環境学習用ゲーム型教材の開発

環境学習用ゲーム型教材の開発
○岩渕美香、石田哲夫*、川崎市公害研究所環境学習チーム
( 川 崎 市 公 害 研 究 所 、 *経 済 労 働 局 北 部 市 場 )
加 宮 利 行 ( NPO 法 人 環 境 サ プ リ メ ン ト 研 究 会 )
環 境 技 術 産 学 公 民 連 携 事 業 の 一 環 と し て 、 NPO 環 境 サ プ リ メ ン
ト 研 究 会 と 共 に 、 CO2 の 削 減 方 法 を 家 庭 で 楽 し く 学 べ る ゲ ー ム 型
教 材( 試 作 版 )の 開 発 及 び ゲ ー ム 参 加 者 に 対 す る 効 果 判 定 手 法 の
検討を行った。
今回は本ゲームの制作過程を、ゲームの特徴、別冊のゲーム解
説書、効果判定用チャレンジシートの紹介と併せて報告する。
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はじめに
公害研究所では従来から市民対象の環境教育・環境学習事業を
実施しているが、環境セミナーのような連続講座を除き、学校、
市民団体への出前講座や参加者人数を限定した実験講座等、1回
完結型の事業がほとんどである。また、環境学習終了後、できる
だけ参加者に対して学習内容に関するアンケート調査を実施して
いるが、アンケート調査では環境学習による効果の持続性に関し
ては十分に把握できているとは考えられない。
そこで現在、学校や家庭で反復でき、かつ参加者の自発的ペー
スで実施できる新たな環境学習プログラムや教材の開発、並びに
環境学習が参加者に与える効果の測定方法が求められている。
こ の よ う な 状 況 の 下 、 NPO 環 境 サ プ リ メ ン ト 研 究 会 と の 共 同 研
究 で は 日 常 生 活 に お け る CO2 削 減 を 意 識 し た 行 動 を 市 民 に 促 す 効
果 的 な 環 境 教 育 ・学 習 を 展 開 す る こ と を 目 的 と し 、 (1)川 崎 市 の 特
性に合った環境学習用ゲーム型教材の試作及び制作手法の習得、
( 2 ) 試 作 し た 環 境 教 育・学 習 用 教 材 に よ る 環 境 学 習 プ ロ グ ラ ム の 作
成及び受講対象者に対する効果判定手法の検討を行った。
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教材の特徴
教材は本体のゲーム盤、ゲームの解説書そしてチャレンジシー
トで構成されている。
2.1 ゲ ー ム 盤 ( 図 1 参 照 )
ゲームはすごろくを元にしており、基本的にはサイコロを振っ
て出た目の数だけ進みながらゴールを目指すという、単純なルー
ルである。以下にゲームの特徴を示した。
① ゲ ー ム の マ ス 目 に は CO2 の 削 減 方 法 を 記 載 し た 。 主 な テ ー マ は
次のとおりである。
・家庭で簡単に取組めるもの
・カーボンオフセットやフードマイレージ、エコドライブ等最
近のトピックス
・ 従 来 品 に 比 べ CO2 排 出 量 を 抑 制 し た 新 し い 製 品 の 情 報
②川崎市のオリジナリティを浮き立たせたマス目を設定し、極力
それらのマス目では全員ストップするようにした。
・市内の施設や名産品やイベント等を紹介するマス目
・“ 緑 の カ ー テ ン ” や “ か わ さ き 打 ち 水 大 作 戦 ” の よ う な 、 市 の
取組みを紹介するマス目
・ゲーム盤のイラストとして、環境学習で使用しているキャラ
クターを採用
③ 官 公 庁 等 か ら 収 集 し た CO2 削 減 量 デ ー タ か ら 川 崎 市 の 1 家 族 で
削 減 で き る C O 2 量 を 算 出 し 、さ ら に こ れ を ポ イ ン ト 数 に 換 算 し て 、
マス目に止まったプレイヤーがポイント分のチップを獲得できる
ようにした。
④サイコロの出た目により次に進めるマス目を複数設定したり、
エコドライブ講習コーナーでは、そこで獲得した特別なチップの
枚数により、その後のルートが変わるなどゲームに面白さを加味
した。
2.2 ゲ ー ム の 解 説 書 ( 図 2 参 照 )
ゲーム盤に展開するマス目の大きさには限りがあるため、マス
目に記載する内容は出来る限り簡素化することを目指し、記載で
きなかった詳細情報については別途ゲームの解説書を作成した。
解 説 書 に は CO2 削 減 量 の 算 出 方 法 や 設 定 条 件 、 根 拠 デ ー タ や 出
典元、さらにその行動を続けることにより節約できる金額等の詳
細を記載した。
←マス目にはポイントと
削減の方法を記載
↑市内施設を紹介
するマス目
図1
ゲーム盤全体と各部の拡大写真
複数に設定されたルート→
図2
ゲームの解説書
2.3 チ ャ レ ン ジ シ ー ト
ゲームの参加者がゲームで学んだ方法を継続して実践できてい
る か 、ま た 継 続 し て 実 践 で き る よ う に 支 援 す る た め の 記 録 用 紙( チ
ャレンジシート)を作成した。
参加者はゲーム終了後の1か月間、チャレンジシートに記載し
てある行動のうち毎日どれを実践できたのかをチェックする。な
お、記録終了後はシートを配布元に返送してもらうことを想定し
ている。
また、チャレンジシートの結果により、本研究で制作したオリ
ジナルゲーム盤やキャラクターバッヂ等の賞品、あるいはエコ博
士 ( 仮 )認 定 証 等 な ど も 検 討 し て い る 。現 在 、2 種 類 の チ ャ レ ン ジ
シートを検討中である。
(1)シ ー ト 案 A
ゲ ー ム 盤 で 使 用 し た 2 0 項 目 程 度 の C O 2 削 減 行 動 を 選 択 し 、1 か
月間どのような行動を実践できたのかをチェックするものである。
(2)シ ー ト 案 B
ゲ ー ム で 使 用 し た CO2 削 減 行 動 を 気 軽 に 取 組 め る も の 、 意 識 的
に行動する必要のあるもの、というように数種類のグループに分
け、これらをレベル別チャレンジシートとしたものである。
図3
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チャレンジシート案(左が案A、右が案B)
おわりに
普段から環境問題に関心を持っていても、実際に環境に配慮し
た行動を自ら実践し、継続することは難しい。さらに、環境問題
に 関 心 の 薄 い 人 々 に 環 境 に つ い て の“ 気 づ き ”や “ 関 心 ”を 持 た
せることは、なお困難であると思われる。
このゲームが、子ども達の環境に対する興味や関心を高め、ま
た、環境に配慮した行動は決して難しいものではなく、簡単に取
組めることもたくさんあるのだと気づき、実際に取組む動機付け
となるよう、今後は本教材を組み込んだ環境学習プログラムを実
施し、併せて効果測定手法の検証をする必要がある。