障害児教育はどうするべきか!? 2 年9 室 松並 1.研究のきっかけと予想 僕がこの研究をしようと考えたきっかけは、将来の目標として、教育の現場に就いて仕 事をしたいからということ、そして、前々から障害児に興味があったからということ。こ の2つである。予想としては、他の子(障害のない子)と同様に愛情を注ぎ、分かり合お うとすることで互いの信頼関係を築き上げ、その後から、生きていくうえの知識などを身 につけさせてあげればいいのではないか。要するに、心と心の触れ合いを重視した教育を 目指したらよいのではないか、ということである。今回は、自閉症の子に着眼点を置いて 進めていく。 2.自閉症とは? 自閉症は生まれつきの障害で、完全に治ることはない。世界各地とも1万人に4∼5人 であり、男子の方に好発すると言われている。自閉症の人は、見たり聞いたりすることや 感じることを普通の人と同じように理解することができないため、人と関わることや、自 分の気持ちを伝えたり相手の気持ちをくみとることがとても苦手である。行動も自分勝手 に見えることがある。普通の喋り方やコミュニケーションのもち方、人や物事への適切な 関わり方を習得することは、容易ではない。 自閉症の現れ方は人によって異なりますが、次のような特徴が見られる。 ◆ことばの発達が遅れる ことばは発達するにしても遅れる。ことばが発達する場合、話し方にはたいてい独特の パターンがあり、普通とは違うことばの使い方をする。ことばを上手に操ることのできる 人でも、変な比喩を使ったり、気持ちのこもらない話し方をしたりする。 ◆人との関わり方が分からない 自閉症の子どもは、視線をそらしたり、抱っこされることを嫌がったり、周りの世界に 無関心のように見えたりすることがよくある。このため、自閉症の子どもは他の子どもと 協調して遊ぶということがなく、友情を育んだり人の気持ちを理解したりすることが苦手 である。 ◆感じ方に一貫性がない 自閉症の子どもは、まるで耳が聞こえず、ことばや音に反応しないように見えることが よくある。一方でその同じ子どもが、ある時には掃除機の音や犬の吠える声などをとても 嫌がることがある。また、痛みに鈍感であったり、寒さや暑さを感じなかったり、逆にこ れらに過敏に反応したりする。 ◆知的機能がかたよって発達する 自閉症の人は、描画・音楽・計算・記憶力(ただしそれが持つ意味には無頓着な憶え方 で)などで全体の能力と比べると、不均衡に突出した能力を持っていることがある。一方 で、大多数の自閉症の人たちは、様々なレベルで精神遅滞を伴っており、平均かそれ以上 の知的能力を持つ人はわずかに2割にすぎない。知的能力が様々なレベルにあることが、 自閉症という障害をとりわけ分かりにくくしている。 ◆活動と興味が限られる 自閉症の人は、手をひらひらさせたり、体をくねらせたり、くるくる回ったり、前後に 体を揺すったりなどの動作を繰り返すことがある。また、同じ道順、同じ着替えの順序、 同じ日課などのこだわりを持つこともある。これらの決まり事に少しでも変更が加えられ ると、自閉症の人は、たいへんな苦痛を感じたりする。ほかにも、 ・一つのものに対してのこだわりや、変化への抵抗 ・癇癪を起こす ・欲しいものを表現出来ない;言葉の代わりにジェスチャーや指差しをする ・正常な返事の代わりに単語やフレーズを繰り返す ・均一でない体全体や手先の運動 ・周りのものには訳の分からない理由で笑ったり、泣いたり、苦痛を訴える ・人から離れて、孤独でいることを好む ・他人と交友することが出来ない ・抱擁する/されることを好まない ・目線を合わせることが難しい・全く出来ない ・普通の教え方では反応することが出来ない ・延々と続く奇妙な遊び ・ものを回転させる ・あるものへの異常なまでのこだわり ・痛みに対する極端な感覚過敏、または鈍感さ ・危険に対しての恐れがない ・顕著なまでのハイパ−な行動・あるいは極端な力のない行動 ・口頭の合図に反応しない;聴覚テストは平常だと言うのに、まるで耳が聞こえないようである といったものが挙げられる。 