材で作成 した球状の圧迫子と弾性包帯で顎下部を圧迫した。穿刺吸引に要した時間は約 10 分であった。 再吸引 2 週後、触診にて少量の液貯留が観察された。 考察:顎下型ガマ腫に対する穿刺吸引は再発をきたし、成功しなかった。但し US ガイド下穿刺で は針先を明示でき、血管・筋肉・唾液腺の損傷に対する不安なく実施することができた。穿刺針は 皮膚に対して斜入させるため、本症例では 18 ゲージ針のほぼ全体が刺入されたが、臓器損傷の不安 なく実施できる利点は大きい。耳鼻科などで実施されている US ガイド下生検を顎顔面領域に応用す る手がかりとなったと考えられる。 テーマ2 下顎枝舌側にみられた静止性骨空洞の 2 症例 平 周三、林 孝文、勝良剛詞、小林富貴子、中島俊一、益子典子、小山純市、田中 新潟大学大学院医歯学総合研究科・顎顔面放射線学分野 礼 Medial depression of mandibular ramus: Report of two cases Shuhzou Taira, Takafumi Hayashi, Kouji Katsura, Fikiko Kobayashi, Shun-ichi Nakajima, Noriko Masuko, Jun-ichi Koyama, and Ray Tanaka Division of Oral and Maxillofacial Radiology, Niigata University, Graduate School of Medical and Dental Sciences 静止性骨空洞は 1942 年に Stafne によって初めて報告されて以来、現在まで多くの報告が認めら れている。臨床的には無症候であり、一般的に下顎角前方から第一大臼歯にかけ、下顎管下方の下 顎骨下縁舌側に位置し、エックス線写真上では類円形透過像で周囲をX線不透過帯に囲まれた特徴 を有する。 組織学的には、多くの場合、内部には正常な唾液腺組織が入っているとされ、舌下腺、顎下腺あ るいは耳下腺などの唾液腺組織の肥厚あるいは過形成による長期の圧迫により生じた局所の骨萎縮 または骨吸収とする説がある。 近年画像診断的には、CT や CT sialography、MRI 等の有用性が報告されているが、症例の大部分 は回転パノラマエックス線撮影により偶然発見されることが多い。 今回、我々は下顎枝舌側にみられた静止性骨空洞の2例を経験したので、若干の文献的考察を含 め報告する。下顎枝舌側の静止性骨空洞は比較的稀であり、過去の文献報告では、6 症例のみであ った。文献的には耳下腺との関連も示唆されていたが、本症例においては耳下腺との関連は明確で はなく、血管との関連の可能性が示唆された。 テーマ3 静止性骨空洞の CT 所見 湯浅雅夫、小林 馨、三島 章、五十嵐千浪、今中正浩、駒橋 鶴見大学歯学部歯科放射線学教室 武、山本 昭 CT findings of static bone cavity Masao Yuasa, Kaoru Kobayashi, Akira Mishima, Chinami Igarashi, Masahiro Imanaka, Takeshi Komahashi, and Akira Yamamoto Department of Oral Radiology, Tsurumi University, School of Dental Medicine 静止性骨空洞は、下顎角付近に存在する骨腔として Stafne(1942)によって初めて記述されている。 これは X 線写真上で、 下顎管下方に直径 1? 3cm の境界明瞭な楕円形あるいは類円形の透過像として 認められる。男性に多くほとんど片側性である。組織学的には骨の陥凹内部には唾液腺を含む場合 が多いと記載されているが、そうでないとする報告も見られる。 そこで、本学附属病院で 2003 年 3 月までに CT 検査を行い静止性骨空洞と診断された 12 症例、13 病変の CT 所見について報告する。 症例は両側性のものが 1 例で残り 11 例はすべて片側性であり、右側にあったものが 8 例、左側は 3 例である。性別は男性 11 例、女性 1 例、年齢範囲は 18-69 歳で平均年齢は 47.3 歳であった。 CT 像では全例、下顎骨臼歯部舌側部に骨の陥凹を認め、頬側皮質骨にまで達しているものが 6 例 であったが、頬側に骨膨隆を認めた症例は無かった。また病変はすべて下顎管下方に存在し、下顎 管を圧排・偏位させていたのは 7 例、下顎骨下縁皮質骨の菲薄化が見られたのは4例であった。病 変の大きさは最大のものが前後径約 18mm、最小は約 6mm であった。陥凹内部は、顎下腺を含むと考 えられたものが1例で、他は全て脂肪様像を呈していた。 