前略 神奈川県藤沢市に住む高橋といいます。 いつもメルマガをおくって頂いて楽しく拝見しています。Z1000 の発表が楽しみです。 以下の文を読んでいただければ幸いです。 こんなスピーカーできました オーディオファン、自作ファンなら誰しもこの今ある1つのエンクロージャーで違うユニットの音を聞いて みたいと一度ならず思ったことがあると思います。 その方法として ① 別エンクロージャーをもう一組作って別ユニットを取り付ける。(機器も別に揃える) ② バッフル板ごと交換する ③ ユニットを交換する などの方法があると思われますが、 ①の方法はアンプも別になるとで経費も労力も置くスペースも相当必要になってしまう。 ②③はバッフルとユニットの交換やコードの接続で時間がかかる。、 そこで数秒で別のユニットへの切り替えが出来、今聞いているユニットの音の印象が頭に残っている間に違 うユニットの音質が再生可能なボックスは出来ないものかと考え試作してみました。 発想のポイント もう 15 年も前に 20 センチフルレンジとツイターのバーチカルツインなる箱を自作して聞いていましたが、 引越しを機に部屋が狭く入らないということでやむなく壊してしまいました。 暫くは市販の小さなブックシェルで我慢していましたが、やはり飽き足らず部屋の狭さに合わせたバックロー ドホーンを自作しようと思い、いろいろユニットや長岡氏設計の図面など眺めていました。FE138SE-R が目 に付き価格が高いが限定品ということで思わず「ポチッ」と押してしまいました。 箱は長岡氏の D-10、D-118、 を参考に設置スペースから 220w×900h×360d とし寸法は全て変更した。空気室容積、スロート面積、ホ ーン長等々細かい規準値は殆ど無視、スペース優先の全くラフな数値での板取。そこが自作の好い所でもある から(細かい数値を気にする人はごめんなさい)。 板は近所のホームセンターで裁断した。ホームセンターのいい所はその日のうちに出来ることと1カット20 円~30円で出来るところ。 カット精度もパートのおばちゃんがやってくれたにしては組むのにそんなに狂いは無かった(信用してなか ったおばちゃんごめんね!) パーツを組み立てながら FOSTEX のページを検索していると、MG100HR-S なるユニトが目に飛び込ん できた「限定品で残り少ない…」また「ポチッ」と押してしまった。 限定品という広告になんて弱いんだろう(笑) そんなこんなで箱が出来上がる前にユニットが 2 種類も揃ってしまった。2 台置くスペースもないし最初は 「バッフル板を交換して聞けばいいや」なんて思っていましたが、100HR-Sに付属していたFOSTEX推奨の BHの図面を見ると私の設計したBHの寸法に殆ど同じで、その時ひらめいた「空気室とスロート部をユニット に合わせた寸法にし別に作り、ひっくり返して上に載せ(以下ヘッドと呼ぶ)、スロートを過ぎたところで、 1 音道をうまく切り替えてやればホーンの部分は共有して使えるな」「切り替えをワンタッチで素早く簡単に出 来る巧い方法はないか」(図1の黒丸の部分)。こんなことを思いつきました。 設計段階 空気室 スロート部 a (ヘッド部) この部分で上手く音の流れを 切替えてやれば 出来そうだ! b ユニット a MG100HR-S (本体) ユニット b FE138SE-R 図1 ① 図1において a ユニットから出た音をとにかく本体のホーン部に送り込まないといけないから、a のスロ ート最尾部にスロートと同等の面積の穴を開けまた本体の天板にも同じことをし音の通り道を設ける ② これだけでは b のスロート部と空気室にも a の音が流れ込み音道が変則的になり、スムースな流れになら ないしお互い逆流もする。(パッシブラジエターとして働くかな?) ③ 同様に B ユニット駆動の時も a に同じことが起こり不都合がおこる。 ④ そこで図2と図3のようにユニットを切り替えてもお互いの空気室に逆流しないような弁機構を持たせる。 ⑤ その弁機構は簡単な構造であることと操作が簡潔でなければいけない。 ⑥ 安価であること。 ④,⑤、⑥の条件を満たすものはどのようなものか? 試行錯誤の上考えたのがこれ、図2、図3の赤線部分。2枚の板切れを T の字にくっ着け縦板の直ぐ後ろに スロートほぼ同じ面積の穴を開けた極簡単なもの。 それを前後にスライドさせるだけの構造。名づけて「音道切換え装置」装置なんて大げさな物ではないけど 「切換板」かな。 