手引き

平成27年度指導活用技術
手引き
食味ランキング特 A 相当米の条件
1
はじ めに
一般財団法人 日本穀物 検定協会 の米食味 ランキング で、
「 特 A」と評価される 米は
どんな米でし ょう。どう すると評 価を上げ られるの でしょう。 現地実証圃の 結果も
含めて解析し 、 栽培管 理の手段 を提示し ます。
2
一般 財団 法人日 本 穀物 検定 協会の 食 味官 能評価
1)特 A 水準を 確保する ためには 、コシヒ カリ、あきさか りとも 味度 80 以上 、玄米
タンパク質含 有率 6.5% 以下、整 粒歩合 70%以上が必 要条件 で す(図1)。な
お、玄米タ ンパク質 含有率が 低すぎると(5.5%未満)、基白粒 や胴割 粒が発 生
しやすく、ま た食味評 価は激し く落ち込 む危険 性が 増します 。
2)官 能 評価 にお け る「 外 観」「香 り 」「 粘 り」 は、 一 定 水 準 以 上必 要 で、 それ を下
回る と総 合評 価を 引 き下 げる 関係 にあ り ます (表 1、 図2 )。 特に 「香 り」 に敏
感で、異臭に より総合 評価は 極 端に下が ります(表 1の 2010.2012 年など)。
0.90
0.90
0.70
0.70
0.50
0.50
食
味
総
合
評
価
0.30
2013
2012
0.10
2011
-0.10 60
70
80
90
100
2013
0.10
70
80
90
2011
100
2010
-0.50
味度
味度
0.90
0.90
0.70
0.70
0.50
0.50
2014
0.30
2013
0.10
2012
2011
-0.10 4.5
5.5
6.5
7.5
8.5
2010
食
味 0.30
総
合 0.10
評
価 -0.10
4.5
-0.30
2014
2013
2012
5.5
6.5
7.5
2011
8.5
-0.30
-0.50
玄米タンパク質含有率
-0.50
%
0.90
0.90
0.70
0.70
0.50
2014
0.30
2013
0.10
-0.10 60
2012
-0.10 60
香りマイナス 異臭など
-0.50
食
味
総
合
評
価
2014
0.30
-0.30
-0.30
食
味
総
合
評
価
食
味
総
合
評
価
2014
2012
65
70
75
80
85
90
95
2011
食
味
総
合
評
価
玄米タンパク質含有率
%
0.50
2014
0.30
2013
0.10
-0.10 60
2012
65
70
75
80
85
90
95
2011
-0.30
-0.30
-0.50
-0.50
整粒歩合
%
コシヒカリ
図1
整粒歩合
%
あきさかり
食味 関連形質 と食味総 合評価の 関係
※ 明らかな例 外は除いた
表1
食味官 能評価に おける総 合評 価と 評価項目間 の単相関 係 数
年
n
2014
2013
2012
2011
2010
2009
外観
香り
0.58
0.42
0.67
0.47
0.68
0.69
0.69
0.51
0.72
0.48
0.91
0.03
60
74
79
60
39
15
0.80
0.60
総
合
評
価
味
0.86
0.86
0.95
0.93
0.98
0.91
粘り
0.77
0.41
0.49
0.51
0.53
0.55
硬さ
総合評価最
高サンプルの
粘り評価
粘り最高
評価
総合評価最
硬さ最高(低)
高サンプルの
評価-注
硬さ評価
-0.63
0.75
1.20
-0.95
-0.95
-0.18
0.70
0.75
-0.35
-0.90
0.07
0.60
1.05
-0.60
0.10
-0.13
0.50
0.95
-0.20
-1.10
-0.17
0.60
0.70
-0.20
-0.85
0.19
注 相関係数がマイナスなら最低、プラスなら最高値
2014
0.80
2013
0.60
0.40
0.20
総
合
評
価
y = 0.66x + 0.117
R² = 0.336
0.00
-0.20 0.00
0.50
-0.40
0.20
0.00
1.00
-0.20-1.00 -0.50 0.00 0.50
硬さ 評価
外観評価
図2
y = -0.099x + 0.187
R² = 0.032
0.40
1.00
食 味要素の 評価と総 合評価の関 係の例
3 玄米 タン パク質 含有率 の制 御およ び 整粒 歩合の 向上
1)登 熟が 良く 澱 粉生 産量 が多 い と、 相対 的に 玄 米タ ンパ ク質 は少 なく なり ま す 。
この ため 、登 熟 期が 多日 照年 で はタ ンパ ク値 が 低く 、寡 照年 で高 まり ます (図
3)。
2)玄 米タ ンパ ク 質含 有率 を下 げ 、ま た整 粒歩 合 を向 上す るに は、 施肥 量を 減 らし
