出版倫理 -ジャーナル・エディター 研究者の視点からー

出版倫理
-ジャーナル・エディター・研究者の視点からー
東京大学大学院工学系研究科
医療福祉工学開発評価研究センター
センター長 教授
Executive Editor, Computerized Medical
Imaging and Graphics
佐久間一郎
科学における不正行為の主要なもの:
FFP
1. ねつ造(fabrication,存在しないデータを都合よく
作成)
2. 改ざん(falsification ,データの変造、偽造、クッ
キングやトリミング)
3. 盗用(plagiarism ,他人のアイデア、データ、研究
成果を適切な引用をせずに使用)
参考文献:
東京大学大学院工学系研究科:科学研究における倫理ガイドライン」、p10, 2010
東京大学大学院工学系研究科「科学研究における倫理ガイドライン」、2010
過去に経験した例( Computerized Medical
Imaging and Graphicsの作業以外での経験も
含む)
• 他人の論文を盗用した例(review processで対応)
• 投稿者が過去に発表した論文の二重投稿
( review process で、ソフトウェア等を用いて検出し
対応)
• 学会大会特集論文号にて、論文投稿を薦めた著
者より、学会予稿集とほぼ同じ内容の論文が提出
された( review processで発見)
研究者として
• 学会活動の活性化のために、学術集会での優秀
論文の雑誌投稿を推薦するシステム
• 様々な考え方が共存している?
• 学際領域での研究の成果発表の考え方
• 新領域が未整備で、従来の専門分野での発表が求め
られる
• 両分野からの別の視点での議論が重要となる
基本的な考え方をいかに実際の問題に適用すべき
か、悩むことが多い
査読者として
• すべての文献をチェックできているかどうか
• 全文検索・類似度判定のソフトウェアの整備は有効
• 学会大会論文特集号のように、過去の学会大会
での発表に基づき、論文投稿掲載が推薦され、投
稿された論文に関して、どの程度の過去の発表と
の差分を要求すべきなのか
基本的な考え方をいかに実際の問題に適用すべき
か、悩むことが多い
教育者として
• コピー&ペースト等がより技術的に行いやすくなっ
た社会で育ってきた学生に対する適切な倫理教育
• 学生の国際化に伴い、様々な文化的・社会的状況
で育ってきた学生に対する適切な倫理教育
研究活動の社会展開への要求・
社会に対する影響の増大
• 行政の意思決定に対する客観的な論拠として学
術論文が引用される可能性
例: 医療機器の承認審査における臨床評価報告書の
一部として、学術論文が参照される可能性
Text adopted by the World Conference on Science 1 July 1999. Definitive version
The World Conference on Science for the Twenty-first Century: A New
Commitment, assembled in Budapest, Hungary, from 26 June to 1 July 1999 under
the aegis of the United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization
(UNESCO) and the International Council for Science (ICSU):
Preamble
1. Science for knowledge; knowledge for progress
2. Science for peace
3. Science for development
4. Science in society and science for society
Preamble部分の記述の一部
9.the ever-increasing need for scientific knowledge in public and private decisionmaking, including notably the influential role to be played by science in the
formulation of policy and regulatory decisions,
• 4.2 Clinical data
Definition: Safety and/or performance
information that are generated from the
clinical use of a medical device.
Explanation: Sources of clinical data
may include:
(i)
Results of pre- and postmarket
clinical investigation(s) of the
device concerned
(ii) Results of pre- and postmarket
clinical investigation(s) or other
studies reported in the scientific
literature of a justifiably
comparable device
(iii) published and/or unpublished
reports on other clinical
experience of either the device in
question or a justifiably
comparable device
東京大学大学院工学系研究科での取り組み
• 倫理ガイドライン研修資料の整備
• 研究倫理委員会等、倫理審査・研修体制の整備
おわりに
• 科学者の倫理的な行動が、適切な研究成果の社
会実装、適正な行政の実現のためには不可欠と
なっている
• 研究倫理全般に関する啓発が重要であり、その中
で出版倫理をとらえるべきである
• 基本的な考え方を個々の具体例にどのように適応
すべきかについての情報共有が重要となる
• 社会との科学コミュニケーションの一層の充実が
求められる