切換板がⅠの位置にあるときは上のユニットの音が図 2 のように通り、切換板の縦部分が b 部への逆流をし っかりと塞いでいる。 また、切換板がⅡの位置にあるときは音は図 3 で示すように流れホーン部へと通って行く。この時 a 部への逆 流は切換板の横板がしっかりとガードしている。 アンプ出力 アンプ出力は A と B 切り替えの出来る機種がベスト。 続する。図1 アンプ出力Aはヘッドaに接続し出力 B はbに接 また少し時間掛かるが出力が1つのアンプでもa,bのスピーカ端子をジャック対応型にしケ ーブルにプラグを繋ぎ差換えれば目的は達する。 2 音の流れ ヘッドのスロート部 a 音の流れ Ⅰの位置 本体天板 b 切り換板 本体の裏板 aの音聞く時の切換板の位置 図2 a 板を後ろへスライドさせる Ⅱの位置 b 切り換板 bの音を聞く時切換板の位置 図3 製作 BH 本体の方はカットしてもらったので、BH 製作は初めてにしては意外と早く1週間ほどで出来たが図4、 ヘッドのほうは追加分となり本体の余り材で自分でゴシゴシカンカン鋸と鉋やノミを使ってやったので寸法 合わせに苦労し、帰宅後 2 時間くらいしか出来ないこともあり家族のひんしゅくを買いながら持病の腰痛と戦 いながら2週間位掛かった。 本体の一部も改造となり図4。1 部カットしたり何とか出来上がったのが図4である。 吸音材を増減したり、配線材を交換したり後からいろいろ中を改造したり(改悪かな)することもあるかと 左側板はネジ止めにしてあったので追加可能であった。 3 変更前 図4 変更後 元の状態 変更後 本体天板最尾部を 50mm、第一折り返し板を 10mmカットした。そこに「音道切換え板」が入る。 音道切換え板 板切れをT字に接着し 音が通る穴を開けただ けの簡単なもの。これ がイイ仕事をする。 4 138SE-R のとき カットした本体天板図 100HR-S の時 音道切換え板を乗せた図 (カットアンドトライでやった試作品で工作のまずさ丸出し) ヘッド部 音道切換え板の位置と音の流れ ユニットと側板を付けて完成 (オイルステン 2 回塗り) リングを着けるといいが手に入らないです。大山さん安く作ってください(笑) ヘッドの部分何かに似てませんか? そうですピラミッドの前にいる「あれ」ですす。名づけてスワンなら 5 ぬ「スフィンクス」。前足も付けると完璧かな。 ヘッド部がただ上に乗っかっているだけで不安定のようですが両バッフルの所でホゾ組みにしてあります。 全体的に空気漏れもないようです ホゾ穴 何しろ工作がド素人ですから恥ずかしいです 後ろ足に「パッチン」(商品名もパッチンでした)を 取り付けて完全に固定しようと買ってあるのですが写 ホゾ 真の時点ではまだ付いてません。 とめ金具“パッチン” これが完成した全体像です f特の測定手段を持ち合わせていないのでどんな周 波数分布をしているのか分かりませんが、聞くに堪 えない嫌な音ではないのでいいかなと思っていま す。 実際の操作 aを聞く場合は切り替え板をⅠの位置にしアンプの出力切り替えを A(図2)、b を聞く場合にはⅡの位置(図 2)にスライドしアンプ出力を B に切り替えるだけである。これだけである。時間にして僅か数秒(3~4秒)。 バッフル板交換したりコードをつなぎ変えたいする手間は一切不要である。(アンプ出力が1個の場合はコー ドを繋ぎかえる) 6 ①切換え板をスライドさせる ②アンプの A と B を切り替える これだけである。ねじ回しも半田コテも何もいらない 音出し 結論を先に言いますと、大成功です。当初の発想である「一本のエンクロージャーで 2 種のユニットを瞬時 に簡単な操作で切り替えて楽しむ」という目的は 90 パーセント成功です。(自我自賛) 後の 10 パーセントは音道切換え板の操作とアンプ出力 A と B 切換えの操作とツータッチ操作になった事で、 ワンタッチ操作で出来なかったことです。でも、ユニットを交換する手間に比べればゆっくりやっても 5 秒も あれば出来ますから成功と言えると思います。特許とまでは行かずとも実用新案、意匠登録くらいにはなりま すかね(冗談) 出てきた音の感想 138SE-R は一言で良くいうと「非常に元気のいいはきはきとした聡明な青年」 わたしは音の感じをつかむ時 という感じ。 ロンドン盤ベルリオーズの『幻想交響曲』シャルル・デュトワ指揮/モントリ オール交響楽団 F35-50194 を先ず聞きます。