て総籾数を抑 制する(目安:総籾数 28000 粒/㎡)だ けでなく 、登熟歩合 や千粒
重(両者の積 が千籾当 たり収量 )の高い 稲であるこ とが重要 で す(図4)。
3)玄 米 タ ン パ ク 含 有 率 が 5.5 % 未 満 と 低 す ぎ て 整 粒 歩 合 低 下 が 懸 念 さ れ る 場 合
(SPAD 値で 30 未満)には穂肥 を施用し ます。こ れは粒大 向上 および基白粒 や胴
割粒抑制の効 果がある 一方、 穂肥 2 回目の時 期の窒素 施肥 1kg/10a は玄米タ ン
パク質含有率 0.3%の 増加に直結 します( 図5)。
4)疎 植や 細植 え は 普 通な ら総 籾数 を 抑制 する もの の 、遅 出来 して 一穂 籾数 が 多く
なり 過ぎ るよ う では 、か えっ て 登熟 歩合 は 落ち 込み 、品 質 低 下や 玄米 タン パク
質含有率上昇 に繋がり ます。こ のため初 期生育が緩 慢な 山間 部 などでは、坪 70
株植えが推奨 され ます (現地例)。
5)以 上を 踏ま え 具体 的に は、 過去 の タン パク 値と 収 量、 品位 、屑 米の 量か ら 、圃
場に合わせて 栽植密度 と施肥量 を見直し てください 。
70
60
日
照 50
時
間 40
2012
30
/
5 20
日
10
2014
平年
0
7/1 7/2 7/3 7/4 7/5 7/6 8/1 8/2 8/3 8/4 8/5 8/6 9/1 9/2
図3
月/半旬
気 象と玄米 タンパク質 含有率
農 試 気 象 対策 試 験 ただしハナエチゼンは現 地サンプルの平 均
図4
4
千籾収 量(登熟 歩合 ×千粒重 )
と玄米タンパ ク質含有 率 の関係
図5
穂肥が 玄米タン パク質含 有率
に及ぼす 影響 (2013)N1kg/10a
味度 の向 上
1)味度は出穂後 15 日間ほど の気温と 密接に関 係し、低 温ほど 高ま ります(図6)。
このため平坦 部では、 残暑が過 ぎる 旧盆 以降に出穂 するよう な 6 月移植が有利
です(図7)
2)一方で、気 温ほど密 接ではな いものの 、味度は 玄米タン パク 質含有率が高 いと
低下 する 関係 に もあ りま す。 遅 植え では 玄米 タン パ ク質 含有 率が 高ま り、 倒伏
もしやすくな るので 、一般 田での 6 月植えコ シヒカリな ら基肥 無施用とし、1~
1.5kg/10a の 根付け肥 を施し、穂 肥も慣行 の 7 割に 留めます 。
図6
図7
登熟気 温と味度 との関係 (2013 年)
作期 と味度の 関係 (2012 年)
そ れ ぞ れ 左 か ら 4/20、 5/1、 5/14、6/1、 6/14、 6/25 田 植え
5
早刈 りお よび調 製直後 から の低温 保管
1)青籾(薄青含む)が 30%ほど残 る頃の早 刈りをす ることで 食味評価が向 上しま
す(図8)。
2)成熟期に は既に胴 割粒が認 められ、 白未熟(基 白)粒も 増 加傾向にあ り ます
(図9)。 一方早刈り では青未 熟粒がや や多くな りますが 、5%ほどの青米 混入
はむしろ香り 評価が高 まり ます。この範囲 なら玄米 タンパク 質 含有率が高い こ
とはありませ ん。
3)高水分籾 では高温 高速乾燥 を避け 、乾減率 1%/時を 守りま す。ハサ干 しは取り
込み時期に細 心の注意 が必要で す。
4)盛夏期が 過ぎても、常温保管 では まず 香りが低 下する可能 性があるので、調製
後はできるだ け早く冷 蔵 します (表3)。
図8
刈取り 時期と食 味官能評 価
図9 収穫時期に よる品質、食味関連項目 の変化
(2013 年)
表3
常温 保管での 食味官能 評価低下 例
品種
コシヒカリ
あきさかり
香り
-0.29
-0.50
外観
-0.04
-0.54
味
-0.13
-0.21
粘り
-0.29
-0.38
硬さ
-0.33
0.50
総合
-0.50
-0.21
※ 2014 年 農試で 12 月 3 日、4 日に食味試験
精米水分 コシヒカリ: 15.4%
あきさかり: 14.3%
6
留意 事項
1)6 月植えは 30kg/10a ほど減収 しますが 、肥料は 4~5 割減 に なります。
2)早刈りはこ の範囲で 減収はほ と んどあ りませんが 、乾 燥機の 燃料及び 電気 代が
3 割増になり ます。
3)本成果は(一 財)日本穀物 検定協会 による 一般依頼の食味 官 能試験の分 析結果
と、福井農試の試験結果とをまとめたものです。
[その他]
研究課題名: 福井特上 米の生産 技術の確 立
研 究 期 間 :平成24~2 6年度
研究担当者: 農試 作 物部 笈 田豊彦、 中村真也、 井上健一