Ⅲ-1. アナログフィルタ 1.目的 アナログフィルタの基本原理を理解し、回路の設計方法を習得する。 2.基礎理論 2-1.パッシブフィルタ(RC 回路)の解析 Fig.1 のように抵抗 R とキャパシタ C を直列接続し、その両端に交流電流 ei を加えた時の C の端子電圧 e0 について R 考える。入力電圧 ei に対する出力電圧の 比 e0/ei(伝達関数)は、 e0 1 / jω C 1 = = ei R + 1 / jω C 1 + jω C R また、その絶対値(振幅特性)は、 e0 1 = ei 1 + (ωC R ) 2 ei (2.1) C eo Fig.1 最も簡単な LPF (2.2) この式で周波数が十分低い場合、つまりω→0 を考えると e 0 / e i → 1 となる。 また、 e 0 / e i → 1 / 2 fc と呼び、 ω C R = 1 1 fc = 2πCR −1 、つまり-3dB ( = 20 log 2 ) となる周波数を遮断周波数 より (2.3) が求められる。 周波数が fc よりもさらに高くなると e 0 / e i ≡ 1 / ( ω C R ) となり、周波数に逆比 例してゲインが限りなく低下する。 この周波数特性を示す回路は、低周波 成分のみを通過させる LPF(Low Pass Filter)と呼ばれる。 フィルタには、その特性から以下の 種類がある。 * HPF(High Pass Filter) * BPF(Band Pass Filter) * BEF(Band Elimination Filter) 通過 帯域 遮断 帯域 ゲ -3 イ ン dB 減衰 傾度 fc 周波数 Hz Fig.2 5 変遷 帯域 LPF の周波数特性 2-2. バターワース型アクティブフィルタの解析 正帰還方式のアクティブ LPF 回路及びその等価回路を Fig.3 に示す。 C2 R1 R1 R2 i1 +A ei ei eo C1 R2 i2 C2 C1 eo (a) 原回路 (b)等価回路 Fig.3 正帰還方式2次系アクティブ LPF の解析 等価回路から次式が成り立つ 1 e0 = A i2 jωC1 ei − e0 = i1 R1 + (i1 − i2 ) e0 = (i2 − i1 ) (2.4) 1 jω C 2 (2.5) 1 1 + ( R2 + )i2 jω C 2 jωC1 (2.6) まず、この3式から伝達関数を求める e A A( jω ) = 0 = 2 ei ( jω ) C1 R1 C 2 R2 + {(1 − A)C 2 R1 +C1 R2 +C1 R1 }( jω ) + 1 1 ωc2 = (2.8) とおくと, C1 R 1 C 2 R 2 A( jω ) = (j ω =x ωc A( j x) = , ω 2 ) + ωc A (1 − A)C 2 R1 + C1 R2 + C1 R1 C1 R1C 2 R2 C1 R1C 2 R2 (1 − A)C 2 R1 + C1 R2 + C1 R1 =Q A 1 ( j x) 2 + ( j x) + 1 Q (j ω ) +1 ωc (2.9) とおけば, (2.10) 6 (2.7) eo/A 従って、バターワース型 2 次 LPF の伝達関数の一般式は, A A (S) = (2.11) 1 S2 + S + 1 Q 次にアンプのゲイン A を1に設定し、さらに C1=C/k, C2=k×C, R1=R2=R と 1 k おくと、 f c = , Q= と求まる。 2πCR 2 A=1 のアンプはボルテージホロアで実現され、Fig.4 のような回路を構成すれ ばよいことになる。 2QC R + - ei Fig.4 1 2π C R k Q= 2 fc = R C/2Q eo (2.12) (2.13) A=1 のバターワース型2次 LPF また、A>1 に設定する場合は R1=R2=R,C1=C2=C とすることにより、Fig.5 のよ うな回路を構成すればよいことになる。 R R + - ei C eo r1 r2 Fig.5 1 2πCR 1 Q= 3− A r A = 1+ 1 r2 fc = C A>1 のバターワース型2次 LPF 7 (2.14) (2.15) (2.16) 3.