標準化活動と 特許情報調査 - 株式会社戦略データベース研究所

1.背景
背景
1.講師のバックグラウンド
1966~1993年 旭化成で研究開発に従事(不織布、人工腎臓、
ウイルス除去膜等)
1993~1997年 旭化成カシミロン工場長
1997~2004年
1997
2004年 旭化成知的財産部(次長
旭化成知的財産部(次長→技術情報センター長
技術情報センタ 長
(兼務) → 知財部・技術情報センター長
2005~2011年 東京農工大学MOT知財担当教授
知的財産管理学 知的財産防衛論等
知的財産管理学、知的財産防衛論等
現在、(株)戦略データベース研究所所長
2.標準化に関する背景
2008 2010年
2008~2010年
「国際標準化に関する国際プロジェクト」実施
・経産省支援の研究プロジェクト
・共同研究団体・・・農工大MOT、オランダエラスムス大学、
共同研究団体
農 大
オ
ダ
ム 大学
中国計量学院
このプロジェクトの一環として、「標準化における知的財産問題」に
関する研究を担当
標準化活動と
特許情報調査
(株)戦略データベース研究所
所長 工学博士
所長・工学博士
鶴見 隆
E il [email protected]
Email:
i@
bi l b
j
1
2.標準化と知的財産
2 2 パテントポリシ
2.2.パテントポリシー
2.1.標準化における知財トラブル
知的財産
2
標
STEP1
特許を持っている人を見つける
STEP2
特許を持っている人から特許宣言書
を提出してもらう(RAND条件受諾)
STEP3
特許をライセンスしない人がいるとき
は、その技術を標準に入れない
STEP4
出来上がった標準に特許が含まれる
ことを明示する
STEP 5
規格発行後にライセンス拒否があっ
た場合は、規格を策定しなおす。
大原則
標準化団体は特許の有効性判断や
ライセンス交渉には一切関与しない
ライセンス交渉には
切関与しない
準
標準に知財が
取り込まれると
広く利用が
創造した個人の
Z
トラブルの発生
排他的財産
求められる公共財
3
出典:JSA標準化教育資料
4
4
知的財産と標準に関する紛争事例
2 3 標準における知的財産トラブル
2.3.標準における知的財産トラブル
事
・しかしながら、パテント・ポリシーでは十分に係争問題に対応できてい
るわけではない。
・スライド6に最近の主要な知的財産と標準に関する係争事件を掲げ
たが、主な問題としては、
1.標準化プロセスにおける知的財産の非開示
2.特許の必須性の判断の違い
高額
3.高額のライセンス料の請求
4.特許権が譲渡された場合の声明書の効力
5 標準に参加していなかった者からの知的財産権行使
5.標準に参加していなかった者からの知的財産権行使
例
概
要
1 Rambus 事件
1.Rambus
J
JEDECにおけるSDRAM標準の策定時に、Rambus社
における
標準の策定時に、
社
が関連特許出願を開示せず、事後権利行使をした事件
2.Qualcomm 対 Broadcom 事件
映像圧縮技術に関する標準策定時に、Qualcomm社が
関連特許権を開示せず、事後権利行使をした事件
3.Nokia 対 Inter Digital 事件
WCDMAの標準に含まれるInter Digital社の特許を
巡り、その必須性が争われた事件
4.CSIRO 対
対 Buffalo 事件
無線LAN標準の策定時にRAND条件での許諾宣言書を
無線
標準の策定時に
条件 の許諾宣言書を
提出したCSIROがライセンス条件を受け入れなかった
Buffaloに対し販売差止請求訴訟を起こした事件
5.Nokia 対
5
N ki 対 Qualcomm Q l
事件
WCDMA標準でFRAND条件での許諾宣言書を提出した
Qualcomm社がNokia社ら計6社から、高額なライセンス
料の提示が独禁法違反であるとして訴えられた事件
高速イ サネット標準に関連する特許宣言書を提出した者
6.Negotiated Data
6
Negotiated Data Solution Solution 高速イーサネット標準に関連する特許宣言書を提出した者
から特許を譲渡されたNDS社が譲渡前の水準を越えたラ
事件
等が挙げられる。1、5はいわゆるホールドアップ問題である。
イセンス料を要求したことが争われた事件
7 JPEG 事件
7.JPEG 事件
5
JEPG標準について、関連する特許を有しながらも策定に
JEPG標準について
関連する特許を有しながらも策定に
携わらなかったフォージェント社が権利行使した事件
6
特許が関わる標準化についての問題点
3 ホールドアップ問題
3.ホ
ルドアップ問題
3.1.ホールドアップ問題の位置づけ
・標準を巡る知的財産権問題の内、ホールドアップ問題は、必ずしも事
例として多いわけではないが
例として多いわけではないが、一旦発生すれば作成された標準が機
旦発生すれば作成された標準が機
能不全に陥るという意味では重大な問題であり、かつ関係者の関心
も大きい。
・経済産業省が実施した企業の標準担当者に対するアンケートによれ
経済産業省が実施した企業の標準担当者に対するアンケ トによれ
標準化された後に事後的
に特許権を主張する者が
あらわれ、標準の利用を
妨げ
妨げる可能性がある
能性 あ
ば、回答者の73%(ISO/IECに関して)、66%(JISに関して)が
ホールドアップ問題に関する懸念を表明している。
7
8
ホールドアップへの対応方法
3 2 特許調査の必要性(アンケ ト調査から)
3.2.特許調査の必要性(アンケート調査から)
・ホールドアップへの対応及びホールドアップを受けた場合の先行
技術調査を併せて、特許調査が必要であるとの意見が多い(スライド
10参照)。
10参照)
・また、特許調査が常に必要か否かとの質問に対しては、「常に」と
「場合によっては」が半数を占めている(スライド11参照)。
常に」何らかの特許調査を実施した方がよいと答えた者の自由意
・「常に」何らかの特許調査を実施した方がよいと答えた者の自由意
見はスライド12に示す通り。
9
10
特許調査の必要性に関する自由意見
特許調査の必要性
・近年の社会情勢における知財権の保護強化策に鑑みて、いかなる事
業を
業を進める上でも知財関係の調査・把握は必須と考える。
財関係 調
把握
須 考
。
・現実的にはどうかわからないが、可能性だけを検討すると、調査をしな
ければ、標準参加者以外(例えば個人発明家)の発明が漏れてしまう
リスクがあるのでは。
・標準化された後、把握していない特許が存在することは、特許権者と
のトラブルの原因となるため、出来る限りの調査を行う必要がある。
・調査を行っても漏れは必ず出ると思われるが、該当すると思われる特
許のリストがないと、宣言書の提出の依頼も出来ないので、調査は必
要。
・一般の規格利用者がここに調査するのは負担が重すぎる。
・一定期間に参加者が必ずしも把握できない特許が含まれる又は出願、
登録される可能性があるため、常に特許調査は実施すべきと考える。
11
12
3.3.なぜ標準化機関は特許情報調査を行わない
のか?(インタビュー調査結果)
(参考)インタビュ 調査について
(参考)インタビュー調査について
本研究の一環として、鶴見が直接下記メーカーの標準化担当者にイン
1)標準化機関に参加する企業の立場から
標
機
場
タビューを行った。
1.米国における「三倍賠償問題」に対する懸念
特許情報調査を行った場合、標準の実施後、第三者から、米国
において特許侵害で訴えられると、裁判所で、「故意」と認定され、
1.企業名
NTT、シャープ、パナソニック、日立製作所、東芝、IBM 等
2.前頁のまとめの他、生のご意見としては、下記のようなものがあった。
三倍賠償を科せられるおそれが有る。
2.調査の「完全性」と「コスト」に関する懸念
・国際標準化機関が取り扱う技術領域では往々にして関連特許が
必須特許を完全に把握することは難しくかつ、そのためのコスト
は非常に多額となってしまうのではないか?
