2012年9月17日 Washington Post 社説

2012.9.17 Washington Post 社説
日本のゼロニュークリアの「夢」
将来的に脱原子力という日本の「夢」を理解するのはたやすい。昨年の福島第 1 のメルトダウ
ンでは、日本という人口密度の高い島国で何千万人の住人が、緊急避難と土壌汚染を恐れた。
しかし、原子力を今後数十年で段階的に廃止するという政府の目標は、財政、気候変動問題に
深刻なコストをもたらす。
福島事故前、日本は原子力発電で電力の 3 分の 1 を生み出していた。現在、50 基の原子力
発電所のほとんどが動いていない。その結果、供給力不足や石油と天然ガスの輸入量が急激に
増えている。これらは日本経済に大きな打撃を与え、日本の生活レベルを悪化させ、貿易黒字を
赤字にさせるだけでなく、日本の CO2 排出削減の達成にとって悪い前兆である。言うまでもなく
原子力発電所は、ほとんど CO2 を発生しない。
反原発活動家たちの要求を受け入れ、日本政府は、太陽光、地熱、風力といった再生可能エ
ネルギー源に多額の投資をすることによってこれらの問題が解決すると主張している。しかし、再
生可能エネルギーから得る電力量を 3 倍にするという目標の実現可能性やコストについて、詳細
なデータを持っていないことを認めている。また、再生可能エネルギーを増加させるためにさらに
多くの化石燃料を燃やすことによる CO2 排出の影響を制限する計画も持っていない。
気候変動との戦いは、化石燃料資源の無駄遣いをなくさなければ非常に困難である。日本が
その安全体制を改善・確立する限り、日本の原子力インフラとノウハウが CO2 削減において貴
重な資産となる。現在、日本政府は、炭素排出量の 20%削減しか約束していないが、今年の政
府の報告書では、原子力なしで 2030 年までに 1990 年レベルの 25%まで炭素排出量を削減で
きるかもしれないと試算された。しかし、同じ報告書で、日本が原子力から電力の 5 分の 1 を得た
場合に 33%の排出量削減、3 分の 1 を得た場合に 39%の排出量削減できると試算していること
が分かった。信頼性が高く、いつもオンラインのエネルギーを得ることができる原子力は、エネル
ギー源として重要である。
政府の「ゼロニュークリア」には、今後の原子力復活の可能性につながるいくつかの「含み」が
見てとれなくもない。もちろん、それは十分ではないが。
一つは、規制当局が安全とした原子炉のリスタート。もう一つは、40 年を超過する発電所を停
止する場合でも 20 年の運転延長ができうるとしていること。
政府は、再生可能エネルギーへの多額の投資が環境派(原子力反対派)たちの予測どおりの
コストベネフィットが得られなかった場合、将来的に原子炉の建設のためのさらなる可能性を残す
よう見直されることもありうると述べた。
専門家の中には、政府の新方針は単に政治的、「日本の民主党は今後数ヶ月に実施される選
挙で多く議席を失いたくないために原子力について厳しい姿勢を示している」と指摘している。こ
れは、政府が原子力から離れないかもしれないことを示唆している。もしそうであれば、日本国民
は、いいように踊らされているということになるが、世界 3 位の経済大国は、電力供給にもっと柔
軟なアプローチを(原子力を選択)することによる恩恵をうけることになるだろう。