東日本大震災の復旧・復興支援における学生の役割

『論叢』玉川大学文学部紀要 第 54 号 2013 年,pp. 167∼190
東日本大震災の復旧・復興支援における学生の役割
太田美帆
要 約
本稿の目的は,大学生が東日本大震災の復旧・復興に果たす役割と意義を考察することにあ
る。震災直後はボランティア自粛ムードもあったが,各種市民団体や大学等によるボランティ
ア派遣等が開始されたことにより,ボランティア未経験の学生にも広く活動の場が提供され,
支援活動は活発化した。本稿では,まず学生による大震災の復旧・復興支援に関する直接的お
よび間接的活動を概観し,その実績を整理した。次に,学生のボランティア活動の単位化をめ
ぐる議論や各大学の対応を分析することで,大学が学生活動をいかに支援すべきかを検討した。
加えて被災者との聞き書き活動を事例に取り上げ,その成果と課題を分析した。
その結果,学生の支援活動や方法は多種多様に存在し,短期的にはマンパワーから継続的交
流による生業面や精神面のサポート,長期的には今回の経験を活かした防災・地域づくりの
リーダーとしての貢献といった様々な役割が期待されていること,大学には情報提供,安全確
保,
現地活動における専門的指導などの体制整備が求められていることなどが明らかになった。
キーワード:東日本大震災,復旧・復興支援,学生ボランティア,ボランティア活動の単位認
定,聞き書き
1.はじめに
2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災(以下,大震災と略記)による衝撃的な被害の報
道は,被災地外にいる人々にも「何かお役に立ちたい」という気持ちを起こさせた。発災直後
から,自衛隊をはじめ,国内外から駆けつけたレスキューチームや警察,消防,医療従事者等
の専門職(プロフェッショナル)による救援・救護活動がいち早く開始され,その高度な専門
性や訓練された統率力を活かした活動が注目された。いっぽうで,日本国内にとどまらず海外
においても,多くの一般市民が募金や物資提供をはじめとする間接的な支援活動を展開した1)。
被災地における直接的な支援活動にも多くの市民ボランティアが活躍した。大震災直後の混乱
期には,
「素人が行っても役に立たない,足手まといになるだけだ」といったいわゆる「ボラ
ンティア迷惑論」も流布し,ボランティアの自粛ムードもあったが,発災から 2 年 8 ヶ月間に
受領日 2014 年 1 月 6 日
所属:文学部比較文化学科
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は延べ 133 万人に及ぶ一般市民がボランティア活動に従事した2)。
「日本は一つ」,被災地との
「絆」をスローガンに,多くの市民が「自分にできること」を模索し,行動した月日だったと
いえよう。
その中でも本稿では,専門性や社会経験が十分とはいえない大学生に焦点を当て,災害救援・
復興活動のプロフェッショナルではない学生が,被災地の復旧・復興に果たす役割と意義を考
察することを目的とする。本稿では第一に,学生による大震災の復旧・復興支援に関する直接
的および間接的活動を概観し,その実績を復旧・復興段階別に整理する。第二に,学生のボラ
ンティア活動の単位化をめぐる議論や各大学の対応を分析することで,大学が学生活動をいか
に支援すべきかを検討する。第三に,本学の学生による被災者との聞き書き活動を事例に取り
上げ,その成果と課題を分析する。
2.学生による復旧・復興支援活動概況
2011 年 3 月 11 日の大震災当日は,被災地に所在する大学3)はもとより,本学を含む関東圏の
大学でも帰宅困難となった学生や教職員,一般市民を受け入れ,一次避難所として大学施設を
提供した。教職員や学生は,避難者への水や食糧,毛布の配付など避難所運営にもあたった4)。
余震や停電が続く混乱の中,学生の安否確認,学内の被災状況調査および安全確認など,多く
の大学がこれらの情報収集と発信に奔走した。「東日本大震災被災地支援室」等の対策本部を
設置し,全学を挙げて対策に取り組む制度を整備した大学も多い5)。
大震災後,大学が行ってきた支援策を大きく分けると,被災地域への直接支援(ボランティ
ア活動や義援金,支援物資の提供など)
,被災学生への支援(学費免除や奨学金支給など),間
接的復旧・復興支援(専門的知識や技術,経験を活かした研究活動や各種イベント・講演会・
出版等による情報発信など)という 3 分野に分類できる。
いずれも重要な支援であるが,本稿では,震災復旧・復興における学生の役割を考察する観
点から,この中から学生のボランティア活動と,それを促進する大学の支援策について取り上
げる。
2―1.被災地に赴いての直接的支援
大震災の復旧・復興活動には,被災地に赴いての直接的支援と,非被災地での間接的(後方)
支援がある。大学生が直接的支援に携わるには,各種支援団体の活動に参加する,大学が主
催 / サポートするボランティアバスなどを利用する,大学生が自ら支援団体を結成するなどの
方法がある。以下にその概要を整理する。
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(1)各種支援団体によるボランティア活動への学生の参加状況
全国から駆けつけた個人ボランティアの多くは,被災 3 県各地の災害ボランティアセンター
に登録し,その指示に従って活動に従事した。全国社会福祉協議会によると,ボランティア数
は 2013 年 11 月までに延べ 133 万人に及んだ。しかしボランティアの属性情報は集計されてい
ないので,そのうちの学生数は不明である。災害ボランティアセンターを経由しないで NPO
等で活動した人も多数に上るといわれている6)。
災害ボランティアセンターと連携しつつ,独自のルートで多数のボランティアを被災地に派
遣した団体の代表例が,一般社団法人ピースボート災害ボランティアセンター(PBV)であ
る。PBV は,震災発生後いち早く体制を整備し,関東や関西から宮城県石巻市・女川町への
直通夜行バスを運行,0 泊 3 日から参加できる短期のボランティアや長期滞在型の災害復興支
援を展開した。2012 年 3 月末までに,ボランティアバスの運行回数は 157 回(1 週間ボランティ
ア派遣 50 回,短期・週末ボランティア派遣 107 回)
,全国 6 都道府県で 99 回のオリエンテーショ
ンを実施し,派遣したボランティア数は延べ 11,427 人という実績を持つ。PBV のボランティ
アは長期滞在者も多いため,一日に活動した人の合計を示す日別ボランティア活動人数で累計
すると 67,991 人にも上る7)。これは石巻市で活動したボランティアの全体の 25%,つまり 4 人
に 1 人が PBV による派遣だったということであり,同市における PBV の貢献度や存在感は大
きかった。
PBV 参加者に占める学生数が明記されていたのは,PBV の 2011 年中間,2011 年度,2012 年
度活動報告書のうち大震災直後 5 ヶ月間の中間報告書のみだが,
それによると震災直後から 5 ヶ
月間のボランティア派遣総数は 6,695 人,学生はそのうち 19%(約 1,300 人)を占めていた8)。
そこから類推して,PBV ボランティアの 20%が学生だったとすると,1 年間で約 2,300 人の学
生が参加した計算となる。被災地までの足は自分で確保する現地集合型のボランティア募集が
多い中で,東京・関西発着バスが用意され,かつ派遣前研修も提供される手厚さは,ボランティ
ア初心者にも参加しやすい条件であったといえよう。
PBV は,緊急支援では 107,835 食の炊き出し,1,790t 分の物資配布や,泥かき,避難所・仮
設住宅居住者への支援を実施した。現在に至る復興支援では漁師や地元企業再生の応援,
コミュ
ニティ形成支援など,地域に根ざした長期的な活動を展開中である9)。
学生だけに特化してボランティア派遣を続けてきた団体に,日本財団学生ボランティアセン
ター(通称「Gakuvo」
)がある。Gakuvo は学生が活動主体となるボランティア文化の定着を
目指し,2010 年 4 月に設立された。学生インターンが学生ボランティアを支援するという理念
のもと,大学生が中心となって各種セミナーや災害支援等への学生派遣などを実施してい
る10)。東日本大震災後は全国の学生に呼びかけ,2011 年 4 月から 2013 年 9 月末までに,全国お
よび世界 40 ヶ国 228 大学から延べ 6,695 人の学生ボランティアを東北各地に派遣してきた。被
災地への学生ボランティア派遣事業「チームながぐつ」は,2013 年末には派遣実績 75 回を数
えた。活動地も宮城県石巻市,気仙沼市,東松島市,岩手県遠野市,福島県会津若松市,いわ
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図 1 津波により 4 階建てのビルが横倒しになった宮城県女川町の様子(2011/7/21)
図 2 地震により傾いた民家の塀を撤去する学生ボランティア(宮城県石巻市 2011/7/21)
き市と広がりを見せながら,
現在も活動継続中である。
「チームながぐつ」
のブログのトップペー