常 多額 な
う
な
10~15万になる場合があり、とてもこれらの特許を精査すること
はできない。
3.企業戦略に支障を来す懸念
・標準化に関連する特許情報調査は担当する技術者が行っており、
参加者の特許情報が明らかにされると企業戦略に支障が出る。
参加者の特許情報が明らかにされると企業戦略に支障が出る
注:「三倍賠償問題」とは?
我々標準担当者は関係していない。
・知財部が特許に関する情報を提供してくれない。
米国では 侵害者が故意に特許を侵害したと認定されると 判事の
米国では、侵害者が故意に特許を侵害したと認定されると、判事の
裁量により、賠償額が三倍まで加増できる制度。
13
14
3.4.ITU‐Tにおける特許情報調査に関する議論
2)標準化機関の立場から
1)IPR-Contribution30(2005年)
1.特許係争に巻き込まれる可能性のある問題には一切関与しない
平松教授(当時NTT在籍)が、IPR特別委員会において下記の提案
ことを原則としており その原則から特許情報調査を行うことは
ことを原則としており、その原則から特許情報調査を行うことは
をされたが、採択されなかった。
考えられない。
専門家委員会による必須特許調査の手順
2 標準化機関は もし標準化機関が自身で特許情報調査を行うと
2.標準化機関は、もし標準化機関が自身で特許情報調査を行うと
ステップ1. 技術者及びIPRエキスパートで構成される専門家委員会(EG)
表明したり、参加者に特許情報調査を十分に行うよう求めたりす
の設置(委員会は、SG内又はSGと並列に設置される)。
ると 標準への参加者が少なくなると懸念している
ると、標準への参加者が少なくなると懸念している。
ステップ2. EGは特許情報調査を行う。
3.標準化機関は、仮に特許情報調査を実施しようとしても、そのため
・目的は標準に対する必須特許の発見
のスタッフも予算も持っていない。
のスタッフも予算も持っていない
・調査対象は標準に参加していない第三者(ノンメンバー)の
注:以上のコメントは、下記の専門家の発言をまとめたもの(文責は筆者にあり)
所有する特許ないし特許出願
元ISO理事長 田中正躬氏
ステップ3. EGは調査結果をTSBに報告する(必須特許を発見した場合)
一橋大学
ステップ4. TSBはSGに結果を報告する。
江藤
学教授
大阪工業大学 平松幸男教授
ステップ5 SGは標準案の訂正を行う。
ステップ5.
SGは標準案の訂正を行う
その他
15
注: TSB ・・・ITU-T事務局、 SG・・・・標準案作成グループ
16
4.本研究に基づく必須特許手順案の検討
本研究 基 く必須特許手順案 検討
2)自発的特許調査の提案(2007年)
NTTの吉松氏が、IPR特別委員会において下記の提案をされた。提案
は吉松氏をリーダーとする小委員会で継続検討をすることとなった。
4.1.新しい必須特許調査手順案(NP)
インタビュー調査の結果及び平松・吉松両氏の提案をベースに、下記
自発的必須特許調査の手順
の3点をクリアできる手順案の作成を試みた。
ステ プ1 調査グループ(VSG)の設置
ステップ1.
調査グル プ(VSG)の設置
・技術者及びIPRエキスパートからなる調査グループをITU
① 米国における「三倍賠償問題」に対する懸念
② 調査の「完全性」と「コスト」に関する懸念
T外に自発的に設置する。
-T外に自発的に設置する
③ 企業戦略に支障を来す懸念
ステップ2. VSGは特許情報調査を行う。
本手順案の要点は下記の通り。
・目的は標準に関係するノンメンバー所有の特許の抽出
① VSGは必須特許調査を独立の特許情報調査機関に委託する。
ステップ3. VSGは調査結果をTSBに報告する。
ステップ4. TSBは該当するノンメンバーに必須特許を所有すると判断する
場合には宣言書を提出するよう要請する。
→ 調査の完全性、コスト、三倍賠償問題のクリア
② VSGは必須特許性の判断を独立の第三者機関に委託する。
ステップ5. TSBは結果をSGに報告する。
→ 三倍賠償問題、完全性のクリア
ステ プ6 SGは必要に応じて標準案の訂正を行う。
ステップ6.
SGは必要に応じて標準案の訂正を行う
注:調査費用はVSGに参加するメンバーが負担する。
17
18
NPの内容
ステップ1.
プ
VSGをITU-T外に設置する。
を
す
ステップ2. VSGは標準に関連する特許情報調査を独立の特許情報調査
機関(PSO)に委託する。
機関(PSO)に委託する
ステップ3. PSOはVSGに調査結果を報告する(特許グループA)。
ステップ4. VSGから報告を受けたTSBはAを所有するノンメンバーに、必
須特許を所有すると判断する場合には宣言書を提出するよう要
請する。
ステップ5 TSBから宣言書に関する報告を受けたVSGは下記の特許グ
ステップ5.
