ン変化と産業構造変化 - 名古屋大学 大学院国際開発研究科

O
Discussion Paper No.188
ミドルクラス出現による消費パタ-ン変化と産業構造変化
-日本の経験と中国の事例研究-
長田
博
March 2012
Graduate School
of
International Development
NAGOYA UNIVERSITY
NAGOYA 464-8601, JAPAN
〒464-8601
名古屋市千種区不老町
名古屋大学大学院国際開発研究科
ミドルクラス出現による消費パタ-ン変化と産業構造変化
-日本の経験と中国の事例研究-
名古屋大学大学院国際開発研究科
長田
博
1. は じ め に
アジア諸国の経済発展とともに、多くの国で中間所得層(以下、ミドルクラス
あるいは中間層)が出現し、経済・社会・政治などに多面的な影響を持ち始めて
いる。中でも、人口が大きな中国やインドでのミドルクラス人口の拡大は、新た
な消費市場の形成をもたらすと考えられ、ビジネスチャンスとして注目されてい
る。日本の通商白書においても、このことは重要な課題として取り上げられてい
る 。2 0 0 9 年 版 の 第 2 章 で は 、世 帯 可 処 分 所 得 5 0 0 1 ド ル 以 上 、3 5 0 0 0 ド ル 以 下 を 中
間 層 と み な し 、 ア ジ ア 諸 国 に お け る 中 間 層 家 計 に 所 属 す る 人 口 が 1990 年 の 1.4
億 人 か ら 2 0 0 8 年 に は 8 . 8 億 人 と 急 増 し た こ と が 指 摘 さ れ 、そ の う ち 中 国 と イ ン ド
については中間層の出現と共に購入が増加する商品について、商品の原産国と所
得 別 購 入 分 布 が 示 さ れ て い る (経 済 産 業 省 2009: 176-181)。
このアジアの中間層の出現に関して、近年、多くの研究が始まっている。
ジ ェ ト ロ に よ る 2 冊 の 出 版 物 ( 高 橋 2010、 大 木 2011) も ア ジ ア に お け る 富 裕
層の出現やそれに続く中間層の出現が生む新たな消費市場や、低所得層の所得向
上 に よ る BoP (Base of Pyramid)市 場 に つ い て 、 新 た な ビ ジ ネ ス チ ャ ン ス で あ る と
いう観点から詳細な国別分析情報を提供している。しかし、新たな消費市場の先
行きを展望する際に重要なのは中間層の規模の把握である。この観点から、中間
層の定義、中間層の規模のモデル推計に始まり、消費市場の将来予測をおこなっ
た の が McKinsey Global Institute(2006, 2007)で あ る 。 い ず れ も 大 部 の 文 献 で あ る
が 、 2006 年 が 中 国 、 2007 年 が イ ン ド に つ い て の 分 析 で あ る 。 み ず ほ 総 合 研 究 所
( 2010)
は ASEAN 市 場 に つ い て の 分 析 で あ る が 、 中 間 層 の 規 模 に つ い て は
E u r o m i n o t o r I n t e r n a t i o n a l 社 に よ る デ ー タ ベ ー ス Wo r l d I n c o m e D i s t r i b u t i o n に 依 拠
し て い る 。 D e u t s c h e B a n k R e s e a r c h ( 2 0 0 9 ) は 中 間 層 の 規 模 に つ い て は Wo r l d
Bank(2006)に 依 拠 し つ つ 、 消 費 市 場 だ け で は な く 中 間 層 の 出 現 が も た ら す 多 面 的
な 影 響 に つ い て コ メ ン ト し て い る 。こ の ほ か 、ア ジ ア 各 国 に お け る 都 市 化 現 象( メ
ガリージョンの出現)の過程の中で中間層の出現とその経済的影響を論じたもの
に 大 泉 ( 2011) が あ る 。
中間層の規模の推計は色々あるが、貧困や所得不平等の状況の把握のためにな
されている家計所得の階層分析からのアプローチによる推計の方が本格的である。