3.実際に接してみて 夏休み、僕は1日8時間、障害児のお世話をするボランティアに計4回参加した。そこ では、主に自閉症の子が学童保育として通っている。基本的に1人の子につき、1人のボ ランティアが担当するといった形がとられていて、4日間で3人の子を担当した。(もち ろん、他の子とも遊んだりお世話をしたりした)それぞれの特徴を挙げると、 N 君… ・8歳 ・話せない ・足が不自由 ・誰にでも愛想がいい ・笑顔が素敵! お絵かき大好き ・興奮するとよだれが大量発生!! き(1時間以上続く…) H 君… ・11歳 ・指を噛まれるのが好き ・ボールが大好き うにしないと、失敗してしまう ・話せない ・ブラインドに挟まれるのが大好 ・自分で食事するのが困難 ・トイレを30分おきに行かせるよ ・つばを吐く癖あり ・同様に、食事において、ごはん を口に入れては吐き出す、そしてそれをまた口に入れる癖 ぺたをくっつけてきたり、抱きついたり、甘えてくる! Y 君… ・9歳 きっぽい ・心を開いてくれると、ほっ ・水遊び大好き ・簡単な読み書き、計算はある程度はできる。 ・活動的 ・ ・会話もできる ・飽 ・甘えん坊 一通り特徴を挙げてみたが、どの子にも共通して感じたことは、心を開くまでの時間に は多少差はあるものの、いったん心を開いたらとことん甘えてきてくれ、頼りにしてきて くれるということ。ほんとに可愛くて仕方がなかった。危うく自分の家に連れて帰るとこ ろだった…。 4.育て方 自閉症は治るのか?ということに対しては今のところ、がっかりするかもしれないが、 自閉症は先天性のもので治らない。それは近眼が治らないのと同じようなことである。し かし、育て方一つで、周囲が困ってしまうような自閉的な行動は少なくなる。一人で飛び 出したり、突然かんしゃくを起こしたりすることが少なくなって、一人遊びであっても、 保育者の側で遊ぶようになれば、一緒に何かをやってみることができるようになる。保育 者の頼みや教えることを嫌がらずに受け止められるようになれば、みんなと同じような振 る舞い方が少しずつ増えていく。ということは、大切となってくるのは保育者とどう接す るか?いうことになる。親子関係において述べると、 自閉症は中枢神経系になんらかの障害があると言われているが、障害部位はまだ特定さ れていない。障害部位はわからなくとも、親密な親子関係を築くことができると、自閉的 な症状が薄らいだ状態で育っていきやすくなる。 ◎親密な親子関係の基盤(子どもにどう思ってもらうか) ・「ママは怖くない」→母の側にいられるようになる ・「ママはボクを守ってくれる」…何かあったときに戻るようになる ・「ママはボクが困っていることを手伝ってくれる」…同上 ・「ママと一緒だとおもしろい、楽しい」…ママを求めるようになる ◎基盤を作るために ・怖がらせない対応 *なるべく低い静かな声でゆっくり話しかける。言い回しは単純に。 *突然動き出さない。何かするときに予告を入れる。 【例】 ・鼻かむよ…はいチーン ・ズボン替えようね…はい下げて ・靴履こうね…足先をとんとん軽く叩く。子供が見たら靴を足にあてる ・ママ台所にいるよ。ママお庭に行くね ・気前のいい手伝い。喜ぶことを繰り返してやる。 *これが取りたい/これがしたい/これが開けたい/ママにこのようにされるのが好 きだ、などが伝わってきたら手伝ってやる。いっぱいしてやる。最初は子供の気持ち に並行か先取り。次第に子供がしたいという動きを見せたらその後に、と手伝いのタ イミングをずらしていく。 ・困っているときに手伝ってやる。 *これは上記と似ているが、意外と気づくのが難しい。本当に困った時に、彼らはポ ーカーフェイスで歩き去ったりするので。 *同じ場所を何度もうろついたりする時は、たいてい、その場所にある何かをしたが っていたり、その場所にいる誰かに何かをしてもらいたがっていることが多いようで ある。 ・ていねいな声掛け *子どもの目線が向いたものを言ってやる。ゆっくり単純に。 *ぺらぺらしゃべりまくらない(わけが分からなくなって脅えるので) ・兄弟の騒がしさから少し守ってやる。 *側で抱っこしていてやる等 これらの事項は、他の保育者との関係についても同様に言える。 5.現場の方の話 これは、障害児学級がある小学校の先生から実際に聞いた話である。 「子どもたちは無限の可能性を持っています。これは、障害を抱えた子どもたちも同じ です。『あれができない。これもできない。』と、できないことを悩むのではなく、でき るようになったこと、その小さな、しかし確かな一歩を喜ぶことが大切だと思います。私 たち教師は、子どもたちの可能性を見出し、一人一人に応じた学習を組み立てることで、 その成長を支援することがその役割であると認識しています。 周りの子どもたちは、自分たちとの『違い』を感じた時、『先生、どうしてなの?』と 素直に聞いてきます。そんな時は、『身体が周りよりゆっくり成長する人がいるのと同じ ように、心がゆっくり成長しているんだよ。』と答えます。以前、重度の自閉症の子ども がいました。受け持ちでもない私に、日頃反応は全く返ってきませんでした。ある時、集 団宿泊キャンプがあり、その子も、他の学校の多くの知らない子どもたちと一緒に施設に 泊まっていました。夜の活動の応援に駆けつけた時、その子は私の顔を見るなり、うれし そうな表情で近づいてきてくれました。日頃、言葉や仕草で表すことはできなくても、私 を近い存在として認識してくれているんだということを実感し、非常に感激しました。 今、教育現場では、特別支援教育への移行の準備が始められています。教室には、LD やADHDの子どもたちを始め、支援を要する子どもたちが在籍しています。それぞれの 子どもたちに適切な支援を行う体制作りが急務となっています。しかし、それは決して特 別なことではありません。教育を行う者にとって、一人一人の子どもたちに適切な支援を 行って、それぞれの可能性を伸ばすことは、一番基本的なことなのです。 教育者を目指す多くの若い人たちに、なるべく早い機会に子どもたちと接して欲しい と願っています。そして、子どもたちから多くのことを学んでほしいと思います。」 6.まとめ 1人1人の性格が違うように、障害があるというのは1つの「個性」としてとらえても いいのではないだろうか。たとえ話すことができなくても、自分の感情をコントロールで きなくても、愛情を持って接してあげれば必ず通じ合うことができる。 障害を持って生まれてきた人に対して、不幸だとか思う人も世の中にはたくさんいる。 実際自分もその中の1人だった。しかし、実際に接してみると、全然そのようなことは感 じられなかったし、むしろ幸せそうにも思えた。たくさんの人から人一倍の愛情を受けて いて、それにどの子もとても素敵な、心からの笑顔を見せてくれる。その笑顔を見て幸せ な気持ちにならない人はいないと断言できる。 障害を持った子を教育するということは、相当大変なものである。それに伴い、教える 立場の人間にもそれなりの知識であったりするものも要求されてくる。しかし、この研究 を通して感じたのは、やはり先にも述べたとおり、いかに愛情を持って、その子と分かり 合おうと努力をして接していくか、これが一番大事なことだということである。 7.写真コーナー!! ボランティアに行ったときに撮った写真を一部公開します! (肖像権、人権の保護のため抜いてあります) 参考文献:「光とともに」 参考 URL:「新しい自閉症の手引き」「自閉症療育Q&A」 http://www.nucl.nagoya-u.ac.jp/~taco/aut-soc/rainman/index.html http://www.ryouiku.net/index2.html
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