ジ11)には,「学生なんかにできることなんて……,とためらわないでください。学生だからで
きること,学生にしかできないこと,そしてあなたにしかできないことがたくさんあります。
」
とあり,学生の積極的な応募を呼びかけている。
筆者自身ゼミ生 3 人と,2011 年 7 月 19―23 日の 2 泊 5 日間(往復夜行バスでの移動,実働 3 日)
の日程で石巻市内のがれき撤去などの復旧作業に従事した。この体験をゼミ内で伝えることに
より,他のゼミ生 4 名も 7―8 月中に PBV や Gakuvo 派遣による被災地でのボランティア活動に
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東日本大震災の復旧・復興支援における学生の役割
参加した。参加学生が現地の様子やボランティア活動の内容をツィッターやフェイスブック等
のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を活用して発信し,それを見た学生がフォ
ローし,フォロワーを増やしながら,現地の生情報が伝えられていったという効果もあった。
身近な人の体験談は,それまで現地行きを躊躇していた学生にとっての呼び水となり,行動に
踏み出す安心材料と勇気を与えたようだ。現地でまだまだ求められるボランティアの現状を知
り,「同級生が行ったなら,私も」と行動の連鎖が起きた。東北まで足を伸ばせない学生は,
都内の支援団体事務所などでの間接的支援(2―2. に後述)に携わった。
(2)大学による学生ボランティアの派遣状況
市民の災害派遣に実績のある NPO 等の初動の早さと比すれば,大学による学生ボランティ
ア派遣への対応は遅れがあった。その主な要因には,被災地でマンパワーが圧倒的に不足して
いるとはいえ,大学という大きな組織での意思決定や,体制整備,教育機関としての活動の妥
当性の検討に時間を要したことなどが挙げられよう。学内のボランティアセンター等に災害派
遣の経験があった一部の大学を除いて,多くの大学においてはボランティア派遣の専門機関で
ないが故に,人材・情報・経験・資金等が不足していた。例えば,派遣する学生および引率教
職員の募集と選考,交通手段,活動場所,宿泊場所の確保や安全性の確認などすべてのプロセ
スに時間を要したこともあろう。
その中でも,他大に先駆けて大規模な学生派遣を展開したのは,早稲田大学である。早稲田
大学では,発災直後に学生ボランティア「6 ヶ月で 1,000 人派遣」を目標に掲げ,4 月中に 4 便
も学生ボランティアバスを派遣し,目標は 5 ヶ月で達成,12 月末までには被災 3 県に計 59 回バ
スを運行,延べ 1,660 人の学生に活動の場を与えた12)。岩井(2012)から整理すると,この大
規模事業を可能とした条件は次の 6 点である。
① 全学挙げての東日本大震災復興支援室が組織され,復興支援に取り組む方針のいち早い
確立と体制整備
② 学生派遣プログラムの経験と人材(専任教職員 7 名)を有するボランティアセンターの
機動力
③ 予算の即時確保(大学後援会組織から 2,000 万円の支援が 5 月に決定)
④ 学生派遣業務専従の契約職員(コーディネーター)の増員(5 月)
⑤ 公募による専任教職員(有志)の「支援チーム」結成(5 月)
⑥ 被災地在住の卒業生の強力な協力(ニーズの発掘,活動場所・体制整備,現地コーディ
ネート等)
①の支援室の整備や②のボランティアセンターの存在は他校でも見受けられるが,③④⑤の
とおり活動のネックとなる資金と人材を迅速に確保して,これらを心配せずに動ける見通しが
初期に整ったことは,事業計画を立てるうえでの福音だっただろう。さらには,大人数の学生
を派遣するとなると,活動場所の選定や受け入れ体制の整備が課題となるが,⑥のとおり被災
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地在住の卒業生から「学生ボランティアの派遣を待つ!」という力強い励ましや,地元の経済
界をリードする卒業生の献身的な協力を得て,そのネットワークを活かした現地情報の収集や
コーディネートにより,派遣先を確保,宿泊場所として廃校の提供を受けるなど,現地での活
動環境が整えられた。さらには先輩から直接「母校の後輩に伝えたい」と壮絶な被災体験談が
語られることによって,現役学生には単なるマンパワーとしての活動を越えた学びと気づきが
提供されたという。岩井(2012)はこのような学生・教職員・卒業生の協働による体制を「早
稲田型」復興支援ボランティアと呼んでいる13)。
これらのバックアップを受けて学生たちは,泥かきやがれき撤去に始まり,仮設住宅支援,
音楽・スポーツ交流,学習支援,観光復興支援に至るまで,変化する現地のニーズに合わせて
学生の特性を活かした各種活動を幅広く展開している。
このほかほんの一部ではあるが,大学が派遣したボランティアの概況を表 1 にまとめた。一
大学が派遣した学生・教職員ボランティア総数としては,早稲田大学の 3,400 人(2013 年 2 月
表 1 大学による学生ボランティア派遣概況
大学・組織名
主な活動
早稲田大学
東日本大震災復興
支援室 WAVOC
学生ボランティアバ
ス派遣 178 回
延べ参加者数
活動(集計)期間
活動地域
2011/4∼2013/2
末現在
宮城県石巻市,
気仙沼市,岩手
県宮古市,陸前
高田市等
神奈川大学
「KU 東北ボランティ 2,000 名超(学生・ 2011/3∼2013/3
東日本大震災被災 ア 駅 伝 」133 便 の バ 教 職 員・ 卒 業 生 末現在
地支援室
ス派遣
や家族を含む)
岩手県遠野市,
陸前高田市
学生 3,428 人
明治学院大学
「Do for Smile@ 東 日
ボランティアセン 本プロジェクト」
ター
約 700 人
2011/4∼2013/11 岩手県大槌町吉
末現在
里吉里地区,陸
前高田市,宮城
県気仙沼市
神戸学院大学
東日本大震災災害
支援対策本部
学生ボランティアバ
ス派遣 27 回
学生 476 人
教職員 85 人
2011/3∼2012/3
末現在
宮城県名取市,
石巻市
東京大学
「ボランティア隊」派
東日本大震災に関 遣(夏期)5 回
する救援・復興支 学習支援ボランティ
援室
ア派遣 2 回
学生 150 人
教職員 86 人
2011/8∼2012/1
現在
岩手県大槌町,
陸前高田市
亜細亜大学
学生 90 人
2011/6/16―18
宮城県沿岸部
学生ボランティアバ
ス 派 遣 1 回, 報 告 書
刊行,売り上げを被
災地へ寄付
出所:早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター(2013)
,神奈川大学東日本大震災被災地支援室 HP,神奈川大学東日本大震災被
災地支援室(2012),明治学院大学ボランティアセンター HP,神戸学院大学東日本大震災災害支援対策本部編(2012)
,東京大学救援・
復興支援室ボランティア支援班編(2012),亜細亜大学経営学部(2011)をもとに筆者集計
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東日本大震災の復旧・復興支援における学生の役割
まで)14),神奈川大学の 2,000 人(2013 年 3 月末まで)15)が群を抜いている。大学による学生派
遣を終了した大学も多い中で,両大は今後も派遣を継続する予定といい,学生たちのさらなる
活躍が期待できる。
とはいえ,大学による学生派遣の参加者の多くは,ボランティア活動も,災害による被災地
を訪問することも,初めてであることが多い。学生たちは若く純粋であるが故に凄惨な被災状
況を見て,心理的ショックを受けたり,自分の無力感に苛まれたりしてしまう可能性もある。
和井田,他(2013:268―269)は,大学が災害派遣に学生を動員する際には,
① 大学教員の引率や事前学習の実施による「サポート感」がある体制づくり
② 体験を語り合う場の設定により「感情のコントロール感」を強化
③ 仲間同士や支援先との関係づくりを強めることで「孤立感」を排除
④ 学生の自主性を尊重することで「無力感」を排除
⑤ 活動の意味づけ等で,支援の実感を持ちやすくして「無力感」を排除
の 5 点について十分に配慮し,学生のレジリエンス(ストレスによって傷ついても,そこから
立ち直っていく精神力)を高め,傷つきから回復,または傷つきにくくなる体制をつくること
が重要と指摘している。
(3)学生が立ち上げた支援団体
これまで見てきたような各種支援団体や大学が提供するボランティア派遣制度を利用するに
とどまらず,学生自らが支援団体を立ち上げ,被災地の復旧・復興に邁進した例も多数存在す
る。
大震災当日に「学生にもできることがあるはず」と東京の学生 4 人で設立された「Youth for
3.11」
(2013 年 3 月に特定非営利活動法人格取得)は,
「将来日本社会を担う学生が,社会問題
解決において重要な存在である」と位置づけ,活動目的を「学生にとって参加しやすいボラン
ティアの機会を提供し,一日も早い復興と,学生が社会問題の解決に参画できる社会の実現」
