第7章 新エネルギー導入重点プロジェクト

第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
第7章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.1 秩父市における新エネルギー導入に向けて
第 6 章で秩父市における新エネルギー導入の適用性を取りまとめ(P111)、この結果に基づいて新
エネルギー導入の基本方針を定めました(P117)。また、個別プロジェクトを検討し、概要をまとめ、スケ
ジュール案を記しました(P123)。これらの検討結果を踏まえ、次のステップとして
「秩父市で実際にどんなエネルギーを、どれだけの量、どういった手法で、誰が導入していくか」
という具体的な方策について、意思決定を行う必要があります。
本調査は「地域新エネルギービジョン」という初期段階の調査であるため、こと細かな試算等は行わ
ずに全体像を概観することを目標としましたが、今後は下記の検討が必要になります。
7.1.1
実現性の高いプロジェクトの抽出
木質バイオマス、太陽光発電、マイクロ水力発電等の、実現性の高いプロジェクトを抽出します。
7.1.2
有望プロジェクトの課題の明確化
各プロジェクトの詳細検討にて挙げた課題をさらに掘り下げ、秩父市における解決策を見出すことが
必要です。
7.1.3
地域新エネルギー詳細ビジョンの実施検討
重点プロジェクトに関して、NEDO 地域新エネルギー詳細ビジョンにて、更に詳細な検討を加える
ことが考えられます。
第 7 章では新エネルギー導入のリーディングプロジェクト(P127)、中・長期的プロジェクト(P159)の
詳細検討を行い、計 20 のプロジェクトについて特徴や課題、モデルとなる各地の先進事例を記します。
その上で、新エネルギー導入推進方策の検討(P166)を行い、実施体制や助成制度等について検討
案を列挙します。
‐ 126 ‐
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.2 リーディングプロジェクトの検討
7.2.1
木質バイオマスボイラー導入プロジェクト(温浴施設等)
秩父市では森林面積が 87.4%を占め、森林資源も豊富に存在しています。しかし、間伐等の森林
整備の必要な森林が増加し、整備を進めていますが、不十分です。また、スギ・ヒノキを伐採した後に
植栽されずに放置されたままの森林も増加しています。森林には、生物多様性保全機能、地球環境
保全機能、土砂災害防止機能・土壌保全機能、水源涵養機能、快適環境形成機能、保健・レクリエー
ション機能、文化機能、物質生産機能などの多面的機能があります。これらの機能を発揮させるため
には、現在行われている森林整備に加え、木材生産による森林の循環利用を図り、森林の再生・保全
につなげることが望まれています。また、木材の炭素貯留効果、ウッドマイレージからも地域産木材の
利用推進が望まれます。
一方、木質バイオマスの利用可能量は、木材利用量に比例して増加する特性があります。地球温
暖化防止のためにも、増大する木質バイオマスを効果的に利用することが望まれます。
そこで、市内の温泉施設など特に熱需要の多い施設に給湯・暖房用として木質チップボイラーを導
入し、林地残材や製材端材等をチップ化して燃料として利用する事業を想定します。
燃焼後の灰は、農地への還元や釉薬にも活用できます。
林業
(主伐現場
間伐現場)
・林地残材
(土場残材等)
・広葉樹
チップボイラー
温浴施設、公共施設等
地域の工場
木質チップ
木灰
農地 等
チップ化
製材工場
製材端材
(樹皮等)
図表 7-1 木質バイオマス導入プロジェクトの流れ
(1) 導入新エネルギーと導入施設・設備
・導入新エネルギー設備 :木質チップボイラー(林地残材等)
・導入対象施設
:大滝温泉
遊湯館
(2) 導入システムの検討
道の駅に併設した温泉施設である大滝温泉遊湯館は、現在はヒートポンプを用いた電気による温
泉加温と、LPG を用いた給湯用バックアップボイラーにより給湯を行っています。入湯客は平日で
100 人弱、土日には 200~500 人程度であり、奥秩父を訪れる観光客へ市の取り組みをアピールす
る格好の施設となることが期待されます。
127
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
図表 7-2 大滝温泉遊湯館 ひのき風呂
図表 7-3 大滝温泉遊湯館 ヒートポンプチラー
【資料:委託会社撮影】
木質バイオマスボイラーは、従来の化石燃料利用機器に比較して依然として高価であることから、
当該施設で採算性の最も高いボイラー規模を選定する必要があります。そのため、木質バイオマスボ
イラーでベース需要を対応し、既存の化石燃料ボイラーをピーク負荷需要に対応すること等、相互補
完システムとすることが合理的であると考えられます。そこで、大滝温泉遊湯館に木質チップボイラー
を導入する場合のシステム構成を 図表 7-4 に示します。
図表 7-4 木質チップボイラーシステムの構成図
給水
浴 槽
木質チップ
シャワー
熱交換器
バックアップボイラー
熱交換器
貯湯タンク
チップボイラー
また、バイオマスボイラーは、熱需要量がボイラー規模の 30%以下の場合には稼働しないという
特性があります。図表 7-5 は大滝温泉遊湯館の時間別熱需要変動から、300kW(258,000kcal)規
模のボイラーを導入した場合、その規模の 30%の供給ラインを表しています。この場合、年間を通
じた平日の熱需要をチップボイラーで対応できることを示しています。
‐ 128 ‐
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
熱需要(kcal/h)
夏季(平日)
夏季(土日)
冬季(平日)
冬季(土日)
800,000
700,000
600,000
[ 300kWボイラーの最大供給ライン ]
[ ボイラー熱供給ライン(30%)]
500,000
熱需要がこれを下回って
いる時間帯はボイラーが稼働
しない。この場合、年間を通
じた平日の熱需要を全てチッ
プボイラーで対応することが
できる。
400,000
300,000
200,000
100,000
0
(100,000)
0時
2時
4時
6時
図表 7-5
8時
10時
12時
14時
16時
18時
20時
22時
時間別熱需要変動とボイラー規模の検討
(3) 期待される効果
大滝温泉遊湯館に導入するチップボイラーの規模としては、熱需要変動を勘案すると、300kW
規模のチップボイラーが最適規模と考えられます。この導入時に期待される、電力及び LPG の削
減量、CO2 削減量を以下に記します。
木質チップボイラーシステムを導入することにより、現状のヒートポンプでの消費熱量の全て、及
び LPG 消費量の一部をチップボイラーで代替でき、年間 170t の CO2 を削減できます。
図表 7-6
大滝温泉遊湯館へのチップボイラー導入効果の試算
木質チップボイラー
システム
設 置
電力消費削減量
約 398,552kWh/年
LPG 消費削減量
約 149m3
化石燃料削減率
約 82%
【前提条件】
現行電力使用量: 約 398,552 kWh/年
【導入規模】
チップボイラー定格出力: 300 kW
【想定される初期投資費用】
CO2 削減量
約 170 t-CO2/年
現行 LPG 使用量
: 約 3,338m3/年
約 38,000 千円(建屋等設置工事費等込み)
129
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
(4) 導入に関する課題
木質チップボイラーは現在化石燃料焚きボイラーに比較して費用が高いため、ボイラー規模の選定
にあたっては、経済性等の詳細な検討を行う必要があります。また、チップサイロやチップボイラー本
体の設置に、重油ボイラーの 5 倍~10 倍程度のスペースを要するため、敷地内のどの箇所に新たに
ボイラー設置スペースを設けるかが重要な課題となります。
<参考:熱需要設備の規模と、その規模に対応可能な木質バイオマス燃焼機器の種類>
本調査で検討している導入候補施設と、その規模に対応する木質バイオマスエネルギー利用機器
との特性については、一般的に下図のような導入の傾向があげられます。
利用規模
10kW ・・・・・・・・・・
個人住宅
~30kW
100kW
200kW
集合住宅
~100kW
300kW
農業用ビニールハウス
25kW~250kW
100MW
施設(大)・大工場・発電施設
1,000 kW~10MW
施設(中)・中小工場
300kW~1,000kW
ペレット(業務用)
(30kW~500kW) ※自動
技術的可能
(10kW~30kW)
10MW
大都市レベル
100MW~
学校・病院など
100kW~500kW
ペレット(家庭用)
(1kW~50kW)
1,000kW
温浴施設・宿泊施設
100 kW~1,000kW
利用対象
木質
バイオマス
エネルギー
利用機器
500kW
技術的可能
(500kW~1,000kW)
木質チップボイラー(30kW~) ※自動
技術的可能
(3kW~50kW)
木質ガス化発電(30kW~3,000kW) ※自動
薪(まき)
(20kW~100kW)※手動
本調査の対象機器
図表 7-7
木質バイオマス燃料別利用形態
‐ 130 ‐
本調査の対象外機器
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.2.2
木質バイオマスコージェネレーションシステム導入プロジェクト
現在秩父市の吉田元気村では、日本初の商用機となる木質バイオマスのコージェネレーションシス
テム(熱電併給システム)が稼動しています(P31)。このモデル事例を 1 つの契機として、民間事業者に
よる小規模分散型の木質バイオマスコージェネレーションシステムの各地域への導入が進むことが期
待されます。
以下では、大滝温泉一帯への熱電併給を想定した試算結果を示します。350kW の発電機を導入
し、発電効率は 23%、熱効率は 50%と想定しました。発電した電力については大滝温泉を中心とする
地区一帯で全量が消費可能であると仮定しました。熱消費先は大滝温泉の部分のみを想定し、他の
近隣温泉旅館等への熱供給は考慮せず、としました。この場合、発電に伴い大量に発生する熱につ
いては供給能力に余裕があることから、木質バイオマスのコージェネレーションシステムの導入にあた
っては、通年の安定した熱の消費先を確保することが重要となります。解決策の一例としては、地域熱
供給システムを構築することなどが考えられます。
図表 7-8 大滝温泉一帯へのコージェネレーションシステム導入効果試算
木質バイオマス
コージェネレーション
システム
設 置
電力消費削減量
約 2,644,922kWh/年
LPG 消費削減量
約 2,755m3
化石燃料削減率
約 99%
131
CO2 削減量
約 1,132 t-CO2/年
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.2.3
木質バイオマスボイラー導入プロジェクト(農業用ビニールハウス)
秩父市内ではビニールハウスを利用した農作物の栽培が行われており、従来はこの加温に重油等
の化石燃料が使用されていました。このビニールハウスからの CO2 排出量を削減するため、化石燃料
ボイラーを代替するチップボイラーの導入を図ります。この農業用チップボイラーの導入により、生産時
に発生する CO2 発生量を大幅に低減することが可能となります。製造された農作物は「カーボンオフ
セット農作物」として、付加価値をつけて販売することが可能となります。
また、周囲の農地では「ちちぶバイオマス元気村発電所」でガス化発電後に生み出される「チップ
炭」 を購入し、土壌改良剤として散布することが考えられます。この炭を用いて生産された作物につ
いても、元気村発電所における CO2 削減分を有価で購入したと考えられることから、「カーボンオフセ
ット作物」として差別化して売り出すことが可能であると考えられます。
なお、秩父市では 2009 年 1 月より吉田地区のイチゴ農家 2 軒の協力を得て、チップボイラー(5 万
kcal/h を 1 基ずつ)によるビニールハウス加温の実証試験を行っています。国内において農業用ビニ
ールハウスへの温風チップボイラー導入事例は、岩手県・高知県など極めて少ないことから、先進事
例として全国から注目を集めています。
図表 7-9
吉田地区のイチゴ農家に導入された農業用チップボイラー
資料:秩父市役所 提供
‐ 132 ‐
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.2.4
薪ストーブ等導入プロジェクト
(1) 薪ストーブ・暖炉等の普及による地域内林産資源の有効活用
秩父市域には、林地残材・未利用間伐材等の針葉樹、昔は薪炭として活用されていた未利用広葉
樹が数多く存在します。針葉樹を中心として伐り捨てられている林地残材をはじめ、コナラ等の 20~
30 年サイクルで薪として利用できる広葉樹について、薪や炭としての利用を後押しする仕組みを検討
します。
(2) 一般家庭への木質バイオマスエネルギー導入推進方策
一般家庭での木質資源の有効活用方法として、薪ストーブやペレットストーブの燃料としての利用が
考えられます。これらのストーブは、公共施設だけでなく、一般の家庭で利用することができるため、地
域資源を身近なところで使うことができるという利点があります。また、市内の業者で薪ストーブを開発・
販売する動きもあることから、地域の技術を活かしたエネルギー利活用方策として期待されています。
薪ストーブ・ペレットストーブを導入した場合の経済性の検討を行い、それに相当する石油ストーブ
を利用した場合との比較を行いました。導入規模は、薪ストーブで 20 畳程度の室内を暖めるという想
定で試算し、ペレットストーブ、石油ストーブについては同じ規模となる台数分で試算を行いました。
図表 7-10 ストーブの比較
項目
燃料
イニシャル
コスト
燃料費
維持管理費
CO2 削減量
薪ストーブ
薪
