「心をささえる」 のぞみ学園主宰 北沢康吉先生

講演会のテープ起こし1
こころの健康づくり講演会
「心をささえる」
のぞみ学園主宰
開催日
場
所
北沢康吉先生
平成21年12月17日
白馬村ふれあいセンター
配っていただいたプリント、何枚か最初お配りしまして、ちょっと「もう少
し付け加えたいなあ」と思って、一番最後に改めて一枚「全般・総合」と言う
形でメモ書きしてみました。
ここからお話を始めたいと思います。
今紹介していただいたように、私は駒ヶ根市に「のぞみ学園」というフリー
スペースを開園しました。基本的には「不登校」の諸君たちと取り組みたい、
一緒に生活してみたいといった気持ちで始めたわけですけども、すでに丸21
年が過ぎました。
相変わらず不登校の相談は多いわけですが、その不登校の相談ていうのは小
さい頃ですね、保育園・幼稚園からあるんですよ。小学校はご存じのように去
年長野県は全国一でした。中学校も相変わらずいつもベスト5に入るくらいの
全国でも非常に高率のところにおりますよね。それから、高校生・大学生・専
門学校の生徒・学生もいくらでもいて、決して珍しくありません。
特にこの頃は大人の「うつ」の相談がとても増えまして、その内の一人の若
い 方 な ん で す け ど も 、半 年 く ら い 前 に 亡 く な っ た ん で す 。私 た ち は 特 に「 自 死 」
という言い方をしますけれども、
「 自 殺 」っ て 言 う の は 強 い 言 葉 で つ ら い で す よ
ね。
「 自 死 」と い う 言 葉 を こ の 頃 よ く 使 う よ う で す の で 、そ れ を 使 わ せ て も ら い
ます。
特に「自死」ということを頭に置いて始めた仕事ではないわけですけども、
結 果 的 に は 、か な り 大 勢 の 自 死 の 諸 君 や 大 人 に 出 遇 わ ざ る を 得 な か っ た の で す 。
改めてもう一回出遇った人たちを思い出し、後に付けたページに書き留めて
みました。もちろん全部仮名です。石井君も栃木君も結城君も全部仮名です。
そこに8人書きとめているわけですけども、更にまことに迂闊な話ですが、も
う 2 人 い た の を 思 い だ し 、も の す ご く 不 謹 慎 な 話 で す け ど も 、大 勢 の 諸 君 た ち 、
何千人という諸君たちと重なっちゃってますので、大人が亡くなった、親が亡
くなったという人もいまして、お母さんで一人、それから、ひどい自殺未遂を
されたお父さんが一人おります。
私たちは全国から相談に見えますので、北海道から沖縄まで相談に見えます
ので、一回きりの相談が、結構多いのです。
不 登 校 の こ と に つ い て 、親 が は る ば る 来 て く れ れ ば 、取 り あ え ず は 一 回 き り 、
時間はその代わり丸2時間かかりますけども一杯お話を聴いたり、こちらから
お伝えもして、十分わかって安心して帰ってもらえますね。親がわかって安心
してもらえると、まず子どもは、よほどそれまでに追いつめられていない限り
大丈夫なんですね。
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私たちのこの21年の歴史というのはほとんど嬉しい歴史なんです。諸君た
ちがいろんな形で動いていくんです。しかし、同時にそのもう半分にですね、
今言ったように辛い思い出が幾つもあります。たまたまもし「のぞみ学園」の
中でそれが起きたら、おそらく一つ起きただけも、私たちはそこでもうこの仕
事は続かなかったろうと思います。たまたま、ホントにこれはたまたまだと思
います。
今まで、出来るだけそのつどお墓参りに行ったり、お葬式に行ったりしまし
た。遠い所では和歌山県、それから北の方と言ったらいいでしょうか、東の方
と言ったらいいでしょうか、栃木県にも行っております。
当然東京都とかその近辺、長野県内とかその近県です。で、そこでですね、
あのタイプに分けるのも変ですけどれも、やっぱり明らかに二つあるんです。
一つは、めちゃくちゃ辛いところで起きた場合です。その時、めちゃくちゃ
辛いところで起きたのですから、ものすごい辛い残念なことですけども、あれ
だけの苦しみですよね。
ま ず 、N ち ゃ ん で す が 女 の 子 で す 。こ の 子 は 、
「 記 憶 が 飛 ぶ く ら い 」の 苦 し み