テーマ4 T2 強調画像で低信号を呈した多形性腺腫の一例 犬童寛子 1)、末永重明 1)、川床正剛 1)、川畑義裕 1)、河野一典 1)、佐藤強志 1)、仙波伊知郎 2)、 三村 保 3)、馬嶋秀行 1) 1):鹿児島大学大学院医歯学総合研究科腫瘍学講座顎顔面放射線学専攻、 2):鹿児島大学大学院医歯学総合研究科顎顔面機能再建学講座口腔顎顔面外科学専攻、 3):鹿児島大学大学院医歯学総合研究科腫瘍学講座口腔病理解析学専攻 A case of pleomorphic adenoma as a low-intensity area on T2-weighed MR imaging Hiroko Indo 1), Shigeaki Suenaga 1), Seigo Kawatoko 1), Yoshihiro Kawabata 1), Kazunori Kawano 1), Tsuyoshi Sato 1), Ichiro Senba 2), Tamotsu Mimura3), and Hideyuki Majima 1) 1):Department of Oncology, Division of Maxillofacial Radiology, 2):Department of Oncology, Division of Oral Pathology, 3):Department of Oral and Maxillofacial Rehabilitation, Division of Oral and Maxillofacial surgery, Kagoshima University Graduate School of Medical and Dental Sciences 唾液腺・口腔領域に発生する多形性腺腫の MR 画像の特徴としては、一般に T2 強調画像で不均一 な高信号を呈し、ガドリニウム造影画像にて不均一で強いエンハンス効果を示すことが知られてい る。 今回、顎下部に T1 強調画像で低信号を呈した興味ある多形性腺腫の一例を経験したので報告する。 【症例】48 歳、女性。 【主訴】右側顎下部の腫瘤形成。 【現病歴】平成 14 年の初め頃より右側顎下部の腫瘤に気づくも無痛性のため放置。同年 9 月頃より 増大傾向を認めるようになり、近歯科医院にて大学病院での精査、加療をすすめられ、同年 12 月 13 日、本学歯学部附属病院第2口腔外科を受診。 【現症】右側顎下部に大きさ約 3? 4cm の弾性硬の腫瘤性病変を認めた。両側顎下部に小指頭大のリ ンパ節を触知。 【画像所見】MR 画像にて左側顎下腺部に境界明瞭、辺縁は一部分葉状構造を伴う tumor mass が認 められた。病変内部の信号強度は T1 強調画像ならびに T2 強調画像で均一な低信号、STIR 画像にて 中等度信号を呈していた。また、dynamic ガドリニウム造影画像にて造影剤投与後より均一で淡い エンハンス効果がみられ、Time-intensity curve の分析では漸増型のパターンを示した。顎下腺造 影 X 線像では、主導管、腺体内一次、二次導管は拡張し、腺体の上外方に ball in hand 様の圧排像 がみられた。辺縁はスムーズで腺体残存部は末梢まで造影されており、漏洩などを示唆する所見は みられなかった。 【病理組織診断】多形性腺腫 【まとめ】従来報告されている顎下腺内の多形性腺腫の MR 画像所見と比較して、本症例では T2 強 調画像にて内部均一な低信号を呈し、また均一で弱い造影効果を示しており Lymphoma 系統の疾患も 考えられた。しかし MR 画像から辺縁が一部分葉状構造を伴っていること、Time-intensity curve で漸増型の造影パターンを呈していたこと、また顎下腺造影 X 線像において、ball in hand 様の圧 排像、漏洩などを示唆する所見はみられなかったことから唾液腺由来の良性腫瘍 のなかでも多形性 腺腫と診断した。 テーマ5 口蓋部多形性腺腫の CT および MR 像 小椋一朗 1)、加藤正隆 1)、森進太郎 1)、本橋淳子 1)、李 光純 1)、岡野芳枝 1)、金田 隆 1)、岡 田裕之 2)、山本浩嗣 2) 1):日本大学松戸歯学部放射線学教室、2):日本大学松戸歯学部病理学教室 CT and MR images of pleomorphic adenoma of the palate Ichiro Ogura 1), Masataka Kato 1), Schintaro Mori 1), Junko Motohashi 1), Lee Kwangson 1), Yoshie Okano 1), Takashi Kaneda 1), Hiroyuki Okada 2), Hirotsugu Yamamoto 2) 1):Department of Radiology, Nihon University School of Dentistry at Matsudo, 2):Department of Pathology, Nihon University School of Dentistry at Matsudo 〔緒言〕多形性腺腫は一番頻度が高い唾液腺腫瘍で、耳下腺多形性腺腫が唾液腺腫瘍全体の 70? 