80 万円/台
(本体:55 万円/台
+設置工事費)
石油ストーブ
灯油
9 万円 (約 3 万円/台、
灯油ストーブ 3 台で薪スト
ーブ 1 台相当と推計)
5 万円/年
ペレットストーブ
ペレット
10 万円/台
(設置工事費 10 万円 なお
本体はリースにより、30 万円
/台を 2.9 万円/年で可能)
5.4 万円/年
(年間約 1,000kg の薪を使用)
(年間約 900kg のペレットを使用)
(1.4 万円/年/台)
0 円/年(故障等がない場合)
165.8(kg-CO2/年)
1.5 万円/年(年 1 回の点検)
165.8(kg-CO2/年)
0円
-
4.3 万円/年
≪試算前提条件≫
※薪ストーブの試算については、近県で薪ストーブを使用している方からのヒアリング結果を使用した。
※ペレットストーブ使用期間は 4 ヶ月、使用時間は 8 時間と仮定した。
※ペレットストーブは埼玉県のリース事業を活用して導入し、ペレットは飯能のもくねん工房よりバーク(樹皮)ペレットを購入すると仮
定した。ペレットストーブ本体価格、及びペレットストーブ設置費用はもくねん工房 HP より引用した。ペレット価格はもくねん工房
HP より、15kg 袋詰の小口価格で 50 円/kg、輸送費 10 円/kg とした。
※石油ストーブ年間使用期間、使用時間についてはペレットストーブと同様とする。灯油使用量は 0.185L/h、すなわち暖房期間 4
ヶ月当たりの灯油消費量は 0.185×8×30×4=177.6L、3 台で 532.8L とした。
※灯油価格は配達費込みで 70 円/L とした。すなわち、灯油ストーブの燃料費は、532.8×80 ≒ 4.3 万円
※灯油の CO2 排出量については、「温室効果ガス排出量算定に関する検討結果」2002 年、環境省及び「地球温暖化対策の推進
に関する法律施行例第三条」2006 年、環境省 の値を用い、2.49(kg-CO2/L)とした。
薪は、現在は地域の製材工場等で販売もしくは無償で提供されているものも存在します。しかし、地
域内の薪ストーブ使用者にはその情報がなかなか行き渡っていないのが現状と想定されます。
薪の円滑な利用を進める方策として、例えば下記のような方策が考えられます。
●
市の広報紙上や市役所の HP 上で「薪を売ります」「薪を買います」といった掲示板のような情報交
換の場を設け、既存の地域内循環の輪を広げていく
133
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
●
市内に放置されている伐り捨て間伐材を、薪ストーブ使用者の有志(ボランティア)によって搬出し、
その対価として無料で薪用に提供する
●
市内数箇所に、林地残材や剪定枝等を集める共同貯木場(ストックヤード)を設置する。そして、そ
の場所を「薪ステーション」として整備し、日時を決めて市内の薪ストーブ使用者の希望者に取りに
来てもらい、安価に販売する
●
薪ストーブの利用者を中心にファンドを募り、薪のオーナー制度を設ける。ファンドを原資として、
伐採・搬出などの作業を地元の森林組合等に委託し、また山主への使用料が必要な場合には、
その費用もファンドから捻出することが想定される。一方、ファンドの報酬として得られる薪の量は
市販の薪を購入する場合よりも有利に設定し、また自ら下草刈り等の作業を手伝った場合には、
その分の特典がつくように設計する
このような、薪の供給者と市内のユーザーとの連携を秩父市が積極的に仲立ちする取り組みによっ
て、森林整備を進め、地域の資源を活かし化石燃料を削減することが可能となります。
(3) 地域住民が主体となった、木質バイオマス資源の活用・森林再生に向けた活動事例
長野県伊那市長谷地区では、地域住民が主体となった木質バイオマス資源の活用・森林再生への
取り組みが行われています。南アルプスに広がるカラマツ主体の村有林は、手入れが行き届かず搬出
しても赤字となる放置林というのが現状ですが、薪炭材としての有効利用、健全な森林の育成へ寄与
するために、循環型エネルギーシステムの展開を実行中です。そのシステムの普及啓発活動を行なっ
ているのが、長谷地区の NPO 法人「薪の会」です。NPO 法人「薪の会」(以下「薪の会」)は、持続可
能な社会に向けた、家庭暖房用エネルギー:木質系燃料(薪)の利用を図るために、住民・自治体・森
林組合との交渉を積み重ね、独自の木質資源調達体制・販売供給体制を形成しています。
長谷地区は木質資源に対して依存が高い山間地域によく見受けられる地域です。住民の薪ストー
ブ利用率が 13.7%であることからも、伐り捨て間伐材などの未利用の木質資源を利活用できる潜在的
環境にあるといえます。しかし、森林所有者側・供給側だけに好都合な条件であっても、薪の需要は伸
びません。薪ストーブのユーザー拡大に結びつけるためには、薪の安価な提供・薪の簡易な取扱い・
薪ストーブを利用する楽しみなど、住民に対して効果的に普及啓発していく必要があります。
そこで「薪の会」では、自治体から助成金を得て、薪ストーブの利用を促進するフェアの開催、毎年
10 回~20 回ほどの「薪刈りツアー」の実施、山林所有者から独自に調達した薪の低価格販売を行っ
ています。平成 7 年からスタートしたこの取り組みは、平成 20 年現在、自治体から間伐補助金を得て、
国有林・村有林・私有林の所有者と直接契約し、林地残材・間伐材・河川支障木などを調達、場合に
よっては会員独自で集材し、「薪の会」の施設にて乾燥、生産工程を経て、近隣のユーザーに販売し
ています。現在、「薪の会」の会員は 40 名ほどにまで増え、資源の発掘調査、作業の施業・安全講習
会、小水力発電による薪生産プラントの研究開発も行いつつ事業の安全化・効率化に努めています。
また、フェアや薪刈りツアーを通して、より多くの市民に森づくりの仕組みを伝え、森林資源の有効
活用につなげる普及活動をしています。更にストーブ新規設置者へのアドバイス、保育園へ薪を提供
するボランティア活動を地域に対して試みています。
こうして「薪の会」は、市民参加型の森林整備保全事業の受け皿となる組織体制を形成しながら、持
続可能な森林と経済の関係構築に貢献しています。
‐ 134 ‐
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.2.5
既存水車の動力利用活性化プロジェクト
吉田地区の石間川、荒川地区の寺澤川の計 2 箇所の既存水車稼動箇所において、粉挽き等の動
力として積極的に利活用を行い、観光資源としても広くアピールしていくことを目指します。
【ケース 1】
・活用する新エネルギー設備:水車
・導入対象施設
:吉田地区石間川(水車小屋)
石間交流学習館の脇には水車小屋があり、石間川の水を動力にして水車を回しています。現在
は、地域住民が生活の中で水車を動力にした石臼を利用し、農作物の粉挽きなどを行っています。
石間交流学習館では、水車の石臼で挽いたそば粉でそば打ち体験等も行われています。しかし、
実際に動力として水車が利用される時間は極めて少なく、水車が「空回り」の状態にあることが大半
となっています。
図表 7-11
石間交流学習館そば
水車
図表 7-12
水車上流に作られた堰(石間川)
資料:委託会社撮影
現段階で石間川の流量は不明ですが、季節変化がさほどなく、水車小屋へ敷設されている水路
の水深は 10cm、水車部分の落差は 1.0m、水車を動かす水量は毎分 270L 程度と推計することがで
きます。水車は年間を通して安定的に回っていることから、この動力を生かした臼ひき等を対外的に
幅広くアピールし、地域住民以外にも利用者を拡大していくことが考えられます。また、水車の動力
利用も古くて新しい「新エネルギー」であることを踏まえ、近隣の吉田元気村の環境学習とも連携し、
自然エネルギーの体験の場を拡大していくことも望まれます。
135
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
【ケース 2】
・活用する新エネルギー設備:水車
・導入対象施設
:荒川地区寺澤川(水車小屋)
石間地区と同様に、荒川地区寺澤川においても寺澤川を利用した水車小屋があり、石臼の動力
として利用されています。
図表 7-13
寺澤川の水車小屋
図表 7-14
水車小屋へ流れる水路
資料:委託会社撮影
石間川の水車と同様に、寺澤川においてもこの動力を生かした臼ひき等を対外的に幅広くアピー
ルし、地域住民以外にも利用者を拡大していくことが考えられます。また、荒川地区の名物の蕎麦
の実をこの水車で挽き、「自然エネルギーで挽いた粉を使った、打ち立ての蕎麦」として道の駅等で
提供することも考えられます。
現段階で寺澤川の流量は不明ですが、調査時の目測による取水付近の河川流量は少ない状
況です。水車部分の落差は 1.0m 程度あるものの、取水パイプや水路の規模が小さく、日によって
は水車が回らない場合もあります。このことから、将来的に長時間安定して水車の動力を利用する
場合には、改良工事を施し流量の増量を図る必要があると言えます。
‐ 136 ‐
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.2.6
マイクロ水力発電導入プロジェクト
既存の水車稼動箇所、農業用水路等の有望地点に発電設備を導入し、施設や家庭等における電
力利用を検討します。なお、水力は発電のみならず水車のように動力としても利用出来るため、電力と
動力の併用運転も考慮します。
マイクロ水力発電機の導入試算に当たっては、秩父市内においてマイクロ水力発電機の導入が有
望と考えられる地点を庁内の関係部署や新エネルギービジョン策定委員会からの情報等をもとに抽出
し、簡易な現地調査・ヒアリングを行いました。以下にその結果を記します。
図表 7-15
試算式
期待可採量
備考
中小水力発電の期待可採量推計方法
期待可採量(MWh/年)=重力加速度(m/s2)×流量(m3 /s)×落差(m)×利用率
×発電機効率÷103
・重力加速度:9.8m/s2
・流量:地点ごとに設定(既存調査結果、現地調査実測等による)
・落差:地点ごとに設定(既存調査結果、現地調査実測等による)
・利用率(年間の水位変動・発電機の故障等も考慮に入れた率):80%
・発電機効率:70%
・年間運転時間:地点ごとに設定(農業用水等は、季節によって流量が大きく変化する)
(1) 導入新エネルギーと導入施設・設備
【ケース 1】
・導入新エネルギー設備:マイクロ水力発電設備
・導入対象施設
:橋立浄水場
マイクロ水力発電設備の導入に当たっては、「落差」と「流量」が大きいほど多くの発電量を得ること
ができることから、この 2 つの要素を兼ね備えた地点が最も有望な地点ということになります。
浄水場・下水処理場のように、年間を通して大量の水を流している施設の場合には、上流の河川
から取水する際の落差や、調整池または貯水池から処理場までの落差等を有していれば、流量次
第で発電の可能性が有望であると言えます。
図表 7-16
橋立浄水場
資料:委託会社撮影
137
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
そこで、市内の全ての浄水場のうち、流量についての 1 つの目安として年間配水(給水)量が 100
万m3 を超えている施設を抽出しました。この場合、浄水場に流れ込む水量、もしくは浄水場から配
水される水量を用いた発電が有望であると判断されます。以下でその 2 箇所を示します。
・橋立浄水場 (年間配水量:約 550 万m3)
・別所浄水場 (年間配水量:約 400 万m3)
上記の 2 箇所について現地調査を行ったところ、下記の調査結果を得ました。
・ 橋立浄水場では、取水は浦山川からポンプで汲み上げているものと橋立川から落差(3m 程度)
を利用して取水しているものがある。配水は一部圧力をかけて各家庭へ給水している。
橋立浄水場は大正年代に建設された設備で老朽化が著しいことから、数年以内に大規模改修
工事を行う予定である。
・ 別所浄水場では、取水は全て荒川の取水場からポンプで汲み上げている。各家庭への給水は
基本的には自然流下であるが、圧力が低い地域にはポンプアップを行っている。一方で、急速
ろ過池から配水池への間は自然流下(落差 4.8m)である。
これらのヒアリングの結果から、橋立浄水場の設備改修に併せて、取水口へのマイクロ水力発電
機の設置について検討します。
図表 7-17
橋立浄水場(橋立川取水口→着水井)へのマイクロ水力発電装置導入効果算定結果
項 目
値
単 位
備
9.8
m/s2
流量
0.085
m3 /s
※
③
落差
3.0
m
※
④
日稼働時間
24
時間/日
⑤
年稼動日数
365
日/年
⑥
年間稼働時間
⑦
利用率
80
%
⑧
発電出力
2.0
kW
⑨
発電効率
70
%
⑩
年間発電量
12
MWh/年
⑪
電力の二酸化炭素排出係数
⑫
二酸化炭素排出削減量
①
重力加速度
②
8,760
時間/年
0.425 kg-CO2/kWh
5.1
t-CO2/年
考
④×⑤
①×②×③×⑦
⑧×⑨×⑥
東京電力 2007 年度
1kWh あたり排出係数
⑩×⑪
※現地ヒアリングによる。
※発電した電力の消費先としては、街灯としての利用や、浄水場の事務所内での自家消費等が考えられる。
‐ 138 ‐
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
【ケース 2】
・導入新エネルギー設備:マイクロ水力発電設備
・導入対象箇所
:秩父用水 (旧秩父東高校前)
横瀬川左岸より取水し、途中、山裾を縫い、沢を越え、市街地を抜けて下流の田畑に水を供給し
ている秩父用水の中で、旧秩父東高校の校門前の水路は比較的壁面の高さを有し、スペースも存
在することから工事が容易であると考えられます。ここに高さ 2m 程度の堰を設置し、落差を作ること
でマイクロ水力発電機の設置が可能です。
秩父用水の源流地点における流量は、3 月 20 日から 0.011m3/s、6 月 1 日から 0.351m3/s、同月
21 日から~9 月 30 日までが 0.262m3/s、それ以外の秋・冬季の流量はゼロであり、これに周囲から