と定めている16)。Box. 1 の活動指針に表れているように,「学生」の存在価値を前面に出し,
学生の復興支援参加の意義と必要性を強調している。学生の参加を促進する具体的方策として
は,助成金等を活用し参加費用を抑えること,寝袋や長靴等の貸出,交通手段・宿泊先の確
保,初心者でも参加しやすいよう事前と事後の研修提供などを挙げている。
学生の学生によるこのような取り組みはメディアの注目も集め,多数の新聞,テレビ,ラジ
オの取材を受けたことも,団体の広報に一役買い,団体への登録者数は 2 年間で 1 万人を超え
た。宮城県石巻市,女川町,気仙沼市,塩竃市,南三陸町,岩手県遠野市,陸前高田市,福島
県いわき市,二本松市等の受け入れ団体や他の支援団体等と積極的に連携し,2013 年 3 月末ま
でに全国の 382 大学・各種専門学校等から延べ 13,297 人を派遣するという実績を挙げ,現在も
活動を継続中である17)。2013 年 11 月には社会貢献支援財団による社会貢献者表彰において「東
日本大震災における救難活動の功績」分野で日本財団賞を受けるに至っている。
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『論叢』玉川大学文学部紀要 第 54 号
Box. 1 Youth for 3.11 3 つの活動指針
1.学生の持つ「若さ」「時間」などの特徴を最大限に引き出し,社会に還元するボランティアプロ
グラム作りに尽力する。特にハードルの低いプログラムを提供することで,学生の「力になり
たい」という想いを実現させる環境を整える。
2.ボランティアに参加した学生への気づきの場を提供し,震災の経験を負の経験として終わらせず,
長期的な価値の創出を目指す。
3.活動における経験 / 仕組み / 知見 / 人の繋がりを蓄積・解析し,後世に伝え,未来に繋げる。
(出典:Youth for 3.11(2013:4))
2―2.非被災地における間接的支援
非被災地における間接的支援は,千差万別に存在する。全国各地で行われ,かつ現在も行わ
れているような,募金や物資提供,チャリティーイベントから,被災状況や安否確認,安全対
策のための情報収集・整理・多言語化・発信や,支援団体の東京事務所等にて物資の仕分・発
送,ボランティア派遣準備など,活動内容や関わり方も多岐にわたる。活動単位も個人から組
織的まで多種多様なため,従事者数や活動状況の全体像を把握することは難しい。今回のよう
な大規模災害の場合,被災地は混乱を極めているため,いたずらに現地に赴くよりも非被災地
での後方支援が大きな効果を生むこともあった。ここでは,
「あなたの思い出守り隊」と『Pray
for Japan』の二つの事例を紹介する。
「あなたの思い出守り隊」は工学院大学,神戸学院大学,東北福祉大学の学生と一般市民ボ
ランティアが従事した,水や泥をかぶった写真を無料で修復するプロジェクトである。写真の
汚れを落とすだけでなく,写真をスキャナーで読み込んでデータ化し,専用ソフトを使って手
作業では落とせなかったシミや汚れを画像処理したうえで,印刷,アルバムに保存してから,
協賛企業からの機材や知識の支援と,
依頼者に返却している18)。手間暇のかかる膨大な作業は,
多くのボランティアの手によって,2013 年 2 月にようやく寄せられた写真約 1 万枚の洗浄とデ
ジタル化が終了した。しかし写真修復が未了のため,現在も写真修正ソフトがあればどこでで
もできる「インターネット・ボランティア」が募集されている。写真修復を通して,被災者の
将来に向けて思い出を守っていくプロジェクトは,同時に,
「ボランティアに関心がありなが
らも,さまざまな理由から被災地でのボランティア活動ができない方に,
『写真修復』という
活動の場を提供し,ボランティアと被災者の方々をつなぐ場を目指」しているという19)。
次に,一人の大学生が立ち上げた HP がきっかけとなり,4 ヶ月で 300 万円の寄付につながっ
た例を挙げよう。
『Pray for Japan:3.11 世界中が祈りはじめた日』
(prayforjapan.jp 編 2011)は,
当時慶應義塾大学在学 20 歳の鶴田浩之氏が,大震災当日停電中の一次避難所で立ち上げたウェ
ブサイト(http://prayforjapan.jp)に集まった国内外からの日本への応援メッセージを収録し
た本である。サイト立ち上げから 48 時間で 300 万人のアクセスがあり,多いときは 1 秒に 1 回
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東日本大震災の復旧・復興支援における学生の役割
以上のペースで,各種 SNS や画像投稿サイト等を通じて,世界の隅々から言葉や写真による
祈りが届けられた。これらのメッセージの翻訳(日本語と英語,スペイン語,ドイツ語,フラ
ンス語,イタリア語,韓国語,中国語,スェーデン語,ロシア語,ポルトガル語,オランダ語,
他)は,SNS でつながった世界各地の人々がボランティアで担当した。被災者の心温まる小話
や前向きな決意なども徐々に投稿され始めると,口コミやマスメディアを通してさらなる注目
を集め,600 万人を超えるアクセスとなって大きな反響を呼んだ。このサイトに寄せられたメッ
セージは,印税の全額寄付を目的に 4 月末に書籍化され,7 月には 300 万円が被災孤児らの支
援のために「ハタチ基金」に寄付されるに至った20)。
本書は,デジタルネイティブ世代の強みを活かした支援のあり方として非常に興味深い。資
金ゼロから 300 万円の寄付金を生み出しただけでなく,世界中の多くの,特にそれまで何の接
点もなかった市民同士のつながりをつくり,当時のスローガンであった「心は一つ」を世界的
に体現したのである。震災後の混乱の中で被災者が見せた忍耐,我慢,冷静さ,他者への配慮
などが世界のメディアから賞賛されたことも相まって,地球上のあらゆる地域から応援メッ
セージが寄せられた。一学生でも,得意の IT 技術を駆使し,資金ゼロからでも,非被災地か
らでも,これほどの影響力を与えることができるとは,筆者にとっては驚きですらあった。デ
ジタル化により世界と一瞬でつながることができる現在,今後は SNS 等のソーシャルメディ
アを活用しての支援方法はますます多様化し,影響力を持つに違いない。
2―3.学生による支援活動の段階別特徴
次に,活動内容と学生に求められる役割,注意事項を段階別に整理する。
(1)発災直後の混乱段階
第一に,発災直後の混乱期には,むやみに「被災地へ!」と焦らず,まずは自分の置かれた
場所でできること,すべきことから取りかかることが肝要である。被災地以外でもできること
はたくさんある。例えば,デジタルネイティブ世代が得意とする SNS 等を活用して災害状況
や安否確認などの情報を収集し,発信すること,語学力を活かして情報を多言語化すること,
チャリティーイベントや街頭募金などを通して寄付金や支援物資を募ることなど,すぐにでも
できることは無数にある。これらを自分で始めることができなければ,支援活動を開始してい
る団体のお手伝いをするのも手だろう。事務所に出向いての活動もあれば,翻訳やホームペー
ジ開設,情報のアップデート等自宅にいてもできる作業もある。
「被災地に行けない」と無力
さを感じる必要はない。要は,現地の受け入れ体制が整うまでは,自分の居場所でできること
を探し,見つけ,あるいは作り出し,置かれた場所で行動を起こすことが重要なのである。
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(2)復旧段階
第二に,被災地の受け入れ体制が整い,復旧段階に入ると現地でマンパワーが必要となり,
体力と時間のある若者の直接的支援が求められる。今回津波の被害を受けた地域では,家屋の
床下や側溝などの狭い場所に溜まった泥が重機では掻き出せず,無数の人手が必要とされた。
自宅再建や上下水道の復旧のためにはまずは泥掻きをしなければならないのだが,肉体的に
ハードな作業であり,被災者による自助だけでは限界があった。このような「ハード系」の重
労働には,体力のある若者の人海戦術が大きな成果を上げ,被災者から非常に感謝された21)。
体力に自信がない人でも,
「ソフト系」の支援活動に活躍の場はあった。全国から届く物資
の帳簿つけや整理,洋服を性別,世代別に分類するのにも人手は必要だった。避難所では避難
者のニーズを聞き,トイレや水などの環境を整え,炊き出しや運営補助にあたるには細やかな
心配りが求められた。子どもとすぐに打ち解けられる学生には,子どもの遊び場を整備して遊
び相手や話し相手になり,学習支援に携わるという大事な役割もある。情緒不安定になりがち
な子どもたちの気持ちに寄り添う効果があるのはもちろんのこと,保護者にとっても,ボラン
ティアが子どもの面倒を見ている間,生活再建に向けた作業に集中できるためありがたく,子
どもにとっても保護者にとっても一石二鳥なのである。
ただしこの時期の被災地はまだ生活が安定していないため,寝食完全自前の自己完結型活動
が基本となる。ただでさえ混乱している被災地に迷惑をかけないよう,十分に準備して活動に
参加する配慮が求められる。
(3)生活再建段階
第三に,生活再建段階になると,被災者の自立支援のための中長期的活動となるため,その
