配線用遮断器焼損事故事例

配線用遮断器焼損事故事例
平成 18 年 6 月 5 日
(社)日本配電盤工業会 事務局 木賊
事故概要
改装工事のため、24 年前に製造された 400V 回路電灯盤のケーブル接続中、主幹二次側で短絡
事故を発生させた。工事作業手順、事故内容は次のとおりである。
(1) 電灯盤周辺を養生後、電灯盤 2 次側のケーブル接続作業開始。
(2) 接続作業中、導電性異物を誤って接触させ短絡事故を発生させる。
電 灯 盤 主 幹 配 線 用 遮 断 器 ( 100AF/75AT)、 お よ び 上 位 分 岐 盤 配 線 用 遮 断 器
(100AF/100AT)、さらに上位の電気室の ACB(2000A)が遮断し、「防災センターの自動
火災警報器が発報した。」
(3) トリップした配線用遮断器を開放の後、ACB の投入を行なった。
(4) ACB 投入と同時に分岐盤よりアークが発生し、再度「防災センターの自動火災警報器
が発報した。」
(5) 防災係員が消防署へ連絡した。
電気室
電灯盤
分岐盤
ACB(2000A)
MCCB(100A)
MCCB(75A)
22kV/420Ⅴ
電灯盤主幹二次
側で短絡事故
事故内容考察
1.協調特性の検討
1) 過負荷保護
電灯盤主幹配線用遮断器(100AF/75AT)→分岐盤配線用遮断器(100AF/100AT)→電気
室 ACB(2000A)が選定され、協調はとれている。
2) 短絡保護
電灯盤主幹配線用遮断器(100AF/75AT)、分岐盤配線用遮断器(100AF/100AT)、電気室
ACB(2000A)の瞬時引き外し領域に差がない状態で、正常に遮断動作を行なったと考える。
なお、短絡保護協調を考慮した場合、同一形式配線用遮断器で瞬時領域の時間差をつけ
た協調を取ることは技術的に難しい。
2.事故電流の流れおよび遮断器動作
1) 短絡電流
・電灯盤で発生した短絡電流は分岐盤へ流れ、各盤の配線用遮断器は正常に遮断動作を
行なったと考える。
・分岐盤の配線用遮断器が正常に遮断動作を行なったことで、配線用遮断器の電源側へ
短絡電流を遮断したことにより発生した、イオン化された導電性の消弧ガス(通称:
ホットガス)が噴出したと考える。
2) 短絡電流と地絡電流
・分岐盤電源側の銅バー導体が、イオン化された導電性の消弧ガスにより、相間短絡や
地絡事故の二次的波及事故を誘発し、電気室 ACB が遮断したと考える。
・2 度目の事故電流は、電気室 ACB を再投入したことにより、分岐盤電源側で発生して
いた絶縁破壊部分等で、短絡または地絡電流が流れたと考える。
原因と対策
1) 事故原因
改装工事の際、工事作業者が誤って短絡事故を起こした事が第一の要因であるが、
① 事故状態を未確認のまま再送電を行った。
② 再送電前の絶縁抵抗測定を含む試験の未実施。
③ 作業手順を守らない。
など事故復旧対応の不備が重なり、さらに大きな二次波及事故を引起している。
2) 対策
① 作業手順の確立、遵守
② アークスペースの確保(絶縁対策強化・・盤製作上の注意事項参照)
常にミスを発生させないよう心がけていると思うが、“ゼロ”ではない。
事故の主原因で考えなければならないのは、安全に対しての“作業手順が守られていない”と
ころが最大の問題と考える。例えばなぜ荷電状態のまま作業を行なったか、事故対策について
は十分か等。
製品へ防止対策を施すことはむろんであるが、「ミスを出さない」ためにも作業手順の確立、
遵守は基本事項であり、作業者の不注意を「不注意だった」で終わる事の無いようにする事も
重要である。
盤製作上の注意事項
今回の事故は、分岐盤電源側の
ボックス天井部等、接
地非充電金属部分
アークスペース
の確保 が不十分
⑤地絡
銅バー導体が、イオン化された
導電性の消弧ガスにより、相間
⑤
短絡や地絡事故の二次的波及
事故電流の流れ
事故を誘発したと考えるが、こ
①で短絡事故が発生すると、短絡電 流が流れる。
の時点で発生した短絡電流は、
②配線用遮断器は動作し、遮断 を行う。
さらに分岐盤電源側の銅バー
導体上を流れ、末端で放電、絶
縁破壊を誘発したと考えられ
る。
盤のアークスペースについて、
アークスペー
③絶縁距離 、絶縁空間(
ス)
が 不十分のため、遮断により発 生したガスで、遮断器の電源側で二
が発生 する。
次的波及事故(短絡)
④
②
③
①
④二次的波及事故で発生した事故電
流は、裸導体母線 に流れ込み、回路
末端部の絶縁破壊を引き起 こし、地
絡事故を引き起 こす。
⑤地絡電流により上位の遮断器が動
作する。
特に、分岐盤のような容量の大
絶縁電線
きな配線用遮断器 を組み合わ
せて使用する場合は、機器メー
絶縁距離と絶縁空間(アークスペース)が不十分な例
カ保証の必要アークスペース寸
法をカタログ、技術資料より確
機器メーカ保証
アークスペース
認し、盤設計製造への十分な適
ボックス天井部等、
非充電金属部分
用、絶縁状態の確認を考慮する
事が必要である。
また、感電防止用保護板等の取
り付け方法においても、アーク
スペースを考慮した空間を十分
に確保する必要がある。
絶縁空間
は
(
アークスペース)
機器メーカが保証す
る値を十分確保する
事。
裸導体間は、絶縁バ
リア、チューブ、テー
プなどで確実に絶縁
する必要がある。
(
遮断器と同梱の絶
縁バリアは必ず使用
する事。)
機器メーカ添付
絶縁バリヤ
絶縁距離と絶縁空間(アークスペース)の考え方例
事故