流入した雨水等が加わった状態で当該地点の流量は時期により大きく変化します。高い発電効率を
望める落差の適切な設置方法の考案と、年間を通じた利用が出来ないことが大きな課題となります。
また、実際の利用にあたって、農業用の水利権や年間を通した流量の変化等を考慮し、用水の上
流部で水の溢れる被害が起こらぬよう注意する必要があります。他にも、落ち葉やゴミ等の異物の流
入による故障が起こらぬよう、定期的な周辺の整備が必要です。
図表 7-18
旧秩父東高校の校門前を流れる秩父用水
【資料:秩父市役所提供】
139
図表 7-19
同箇所の用水の流れ
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
図表 7-20
秩父用水(旧秩父東高校前)へのマイクロ水力発電装置導入効果算定結果
項 目
値
単 位
9.8
備
①
重力加速度
②
流量
0.262
m/s
③
落差
④
日稼働時間
⑤
年稼動日数
⑥
年間稼働時間
⑦
利用率
80
%
⑧
発電出力
4.1
kW
⑨
発電効率
70
%
⑩
年間発電量
8.5
MWh/年
⑪
電力の二酸化炭素排出係数
⑫
二酸化炭素排出削減量
m3 /s
※
2.0
m
※
24
時間/日
122
2,928
日/年
時間/年
0.425 kg-CO2/kWh
3.6
※現地調査結果からの推計値による。
‐ 140 ‐
考
2
t-CO2/年
6 月~9 月の 4 ヶ月間
④×⑤
①×②×③×⑦
⑧×⑨×⑥
東京電力 2007 年度
1kWh あたり排出係数
⑩×⑪
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
【ケース 3】
・導入新エネルギー設備:マイクロ水力発電設備
・導入対象施設
:吉田地区石間川(水車小屋)に併設
前述したように、吉田地区石間川の石間交流学習館の脇には水車小屋があり、石間川の水を動
力にして水車を回しています。現段階で石間川の流量は不明ですが、季節変化がさほどなく、水車
小屋へ敷設されている水路の水深は 10cm、水車部分の落差は 1.0m、水車を動かす水量は毎分
270L 程度と推計されています。この水車に改造を施して発電機を取り付け、粉を挽くときには動力
利用、それ以外の場合には発電利用といった形で切り替えを行えるようにすることも考えられます。
水車小屋部分での発電は、石間川からの取水量を増やすために給水路及び水車位置等の改良
工事を施し、流量の増量を図った上で最大 30W程度の発電出力と推計され、新エネルギーの普及
啓発効果を狙ったマイクロ水力発電設備の併設が可能と考えられます。
なお、一方で水車小屋から河川へ落とす落差も 1.0~1.5m 程度有りますが、河川内での設置等
は増水時を考慮した場合や、河川法上の規制もあり、こちらへのマイクロ水力発電機の設置は困難
であると考えられます。
以上を考慮し、流量を 0.01m3/s、落差 0.5m を利用するマイクロ水力発電機を既存の水車小屋に
設置するという改造を行った場合、期待可採量は下記のようになります。
図表 7-21
吉田地区石間川へのマイクロ水力発電装置導入効果算定結果
項 目
値
単 位
備
9.8
m/s2
流量
0.01
m3 /s
※
③
落差
0.5
m
※
④
日稼働時間
24
時間/日
⑤
年稼動日数
365
日/年
⑥
年間稼働時間
⑦
利用率
⑧
⑨
①
重力加速度
②
8,760
時間/年
80
%
発電出力
0.04
kW
発電効率
70
%
⑩
年間発電量
24
kWh/年
⑪
電力の二酸化炭素排出係数
⑫
二酸化炭素排出削減量
0.425 kg-CO2/kWh
10
※現地調査結果からの推計値による。
141
kg-CO2/年
考
④×⑤
①×②×③×⑦
⑧×⑨×⑥
東京電力 2007 年度
1kWh あたり排出係数
⑩×⑪
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
<参考>
① 1kW以下のマイクロ水力発電装置の販売例(1) 神鋼電機㈱ リッター水力発電
資料: 神鋼電機㈱ホームページ 「リッター水力発電装置」 ※1 秒間に 10 リットル程度の流量でも発電可能
http://www.shinko-elec.co.jp/litter/Defalt.htm
【特長】
1. 水力発電部の水量に変動がある場合は太陽光発電との併用システム設計が可能
2. 軽量 0.5kW タイプで約 50Kg 以下、1kW タイプで約 75Kg 以下
3. 小型設計 0.5kW タイプ(約 100 万円)、1kW タイプ(約 145 万円)共に 540×450×500mm
4. 取水口の異物除去装置は別途準備
5. 取水導管は塩ビパイプかプラスチック製ホースを利用
② 1kW以下のマイクロ水力発電装置の販売例(2) (有)オンワード倉澤 (長野県辰野町)
長野県中川村において、用水路導水管式の超ミニ水力発電が実際に導入されている。落差が約
7m の場所に、直径 5cm のパイプ(導水管)で水を落とし、直径 28cm、幅 5cm の羽根8枚の水車に受け、
最大 200W 程度を発電できるとしている。本体価格は 20-30 万円程度である。
発電した電力は、近辺4軒の軒先にある常夜灯に利用しており、余剰電力は付近にあるイノシシな
ど有害鳥獣を防ぐ電気柵の電力にも使用している。
なお、代表の倉沢久人氏は他にも多種多様な新エネルギー・省エネルギー機器の開発に取り組ん
でいる。例えば、トレーニング用のエアロバイクを活用した「足こぎ式発電装置」を完成させている。ゆっ
くりとこぎながら液晶テレビを見ることができる電力を確保できる。
資料:倉沢久人氏からのヒアリングによる。
‐ 142 ‐
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
(2) 今後の方向性について
国では、毎年 1 月頃に「ハイドロバレー計画開発促進調査」という、中小水力発電に関する 100%
の調査補助事業を公募しています。この調査は、ここ数年エネルギーセキュリティの確保・地球温暖化
防止対策等の観点から、中小水力発電の導入事業化への意欲が地方自治体に見られるようになった
一方で、地方公共団体においては、その経験が乏しいため、独自の計画・推進は難しい状況にあるこ
とから、国の施策として地方公共団体による水力開発を支援するという目的に沿って行われるもので
す。
調査対象は、地方公共団体が実施する自家消費を基本とした水力発電所の開発計画です。自家
消費を基本とする小水力発電所を核に、地元が選定する水力地点について、発電計画の概略設計を
行い、自家消費による事業化の可否判断を行います。この計画策定において、工事費および自家消
費による便益等の算定を行い、事業の概要と経済性を明らかにすることが可能です。
資料:ハイドロバレー計画開発促進調査の概要 NEF ホームページ
http://www.nef.or.jp/topics/pdf/20081217_01_01.pdf
この公募事業は、提案のあった公募のうち「採算性の高いと思われる箇所から採択を行う」というの
が基本となる採択基準ですが、特に発電出力の規模用件等はありません。申請にあたっては事前に
候補地を設定する必要があります。例えば、前項で挙げた吉田地区石間川の水車小屋をはじめとする、
今回の地域新エネルギービジョンで掲げた候補地点に加え、
・市内の浄水場の中で、流量は少ないが大きな落差を持つ取水口を有する施設
・年間を通してある程度の水量を確保できる農業用水路
・秩父市内の山林に位置し、既に堰が築かれ落差のある水の流れを有する砂防ダム
等の候補地点を申請前に絞り込むことができれば、提出の要件を満たすと考えられます。
143
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.2.7
家庭用太陽光発電・太陽熱利用設備導入プロジェクト
日照に恵まれている秩父市内には、太陽光発電設備を導入している一般住宅が約 300 戸存在して
います。また、市民アンケートの結果から、一般家庭の約 5%が太陽熱利用機器を導入していると推計
しています。そして、同じく市民アンケートでは、「導入に興味関心を持っている新エネルギー」の第 1
位は太陽光発電設備となっています。すなわち、秩父市の一般家庭において最も興味関心を持たれ
ている新エネルギーが太陽光発電及び太陽熱利用であると言えます。そこで、以下では一般家庭へ
太陽光発電及び太陽熱利用設備を導入するプロジェクトを考えます。
【ケース 1】
・導入新エネルギー設備:太陽光発電設備(設置パネル面積:31.5m2 出力 3.5kW)
・導入対象施設
図表 7-22
住宅用の設置例
:一般家庭(秩父市内)
片流れ(左:3.4kW)、寄棟屋根(中央:4.2kW)、陸屋根(右:3.48kW)
資料:京セラ株式会社ホームページ http://www.kyocera.co.jp/prdct/solar/spirit/example/home.html
神奈川県庁 HP 今日から我が家も発電所
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/kankyokeikaku/energy/pv/example.html
図表 7-23 秩父市内の一般住宅における太陽光発電パネルの導入効果算定結果:3.5kW
項 目
① パネル設置費/kW
② システム規模
③ 設置費
④ 年間発電量
⑤ CO2 排出係数
⑥ 年間 CO2 排出削減量
値
単 位
70 万円/kW
3.5 kW
245 万円
備
考
設置工事・諸経費込み (業者ヒアリング結果)
①×②
秩父市内において、最適傾斜角で設置した場合
の期待可採量 1kW あたり
3,000 kWh/年
848kWh/年 (賦存量調査)より、四捨五入
0.425 kg-CO2/kWh 東京電力 2007 年度 1kWh あたり排出係数
④×⑤
1,275 kg-CO2/年
なお、一般市民向けのアンケート結果では、太陽光発電設備の設置を望む声が最も多く、投資回収
年数として 5 年以内を望む声が過半数を占めています。
‐ 144 ‐
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
【ケース 2】
・導入新エネルギー設備:太陽熱利用設備 (自然循環型太陽熱温水器:設置面積 3m2)
・導入対象施設
図表 7-24
:一般家庭(秩父市内)
自然循環型家庭用太陽熱温水器
図表 7-25
湯の加温例
月別変化
資料:NEF ホームページ http://www.nef.or.jp/what/whats02.html
図表 7-26 秩父市内の一般住宅における太陽熱温水器の導入効果算定結果
項 目
① 太陽熱温水器設置費
② システム規模
③ 年間集熱量
年間集熱量
(都市ガス換算)
⑤ CO2 排出係数
⑥ 年間 CO2 排出削減量
④
値
単 位
30 万円
3 m2
備
考
設置工事・諸経費込み (一般値)
秩父市内の一般住宅に、②の規模の太陽熱温水
器を最適傾斜角で設置した場合(P86)
6.26 GJ
136 m3/年
3.0 kg-CO2/ m3
478 kg-CO2/年
排出係数一覧(P72)
④×⑤
太陽熱温水器は古くから使われているもっとも簡単な太陽熱利用機器です。ポンプなどの循環するた
めの動力は用いない自然循環型の場合、集熱器と貯湯槽が一体となっており、水栓より高い位置の屋根
上に設置します(図表 7-24)。 貯湯槽に給水された水は下部の集熱器へ流れ込み、太陽熱で暖められ
比重が軽くなり、貯湯槽へ戻りお湯が蓄えられます。貯湯量は 200~250L、集熱器の面積 3~4m2 のも
のが主流です。太陽熱利用は、機器の構成が極めて単純であるので、他の新エネルギーに比べて機器
の価格も比較的安価であるという特徴を有しています。
太陽熱は給湯および暖房に利用できることから、住宅用の場合にも、風呂・キッチン・リビング等、多く
の場所で活用されています。太陽熱温水器のような水を循環させるシステムでは、通常の好天日には約
60℃の温水が得られます。太陽エネルギーは年間変動があることから、温水は真夏には 80℃近くまで上
昇することもある一方で、冬は日射量が低下するため、追加の燃料が必要な場合もあります。しかし、この
場合でも、冷たい水から温水を作るよりも燃料が少なくなるため、燃料消費が低減できます。
145
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.2.8
廃食油からのBDF製造プロジェクト
本市では、市内全域の学校給食調理場や家庭等からの廃食油を回収し、吉田元気村にてBDFを
製造し、吉田元気村の小型クレーン付トラックや市の移動図書館車にて利用する取り組みを行ってい
ます(P110)。現在、プラントにはまだ余力があるため、稼働率を上げることで、より多くのBDF製造を可
能にし、今後、ごみ収集車や路線バスなどへの利用拡大の方向性が考えられます。
図表 7-27 吉田元気村の BDF 製造装置と BDF
図表 7-28 BDF を燃料にして走行する公用車
資料:委託会社撮影写真
公共施設
民間事業者
家
回収
BDF
軽油代替燃料
に精製
(公用車等)
庭
図表 7-29 吉田元気村における BDF 製造のフロー
現状
バイオディーゼル
BDF 利用実績
約 3,000L/年(平成 20 年)
軽油削減量
約 3,000L/年
CO2 削減量
約 7.9t-CO2/年
燃料(BDF)利用
追加
BDF 利用拡大目標量
約 2,000L/年
軽油削減量
約 2,000L/年
‐ 146 ‐
CO2 削減量
約 5.2t-CO2/年
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
図表 7-30
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
項 目
処理能力
年間稼動可能日数
年間処理能力
製造実績
追加製造可能量
リーディング目標
CO2 排出係数
CO2 排出削減量
図表 7-31
既存 BDF 製造プラントでの追加製造可能量
値
50
300
15,000
3,000