主役はあくまで被災者自身であることを念頭に置き,ボランティアが何でもやってあげるので
はなく,両者の協働の姿勢が重要となる。仮設住宅が完成すると,避難所からの引越や入居先
の環境整備の支援が必要となる。仮設住宅に入り,避難所での共同生活から解放されると,狭
い個室ではあってもプライバシーが守られ,ようやく被災者の生活も落ち着きを取りもどす。
その一方で,一人一人の孤立化も進んでしまう。孤独化を防ぐため,住民同士の交流支援(茶
話会,食事会,各種趣味・特技教室,足湯など)や,あくまで住民のニーズに合わせてではあ
るが,各種イベントの企画支援の需要が出てくる。子どもの遊び相手・遊び場整備・学習支援
も引き続き大事なボランティアの役割である。
また生活再建の地が住み慣れた場所から離れてしまった場合は,新たな地域での生活再開の
ために,病院や薬局,買い物等に必要な情報が盛り込まれた生活マップや,余震等に備えた避
難マップの作成といった地域づくり支援も役立つ活動である。
同時に,生活再建の柱となる生業再建,雇用・収入創出を目指した環境整備や商品開発,マー
ケティング,販売,広報,会計庶務支援等々には,生産者と消費者の協働が求められる。職を
失ってしまった人々の収入創出のために,例えば仮設住宅の女性たちと学生が,がれきを使っ
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東日本大震災の復旧・復興支援における学生の役割
てキーホルダーやアクセサリーを製作販売するビジネスを起こしたり,被災地の商品に新たな
付加価値をつけて販売網を広げたり,と活動の幅は広がる。販売網の拡大,新たな顧客の獲得
には,消費者の多い都内で PR するのも効果的であるから,学生たちが大学祭や地域のお祭,
復興市などで東北の商品の販売促進に精を出す姿がよく見られた。あるいは学生の Web 制作
技術や SNS 知識を活かして,インターネット販売を展開する事業も新出している。
生業再建支援は,いくら復興が進んだとしても,終わりのない活動である。非被災地にいる
学生にとっては,そばにいて寄り添い続けるという支援は物理的に難しい。だが地理的に離れ
ているからこそ,生産地と消費地というそれぞれの地域特性から役割分担し,作り続ける・売
り / 買い続けるというパートナーシップが成り立つのではないだろうか。
(4)継続して行う中・長期的活動
復旧・復興のどの段階であっても継続して行うべき重要な活動に,情報の収集・発信作業が
ある。インフラが整わない被災地や,日々の生活再建に追われている被災者には情報の収集・
発信は難しい。刻々と変わる被災地の状況発信や,復旧・復興支援活動の報告,生業再建支援
のための広報などには,SNS が威力を発揮する時代である。この点においては,デジタルネイ
ティブ世代の発信力が特に期待されている。SNS を活用すれば,見知らぬ者同士でも「友達」
になれる時代である。情報発信によって,より多くの仲間づくり,支援者のネットワーク化が
可能となる。Gakuvo 代表の西尾裕志氏は多くの学生ボランティアを接してきた経験から,「ボ
ランティアに参加する,その意味を深く考える,それをことばにする,そのことばを人に伝え
る,共感をもって接してくれる人の輪ができる。ここまで到達して,初めて意味のあるボラン
ティアと言える」(西尾 2012:24)と主張していることからも,発信する,人に伝えることの
重要性は明らかであろう。
また,大震災から 3 年近くが経とうとして,記憶の風化がすでに始まり,被災地への関心の
低下が懸念されている。失われてしまった故郷や大事な人の記憶や思い出を,記録として残す
活動にも価値が見いだされている。被災者自身による手記等の発表も徐々に始められてい
る22)が,自分で文字や文章を書くのが難しい方には,学生が聞き取って文字に起こすという
聞き書き活動や地域史作成活動が喜ばれている。その一例として岩手県陸前高田市の仮設住宅
において,筆者がゼミ生とともに手がけてきた聞き書き活動を 4.に後述する。
学生にだからこそ,長期的に期待されていることとして,今回のボランティア体験を一過性
のものとするのではなく,体験からの学びを内在化させ,将来にその教訓を活かすという点が
ある。災害列島に生きる者として,平時の防災意識を高め,いずれは防災・減災のための地域
づくりのリーダーを担って欲しい,有事の際には復旧・復興へのリーダーシップを発揮して欲
しい,そういった期待が学生には向けられている。
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『論叢』玉川大学文学部紀要 第 54 号
3.学生のボランティア活動の単位化をめぐる動向
3―1.文科省からの配慮・協力要請
文部科学省は学生による被災地支援を「将来の社会の担い手となる学生の円滑な社会への移
行促進の観点から意義がある」ものと位置づけ,被災地でのボランティア受け入れ体制が整い
つつあった 2011 年 4 月,大学生らの積極的参加を促進するため,全大学に協力を要請した23)。
その内容は,①ボランティア活動のための修学上の配慮として,授業を欠席した場合の補講・
追試の実施やレポート活用による学修評価や,ボランティア活動を実習・演習に位置づけての
単位付与などを通して,学生がボランティア活動に参加しやすい環境づくりをすること,並び
に②ボランティア活動に関する安全確保や情報提供への協力を呼びかけるものであった。
この文科省の後押しを受け,各大学ではボランティア活動の単位認定,欠席の扱いなどをめ
ぐり以下にみるとおり様々な検討,対応がなされた。
3―2.単位認定をめぐる議論と各大学の対応
ボランティア活動の単位認定について,2011 年 5 月末時点で文科省に報告していた大学は 6
校のみ24)で,多くの大学の対応は慎重であったといえよう。2011 年 9―10 月に毎日新聞が全国
すべての国立大学 86 校を対象に実施したアンケート調査25)(表 2)によると,ボランティア活
動を単位として認定しないのは 83 校中 51 校(61%)であった。その理由は,そもそも自発性,
無償性が尊重されるボランティア活動に単位化はそぐわない(25%)と単位化を疑問視する意
見や,大震災が年度末に起きたため,単位認定の検討などが新学期に間に合わなかったという
時期的,事務的事由(22%)
,カリキュラムに適さない(16%)などが挙げられている。茶屋道・
筒井(2012)は,約 10 人の学生の被災地における 7 日間のボランティア活動を引率し,その過
程で学生の成長を確信しつつも,
学生側が「自発的意味合いを尊重される『ボランティア活動』
としての側面と『卒業のための評価される科目履修』という二重の価値を抱えながら活動を行
う」ことへの懸念,ならびに,大学側が評価基準を持ち,ボランティアを評価することの困難
さを指摘し26),単位化については慎重な姿勢をみせている。
すでに 3,400 人の学生を被災地に派遣した実績を持つ早稲田大学(2―2.に前述)でも,文科
省の配慮要請を受けての検討の末,単位認定しない決断を下した。震災前からボランティアセ
ンターが実施してきたボランティアプロジェクトを単位化していなかったことから公平性を保
ち,かつボランティアの目的が社会貢献から単位認定にすり替わってしまう危険性への危惧か
ら,利他的に活動した学生の方が成長するという教育的効果を期待しての判断であったとい
う27)。
また桜井(2013)は,文科省の通知はボランティアの増員という点での効果は認めつつも,
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東日本大震災の復旧・復興支援における学生の役割
支援の専門機関ではない大学に協力要請したことに対しては,リスクマネジメントの意識不足
ではないかとの疑問を呈している。たしかに 2―2.に挙げたとおり学生の派遣に積極的に取り
組んだ大学では,支援活動中の安全確保に苦心していた。授業の一環としての災害ボランティ
ア活動中に万が一事故が発生した場合,大学はどのように責任をとるのか。大学が正課活動と
してボランティアを位置づけるのに躊躇するのは,十分な対策を講じられないという不安もあ
るようだ。
とはいえ,単位認定を認めていない国立大学のうち 24 校が,学生のボランティア活動によ
る授業欠席は,レポート提出や補講による代替などで配慮するとし(表 2),また神戸大や中
国学園大,中国短期大などは公欠扱いにしている28)。これらの対応は,災害ボランティアを正
課としては認定しないものの,課外活動としての学生の復興支援活動は後押しするというスタ
ンスの表れといえよう。
いっぽうで,ボランティア活動の教育的効果や,復興への関与を教育機関としての責務とし
て積極的にとらえ,単位を認めた大学は 32 校(39%)であった(表 2)
。国立大学だけではなく,
公立,私立大学も単位認定に取り組んだが,その多くが既存の関連科目の中で,学生の個人的
な被災地支援活動も認めたものとなっており,新設科目を開設した大学は少ない(表 3 に一例
表 2 全国の国立大学におけるボランティア活動の単位認定の取り扱い
認める
32 校
(39%)
理由