80% を占める。ただし、口蓋部においてはまれで、CT および MR 像の特徴的所見についての報告はあま りなされていない。 〔対象および方法〕2000 年 7 月から 2002 年 9 月の間に本歯科病院放射線科に来院し、CT および MRI 撮像を施行した症例のうち、病理組織検査にて確定診断を得た口蓋部多形性腺腫 4 症例(そのうち 1 例は悪性多形性腺腫)を対象とした。これらにおける CT および MR 像について検討した。 〔症例1〕67 歳女性 多形性腺腫:CT では左側口蓋部に 2.0×1.5cm の境界明瞭な病変を認め、口 蓋骨の骨吸収と菲薄化を認めた。MRIではT1強調像で低∼中信号、T2強調像で著明な高信号を示し、 内部の信号が不均一であった。 〔症例2〕16 歳男性 多形性腺腫:CT では右側口蓋部に 2.0×1.5cm の境界明瞭な病変を認め、口 蓋骨の骨吸収と菲薄化を認めた。MRI では T1 強調像で低信号、T2 強調像で高信号を示した。 〔症例3〕67 歳女性 多形性腺腫:CT では左側口蓋部に 1.5×1.5cm の境界やや不明瞭な病変を認 め、口蓋骨の骨吸収と菲薄化を認めた。MRI では T1 強調像で低信号、 T2 強調像で一部高信号を示し、 Gd-DTPA にて内部に低信号を伴う diffuse な造影効果を認めた。 〔症例4〕65 歳男性 悪性多形性腺腫:CT では左側口蓋部に 2.2×1.6cm の境界明瞭な病変を認め、 口蓋骨の骨吸収と菲薄化を認めた。MRI では T1 強調像で低信号、T2 強調像で中∼高信号を示し、 Gd-DTPA にて造影効果を認めた。 〔結論〕口蓋部多形性腺腫は CT にて口蓋骨の圧迫吸収がみられ、MRI では T1 強調像で低信号、T2 強調像で一部高信号を示す点が特徴であった。 テーマ6 耳下腺に発生した軟部好酸球肉芽腫の 2 例 瀬々良介 1) 、香川豊宏 1)、三輪邦弘 1)、和田忠子 1) 、湯浅賢治 1)、河津利幸 2)、 筑井 徹 3)、 神田重信 3) 1):福岡歯科大学診断全身管理学講座画像診断学分野、2):九州大学歯学部附属病院口腔画像 診断科、3):九州大学大学院歯学研究院口腔顎顔面病態学講座口腔画像情報科学分野 Eosinophilic granuloma of the parotid gland: Two cases of report Ryosuke Zeze 1 ), Toyohiro Kagawa 1), Kunihiro Miwa 1 ), Tadako Wada 1), Kenji Yuasa 1), Toshiyuki kawazu 2), Toru Chikui 3), and Shigenobu kanda 3) 1):Section of Image Diagnosis, Department of Diagnostics and General Care, Fukuoka Dental College, 2):Department of Oral and Maxillofacial Radiology, Kyushu University Dental Hospital, 3):Department of Oral and Maxillofacial Radiology, Graduate School of Dental Science, Kyushu University 軟部好酸球肉芽腫は、顎・顔面領域に主に発生する比較的稀な疾患である。今回、われられは耳 下腺部に発生した症例を経験したので報告する。 症例 1(男性) 【現病歴】 1987 年頃:(38 歳)左側胸鎖乳突筋前縁に腫瘤を自覚した。 1988 年 3 月:腫瘤は増大傾向を示したため、九大歯学部附属病院口腔外科を受診し生検を受けた。 病理診断は好酸球浸潤によるリンパ節炎(lymphadenitis with eosinophilic infiltration)であった。以後、加療せず。両側耳下腺部の腫脹は気になっていた が、急激に増大する傾向はなく、随伴症状もないため放置していた。 2003 年 1 月:(54 歳)知人の勧めにより福岡歯科大学附属病院口腔外科を受診した。 【画像所見(2003 年時)】 MRI 所見:両側耳下腺は全体的に大きく腫大し、同部信号強度は不均一であり、T1 強調画像で筋肉 よりやや高信号、T2 強調画像で筋肉、脂肪組織のいずれよりも高信号、脂肪抑制画 像で高信号、また、造影 T1 強調画像で造影効果を認める。 CT 所見:両側耳下腺は著明に腫大し、CT 値の上昇を認める。 超音波所見:両側耳下腺のエコーレベルは低下し、不均一となっている。