Wo r l d B a n k ( 2 0 0 6 ) は 8 4 カ 国 の 家 計 調 査 デ ー タ を 駆 使 し た モ デ ル 分 析 で 2 0 0 0 年 に
は 世 界 人 口 の 7.6% を し め た 中 間 層 1が 、 2030 年 に は 16.1% に な る と 推 計 し て い
1
3 9 1 4 ド ル ( 2 0 0 0 年 の ブ ラ ジ ル の 平 均 所 得 )か ら 1 6 7 4 6 ド ル ( 2 0 0 0 年 の イ タ リ ア の
1
る 。 OECD 開 発 セ ン タ ー の Kharas (2010)は 、 ミ ド ル ク ラ ス を 一 日 の 所 得 が PPP レ
ー ト で 1 0 ド ル か ら 1 0 0 ド ル と 定 義 し 、世 界 1 4 5 か 国 の 家 計 調 査 デ ー タ を 使 用 し た
所 得 パ タ ー ン の 分 布 形 推 計 と GDP の 将 来 予 測 を 組 み 合 わ せ て 、 2040 年 ま で の 中
間 層 比 率 を 予 測 し た 。こ れ に よ れ ば 、2 0 4 0 年 に は 世 界 人 口 の 4 0 % が 中 間 層 と な る 。
A s i a n D e v e l o p m e n t B a n k ( 2 0 1 0 ) も 、「 R i s e o f A s i a ’s M i d d l e C l a s s
(ア ジ ア 中 間 層 の
台 頭 )」 と い う 章 を 設 け て 、 2008 年 に は 19 億 人 (ア ジ ア の 人 口 の 56% ) が 中 間 層
になったとしている。ただし、ここでの中間層の所得範囲は低く、1 日の所得 2
ド ル 以 上 20 ド ル 以 下 ( 2005 年 PPP 基 準 ) と 定 義 さ れ て い る 。
以上のように、アジアの途上国に関する多くの既存研究は、中間層の定義、規
模の予測、そして消費市場への影響に留まっているものが多い。本稿の目的は、
それが生産構造にどのような影響をあたえ、一国の経済発展パターンをどう変化
させていくかにまで考察を広げることである。実証分析の対象としては、ミドル
クラスの出現が最も顕著な中国を取り上げる。そして、そのことが、かつて日本
でそうであったように、中国の成長構造を外需主導型から内・外需両輪の主導型
へと転換してゆく可能性について検討する。なお、中間層の出現は社会構造や政
治 構 造 に 影 響 を も た ら し 、さ ら に そ れ が 経 済 構 造 に 影 響 す る と い う 側 面 も あ る が 、
こ の 点 は 本 稿 の 分 析 範 囲 を 超 え る 2 。ま た 、ミ ド ル ク ラ ス の 定 義 の と こ ろ で 詳 し く
述べるが、本稿でのミドルクラスは、いわゆる都市型ミドルクラスをイメージし
て お り 、 ADB(2010)の よ う に BoP 市 場 と 関 連 し た 低 所 得 層 は 含 ま な い 。
以下、第 2 節では、ミドルクラスの出現がもたらす消費構造、ひいては生産構
造の変化を知るためにはどのような現象に着目すべきかについておよその見当を
つ け る た め に 、1960 年 代 の 日 本 経 済 の 事 例 を 検 討 す る 。第 3 節 で は 、時 代 は 変 わ
ってグローバリゼーション下の現代中国でのミドルクラスの出現がどのような経
済現象あるいは社会現象なって現れているのか概観する。第 4 節では、ミドルク
ラスに関する諸定義を比較検討し、中国経済の変化を適切にとらえるための定義
を提案する。続いて、中間層に属す人口規模について簡単な推計をする。第 5 節
では、中間層の出現がもたらす消費パターンの変化が、いかに生産構造を変化さ
せ る か さ ら に 輸 入 構 造 に ど う い う 影 響 を 与 え る か に つ い て 2007 年 投 入 産 出 表 を
使用して数量分析する。これによって、中国経済が外需依存型発展から内需依存
比率を高めた内外需両輪型の経済発展パターンに移行できるかどうかについて一
定の示唆を得たい。