の中におりました。
いつもじゃないですけれど、ひどくなると、例えばお母さんが、お母さんも
も う 必 死 で 、本 人 も も ち ろ ん 必 死 で す か ら 、な ん て 言 い ま し ょ う か 、
「のぞみ学
園」にとにかく来れば何とかなるんじゃないかと思われている。
しかし、私たちは神様でも仏様でもありません。本当に申し訳ないくらい無
力 な ん で す け ど も 、「 何 と か な る ん じ ゃ な い か 」 と 親 も 、 本 人 も 必 死 で す の で 、
ものすごく必死なところで来られるわけです。来たとき、今でも覚えてますけ
ども、車から降りるとき大きな女の子だった、骨太の女の子だったわけですけ
ども、いきなりなんかふらふらっと倒れそうになってですね、お母さんが運転
してきたんですけど「
、 あ ん た 誰 ? 」て 言 っ て 、今 で も 忘 れ ら れ な い ん で す け ど 、
一 生 忘 れ ら れ な い ん で す け ど 、し ょ っ ち ゅ う 顔 合 わ せ て い る お 母 さ ん に 、
「あん
た誰?」って言ってですね、無理に嘘ついているのではなくて、めちゃくちゃ
の苦しいところで誰が誰だかわからんようになっちゃったんですよね。
あの時だけは彼女は一人だけの時もあったりして、私たちはですね、穏やか
でない言い方しますけども、包丁なんかも全て隠しました。
その彼女が結局苦しいままやがて自分の家の近所で、高い階から飛び降りて
自死しちゃったのです。関西のお嬢さんでした。
更に次の一郎君ですけど、たまたま東北の若者でした。きれいな顔をした2
0代前後の青年です。何年か関わりました。この人も本当に苦しんで苦しんで
って感じだったのです。自動車に飛び込んでしまいました。
この2つが、特になんかもう本当に苦しみの果てにっていう例なんです。
逆に、例えばY君(九州)とかその次のU子ちゃん(四国)なんかですね、
苦しい状態が一段落して、親もやっと目が離せて、外に買い物に行ったりでき
るようになり、外からお母さんが電話よこして、娘さんに「一緒にデパートへ
行こう」っていうくらいの状態になっていたのです。一緒に母と娘で外出を楽
しんだりするくらい、かなり戻ってきておりました。その子が亡くなっちゃっ
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たんです。
家に問題なんか無いです。どの場合も。みんな一生懸命で心くばりができる
人 た ち で 。そ の お 母 さ ん が で す ね 、
「 何 で 今 な の よ ! 」っ て 言 っ た ん で す 。も っ
とむちゃくちゃ苦しいばかりだったら、どっかで親も納得できなくても分かる
け れ ど も 、楽 に な っ て き た っ て 思 う こ ろ 、
「 何 で 今 な の ? 」っ て 、も う 電 話 の 向
こうとこちらで泣きながら話をしたのを覚えております。
他にもそのS君なんかもそうですけども、やっと親が彼を家において安心し
て外に出られるようになって、この人は名古屋近辺の人なんですけど。ときど
き名古屋で親の会をやったりして、結構大勢人生のお仲間と言っていい人たち
が集まるわけですけども、あそこの大通りのホコ天で、夫婦で久しぶりに日よ
けのパラソルの下でニコニコしながらジュース飲んでました。
「あ~嬉しいなぁ。
夫 婦 で 初 め て 安 心 し て 出 ら れ た ん だ 」、そ う い う 状 態 で 。そ れ か ら ま も な く 亡 く
なってしまいました。
だ か ら こ れ は 、 は た か ら 見 る と 結 構 楽 に な っ て き た と こ ろ で の 、「 え 、 何 で
今?」っていう例です。ですけれど実際には亡くなる時、自死をする時は、こ
れはまた後で触れますが、おそらくほぼ90何パーセントまでは「うつ・鬱」
状態なのではないでしょうか。その時にひどい鬱状態ですと自死する気力も無
いようです。だからおかしな言い方ですけども、かえって安心なのです。それ
が、軽癒しかけて、自死するだけの気力とかが出てきた時がかえって危険なん
ですね。
このことも今日の大事な注意点です。だから、どっかで「あーやっとなんか
一段落したな」って時は、すべての人ってことじゃないですけども、なんかや
っぱり安心できない部分があります。