ループBを抽出する。
① 宣言書が提出されなかった特許
② 宣言書によってRF及びRANDが拒絶された特許
ステップ6. VSGは特許グループBから、明らかに必須特許ではない特許
を除外し 残り 特許群(グ
を除外し、残りの特許群(グループC)について、独立した第三者
プ )に
独立した第 者
機関に必須性の判定を委託する。
ステップ6 VSGから必須特許の通知を受けたSGは標準案の訂正を行う。
ステップ6.
注:調査費用はVSGに参加するメンバーが負担する。
4.2.NPの実現性の検討(1)(試験実施)
1)試験実施の方法
1 対象とした標準
1.対象とした標準
ARIB-STD-B30 ・・・・アルダージの管理するデジタル放送受信
及びデジタル放送サービスに関する標準
2.特許情報調査を委託したサーチャー
独立して特許情報調査を営む調査会社のサーチャー
3.調査対象範囲
ARIBのメンバー以外の者が所有する日本特許及び特許出願
4 抽出された特許の分類
4.抽出された特許の分類
検索式を立てて抽出した特許をスクリーニングし、A、B、Cに分類
A
A・・・必須特許である可能性が高いもの
必須特許である可能性が高いもの
B・・・AかCかの判定の困難なもの
C・・・明らかに標準に関係しないと考えられるもの(ノイズ)
19
2)結果
20
4.3.NPの実現性の検討(2)(三倍賠償問題)
1.サーチャーが抽出した特許
A・・・・・22件(ただし、内、有効なものは7件のみ)
B・・・・・79件(公開されたもの全て)
2.Aに関する判定
ARIBに関係する弁護士に22件の特許のチェックを依頼したところ、
ARIBに関係する弁護士に22件の特許のチェックを依頼したところ
下記の結果を得た。
・本標準に関係しない特許・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4件
・標準案の策定の最終段階で、標準から排除された特許・・・・・1件
・トムソンの所有する特許・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2件
(
(アルダージはトムソンとプール契約を結んでいる)
ダ ジはトム
とプ
契約を結ん
る)
3.試験実施のコスト
関連特許の抽出費用
関連特許の抽出費用・・・・・40万円
40万円
Aに関するチェック・・・・・・・・弁護士のご好意
注:もし、必須性の厳密な判定が必要な特許が発見された場合には、
必須性の判定に80~100万円/件が掛る。
21
<シーゲート判決(CAFC
<シ
ゲ ト判決(CAFC 2007年)>
NPが三倍賠償問題をクリアする方法であるか否かについて、弁護士に
「見解書」の作成を依頼した。以下「見解書」の概要を紹介する。
注:依頼した弁護士・・・・松本直樹弁護士(三倍賠償問題の権威)
1)判例の変化
<アンダーウォーター判決(CAFC 1983年)>
当事者が他者の特許権を現実に知っている場合には、かかる当事者
は侵害があるか否かを確かめる相当な注意(due care)を尽くす積極
的な義務(affirmative duty)を負う。かかる積極的な義務の中には、
侵害となり得る行為を開始する前に 弁護士から的確な(
侵害となり得る行為を開始する前に、弁護士から的確な(competent)
t t)
リーガルアドバイスを得る義務が含まれる。
この判決以降
判決以降
関連特許を見つけた場合には、「故意侵害」を避けるためには、「特許
を侵害していない」又は 「特許が無効」との弁護士見解を取得すること
を侵害していない」又は、「特許が無効」との弁護士見解を取得すること
が必須要件となった。
22
2)NPを適用した場合の三倍賠償リスクについて
CAFCはこの判決でアンダーウォーター判決を覆し、下記のような基
1.一般的に言って、特許情報調査が加重賠償の可能性を高める場面
準を設定した。
準を設定した
を想像できないではない。しかし、加重賠償があり得るのは、現在の
1.故意侵害を立証するためには、特許権者は、「侵害者が『当該行
判例法のもとでは、無謀とされた場合だけであり、そうなる可能性は
為が有効な特許の侵害を構成することになる客観的に高度な蓋然
極めて小さい。ただし、陪審判断による一定のリスクはあるが、そこ
性がある』にもかかわらず当該行為を行った」ことを、明白かつ確
考
まで考えても特許調査が有害とは思われない。
信を持つに足りる証拠 (clear and convincing evidence) で示さ
2.さらに、外部の独立した調査機関(以下「調査機関」という)が調査を
なければならない。侵害被疑者の心情は、客観的な基準とは関係
がない。
するので、調査中に接して調査機関が非侵害とした特許については、
2.もしこの客観的な閾値基準が充足された場合、特許権者はさらに
知らずに済む。これは、後に加重賠償の問題が生じる可能性を心配
の客観的に定義された危険(侵害時の記録で決められる)を侵
この客観的に定義された危険(侵害時の記録で決められる)を侵
するなら(そもそもその可能性自体が極小だが さらに) その回避と
するなら(そもそもその可能性自体が極小だが、さらに)、その回避と
害被疑者が知っていたか、明らかに知るべきであったことを示さな
いう点で相応の意味がある。
ければならない。
け
な な 。
23
24
4.4.ITU-T IPR特別委員会への提案
2)メンバ からのコメント
2)メンバーからのコメント
1)提案
① 特許調査や必須判定などの受託業務を請け負う者の中立性、公平
NTTの吉松氏から 昨年12月2 3日に開催されたIPR特別委員会
NTTの吉松氏から、昨年12月2、3日に開催されたIPR特別委員会
性が 本当に担保されていると言えるかどうか疑問がある。
本当に担保されていると言えるかどうか疑問がある
においてNPの提案が行われた。
② 調査を意味する「サーチ」という英語は、意思を持っ た行為について
用いられる言葉であるため 調査を委託した会員自身が特許故意侵
用いられる言葉であるため、調査を委託した会員自身が特許故意侵
害の被告とされるリスクがある。「第三者の特許に注意する」という現行
の規定で十分である。(英語を母国語とするメンバ )
の規定で十分である。(英語を母国語とするメンバー)
③ この調査活動はITUの外で行われるとしながらも、インフォーマティブ
(参考情報)とはいえ、ITUのIPRガイドラインに記載して おく
おくべきとの提
きとの提
案に対しては合理的な根拠が乏しい。
3)結論
引き続き、吉松氏がリーダーを務める小委員会において検討を進める。
25
26
(参考)米国「2009年特許改正法」について
(参考)登録調査機関について