2. 1 9 6 0 年 代 の 日 本 の 事 例 - ミ ド ル ク ラ ス 出 現 の 実 態 と 成 長 構 造 へ の 影 響 の
プロトタイプとして-
ミドルクラスの出現は、どのような典型的な現象として現れるであろうか。中
平 均 所 得 ) ま で を 中 間 層 と し て 定 義 し て い る 。 2000 年 PPP 換 算 。
2
中 国 と イ ン ド を 対 象 に し た 社 会 ・政 治 的 な 影 響 の 研 修 に は Jaffrelot and van der
Ve e r ( 2 0 0 8 ) が あ る 。 よ り 広 い ア ジ ア に つ い て の 分 析 と し て は 、 や や 古 い が 服 部 ・
船 津 ・ 鳥 居 (2002)が 参 考 に な る 。
2
国 を 含 む ア ジ ア 諸 国 に お い て は 経 済 的 離 陸 (テ イ ク オ フ )と も い え る 高 度 成 長 期 に
ミ ド ル ク ラ ス が 出 現 し て い る 。テ イ ク オ フ 時 に は 年 率 1 0 % 前 後 の 高 い 経 済 成 長 が
10 年 程 度 継 続 す る 。 日 本 の 1960 年 代 も 同 様 で あ っ た 。 さ ら に 、 日 本 の 場 合 は 、
人々の意識においても「一億総中産階級化」という表現が当時頻繁に使われたこ
とが示すように、社会経済構造の変化は明瞭であった。その意味で、典型例とし
て日本の事例を簡単にレビューしておくことは、中国の事例を分析する上で一定
の 比 較 基 準 と し て 参 考 に な る 3。
ミドルクラス出現の核心は、単に所得が中位にある人口比率の増加ではなく、
新 た な 価 値 観 を 持 ち 、新 た な 消 費 行 動 を す る 人 た ち の 出 現 で あ る 。日 本 で は 、1 9 6 4
年のオリンピック開催や新幹線開通などの象徴的イベントを通じて、人々は日本
経済の先進国入りが近いことを実感し、自分たちの生活にも将来展望が開けはじ
め た こ と を 感 じ た 。ま た 、
「 人 並 み 」意 識 は ミ ド ル ク ラ ス の 典 型 的 な 消 費 様 式 の 形
成に貢献した。
表 1 は 、 1960 年 代 10 年 間 の 主 要 な 社 会 経 済 変 化 を 示 し た も の で あ る 。 1 人 あ
た り 名 目 所 得( 米 ド ル 表 示 )は 、ま さ に 貧 困 な 4 7 2 ド ル か ら 、中 所 得 国 な み の 1 9 4 7
ド ル へ と 増 加 し た 。 円 ベ ー ス の 実 質 所 得 で は 2.3 倍 で あ る 。 1960 年 代 の 10 年 間
に 、 月 額 給 与 も 大 幅 に 増 加 し た 。 一 般 男 性 の 場 合 は 22000 円 か ら 68400 円 へ 、 一
般 女 性 の 場 合 は 9900 円 か ら 35200 円 へ 増 加 し た 。 な お 、 消 費 者 物 価 水 準 で 見 た
1 0 年 間 の イ ン フ レ 率 は 7 5 % で あ っ た 。重 要 な こ と は 、賃 金 増 は 労 働 時 間 増 で は な
く生産性の増加によってもたらされたということである。製造業常用雇用労働者
月 間 労 働 時 間 数 は 、こ の 1 0 年 間 で 、コ ン ス タ ン ト に 2 0 7 時 間 か ら 1 8 7 時 間 へ 減 少
した。学歴による賃金格差と所得増による教育費負担能力の拡大は、大学進学率
を8%から17%に増加させた。また、この時期に農村から工業化が進む都市へ
の労働移動が進み、核家族や単身世帯が増加した。これも消費パターンと住宅事
情に影響を与えた。都市の住宅需要は主に団地(共同住宅)の建設でまかなわれ
た 。建 て 方 別 の 統 計 に よ れ ば 、一 戸 建 て が 1 0 年 間 で 1 4 6 7 万 戸 か ら 1 8 6 2 万 戸 へ 増
加 し た の に 対 し 、 共 同 住 宅 は 254 万 戸 か ら 645 万 戸 へ と 顕 著 な 伸 び を 示 し た 。
