熱中症対策

熱中症対策
~予防および手当について~
財団法人健康医学協会
勝木美佐子
熱中症による
死亡災害 月別被災状況
30
25
件数
20
15
28
10
5
件数
17
1
5
5月
6月
6
0
7月
8月
9月
出典:厚生労働省「熱中症による死亡災害発生状況」
月別被災状況(平成16~18年分)
熱中症とは?
体温調節のしくみが空回りして
「脱水」
「高体温」
が体に起きた状態
体温調節中枢
筋肉
産
放
熱
肝臓
発汗
熱
皮膚血管
拡張
バランス
原
因
症
状
熱虚脱
熱失神
(軽症)
熱けいれん
(軽症)
皮膚血管
の拡張、循環
量の減少
血液中の
塩分不足
頭痛、めまい、
吐き気、失神
熱疲労
(中等症)
脱 水
熱射病
(重症)
体温調節
中枢の障害
様々な症状、高体
温(39℃)、皮膚
は冷たい
意識障害、
高体温(40℃)、
皮膚乾燥
痛みを伴う筋肉
のけいれん
熱中症の発症しやすい条件
1.作業環境
2.気象条件
3.個人の健康状態
(1)持病
(2)その日の体調
1.作業環境
(1)室内作業をしている人が、急に外に出て作業した場合
(2)作業日程の初日~数日間が発症しやすい
(3)統計的にかかりやすい時間帯は、
午前中では10時頃、
午後では13時から14時頃に発症件数が多い
2.気象条件
(1)湿度が高い
※湿度が高いと25℃以下でも発生
(2)急に暑くなった
※体が慣れていない
(3)熱帯夜が多い
※寝不足になる
3.個人の健康状態
(1)特徴
糖尿病、心臓・腎臓・脳疾患
甲状腺の病気
(2)体調
発熱のある人、睡眠不足、二日酔い、
下痢(脱水傾向)、夏バテ、幼児、
高齢者、肥満
熱中症の予防
(1)作業環境改善
(2)健康チェック(作業前・作業中)
(3)適度な休憩
(4)積極的な水分・塩分補給
(5)普段からの健康管理
②健康チェック(熱中症の兆候)
(自分でわかる症状)
頭痛、吐き気、めまい、動悸、
こむらがえり、脱力・倦怠感
(他人が気がつく症状)
フラフラしている、顔色が悪い、
動きが鈍い、言動がおかしい
④積極的な水分・塩分補給
・スポーツドリンクなど
(Na:17.5~35mEq/l)
+
麦茶500ml
梅干し1個
熱中症の手当て
1.休息(rest)
–
安静をさせる。そのための安静を保てる環境へと運ぶこと
となる。衣服を緩める、また、必要に応じて脱がせ、体を冷
却しやすい状態とする。
2.冷却(ice)
–
涼しい場所(クーラーの入っているところ、風通しの良い日
陰など)で休ませる。症状に応じて、必要な冷却を行う。
3.水分補給(water)
–
意識がはっきりしている場合に限り、水分補給をおこなう。
意識障害がある、吐き気がある場合には、医療機関での
輸液が必要となる。
意識の無いもしくは、反応が悪い
(意識レベルが低い)場合
A.気道の確保
B.呼吸の確認
C.脈拍の確認
意識のある場合
○ふくらはぎや腹部の筋肉の痙攣(全身のものではない)
0.9%の食塩と電解質の入ったものを飲ませる。冷却の方法にある、冷
水タオルマッサージを震えているところへ行なう。
○失神(数秒程度内のもの)
横に寝かせ、足を心臓より高く挙げるなどして、心臓へ戻る血液の増大を
図る。
○顔色が蒼白で、脈が微弱
寝かせた状態で足を心臓よりも高くなるように挙げて、可能ならば、静脈路
を確保して、輸液を行う必要があるため、医療機関へ搬送する。
○飲水できる
スポーツ・ドリンクなどを飲ませる
○足先など末端部が冷たい
その部分の保温と、さするようにマッサージをする。
○顔色が赤い場合
寝かした状態よりやや上半身を高くなる、座らせた状態とする。
○吐き気、嘔吐
水分補給が行えないので、すみやかに医療機関へと運ぶことが必要 。
現場での冷却
• 意識が回復し、寒いと訴えるまで冷却
冷却のポイント
○ 震えを起こさせない(積極的にマッサージをする)
○ 冷却は、意識が回復し、寒いと訴えるまで続ける
○ その後に点滴もしくは水を飲ませるなどをする
○ 意識が回復しても再び意識が無くなることも想定
されるため、継続注意をして観察する
○ やり過ぎを恐れず、積極的に行なう
(人間の体温は低温側に対して強く、高温側に弱いから)
冷却の方法
① 冷水タオルマッサージと送風
衣類をできるだけ脱がせて、体に水をふきかける、その上から
、冷水で冷やしたタオルで全身、特に手足(末端部)と体幹部をマ
ッサージ(皮膚血管の収縮を防止するため)する。風をおこすよう
にうちわ、タオル、服などで送風する。使用する水は冷たいもの
よりも、常温の水もしくはぬるいお湯が良い。
② 氷(氷嚢、アイスパック)などで冷却
氷嚢、アイスパック、アイスノンなどを、腋下動脈(両腕の腋の
下にはさむ)、頚動脈(首の横に両方から当てる)、大腿動脈(股
の間にあてる)に当てて、血液を冷却する。
③ 水を体表面にかけて送風(気化熱によって冷却)
霧吹きなどで、水を吹きかけてその気化熱で冷却する。繰り返
し吹きかけつつ送風する。皮膚表面を冷却しないで、かつ、震え
を起こさせないよう注意。そのため、できるだけ温水のほうがよ
いと考えられるが、温水でないといけないものではない。送風に
はドライヤーで温風を用いるのもよいが、うちわなどで扇ぐことで
も可。
まとめ
1.体調の悪い時は無理しない。
2.急な暑さや湿度の高い時は要注意
3.十分な水分・塩分補給を。
4.涼しいところで、しっかり休憩を。
5.熱中症に早く気づき、適切な処置を
6.普段からの健康管理をしっかりと。