インドネシアのご紹介

ひめぎん情報 ■ 2015.新春
インドネシアのご紹介
インドネシアみずほ銀行
(愛媛銀行より出向)
光田 大助
1.はじめに
2.インドネシアでの研修
インドネシアでの駐在も気が付けば1年
私が研修を行っているインドネシアみずほ
10ヶ月が経過し、帰任日まで残すところ数え
銀行(略称:BMI)は預金・貸出・為替な
るほどとなってしまいました。2年弱という
どフルバンク機能を備えた邦銀現地法人で
短い期間ではありましたが、インドネシアが
す。みずほグループとして、ジャカルタを中
帯びる成長への活力を肌で感じ、政治的にも
心としたインドネシア全域をカバー範囲とし
社会的にも非常に濃い時代を経験できたよう
ています。私は主に営業支援業務、特に営業
に感じています。当地において私は邦銀メガ
企画及び事務企画のセクションに従事してい
バンクの現地法人である『インドネシアみず
ます(ビザによって直接の営業活動は厳格に
ほ銀行』に研修生(トレーニー)として在籍
禁止されています)
。具体的にはインドネシ
しています。インドネシアという国を少しで
アの投資環境に関する資料作成や日系企業が
も多くの方に理解して頂くために、当地での
入居する工業団地に関するレポートの他、イ
私の業務内容に触れながら現地金融機関か
ンドネシア企業の産業別分析や合弁相手とな
ら見たインドネシアの姿を紹介できればと思
り得るローカルプレーヤーの調査等を行って
います。
います。時には個別の進出アドバイザリーを
お客様から求められるケースもあり、特定の
業種について、市場規模・競合企業・進出形
態・販路ネットワーク等について、実地調査
を試みることもあります。その他、インドネ
シアは法規制に関しての留意事項が非常に多
い国であることから、現地の税理士・弁護士・
会計士・コンサル等の協力を仰ぎながら、お
客様の当地進出を包括的にサポートしていま
す。いずれもお客様が真に必要とする情報を
提供することが求められるため、あらゆる分
野の基礎知識を備えておくことはもちろん、
インドネシアみずほ銀行ロビー前
顧客の意図を正確に読み解く能力やより効果
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的に意見を発信するプレゼン力が重要視され
ら絶大な支持を集めた元ジャカルタ州知事の
ます。業務はみずほグループの統括部が所有
ジョコ・ウィドド氏(通称ジョコウィ)でし
する膨大なデータソースを利用するだけでな
た。当然7月の大統領選挙にも出馬したジョ
く、当地のリアルな情報を反映させるために
コウィは、対抗候補者を僅差で破り、新大統
フィールドワークも行われます。当地での業
領へと選出されるに至りました。
務には言語の問題やビジネス慣例の違い等困
難は多いですが、最適かつ合理的な方法を模
索しながら、日々ローカルスタッフたちと共
に業務に邁進しています。
3.インドネシアの最新動向 -2014年選挙の年-
近年投資国として非常に人気の高いインド
ネシアですが、政治の不透明感・外資規制の
強化・貿易赤字の慢性化等を原因に経済は鈍
新大統領ジョコウィ氏の演説
化傾向にあるとの見方も一部にあります。特
初めての庶民派大統領を迎えた新政権でし
に2014年は、インドネシアの行く末を左右す
たが問題もありました。同じく大統領選挙に
る、5年に一度の総選挙及び大統領選挙が
出馬し惜敗した元陸軍戦略予備軍司令官プラ
執り行われた年でもありました。投資家の間
ボウォ・スビアント氏を支持する政党が、自
では、新たに政局が確定するまで投資を見送
身を党首とする第3党グリンドラ党の他、第
るといった動きも見られ、本選挙はインドネ
2党(ゴルカル党)
・第4党(民主党)と多く
シア経済の今後を決める重要なファクターと
の議席を有しており、連合の総議席数でジョ
なっています。同国の大統領は連続2期まで
コウィ陣営を上回る形、すなわち「ねじれ国
と法律で定められており、直前のユドヨノ政
会」の状況に陥っているということでした。
権はすでに2期を迎えていたことから、今年
円滑な法整備が阻害されれば国会運営が合理
の選挙では当初より新大統領が誕生すること
的に機能せず、投資家たちの懸念事項である
が確定していました。そのような事情もあっ
インフラ整備が滞る可能性があります。そう
て、今回の選挙は国民から特別大きな注目を
なれば投資が敬遠され経済成長が一層鈍化し
集めていました。
ていくことが考えられることから、今後の政
4月9日に行われた総選挙は最大野党で
治の動きには益々の注目が集っています。
あった闘争民主党が109議席で初めて第1党
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となり、次いでゴルカル党が91議席、グリン
4.インドネシアの金融サービス
ドラ党が73議席をそれぞれ獲得、前政権の
金融という観点から、インドネシアを見て
民主党は61議席に留まるという結果になりま
みます。インドネシアの金融は『銀行金融』
した。闘争民主党を大勝に導いたのは国民か
と『その他金融』の大きく二つに分けること
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ができます。インドネシアの銀行システムは
えてくると思います。日系企業については、
インドネシア中央銀行(Bank Indonesia)を
邦銀のインドネシア拠点を利用するケースが
元に成り立ち、小規模なもの(地方信用金庫
太宗ですが、一部の外銀や地場銀行にはジャ
のようなもの)を除けば、
約120の商業銀行(外
