12 近代の都市デザイン 急進的モダニストによる 理想都市の提案 1

1.モダニズム modernism=近代主義
12 近代の都市デザイン
急進的モダニストによる
理想都市の提案
主題科目
都市デザイン史
1.ガルニエの工業都市
• トニー・ガルニエ
(フランスの建築家)
– エコール・ド・ボザール出身、ローマ賞
• 1899 1901年のローマ滞在中に
設計、1917年発表
• 特 徴:
– 一般的な都市規模の設定
(人口35,000人)
– 都市を構成する機能の地域的な分離
→ ゾーニング
– 実利と造形を結びつける詳細な設計
→ 鉄筋コンクリート造
= 容易な建設と低コスト
(1)近代科学や合理主義に基づく新たな世界を支持
しようとする姿勢
⇄ 既成の価値や秩序に基づく世界
(2)美術上…キュビズムに始まるモダンアートの動向
(3)建築上…国際様式の確立におけるモダン・ムー
ブメント(近代運動)
• ウィーン・ゼセッシオン(分離派)、バウハウス、
CIAMなどの活動
• 本来の積極性を失って形骸化
→ ポストモダニズム:反モダニズムの顕著な例
(4) 都市デザイン…合理的観点による20世紀都市問
題の解決
□立地条件 (→ フランス南東部)
– 天然資源が近くにあること
→ 工業の資源
– エネルギー源として利用可
能な自然の力があること
– 輸送の便がよいこと
□主要な要素の地域的分離
⇒ 拡張のしやすさ
(成長の余裕)
– 主要な工場群:河川が支
流と合流する平野部
– 市街地:工場よりもやや高
い台地の上
– 病院:さらに高い場所
旧市街地
病院
駅
工場地
市街地
鉄道
河川
□各要素の詳細設計
• 住居地区
☞ ヨーロッパの中庭型住居
への批判的立場
– 外部より直接採光・換気する
こと
→ 中庭や光井戸の禁止
– 東西150m、南北30mの街区
→ 15×15mの画地に分割
– 建ぺい率50%以下
→ 空地は歩行者用の通路、
街路にとらわれない移動
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・学校
☞ 利便性の配慮
– 子供の年齢と授業の進捗によるクラス
分け
– クラスを分ける街路 = 庭園
→ 子供の遊び場
・工場
☞ 近接する鉱山から産出される天然資源(冶金)
– 支流につくられた施設で発生させる蒸気動力
– 大通りによる異種部門の連結
– 分割した画地による各企業の独自的な拡張
病院
☞ 最新の医療科学の進歩に基づく設計
• 市の中心部の北にある山すそ
→ 北風対策
• 緑樹による境界
3.ソリア・イ・マータの線状都市(1882年)
• マドリッド郊外の線状都市案
– 目的:都市の集中化の防止策
→既存の点状都市の統合化
– 形態:幅500m、路面電車(トローリー線)と自動車道路
– 専用庭をもつ独立住宅のスーパーブロック
□線状都市の特徴
• 都市の発展方向が限
定されていること
• 方向に対しては無限
の発展が可能である
こと
• 巨大都市の秩序化に
は、求心的な都市形
態よりも勝ること
中心部
マドリッドへの適用
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4.ル・コルビュジェ
(1)300万人の現代都市
• 近代建築運動の指導者の1人
• 「住宅は住むための機械である」
• 1922年、パリ博覧会
における出品作
• 理念:
緑と太陽に満ちた都市
→ 徹底した都市更新
– 工業化によって標準化された定式的な住居
– 機械と同様の論理操作に従って機能的につく
るべき
幾何学的パターンへ
の愛着を反映
□全体計画:
• 保護帯によって緑の中に維持される市域
• 周辺部から都心部へと高まっていく人口密度と
空地率
(2)ヴォアザン計画
• パリ中央部の再開発
の提案
• 自動車交通に対する
評価
– 都市を破壊している
が、蘇生させもする
– シャンゼリゼ通りから
の自動車交通の排除
→ 東西軸の自動車
高速道路の建設
□詳細計画:
• 中心に交通センター
• 都心部:3000人/haを収
容する60階建てのオフィ
スビル
建坪率5%
• 周 囲:広大な空地の中
の8階建ての住宅
300人/ha,建坪率15%
• 郊外部:独立住居からな
る田園都市(実際は、郊
外住宅地)
□新しい商業センターと住居地区
• 低層の家並みに対する
245mの摩天楼
• 過密なパリ中心部
事務所街
→ 中流住宅として
再建
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3)輝く都市
シャンゼリゼ
大通り
• 1930年、ソビエト当局からの
業務
地区
首都改造に関する質問状
• 近代建築国際会議(CIAM)
住宅スーパーブロック
ブリュッセル大会への出品
• 300万人の現代都市からの発展
セーヌ川
ヴォアザン計画における交通網の提案
– 拡張に対する配慮
→ ・業務地区の都市北端への移転
・住宅スーパーブロックを都市中心
軸の両側に
→ ・都市の南端を横切る工業地帯
・細長い芝生状公園による住宅地
域との分離
– 郊外の「田園都市」からの脱却
芝生状公園
工業地帯
□生物学的に健全な環境に対する偏愛
• 太陽、空間、緑
• 生物学的ユニット:居
住者当たり14m2の細
胞(セル)
• 平面計画:生物の諸
器官になぞらえること
による秩序化
→ 心臓、肺、腸など
まとめ(急進的モダニストによる理想都市)
◆
背景:19世紀
–
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20世紀初頭の産業社会
衛生問題、交通問題、住宅問題
急進派(⇄文化派、社会派)の都市モデル
–
–
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◆
定型、道具、ユニテ、効率
機械、量、文明への志向
幾何学性、生物学の偏愛
今日における意義
–
–
–
都市や首都の再開発、機能更新
住宅等の標準化
機能の地域的分離(ゾーニング)
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