大勢の諸君たちですし、段々こっちは頭が老化して71歳ですけども、記憶
がどこかあいまいになっている所があります。
そんな中で、まさに美少女って子がおりました。この子は時々自殺未遂ある
いは自殺企図することがあって、割合近くの子でしたので、わ~わ~泣きなが
ら電話がきます。壁のフックへタオルをかけて死のうと思ったけどそのままフ
ックがはずれて一緒に落っこっちゃったって。
近くですので、出かけて行って辛い気持ちだけはしっかり聴こうと思い、聴
い た り し な が ら ず っ と 付 き 合 っ て き た わ け で す 。あ る 時 久 し ぶ り に 逢 い ま し た 。
たまたま行っていた高校でいろんな出遇いがあった。定時制高校でした。そこ
でかなり元気を取り戻して、卒業しました。
ある時、私たちの割合近くにある第3セクターの温泉の食堂に彼女が働いて
いて、看板娘みたいにしておりました。その彼女がむこうから声をかけてくれ
ました。びっくりしましたし、嬉しかったですよね。ですけど、彼女もそれか
らそう経たないうちに自死したのです。
そんな風に、いろんなタイプの人たちがいまして、結局結果的にはかなり大
勢の諸君に出遇って来たんだって思います。
そ こ に あ げ た 最 後 の T 君 、み ん な 仮 の 名 前 で す 。こ の 人 の こ と を お 話 し ま す 。
彼はですね、私から見ればまるで若者って感じでしたけど、35、6歳くらい
人でした。かなり長い間苦しんだと思うんですけども、鬱病で、精神科のお医
者さんにかかりながらやっていたんですけども、どうも、お医者さんだけでは
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だめだ。どうしてもカウンセリングも必要だ。で、私の所へ彼、本人が電話を
して来てくれたんですね。
お医者さんはものすごく大事です。この時はとりわけ大事ですけども、でき
れば医療とカウンセリングとこれはまた後で言いますけども、両方に出合うと
いうことはとっても大事なんですね。そんな形で彼とのカウンセリングが始ま
り ま し た 。彼 は 割 合 な ん て 言 っ た ら い い か 、
「 理 屈・理 論 」で い ろ い ろ 言 う 人 で 、
どうしてこういう風になるのかとか、そういう形でメモ書きでしっかり質問事
項を持って来てですね、そしていろいろを分かろうとしたんです。ですけどこ
れもまた後で言いますけども、その時に人によっていろいろ現れ方が違うんで
す。
彼の場合には要するに「理屈で、筋で」どういうことかってこと「ちゃんと
知って越えよう」って。これはある意味では正しいんですけども、実はその裏
にですね、訳のわからない「ものすごい不安や恐怖」があって、それがたまた
ま彼の場合にはそういう言葉になって出て来るということですね。
カウンセリングっていうのはいつもですけど、その奥の方にある「不安や恐
怖」の方に一緒に応えていく、そっちが基本なんですよね。そんな風でした。
同時にですね。私たちは、今からどうでしょうか、7、8年くらい前からホ
ントはもっと前からなんですけども、あの~私も段々60歳を過ぎ、今は71
歳の訳ですけども、60歳を過ぎた頃ですね、やっぱり仲間をいっぱい増やし
て一段落にしたいと思うようになりました。さっきあの津滝さんが紹介してく
れましたけど、私たちはロジャース流カウンセリング、聴いたことないかも知
れませんけども、ロジャース流カウンセリングって言うのはいま巷に溢れてい
る日本で最も盛んなカウンセリングです。
手法って言ったらおかしいんですけど、
「 ロ ジ ャ ー ス 流 」っ て あ え て 言 わ な い
ことが多いんです。いい加減なカウンセリングはいっぱいありますよね。
正式のカウンセリングは「ロジャース流カウンセリング」っていうアメリカ
のカール・ロジャース、もう亡くなりましたけども、その方が開いた。開いた
と言ったらいいのでしょうか。それはひたすら聴くっていう、ひたすらその相
手の不安な気持ちを大事に聴いていくということなんですね。
例えば例を挙げますと、この間「沈まぬ太陽」って映画を見ました。とても
良い映画だったですけども。あの中にですね、主人公が次から次へとあちこち
転勤、職場の中での人事のイジメみたいなものですね。あの、東京本社にいた
のをわざと罰の意味も込めてカラチにとばしたり、エジプトへ、アメリカのど
こかへ飛ばしたりするわけです。