北海道教育大,弘前大,岩手大,東北大,秋田大,山形大,福島大,東京大,東京工
業大,お茶の水女子大,茨城大,筑波大,宇都宮大,群馬大,千葉大,新潟大,長岡
技術科学大,上越教育大,山梨大,信州大,富山大,名古屋大,滋賀大,大阪教育大,
兵庫教育大,神戸大,奈良女子大,和歌山大,山口大,愛媛大,九州大,鹿屋体育大
教育的効果に期待(23 校,72%)「自主性,積極性などの資質を養う(長岡技術
科学大)」
復興支援(5 校,16%)
「社会的公共性を有する総合大学として復興支援は責務(東
京大)」
認めない
51 校
(61%)
北海道大,室蘭工業大,小樽商科大,帯広畜産大,旭川医科大,北見工業大,宮城教
育大,東京医科歯科大,東京外国語大,東京学芸大,東京農工大,東京海洋大,電気
通信大,一橋大,筑波技術大,横浜国立大,総合研究大学院大,金沢大,北陸先端科
学技術大学院大,福井大,岐阜大,静岡大,浜松医科大,愛知教育大,名古屋工業大,
豊橋技術科学大,三重大,滋賀医科大,京都大,京都教育大,京都工芸繊維大,大阪大,
奈良教育大,奈良先端科学技術大学院大,鳥取大,島根大,岡山大,広島大,徳島大,
鳴門教育大,香川大,高知大,福岡教育大,九州工業大,佐賀大,長崎大,熊本大,
大分大,宮崎大,鹿児島大,琉球大
理由
単位認定は,ボランティアという無償行為にそぐわない(13 校,25%)
授業設置は困難(11 校,22%)
自校のカリキュラムにそぐわない(8 校,16%)
*ボランティア活動による授業欠席は,レポート提出や補講による代替などで配慮す
る(24 校,47%)
出典:毎日新聞社調べ(2011)より筆者作成
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『論叢』玉川大学文学部紀要 第 54 号
表 3 ボランティア活動を単位認定する大学の科目一例
大学名
ボランティア活動を単位認定する科目概要
ボランティアの実習を含む既存科目(45 時間 1 単位)に被災地での活動も認めるが,
岩手大
名古屋学院大
卒業に必要な単位数としては扱わない.単位認定条件:ボランティアの心構えや活
動の注意事項を学ぶ事前研修(1 時間),44 時間の活動とレポート提出(A4 判 2 枚以
内)で 1 単位.大学からの日帰り送迎バスで,宮古市などで数時間の活動を行う.
「ボランティア演習」宮城県気仙沼市などで 5 日間程度家屋の掃除や学習補助などの
支援.単位認定条件:心構えやマナーなどを学ぶ事前講義受講,実践活動,レポー
ト提出,発表.大学は現地でかかる費用やボランティア保険代を負担.
弘前大学
21 世紀教育科目として「東日本大震災復興論」を新設(2011 年度後期∼).単位認
定条件:災害ボランティア体験 3 回とオムニバス形式の関連講義受講(同大で初め
ての試み)
.
岩手県野田村に学生と市民のボランティアを乗せたバスを毎週定期運行.
フェリス女学
院大
既存のボランティア関連科目を今回も適用.単位認定条件:大学ボランティアセン
ターに事前相談,計画書・事後レポート提出,担当教官と面接等.45 時間以上の活
動で 1 単位,90 時間以上で 2 単位.
明治大学
全学共通の総合科目「東日本大震災にともなうボランティア実習」新設.単位認定
条件:事前講義,実践活動(40 時間)
,活動報告書提出,報告会での発表等計 60 時
間以上の実習(2 単位).2011 年度から 2 年間で計 6 回開講し,2013 年度も開講.
桃山学院大
被災地支援科目を新設.ボランティアをした時間を反映させ,事前講義を含む 30 時
間につき 1 単位,最大 4 単位を認める.
山形大
全学共通科目「実践的キャリア教育学」15 コマのうち 2 コマをボランティア活動に
振替可(2 単位).授業では被災者支援プロジェクトの企画・実施にも取り組む.
2011 年度は約 70 人が受講.
山口県立大
既存の国際交流や共生社会に関する実習(60 時間 2 単位)で被災地ボランティア活
動も認める.交通費や宿泊費の一部は大学負担.他の授業と重なる場合は公欠扱い.
出典:水野(2012)
,飯,他(2012)
,読売新聞 2011 年 5 月 17 日夕刊,山形新聞 2011 年 6 月 8 日朝刊,朝日新聞 2011 年 8 月 11 日夕刊,毎
日新聞 2011 年 10 月 4 日東京朝刊をもとに筆者作成
を掲載)。
震災ボランティア科目の新設にいち早く積極的に取りかかったのは,明治大学である。明治
大学は 2011 年 5 月に,全学共通総合科目「東日本大震災にともなうボランティア実習」を開設
した。同時に都心から最も近い被災地である千葉県浦安市に「浦安ボランティア活動拠点」を
設置,学生は浦安を拠点としてボランティア活動に従事した。ゼミ活動や学部開講科目として
ではなく,全学部の学生が履修できる講座の新設は全国でも珍しい。科目目的は,学生による
被災地支援,学生の自主性や社会性の涵養,経済復興への関与を通じた経済教育の 3 点に置か
れている。学生たちは液状化の激しかった地域を支援したり,地域の祭に参加し,東北各被災
地の産品を販売したりと,浦安と東北各地の復興に寄与する。2 年間で 6 回開講し,2013 年度
も継続中である。一つの活動拠点を中心とした継続的な支援活動は,浦安市の復旧のみならず,
経済復興を通して被災地間をつなぎ,長期的視野に立った復興支援体制の構築が期待できる。
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東日本大震災の復旧・復興支援における学生の役割
また,学生の多くは「何かしたいけれど何をどのようにすればよいかわからなかった」と履修
動機を語るが,60 時間の実習を通して具体的に行動し,悩み,次なる課題を見つけ,経済活
動の大切さを学ぶようになるという29)。3 つの目標を掲げた実習が成果を上げつつあるといえ
よう。
2011 年度後期から「東日本大震災復興論」を新設開講した弘前大学では,初回オリエンテー
ションに 200 人以上がつめかけ,最終的に 120 人が履修したという。主な受講理由は「以前か
ら被災地の役に立ちたかったが行動にうつす機会がなかった」というものであり30),明治大学
の学生と同様,学生たちはボランティア活動のきっかけを求めていたことがわかる。飯,他
(2012)は 3 回のボランティア体験と関連講義を受講した学生へのアンケート調査をもとに,
学生のボランティア体験は,教育面,災害の脅威の認識,被災者への共感,中長期的な復興策
と被害再来の防止策の考察,社会に貢献する資質の育成と,就業力向上の点で有益な効果を持
ちうると分析している。
他方,被災地である岩手県内の大学では唯一被災地ボランティアの単位化を認めた岩手大学
では,認定者無しという状況になっている。岩手大学には震災前から学内ボランティアの単位
認定制度があったため,5 月に被災地ボランティアも対象に加えた。2011 年度には 188 人が事
前研修を受講,数人は単位認定条件である 44 時間以上の被災地支援活動を行ったが,レポー
ト提出が負担なのか,単位取得申請者はいないという。2012 年度は 8 月までに 57 人が受講,
活動しているが,申請者はいない。この単位は卒業単位にはならないが,成績表には表記され
るため,大学側は「就職活動や自己 PR に有利」としているが,学生は「単位のための活動で
はない」
「自分の達成感が得られるだけで十分」と単位取得には消極的である31)。これは,文
科省や大学側の単位認定に向けた様々な検討や対応にもかかわらず,当の学生たちはボラン
ティア活動自体に価値を見いだし,単位取得への関心が低いことを示す一例といえよう。
3―3.単位認定に対する学生の反応
震災直後は「素人は役に立たない,かえって足手まといになる」といったボランティア自粛
ムードがあり,かつ「衣食住と交通手段の完全自己完結型のボランティア」が求められてい
た。そのため,学生のボランティア活動を抑制する大学もあった。3 月末頃になると,被災各
県のホームページなどでボランティア募集が始まったが,ボランティア未経験の学生たちに
とっては,被災地に赴いての活動への精神的・物理的な参加障壁は高かったのだろう。そのた
めもあり,学生ボランティアが大挙して押し寄せた阪神・淡路大震災と違い,被災地のボラン
ティア数は絶対的に不足していた。いっぽうで,関東でも大震災の影響から新学期の開始を 4
月末や 5 月の連休明けに遅らせる大学もあり,その間学生たちの被災地でのボランティア活動
は容易となった。これが,
文科省が学生ボランティアを奨励する通達を出した経緯といえよう。
このような背景を考えると,明治大学や弘前大学の新設科目のように,大学の所在地から近
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『論叢』玉川大学文学部紀要 第 54 号
い場所で大学公認の支援活動が提供されたことは,遠隔地や個人でのボランティア活動を躊躇
していた学生にとっては朗報だったことだろう。大学が活動地域の情報収集や安全確認,活動
場所の提供などのお膳立てをしたことは,
「何かしたいけれど,どうしたらよいかわからない」
という学生の背中を押すことに役立った。ボランティア活動ができる授業が開講されるという
