視聴覚教育の基礎理論と歴史

視聴覚教育
視聴覚教育の基礎理論と歴史
1.視聴覚教育(Audiovisual Education)とは何か
20 世紀の新しいメディア(映画・放送)を教育に利用しようという発想が基盤
●視聴覚教育の定義
a.形態的定義 「学習指導の改善のために視聴覚教材・教具を活用した教育」
b.機能的定義 「知識や技能の形成のために感性的具体的経験を付与した教育」
c.教育工学的定義
「教育行為を最適(効果的)とするこめに、画像メッセージと言語メ
ッセージとの特質を明らかにし、これの具体化としての教授メディアの製作、選択、およ
び利用を主たる課題とする教育理論・実践の分野」(中野照海)
2.視聴覚教育の源流
(1)
直感教授
a.フランシス・ベーコン(1561-1626)
感覚論的・帰納法的認識論
b.コメニウス(1592-1670) 感覚的実学主義(sense realism)
何よりもまず感覚を訓練して身近な事物の印象を受け取ることを重視
c.ルソー(1712-1778)
直感教授、言語主義の批判
「感覚的なものを通ってこそ、私たちは知的なものに到達することになる」
d.ペスタロッチ(1746-1827) 直感教授法の定式化
「直感は認識の絶対的基礎」 数、形、言語を認識の発達における基本形式に
対象の数→形の把握→対象の名前
e.労作教育(19 世紀末∼ 20 世紀)
f.経験主義教育
(2)
ケルシェンシュタイナーなど
デューイなど
近代的コミュニケーション技術の応用
①写真(1839 年)
ニエプスとダゲール
③映画(1889 年)
エジソン
⑤テレビ(1926 年)
ベアード
⑦テレビ放送の普及(1940 年代後半∼)
②録音機(1857 年)
④無線電信機(1896 年)
スコット
マルコーニ
⑥ラジオ放送の開始(1929 年)
⑧VTR(1956 年)
●近代的コミュニケーション技術の発展方向
a.現実を忠実に記録・再生する
b.迅速に、広範囲に伝達する
c.使いやすくて低価格で提供できる
(3)
視聴覚教育の発展
①江戸時代の「往来物」
②直感教授思想の導入
実用的な手紙の書き方の学習
明治時代初期( 1870 年代)
庶物指教、問答科、実物科など
③直感教授(開発主義教授)法の導入( 1880 年代)
各科の教授
実物から教える
ただし、1890 年頃には体系を重視するヘルバルト主義の教授法が主流になる
④写真スライド、洋式幻燈機の活用(1874 年)
文部省による教育幻燈画の制作と師範学校への配布→経済的理由で廃止(1883 年)
社会教育では活用
→
教育幻燈会の開催
⑤児童映画会( 1920 年代後半頃∼)
学校巡回映画連盟(1928 年設立)
映画を利用した教育実践の研究(1928 年)
教材映画の作成「小学校理科映画体系」(1935 年)
⑥学校放送(1933 年) 大阪のラジオ放送局
全国的な学校放送(1935 年)
a.ラジオを普及させて国民文化の向上を図る
b.ラジオを正しく利用するための教育
c.学校教育の不備を補う
1941 年 国民教育令 授業での利用の法制化
⑦教育映画の利用(戦後)
連合国総司令部
1948 年
1954 年
アメリカ教育映画の大量供給
日本映画教育協会
視聴覚教育研究協議会
1949 年
日本学校映画教育連盟
1959 年
教育テレビ局開局
⑧テレビ学校放送(1953 年∼)
1949 年
放送教育研究会全国連盟
⑨VTR(1977 年∼)
テレビ番組の選択的利用や編集が可能になる。視聴覚ライブラリーの整備が進む。
3.E・デールの視聴覚教育理論
『学習指導における視聴覚的方法』
(1969 年)
●映像(映画)による教育効果
①動きを提示する
●経験の円錐
②強制的に注視させる
③現実性を高める
④時間的要素をコントロールし、時を早めた
り遅くしたりする
⑤実物の大きさを拡大したり、縮小したりす
ることができる
言語的記号
視覚記号
レコード・ラジオ・写真
映画
テレビ
⑥過去や現在の事象を教室に導入する
展示
⑦事象を容易に記録し、繰り返し再生できる
⑧現実を創造し、不可視な物を見えるように
見学
演示
することができる
⑨共通の経験を形作ることができる
⑩態度に影響を与える
⑪抽象的関係を理解させる
⑫美的経験を満足させる
劇化された経験
ひながた経験
直接的・目的的経験