で、単身赴任で彼は行くわけで、小学生か中学生くらいの子どもが2人いる
のですけども、ある時カラチへまた突然の転勤になった。その時、彼の息子さ
ん が 、お 父 さ ん に 言 う ん で す ね 。明 ら か に 、そ の 時 の 流 れ は で す ね 、
「行くのが
不安だ、行きたくない」って気持ちなんですね。
その彼の息子さんがお父さんの前で、
「 カ ラ チ っ て ど ん な と こ ? 」っ て 言 い ま
し た 。 そ の 時 に 、 答 え は 二 つ あ る ん で す 。「 カ ラ チ っ て ど ん な と こ ? 」。 私 は た
ま た ま 、昔 行 っ た こ と あ る ん で す け ど 、
「 パ キ ス タ ン の 首 都 で 、な か な か 面 白 い
場所だよ」って。エキサイティングな、古い歴史がありますし、そういう答え
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方があります。一つは。人口いくらぐらいだとか。
もう一つはですね。
「 や っ ぱ り 一 緒 に 行 く の は ち ょ っ と 不 満 な の か な 。不 安 な
の か な 。」っ て 答 え が あ り ま す 。ロ ジ ャ ー ス 流 カ ウ ン セ リ ン グ は 完 全 に そ の 2 番
目の方なんです。あの~子どもが親に向かってなんか言う時に、あるいは、生
徒 が 先 生 に 向 か っ て な ん か 言 う 時 に 、例 え ば 、
「何で学校へ行かなきゃあならん
の ? 」と 、も し 生 徒 が 先 生 に 言 っ た と し た ら 「
、学校って所はこういうところで、
知識の蓄積がものすごく大事なんだと、仲間と一緒に頑張り合いながら、ちっ
たあ、勉強が嫌でも越えていくことが大事なんだ」っていう答えがあります。
だけどもう一つ、彼の中ではちょっと学校へ来ること自体が辛くなってきた
り 、切 な く な っ て き た り し て い る 可 能 性 の 方 が 強 く て 、
「何で学校へいかんやな
ら ん の 」っ て 質 問 し た わ け で す か ら 、
「 あ 、君 は あ れ か な 、学 校 へ 来 る の が ち ょ
っ と シ ン ド ク な っ て き た の か な あ 。」っ て 、こ れ が も う 、カ ウ ン セ リ ン グ 的 に は
正解なんですね。
そ う す る と 彼 は 、自 分 で も「 俺 は も う 嫌 な ん だ よ 」っ て 言 う 代 わ り に 、
「何で
学 校 へ … 」っ て 言 っ た 訳 で す か ら 、
「 あ っ 、先 生 わ か っ て 聴 い て く れ て い る 」っ
ていう、彼はそういう風にきっと感じます。
す る と も っ と 深 い と こ ろ に 話 は 進 ん で く ん で す ね 。と こ ろ が 、
「学校ってこう
い う わ け で 大 事 な ん だ 。」っ て み た い な 事 を 言 い ま す と で す ね 、話 は そ こ で 終 っ
ちゃうんですね。
そんなわけで、あの、T君の場合はですね、しきりに、理屈の方で、筋目の
方でいろいろ聞いてきましたけども、明らかにその奥にもう[動こうにも動け
ない]自分がいるんだなあ。ってのがずっとありました。その中で、あのー私
たちの研修会、たまたま駒ヶ根でもやってます。
駒ヶ根と、千曲と、是非また良かったら、千曲は近いですから、加わっても
らうと良いんですけども、もう一つ群馬県の前橋まで私たち毎月行ってるわけ
ですけども。仲間に出遇うということはとても大事で、仲間って言うのは、心
の方をちゃんと聴いて反応してくれるってことと、そこで何を言っても安心安
全だっていう、この2つがですね、絶対大事なんです。仲間っていうのは、心
の仲間ってのは、その2つが必要なんです。
何かを言ったらピシっと叱咤激励されるんじゃないかってのは大体この時は
危険です。ひどく苦しんでいる人たちはそういうところを避けますから、お父
さんを避けたり、先生を避けたりするわけですけども、とにかく「何を言って
も大丈夫」だっていう、安心安全のお仲間の所にいますと、段々自分で安心し
て自分の心の奥をずっーと覗いていけるようになって、
「 あ ー 僕 や っ ぱ り 今 、何
か学校へ行くことがものすごく辛くなってきてるんだよな。だから、ああいう
