聖 母 子 像

長谷川路可画伯による日本最初のフレスコ画
聖 母 子 像
学校法人大和学園 聖セシリア・所蔵
聖母マリアとその胸に抱かれる幼子イエス、そして楽を奏でる二人の天使…。透き通るような青
の背景が表現するのは、美しい天上の世界であろう。
左下に描かれているのは大天使聖ミカエルで、地上におけるカトリック教会全体の守護の聖人と
されている。日本に初めてキリスト教を伝えた聖フランシスコ・ザビエルは、聖ミカエルを日本の守
護の聖人と定めた。ちなみに現在ではザビエルが日本の守護の聖人となっている。聖ミカエルの前
には二人の幼い天使が聖堂(伊東家の私的聖堂、後のカトリック喜多見教会)を運んで来る様子が
描かれている。
右下には聖フランシスコ・ザビエル、その左側に十字架につけられた迫害時代の殉教者、またザビ
エルと殉教者の間には帆船が描かれている。日本のキリシタンたちが、「七代経てばパパ様が罪の
赦しを授ける司祭たちを大きな船に乗せて派遣してくださる」という予言を心の支えに、「沖に見
ゆるはパーパ(=ローマ教皇)の船よ 丸にや(=マリア)の字の帆が見える」と隠語で歌い継ぎなが
らローマ教皇との心の繋がりを維持し、司祭不在となった約 250 年の間、密かに信仰を守り続けて
きたことを表現している。
キリスト教の伝来とそれに続く長く厳しい迫害時代を経て、大天使聖ミカエルに護られながら信
仰の証として献げられた聖堂を、幼子イエスと聖母マリアが祝福する様子が鮮やかに描かれた作品
となっている。
左下 大天使聖ミカエルと聖堂を運ぶ幼い天使
右下 (右側から)聖フランシスコ・ザビエル、帆船、殉教者