12,000
2,000
2.62
5.24
単位
L/ 7h
日/年
L/年
L/年
L/年
L/年
kg-CO2/L
t-CO2/年
備 考
吉田元気村(1 日 7 時間稼動)
吉田元気村(土日、夏期・冬期休暇除く)
①×②
平成 20 年 1 月~平成 20 年 12 月
※家庭及び公共施設からの期待可採量が、
約 11,000L/年 (P110)
BDF1L で軽油 1L を代替すると想定
⑥×⑦ ※追加削減量
市報ちちぶ(2009 年 1 月号)より
147
廃食油回収の呼びかけ
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.2.9
都市と山村のカーボンオフセットプロジェクト
東京都区内等の大都市においては、市内から大量に発生する二酸化炭素排出量削減方策として、
市内において削減を行うだけでは限界があることから、山間地域の森林における二酸化炭素の吸収
方策に目を向ける動きが高まっています。また、二酸化炭素排出抑制に対して義務を課せられつつあ
る大企業やエネルギー多消費工場等においても、二酸化炭素吸収源としての森林整備に資金を投資
する動きが活発化しています。こうした、都市の二酸化炭素排出量を山村の森林整備等で相殺する
「都市と山村のカーボンオフセット」事業を、秩父市においても実施し、森林保全に資するだけでなく地
域間交流の活性化につなげることが期待されます。
今回の新エネルギービジョン策定において、先進地調査(P263)で訪問した長野県伊那市では、新
宿区との間でカーボンオフセットに関する協定を締結しています。この協定は、都市部と山間部におけ
るカーボンオフセット協定としては全国初となる試みです。新宿区では平成 17 年度に新宿区省エネル
ギー環境指針を策定し、区内の二酸化炭素排出量を 22 年度に平成 2 年度比 125 千t増に抑え、32
年度に同 124 千t削減するという目標を掲げています。しかし、15 年度時点では同 692 千t増となって
おり、二酸化炭素削減が課題となっています。そこで、友好都市であった伊那市との間に、協定を締
結しました。
平成 20 年に、新宿区と伊那市は環境保全の連携に関する協定書の調印式を行いました。友好協
定を結んでいる新宿区と伊那市が連携して伊那市の豊かな森林を保全することにより、二酸化炭素の
吸収量を増加させるとともに、住民相互の自然体験学習や地域交流の機会をつくることを目的とし、新
たな地球温暖化対策の一つに位置付けています。
新宿区と伊那市間における、環境保全の連携に関する協定の主な内容は、以下の 4 点です。
(1)伊那市の間伐が必要な市有林において、新宿区が間伐・下草刈り等の整備事業を支援し、健全
な森林の育成を促進する。→平成 20 年度は新宿区が伊那市市有林 30ha の間伐費を全額負担
(2)伊那市内の森林から出された間伐材を、新宿区内の事業等に有効活用できる環境を整備する。
→新宿区内の公共施設に、伊那市産のカラマツを利用した机や椅子を設置。公共施設の内装
材としての利活用も今後検討。
(3)新宿区立環境学習センターの地球温暖化対策事業の一環として、伊那市の平地林を活用した
下草刈り・枝打ち(ヒノキ・アカマツ等)・植林(広葉樹)など、区民・事業者を対象とした体験学習事
業を実施する。
→平成 20 年度より、新宿区内の小学校のうち 9 校の小学 5・6 年生が夏季の移動教室で伊那市
を訪問。平地林で間伐・木工体験。
(4)新宿区が実施した伊那市内の森林保全事業による CO2 削減量を、新宿区内の二酸化炭素排
出量から相殺する。
→現在、二酸化炭素削減量を信州大学・長野県等と協議して推計中です。
‐ 148 ‐
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
新宿区の資源である「人」の動きと、伊那市の資源である「森林資源」利用の動きのイメージを
以下に示します。新宿区から間伐体験や森林学習、環境学習の場として伊那市の森林を訪れま
す。その際伐った木や上伊那森林組合等による間伐等で搬出された材を、伊那市内で新宿区民
間伐を行うことで、
が利用できる施設の建設に利用したり、新宿区の公園のベンチやストーブ燃料として利用すること
CO2 吸収量を増加す
で人と資源の動きが生まれます。
ることができる。新宿区
化石燃料の代替として木
材を使うことで CO2 削減
に貢献できる
の CO2 排出量を相殺
新宿区
伊那市
資源の動き
(1)公園の柵・ベンチ・ツリーハウス
(2)学校・公共施設の木質化
(新築またはリフォーム)
(3)ペレットストーブの暖房
(4)ペレットボイラーの公共施設への導入
間伐材の利用
材としての
利用
間伐材の利用
(5)陶芸用燃料(高遠・長谷)
(6)新宿区民の山村留学施設
燃料としての
利用
(7)新宿区民専用ログハウス
(5)陶芸用燃料(区内施設)
・小・中学生
・高校生
・大学生
・市民・NPO
・事業所
・ファミリー
間伐・森林体験・環境学習
【ステップ①:1 泊 2 日のプログラム】
・カラマツ林の下草刈り、間伐
・下草刈り、枝打ち(ヒノキ、アカマツ等)
・植林(広葉樹)
【ステップ②:コミュニティビジネスとしての発展】
・山村留学
・週末農林業 ・企業畑、企業林
施設の利用
都市から人や資金
・区民の森
の 流 れ が でき 、 地
域の活性化につな
森林体験でリフレッシュしたり、都市に
人の動き
がる
はない資源を農村部と共有できる
図表 7-32 新宿区と伊那市間のカーボンオフセットモデル事業
将来構想(案)の一例
【資料:新宿区役所資料を一部改】
秩父市では、荒川流域を中心とした上流・下流域の都市との交流や、西武線沿線地域の各都市
との交流事業を実施しています。こうした都市とカーボンオフセット協定を締結し、双方にメリットのあ
る森林整備・二酸化炭素排出削減の筋道を立てることが期待されます。
149
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.2.10
環境学習・環境交流プロジェクト
恵まれた自然環境は、先人たちのたゆまぬ努力によって守り育まれてきたかけがえのないものです。
秩父市では、地球規模の視野に立ち「自然を軸とした地域づくりや人づくりに取り組む」ことをテーマと
して、市内における環境学習を推進し、スウェーデンのシェレフティオ市との先進的な環境交流・連携
事業を発展させていきます。
(1) 吉田元気村を軸とした、地域内外への環境学習の推進
秩父市では、合角ダムの麓にひろがる「吉田元気村」を「次世代型環境学習施設」として位置づけて
います。小中学生などの地球温暖化に関する環境教育をはじめ、新エネルギーを体感できる環境学
習プログラムを通し、エネルギーに対する理解を深めていくために、効果的な普及啓発、学習プログラ
ムの提供を念頭に整備してきました。
図表 7-33 吉田元気村
図表 7-34 ちちぶバイオマス元気村発電所
資料:秩父市提供
同施設は、全国初の木質系バイオマス・ガス化・ガスエンジン・コージェネレーションや、バイオマス
を使った排水処理設備(サニテーション調査)、バイオ燃料製造、太陽光発電システム等を有していま
す。また、実際にエネルギーが活用されており、仕組みや稼動状況にふれることができます。さらに、
炭焼き体験や乾留実験、森林整備等の体験プログラムを実践しています。
埼玉県立大宮武蔵野高等学校による 2 泊 3 日で行われるエネルギー教育では、秩父市と秩父広域
森林組合木材センターとの協力で環境学習のフィールドとして活用されるなどの例もあり、今後も、全
国の様々な地域や団体と協力しながら「自然を守り、育てる」活動へと大きくフィールドを広げます。
図表 7-35 ソーラークッカーでご飯炊き
‐ 150 ‐
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
図表 7-36 丸太価格の実際を学ぶ様子
(秩父広域森林組合木材センターにて)
資料:大宮武蔵野高等学校ホームページ
図表 7-37 下草刈り作業体験
こうした各種環境学習プロジェクトを通じて小中高生が得た知識や経験は、実際の生活における省
エネ行動の実践や新エネルギー等の活用に生かしていくことができます。そして、エネルギーに対す
る理解を多くの市民に広げていく際の担い手として活躍していくことが期待されます。
また、地域のイベント等の開催に合わせて新エネルギーをアピールするブースを出展したり、新エネ
ルギー教室を開催して「新エネルギーを体感できる」場を各所に提供したりすることも考えられます。
図表 7-38
イベントにおける森林関係の展示ブース例
資料:委託会社撮影写真
他にも、経済産業省の実施する「新エネルギー教室」事業の積極的な活用が考えられます。この事業
は、次代を担う児童・生徒を対象に、エネルギー問題や地球温暖化問題等を背景とした新エネルギーの
必要性や様々な新エネルギーについてわかりやすく説明し、正しく理解して頂くことを目的に小学校・中
学校を対象に無償で実施されるものです。なお、平成 20 年度は秩父市立大田小学校で 4~6 年生を対
象に新エネルギー教室を開催しています。専門の講師を招き、太陽光・風力・バイオマスエネルギー等
について体育館での実験を交えつつ分かりやすい説明を行いました。
151
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
(2) スウェーデン王国シェレフティオ市と秩父市との産業・環境連携交流
秩父市では、スウェーデンのローレンツ・アンデション知事をはじめとする訪問団が秩父市の木質系
バイオマス発電事業への取組を視察したことをきっかけに、森林バイオマス関連の共同事業の可能性
などを考え、スウェーデン王国シェレフティオ市と産業連携交流協定を 2007 年 3 月 28 日に調印しま
した。
シェレフティオ市はスウェーデン北部にあり、人口は約 72,000 人。豊かな森林資源を生かした木材
加工業や、バイオマスに関連した産業・技術が発達しているため、この協定でバイオマスエネルギー、
木材加工、福祉など地域社会システムの分野での共同事業の推進を目指す方針です。
図表 7-39
スウェーデンのバイオマス発電所
図表 7-40
スウェーデンの林業現場
資料:秩父市役所提供
2007 年には、スウェーデンの先進的な環境施策を学び今後の交流に役立てるため、秩父市から1
年間シェレフティオ市に職員が派遣されました。一方、シェレフティオ市のウールンド市長、アンデショ
ン知事ほかスウェーデンからの訪問団も同年に秩父市を訪れました。吉田元気村に完成したばかりの
「ちちぶバイオマス元気村発電所」や、市内の福祉施設や木材プレカット工場などの視察を行いました。
アンデション知事は、「埼玉県にはバイオエネルギー問題に取り組む関係機関、研究機関、企業など、
生産性の高い共同プロジェクトを行うための好条件が揃っています。そのため、 (温室効果ガス排出
抑制を定めた)京都議定書に従い、環境のためにお互いに話し合い、ともに学んでいきたい。」と語っ
ています。
秩父市が「姉妹都市」ではなく、「産業連携交流」といった調印を結んだのは、両市の交流がバイオ
マス事業や木材加工などの産業技術の分野から始まったことによるもので、《環境重視・経済回生》の
政策を展開している本市にとって、スウェーデンの経済政策は参考になると考えたことが理由です。シ
ェレフティオ市の産業を市民の皆様に紹介し、お互いに経済活性化が図れる交流を進められるように
「産業連携交流」といたしました。
また、森林が多くを占めるスウェーデンでは、木の価値をどれだけ高められるかということに焦点を
置いた産業技術交流を中心としつつ、バイオエタノールの研究などもしていきたいという考えがありま
す。当市としては、産業交流フェアやシンポジウムを開催する他、スウェーデンからの研修生の受け入
れを通して、市民の方々にもスウェーデンの産業を紹介し、理解を深めて、秩父市内における事業活
動の参考にしてほしいと考えています。それに伴い、今後は、両市の産業経済の発展と両市民の国際
交流を図り、新エネルギー施策に積極的に生かしていく予定です。
‐ 152 ‐
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.2.11
エコスクールプロジェクト
エコスクールとは、「環境を考慮して設計・建設され、環境を考慮して運営され、環境教育にも活か
せるような学校施設」を指す言葉です。 すなわち、環境を考慮した学校施設として、施設面・運営面・
教育面の3つの切り口から、
・地球、地域、児童・生徒に、やさしく造る
・建物、資源、エネルギーを、賢く・永く使う
・施設、原理、仕組みを、学習に資する
ことを目指し、施設の設計・建築を行い、適切な管理・運営・教育がなされている学校を指します。
秩父市内の小中学校のうち、新築・改修を控えている小中学校について可能な限り環境面に配慮
した計画を練ることが、エコスクールの立ち上げの第一歩となります。庁内の各部署とも連携体制を構
築した上で、未来の秩父を担う子供たちにとって理想となる学校のデザインが求められます。
資料:文部科学省 HP 環境を考慮した学校施設(エコスクール)の現状と今後の整備推進に向けて(平成13年度)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shisetu/006/toushin/020302/g.htm
学校への普及啓発目的の助成事業の代表例として、財団法人広域関東圏産業活性化センター
(GIAC)が、グリーン電力基金をもとに行う助成事業が挙げられます。この事業は関東地区の 20 校程
度を対象に、環境教育目的の小規模発電設備を設置する場合には対象設備費の 85%を上限として
最大 200 万円の補助を行っています。ただし、応募多数の場合は地域性を考慮した上での抽選となり
ます。
例えば、飯能市立加治東小学校では平成 15 年度にこの助成事業を用いて、風力・太陽光ハイブリ
ット型発電機(0.38kW)を設置しました。校庭に造った水田とビオトープ池の水管理を行うための揚水
ポンプの電源として用いており、理科や総合学習の授業にも効果的に活用されています。
図表 7-41