言 い 方 し ち ゃ っ た ん だ よ な 」っ て い う 風 に し て 、自 分 で わ か っ て く る ん で す ね 。
このことはとても大事ですので、後でまた改めて触れます。
そのことと、要するに信用できる仲間がいる。そこなら何でも話せる。それ
は、私と彼が、T君が一対一でカウンセリングしてるよりも、経験的にわたし
は思いますけど、もっと意味があります。
それはね、大勢の仲間の力です。これもちょっと後でとても大事なことにな
っていく訳ですけども、チームを作っていくと言うことに関係していくわけで
すけども、そんな形で彼、駒ヶ根の、駒ヶ根は第2日曜日ですが、千曲は、皆
さん近いですから是非と思うんですけど、第3土曜日で、昼間の一日がかりの
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研修・相談の会なんですけども、それに彼出始めたんですね。
それは私にとってとっても嬉しいことで、そこでも苦しんでいる人はいっぱ
いいるわけなんですけども、そういう大勢の仲間の中にいて、お互いに支え合
い な が ら 、え ー 、何 か 気 持 ち の 何 か を「 こ こ へ 来 れ ば わ か っ て 貰 え る 」と い う 、
完全な一つの心の居場所ができると言うことです。それだけでもとても大きな
救いになりますので、そうしながら、私との一対一のカウンセリングもあり、
お医者さんには彼一所懸命きちんと通ってましたので、お医者にもきちんと通
って。
「このまま行ってくれると有難いなあ」と思っていました。ただ、ご家庭の
こと、決してそれは悪口言ったりするということじゃあないんですけども、当
たり前ですから、30何歳までずっと今までいろんな挫折があったりしながら
きてるわけですから。親の方もどこかでちょっとなんか呆れ返っているところ
もあったりして、
「 い つ ま で こ ん な 風 な ん だ 」み た い な 気 持 ち に や っ ぱ り な っ ち
ゃうわけです。何年も一生懸命やってきて、って感じで。
そういう中で、私たちはカウンセリングは、あのう、お金をいただいて、1
時間4千円頂いてやってますので、お金を頂かなければ、気楽にうちへこちら
か ら 電 話 か け た り し て 働 き か け て 、「 是 非 一 回 は 親 の 人 に 来 て も ら っ た 方 が い
い」って言えたんですけども、お金をもらってやってると、いつもどこかで後
ろめたさがありまして、ご家族へ電話したりすると何か押し売りみたいな押し
つけみたいな感じがどうしても私たちに残るんですね。
ところが本当に「そんなこと思ってちゃあいかん」のだってあらためてその
時思ったのですけども、そこのとこだけがね、ぽんって空白だったですね。ご
家族の支えは絶対必要です。これが「うつ」の時どうなるか、これは基本的に
私はあのう、自死する人たちの90何パーセントまではもう何かきっかけ、そ
れは失業かも知れませんし、色々ありますけども、失業したら即自死するかっ
て、そうじゃあないんです。失業したって頑張っている人たちいっぱいいるわ
けですよ。
失業してその連続の例えば派遣社員か何かで、もうなんか、どこ行ってもダ
メだって状態になった時に、秋葉原事件みたいなああいうふうに暴発すること
もありますけども、大部分の人たちってのは鬱状態にあります。もう私に言わ
せるとほぼ全員が鬱状態になる。鬱状態になった時、そこでどうするかって時
にですね、家庭は彼がそこで生活してる場所ですからとても大事ですね。
ま ず ど ん な こ と が 起 き る か 、こ れ も 全 部 自 死 に 関 係 す る 大 事 な こ と で す か ら 、
昼夜逆転が起きます。うんと小さい子どもはどっかでお父ちゃんお母ちゃんと
一緒に動きたいみたいなところがありますから、保育園、幼稚園に行かなくて
も朝一緒に起きたりまた寝たりしますけども、大きい子たちから大人は、ほぼ
全員が昼夜逆転します。
しかし、睡眠のサイクルが数時間後ろへズレる。一般の常識だと真夜中の1
2時だと思うのが彼や彼女にとってはせいぜい夕方なんですね。それでずーっ
とそのまま時間が進んでって夜中の四時、五時、朝方になると体内時計は完全
に真夜中になりまして初めてぐっすり寝る時間になりますね。