実験装置 * パーソナルコンピュータ * 電子回路シミュレータ Multisim 4.実験 4-1.パッシブフィルタの設計 予習 RC 回路において遮断周波数が 100Hz となる R1 及び C1 の値を求めよ。 (ヒント:式 2.3 において、fc=100Hz,R=1,000Ωとすると、C=? ) 実験 ①信号源の周波数を 10, 100, 1kHz と変化させた時の出力電圧の変化 を調べ、表1にまとめる。 ②AC 解析を行い、振幅(ゲイン) 特性のグラフより得た値を表2 にまとめ、減衰傾度を求める。 ③AC 解析のグラフ及び回路図を 画像データとして保存。 Fig.6 RC 回路 ※1 減衰傾度は 2 倍離れた周波数間,つまり1オクターブにつきゲインが何 dB 減衰するかを表し、単位としては dB/オクターブ(dB/oct)を用いる。 表1 信号周波数[Hz] RC 回路における入出力電圧の測定 入力電圧[mV] 出力電圧[mV] 出力電圧/入力電圧[dB] 10 100 1k 表2 AC 解析のグラフにて調査した値(RC 回路) 周波数[Hz] 振幅[dB] 10 100 200 1k 8 4-2.バターワース型 2 次系アクティブ LPF の設計 予習 バターワース型 2 次ローパスフィルタの遮断周波数, 回路抵抗, コンデンサの値は(2.12)及び(2.13)式の関係で表される。 fc=100Hz , R=1,000Ω(=R1=R2), Q=0.707 とし、C1 と C2 の 値を求めよ。 C = 1 / (2×3.14×R×fc) = C2 = 2QC = C1 = C / 2Q = 実験 Fig.7 を参考に遮断周波数 fc=100Hz のバターワース型 2 次系(A=1) を構成し、RC 回路と同様に調査せよ。なお、AC 解析のグラフ及び回 路図は画像データで記録を行うこと。 Fig.7 表3 信号周波数[Hz] A=1 のバターワース型 2 次系アクティブフィルタ バターワース型 2 次 LPF の入出力電圧の測定 入力電圧[mV] 出力電圧[mV] 10 100 1k 9 出力電圧/入力電圧[dB] 表4 AC 解析のグラフにて調査した値(バターワース型 2 次) 周波数[Hz] 振幅[dB] 10 100 200 1k 4-3.バターワース型4次系アクティブ LPF の設計 Fig.8 にバターワース型 4 次系アクティブ LPF を示す。この回路は 2 次系 LPF の 2 段接続と考えられる(前段の Q は 1.307, 後段の Q は 0.541 とする。) 下の図を参考に遮断周波数 fc=100Hz の LPF を構成し、 RC 回路と同様に調査せよ。 なお、AC 解析のグラフ及び回路図は画像データで記録を行うこと。 Fig.8 表5 信号周波数[Hz] バターワース型 4 次系アクティブ LPF バターワース型 4 次 LPF の入出力電圧の測定結果 入力電圧[mV] 出力電圧[mV] 10 出力電圧/入力電圧[dB] 表6 AC 解析のグラフにて調査した値(バターワース型 4 次) 周波数[Hz] 振幅[dB] 10 100 200 1k 5.課題 1)パッシブフィルタ(RC 回路)とアクティブフィルタの短所,長所を述べよ。 (回路の複雑さ、遮断領域における減衰特性など) [+10 点] 2)バターワース型 2 次系アクティブ HPF の回路及びその等価回路を Fig.9 に示す。この回路の伝達関数を導出せよ。 [+10 点] R2 C1 +A ei R1 C2 C1 C2 eo ei i1 R1 i2 R2 eo /A eo a) 原回路 b)等価回路 Fig.9 バターワース型 2 次系アクティブ HPF 3)グラフィックイコライザ及びアンチエリアスフィルタについて、その動作 原理及び使用目的を説明せよ。 [+10 点] 6.参考文献 1)島田公明;アナログフィルタの基礎知識と実用設計法,誠文堂新光社,1993 2)宮崎仁 他;基礎から学ぶフィルタ回路のすべて,トランジスタ技術 8 月 号,1991 3)松本幸夫;電子回路シミュレータ multiSIM8 入門,技術評論社,2005. ◇ 実験資料掲載 HP http://www.esato.net/ex/ 11
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