い わ ゆ る 白 物 家 電 や テ レ ビ な ど 耐 久 消 費 財 の 普 及 も 進 ん だ 。表 1 は 1 9 6 0 年 か ら
データが利用可能な非農家世帯における普及状況を示している。農家世帯も含ん
だ 全 世 帯 の デ ー タ は 1 9 6 4 年 か ら 利 用 可 能 で あ る が 、そ の 数 値 は 表 1 の 数 値 よ り や
や低い程度であり、耐久消費財の普及の程度は農家世帯と非農家世帯では大きな
差 は な か っ た こ と が わ か る 。 た と え ば 、 全 世 帯 の 1970 年 の 白 黒 テ レ ビ 普 及 率 は
9 0 . 2 % 、冷 蔵 庫 は 8 9 . 1 % 、洗 濯 機 は 9 1 % で あ っ た 。表 1 に 掲 げ た も の の 他 、石 油
ストーブ、扇風機、掃除機などもこの時期に普及した。
1 9 6 0 年 代 に な っ て 初 め て 購 入 が 始 ま っ た の は 小 型 乗 用 車 で あ る 。ス バ ル 3 6 0 や
マツダのファミリアに代表される低排気量の超小型車の開発が、少し豊かなミド
3
第 2 節 の 統 計 デ ー タ は 、 い ち い ち 断 ら な い が す べ て 総 務 省 統 計 局( 2 0 0 6 )に 依 拠
している。
3
ル ク ラ ス 世 帯 に 乗 用 車 の 購 入 を 可 能 に さ せ た 。1 9 7 0 年 に は 2 2 % の 世 帯 が 自 家 用 車
を所有するようになった。
消費パターンの変化は、上記の耐久消費財の購入増加だけではなく、エンゲル
係 数 の 低 下 や サ ー ビ ス 需 要 の 増 加 と な っ て 現 れ た 。1 9 6 3 年 か ら 利 用 可 能 な 勤 労 者
世 帯 の 家 計 消 費 支 出 の 内 訳 を 見 る と 、 食 料 費 は 36.6% か ら 1970 年 に は 32.2% へ
と 低 下 し 、特 に 穀 類 は 9 . 0 % か ら 5 . 3 % へ と 顕 著 な 低 下 を 示 し た 。他 方 、交 通 通 信
費 が 3.2% か ら 5.5% へ と 、 教 養 娯 楽 が 7.3% か ら 9.2% へ と 増 加 し た 。
表1.日本のミドルクラスno出現と社会経済構造の変化
1960 1970
一人あたり所得(米ドル)
472 1947
賃金(男・月額・千円)
22.0
68.4
大学進学率(%)
8.2
17.1
核家族世帯比率(%)
53.0
56.7
単身世帯比率(%)
16.1
20.3
非農家家計の普及率(%)
電気冷蔵庫
10.1
90.8
電気洗たく機
40.6
91.6
電気掃除機
7.7
73.8
扇風機
34.4
85.5
白黒テレビ
44.7
89.8
乗用車(*は1961年)
2.8*
22.0
オートバイ・スクーター
9.6
20.4
共同住宅数は1963-1973に、2.54倍に。
6大都市土地価格は、6.06倍(消費者物価
は1.74倍)
資料)総務省統計局(2006)
次 に ミ ド ル ク ラ ス の 出 現 に よ り 消 費 パ タ ー ン が 1960 年 代 に ど の よ う に 変 化 し
たか、同時期に日本経済の生産構造がどのように変化したかを産業連関表データ
に依拠して概観する。なお、本節で見る生産構造の変化は諸々の要因の結果で、
消費パターンの変化の影響のみを抽出したものではない。ここで使用したのは、
行 政 管 理 庁 他 共 同 編 集 ( 1 9 7 5 )『 接 続 産 業 連 関 表 昭 和 3 5 - 4 0 - 4 5 年 』 の 1 9 6 0 年
と 1 9 7 0 年 の 統 一 分 類 に よ る 名 目 表 で あ る 。実 質 表 も 利 用 可 能 で あ る が 、あ え て 名
目表を使用した。その理由は、第 1 にそれぞれの年についての変数間の比率を主
に見ること、第 2 に相対価格の変化が激しく、品目構成や品質にも大きな変化が
あった消費パターンの変化を観察する場合、各品目の実質数量よりも名目の価額
の 方 が 消 費 者 効 用 を よ り 正 し く 反 映 し て い る と 考 え た た め で あ る 。部 門 分 類 は 5 9