このユニットは第 1 楽章の朝もやの深い森の湖に一滴の水滴が 落ちるような出足の静かな細かい部分の表現も良く透明感があり、また第4楽章、第 5 楽章の猛牛が突進して くるようなブラスの響きと中低音がもりもりと湧き出て迫ってくる感じもいい。ハヴァロッティーが良い。 しかもブーミーにならず一音一音がはっきりしている。トランジェントが良く BH の音をよく「立った音」と 表現する人がいるが、まさにその通り何も引かないピュアな音とでも言うか。 アンプはもう 15~20 年も前のアキュヘーズの E-303ⅹで,CD プレーヤーも古いパイオニアの PD-2000LTD であるがこの組み合わせから出る音は今までおとなしい優等生と言う感じであったが、このユニットと BH に して出てくる音はまさに「B-52」重爆撃機である。こんな凄いパワーを秘めていたとは知らなかった。FET 全段直結の威力ここにありと言うか、市販のスピーカーは万人向きに聞きやすいように抑えてあるというのが 良く分かる。アルニコマグネットの良さか話し声が聞き取れないくらいの音量にしても解像度が良い。価格だ けのことはある。ユニットもまだまだ馴染んでないし、箱も作りっぱなしで手を加えてないので全体的に「硬 さ」があるのはいなめない。それとこの箱の寸法がこのユニットにベストなのかも分からない。もう少し大き い方がいいのかも知れない。 100HR-S は 138SE-R とはこれまた対照的な「非常に育ちの良い上品な貴婦人、シルクの肌触り」とでもいう か音出し一発目から硬さも無く、しかも低域高域とも良く延びた澄んだ音がするユニットである。 これまたロンドン盤で当時の古楽器と当時の編成で演奏されたホグウッドの「田園」、F32L-20282 微妙なニ ュアンスの違いが良く出ている。あとマライア・キャリーの Sweet heart は実効径 8cmも無い振動板から どうしてこんな重厚な低音が出るの?と言うくらい出る。My All は泣かせる。ホイットニーヒューストン はスピーカーによってはややもすると高域が破錠するがこのユニットはそれが無い。どこまでも再生してくれ る。小音量でも低音が出るのがいい。私的には小編成のクラシックやジャズボーカルを聞くにはもってこいの 音である。 一つ難を言えば能率が低く 86.5db しかないので(138SE-R は 91.5db)切り替えた時にアンプのボリューム を調整する必要がある。 138SE-R は鮮烈な音を聞きたい場合また家族のいない昼間向け、100HR-S は夜静かにしっとりと鑑賞するこ 7 んな使い分けをしています。 今後の展開 今回は 13cmと 10cmの切換であったが、8cm用のヘッドも製作予定である。 ヘッドを聞きたいユニッ トの数だけ用意し交換すれば例えば今回新しく出たユニットの音も聞ける。 また 16cmと 20cm 切り替え用の BH エンクロージャーを何とか部屋を整理して作ってみたいと思ってい ます。その時は大山さんに板のカットを頼もうかな。 この装置 長岡式にこのようなのがあるかと例の「オリジナルスピーカー設計術」3 冊その他見ましたが、F-70 カプセ ルが「1 ユニットで 3 種の動作をする」というのがありましたが、私のはこれとも違いますし他の雑誌とか作 者の本を見てもこの方式のは無いように思います。まさしく「世界で私だけのオリジナルスピーカー」です。 長岡さん生きていたら何と言うかな。 長岡さんを知ったのは 70 年代の頃から週刊誌「FM fan」でオーディオ機器の評価をしておられたので知って いました。毎週見るのが楽しみだった。先日オーディオの雑誌買おうと本屋に行きましたが「stereo」誌があ るくらいで後大量のパソコン関係の雑誌ばかりでオーディオやる人少なくなったのかなと思いました。深く静 かに潜行しているのかな。 私もここ数年 PC ばかり作っていましたから…。 長岡研究で第一人者を自負されている大山さんの意見を聞きたいと思いお便りしました。よろしくお願いし ます。 機器類 アンプ CD プレーヤー 〃 アナログプレーヤー Accfhase プリメイン E-303X ソニーCDP-553ESD (故障中) パイオニア PD-2000LDT パイオニア PL-30L カートリッジ DENON D-301Ⅱ(今年 7 月更新) 長々と書きましたがよろしくお願いします。 8
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