資料: 飯能市立加治東小学校への導入事例
ハイブリッド発電機の小学校への導入
財団法人広域関東圏産業活性化センター(GIAC)HP
http://www.giac.or.jp/green/gr005_0701.html
153
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.2.12
災害に強いまちづくり:自然エネルギー導入プロジェクト
太陽光発電やマイクロ水力発電などの新エネルギーは、その場でエネルギーが得られることから、
独立したエネルギーシステムとしての利用価値があります。そのため、災害などで停電した時にも、エ
ネルギーを確保することが可能であり、避難場所の電源としても活用できます。また、これらのエネルギ
ーシステムでは利用場所まで新たに送配電線を引く必要がないため、これまで近隣に送電線の存在
しなかった山間部においては有用な独立電源となります。
今回の調査で実施したアンケートでは、児童・生徒からの秩父市への要望として最多であったのは
「地震などの災害の時に使える設備を作ってほしい」
という回答で、全回答者の 60%近くを占めました(P219)。非常用電源としての自然エネルギーの利活
用に、児童・生徒からも大きな期待が寄せられていると言えます。
そこで、災害時の避難場所となる公共施設や小中学校などに、太陽光発電設備やマイクロ水力発
電設備を設置し、通常時は照明等に、災害時には独立電源として使用することが考えられます。 通
常時のエネルギー消費の削減ばかりでなく、夜間の防犯にも役立つ上、児童・生徒を中心とした普及
啓発にも大きく役立つものと期待されます。
図表 7-42
資料:シャープ株式会社 HP
非常用太陽光発電設備のイメージ例
ソーラー・LED照明灯 LN-LW3A1 (130 万円程度、32W 蛍光灯と同等)
http://www.sharp.co.jp/corporate/news/070717-a.html
※同社によれば、震度 5 以上の地震を検知すると、2 日間は終夜フル点灯(蓄電池の限界まで)する「防災モード」も搭載
しており、周辺が停電した場合の防災灯として使用可能としている。また、年間の発電量は約 150kWh であり、商用電
源を使用する場合に比べ、CO2 排出量を年間 48kg 削減するとしている。
‐ 154 ‐
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
また、一般家庭のベランダや庭などに設置可能なミニ太陽光発電システムを市で常備し、災害時
には避難箇所で独立電源として使用することも考えられます。例えば、以下に示すようなコンパクト
な太陽光発電システム(※)を市で購入し、地震や水害等の災害時には停電の起こった地区の避難
箇所に移設し、独立電源として利用するというものです。
また、このミニ太陽光発電システムは、平常時は市民の希望者に貸し出し、各家庭で照明・テレ
ビ・パソコン等の電源として実際に使用してもらうことも考えられます。例えば新潟県上越市では、市
内への積極的な太陽光発電設備導入策の一環として、ミニ太陽光発電システムを市内 25 家族に 1
年間ずつ貸し出しています。こうした普及啓発活動と災害対策としての自然エネルギー導入方策と
の融合により、更に効果的な自然エネルギー導入が図れるものと期待されます。
※図表 7-43 のシステムの場合、本体価格は約 18 万円、出力約 20W、1 日の平均発電量は約 30Wh。
図表 7-43 ミニ太陽光発電システムの例
図表 7-44
上記システムの使用例
資料:株式会社ハウスサポート HP
http://solar.sapone.jp/
図表 7-45
ミニ太陽光発電システムの無料貸出例
資料:上越市役所広報 2007 年 3 月 1 日付 http://www.city.joetsu.niigata.jp/koho/2007/3.1/22_23.pdf
155
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.2.13
普及啓発用の太陽光発電設備導入プロジェクト
駅前や観光施設・公園など、秩父市民や観光客の数多く訪れる場所に小型の太陽光発電設備を導
入し、自然エネルギーの利活用を幅広く恒常的にアピールする事業展開を検討します。発電した電
力は、単に電灯として利用するだけでなはく、電動レンタサイクルの充電や携帯電話の充電に用いる
など、利用者に「体感」してもらうことのできる様々な利用方策が考えられます。
(1) 太陽光発電を電源とする電動レンタサイクル事業
図表 7-46
ミューズパークレンタサイクル
資料:ミューズパーク
図表 7-47
HP
http://www.muse-park.com/
電動自転車レンタサイクル(文京区)
資料:文京区役所 HP (レンタル料金:一日 500 円)
http://www.city.bunkyo.lg.jp/sosiki_busyo_dokan_cycle_rentacycle.html
例えば、坂道の多い秩父の町の移動・散策用には、観光客向けに電動アシスト自転車を導入して
レンタサイクルとして貸し出しを行うことが有益と考えられます。この電動アシスト自転車の充電用電
源として小型の太陽光発電装置を導入することにより、自然エネルギーの「力」を多くの人に体感し
てもらい、秩父の更なる魅力を引きたてることが可能となります。また、この太陽光発電設備は日中
は電動アシスト自転車の充電用に用い、それ以外の余剰分については蓄電して夜間の LED 照明
に用いることにより、一日を通して有効に太陽エネルギーを消費することができます。他にも、過去 3
回秩父市と西武鉄道㈱が共同で実施している「サイクルトレイン※」との連携も考えられます。
※秩父市が設立した秩父サイクルトレイン実行委員会と西武鉄道が、秩父地方の自然と歴史を感じていただくサイク
リングイベントとして、参加者に都心から秩父地方へ臨時電車に乗車していただくことで、秩父市内の観光の活性
化と観光需要の拡大、および公共交通機関の利用促進を目的としているもの。また、自転車で各コースを楽しん
でいただくことや、自動車を使わず自転車でそのまま乗車できる臨時電車を運転することにより、二酸化炭素の排
出量が削減され、環境にも優しい取り組みである。
この「自然エネルギーで充電した電動アシスト自転車」事業を実施することにより、観光地としての
秩父の集客力を高めるとともに、幅広い層への自然エネルギーの普及啓発効果が期待されます。
‐ 156 ‐
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
(2) 小型ソーラー発電機器の無料貸し出し・体感事業
駅の待合室や市役所のロビー、図書館等の中で日当たりの良い場所に小型のソーラー充電器を
常備し、訪れた市民が無償で携帯電話やノートパソコン等の充電を行えるような設備を整えることが
考えられます。下図に示すような小型のソーラー充電器は単価も安価であり、比較的容易に市内の
各所に配備することが可能です。こうした「手にとって触れることのできる、自然エネルギー活用機
器」を、携帯電話等の充電といった身近な作業の一環として多くの市民に体感してもらうことにより、
生活への自然エネルギーの導入イメージが掴みやすくなるものと期待されます。
また、秩父市の機械産業の特性を生かし、LED を用いた充電式の小型ソーラーライトを開発・改
良し、小中学生の登下校時の防犯・安全対策用に役立てるといった取り組みも考えられます。
図表 7-48
携帯電話ソーラー充電器
資料:デジタル家電総合情報サイト Digital Freak
図表 7-49
LED を用いた充電式ソーラーライト
HP (携帯電話ソーラー充電器:実勢価格 9,800 円前後)
http://www.rbbtoday.com/cgi-bin/news/pict/20081125/55970/jpg/55970-01links.html
通販専科 JAT HP (暗くなると自動的に LED を発光させる。W50×D78×H32.5 実勢価格 4,000 円前後)
http://www.2han-senka.com/other/solarlight/
7.2.14
エコツアープロジェクト
現在秩父市内では、県・市及び市内外の NPO 団体等を中心に、森林セラピーやエコツアーの取り
組みを行っています。豊かな自然や文化を体験しながら、新エネルギーを活用した観光施設や廃校を
活用した研修施設などを利用するなどの活動が行われています。これらの既存のエコツアーに新エネ
ルギーの普及啓発プログラムを連動させ、ものを大切にする秩父をアピールすることで、第 1 次産業の
活性化と観光客誘致を両立して行ないます。また、吉田元気村だけでなく、これらツアーの拠点となる
施設に新エネルギーを導入し、新エネルギーに満ち溢れた「古くて新しいエネルギー自給生活」を体
験してもらうことで、新エネルギー導入のモデルとなるような利用を行います。
157
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.2.15
省エネルギー・各種革新的エネルギー利用技術の導入プロジェクト
今回の調査の主対象は新エネルギーの導入としました。しかし、 6.3 項の CO2 削減目標 (P118)で
触れたように、新エネルギーの導入だけではCO2 排出量の 10%削減を 2012 年までに成し遂げること
は困難です。そこで、省エネルギー・各種革新的エネルギー利用技術の導入にも力を入れる必要があ
ると考えられます。例としては以下の方策が挙げられます。
・日常生活における省エネルギーの徹底
・都市ガスを用いたコージェネレーションシステムの導入検討
・天然ガス自動車等のクリーンエネルギー自動車の導入促進
‐ 158 ‐
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.3 中・長期的プロジェクトの検討
7.3.1
公共施設への太陽光発電設備導入プロジェクト
公共施設への太陽光発電設備導入事例も、吉田元気村(30.6kW)をはじめ 3 箇所存在します。家庭
へのアンケートや児童・生徒向けアンケートの結果からも、市役所や小中学校といった公共施設への
太陽光発電設備の設置を求める声が多くあがっています。そこで、公共施設の中で秩父市役所歴史
文化伝承館、秩父市立南小学校、秩父市立秩父第一中学校を取り上げ、導入の試算を行いました。
図表 7-50
秩父市役所歴史文化伝承館
図表 7-51
南小学校
図表 7-52
秩父第一中学校
資料:秩父市ホームページ http://www.city.chichibu.lg.jp/cgi-bin/odb-get.exe?WIT_template=AM040000
秩父市立南小学校ホームページ http://www.chichibu-stm.ed.jp/~minamisho/
秩父市立秩父第一中学校ホームページ http://www.chichibu-stm.ed.jp/~dai1chu/
【ケース 1】
・導入新エネルギー設備:太陽光発電設備
・導入対象施設
①
②
③
④
⑤
⑥
項 目
パネル設置費/kW
システム規模
設置費
年間発電量
CO2 排出係数
年間 CO2 排出削減量
:秩父市役所歴史文化伝承館
値
85
20
1,700
19,842
0.425
8,433
単 位
万円/kW
kW
万円
kWh/年
kg-CO2/kWh
kg-CO2/年
備
設置工事・諸経費込み
考
①×②
業者見積による
東京電力 2007 年度 1kWh あたり排出係数
⑨×⑬
【ケース 2】
・導入新エネルギー設備:太陽光発電設備 ・導入対象施設:秩父市立南小学校
①
②
③
④
⑤
⑥
項 目
パネル設置費/kW
システム規模
設置費
年間発電量
CO2 排出係数
年間 CO2 排出削減量
値
80
37
2,960
39,000
0.425
16,575
単 位
万円/kW
kW
万円
kWh/年
kg-CO2/kWh
kg-CO2/年
159
備
設置工事・諸経費込み
考
①×②
業者見積による
東京電力 2007 年度 1kWh あたり排出係数
⑨×⑬
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
【ケース 3】
・導入新エネルギー設備:太陽光発電設備
①
②
③
④
⑤
⑥
項 目
パネル設置費/kW
システム規模
設置費
年間発電量
CO2 排出係数
年間 CO2 排出削減量
値
80
47
3,760
49,635
0.425
21,095
単 位
万円/kW
kW
万円
kWh/年
kg-CO2/kWh
kg-CO2/年
・導入対象施設:秩父市立秩父第一中学校
備
設置工事・諸経費込み
考
①×②
業者見積による
東京電力 2007 年度 1kWh あたり排出係数
⑨×⑬
秩父市では、今後公共施設の設備改修時には太陽光発電設備等の自然エネルギー導入を検討
する方針であり、中長期的な計画に立脚した上で導入構想を練る必要があります。
7.3.2
風力発電設備導入プロジェクト
秩父市の平野部は風が弱く、風力発電機の立地には適しませんが、東京都境~山梨県境にかけ
ての山間部には年間平均風速が 6m/s以上と強い地点が多く、国立公園や県立自然公園内での各
種規制条件をクリアすることにより、今後の地球規模でのCO2 排出量削減等の社会情勢を考
慮すれば、風力発電設備についても立地可能性が高まると考えられます(P91)。以下では、秩
父市における風力発電の期待可採量推計結果(P93)をもとに、秩父市有林内に 500kW級の発電
機 1 基を設置すると仮定して、導入試算を行いました。
図表 7-53
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
項 目
風車設置費/kW
システム規模
本体価格及び工事費
系統連携費
年間維持管理費
年間発電量
CO2 排出係数
年間 CO2 排出削減量
値
30
500
15,000
3,750
750
2,000
0.425
850
風力発電設備の試算例
単 位
万円/kW
kW
万円
万円
万円/年
MWh/年
t-CO2/MWh
t-CO2/年