複数の頸部にリンパ節腫 大があり、その所見は特異的な炎症によるリンパ節腫脹が示唆されるものであった。 症例 2(男性) 【現病歴】 1981 年 12 月:右側耳介下部を打撲 1982 年 2 月:(15 歳)右側耳介下部の腫脹を主訴に九大歯学部附属病院第2口腔外科を受診した。 1982 年 5 月:好酸球肉芽腫の診断の元に放射線治療(Total,30Gy)を行い、腫瘤は消失した。 1984 年.8 月:再発 1984 年 9 月:腫瘍摘出術施行。以後経過観察を行っていた。 1988 年 6 月:右側耳介下部腫脹を自覚したが、放置していた。 1989 年 5 月:(22 歳)福岡日赤病院耳鼻科受診を受診した後、九大歯学部附属病院第2口腔外科に 来院した。九州大学医学部附属病院耳鼻科にて、ステロイド療法を行い腫瘤はほぼ 消失した。 1989 年 6 月:ステロイド療法終了後に再発した。 【画像所見(1989 年時)】 CT 所見:右側耳下腺は腫大し、CT 値の上昇を認める。 超音波所見:右側耳下腺のエコーレベルが低下し、不均一となっている。 耳下腺造影所見:右側耳下腺の分岐導管の描出はほとんどない。一部の腺系が描出されているが、 斑紋化している。 テーマ7 小唾液腺由来の腺房細胞癌の MRI 所見 池田 敦 1)、神部芳則 1)、篠崎泰久 1)、松本浩一 1)、草間幹夫 1)、小林 馨 2) 1):自治医科大学歯科口腔外科学講座、2):鶴見大学歯学部歯科放射線学教室 Magnetic resonance imaging of Acinic cell carcinoma of the minor salivary gland Atsushi Ikeda 1), Yoshinori Jinbu 1), Yasuhisa Sinozaki 1), Kouichi Matsumoto 1), Mikio Kusama 1) and Kaoru Kobayashi 2) 1):Dept.of Dentistry, Oral and Maxillofacial Surgery, Jichi Medical School 2):Dept.of Oral Radiology, Tsurumi University, School of Dental Medicine 腺房細胞癌は、漿液性腺房細胞に類似した細胞の増殖を特徴とする唾液腺腫瘍である。本腫瘍は 全唾液腺腫瘍の1%に過ぎず、そのうちの 80%以上は耳下腺に発生し、小唾液腺由来のものはまれ であり、画像所見の特徴についても明らかでない。 今回われわれは、小唾液腺由来の腺房細胞癌3例を経験したので、MRI 所見を中心にその概要を報 告する。 症例1 患者:70 歳、女性。初診:平成 14 年 6 月 7 日。主訴:左側頬部腫瘤。現病歴:平成 13 年 3 月、左側頬部の腫瘤を自覚するも放置。最近になり腫瘤の増大傾向認めたため、通院中の内科よ り当科を紹介され来院。既往歴:高血圧、糖尿病。現症:左側臼歯部歯肉頬移行部から頬粘膜にか けて、30×40mm 大、境界明瞭、非可動性、弾性硬の腫瘤を認めた。MRI 所見:左側頬部皮下脂肪組 織内に辺縁不整な腫瘤を認め、造影剤で軽度増強されており、内部はわずかに不均一ないし分葉状 の領域が存在した。 症例2 患者:63 歳、女性。初診:平成 11 年 10 月7日。主訴:右側上唇腫瘤。現病歴:23 年前、 右側上唇腫瘍切除施行。10 年前に再発し、レーザーにて切除。その際の病理診断は粘液腫であった。 その後、症状の変化がみられないため近内科より当科を紹介され来院。現症:右側上唇粘膜下に、 32×12mm 大、境界明瞭、非可動性、弾性硬の腫瘤を認めた。MRI 所見:上唇皮下、粘膜下に T1 強 調像で低信号、T2 強調像で高信号、内部がやや不均一で分葉状を呈した腫瘤を認めた。 症例3 患者:71 歳、女性。主訴:下顎前歯が動く。現病歴:以前より下顎前歯部の動揺を自覚 し、気になり来院。合併症:C 型肝炎、肝癌、糖尿病。エックス線所見:下顎前歯根尖相当部の不 規則な骨吸収像を認め、いわゆる浮遊歯の状態であった。MRI 所見:下顎骨正中部に、顎骨中心性 に辺縁不整、分葉状の腫瘤を認め、T1 強調像で低信号、T2 強調像では、やや高信号を呈していた。 以上に文献的考察を加え報告する。 