ことは,学生が勇気と自信を持って第一歩を踏み出すきっかけとなったのである。
その反面,被災地に近い岩手大学の例からは,学生にとって近隣縁者や近くの困っている人
を支援することは当然のことであり,ボランティアの心構えや活動の注意事項を学ぶ事前研修
こそ必要とされたが,単位化が求められたわけではないことが伺える。
「当たり前の行動」に
ついてまで単位を申請することを自粛する心理が,学生に働いたかどうかはわからない。しか
し事前研修への参加者数を鑑みれば,学生が大学に求めていたのは,単位認定ではなく,むし
ろ,現地活動をするうえでの具体的な諸注意,ボランティアの心構えやマナー,安全管理等,
幅広い情報収集からの専門的指導だったといえるのではないだろうか。
被災地においても,非被災地においても,学生のボランティア活動を後押ししたのは,「単
位認定」や「成績表に表記される」などのいわゆる大学からの「ご褒美」ではなかったようだ。
「何かしたい」と考えていた学生にとっては,ボランティアの自粛ムードや参加障壁を打ち破
るための,大学からの情報提供や,安全確保,専門的指導といったサポートが必要だったとい
えよう。
4.学生による聞き書き活動事例
復興への関わり方は無数にあるが,
「聞く,書く,伝える」という支援の結晶が,聞き書き
である。ここでは,本学の学生による復興支援活動の一例として,聞き書き活動を取り上げる。
4―1.被災地での聞き書き
「聞き書き」とは,一対一の対話を通じて,話し手の人生や価値観を聞き手が紡ぎ出し,記
録する民俗学的な作業である。「被災地の聞き書き 101」とは,大震災で被災された方々を話
し手として,震災前の暮らしの様子や,震災後の状況などを聞き,聞き手が作品としてまとめ
るプロジェクトである。話し手となったのは,岩手県大槌町吉里吉里地区 52 名,陸前高田市
田束地区 19 名,宮城県南三陸町志津川地区 20 名,石巻市 10 名の計 101 名,聞き手は,主に関
東在住の社会人や大学生 47 名32)である。公益財団法人 東京財団および特定非営利活動法人 共存の森ネットワークが共催する復興支援プロジェクトとして 2011 年 7 月に開始され,その成
『被災地の聞き書き 101:暮らし
果は「被災地の聞き書き 101」ウェブページ33)にて公開され,
を語り,思いをつなぐ。
』が出版されている。筆者はゼミ生を中心とした学生有志延べ 12 人で
本プロジェクトに参加する機会を得た。
― 182 ―
東日本大震災の復旧・復興支援における学生の役割
図 3 岩手県陸前高田市モビリア仮設住宅および震源地地図
出所:国土地理院 白地図
2011/3/11 14:46 東日本大震災震源地:宮城県牡鹿半島の東南東沖 130km の海底 マグニチュード 9.0
2011 年 12 月に訪問した岩手県陸前高田市34)は,たった 6 分間の津波で市街地が破壊され,
人口の約 1 割を失っていた。大震災から 9 ヶ月が経過していたが,市街地には建物の土台だけ
が残り,がれきがうず高く積まれ,がれきの山から自然引火した煙が立ちこめた状況だった。
筆者らは,約 400 人が暮らす市内最大のモビリア仮設住宅にて,避難されている方々から
じっくりとお話を伺う機会をいただいた。話し手も学生も,初対面同士とても緊張し,不安は
大きかったが,一対一で向き合うと話は尽きなかった。海や山を駆け巡った幼い頃の思い出,
剣舞という郷土芸能を継承し,漁師や大工,教師,浜の母ちゃんとして仕事に精を出し,
「他
人が一人もいない」地域でお互いに助け合い,みんなに支えられてきた暮らし。当たり前に享
受していた平凡だけれど幸せな毎日……。そして,大壁となって襲った津波のどす黒さ,我が
家が「ばりばりっ」と波で持ち上がり隣家にぶつかった「ぎぎぃぃ」という音,避難した夜の
コンクリート床の冷たさ,鼻から抜けない汚泥の匂い……五感で感じたまま語られる被災体験
談は,ニュース映像では想像もつかなかったリアリティがあった。お話を聞きながら学生たち
は,あふれる涙を拭うこともできないまま,凄惨な被災体験を追体験することとなった。
様々に表現される凄惨な被災体験を聞きながら,つらい悲しい思いを抱える被災者同士はお
互いを思いやり,心配をかけまいと気丈に振る舞うが故に,本心を胸にしまい込んでいたとい
うことがわかった。被災者同士では語られない無念,悲嘆,悔しさが「被災体験のない若者に
だからこそ,伝えたい」と次々と吐露された。
「あなたがこんなにつらい思いをしなくてすむ
ように,私の話をよく覚えておいて欲しい」と,2 時間の予定時間を過ぎても話し続ける人々
がいた。見ず知らずの若者が自分のためにぼろぼろと涙を流すのを見て,
「それまで泣いてば
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『論叢』玉川大学文学部紀要 第 54 号
かりだったおばあちゃんが,その日以降泣かなくなった」
,
「聞いてもらったらすっきりして,
その晩からぐっすり眠れた」という後日談も聞かれた。
図 4 津波で甚大な被害を受けた陸前高田市
図 5 自宅のあった場所で被害の様子をお話
しくださる話し手の Y 氏
(2011/12/11)
(2012/3/15)
図 6 仮設集会所での聞き書き風景
(2011/12/10)
図 7 被災者の方の想いを聞き取る学生(2011/12/10)
聞きなれない方言も混じるお話を,学生たちは 10 時間以上かけて文字に起こし,原稿にま
とめ,確認のため翌 3 月に再訪し交流を深めた。書き起こし作業は大変だったが,
「私たちの
想いを伝えて」と託され,
「津波のおかげであなたに出会えた」と励まされながら,学生たち
は作品に仕上げた。本書は「言葉のアルバム」として,
「自分の生きた証」
「心に残るふるさと
の記録」と喜ばれ,また生活文化の記録,地域史としても評価されている。よそ者の学生,文
系の学生だからこそできる支援活動の一つが,聞き書きだったのである。
4―2.聞き書き活動の特徴と意義
被災地において被災体験をまとめる活動は他にもある35)が,本プロジェクトの特徴は,第
一に,被災体験だけでなく,被災された方の生い立ちから現在に至るまでのライフヒストリー
を丁寧に伺い,記録したこと,第二に,被災者と非被災者の共同作業によることにあるだろ
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東日本大震災の復旧・復興支援における学生の役割
う36)。
第一の特徴として,本プロジェクトで記録された被災者お一人お一人の個別具体的な生きた
証としての個人史の作品集は,その地域の日常生活に根付いた伝統や文化,生業などが盛り込
まれた民俗史としての価値も高い。多くの有形財産を失ってしまった被災地において,人々の
記憶による生活文化史は,
地域の無形財産の記録として貴重な意味を持つのではないか。また,
各地の個別具体的で豊かな生活記録には,
「被災地」とはひとくくりにできない地域の個性や,
そこに生きた住民によるふるさとへの想いが盛り込まれている。これらの事実こそが,被災さ
れたかたがたがふるさとを再建するうえでの拠り所となるのではないかと思われる。
第二の特徴として,話し手と聞き手の共同作業である聞き書きは,被災地―非被災地間,農
漁村―都市間,世代間といった交流にも一役買った。膝を交えて聞き書き作品を作り上げる過
程で,話し手(主に 60 代37))と聞き手(主に関東在住の 20―30 代)の,個人と個人の交流が育
まれている。相互の交流を通して,話し手の「被災地の今後の暮らし」への想いが,聞き手の
「私たちの生活の見直し」への行動を促す効果が生まれている。
その一例として,聞き書き活動に参加した学生たちは,話し手の方々の郷土に寄せる想い,
自然や地域に感謝する気持ちに胸を打たれ,翻って自分の家族や地元に思いを馳せるようにな
り,「家族をもっと大事にしないと」
「将来は自分の地元で貢献したい」という意欲が芽生えて
いるようだ。仮設住宅の人々との交流は,学生にとって自らの生活や社会を見直す鏡となって
いるのである。
災害に脆弱な都会でこそ,今回の震災教訓から学ぶ意義は大きい。
「残された私たちは話す
ことが使命。学生のみなさんにはぜひこの話を残し,子や孫が同じ被害に悲しまないよう必ず
伝えていって欲しい」というモビリア住民の意思を継ぎ,2013 年夏にもゼミ生全員で聞き書
きに取り組んだ。その成果は『防災の知恵袋』として冊子にする予定である。
5.まとめ
以上見てきたとおり,学生による復旧・復興支援活動には,被災地に赴いての直接的支援
(各種支援団体や大学,学生が組織した団体によるボランティア派遣に参加など)と,非被災
地においての間接的支援など,様々な関わり方があった。本稿で記しただけでもすでに延べ 2
万人以上の学生が直接的支援に関わっている。
災害支援のプロフェッショナルではないにせよ,
2 万人の若さあふれるマンパワーによる人海戦術的支援は,被災地の復旧・復興に一定の槌音
を響かせることができた。また間接的支援であっても,SNS 等の活用により低(ゼロ)予算で
あっても世界中の人々とのつながることと,想い(寄付金や支援物資を含む)を集めることが
可能であることが実証された。