備
考
平均実績値:設置工事・諸経費込
①×②
③の 25%と想定
修繕費、保険料、人件費等で③の 5%と想定
平均風速 7.5mと想定(P93)
東京電力 2007 年度 1MWh あたり排出係数
⑨×⑬
※導入費用・維持管理コスト等は、NEDO 新エネルギー導入ガイドブック 2008 P75~P83 を参考に推計した。
※系統連携して売電を行うのではなく、自家消費を行うことを想定可能であるが、今回の設置候補地は山間地のため大規
模な需要先は現状では存在しない。そこで、需要先の開拓が必要となる自家消費ではなく、系統連携を想定した。
風力発電の発電実績は、風の状況によって大きく変動するため、事前の風況観測や分析に少なくと
も 1 年はかかります。また、設置に際しては土木工事や系統電源との連携が必要となることから、事前
の協議にも時間を要します。風力発電機の建設候補地点における風況観測については、NEDO の
100%助成調査事業「風力発電フィールドテスト事業」の活用が可能です。
‐ 160 ‐
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
また、風力発電設備の設置には多額の資金を必要とすることから、その資金調達に関しても他市町
村との連携を行うことが考えられます。
一例を挙げれば、東京都中野区では
「山間部の風力発電で稼いだお金で、都市部に太陽光発電を普及する」
という取り組みを開始しています。立地場所は茨城県常陸太田市の山間部で、安定した風力が得られ、
風力発電装置が既に 7 基稼働している場所です。ここに中野区が風力発電の風車を新たに設置し、
電気を売った収入で太陽光発電装置など自然エネルギーの普及を区内で進める事業で、2008(平成
20)年度は 1,350 万円をかけて基本計画策定や現地調査を実施しています。
構想では、総額 15 億円(うち、NEDO 等の半額助成 7.5 億円を想定)をかけて出力 2,000kW の風
車(高さ 70-80m)を 3 基設置し、年間 350 万 kWh を発電して東京電力へ売電するとしています。
中野区は、収入から維持管理費を引いても年に約 6,000 万円の収益があると試算しており、この収益
を、区内の公共施設の太陽光発電装置設置や企業、個人の設置支援にあてることを想定しています。
161
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.3.3
生ごみからのメタン発酵プロジェクト
秩父市の一般家庭及び事業所から発生する生ごみを収集し、簡易な装置でメタン発酵を行いメタン
ガスを有効活用するプロジェクトを想定します。メタンガスは LPG や都市ガスを代替するガス燃料とし
て、近隣一般家庭の厨房での利用が考えられます。
例としては、埼玉県の小川町で現在行われている生ごみのガス化が挙げられます。小川町では、住
民、NPO と協力して、家庭生ごみを分別収集し、液体肥料(液肥)とメタンガスを作る「バイオガス資源
化」の実証事業を平成 13 年度から行っています。300 世帯相当分(住民約 100 世帯と給食残飯)から
の生ごみ回収は小川町が行い(外部に委託された業者が収集・運搬)、バイオガスプラントへの生ごみ
投入と維持管理は、NPO法人「小川町風土活用センター(通称:NPOふうど)」の会員を中心に行わ
れています。そして小川町は NPO ふうどに対して生ゴミ処理委託料を支払うとともに、バイオガス施設
の必要機器の一部の無償貸与をしています。プラントから生産されるバイオガスは、プラント設置農家
で燃料ガスとして利用されています。バイオガス製造時に付随して発生する液肥は、周辺の農地で利
活用されています。生ごみの分別収集の協力世帯へは、生ごみ処理経費の節約分程度に相当する
「生ごみクーポン券」が発行され、「小川町農業後継者の会(通称:わだち会)」という農家組合の野菜
農家が作った「地場の野菜」と年2回引き換えることができます。
バイオガスの成分は一般的にメタン 60%、二酸化炭素 40%で構成されていて、脱硫装置でガス中
に微量に含まれる硫黄分を取り除いた後、熱量は比較的低いものの、都市ガスや LP ガスと同じように、
煮炊き用、ボイラーや発電機、自動車用の燃料などに使用することができます。メタン発酵では堆肥化
と比べ、熱によるエネルギーの損失が少なく、生ごみのエネルギーを効率的に利用することができま
す。
小川町では、生ごみをバイオガス施設で処理した場合、焼却処理に比べ処理コストが軽減されてい
ます。平成 13 年度における埼玉県平均の可燃ごみ処理コスト(収集、焼却、埋め立て、人件費等含
む)は 44 円/kg で、対して手作りの実証バイオガス施設での処理費用は約 12 円/kg となっており、生
ごみ収集コストが焼却の場合と同じで、液肥の処理・運搬の必要がない場合には、約 20 円/kg のコスト
低減が期待できると試算されています。
図表 7-54
生ごみの回収作業
図表 7-55
施設全景
資料: 秩父市役所提供
‐ 162 ‐
図表 7-56
液肥の貯留施設
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
図表 7-57
資料:NPO ふうど HP
埼玉県小川町における生ごみのバイオガス化事業模式図
http://www.foodo.org/b-guss/index.html
NPO ふうどでは、地域で生ごみからのバイオガス利用を推進するための条件として、下記の3つ
の要素の活動をうまく連動させながら運営することを必須としています。
●
バイオガスの原料を供給する家庭・各種産業
●
農業のための資材(肥料・土壌改良材他各種微生物資材)とバイオガス生産を行うバイオガス事業
●
生産されたエネルギーと農業資材を利用し、再生産を行う地域の産業 とりわけ農業
この実現のためには、新エネルギーの生産・利用推進と同じく、あるいはそれ以上に、もう一つの
生産物である有機質資材(バイオガス液肥)をしっかりと利用していく農業者の育成が不可欠です。
バイオガスプラントの採算性にとって液肥を活用することと、原料収集・液肥配送距離を短くすること
の 2 点が重要とされ、秩父市においても、地域の農家と連携し液肥の有効利用先を確保し、生ごみ
収集と液肥配送を適切に計画した上で、生ごみのバイオガス化事業を構築することが望まれます。
163
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.3.4
エコエネルギー住宅プロジェクト
秩父市内の 20~30 戸程度の住宅地を対象に、新エネルギーを積極的に導入した「エネルギー自
給率 100%」となるような改修を行うプロジェクトを想定します。
市営住宅等の集合住宅の場合には、太陽光発電設備・熱利用設備、木質バイオマスによる熱供給
設備、生ごみのメタン発酵によるメタンガス供給設備等を設置し、日常生活におけるエネルギー消費を
全てその場所で生産する形が考えられます。戸建て住宅地一帯を整備する場合には、20~30 戸程
度の宅地一帯を「エコタウン」として再整備し、各戸へ太陽光発電設備や太陽熱利用設備を取り付け、
配管を埋設して木質バイオマスボイラーによる給湯・冷暖房システムを行うことが考えられます。
後者の例としては、山口県が民間事業者等の協力を得て造成した「安岡エコタウン」が挙げられます。
ここでは NEDO の実証事業の一環として冷暖房、給湯利用の地域冷暖房システムを構築しており、冷
水及び温水の供給は、ペレットボイラーによって行っています。また、雨水を貯留してトイレや散水に利
用する他、各家庭から発生した生ごみは堆肥化しエコタウン内の農園で野菜栽培に利用しています。
図表 7-58
資料:安成工務店 HP
安岡エコタウン
冷温水の供給イメージ図
http://www.yasunari.co.jp/share/yasuoka/ecop/page02.html
図表 7-59
安岡エコタウン
各所の写真
資料:山口県農林水産部森林企画課 森林バイオマス推進班 より提供
‐ 164 ‐
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.3.5
菜の花プロジェクト
滋賀県を発祥として近年全国に広がりを見せている、地域住民参加型の燃料製造の取り組みとして
「菜の花プロジェクト」があげられます。この取り組みは、食用油の原料となる菜の花やひまわりを栽培
し、その油を食用に利用した後、BDF として利用することで、遊休農地の有効利用、農業の活性化、
観光資源や環境学習への活用などの取り組みを展開することができるというものです。菜種を栽培し
食用油を得て、それを販売し収益を確保して、石けんや軽油代替燃料にリサイクルするという、地域内
の資源循環を目指す一連のプロジェクトは、現在吉田元気村において BDF 製造工場を稼動させてい
る秩父市においても有益な展開が可能であると考えられます。遊休農地の活用、環境教育の実施、地
場産業の育成、更なる環境意識の向上といった効果が期待されます。
図表 7-60
菜の花エコ・プロジェクトの資源循環サイクル
資料:「バイオマス・ニッポン パンフレット」2006 年、社団法人日本有機資源協会
ドイツでは、こうした菜種油が食用と区別して燃料用に栽培され、バージンオイルのまま燃料として
利用されています。しかし、これは燃料と燃料化の副産物(油粕:飼料、グリセリン)の売価を含めて免税
の優遇措置やエネルギー作物栽培の国家補助があり、また、石油燃料への炭素税・環境税などの課
税効果もあり高い競争力を持つという特殊な背景があることが重要な成功要因です。
一方日本では、燃料用の菜種油に対してここまで手厚い補助はないため、菜種油をそのままエネル
ギー利用しても全く採算が合いません。これに対して食用としての菜種油は、例えば滋賀県東近江市
(旧愛東町)では 500ml の菜種油が 800 円程度で販売されているように、比較的高値で取引されて
います。現状では、菜種を食用油として使用した後に廃食油を回収し、それを BDF 化して軽油代替
燃料として公用車やバス等に使用するという「菜の花エコプロジェクト」の形をとることが、普及段階とし
て望ましいと考えられます。
165
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.4 新エネルギー導入推進方策の検討
実際に新エネルギーの導入を進めるには、ビジョンを策定するだけでなく、行政の率先的な導入や
広報・啓発活動に加えて、市民・事業者・行政が一体となって導入に向けて努力し取り組んでいく必要
があります。
そこで、市民・事業者・行政の各主体が、新エネルギー導入に自ら取り組んでいかなければならない
役割を以下に示します。
7.4.1
実施主体別の役割の明確化
新エネルギーに関する認識は一般に未だ低いため、新エネルギー導入を促進するためには、地
球環境問題やエネルギー問題に対する認識を高め、新エネルギーの必要性を市民・事業者が理解
することが必要です。そこで、秩父市において新エネルギーの普及啓発及び導入を図るために、行
政・市民・事業所が果たしていくことが望ましい役割について、以下に取りまとめます。
7.4.2
行政の役割
平成 9 年 9 月、「新エネルギー利用等の促進に関する基本方針」、「エネルギーを使用するものとし
て国民が果たす役割」、「エネルギーを使用するものとして事業者が果たす役割」が閣議決定され、国
民や事業者が自ら新エネルギーの導入に取り組むことの重要性が示されました。
現在、本市においては木質バイオマスのガス化発電、廃食用油の回収や BDF の製造、新エネルギ
ー設備の導入など、新エネルギーに関する取り組みを行っていますが、市民を積極的に巻き込んだ取
り組みにまでは、あまり結びついていません。その理由として、取り組みの有効性や具体的な活用方法、
支援制度等を知る機会の少ないことがあげられます。
そこで、行政の役割として、公共事業として率先して公共施設等に新エネルギーを導入し、市民の
目に触れる機会を創出することが重要であると言えます。また、行政活動において自ら新エネルギー
導入に取り組むことで、地球温暖化と資源の枯渇問題を抑制し、市民に健全な環境を提供し保全する
義務があります。それとともに、新エネルギーに対する知識や各種の支援制度の認識を高める等ハー
ド面での取組のみならずソフト面の対応が重要となります。市民へ最新の情報を随時提供し、また支
援策等を講ずる必要があります。
まとめると、行政が率先して新エネルギー導入に取り組み、公共的な環境保全策として事業を実施
するとともに、市民・事業者へ新エネルギーに関する情報を提供し、その導入を推進する制度を創出
し普及に努めていくことが必要となると言えます。
‐ 166 ‐
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
① 公共施設等への率先的導入
◆ 公共施設の新設や改築の際に新エネルギーの導入、既存の公共施設における計画的な導入
を推進
◆ 長期計画に基づく計画的な導入
◆ 市の取り組む事業において、新エネルギーの導入及び活用方策を優先的に検討
◆ 新エネルギーの導入とともに、省エネルギーを推進
① 市民や事業者への新エネルギー・省エネルギーに関する推進と支援
◆ 市民や事業者に新エネルギーへの理解が深まるような情報発信および省エネルギーの推進呼
びかけ
◆ 学校教育や社会教育の現場で環境・エネルギーに関する教育を実施、新エネルギーの必要
性の啓発
◆ 市民・事業者の取り組みやすい新エネルギーの導入基盤整備の強化
② 地域活性化のための新エネルギーの導入
◆ 地域の特徴を反映する第 1 次産業を生かし、様々な新エネルギーの利用による地域課題の解
決と地域振興に貢献
◆ 市内各地で取組まれる新エネルギー利用の市内外発信、森林セラピーやエコツーリズムなどと
融合した観光振興への貢献
③ 国・県・周辺自治体への働きかけ
◆ 公共施設等への新エネルギーの導入推進を国・県へ支援要請
◆ 新エネルギー利用に関する技術開発促進を国・県へ要請
◆ 近隣の自治体や同様の地理的特徴を持った地域との協力・交流促進
7.4.2
市民の役割