不 登 校 も 、自 死 と 不 登 校 を そ の ま ま 結 び つ け る の は か な り 無 理 が あ り ま す が 、
心理的な状態がかなり似ているところがあるから言うわけですけども、親とか
先 生 か ら す れ ば 遅 く ま で 起 き て お っ た か ら 朝 寝 れ ん の だ 、と こ う い う わ け で す 。
こ れ 、 常 識 か ら す る と そ う で す ね 、 だ か ら 、「 早 く 寝 ろ 」 っ て 言 う わ け で す 。
ところが彼や彼女の中ではもう、夜中の12時は体内時計ではせいぜい夕方
ですから、当然自分だって無理に寝ようとして努力します。と、どういうこと
が起きるかというといくら一生懸命になっても寝れんのですから、皆さん不眠
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の経験てあるでしょうか。私は、若いころ二度ほどひどい不眠症になったこと
あるんですけど、あんな苦しいことないですよ。横で例えば私の弟がすうすう
気持ち良さそうに寝息をかいている。腹立ってきますよね。で、もう頭は疲れ
果ててほんとは眠たいのに寝れないって言うのは、ほとんど拷問そのものです
よね。そんな状態を続けますと、新たなストレスをそうでなくともいっぱいス
トレスが絡んで起きたところへ、新たなストレスをかけますので余計大変にな
ってきます。
昼夜逆転を治そうとしてる最中にしたら、もう何かが一段落してきてもうそ
うしたいと本人もいうんだったらまた別ですけども、そうでない限り、その眠
れる時に寝る姿をそのまま大事に認めるってことはですね、この時のうつ状態
をよりひどくしない最高のことの一つなんですね。
ほっときゃいいってことですけども。これがなかなか親だって先生だって世
間だってみんな普通の世間の常識の中におりますから、出来ません。
だから親というのは環境とすると一番大事な人たち、先生もそうですけども
大 事 な 人 た ち で 、こ の 時 に 限 っ て は 昼 夜 逆 転 、い い ん で す よ 。大 事 な ん で す よ 。
心理的にはこういうことで、鬱状態にどうしてもそうなるんですって、ちゃん
とわかって、親がわかって安心しておれば子どものそういう姿にピリピリせず
に 済 む わ け で す よ 。「 そ の ま ま に し て お こ う か 」 っ て な り ま す よ ね 。
鬱の時のことをいろいろあげていきますけども、当然睡眠のサイクルが大き
くズレますから、一日のリズムが大きくズレて、朝飯なんか食べないのが普通
で、昼が初めての1食目で、夕飯がまあ2食目で、この時だって家族で一緒に
食べないってことがいくらでもあり、鬱状態にむしろ多いくらいで、どっかで
文科省のありましたよね、夕飯は一家団欒の時間で一緒に食べなきゃあいけな
いなんて、国の文科省がそんなこと決めることじゃあないんですね。心の中に
立ち入ったことは。
緑の時は渡り、赤は渡ちゃあいかんて、そういう表面の、心にかかわらない
約束は良いんですけど、心にかかわって起きているんじゃないかというような
ことについて、国とか世間が関与するってことはね、完全な越権行為です。
ほとんどの諸君が、1食目は昼。2食目が夜。それももう一人で食ったりす
ることが多くて、更にもう一回目は真夜中ってふうですよね。
カーテン閉めきったり、それからですね、ものすごく何か訳のわからん疲労
がでます。
例えば、無理してちょっと半日ばかり、学校へ行って来ると後はもうぐたー
っと疲れちゃったり、修学旅行なんかそうですけど、中には必死になって行く
諸君がおりますけど、帰ってきたら玄関から上へあがれないくらい疲れちゃう
って子がいるんですね。あの、訳の分からん、異常なまでの疲労が出ます。鬱
の特徴です。
そ れ か ら 、自 分 を 責 め ま す 。
「俺が生きていることで周りにとても迷惑かけて
い る 」と か 、
「 俺 は 生 き て い る 価 値 が あ る だ ろ う か 」と 、自 分 の 生 き て い る と い
う、もう生存そのものに関する価値観みたいなところですね、そのものがもう
揺 ら い じ ゃ っ て 、「 生 き て て 意 味 が な い 」 っ て 気 持 に な る ん で す ね 。
当然そうすればもう「自死」につながることになったりしますけれども、そ
ういった、後でもう一回ちょっと時間があったら触れますけども、これは「う