テーマ8 腺様嚢胞癌の MR 所見 有地淑子 1,2)、不破信和 2)、外山正彦 3)、後藤真一 1)、有地榮一郎 1) 1):愛知学院大学歯学部歯科放射線学講座、2):愛知県がんセンター放射線治療部、 3):名古屋徳洲会総合病院歯科口腔外科 MR imaging features of adenoid cystic carcinoma involving the maxillofacial fascial spaces Yoshiko Ariji 1,2), Nobukazu Fuwa 2), Masahiko Toyama 3), Masakazu Gotoh 1), and Eiichiro Ariji 1) 1):Department of Oral and Maxillofacial Radiology, Aichi-Gakuin University School of Dentistry, 2):Department of Radiation Oncology, Aichi Cancer Center Hospital, 3):Department of Oral and Maxillofacial Surgery, Nagoya Tokushu-kai General Hospital [背景] 頭頸部領域のおける Adenoid cystic carcinoma(ACC)の画像所見の特徴としては,皮質骨 の変化は少なく髄腔内を広がっていく所見(Ariji, 1993)や,perineural spread による頭蓋底にお ける神経の腫脹や孔の破壊などの所見(Laine, 1990)(Medina, 1990)(Caldemeyer, 1998)(Mueller, 2001)が報告されてきた.原発の部位により予後が違うとされているにもかかわらず,原発部位ごと の詳細な検討はなく,その特徴的な所見は抑えられていない. [目的] 咀嚼筋間隙(MS)あるいは旁咽頭間隙(PPS)にひろがる ACC 症例において,従来報告されてい るような骨や perineural spread の MR 所見を確認しながら,この部位に特徴的な解剖構造の変化を 把握し,所見の総括を行うことを目的とした. [対象&方法] 症例は,愛知県ガンセンター放射線治療部を受診し,MR 検査で MS? PPS に腫瘍の広 がりをみた ACC 3 患者である.初発症状は三叉神経痛あるいは顎関節痛(咀嚼筋痛)であった.42 歳女性,53 歳女性および 36 歳女性であった.MR 装置は 1.5 T unit (Signa; General Electric Medical Systems, Milwaukee, Wis)を用いた. 撮影条件は5mm厚,spin echo (SE)法, T1強調像 (TR/TE, 600/25 ms) , T2 強調像 (TR/TE, 2000/80),2? 3方向撮影, 造影剤は gadolium dimeglumine (Gd-DTPA, Magnevist; Schering, Berlin, Germany)を使用し,0.2 ml/体重(kg)を静注した. [結果]骨破壊は髄腔内に進展し dotted-line 様を示すものがあった.軟組織においても元来の解剖 学的構造も極力保ちながら進展していた.神経走行領域へ進展した場合は,翼口蓋窩から三叉神経 第2枝へ,側頭下窩における頬神経や咀嚼筋の運動神経から,あるいは下顎骨に進展して下歯槽神 経から三叉神経第3枝へ進展し, MS あるいは PPS の組織間を進展し,三叉神経節まで浸潤するの が大きな特徴であった.また 2 例において咀嚼筋の denervation atropy も伴った. [まとめ] MR 像は孔の破壊のみならず神経に沿った進展も確認でき,上記のように腫瘍の進展範囲 を明確に把握できた。 テーマ9 開口障害を生じた耳下腺悪性腫瘍の一例 五十嵐千浪、小林 馨、駒橋 武、湯浅雅夫、山本 鶴見大学歯学部歯科放射線学教室 昭 The patient of malignant tumor of parotid gland with opening limitaiotn Chinami garashi, Kaoru Kobayashi, Takeshi Komahashi, Masao Yuasa, Akira Yamamoto Department of Oral Radiology, Tsurumi University, School of Dental Medicine 開口障害を主訴に来院する患者の中に顎関節疾患が原因でない症例もあり、一般歯科診療におい て診断に苦慮することもある。症例によっては病態が進行してから精査依頼で来院の場合もある。 今回、顎関節疾患の疑いで当科に紹介来院されたが耳下腺悪性腫瘍であった症例を経験したので報 告する。 症例は 51 歳の男性、顎が突っ張り物が食べられないとの主訴で来院した。半年前から右側耳介下 部に腫瘤を自覚し近内科医を受診したが、異常なしと言われ放置。2か月前に開口障害が出現し、 1か月前に右側耳下腺部の腫脹出現、開口障害も顕著となり某歯科医を受診し、顎関節症の疑いで 当科へ紹介された。初診時右側下顎枝付近に直径5cm 程度の腫脹があり、同部に圧痛と発赤、僅か な神経麻痺も認められた。最大開口距離は 27mm であったが、関節音、歯や粘膜等に異常所見はなか った。上記の所見から臨床診断は右側下顎枝付近の炎症か耳下腺腫瘍とした。パノラマX線写真検 査、後頭前頭方向投影、右側耳下腺部の接線方向投影を行ったが、下顎枝およびその周囲、顎関節 部等の骨に異常所見はなかった。