<「登録調査機関」とは>
1.「故意」の認定要件の厳格化
特許権者は、以下のことを明白かつ確信をもつに足りる証拠をもって示し、
・特許庁の審査官が特許審査を行うに当たって必要とする先行文献
侵害者が無謀にも特許権を侵害したことを立証しなければならない。
調査を、特許庁審査官に代行して行うことを目的とする調査機関。
「特許権者が特許クレームと侵害品との関係を示し、訴訟提起の合理的な
可能性があることを書面によって警告したにも関わらず 侵害者が 特許発明
可能性があることを書面によって警告したにも関わらず、侵害者が、特許発明
であるとの認識を持ちながら意図的に特許発明を模倣したこと。」
・従来は特許庁長官が指定する指定調査機関(公益法人)のみがこ
の作業を担当することとなっていたが、法律改正により、要件を満た
すものであれば営利法人でも登録可能な制度に変更された。
2.「故意」の認定に対する制限
裁判所は、下記の事情の下に、侵害者が、非侵害であることを誠実に信じて
いたとみなされる場合には、故意侵害を認定することができない。
<登録の要件>
① 調査業務実施者に関する基準
ⅰ 弁護士見解を合理的に信頼した
ⅰ.弁護士見解を合理的に信頼した
以下の要件を満たす者が区分毎に10名以上必要
ⅱ.侵害者が特許を発見した後、侵害を避けようとして製品の修正をした
a.大学を卒業した者であって、研究関係に通算4年以上従
ⅲ.裁判所が十分と考える他の証拠がある
事した経験を有し 指定の研修を修了したもの
事した経験を有し、指定の研修を修了したもの
3.訴訟手続きの制限
訴訟において、特許権侵害が立証されるまでは、特許権者は故意侵害の申
し立てができず 裁判所は故意侵害の決定を行えない 「故意」に関する決定
し立てができず、裁判所は故意侵害の決定を行えない。「故意」に関する決定
は、陪審なしで行わなければならない。
b.短期大学卒、高等専門学校卒であって、研究関係に通算
年
従事
経験を有 、指定 研修を修
6年以上従事した経験を有し、指定の研修を修了したもの
c.その他
27
28
<現在の「登録調査機関」>
② 登録申請者に関する基準
以下の基準全てを満たすこと。
a.他の株式会社又は有限会社の子会社でないこと
b.役員に占める同一の者の役員又は職員の割合が2分の1
登録調査機関の名称
調査業務を行う区分
財団法人工業所有権協力
センター
タ
1計測 2ナノ物理 3材料分析 4応用光学 5光デバイス 6事務機
器 7自然資源 8アミューズメント 9住環境 10自動制御 11動力
機械 12運輸 13一般機械 14生産機械 15搬送組立 16繊維包
を超えないこと
装機械 17生活機器 18熱機器 19福祉・サービス機器 20無機化
c.特許法等に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行
特許法等に違反し 罰金以上の刑に処せられ その執行
学 21金属加工 22金属電気化学 23半導体機器 24医療 25生
を終わった日から2年以上を経過しない者でないこと
命工学 26環境化学 27有機化学 28高分子 29プラスチック工学
30有機化合物 31電子商取引 32インターフェイス 33情報処理
d 登録を取り消され、その取消しの日から2年を経過しない
d.登録を取り消され、その取消しの日から2年を経過しない
34伝送システム 35電話通信 36デジタル通信 37映像機器 38
者でないこと
画像処理 39情報記録
③ システムに関する基準
テクノサーチ(株)
10、11、12、13、14、15、18
特許庁と同等のシステムを整えること(市場から調達できないも
社団法人化学情報協会
30
のは特許庁が貸与する)
(株)技術トランスファサービス
8、19
(株)先進知財総合研究所
5
パテントオンラインサービス(株)
8
(株)パソナグループ
10
(株)プロテック
23
④ その他
29
30
5.ホールドアップ、パテントトロールと特許情報調査
2002年6月 フォージェント社がソニーとライセンス契約を締結したことを
フォ ジェント社がソニ とライセンス契約を締結したことを
5.1.JPEG特許の事例(経緯)
1987年
発表
ソ
はCLI社がJPEG標準化に関与していたか否か
・ソニーはCLI社がJPEG標準化に関与していたか否か
JPEG特許登録(米国特許第4698672号)
を不問に付して、契約を締結
・「冗長度を減らす符号化システム」
2002年7月 フォージェント、ライセンシングプログラムの発表
・権利者
権利者 CLI社(テレビ会議システムの開発
CLI社(テレビ会議システムの開発・販売会社)
販売会社)
1994年
JPEG規格決定(ISO、ITU)
検討段階で672号特許が問題になったが、処置せず
・検討段階で672号特許が問題になったが、処置せず
フォージェント社、ライセンスに応じない31社を提訴
2006年
フォージェント社、約60社とライセンス契約を締結
2009年
フォージェント社、ナスダック上場取消
・合計1.1億ドルを取得
・デジタルカメラ、インターネットHPで広範に活用
1997年
年
2004年
VTEL社がCLI社を吸収合併(672号の権利移転)
社が
社を吸収合併(
号の権利移転)
2000年
参考:Housey特許事件
VTEL社、テレビ会議システム部門を売却し、ソリューション
・Housey社が、自社の保有する特許「タンパク阻害剤及び活性剤のスク
事業に転換、社名をフォージェントに変更
2001年
リーニング法」に関する特許は、この方法によってスクリーニングされ、製
グ
グ
フォージェント社、JPEG規格使用の主要企業(主に日本企
造された医薬品に及ぶ、と主張して製薬会社に実施料を請求した事件
業)に672号特許へのライセンス契約を促すレターを送付
・CAFC2003判決
CAFC2003判決
「医薬品に及ばない」
31
32
2)RPX社の登場
5.2.ハ テントト ル対策
5.2.パテントトロール対策
・2008年9月設立(米Intellectual Ventures社の前取締役2人)
・ビジネスの内容(集約的特許防衛サービス)
特許流通市
特許流通市場に売り出される特許情報を精査し、顧客に対して
売
され 特許情報を精査
客
訴訟が起こされる可能性の高い特許を買い取り、顧客を守る。
会費
・会費
企業の営業利益に比例、3.5~490万ドル(3百万~4億円)/年
・会員数
70社(日米で)(2011.1.25現在) 日本では、エプソン、ソニー
・他のホワイトナイト
Patent Freedom,
Freedom PCT Capital,
Capital Allied Security Trust
・本当にホワイトナイトか?
