最低賃金裁判提訴にあたっての声明

≪最低賃金裁判提訴にあたっての声明》
『時給 1000 円以上に!最低賃金裁判』
――人間らしく生き働くことは憲法上の権利です――
2011 年 6 月 30 日
神奈川県労働組合総連合
最低賃金裁判原告団一同
(1)私たちは本日、厚生労働大臣と神奈川労働局長を相手に『尐なくとも時
間額 1000 円以上に決定すべき』との「時給 1000 円以上に!最低賃金裁判」
を横浜地方裁判所に提訴しました。第 1 次提訴団として50名(目標 100 名)
の大量原告を擁しての最賃法・憲法違反をただす本格的な行政訴訟は歴史的
にも全国的にも初めての裁判といえます。
(2)原告は、神奈川労連の組合員や家族、この裁判の意義に共感する時間額
1000 円未満で働く正規・非正規労働者で構成し、年齢は 20 歳代から 70 歳代、
男女ほぼ同数、中小企業から大手企業まで、有名ファーストフード店からコ
ンビニ・タクシー・流通・保育・学童・福祉・清掃・公務サービス関係など
様々な産業・業種で働く労働者です。「時給が 1000 円未満で不当に低いのは
国が最賃法や憲法に違反する最賃額を決めているからだ」との強い憤りとこ
の裁判勝利の展望をもって立ち上がりました。
(3)憲法 25 条では一人ひとりの国民の生存権、27 条では勤労権、13 条では
幸福追求権を保障し、労働基準法 1 条では人たるに値する生活保障をうたい、
最賃法の目的では①労働者の生活の安定、②労働者の質的向上、③事業の公
正な競争の確保をする、④国民経済の健全な発展に寄与するとしています。
しかし全国で 2 番目に高い神奈川県の最賃でも時間額 818 円、月 150 時間働
いても 122,700 円、年間 1800 時間働いても 1,472,400 円にしかならず、就労
へのインセンティブどころか、単身者でも食べて生きていくことも非常に困
難で、結婚して夫婦二人働きで子育てすることなど到底不可能であり、誰が
見ても明らかに憲法や最賃法の理念や規定に違反している状態にあります。
(4)2007 年の最賃法改正では 9 条 2 項で「地域別最賃は、地域における労働
者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払い能力を考慮して定め」、9
条 3 項では「労働者の生計費を考慮するにあたっては、労働者が健康で文化
的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合
性に配慮する」となり、改正時の舛添厚労大臣答弁では「整合性とは、生活
保護基準を下回らないこと」と明快な答弁を行っています。しかるに、07 年
改正から 4 年経過してもこの最賃額(最高の東京で 821 円、最低の鳥取県な
ど 7 県は 642 円)にとどまっている理由は、生活保護費から最賃額を導き出
1
す計算方法に厚生労働省の重大な 5 つのゴマカシがあるからです。
(5)このゴマカシの 5 つは、①月額の生活保護費から時間額の最賃額を計算
する際に月間労働時間を現実的な 150 時間程度にすべきところを実際にはあ
り得ない 173.8 時間にしていること、②勤労必要経費を加算していない、③
住宅扶助費・④生活扶助費・⑤公租公課を非現実的で不当に低い金額にして
いることです。私たちが、このゴマカシをただし、現実的で正当な計算をす
れば、神奈川県の最賃額は 1,471 円(月額 220,636 円)になり、裁量権を考
慮しても『尐なくとも 1000 円以上の最賃額』に即刻すべきです。現行最賃額
が最低賃金法や憲法の精神や諸規定に違反していることは明々白々です。ま
たこの法律違反をただしていかなければ同じ先進国であるヨーロッパ諸国の
月額最賃 20 万円台への展望を開くことはできません。全労連の各地方組織が
おこなった最低生計費調査では、都市部でも農村部でも 20 万円以上が必要で
あることを立証し、47 地域別最賃という日本の非常識を世界の常識である全
国一律最賃制度に変えることも重要です。
(6)
2010 年 6 月の政労使の雇用戦略会議では「できる限り早期に全国最低 800
円、全国平均 1000 円を目指す」と合意し、大企業経営者などからも景気や成
長・内需拡大にとって最賃の大幅引き上げ必要論がマスコミ報道され、今年
の 6 月 8 日には 2 年連続して横浜弁護士会が最賃引き上げの会長声明を公表
し、同月 16 日には日本弁護士連合会も同趣旨の意見書を発表しています。
(7)私たちは、この裁判の勝利判決獲得をめざしてたたかい、憲法や最賃法
の理念と目的の達成、国民生活の最低限保障(ナショナルミニマム)になりえ
る日本の全国一律最低賃金制度を確立し、生計費・社会保障・内需拡大の力に
なる賃金闘争の前進をつくります。そして圧倒的多数の雇用を支え経済の主役
である中小企業の支援・助成・公正取引をすすめ、東日本大震災の復旧・復興
にも寄与し、人権としてのディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕
事)、人間らしく生き働くことができる職場や地域、憲法どおりの社会の実現
をめざします。
当然、この 7 月からはじまる最低賃金改定の審議に影響を与え、神奈川県は
もとより全国の最低賃金大幅引上げに貢献します。
最後に、低賃金で有期・間接雇用(非正規雇用)急増の生活・雇用・将来不
安、貧困と格差拡大を根本から転換して、『普通に働けば健康で文化的な生活
ができる社会』をつくるために、県民・労働者との対話と共同を大きく広げて
いく強い決意を表明し、裁判提訴にあたっての声明とします。
以上
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