なぜ、 学校に 「チーム力」 が求められるのか

特集1
特集1
「学校力」を高める「チーム力」
──管理職のリーダーシップと協働のマネジメント──
なぜ、学校に「チーム力」
が求められるのか
対応のポイント
① 中 央 教 育 審 議 会・ 教 員 の 資 質 能 力 向 上 特 別 部 会「 審 議 経 過 報 告 」( 平 成
二三年一月三一日)では、これからの学校には「チームで対応する力」が
求められると指摘しているが、その背景の第一として、多様化・複雑化す
る学校教育課題に対する組織的対応の必要性がある。
②第二は、大量退職・大量採用の時代を向かえたなかで、教員構成の変化に
伴う学校全体の教育力低下への対応がある。
③第三は、学びの構造転換に伴う新たな教育方法の開発や、教員同士による
学び合いを可能とする学校づくりの必要性である。
④ 第 四 は、
「 専 門 免 許 状( 仮 称 )」 取 得 者 を 中 心 と す る「 チ ー ム と し て の 学
校」という新たな学校像の提案がある。
北神 正行
「審議経過報告のポイント」を見ると、
てまとめられたものである。
と題する文部科学大臣からの諮問に対し
資質能力の総合的な向上方策について」
六月に「教職生活の全体を通じた教員の
過報告」が提出された。これは、前年の
平成二三年一月、中央教育審議会・教
員の資質能力向上特別部会から「審議経
中教審「審議経過報告」と
学校の「チーム力」
国士舘大学教授
教職研修 2011.7 24
特集1 「学校力」を高める「チーム力」
て、
「審議経過報告」の指摘内容を含め
では、なぜ学校の「チーム力」なので
あろうか。その背景や理由・目的につい
強く打ち出されている。
など、学校の「チーム力」という観点が
ーシップ・マネジメント能力」を求める
を、校長にはチームをまとめる「リーダ
ここには、教員集団を「チーム」と捉
え、 教 員 に は「 チ ー ム で 対 応 す る 力 」
力」があげられている。
長 の リ ー ダ ー シ ッ プ・ マ ネ ジ メ ン ト 能
「 教 員 集 団( チ ー ム ) を ま と め て い く 校
支 援 す る シ ス テ ム づ く り 」 と と も に、
じて不断に資質能力を高めていくことを
理 由 と し て、
「教員が教職生活全体を通
ての総合的・一体的な検討が求められる
教員の養成・採用・研修の各段階につい
である。
く、むしろ有効だともされてきたところ
なされる間は、こうした対応でも問題な
の知識や技能、経験によって課題解決が
策のもとで展開されてきた。個々の教員
別的・即時的な問題解決を図るという方
て大幅な裁量性を付与し、そのなかで個
るものであるがゆえに、教員個人に対し
こ れ ま で、 学 校 教 育 課 題 へ の 対 応 は、
それらが流動的であり、不確実性を有す
ての学校の対応への変化である。
的には、教員個々の対応から、組織とし
が求められているという点である。具体
いる実態に対して、その対応方策の変化
の活用など、多様な教育課題が急増して
充実、外国人児童・生徒への対応、ICT
の生徒指導上の諸課題、特別支援教育の
れているのである。
な学校組織に転換していくことが求めら
も「チーム」で対応していくことが可能
化し、その課題解決に向けての取り組み
かわる課題や問題を教員集団として共有
意味しているといえる。児童・生徒にか
制に基づく協業型組織に転換することを
きた学校組織を、教員集団による協働体
それは、教員個人のなかで自己完結的に
「チーム力」が求められているといえる。
そこから、組織としての学校の対応と
い う 観 点 が 必 要 と な り、 学 校 に お け る
同様である。
ないし、いじめ・不登校といった問題も
工夫や努力だけで解決が図れるものでは
おり、個々の教員の個別的対応では解決
育課題は、まさにそうした状態になって
る。前述のような現在の学校が抱える教
経験の浅い教員が大量に誕生することが
三 分 の 一、 二 〇 万 人 弱 の 教 員 が 退 職 し、
よれば、今後一〇年間に、教員全体の約
第二は、教員構成にかかわる急激な変
化に伴う問題がある。文部科学省調べに
教員構成の変化と
若手教員の力量課題
問題解決がなされる個業型組織とされて
ながら検討してみよう。
しかし、それを超える場合には、学校
としての意思形成やそれをふまえた教育
まず、第一の背景としては学校を取り
巻く状況の変化、とくに教員が対応すべ
を図ることが困難な状況にあるといえ
明らかになっている。このことは、教職
活動の組織的な改善や変革が必要とな
き課題の多様化・複雑化という点があげ
る。学力向上の問題も個々の教員の創意・
学校課題の多様化・複雑化と
個業 型 組 織 の 限 界
られる。学力の向上、いじめ・不登校等
25 教職研修 2011.7