つ 」 の 時 の 大 き な 特 徴 で す 。 従 っ て 、「 俺 は う つ だ 」 な ん て 人 は い な い わ け で 、
必ずそういうような形で現れます。
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あるいはもう一つあります。もう一つも二つもあります。
「うつ」が病気や症状のようになって現れます。頭の天辺から爪先まで、頭
の天辺ですとね、円形脱毛。いわゆるいろんな脱毛はもう完全にストレスによ
って起きた鬱の現れですよね。それから要するにこれは髪の毛にかかわること
で、皮膚ですから、外側の皮膚に関するすべてに鬱が症状として現れます。ア
トピー、いろんな湿疹、私あのー、アトピーについてはもう相談に来る諸君た
ちはアトピーがとても多いので、私はアトピーのひょっとすると90何パーセ
ントまでがもう心理的なことから来ているんじゃあないかなって思います。
ただし、医療の助けは必要なんですよ。大事なことですから、丹念に言いま
すけど、身体の中へ入りますと人間は、受精卵ができてそれが細胞分裂を繰り
返していきながら、やがてドーナッツのような形になって、内側にもぐり込ん
で い っ た 部 分 が こ の 内 側 に あ る 消 化 器 系 、あ る い は 呼 吸 器 系 に な っ て い き ま す 。
で、外側の皮膚ですから、外側の皮膚と内側の皮膚はもともと同じなんです
ね。
皮膚によく出ますので、例えば、内側に出ますと喘息。小児喘息なんてあり
ますね。小児喘息の諸君は、やがては不登校になる可能性がかなり高いだろう
と。だけど、それを無理せずに越えていくとかえって素敵な若者になるぞと、
もういっぱい出あってますので、その時に例えば喘息を治そうとしてあまりそ
っちへ必死になっちゃいますと、かえってまずいんではないかと。
喘息は大変ですから、発作を和らげる薬は是非飲んでいった方がいい。それ
が 新 た な ス ト レ ス の 加 重 に な り ま す か ら 。そ れ は そ れ で い い の で す け ど も 、
「完
治 さ せ よ う 」み た い の は 却 っ て 危 険 で 、
「 心 の ス ト レ ス が 鬱 と な っ て 、そ う い う
形で現れてるんだな」っていう理解だけはちゃんとしたうえで、お医者さんの
お世話になるということですね。私は小児喘息はほとんどそういうことではな
いかと思っております。
それから、ずーっともう呼吸器系は当然「肺」にかかわるもの等いろいろで
す 。ず っ と 前 に 来 て い た 女 の 子 で す け ど も 、ち ょ っ と 大 変 な 状 態 に な り ま し た 。
「過呼吸」ですよね。パニック症候群て言いますが。息が「わーっ」と激しく
なっていくわけです。もちろん、それはそれで一応処置の仕方があるわけです
けども、まあ一応呼吸器系に現れるものの一つといって良いでしょうか。
それから、消化器系ですと、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胸焼け、あとずっと下
の方へ行ってですね、便秘、神経性の下痢、頻尿、おしっこがでないと言うこ
と も あ る か も 知 れ ま せ ん 。ほ と ん ど 、あ ら ゆ る 病 気・症 状 と い う 形 で 現 れ ま す 。
私たちがこの21年間に出遇った人でお医者さんから「あなたのガンはストレ
ス に よ っ て 起 き た も の だ 。」 と は っ き り 言 わ れ た 人 が 、 5 0 代 の 主 婦 で お 一 人 、
1 4 、1 5 歳 の 少 年 で 一 人 お り ま し た 。
「 ス ト レ ス に よ っ て 起 き た ガ ン 」と 医 者
から診断されたのです。
そ う い う わ け で 、ひ ょ っ と す る と 「
、 骨 折 」だ と か そ う い う の は 別 で す け ど も 、
抵 抗 力 が う ん と 無 く な っ て い き ま す か ら 、当 然 い ろ ん な 痛 み に な っ て 現 れ た り 、
とにかくいろんな身体の不具合・不調になって現れたり。例えば偏頭痛なんか
出たりとか、だから例えば頭痛なんか出た時にそっちを一所懸命やって、頭痛
が治るとですね、中の吐き出しが「頭痛」という形で出ていたわけですから、