部 門 を こ こ で の 分 析 用 に 3 5 部 門 に 統 合 し た が 、ミ ド ル ク ラ ス の 消 費 パ タ ー ン で 重
要 な 民 生 用 電 気 機 械 、 自 動 車 、 新 築 住 宅 に つ い て は 159 部 門 分 類 の 情 報 を 使 用 し
た 4。
表2によって消費パターンの変化を見る。食生活の近代化によって肉・酪農品
4
分 析 用 35 部 門 分 類 と 接 続 表 部 門 分 類 と の コ ン バ ー タ ー は 付 表 1 に 示 し た 。
4
の消費は増加したが、それ以外の食品への支出割合は大きく低下した。他方、支
出比率が増加したのは家電、自動車、娯楽サービス、飲食店、不動産関連などで
ある。すなわち、ミドルクラス増大によるエンゲル係数の上昇、ミドルクラス型
消費の拡大、住宅建設ブームが起きていることが確認できる。
表2 1960年代日本における消費パターンと産業構造の変化
民間消
国内生産パ 国内生産に対 内需に対する
費額増
ターン
する輸出比率 輸入比率
加率
1970/
分析用分類
1960 1970 1960 1970 1960 1970 1960 1970
1960
01 農業
2.6
2.9
4.3
2.2
0.5
1.3 19.7 21.8
483
02 畜産
1.4
0.6
1.1
0.9
0.6
0.1 18.9
8.3
185
03 林業
0.6
0.1
1.9
0.7
0.4
0.5
8.2 32.2
80
04 漁業
1.6
1.1
0.9
0.6 12.1
3.4
1.4
4.9
277
05 鉱業
0.1
0.0
1.0
0.6
0.2
0.5 51.0 70.4
37
06 肉・酪農品
2.2
2.7
0.7
0.8
1.1
0.3 10.5
9.0
520
07 その他食品
20.8 10.4
6.6
3.6
2.1
2.3
4.9
6.2
215
08 飲料・たばこ
6.6
4.5
2.1
1.5
0.3
0.2
0.5
1.3
294
09 衣服など
2.8
2.9
1.0
1.1 15.8
7.2
0.7
1.6
448
10 その他繊維製品
5.0
3.4
5.1
2.7 16.2 11.9
1.1
3.7
290
11 木・皮革・ゴム加工
2.1
2.0
5.6
5.5
4.5
3.0
1.1
2.7
414
12 化学
1.4
1.6
4.1
3.8
3.9
8.5
8.0
7.3
498
13 石油・石炭製品
0.4
0.9
1.7
1.9
0.9
1.5 10.8
8.6
988
14 窯業土石製品
-0.2
0.1
1.4
1.7
9.0
4.7
1.2
0.8
15 金属
0.2
0.7 10.0 10.5
5.3
7.8
5.2
4.0
1676
16 一般機械
0.5
0.4
4.1
5.1
5.0
8.4
6.4
4.7
321
17 家電
1.9
2.1
1.1
1.5 16.3 24.6
0.5
1.2
459
18 電気機械(家電除く)
0.0
0.0
3.5
3.2
2.4
6.3
1.2
4.9
606
19 自動車
0.1
0.6
1.3
2.7
7.4 11.7
1.3
1.0
2565
0.9
0.9
2.4
2.0 14.4 23.0
2.7
5.6
395
20 輸送機械(自動車除く)
21 精密機械
0.5
0.7
0.6
0.7 17.4 21.9
8.2 12.3
591
22 その他製造業
0.9
1.3
0.9
1.4 26.3 11.6
1.4
5.0
627
23 住宅新建築
0.0
0.0
1.7
0.3
0.0
0.0
0.0
0.0
24 建築(住宅除く)
0.0
0.0
3.0
6.3
0.0
0.0
0.0
0.0
25 土木
0.0
0.0
3.6
3.4
0.0
0.0
0.0
0.0
26 電気・ガス・水道
2.0
1.8
1.7
1.6
0.1
0.0
0.1
0.0
385
27 商業
13.3 15.4
6.7
8.8
2.4
3.1
0.5
0.9
496
28 金融・保険
3.6
4.5
2.3
3.0
0.3
0.3
0.0
0.4
535
29 不動産業
9.2 12.1