本稿で明らかになった学生に期待される多種多様な役割を,復旧・復興段階別に表 4 にまと
めた。
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『論叢』玉川大学文学部紀要 第 54 号
表 4.学生による復旧・復興支援活動内容
復旧・復興段階
発災直後:
学生に求められる役割
デジタルネイティブ世代の特技を活かし SNS 等を活用した情報の収集・整理・
自分の居場所での活 発信,言語能力を活かした多言語化,募金や支援物資の収集,チャリティー
動
イベント開催など。
マンパワー(ハード系:泥かき,がれき撤去,家屋片付け等,ソフト系:支
復旧段階:
援物資の整理・分配,避難所運営・環境整備補助(ニーズ調査等),避難所
自己完結(寝食完全
生活支援(炊きだし,足湯等),子どもの遊び相手・遊び場整備・学習支援,
自前)型活動
写真洗浄など)
生活再建段階:
引越支援,仮設住宅環境整備,住民同士の交流支援,各種イベント企画支援,
被災者の自立に向け 子どもの遊び相手・遊び場整備・学習支援,地域づくり支援,生業再建,収
た協働活動
入創出活動支援,聞き書き・自分史・地域史作成など。
継続して行う中・長 SNS 等を活用した発信,仲間作り,収入創出活動支援,継続的な交流,平時
期的活動
の防災・地域づくり活動や有事の復旧・復興リーダーシップ養成など。
筆者作成
大学はこれらの学生の復旧・復興支援活動を,ボランティアバスの派遣や,教育の一環とし
ての取り込み,ボランティア科目の開設,活動の公欠認定や単位化などの方法でサポートして
きた。いっぽうで,ボランティア初体験の学生たちが大学に求めていたことは,単位認定や社
会的承認よりも,信頼できる情報提供や,安全確保,事前研修におけるボランティア活動の専
門的指導といったサポートであったことが明らかになった。
学生による聞き書き活動実践からは,地域史や自分史として被災体験を書き残す価値が見い
だされた。さらには交流を通して,学生が被災者の生活再建だけでなく,非被災地に生きる自
分自身の生活を見直す意識と意欲の醸成に役立っていることがわかった。筆者らは,聞き書き
を通した発信,交流活動を継続し,発展させていく予定である。これら一連の活動に関する,
話し手側からのフィードバックや,活動の社会的意義の分析,学生への教育的意味の考察など
は,別稿への課題とする。
注
1)日本赤十字社に寄せられた東日本大震災義援金総額は 3,295 億 5,600 万 8,526 円(2013/12/26 現
在)
,その全額が義援金配分委員会を通じて被災者に届けられている。また世界各国の赤十字社を
通じた東日本大震災海外救援金は 5,992 億 601 万 4,876 円(2013/11/30 現在)に達した。
(日本赤十
字社 HP)
2)全国社会福祉協議会が集計した,岩手県,宮城県および福島県内の災害ボランティアセンターに
登録のうえ活動に従事した人の延べ人数:132 万 7,600 人(2013/11/30 までの累計)。(全国社会福
祉協議会 HP)実際には,災害ボランティアセンターに登録せずに活動した人も相当数に上るため,
ボランティア実数ははるかに上回るとされる。
3)宮城県仙台市,女川町他にキャンパスを持つ東北大学の震災直後の様子や,学生,教職員他それ
― 186 ―
東日本大震災の復旧・復興支援における学生の役割
ぞれの対応が 100 名近くの体験談として,とうしんろく東北大学震災体験記録プロジェクト(2012)
に記録されている。
4)例えば工学院大学(2012)。
5)例えば,東京大学「東日本大震災に関する救援・復興支援室」
,早稲田大学「東日本大震災復興
支援室」,神奈川大学「東日本大震災被災地支援室」など。
6)全国社会福祉協議会 HP 前掲資料
7)以上,合田,他(2012)
8)ボランティア派遣人数 6,695 人の内訳は,企業ボランティアとパート・アルバイトが各 20%,学
生と会社員が各 19%,インターナショナル・ボランティア 9%,定年退職者 2%,公務員,医療関係,
自営業などを含むその他 11%となっている(合田 2011)。
9)ピースボートピースボート災害ボランティアセンター HP
10)日本財団学生ボランティアセンター HP
11)チーム『ながぐつ』プロジェクト HP
12)岩井(2012)
13)同様の 3 者協働による学生ボランティア派遣事業は,明治学院大学でも行われている(市川
2013)
。
14)早稲田大学平山郁夫祈念ボランティアセンター(2013)
15)神奈川大学東日本大震災被災地支援室 HP
16)Youth for 3.11(2013)
17)Youth for 3.11 HP
18)工学院大学(2012)
19)社会貢献学会 HP
20)Pray for Japan HP
21)合田(2011)
22)例えば,創風社編集部(編)(2011,2012),金菱(編)(2012),Create Media(編)(2012)など。
23)文部科学省「東北地方太平洋沖地震に伴う学生のボランティア活動について(通知):23 文科高
第 7 号」
(2011 年 4 月 1 日)
24)山形新聞 2011 年 6 月 8 日朝刊。ただし文科省への報告義務はなかったので,実数は 6 校以上あっ
たと推測される。
25)毎日新聞 2011 年 11 月 7 日中部版朝刊。未回答は埼玉大,東京芸術大,政策研究大学院大の 3 校。
26)茶屋道・筒井(2012:34)
27)岩井 2(2012)
28)朝日新聞 2011 年 4 月 29 日朝刊,6 月 12 日朝刊。なお,慶應義塾大は「体育会系の人が試合で授
業を休んでも私用の欠席になる」という理由で公欠扱いはしない(朝日新聞 2011 年 4 月 29 日朝刊)。
29)水野(2012)
30)飯,他(2012)
31)毎日新聞 2011 年 9 月 4 日岩手版
32)参加学生の所属大学は,慶應義塾大学(8 人),聖心女子大学(1 人)
,玉川大学(延べ 12 人)
,東
京農業大学(2 人)龍谷大学(1 人)(東京財団編 2012)
。
33)http://kikigaki101.tokyofoundation.org/
34)陸前高田市の被害概況(2012 年 10 月現在)
:死亡(震災関連死を含む)
・行方不明者 2,228 人(人
口 24,246 人の約 1 割相当)
。被災戸数 3,368 戸。広田湾に面した市街地は壊滅状態で,全壊した公共
施設には市役所,消防署,公民館,図書館,小中学校 4 校などが含まれ,多くの漁業施設も被災し
た(陸前高田市 HP 参照)。
35)例えば,とうしんろく編(2012),赤坂(編)(2012)など。
36)同様の取り組みに,東日本大震災の被災者救援のために 2012 年 3 月に発足した任意団体「RQ 市
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『論叢』玉川大学文学部紀要 第 54 号
民災害救援センター」が実施する「RQ 聞き書きプロジェクト」や,麗澤大学聞き書きサークル(編)
(2012)などがある。やまもと民話の会(編)(2013)は,自らも被災者である宮城県亘理郡山元町
民による被災体験の聞き書きとして特異である。
37)話し手の年齢構成は,20 代 2 人,30 代 9 人,40 代 6 人,50 代 11 人,60 代 44 人,70 代 23 人,80 代
6 人であった(東京財団 2012)。
参考文献
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』藤原書店,2012
亜細亜大学経営学部編『東日本大震災ボランティア活動報告書』虹有社,2011
飯考行,李永俊,作道信介,山口恵子,平野潔,日比野愛子「大学教育としての災害ボランティア:
「東
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市川享子「大学ボランティアセンターが果たす役割―復興支援を通して市民性を育てる」『東日本大
震災と NPO・ボランティア:市民の力はいかにして立ち現れたか』桜井政成編著,ミネルヴァ
書房,2013,47―68
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レット〈
「震災後」に考える〉)』早稲田大学出版部,2012
岩井雪乃 2「学生の力を被災地に届ける:早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンターの活動」
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際地域学研究』2012 第 15 号 40―49
神奈川大学東日本大震災被災地支援室編『大学生,ボランティアの襷をつなぐ:もうひとつの駅伝物
語』神奈川大学東日本大震災被災地支援室,2012
金菱清編『3.11 慟哭の記録―71 人が体感した大津波・原発・巨大地震』新曜社,2012
神戸学院大学東日本大震災災害支援対策本部編『東日本大震災復旧・復興に向けて:神戸学院大学か
らの提言』晃洋書房,2012