次世代へ快適な環境を引き継いでいくために本市においても、市民が日常生活や NPO 活動の中
で、新エネルギーの導入や省エネルギーの実践を自らの役割として取組んでいくことが期待されてい
ます。
167
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
① 家庭への導入
◆ 家庭へ新エネルギーの導入
◆ 自家用車・営業車の購入・更新時にクリーンエネルギー自動車の優先的な導入
④ 家庭における新エネルギーに関する普及・啓発
◆ 家庭や地域内での新エネルギーに関する情報の共有化
◆ 新エネルギー導入に関する各種セミナー等への積極的参加
◆ 廃食用油回収への積極的な協力
⑤ 新エネルギー導入に関する活動
◆ 地域での取り組み、市民団体、NPO 活動を通じた新エネルギーの導入を促進
◆ 各種団体活動を通じた話題提供や共通理解
◆ 行政に対する新エネルギーに関する事業や施策への提言
◆ 集落単位で渓流発電や生ごみガス化発電などの可能性の検討
7.4.3
事業者の役割
新エネルギービジョン推進のためには、技術開発や設備導入などにおいて、地元の事業者が積極
的に関わることが望まれます。地元で生産した新エネルギー設備を地元の施設に導入することで、産
業振興や地域経済の活性化にもつなげることができます。
① 新エネルギービジネスの開発と展開
◆ 農林業・食品産業におけるバイオマス事業化
◆ 建設業における住宅用・業務用新エネルギー機器の事業化
◆ 観光産業における新エネルギーを活用したイメージアップ
◆ 農業用水のエネルギー利用
② 事業所への導入
◆ 事業所へ新エネルギーの導入
◆ 事業所などから排出される未利用バイオマス資源の有効利用
⑥ 事業所における新エネルギーに関する普及・啓発
◆ 事業所での新エネルギーに関する情報の共有化
◆ 新エネルギー導入に関する各種セミナー等へ積極的に参加
⑦ 新エネルギー導入に関する活動
◆ 新エネルギーへの理解・普及のためのシステムの共同設置
◆ 公共施設等への新エネルギー設備導入に対する積極的関与
◆ 観光・自然エネルギー関連プログラム・商品開発などへの積極的関与
◆ 新エネルギー関連機器の積極的取扱い
◆ 新エネルギー導入に関する支援策等について行政に要望
‐ 168 ‐
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.4.4
先導的観点からの庁内推進体制の構築
現在、木質バイオマス・コジェネ施設、BDF 製造設備などの新エネルギーを導入し、二酸化炭素
排出削減及び地球温暖化対策を積極的に推進していますが、更に、それを推進していく必要があると
考えます。
アンケート調査の結果から、地球温暖化に対する市民の意識は高く、また、新エネルギーの特性上、
予算的にもある程度優先的に配分し、市が率先して導入すべきであるとの回答も少なくないことから、
市が先導的に事業を推進していくことは責務であると考えます。
そこで、庁内委員会での横のつながりを強化しつつ、市役所内に既に存在する市長を本部長とした
「地球温暖化対策推進本部」が新エネルギー導入に関する総括的な意思決定を行い、その中に、
「(仮称)新エネルギー導入推進部会」を設け、新エネルギー導入推進・検討を行い、CO2 削減を目的
とした推進体制を構築します。
地球温暖化対策推進本部
決定
本部長 :市長
新エネルギー
導入
副本部長:副市長、教育長
本部員 :部長級
効果
周知
報告、提案、意見
実行組織
CO2 削減
○計画推進責任者会議(課長級)
○計画推進員(主査級)
(仮称)新エネルギー導
入推進部会
図表 7-61
7.4.5
(仮称)新エネルギー導入推進部会
イメージ図
住民・事業者・行政等の間の協働体制づくり
新エネルギーの導入を積極的に進めていくためには、行政主導型の取り組みにとどまらず、市民・
事業者と行政が一体となった取り組みが必要です。さらに、国、県、周辺自治体等との協力・連携体制
を構築していく方向性が考えられます。
そこで、新エネルギーの導入促進に向けての行動を起こすための中核となる組織として、市役所に
加えて事業者・地域 NPO の代表等が加わった検討会議を立ち上げることが考えられます。この会議
が中心となって、新エネルギー導入に際しての市民・事業者・行政の各々の情報・意見の交換、各推
169
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
進状況のチェック・サポートおよび各種問題点に関する検討等にあたることにより、新エネルギー導入
を実施する際に、市民・事業者・行政による連携体制の中心となり具体的な行動を起こす実践グルー
プとしての位置付けとし、新エネルギー導入の拡大を図ります。
今後、この会議が中心となり以下に示す新エネルギー導入に係る推進体制を構築し、新エネルギ
ー導入に努めていくことが考えられます。
また、秩父地域の事業者を中心に組織している、秩父地場産センター・広域秩父産業連携フォーラ
ム「Find Chichibu」においては、自然エネルギーの利用に関して分科会の中で積極的に取り上げ、
太陽光発電等を中心に導入・設置事業を推進していこうという動きもあります。こうした地元の事業者と
も連携を取り、自然エネルギーの地域に根ざした普及を進めます。
資料:秩父地場産センター Find Chichibu
7.4.6
HP
http://www.find-chichibu.jp/
関係部署との調整
円滑な新エネルギー導入推進のため、(仮称)新エネルギー導入推進部会には、企画部門、財政
部門、建設部門等の各部署相互の継続的な情報交換が必須となります。例えば、小学校の改修等の
大規模な建設工事を実施する場合には、建設部門がその情報を(仮称)新エネルギー導入推進部会
に提供し、事務局をつとめる地域エネルギー・環境対策課がその小学校への新エネルギー機器の導
入可能性を速やかに検討できるような体制が必要です。スムーズな情報交換体制を構築します。
7.4.7 フォローアップ体制の構築
新エネルギーの導入に向けた取り組みが継続的に行われるよう、ビジョン策定後のフォローアップも
重要な要素となります。これについては、新エネルギーの導入計画を立案する各部署が PDCA サイク
ルに基づいて年度毎にフォローアップを行う体制を構築することが考えられます。
PDCA サイクルとは、PLAN(計画)・DO(実行)・CHECK(評価)・ACTION(改善)の頭文字を取った
もので、プロジェクト管理の手法の 1 つです。プロジェクトの推進においては、計画(plan)、実行(do)、
評価(check)、改善(action)のプロセスを順に実施し、最後の action(改善)から次のステップの
plan(計画)を導き出すという、連続的・継続的な実行サイクルが確立されることが望まれます。
また、行政の立場からの管理だけでなく、各主体が参画した組織において、これらの協議・検討が自
立的に行われるような体制の確立を図ることが重要です。
‐ 170 ‐
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
図表 7-62
継続的な改善を行うための PDCA サイクル
資料:秩父市地球温暖化対策実行計画(2008 年 3 月)
7.4.8
ビジョン見直しシステムの構築
ビジョン策定後は庁内推進委員会を中心に、各プロジェクトの進捗確認や社会情勢の動向等を踏ま
えたプロジェクトの見直しを随時行います。これらの見直しを行うことで、より実現性の高い計画として
いきます。
総体的なビジョン見直しシステムとして、地球温暖化対策推進本部内に設置する(仮称)新エネルギ
ー導入推進部会と地域エネルギー・環境対策課が中心となり、CO2 削減等の観点から評価します。そ
の方法としては、GHG システム(温室効果ガス排出量 Web 収集管理システム)で CO2 排出量集計を
行い、分析を行います。
各課単位では、行政評価シート中の環境性評価部分に新エネルギー導入推進に関するチェック項
目を充実させ、新規事業化には新エネルギーを導入することを必ず検討させ、更に、ランニングに係る
CO2 削減が図れるような事業計画を行います。
また、各課でも PDCA サイクルを実行し、より実現性の高い計画を立案します。
7.4.9
ビジョンの進捗に関する情報提供等の新エネルギーの導入促進を継続して行うた
めの環境整備
ビジョン見直しシステムでも使用する行政評価シートは、主要な施策の成果報告書として毎年作成
し公開されます。これを利用し、ビジョンの新エネルギー導入進捗状況を情報提供します。
また、効果的な導入促進のため、市広報紙での連載記事等も検討します(詳細はP174)。
171
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.4.10
公共施設における新エネルギー率先導入
秩父市では、平成 20 年 3 月に「秩父市地球温暖化対策実行計画」を策定しました。この計画は、秩
父市の事務及び事業の実施に際し、市役所自らが事業者・消費者の立場から、温室効果ガスの排出
の抑制等の環境保全に向けた行動を率先して実施することにより、市民・事業者の行う環境に配慮し
た自主的な取り組みを促進することを目的とするものです。
図表 7-63
地球温暖化対策実行計画~地球温暖化防止のための秩父市職員率先行動計画~位置付け
資料:秩父市地球温暖化対策実行計画(2008 年 3 月)
この計画においては、秩父市の事務及び事業全体で、平成 24 年度までに平成 18 年度比で温室効果
ガスの排出量(二酸化炭素換算)-6%という削減目標を立てています。
この目標達成のための取り組みとして、各部署共通の配慮事項としては
(1)省エネルギー・省資源活動の実施
(2)廃棄物の減量化、リサイクルの推進 (3)グリーン購入の推進
(4)環境にやさしい設計・施工・管理の推進 (5)建設廃棄物のリサイクル等の推進 (6)緑化の推進
を掲げています。
また、事業部門等においては 9 つの配慮事項を掲げており、うちバイオマス事業の取り組みについて
1 公益的機能の高い森林整備を促進し、未利用間伐材や林地残材の利用を進める
2 バイオマスのマテリアル利用、エネルギー利用の増加を進める
3 バイオマス・コジェネによるクリーン電気と熱の利用を進める
4 使用済みてんぷら油のバイオディーゼル燃料(BDF)化を進め、軽油使用量を削減する
5 地球温暖化対策と資源循環型社会の構築に向けた環境学習を推進する
といった具体的な事項を挙げています。
こうした、地球温暖化対策実行計画に記された、市役所自らの率先的な導入計画を推進します。
‐ 172 ‐
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.4.11
協働体制の核となる地域で活動するリーダー・団体の育成方策の検討
住民・事業者・行政の協働体制を意義あるものにするには、実際に秩父市の各地域で事業を起こす
ための核となる人材が必要となります。一朝一夕でそうした人材を発掘することは困難が伴うことから、
外部から専門家を招き、人づくり・事業プログラムづくり・組織づくりといった育成業務を行うことが考え
られます。この事業の実施により、森林資源の活用・地域活性化・自然エネルギーの普及のために行
政主導で行ってきた間伐体験や薪拾い・植林等のイベント、U・I ターンや交流居住(半分田舎暮らし)
の担い手を住民主導に移すことを目指します。
以下に、環境教育講座を実施するためのインストラクター要請講座の一例を記します。
図表 7-64
環境教育関係の人材育成プログラム(例)
資料:財団法人キープ協会ホームページ
http://www.keep.or.jp/FORESTERS/taikenkai2008.htm
173
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.4.12
地域住民等への効果的な広報・普及啓発活動の検討
新エネルギー普及に向けて市が行うべき取り組みとしては、市民向けアンケートの結果では「市報で
の情報提供」を求める声が 47%と、2 位の「メディアでの情報提供」(18%)、3 位の「市独自の助成制度
の創設」(15%)を引き離して多い結果となりました。この結果から、新エネルギー普及啓発の第一歩と
しては、まずは市報を有効に用いて、継続的に広報・啓蒙活動を検討することが望まれます。例えば、
新エネルギーに関する連載コーナーを設け、木質バイオマス・太陽光・マイクロ水力発電等について
技術の解説や導入に関しての費用などを分かりやすく紹介していくことなどが考えられます。
秩父市では、2009 年 1 月より市報ちちぶに「ちちぶバイオマス物語」と題して、秩父市が取り組む
「バイオマス事業」についての連載を開始しました。この連載では、秩父市が取り組む木質バイオマス
のエネルギー利活用事業をはじめ、効率的な森林作業への取り組みの紹介などを行っています。この
他にも、市報ちちぶにおいて新エネルギーや環境に関してのイベントのお知らせ、リサイクルや省エネ
ルギーの呼びかけ等も行っていく予定です。
図表 7-65
市報ちちぶ(2009 年 1 月号)掲載例
図表 7-66
掲載した秩父市の取り組みイメージ図
また、必要に応じて、本ビジョンや助成制度(国、NEDO 技術開発機構など)に関する説明会、シン
ポジウム等を行うことが考えられます。
なお、本事業においては、新エネルギーに関する市民の理解や協力を促進するために、新エネル
ギービジョンの概要版としてパンフレットを 1,000 部作成しました。新エネルギーとは何かを分かりやす
‐ 174 ‐
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
く説明し、新エネルギー導入による環境負荷の低減効果を具体的な数値で盛り込み、その上で秩父
市内における導入事例と今後の方針を示しました。また、視覚的に新エネルギーに関する知識を得ら
れるように工夫しました。この概要版パンフレットは、小中学校の各教室への配布等を予定していま
す。
他にも、この新エネルギービジョン報告書を PDF 形式で秩父市役所 HP に公開し、市役所・図書館
をはじめとする公共施設や小中学校等において冊子を配布します。
