四国アイランドリーグ plus 2012 コカ・コーラ杯 後期公式戦 2012.7.8. 徳島インディゴソックス オロナミンC球場> 観衆 7‐2 香川オリーブガイナーズ 後期2回戦 < 430 人 『借金2』 追い着かれての降雨ドロー、終盤に突き離されての負け、そしてビジターで戦った徳島 インディゴソックスとの後期2回戦でも、終盤に大量失点を許し敗れた。後期開幕から3 戦を終えて、まだ1つも勝ち星がない球団は前期王者・香川オリーブガイナーズのみであ る。 前期40試合で香川OGが連敗を許したのはただ一度、最終戦となった6月30日、高 知・越智で行われた雨のダブルヘッダー、対高知ファイティングドッグス前期11、12 回戦での連敗ただ一度きりだ。だが、後期スタートから3戦目で早くも連敗を喫してしま った。 「1つ歯車が狂ったらこういうことになるということですね、野球は。しっかりアウト獲 れるところで獲れなかった。酒井(酒井大介、25歳、長崎セインツ)はよく投げました けども。バッティングは水物やからね。ま、スイングがちょっと鈍いのは確かやね」 こちらが投げ掛けた「4安打と打線が揮わなかったが…?」という質問に、香川OG・ 西田真二監督は「そんな真剣な顔せんでいい!」と苦笑した。 「まだ3試合」を強調しなが ら、あくまで楽観的な表情を見せていたが、完全優勝に向けスタートダッシュの大切さを 熟知している監督である。打線の不調を気にしていないというのは決して本音ではない。 選手たちはダグアウト前でのミーティングのあと、国本和俊(28歳、三重中京大)主 将を中心にして右翼ファウルゾーンの芝生の上に座り込み、選手たちだけで再びミーティ ングを行っている。その様子を三塁側ダグアウトから遠巻きにして、吉田一郎編成部長、 智勝コーチ(近藤智勝、元香川OG)の2人が見ていた。 選手たちに対する明らかな不満がある。智勝コーチが言う。 「打ちに行ってないんです。間の取り方が。徳島の選手の方が打ちに行ったなかで見逃し てくる。ウチの選手はピッチャーが投げて『打つかな…?』っていう雰囲気で、 (打ちに行 く)間合いに入れてない。狙いダマっていうのはそれぞれ個人で見て行けばいい話で。(指 示も)ありますよ。もちろん。山口(徳島IS先発・山口直紘)にナメられたかのように ストレートでポン、ポン、ポンと取られたりだとか、その球も簡単に見逃すし。ある程度 クリーンナップは数字残せてるんで、各個人に任せてますけど。それ以外の選手というの は結局クリーンナップ、主力の選手におんぶに抱っこの状態で。狙いダマも絞れていない とかいう以前に、何と戦ってるのかよく分からない。ベンチと戦っているのかも分からな いし、野球をやってないですよね、自分たちで。ただ指示を待ったり、サイン通りのプレ ーをしてみたりとかだけで」 前期優勝の『緩み』が少なからず感じられる。逆に積極性がない。自分自身の課題を意 識しつつ、試合のなかであれこれ考えながら工夫してやろう、という意図もまったく見え てこない。勝てない以前に勝とうとする気概がなかった。 だが、今年のガイナーズはこれが本来の力なのだ、と言う。 「前期はたまたま勝ててましたから。(投手が)打たれても、たまたま打てたり。要は失点 が多くても、相手よりゲームセットのときに1点多く獲れただけでいい。今日だって8点 獲ってれば1点差で勝ちは勝ちですよ。そういうゲームを前期してたから、後期になって だんだんほかのチームもまとまって来たとこでボロが出るんですよね。最低です、多分。 このまま行ったらもう…」 前期リーグ戦を圧倒的な勝率で制した余裕は、すでに消え失せている。スタートダッシ ュに成功し、たまたま流れに乗ったから。たまたま相手が自滅してくれたから。それで勝 てたのだ。チームとしての実力が秀でていたわけではない。少なくとも智勝コーチはそう 考えている。 ミーティングとストレッチを終えてダグアウトまで戻ってきた国本主将に、選手たちを 集めて何を語ったのかについて聞いた。 「今の力はこんなもんや、と。前期優勝したことを忘れてもう1回。チャンピオンシップ は出られますから、思いっきりやって。いろいろ自分の課題持って。委縮してやるんじゃ なくて、積極的なプレーっていうか、明るくやろうと。そういうのがないと選手に伝染し て負のオーラになってしまうんでね。そういうのはチームとして避けないといけないので」 7年間、ガイナーズの中心選手として結果を残し続けているベテランが、今日のゲーム で感じていたことは、智勝コーチと同じ選手たちの積極性のなさだった。 「ベンチから見てても打ちに行く姿勢が見られない。受け手に回ってる。もう1回チーム を作り直す。作り直すっていう言い方はアレですけど、一緒にチームを作って行きたいで すね。前期、最初の内はちょっといい形で勝ち過ぎたっていうのがあるから、ちょっと負 けると…」 盤石の態勢で前期を制覇したように見えた。だが、すでにクローザーだったマエストリ が抜け、戦力自体が変わりつつある。本来のエースである高尾健太(24歳、メディアハ ウス)も肩がまだ癒えず、現場復帰できないままだ。経験のある主力組を除けば、このチ ームの選手は非常に若い。特に投手陣は酒井、西村拓也(23歳、福岡レッドワーブラー ズ)を除いて1、2年目の選手がほとんどである。 このまま気持ちが守りに入ってしまえば、波に乗れなければ、決して前期のような戦い 方はできない。いずれにしても、前期王者が後期のスタートダッシュにつまづきかけてい るのは事実である。しかし、国本は「まだ3試合ですからね。たかが40分の3ですから」 と、最後まで楽観的な姿勢を崩さなかった。 10日から16日までの3試合、連戦ではなく日程的には余裕があるが、この3試合で 現在の『借金2』を『貯金』に変えることができるかが大きなポイントとなるだろう。ガ イナーズが早くも正念場を迎えている。 スポーツライター高田博史 blog 『五人抜きジャンピングスロー』(http://tonythe12th.blog41.fc2.com/)より転載。
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