工学院大学『東日本大震災復興支援―300 日の軌跡 -』学校法人工学院大学,2012
合田茂広『東日本大震災 緊急支援 中間活動報告 2011.3.11 → 8.31』(社)ピースボート災害ボラ
ンティアセンター,2011
合田茂広,山本隆,上島安裕,小林深吾,岩本暁子,森大樹『ピースボート災害ボランティアセンター 2011 年度 活動報告 2011.3.11 → 2012.3.31』(社)ピースボート災害ボランティアセンター,
2012
合田茂広,山本隆,小林深吾,岩本暁子,奥村早苗,森大樹『ピースボート災害ボランティアセンター 2012 年度 活動報告 2012.4.1 → 2013.3.31』(社)ピースボート災害ボランティアセンター,
2013
桜井政茂「東日本大震災と NPO:救援期の動向と議論」
『東日本大震災と NPO・ボランティア:市民
の力はいかにして立ち現れたか』桜井政成編著,ミネルヴァ書房,2013,1―20
創風社編集部編『震災の石巻―そこから―市民たちの記録』創風社,2011
創風社編集部編『震災の石巻―再生への道 市民たちの記録』創風社,2012
茶屋道拓哉,筒井睦「東日本大震災における学生ボランティア活動の教育的意義(
〈特集〉東日本大
震災∼被災地における支援活動の体験∼)」『九州看護福祉大学紀要』2012(1)
,25―37
東京財団編『被災地の聞き書き 101:暮らしを語り,思いをつなぐ.』東京財団,2012
東京大学救援・復興支援室ボランティア支援班編『東日本大震災ボランティア支援活動記録』東京大
学救援・復興支援室ボランティア支援班,2012
とうしんろく東北大学震災体験記録プロジェクト編『聞き書き震災体験:東北大学 90 人が語る 3.11』
新泉社,2012
西尾雄志編著『東日本大震災 学生ボランティアの記録』日本財団学生ボランティアセンター,2012
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東日本大震災の復旧・復興支援における学生の役割
水野勝之「東日本大震災ボランティアを通しての経済教育で学生を育てる!(シンポジウム 今こそ
生きる力を育む経済教育を―震災を乗り越えて―)」『経済教育』2012(31)
,16―18
山本克彦「学生ボランティアの組織化とその支援―つながりながら,支え,備えるために」
『東日本
大震災と NPO・ボランティア:市民の力はいかにして立ち現れたか』桜井政成編著,ミネルヴァ
書房,2013,21―46
やまもと民話の会(編集)
『語りつぐ―小さな町を呑みこんだ巨大津波』小学館,2013
麗澤大学聞き書きサークル編,真殿達・小田豊二監修『私は,あなたを忘れない:聞き書き:学生た
ちが記録した東日本大震災』麗澤大学出版会,2012
和井田節子,田中卓也,小林田鶴子「被災地支援ボランティア活動が教職志望の大学生に与える教育
的意味:石巻市内の小学校における支援活動を通して」
『共栄大学研究論集』2013(11)
,251―
272
早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター『東日本大震災復興支援ボランティア活動記録:微力
だが無力ではない』早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター,2013
Create Media 編『子どもたちの 3.11 東日本大震災を忘れない』学事出版,2012
IVUSA 危機対応研究所監修『東日本大震災 ボランティア体験記(2011,3,11∼2012,3,11)∼学生は微
力だが,無力じゃなかった∼』特定非営利活動法人 国際ボランティア学生協会(IVUSA)2012
prayforjapan. jp 編『PRAY FOR JAPAN: 3.11 世界中が祈りはじめた日』講談社,2011
Youth for 3.11『Youth for 3.11 2012 年度年次報告書』Youth for 3.11,2013
参考ウェブサイト
岩手児陸前高田市 HP:http://www.city.rikuzentakata.iwate.jp/
神奈川大学東日本大震災被災地支援室 HP:http://disastersupport.kanagawa-u.ac.jp/
社会貢献学会 HP:http://js-ss.org/entry―67.html
全国社会福祉協議会 HP:http://www.shakyo.or.jp/saigai/lft_sub_11.html
東北学院大学災害ボランティアステーション HP:http://www.tohoku-gakuin.ac.jp/volunteer/
チーム『ながぐつ』プロジェクト HP:http://blog.canpan.info/nagagutsu/
日本財団学生ボランティアセンター HP:http://gakuvo.jp/about/donation/
日本赤十字社 HP:http://www.jrc.or.jp/l2/Vcms2_00002320.html
ピースボート災害ボランティアセンター HP:http://pbv.or.jp/
明治学院大学ボランティアセンター HP:http://www.meijigakuin.ac.jp/volunteer/
Pray for Japan HP http://prayforjapan.jp/
RQ 聞き書きプロジェクト HP:http://kikigaki.rq-center.jp/
Youth for 3.11 HP: http://youthfor311.com/
(すべて 2014/1/4 に閲覧確認)
(おおた みほ)
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『論叢』玉川大学文学部紀要 第 54 号
Investigation of University Students’ Contribution to the
Recovery from the Great East Japan Earthquake
Miho OTA
Abstract
The aim of this paper is to investigate how university students, who are not professional aid
workers, can contribute to the recovery from the Great East Japan Earthquake. This paper, firstly, overviews the roles students have been playing in the process of restoration and reconstruction both in direct and indirect manners. Secondly, by presenting several examples from a range
of universities, accreditation of students’ voluntary work is examined. Thirdly, a project of recording oral accounts of victims of the tsunami by students is introduced and its impact analyzed.
Results confirm that there exists a great variety of forms of assistance, to which students have
been contributing significantly. Students can play a role not merely as manpower but also as supporters of sufferers to regain their livelihoods through continued interaction. Utilizing their experiences, they are also expected to be able to take leadership in future disaster management. To
conclude, in order to enhance such students’ initiatives, universities can provide them with structural support by, for instance, gathering and sharing information, confirming safety, and giving
professional advice on their activities.
Keywords: the Great East Japan Earthquake, recovery, assistance, student volunteer, accreditation, oral accounts recording
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