同日右側耳下腺部の超音波検査を行い、境界やや不正な低エコー の病変が認められた。MR 画像検査では右側耳下腺全体がやや不明瞭、内部不均一で、病変は咬筋と 傍咽頭隙に及んでいた。以上の所見から耳下腺の悪性腫瘍と診断した。後日の核医学検査では異常 集積やその他の部位にも異常所見は認められなかった。口腔外科で耳下腺摘出、頚部郭清が行われ、 病理組織検査から悪性筋上皮腫と診断された。術後他施設での放射線治療を行った。 開口障害を呈する症例であっても顎関節部および耳介部周囲の腫脹を伴っている場合には、早期 の画像検査、画像診断を行う必要性を充分に認識しなければならないことが再確認された。 テーマ10 顎下部腫瘤の画像診断 筑井 徹 1)、清水真弓 1)、吉浦一紀 1)、神田重信 1)、大部一成 2)、中村誠司 2) 1):九州大学大学院歯学研究院口腔画像情報科学教室 2):九州大学歯学部附属病院顎顔面口腔外科 Diagnosis of masses in the submandibular mass Toru Chikui 1), Mayumi Shimizu 1), Kazunori Yoshiura 1), Shigenobu Kanda 1), Kazunari Oobu 2), and Seiji Nakamura 2) 1):Department of Oral and Maxillofacial Radiology, Faculty of Dental Science, Kyushu University, 2):Department of Oral and Maxillofacial Surgery, Kyushu University Dental Hospital 目的 第一に顎下部腫瘤における腺内および腺外腫瘤の鑑別に有効な所見を検討した。第二に腺内腫瘤 において、良性腫瘍、悪性腫瘍および炎症性変化(Lymphoepithelial lesion を含む)の鑑別に有 効な所見を検討した。 方法 病理的に確定された 53 症例の造影 CT 画像(24 症例), Sialo CT 画像(29 症例)を観察し、病 変と顎下腺との位置関係を評価し、顎下腺が腫瘍の最大豊隆部を含むか否か検討した。また造影 CT においては、顔面静脈が病変の外側を走行するか、病変と顎下腺の間を走行するかを検討した。 31 症例(良性腫瘍 11 症例、悪性腫瘍 13 症例、炎症性変化 7 症例)に関しては超音波検査を あわせて行った。炎症性変化の内訳は、慢性硬化性顎下腺炎 3 症例、慢性顎下腺炎 2 症例、 Lymphoepithelial lesion 2 症例であった。 超音波画像にて hypoecoic mass の描出があるかを検 討したのち、それぞれの mass に関して、1.内部エコーの均一性、2.辺縁の明瞭性、3.後方増強の有 無を評価した。 結果 1. 顎下腺組織が腫瘤の最大豊隆部を含むものを腺内腫瘤とした時、正診率は造影 CT で 88%、Sialo CT で 84%であった。また脈管の走行が確認出来た症例に関して、病変の外側を走行する時は腺 内腫瘤、顎下腺と病変の間を走行する時は腺内腫瘤とした時、正診率は 80%であった。 2. 腺内腫瘤に関しては、超音波検査により良性および悪性腫瘍ともすべて腫瘤の描出がみられた。 炎症性疾患に関しては、CT にて顎下腺自体の腫脹を認めたが mass contour を認めなかった 3 症例に於いても、超音波では hypoechoic mass として描出される部位を有していた。 3. 内部エコーの均一なものは、良性腫瘍、悪性腫瘍、炎症性変化で、各々82%(9/11)、23%(3/13)、 57%(4/7)であった。境界の明瞭なものは、良性腫瘍、悪性腫瘍、炎症性変化で 90%(10/11)、 23%(3/13)、57%(4/7)であった。後方増強は、良性腫瘍、悪性腫瘍、炎症性変化で、各々 63%(7/11)、54%(7/13)、0%(4/7)に認めた。 結論 1. 造影 CT および Sialo CT における顎下腺と腫瘤の位置関係および脈管の走行は、腺内・腺外の 鑑別に有用な所見であった。 2. 超音波検査では、炎症性変化においても hypoehoic な領域の描出があった。 3. 内部エコー、辺縁、後方増強に関しては、良悪性および炎症性変化を鑑別する有効な所見と考 えられた。 テーマ11 Low density area が著明な耳下腺腫瘤の検討 木村幸紀、花澤智美、山本実佳、田谷あつ子、岡野友宏 昭和大学歯学部歯科放射線学教室 Analysis of low density mass lesions of the parotid gland Yukinori Kimura, Tomomi Hanazawa, Mika Yamamoto, Astuko Tagaya, and Tomohiro Okano Showa University School of Dentistry, Department of Dental Radiology 耳下腺部に腫瘤性病変を生じて受診される患者は,歯科においても比較的よくみられる。