「メンバー企業に対する永久ライセンスが保障されれば当該特許
を市場に売り戻す。」 → パテントトロールと相互依存関係にあり、
自身がパテントトロールに変身する可能性もある。
1)NPEによる訴訟の急増
NPE(Non-practicing Entities)(特許非実施主体)
・広義には製品やサービスの事業を行わない特許権者のことで、侵害
訴訟を提起した時に反訴の対象とならない主体を言う。
訴訟を提起した時に反訴の対象とならない主体を言う
大学、公的研究機関も含まれるため、全てがパテントトロールと言う
わけ はな
わけではない。
・2009年1月現在 米国に220社
・NPEによる訴訟件数(米国内)
98年
全体の 2.6%
08年
全体の16.9%
このうちのかなりの部分にパテントトロールが絡んでいる(?)
正業を営む企業は、自分で自分を守るべきではないのか?
33
34
6 特許情報調査活動の現状(日本)
6.特許情報調査活動の現状(日本)
そのために大きなロスが発生している!
拒絶理由に使用された内、最新の引用文献の公知年の分布
2006年拒絶査定分
30%
出願時点で調査可能な特許公報
25%
特許査定
94%
研究開発
研究開始時点で調査可能な特許公報
20%
(リ
タイ
年 時)
71%(リードタイム1年の時)
15%
約10万件/年
研究開発費
総額
47%(リードタイム2年の時)
17.8兆円
内
10%
5%
訳
企業
12.7兆円
大学
3.4兆円
外国出願され
海外で特許保護される
もの3~4万件/年
審査請求
日本人出願
請求率 54%
拒絶査定
約10万件/年
約37万件/年
国内出願されたが
国際的に保護
される対象に
ならなかった出願
年間約30万件以上
特許出願の9割以上
公的機関1.7兆円
(技術流出の恐れ)
2005年度データ
出願後公開
出
1~2年
出願時~1年
出
平均2 9年
平均2.9年
2~3年
3~4年
4~5年
5~6年
6~7年
7~8年
8~9年
9~10年
10年以上
0%
発明内容を出願
出典:特許庁年報
出願から何年前の公開公報により拒絶されたか
35
36
7 旭化成における特許情報調査活動の紹介
7.旭化成における特許情報調査活動の紹介
「流出する特許出願情報」
出典:「読売新聞」(2005年7月1日)
特許率推移
日本貿易振興機構(JETRO)北京センターの後谷陽一・知的財産権室
長は、「ハイアール」グループ本社を視察して衝撃を受けた。同社の知財
担当者が胸を張ってこう語ったからだ。
戻し拒絶率推移
100%
2000
2001
2002
2003
2004
90%
80%
70%
「数十台のパソコンで、日米欧の特許出願情報を検索し、製品化に
役立つ情報を利用している。だから、当社は研究費が非常に少ない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
利化しようとしていない。だから、法的には問題ない。」
日本企業の出願件数は、年間約36万件。このうち外国出願され、特許
が認められるのはせいぜい3万件・・・・・・・・・・・・・・
40%
35%
30%
50%
25%
40%
20%
30%
15%
20%
10%
0%
2000
2001
2002
2003
2004
45%
60%
10%
出願情報は、大半が特許にならない。しかも申請者は中国国内で権
50%
5%
旭化成
高分子11社
2000
68.7%
68.7%
60.7%
旭化成
高分子11社
全出願人
2001
64.7%
64.4%
56.6%
2002
57.4%
56.3%
52.5%
0%
全出願人
2003
59.3%
53.7%
51.2%
2004
68.5%
51.4%
50.6%
旭化成
旭化成
高分子11社
全出願人
高分子11社
2000
18.5%
16.7%
19.6%
2001
15.7%
18.1%
20.5%
全出願人
2002
20.7%
24.8%
24.1%
2003
15.1%
26.1%
25.3%
2004
7.5%
27.7%
25.3%
注:特許庁提供資料
38
37
7 1 旭化成における特許情報活動の変遷
7.1.旭化成における特許情報活動の変遷
高分子11社の特許取得状況(高分子分野)
特許率
拒絶査定率 戻し拒絶率
即特許率
旭化成
78.4%
21.6%
0.9%
27.6%
A社
72.3%
27.7%
12.0%
16.9%
D社
社
71.9%
28.1%
21.5%
23.0%
C社
71.4%
28.6%
19.4%
17.3%
E社
70.2%
29.8%
24.8%
26.4%
B社
67 9%
67.9%
32 1%
32.1%
17 4%
17.4%
20 2%
20.2%
1965年 特許管理体制の機構改革
1.総務部特許課を社長直属の特許部へと改組
2.特許部に特許課と調査課を設置
「特許管理の要諦は特許情報にあり!」
G社
59.7%
40.3%
21.9%
18.4%
F社
55.8%
44.2%
19.2%
11.7%
I社
53.4%
46.6%
29.5%
13.7%
H社
38.8%
61.3%
46.3%
10.0%
J社
37.1%
62.9%
22.3%
14.7%
事業面・・・・・事業企画
高分子11社
59.3%
40.7%
21.3%
18.1%
技術面・・・・・開発部門
全出願人
60.1%
39.9%
24.6%
6.8%
(備考)
1960~1970年代初期 特許情報調査の全社一元管理
海外からの技術導入に当り、三位一体での総合評価を実施
権利面・・・・・特許部(特許課、調査課)
・各データは、2004CYの特許率・戻し拒絶率。
注:特許庁提供資料
39
特許管理の要諦
ライセンス
出願
特許情報
旭化成の企業進化
売上規模
発明
訴訟
40
審査請求
50~60年代
サラン
ポリスチレン
アクリル繊維
エステル繊維
ナイロン繊維
合成ゴム
へーベル
ベル
70~80年代
ヘーベルハウス
ヘ
ベルハウス
エチレンプラント
1995年
人工腎臓
12,000億円
ホ ル素子
ホール素子
繊維
ドライフィルムレジスト
1980年
多角化 15%
LS
I
6,000億円
24%
多角化
8%
1965年
1,100億円
,
億
住建
15%
多角化
特許承認
無効化
ヘルスケア
他
繊維
10%
エレクトロ 多角化
24%
ケミカル
33%
住建
33%
ケミカル
29%
繊維
38%
ケミカル
39%
ケミカル
住建
32%
2006年
16,000億円
繊維
68%
1965年
1980年
1995年
2005年
42
対策
1975年以降 特許情報調査の分散管理
間接部門効率化、技術導入案件の減少により、調査課のメンバー
を事業部、支社へ分散
80年代後半~90年代にかけて
1993年 情報調査に関する全社方針
「情報調査は研究者が自ら実施すべし!」
インフラの整備とトレ
インフラの整備とトレーニングの実施
ングの実施
結果
<情報の急激な電子化の進展>
「紙情報を手めくりする時代から、
研究者の負荷の上昇と調査漏れによるトラブルの多発
大量の情報を機械検索する時代へ」
社内の検索能力が対応しえなくな た(トラブルの発生)!