2.2
3.0
0.0
0.0
0.0
0.0
566
30 運輸・通信
5.5
6.3
4.7
4.6 13.5 15.4
3.6
6.0
485
31 公共サービス
5.9
7.7
3.1
3.4
0.1
0.0
0.1
0.0
565
32 娯楽サービス
2.6
3.5
0.9
1.4
0.3
0.4
0.5
1.0
565
33 飲食店
3.4
4.2
1.2
0.2
0.0
5.5
0.0
0.0
521
34 その他サービス
4.5
4.7
2.2
4.2
0.2
0.2
0.5
1.0
448
35 その他
-2.4
0.0
5.5
4.4
1.1
2.3
1.9
3.1
4
68 内生部門計
100
100
100
100
4.5
5.2
4.9
5.1
428
資料)行政管理庁他共同編集(1975)『接続産業連関表 昭和35-40-45年』から筆者計算。
注)1960年の民間消費支出パターンで「14 窯業土石製品」の数値がマイナスとなっているが
これは、屑・副産物のマイナス投入による。このため、民間消費額増加率は計算していない。
民間消費支
出のパターン
5
(%)
国内生
産額増
加率
1970/
1960
219
343
150
270
252
455
232
301
434
226
413
386
454
505
441
532
582
387
885
349
512
612
78
879
404
396
555
568
582
411
466
634
58
800
340
422
ミドルクラスの出現は国内最終需要変化の大きな一要素であり、輸出増加など
の要因とあいまって、生産構造にどのような変化をもたらしたのであろうか。表
2によれば、生産パターンの変化は消費パターンの変化に類似していることがわ
かる。さらに、消費比率の増加が生産比率を増加させたような製造業部門におい
ては、国産に対する輸出比率も一層顕著に増大していることがわかる。国内生産
額 は 名 目 で 4.22 倍 に な り 、 国 産 に 対 す る 輸 出 比 率 は 4.5% か ら 5.2% へ と 増 加 し
て い る 。 こ の 増 加 は 、 内 需 に 対 す る 輸 入 比 率 の 増 加 ( 4.9% か ら 5.1% ) よ り も 大
きい。輸入の増加が顕著なのは原材料、精密機械、自動車を除く輸送用機械など
であり、生産拡大のための原材料輸入と国内で生産できない資本財輸入である。
民間消費の増加率と国内生産の増加率を各部門について比較すると、輸入に関す
る 産 業 特 性 が 異 な る た め 、必 ず し も 両 者 に 安 定 的 な 正 の 相 関 が あ る と は い え な い 。
た だ 、民 間 消 費 額 合 計 の 増 加 率 は 4 2 8 % 、国 内 生 産 額 合 計 の 増 加 率 は 4 2 2 % と 比 較
的近い数字となっている。ここでの分析は因果関係に関するものではないが、大
多 数 の 国 民 が ミ ド ル ク ラ ス と な っ た 1 9 6 0 年 代 日 本 経 済 は 、内・外 需 両 輪 型 の 成 長
構造を実現した。このことは、ミドルクラスの出現とその規模次第では、中国に
おいても内需拡大による成長への貢献が輸出と同時に成長の牽引車となる可能性
を示している。
3. 中 国 に お け る ミ ド ル ク ラ ス 化 現 象
高 度 成 長 に よ る 所 得 増 大 は 2 0 0 0 年 以 後 ミ ド ル ク ラ ス を 徐 々 に 増 大 さ せ た が 、新
たな消費文化を持つ新ミドルクラスが都市部において顕著に見られるようになっ
た の は 2 0 0 5 年 頃 か ら で あ る 。2 0 0 8 年 の オ リ ン ピ ッ ク や 2 0 1 0 年 の 万 博 で 北 京 と 上
海のインフラも整備され、街の外観も随分と綺麗になった。特に道路網や地下鉄
の整備と近郊への延伸は、郊外団地から都市中心部に通勤するという新ミドルク
ラス的生活を可能にした。
筆 者 は 2 0 1 0 年 1 0 - 1 1 月 と 2 0 1 1 年 3 月 に 短 期 間 で あ る が 、北 京 と 上 海 に お い て