図表 7-67
配布した概要版パンフレット
イメージ図
資料:委託会社作成
こうした効果的な広報・啓発活動を実施することにより、市民に対して、新エネルギーへの興味関心
を引きだし、本市が新エネルギー関連施策を進めていく上で、市民の理解を得ながら、市民と協力し
て取り組んでいくことが可能となると考えられます。
175
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.4.13
市独自の助成制度の創設などの検討
市民向けアンケート結果(P197)では、新エネルギー機器を導入しない理由として「初期投資費用が
高いから」との回答が 54%と、2 位の「集合住宅・借家だから」の 15%を大きく引き離しており、この初
期投資費用の負担をいかにして減らすかが最大の課題であることが分かりました。
そこで、各家庭における初期投資負担を軽減する助成制度について検討を行います。
(1) 秩父市による環境価値(CO2 排出権)の買い取り事業
太陽光発電設備を設置した家庭に対して、設置時の導入補助ではなく、「設置によって生み出され
た環境価値(CO2 排出量削減分)」の部分について発電量に応じた助成を行うことを考えます。具体的
には、電力会社が現在 RPS 法等に基づいて購入している部分以外の、「太陽光発電設備を導入した
家庭が、売電せずに自分の家で消費している電力」の部分について、秩父市が環境価値を認め、
1kWh あたり定額で買い取るという形です。
図表 7-68
秩父市による環境価値(CO2 排出権)の買い取り事業
フロー図
資料:秩父市役所作成
自然エネルギー価値の買い取りを別の形で行う試みとして、横浜市の例が挙げられます。横浜市で
は、2009 年度予算案に全国初となる「太陽光発電固定価格買い取り制度」のモデル事業を盛り込み
‐ 176 ‐
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
ました。モデル事業としては町内会館を対象にし、太陽光発電システムを設置した町内会館が「余剰
電力を電力会社に買い取ってもらう際に市が上乗せする」という形式を考えており、設置コストを 10 年
以内で回収できるような価格を検討しています。横浜市では再生可能エネルギー普及のため、日本に
も固定価格買い取り制度導入が必要だとしており、モデル事業を通じて国に導入を働きかけるとともに、
これ以外にも、市独自の制度も検討しています。
2009 年度は 1、2 館の町内会館に太陽光発電システムを設置してもらい、売却発電量が増えれば
利益も増えることから、発電量増加はもちろん、館の省エネの推進も期待されるとみています。対象の
町内会館は太陽光発電システム普及の地域拠点になり、発電の収益の一部を啓発活動の費用にも充
てる予定です。
(2) 誰でも公募型
自然エネルギー導入助成制度
太陽光発電をはじめとする新エネルギー機器の導入に関して、投資回収年数としては 5 年以下を
希望する声が過半数を占めていたことから、「初期投資負担を軽減し、5 年で投資回収できる新エネル
ギー機器の導入」が可能な助成制度を構築できれば、飛躍的に一般市民への新エネルギー機器の
導入が進むものと期待されます。
ただし、現在の市の財政状況を考えた場合、設置希望者全員に多額の助成を行うことは不可能で
す。一定の助成金額で可能な限り多くの波及効果を生み出す、秩父市全域にわたって新エネルギー
機器導入・省エネルギー行動の普及啓発を行えるような独創的な助成制度の創設が望まれます。
そこで考えられる方策として、「自然エネルギー機器の導入希望者のうち、自ら積極的に秩父市民
への自然エネルギーの普及啓発役を買って出てくれる人に優先的に助成金を拠出する」というものが
あります(以下、この助成事業の名称を仮称:「誰でも公募型自然エネルギー助成制度」とします)。
具体的に一例を挙げれば、家庭用太陽光発電機器や、薪ストーブ、クリーンエネルギー自動車等を
導入したいと考える秩父市民の皆様に、公開審査会にてプレゼンテーションを行って頂いた上で、審
査員もしくは聴衆の投票により助成金の対象者を決定するということが考えられます。言い換えれば、
プレゼンテーションを行う市民には、
・自分の家に自然エネルギー機器が設置されたらいかに有益か
・設置後の機器の稼働状況を、WEB や口コミ等でどのように周囲の市民へ発信するか
・その他、市民に対して新エネルギー・省エネルギーの呼びかけを自分の手でどのように行っていくか
という方策を「公約」として掲げ、他の一般市民数百名を集めた公開審査会にて積極的にアピールし
て頂くことになります。実現性が高く独創的な提案を公開審査会の場で行って頂くことで、単に自然エ
ネルギー機器の設置を進めるのみならず、採択者・不採択者双方の良い提案を生かして今後の秩父
市における地域に根ざした環境エネルギー政策の実行に結びつけることが可能となります。公開審査
会に聴衆として参加する市民にとっても、環境・自然エネルギーに対しての知識を高める良い機会とな
ります。
「誰でも公募型自然エネルギー助成制度」に近い形で、市民向けに助成金を拠出している例として
は、沖縄県那覇市の NPO 活動支援センターによる「那覇市 NPO 活動支援基金公開審査会」があり
ます。この助成事業は、「市民の力をつなげ、NPO が地域づくりに参画する社会」をテーマに、主に那
177
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
覇市において住みよいまちづくりを推進する市民活動団体に対して助成を行うことを目的としています。
年 1 回の公募を積み重ね、8 回目を迎えた 2008 年度の例では、
1.「いっちょやったるぞ」コース:助成金額:20 万円 (3 団体)
2.「ばっちりやったるぜ」コース:助成金額:50 万円 (4 団体)
3.「明日をつくるビジョンをえがけ!」コース:助成金額:100 万円 (1団体)
上記の 3 種類のコースそれぞれに対して公募を行い、書類審査を経た上でプレゼンテーション審査
を公開で実施し、応募団体は劇やプロモーションビデオなどで競争率十倍の獲得合戦に乗り出してい
ます。また、前年度に助成金を受けた NPO 団体の事業成果報告会も開催されており、聴衆も交えて
NPO 同士の交流・人的ネットワークを広げる格好の場となっています。
資料: 那覇市 NPO 活動支援センター「なはセン」HP http://www.city.naha.okinawa.jp/npo/svc_jyoseikin.htm
(3) 地域資源利活用優先型
自然エネルギー導入助成制度
市内の太陽光発電取扱事業者から太陽光発電設備を導入する場合に、市から設備費の一部を補
助するものです。これは、太陽光発電導入による市内への経済効果を創出するためのものです。
(4) 地域資源利活用優先型
自然エネルギー導入助成制度~木質等の地域資源活用設備
温浴施設、工場、農業施設等へのチップボイラーの導入、個人住宅への薪ストーブ等の導入に際し、
市から設備費の一部を補助するものです。これは、地域資源を活用することで、継続的に地域の人に
燃料供給産業への雇用を創出するとともに、森林環境等自然環境の保全が期待できます。
7.4.14
自然エネルギー導入促進スキーム案
(1) 基礎条件
ここでは、秩父市において自然エネルギー導入を促進するような市民参加型の事業スキームを提
案します。このスキームは自然エネルギーの種類(太陽光発電・木質バイオマス直接燃焼等)や供給
するエネルギーの種類(電気・熱)が異なる場合でも、事業を構築・運営する際の基盤にすることがで
きます。ここではスキームの要点として、
「市民参加型であること」
「地域経済の発展に寄与すること(地域のお金が地域内で循環すること)」
の 2 点を満たすことを基礎条件としています。
① 基礎条件設定の根拠
現在日本国内の多くの地域において、自然エネルギーによる分散型地域エネルギー拠点形成の
取り組みが実施され、市民が主体となった「市民参加による地域エネルギー創造・利用」を行う事例
も増えつつあります。市民がエネルギーの供給者であると同時に需要者の役割を担い、そのエネル
ギーが自然エネルギー由来のものである時、経済・社会・精神などの側面において地域の自立性を
得ることが可能です。これは、持続可能な循環型社会の形成過程においては重要なプロセスである
と言えます。
このような地域を形成するためには、自然エネルギーの普及促進を担う制度が重要性を持ちます。
‐ 178 ‐
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
例えば、自然エネルギーの導入が加速的に増加しているドイツで自然エネルギーの普及・導入に関
して目覚しい効果を挙げている一つとして、「アーヘンモデル」があります。このモデルの特徴として
上記に挙げた二つの要点があるため、秩父市のスキームにおいても基礎条件としました。
① 「アーヘンモデル」の特徴及び説明
(a) 特徴
・ 市民の合意により、電力会社は自家発電による電力を高く買い取ることが義務付けられてい
る。
・ 同様に、電力会社は市民の電気料金を1%高く請求することを許可されている。
・ 電力を利用する人が、自然エネルギー導入のコストを広く負担する。
・ 市や電力会社に新たな財政負担は生じない。
(a) 説明
「アーヘンモデル」とは、太陽光発電(PV)と風力発電(WF)を市内に普及させるため、1995 年
にドイツのアーヘン市が制定した制度であり、アーヘン市営の水道・エネルギー公社が、自然エネ
ルギー発電施設を設置した個人・法人の発電した電力を、市場価格よりも割高な価格で一定期間
買い上げることを保証するものです。
この買い上げ保証は、設備の寿命期間(PV の場合で 20 年)にわたって行われ、PV の場合、初
年度である 1995 年度は、次の 20 年間、市場価格の約 10 倍の 2 ドイツマルク/kWh で電力を買
い上げる(当時の電力の市場価格は 0.2 マルク/kWh、約 14 円であった)ことを保証しています。こ
の価格はその後の市場状況に合わせ、毎年度ごとに調整され、将来は可能な限り引き下げられる
方針になっています。また、割高な価格でクリーンな電力を買い上げるための原資は、ユーザーが
現行支払っている電気料金に法人・個人ともに一律最大 1%の課徴金を課して賄います。この方
法によれば、すべての電力消費者にこのコストを均等に割り分けることになるので、アーヘン市にと
っても電力を買い上げる公社にとっても新たな財源的負担は何ら生じません。
この市条例は 1994 年アーヘン市議会によって承認され、1995 年 3 月 22 日発効しました。
資料:株式会社グリーンファンドHP http://www.greenfund.co.jp
② 補助事業の財源
「アーヘンモデル」では、電力を買い取る資金を市民から直接徴収していますが、以下に示した
秩父市のスキームでは、電力や熱を購入する資本は秩父市の財源を想定しました。今後、自然エネ
ルギーを持続的に導入・拡大していくために、効果的な制度設計を行うことが望まれます。
(1) 市民出資型バイオマスボイラー事業スキーム
● 導入制度: 1MJ/X 円(但し、上限を設ける)とし、熱量に対する補助を 20 年間継続
● 名称:森の恵み事業(仮)
● 対象:秩父市内でチップ・ペレット・薪の木質バイオマスを利用する市民及び事業者
● 条件:チップ(ボイラー燃焼時に温度計と流水計を設置し、熱量を測定)
ペレット(1袋に対し、熱量を基準に金額を設定)
薪(一束単位で金額を設定)
179
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
(b) 参考事例
長野県飯田市では、薪ストーブ及びペレットストーブ、ペレットボイラーユーザーのモニター制度
を実施し、設置(工事費含む)に対する補助金の交付(募集は平成 18 年 12 月で終了)と同時に、
ペレットに対する補助を行っています。
図表 7-69
主体
飯田市補助
長野県補助
長野県飯田市の補助制度例
対象
薪ストーブ設置(工事費含む)
ペレットストーブ・ボイラー設置(工事費含む)
ペレット使用モニター(1kg あたり 10 円補助)
信州型ペレットストーブ
金額
75,000 円上限
50,000 円上限
50,000 円上限
10 万円上限
件数
16 件
10 件
-
① 導入スキームの仕組み
1.出資金を募る
2.ボイラーを購入・設置
3.稼動、用熱量に対して
秩父市より補助
市民
4.出資時に地域通貨の発
行、利益に応じ配当が
支払われる
企業
商店街
③ 市民出資型バイオマスボイラー事業スキーム
素材生産業者
販売
販売
代金
秩父市役所
事業者(チップ加工)
森の恵み助成(MJ あたり X 円)
市内温浴施設
配当
環境価値
出資
代金
匿名組合
地域通貨・配当・入浴券
市民
事業者
都市・
企業
販売
代金
中・長期計画
出資・融資
企業
【資料:委託会社作成資料】
‐ 180 ‐
金融機関
(地銀等)
(地域内外の環境価値取引による、
カーボンオフセットの導入)
第 7 章 新エネルギー導入重点プロジェクト
7.5 新エネルギー導入「秩父モデル」の発信に向けて
新エネルギーの導入は、温暖化の原因とされる CO2 の排出削減とともに地域資源の活用を期待す
るものであり、継続的な地域資源活用には持続的な農林業経営が必要となります。農林業は、産業の
中で唯一生産活動の中で CO2 を吸収固定できる産業であり、太陽がある限り資源の再生産を可能と
すると考えられます。
自然を活用して、知識と技術を活かし、市民が一体となって新エネルギーに取り組むことで、良好な
環境を未来に引き継いでいくことが可能となります。このような新エネルギー導入の「秩父モデル」を国
内外に広く発信していくことは、新エネルギーの普及促進につながるもので、意義深いものであると考
えられます。
また、新エネルギー導入及び利用上の課題についても、明らかにしながら、新エネルギー導入を促
進していくことが本市の責務です。このようなことから、国、県並びに関係機関とも連携・協力のもとに、
新エネルギーへの支援制度充実等についても働きかけながら新エネルギー事業を推進していきま
す。
181