社内の検索能力が対応しえなくなった(トラブルの発生)!
1998年
・他社から警告状を受け取った!
自社製品が店頭で差し押さえられた!
・自社製品が店頭で差し押さえられた!
「技術情報センター」の設置による一元的管理体制の
復活
・ライセンス対象特許が無効になった!
・異議申し立ての成功率が低下した!
取締役会での「トラブル事例報告」 → 「特許白書」の発行
43
44
7 2 技術情報センターによる活動の展開
7.2.技術情報センターによる活動の展開
7.2.2.特許情報活動の基本方針
7.2.1.技術情報センター設置の経緯
1)三位一体の協力体制を構築する
・各研究テーマについて、研究者、特許担当者、情報担当
各研究テ
に いて 研究者 特許担当者 情報担当
者の協力体制を構築する。
「 位 体
「三位一体」の協力体制
協力体制
研究者
研究開発テーマの発案・推進
特許担当者
権利関係の判断
情報担当者
関連特許情報の調査
1.設置の経緯
1998年
取締役会で知財部長から問題提起
1999年
年
知財部内に技術情報セ タ を設置
知財部内に技術情報センターを設置
2.設置の趣旨
旭化成グループにおける情報調査能力のレベルアップのた
め、社内に分散している機能・組織を統合し、一元的な管理・
運営を行なう(人員 約 名)。
運営を行なう(人員:約20名)。
3.業務内容
2)LDB、SDBの構築とその活用を基本活動とする
1)情報検索業務(DBからの特許情報、技術情報、市場情報の
・全ての研究テ マについて、LDBを構築する。
・全ての研究テーマについて
LDBを構築する
・事業部門、研究部門が重要と考えるテーマについては、
SDBを構築する。
SDBを構築する
検索)・・・・・・・・・・・・ARC(旭リサーチセンタ)とのタイアップ
2)研究者・技術者への技術情報調査に関する教育・訓練
3)社内における情報インフラの整備
)社内における情報イ
整備
45
7.2.3.三位一体の協力体制の構築
7.2.3.三位
体の協力体制の構築
2)知財担当者の意識改革
1)商用データベースを利用した社内の情報インフラの整備
ポ タル機能
ポータル機能
自ら調査する
イントラネット
全社の社員
お知らせ
日本特許
外国特許・非特許文献
(外国語)
非特許文献(日本語)
インターネット
特許情報検索システム
46
多くの知財担当者は、受身で、出願処理、トラブルシューティングを行
日本特許
庁ROM分(1993年
~)
)
庁ROM以前
公開特許(1986年~)
公開実用(1986年~)
ATMS IR.NET(富士通)
CA,WPI等特許情報
非特許文献(外国語)
うことを業務と考えていた。
そこで、研究開発現場の実態を把握し、戦略的に知財活動に取り組む
よう業務を変えて行った。
1.研究開発部場の実態把握
・知財担当者、情報担当者のミーティングの実施(1年間実施)
・知財担当者・・・・担当開発部場の研究計画書の説明
・情報担当者・・・・情報調査履歴の確認
STN EASY(化学情報協
会)
2.知財担当者のミッションの設定
非特許文献 本語)
非特許文献(日本語)
・担当する部場に関するLDB、SDBの計画的構築
・研究開発テーマに関する出願計画の立案と推進
JOIS EASY(科学技術振興事業
団)
47
48
(参考資料)研究者の意識改革
3)研究者の意識改革と教育・訓練
“情報は独創性を阻害する?”
下記の2項目について、全研究開発部場対象に反復して、継続的に
教育を実施する。
1.研究者の意識改革のための教育
・“情報は独創性を阻害する?”
独創性を保証する
の要件
・“独創性を保証する二つの要件”
・“技術者・研究者のレベルアップ”
2 技術情報検索及び解析方法についての教育・訓練
2.技術情報検索及び解析方法についての教育
訓練
・社内情報システムの理解
・情報検索に関する演習
・情報解析に関する演習
49
50
(参考資料)研究者の意識改革
(参考資料)研究者の意識改革
技術者・研究者のレベルアップ
“独創性を保証する二つの要件”
独創性を保証する二つの要件
レベル1
自分の技術を作ることにのみ関心を持 ている 段階
自分の技術を作ることにのみ関心を持っている
・自分しかやっていないと思っており、調査への関心が薄い。
・技術が出来上がったら、開発の成果として特許出願を行う。
技術が出来上がったら、開発の成果として特許出願を行う。
1.主観的独創性
レベル2
“自分 切り拓く気概”
“自分で切り拓く気概”
自分の技術を何とか事業化したいと考えている段階
・自分の技術に関連のある領域については他社特許調査を行う。
・自分の技術に関しては漏れなく特許出願を行う。
自分の技術に関しては漏れなく特許出願を行う。
2.客観的独創性
レベル3 事業を成功させることに関心を払っている段階
・競合技術、代替技術についても幅広く調査を行う。
・自分の技術領域は勿論、競合・代替技術領域を含めて、計画的
に出願を行い、特許網を構築する。
出願を行
特許網を構築する
“まだ誰もやっていない保証”
51
7.2.4.LDB、SDBの構築と活用
1)LDBとは?
2)LDBの構築について
遡 及 調 査
継 続 調 査
特 許 情 報 調 査
特許性
調 査
① 自社における全ての事業・研究テーマについて、
製造・販売
応 用 研 究
国内出願 外国出願
先行技術
調
査
1.LDB構築の原則
事業化決定
研究テーマ設定
テーマ探索 基礎研究
52
事業化
技術導入
特許性 障害となる
調 査 他社特許調査
② 関連する全ての特許情報を、
警告 訴訟
警告・訴訟
ライセンス
③ 最新の状態で収載する。
最新 状態 収載する
2.LDBはなぜ必要か?