ミドルクラスの生活圏を観察し、ミドルクラスと考えられる人たちやその予備軍
である大学生などから簡単なヒアリングを行った。そこから、イメージされる典
型的な新ミドルクラスは、学歴が大卒以上で共働きであり、郊外の団地に住み、
週末にはスーパーで買い物をし、コンビニにしばしば立ち寄る人たちである。住
宅には家電が完備されており、子供が生まれる頃には小型乗用車を持つようにな
り、子供の塾通いの送迎などに忙しい毎日を送っている。このような高学歴の勤
労者層は新ミドルクラスの核としてこれからさらに拡大する。このほか、個人業
主など起業による高所得者層もミドルクラスあるいはそれより所得が高いニュ
ー・リッチを構成する。
表 3 は 、 ミ ド ル ク ラ ス に ま つ わ る 社 会 経 済 指 標 の 2000 年 か ら 2009 年 へ の 変 化
を 示 し た も の で あ る 。 一 部 の 変 数 に つ い て は 2010 年 の デ ー タ が 利 用 可 能 で あ る 。
1 人 あ た り G D P は 名 目 で 9 4 6 ド ル か ら 2 0 1 0 年 に は 3 7 3 4 ド ル へ 、2 0 0 0 年 基 準 の 実
質 元 で は 2.71 倍 と な っ た 。 実 質 経 済 成 長 率 も 、 2001 年 が 8.3% 、 2002 年 、 2008
6
年 、2 0 0 9 年 が 9 % 台 で あ っ た が 、そ れ 以 外 の 年 は 1 0 % を 超 え て お り 、ま さ に 高 度
成長期である。ただし、広大な中国では地域所得格差が大きく、それぞれの地域
の ミ ド ル ク ラ ス の 比 率 も 異 な る 。別 途 計 算 し た 2 0 0 9 年 の 省 別 1 人 あ た り 所 得 額 お
よ び 省 別 一 人 あ た り 民 間 消 費 額( 括 弧 内 )に よ る と 5、上 海 市 が 11468 ド ル( 4923
ド ル )、 北 京 市 が 1 0 1 3 9 ド ル ( 3 1 8 8 ド ル )、 天 津 市 が 8 7 6 7 ド ル ( 2 1 8 1 ド ル ) で あ
り 、こ れ ら 都 市 で は 多 く の 住 民 が 一 般 に 言 う ミ ド ル ク ラ ス 6 で あ る 。今 後 そ の よ う
に な っ て ゆ く の が 上 海 に 近 接 す る 浙 江 省 、江 蘇 省 、そ し て 広 東 省 で 、所 得 は 6000
ド ル 台 と な っ て い る 。 こ れ ら に 5000 ド ル 台 で 続 く の が 山 東 省 、 内 蒙 古 、 遼 寧 省 、
福建省である。そのほかの地域のミドルクラス化は相当先のことである。
都市賃金は当然のことであるが国全体の1人あたり所得水準より高く推移して
いる。特に最近は都市部の工場労働者のストライキなどを契機に、都市労働者の
賃 金 が 上 昇 し 始 め た 。『 通 商 白 書 2 0 1 1 』
( 経 済 産 業 省 2 0 1 1: 4 1 - 4 2 ) に よ れ ば 、 都
市 労 働 市 場 が 変 化 し 始 め て い る 。8 0 年 代 以 後 生 ま れ の 教 育 水 準 が 高 い 農 民 工 の 出
現 、 法 定 最 低 賃 金 の 引 き 上 げ 、 有 効 求 人 倍 率 の 上 昇 、 国 全 体 の 求 人 倍 率 が 2010
年第 1 四半期に1を超えるなどの現象がおきている。今や、中国は労働市場の転
換 点 に 近 づ き つ つ あ り 、特 に 都 市 部 に お い て そ の 影 響 が 大 き く 出 る と す る な ら ば 、
都市部のミドルクラス化が一層進展するものと思われる。
都市近郊の地下鉄沿線での大規模住宅団地建設も進んでいる。不動産バブルと
も 言 う べ き 価 格 急 上 昇 に よ り 実 需 を 大 き く 上 回 る 投 機 的 資 金 が 流 入 し 2010 年 に
かけて価格が急上昇したが、ここに来て実需以外を規制する政府の施策と経済の
減速により、価格は下落した。しかし、このように変動しつつも住宅床面積の竣