パンデスクが設けられているものもあり、調
銀含む)が金融サービスの提供を行っていま
達の規模等に合わせて活用されている模様で
す。これらの銀行の主な取引対象、特に融資
す。取引通貨についてはドル建て取引がほと
対象は大手企業や外資企業が中心となって
んどですが、地場企業との取引や従業員への
います。アジア通貨危機の教訓から金融セク
給与支払いのために、ルピアの調達も必要と
ターの審査基準が厳格化され、高リスクな融
なります。その場合でもコストの面から直接
資が敬遠されるようになったためです。当該
ルピア建て融資を受けるよりも外貨建てで調
企業が外資企業の子会社となっている場合、
達した上でスワップする方法が多く選ばれて
親会社の保証がほとんどの場合で求められま
います。また、多くの大企業は直接利用しな
す。それ故に、資金調達に関しては、資金に
いとしても、銀行にクレジットラインを設け
余裕がある限り、柔軟性の高い『親会社から
ていることがほとんどです。
の調達』を選択する企業が多いといえます。
いわゆる大企業といわれるのはインドネシ
出資・増資による資本金の積み増し及び親子
アの中でもわずかで、すなわち残り大多数の
ローンによる調達がこれに該当します。特に、
中小企業が融資を受ける際は主に『その他金
インドネシアの日系企業における最もポピュ
融』を利用することとなります。その他金融
ラーな資金調達手段は親子ローンです。外貨
とは通常の銀行以外のノンバンクや消費者金
調達においては、金利・返済条件等を自由に
融等のことです。ファクタリングやリース等
設定できるため、海外からも比較的容易に資
は中小企業にも適用されますが、近年は通常
金調達を行うことができます。現地通貨を調
の銀行融資と同様に担保が必要となるものも
達する場合も、外貨(主に米ドル)で調達後、
増えており、審査基準も厳しくなっています。
スワップするという方法が一般的に取られて
その他、登録された組合員内で融資を組む無
きました。しかし、直近10月に通達されたイ
尽と似た仕組みで運営するもの(金融組合)
ンドネシア中銀規制により、外貨建てでオフ
など、担保をとらず代わりに保証人を設定す
ショアローン(親子ローン含む)を実行する
る消費者金融に似たものも存在し、中小企業
場合、外債に対する一定率以上の外貨建債
の短期的な借入に重宝されています。それで
権(外貨預金等)の保有や中銀へのエビデン
も調達が難しい場合は親族や知人の間で貸
スの報告等を義務付けられることになったた
し借りしたり、無許可で法外な金利を設定し
め、今後はさらに戦略的な資金調達が要求さ
ている非合法の金融業者等を利用したりする
れることになります。
ケースも少なくないのが現状です。ビスニス・
そのような事情からも、これまでオフショ
インドネシア紙が発表した借入実態を調査し
アで対応していた企業も、オンショアでの調
たアンケート統計によると、銀行から融資を
達、すなわち当地の銀行を活用する機会が増
受けていると答えたのは17%に留まり、43%
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が(インフォーマルを含む)銀行以外から融
も「ティダアパアパ(
『問題ない』
『どうでも
資、残り40%は金融機関から融資を受けられ
いい』という意味のインドネシア語)
」で済ま
ないもしくは受けるつもりがないと答えたと
してしまう、いい意味でおおらかな、ある意
のことでした。
味で大雑把な国民性も魅力です。
インドネシアはまだまだ金融インフラは
またインドネシアは2013年の国際協力銀行
整っているとは言い難く、例えば口座振替
(JBIC)による中期的有望国調査において初
のシステムが十分に機能していない点や、
めて中国を抜いて1位に選ばれました。近年
ATM送金のネットワークが全金融機関で統
その豊富な労働力に起因する生産性の側面だ
一されていない等、依然日本と同水準とはい
けではなく、旺盛な内需が示す国内消費とい
えないのが現状です。限られた条件下で最
う一面からも非常に注目を集めています。こ
もお客様が満足するサービスを戦略的に生み
のことは製造業の進出がピーク時から一旦落
出すことが当地銀行の大きな課題となってい
ち着き、外食産業等のサービス業の進出が次
ます。
第に増えていることからも窺い知ることがで
きます。今後内需がさらに拡大すれば、さら
に多方面でのビジネスチャンスが生まれてく
ることが期待されます。
しかし、インドネシアはまだまだ発展途上
の国です。インフラ整備の遅れから、都市渋
滞は深刻の一途を辿り、円滑な経済活動を阻
害しています。さらに、
前述の通り、
外貨規制・
出資制限等ビジネス上での障害は多く、合理
的な事業展開が難しいと言えるかもしれませ
ん。しかしそれは裏を返せば、この国にはま
だまだ伸びしろがあることを意味します。発
想の転換次第で大きなビジネスチャンスを手
インドネシアの銀行ATM
シアというこの広大な土壌で無限の可能性を
5.終わりに
追い求めて、皆様も当地でのビジネス展開を
-魅力溢れるインドネシア-
是非ご検討されてみてはいかがでしょうか。
インドネシア人は親日として知られていま
す。
『メインドインジャパン』のブランドに対
して、絶対の信頼感を持っている人が多い他、
日本人に対しても好意的な印象を抱く人がほ
とんどです。確かに価値観・宗教観について
は相容れない部分は多いですが、そんなこと
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にすることも夢ではないはずです。インドネ