特許性・侵害性
のための調査
1)知財活動の系統性 体系性 網羅性の保証
1)知財活動の系統性、体系性、網羅性の保証
特許情報は知財活動の要諦であり、系統的、体系的、網羅的な
特許情報が保証されることによって 初めて知財活動の系統性
特許情報が保証されることによって、初めて知財活動の系統性、
LDB(ローカル・データベース)の構築
日本特許
開始
追記
追記
追記
体系性、網羅性が保証される。
)事業のあらゆる場面に臨機 適切に対応できる。
2)事業のあらゆる場面に臨機・適切に対応できる。
追記
必要な都度検索していたのでは、即応できず、重複、漏れを防げ
外国特許
ない。
3)関係者がすぐに必要な特許明細書にアクセスできる。
53
54
(参考資料)シソ ラス化(用語統 )とは
(参考資料)シソーラス化(用語統一)とは?
3)SDB(戦略デ タベ ス)の位置づけ
3)SDB(戦略データベース)の位置づけ
非覚醒運転防止技術に関するSDB化
ローカル・データベース
シソーラス化、事業戦略上必要な付加情報の入力
注:付加情報
・技術分類・・・・自社のどの工程、機能、
特性に関連する特許か
・製品分類・・・・自社製品の何に関連す
る特許か
・他社特許への対応方針
戦略データベース
活用
出願人A
明細書用語
出願人B
明細書用語
出願人C
明細書用語
出願人D
明細書用語
ヨーセンサ
横G検出子
ジャイロ
ヨーレート
角速度センサ
ステアリング角度
ハンドル角
舵 角
操舵角
舵 角
2値化
デジタルデータ化
テ
シ タルテ ータ化
二値化
浮動2値化
2値化
簡素化
シンプル化
簡略化
スリム化
簡単化
コストダウン
低価格化
安 価
廉価版
低コスト化
シソーラス語に統一
<正確な特許情報に基づく事業・研究開発・知財活動の展開>
技術、市場、他社動向の分析 → 事業戦略の立案
・技術、市場、他社動向の分析
・競合、代替技術の発見と対策 → 研究開発戦略の立案
・障害特許の把握と対策の立案
障害特許の把握と対策の立案 → 知財戦略の立案
→ 知財戦略の立案
出典:(株)レイテック提供
55
56
(参考資料)シソーラス化への社内分類の利用
4)SDB(戦略デ タベ ス)の必要性と意義
4)SDB(戦略データベース)の必要性と意義
<トヨタ自動車の社内分類>
B 動力伝達
1.構築の必要性
コ ド
コード
・書誌事項だけでは深い解析ができない。
B1
・課題、解決手段、用途について踏み込んだ解析を行うためには、
自社の技術タームに合わせた用語の統一が必要
技術テ マ
技術テーマ
・用語の統一を図る作業の中で、三位一体のコンセンサスの形成が
統 を
作業
位 体
成が
進む。
F16D
(定義) 摩擦力により回転を伝達する装置
(例示) 単板クラッチ、多板クラッチ(湿式クラッチ)
(同義語) クラッチ装置
F16D13/00,13/69,25/063
B60K17/02
・・・クラッチハウジング
(例示) クラッチケース、クラッチハウジングカバー
同上
・・・クラッチカバー
クラ チカバ
(定義) 駆動部材(例えばフライホイ
駆動部材(例えばフライホイール)に取り付
ル)に取り付
けられ、クラッチディスクおよびプレッシャプ
レートを包囲する部材
同上
・・・プレッシャプレート
(定義) クラッチディスクを押す部材
(同義語) 圧力板、押圧板
圧力板 押圧板
F16D13/00,F16/H33/02
・・・クラッチディスク
(定義) 振動回転部材
・・・・フェーシング
(同義語) ライニング、摩擦板
F16D13/00,69/00
レリ ス機構
・・レリース機構
(定義) クラッチ開放用の機構
F16D11/00 25/00
F16D11/00,25/00
・・・油圧式
(例示) 遊び調整機構も含む
F16D13/75,25/00
B60K20/14
・・・・マスタシリンダ
(例示) リザーバタンクも含む
F16J1/00~9/00,15/00
・・・・ブースタ
(同義語) 倍力装置
3 構築の進め方
3.構築の進め方
・社内分類、特性要因図、特許明細書の要約等をベースに用語統一
を進める
・技術者、特許担当者、情報担当者が核となり、必要に応じて営業部
隊、加工技術部隊が参加して作成する。
57
F16D13/38~13/56,13/64
※「パテントマップと情報戦略」パテントマップ研究会編(発明協会)
58
1.テキストの内容
<冷延薄板キズ特性要因図>
板 圧
大型コイル
① 特許マップソフト(PAT‐LIST)の使用方法
SPM巻戻張力
② LDBの構築方法
張力の強さ
ラップ数
張力変動
③ SDBの構築方法
構築方法
電気制御不調
圧延時粗度
④ 特許マップの作成方法
差じまり
すき間
慣性モ メント
慣性モーメント
同上
5)標準化テキストの作成と全社への教育
(参考資料)シソ ラス化 の特性要因図の利用
(参考資料)シソーラス化への特性要因図の利用
温度差
IPC
(定義) 推進力の伝達を断続する装置
・摩擦クラッチ
・・クラッチ本体
2.構築の意義
内周のズレ
定義 同義語 例示等
定義・同義語・例示等
クラッチ
表面粗度
張力変動
⑤ 参考となる実践例(開発現場における事例を取り上げて紹介)
キズ
2.テキストの改訂
冷延のみかけ
形状
断面形状
(プロフィル)
形 状
速度変化
温度
毎年テキストを更新
張力変動
3.全社への教育
リールの振れ
積込位置
焼鈍温度
張力の大きさ
① テキスト改訂の都度、全社に配布
② サーチャーが現場を定期訪問する際、現場で教育を実施
焼鈍前の巻取張力
※「品質管理」(シリーズ現代工学入門)久米
均
③ 毎年開催される全社研究発表会の場でPR
59
60
(参考資料)LDB、SDBに基づく特許情報解析
クレームマップ(数値表示マップ)
構成要件対比表
事 業 戦 略 の 推 進
権利判断に係る
分析
競争力分析マップ
・課題、解決手段、用途に関す
る出願人比較
研究・
出願課題の発掘 権利判断
ミクロ分析
技術進展図
技術分析マップ
・課題、解決手段、用途間の関
連性の解析
権利関係解析
書誌事項と付加
情報による分析
ランキングマップ
技術内容分析
LDB、SDB
セミマクロ分析
ポートフォリオマップ
生分解性フィルムの課題とフィルム物性
分解性 ィ
課題
ィ
物性
フィルム物物性
動向分析
主に書誌事項
に基づく分析
時系列マップ