今度は関節痛に変わるとか腹痛に変わるとか変わっていくんですね。
従 っ て 、心 理 的 な こ と を 抜 き に し て「 起 き た 症 状 」だ け を 追 っ て い き ま す と 、
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たえず病気と追っかけっこしながら、実は「心のことで起きたもの」をその症
状にだけ目がいってそれを直そう治そうとだけしていきますと、かえって深み
にはまって行くみたいなことになります。とにかく、いろんな病気のかなりの
部分が、深くストレスによって起きた「鬱」とかかわりがあるのだと。
鬱が現れてると、
「 仮 面 鬱 病 」っ て 言 葉 も あ り ま す け ど も 、仮 面 て お 面 で す よ
ね。鬱病は鬱として現れれば分かりやすいんですけども、そう現れずに、今言
っ た よ う に 食 欲 不 振 と か 、病 気 に な っ て 出 た り と か 、過 食 に な っ て 現 れ る と か 、
私は「拒食」だって「うつ」の現れではないかと思っていますけれども。
ま た 「 行 動 に 現 れ る 」 場 合 も あ り ま す 。 い わ ゆ る 「 強 迫 神 経 症 」( 強 迫 性 障 害 )
とか、一応「行動」だと思うんですけど、何かにひどく拘るような状態になる
ことがあります。
私たちだってありますよね。
「 ガ ス の 元 栓 ち ゃ ん と 閉 め て き た か な 」と か 、
「玄
関の鍵ちゃんとかけてきたかな」とか、ふっと思い出したら気になって気にな
ってとうとう家に戻って、確認しなければおれないみたいなこと。そんな時は
必ず自分の中にストレスが知らないまに溜まってきていて、そういう形で現れ
る ん で す よ ね 。「 強 迫 神 経 症 」 と か 「 強 迫 性 障 害 」 と 言 い ま す 、 同 じ こ と を 言 っ
ているわけですけども、何かに拘っちゃってもう身動きできないくらい不都合
になるほど拘りが出たら、それはすでにちょっと病的なんですね。ある数字が
現れると高速道を走っていてもあわてて、インターから、直近のインターで出
て、もう一回元のところに戻って、進み直しをするみたいなことだってあるん
です。
「 不 潔 恐 怖 」、も う あ ら ゆ る も の に 触 れ な く な っ ち ゃ う な ん て こ と も あ り ま す
けども、あれは全部ある意味では「行動」に現れた姿ですよね。全部「鬱の現
れ」と言っていいと思います。
従って、
「 心 の 奥 の で は 、鬱 が も の す ご く わ だ か ま っ た り 、い っ ぱ い に な っ て
いるんだな」ということですから。たまたまいろんな形にぎやかに現れていて
くれると却って安心だってとこがあるわけですけど。例えば症状が行動がふっ
と消えたとき、本当はまだいっぱいあるはずなのに、ふっと消えたとき、かえ
って心配なんですよね。
あの~、武田君(仮称)のところから話が横に行きましたけども、武田君に
もう一回戻ります。
家 っ て の は 、家 庭 っ て の は 、も の す ご く 大 事 で す 。そ れ は 、親 が そ の 子 た ち 、
その若者たちに対して、何かまずいことやっちゃった、その責任があるって意
味じゃあなくて、不登校の諸君だとか鬱で相談に来る人たちを見てますと、家
庭的にはむしろ整った平均以上の方々が多いのです。
不 登 校 が 起 き ま す と 、「 家 庭 に 問 題 が … 」、 こ の ご ろ あ ま り 言 わ な く な り ま し
たが。
「 母 親 が 強 す ぎ て 、父 親 の 影 が 薄 い せ い だ 」な ど と 昔 よ く 言 わ れ ま し た け
ど も 。あ る い は 、母 親 の 愛 情 ・ ス キ ン シ ッ プ 不 足 で 起 き た ん だ と 、母 原 病 だ と 。
根拠の無いひどい言葉ですけど、あるいは母子家庭でおきやすいとか、欠損家
庭・・・ひどい差別用語ですが、そのようなこと全然関係ないですよね。
三世代の家からも、祖父ちゃん祖母ちゃんがとっても良いお家からも、どん
な家庭からも不登校も「うつ」も出ます。 (つづく)
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