耳下腺 部腫瘤は,視診や触診では診断困難なことが多く画像診断にかかる期待が大きい。ところが,耳下 腺腫瘤の種類は多岐にわたり,一方では画像所見が類似することもあり画像診断は決して容易では ない。しかし,一見類似した画像所見を呈する耳下腺腫瘤性病変も診断名が異なるのであれば画像 所見のどこかが異なる可能性がある。そこで今回われわれは,これまで経験した耳下腺腫瘤の中で 著明な low density area が腫瘤内部の広範囲にみられた症例に特に着目して,どこまで類似しど こが異なるか詳細に再検討した。 対象は,1990 年 6 月∼2002 年 12 月までに当科で耳下腺部腫瘤の精査を目的に造影 CT 検査を施行 した症例のうち,腫瘤内部の広範囲に著明な low density area が認められた 10 例 11 病変である (1例は両側性耳下腺腫瘤)。性別内訳は男性 7 例,女性 3 例。年齢 29∼78(平均 59 歳)。 臨床所見における腫瘤の大きさは,20mm 以下 3 病変・21mm∼30mm 以下1病変・31mm∼40mm 以下 3 病変・41mm 以上 3 病変,不明1病変であった。増大傾向について,1か月以内の急速な増大3病変・ 1か月以上掛かった緩慢な増大 2 病変・増大縮小の繰り返しあり3病変・以前から不変1病変・不 明(記載なし,自覚症状なし各1病変)2病変であった。有痛性1病変・無痛性 10 病変で,弾性硬 2病変・弾性やや硬∼軟8病変・弾性軟1病変,可動性9病変・不明 2 病変であった。造影 CT 所見 は以下のとおりであった。腫瘤の存在位置が,耳珠レベルより上方は1病変もなかった。 耳介直下 のレベル(典型的耳下腺相当部)5 病変で,耳下腺浅層 2 病変・深層 3 病変であった。耳下腺下極 部または顎角部レベルの 6 病変は,腫瘤と胸鎖乳突筋との間に耳下腺組織が介在しているのが 4 病 変・腫瘤と胸鎖乳突筋との間に耳下腺組織が介在していないのが 2 病変であった。腫瘤の大きさは, 20mm 以下 3 病変・21mm∼30mm 以下 6 病変・31mm∼40mm 以下1病変・41mm 以上1病変。内部構造あ り 6 病変・なし 5 病変。内部の CT 値(−7∼51)。辺縁整 2 病変・不整 9 病変。辺縁の厚みは,1mm より厚く 2mm 以下4病変・2mm より厚く 3mm 以下3病変,3mm より厚く 4mm 以下 2 病変・4mm より厚 いが 2 病変。周囲耳下腺組織に腫瘤が関連した density の変化あり 2 病変・density の変化なし 9 病変であった。 これらに対して,組織学的証明は腫瘤全摘による標本によったのが 6 例・針生検 1 例・画像診断 のみ 4 病変であった。最終的な診断名は,ワルチン腫瘍 5 病変・耳下腺リンパ節炎の疑い 3 病変・ 口腔粘膜原発扁平上皮癌の耳下腺リンパ節転移 2 病変,鰓嚢胞 1 病変であった。これらの診断名と 造影 CT 所見の関係を retrospective に更に詳細に再検討した結果を報告する。 テーマ12 閉塞性唾液腺疾患の MRI 画像診断 古跡孝和、林 靖久、古跡養之眞 大阪歯科大学歯科放射線学講座 MR image findings of obstruction disease of salivary glands Takakazu Koseki, Yasuhisa Hayashi, Yonoshin Koseki Osaka Dental University, Department of Oral Radiology 閉塞性唾液腺疾患の診断に際しては、唾液腺の形態、機能および唾石の存在位置などの情報を得 るために多くの検査が用いられている。中でも、唾液腺造影検査は唾液腺の形態変化や唾石の位置 的関係を捉えるために必要不可欠な検査とされている。今回、唾石が原因とされた閉塞性唾液腺疾 患の MR 画像を中心に観察を行った。また、水の信号を強調した MR-Sialo 像と唾液腺造影像(以下、 MR-S と Sialo.)を比較検討した。 対象は本学中央画像検査室を受診し、臨床的および画像診断的に唾石による閉塞性唾液腺疾患と 診断された顎下腺唾石症 44 症例(45 腺)と耳下腺唾石症 5 症例(5 腺)とした。これらの症例はす べて単純X線検査後に MR 検査が実施された。MR 像については、唾液腺の外形、周囲組織の炎症性 変化の有無および組織の均一性について観察検討した。 MR-S と Sialo.の検査が実施された、顎下腺唾石症の 28 症例(28 腺)については、唾液腺管系と 導管系および腺系の描出パターンによって分類した。 