① 技術分析マップ(課題vs解決手段)
事業戦略の策定
活用場面
解析手法(マップ)の種類
マクロ分析
(参考資料)特許マップの作成方法
61
課
61
③ 技術分析マップ
(課題 解決手段)
(課題vs解決手段)
② 技術分析マップ(用途vs材料)
題
62
62
注:PAT-LISTによる解析
有機ELの課題と解決手段
生分解性フィルムの用途と材料
解解 決 手手 段
材材
料
課 題
用
途
注:PAT-LISTによる解析
63
④ 競争力分析マップ(課題vs出願人)
出典:特許流通支援チャート
64
⑤ 競争力分析マップ(用途vs出願人)
用
途
課課
題題
注:PAT-LISTによる解析
出 願 人
注:PAT-LISTによる解析
65
出 願 人
66
⑦ 課題-解決手段系統図の作成
ⅰ.作成の手順
⑥ 競争力分析
競争力分析マップ(競争力分析シート)
ッ (競争力分析シ ト)
(日本、米国、欧州、中国等、主要マーケット毎に)
技術
分類
登録
特許
技術
要素
自
社
公開
特許
出願
特許
ノウ
ハウ
他社(1)
シェア1位
他社(2)
シェア2位
他社(3)
シェア3位
登録
特許
登録
特許
登録
特許
公開
特許
公開
特許
公開
特許
関連特許群
の整理
障害他社
特
許
関連特許群を課
題-解決手段の
関係図に纏める
強 度
課題
透明性
課題-解決手段
の上位概念化
新たな解決手段
の創出
課題、解決手段
を上位概念で整
理し、体系化する
新たな課題 解決
新たな課題・解決
手段の強制発想
マップ3
柔軟性
マップ1
樹脂素材
解決
手段
積
マップ2
特許
上位
概念
特許
ICカード
特許
用途
特許
特許
解決
手段
上位
概念
解決
手段
上位
概念
解決
手段
解決
手段
課題
特許
上位
概念
解決
手段
障害他社特許対策
特
特許出願戦略の立案と推進
戦略
推進
マップ3に基づいて
①研究戦略を立案
②出願計画を立案
③他社特許対策を
③
立案
解決
手段
層
後加工
研究開発戦略・
知財戦略の作成
解決
手段
67
解決
手段
68
7.2.5.活動の成果
ⅱ 課題 解決手段系統図の事例
ⅱ.課題-解決手段系統図の事例
1)LDB、SDBの構築状況
上位概念化
強制発想
課題=加熱防止
特許マップソフト
導入済み
閾値を下げる
発熱量の抑制
2004年4月
LDB構築完了
内SDB化完了
周波数を下げる
内部抵抗の低減
91%
配線抵抗を下げる
放熱量の増大
83%
45%
フィンの取り付け
放熱性の表面部材
強制発想
注 : 数字は全開発部場数に対する割合
特 情報
特許情報
69
2)特許出願面での成果
70
3)その他の成果
① 各発明の相対的価値が一目でわかるようになった。
関連業界における特許率・戻し拒絶率推移
② 自社と他社の技術的レ
自社と他社の技術的レベルを相対的に把握できるようになった。
ルを相対的に把握できるようになった。
特許率推移
戻し拒絶率推移
100%
2000
2001
2002
2003
2004
90%
80%
70%
2000
2001
2002
2003
2004
45%
40%
35%
60%
30%
50%
25%
40%
20%
30%
15%
20%
10%
10%
0%
③ 今後、注力すべき技術を見出すことができるようになった。
50%
④ 基本特許
基本特許に対する上流技術から下流技術までを網羅的に権利化できる
対する 流技術
下流技術ま を網羅的 権利化 きる
ようになった。
⑤ 必要な周辺技術をもれなく特許出願することができるようになった。
⑥ 自社で軽視した特許でも、他社にとっては重要という判断が可能になった。
⑦ 自社の未利用特許をうまく活用できるようになった。
⑧ 研究開発スケジュールと知的財産取得スケジュールの連動が可能になっ
5%
旭化成
高分子11社
高分子
社
全出願人
0%
旭化成
高分子11社
全出願人
た。
⑨ 特許及び経費の選択と集中が効率的に行えるようになった。
旭化成
高分子11社
全出願人
2000
68.7%
68 7%
68.7%
60.7%
2001
64.7%
64 4%
64.4%
56.6%
注:特許庁提供資料
2002
57.4%
56.3%
56
3%
52.5%
2003
59.3%
53.7%
53
7%
51.2%
2004
68.5%
51.4%
51
4%
50.6%
旭化成
高分子11社
全出願人
2000
18.5%
16 7%
16.7%
19.6%
2001
15.7%
18 1%
18.1%
20.5%
2002
20.7%
24.8%
24
8%
24.1%
2003
15.1%
26.1%
26
1%
25.3%
2004
7.5%
27.7%
27
7%
25.3%
71
⑩ 知的財産部門以外との情報共有を図るツールとしても、群管理で整理され
た情報はわかりやすく、情報共有、また意思疎通が容易となった。
72
(参考資料)「ドラッカーの遺言」より
8 まとめ
8.まとめ
・新しい時代の製造業は労働集約型産業ではなく、専門知識を持つ
特許情報は
1.リスクマネジメントの必須のツール
2.企業戦略策定のベース
3.イノベーションの源泉
知識労働者が担う頭脳集約型産業になります それは
知識労働者が担う頭脳集約型産業になります。それは、
アウトソーシングには不向きで、プロジェクトに従事する人間が
顔と顔を突合せて 直接やりとりする とで進捗が見込めるタイ
顔と顔を突合せて、直接やりとりすることで進捗が見込めるタイ
プの仕事になります。
にも関わらず
・知識労働者の生産性を高くするためには、彼らを単独ではなく、チー
十分に活用されていない!
ムに組み入れることが必要となります。なぜなら、
専門知識は単独では生産的でなく、他人の知識と統合されるこ
そのためには
とで初めて有効に働くものだからです。
研究者、特許担当者、情報担当者の三位一体
の協力関係の構築が不可欠!
・これができれば、日本は21世紀においても、世界の製造業のメイン
パワーであり続けることができます。
73
高度成長期の日本企業
を支えたもの
経営
中間管理層
ブルーカラー
労働集約型産業における「小集団活動」
二十一世紀の日本企業
を支えるもの
経営
知財担当者
研 究 者
頭脳集約型産業における「イノベーション活動」
集約 産業
「
75
講談社発行 2006年1月
74