結果:唾液腺の外形は T1 強調像を中心に、周囲組織の変化は T2 強調像および T2 強調脂肪抑制像 を用いて評価を行った。外形が明瞭なもの 18 腺(40.0%)と不明瞭なもの 27 腺(60.0%)で、不明 瞭なものが多くみられた。不明瞭な境界を示した唾液腺の 8 腺(17.7%)が周囲組織に著明な炎症性 変化を伴っていた。 唾液腺組織の均一性は健側と罹患側の間では有意な差は認められなかったが、 正常群との間では、 T2 強調像および T2 強調脂肪抑制像で有意な差を示していた。唾液腺外形および周囲組織変化の間 に唾液腺組織の均一性に関しては、有意な差はみられなかった。 Sialo.像を以下の4つにパターン分類した。 Ⅰ. 導管系と腺系とも十分描出されているもの(10 腺)。 Ⅱ. 導管系は十分描出されているが、腺系の描出が不十分なもの(3 腺)。 Ⅲ. 導管系、腺系とも描出が不十分なもの(7 腺)。 Ⅳ. 唾石より遠心が描出されないもの(8 腺)。 MR-S 像は、Sialo.像の分類に唾石より遠心のみが描出されたもの(12 腺:42.9%)を加えて A? E の5つに分類した。両者が類似した像を示したのは、9 腺(32.1%)であった。 まとめ: ・MR 検査は、閉塞性唾液腺疾患の診断に不可欠な診断法と思われた。 ・唾液腺組織の均一性は、閉塞性唾液腺疾患の診断に有効な因子の一つとして利用できる可能性が 示唆された。 ・唾石より遠心部の導管および腺系の描出には MR-Sialo 像が有効であった。今後は、MR-Sialo 像 のノイズを軽減することで、さらに診断精度が向上すると思われた。 テーマ13 シェーグレン症候群診断基準としての唾液腺シンチの有用性? とくに異常唾液腺数につい て? 佐藤強志、川畑義裕、川床正剛、犬童寛子、河野一典、末永重明、馬嶋秀行 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科腫瘍学講座顎顔面放射線学専攻 Staging of sialoscintigraphic images of SJÕGREN’s syndrome Tsuyoshi Sato, Yoshihiro Kawabata, Seigo Kawatoko, Hiroko Indo, Kazunori Kawano, Shigeaki Suenaga, Hideyuki Majima Department of Oncology, Division of Maxillofacial Radiology Kagoshima University Graduate School of Medical and Dental Sciences 唾液腺シンチ所見はシェ? グレン症候群の診断基準に取り入れられているが、唾液腺造 影所見や小唾液腺生検所見に見られるような stage 分類での評価ではなく、単に「機能低 下」とのみ記載されている。今回の検討では、唾液腺シンチに見られる集積や排泄機能の 低下について分析を行ない、シェ? グレン症候群の診断のための stage 分類の設定につい て分析を試みた。 症例と方法:我々の施設で過去 13 年間に行なった唾液腺シンチを分析した。唾液腺炎例 と良性腫瘍例 95 例(対照例)、原発性と続発性シェ? グレン症候群の確実例 26 例と疑い例 43 例を対象とした。まづ対照例の正常唾液腺(117 耳下腺と 104 顎下腺)の唾液腺シンチ 所見について集積と排泄機能について分析を行い、これらをコントロールとした。これら のコントロールと比較してシェ? グレン症候群の確実例 26 例と疑い例 43 例の集積と排泄 機能の低下を3段階に分類し、30%以下の機能低下 S-0、30-70%を S-I、70%以上を S-II と した。また同時に実施した造影所見(G-0, G-I, G-II)は Rubin & Holt の分類、生検所見 (P-0, P-I, P-II)は Chisholm & Mason の分類を参考にそれぞれ 3 段階に分類しそれぞれ を比較した。 結果:(1)シンチ所見は造影所見と良好な結果を示したが、生検所見との比較では P-I と P-II との間でほとんど差が見られなかった。(2)シェーグレン症候群確実例の唾液腺 では 60%以上が S-II を示し、疑い例の 20%と著明な差が見られた。(3)今回は機能異常を 示した唾液腺数について分析を行ったが、確実例の 60%以上の症例で 3? 4 腺に低下が見ら れたが、疑い例では 2 腺が最も多かった。(4)この 3 腺以上の機能変化と S-II を唾液腺 シンチの基準とすると、今回の症例(確実例と疑い例)では感度は 76.9%、特異性は 69.7%、 精度は 72.5%であった。
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