工 分 の 増 加 率 は 2005 年 以 後 増 加 率 を 高 め て い る 7。
ミドルクラスの出現とともに小売業形態も大きく変化している。スーパーマー
ケ ッ ト と コ ン ビ ニ 、そ の ほ か 家 電 量 販 店 な ど の 普 及 で あ る 。
『 中 国 統 計 年 鑑 』で は 、
小 売 業 に つ い て は 形 態 別 に コ ン ビ ニ 、ス ー パ ー 、百 貨 店 、特 定 ス ト ア 8等 の 統 計 が
2 0 0 2 年 か ら 利 用 可 能 で あ る が 、2 0 0 7 年 か ら 分 類 が 詳 細 に な り 小 売 り 業 態 に 変 化 が
現 れ た こ と を 裏 付 け て い る 9。 2007 年 か ら の 分 類 で は 、 コ ン ビ ニ と ス ー パ ー は 、
コ ン ビ ニ 、デ ィ ス カ ウ ン ト ス ト ア 、ス ー パ ー マ ー ケ ッ ト 、ハ イ パ ー マ ー ケ ッ ト 1 0 、
倉庫クラブ、など一層詳細に区分されている。表 3 の数値はスーパーマーケット
とハイパーマーケットの合計値である。現在では、上海においても北京において
5
『 中 国 統 計 年 鑑 』か ら 筆 者 計 算 。な お 、本 節 の 統 計 デ ー タ は 断 り の な い 限 り『 中
国統計年鑑』各年版に依拠している。
6
ミドルクラスの所得定義については次節で検討する。
7
2004 年 ま で は 5% 以 下 。 2005 年 16.2% 、 2006 年 - 4.7% 、 2007 年 9.2% 、 2008
年 10.4% 、 2009 年 8.1% 。
8
ガソリンスタンドなど特定商品に特化した小売業。
9
旧 分 類 に よ る 2007 年 の デ ー タ と 新 分 類 に よ る 2007 年 の デ ー タ の 間 に は 整 合 性
が 見 ら れ な い の で 、 表 3 に お い て 2005 年 と 2009 年 へ の 変 化 は 厳 密 に は 比 較 で き
ない。
10
OECD 基 準 で は 売 り 場 面 積 が 5000 ㎡ 以 上 が ハ イ パ ー マ ー ケ ッ ト 。 た だ し 、 中
国 で は 10000 ㎡ 以 上 と 定 義 さ れ て い る 。 (Chen, Shepherd, and da Silva 2005: p.6)
7
も 、あ ち こ ち の 街 角 に コ ン ビ ニ 1 1 が 見 ら れ 、ス ー パ ー や ハ イ パ ー で 日 常 品 を 買 い 、
高級品は総合百貨店かショッピングモールでというように、日本と変わらない光
景 が 見 ら れ る 。こ の よ う な 業 態 の 普 及 は 、外 資 の 参 入 も 大 き く 関 係 し て い る 。1 9 9 0
年 代 は 、 試 験 的 輸 入 期 で あ っ た が 、 W T O 加 盟 後 し ば ら く し た 2004 年 12 月 以 後
は外資完全自由化期となり、名だたる海外のスーパーやコンビニが店舗数の拡大
を お こ な っ た ( 矢 作 ・ 関 根 ・ 鍾 ・ 畢 2 0 0 9 : 4 5 - 7 5 )。 こ の よ う に 2 0 0 5 年 以 後 は 、
ミドルクラスの拡大と共に外資系・内資系を含めてミドルクラスを顧客層とする
チェインストアの展開が本格化した。
都市部では耐久消費財としての家電製品もほぼ行き渡っている。表3に例示し
た よ う に 、洗 濯 機 、冷 蔵 庫 、カ ラ ー T V 、エ ア コ ン の 2 0 0 9 年 に お け る 各 家 庭 へ の
普 及 率 は ほ ぼ 100% か そ れ 以 上 で あ り 、 ミ ド ル ク ラ ス に ふ さ わ し い 耐 久 消 費 財 購
入パターンが観察される。これに対して農村部ではカラーTV以外の普及率はま
だ 低 い 。こ れ を 受 け て 、政 府 は 2009 年 2 月 に「 家 電 下 郷 」政 策 を 導 入 し 、農 村 戸
籍 の 家 電( 品 目 と 上 限 金 額 は 順 次 拡 大 )購 入 者 に 13% の 補 助 を 与 え た( 経 済 産 業
省 2 0 1 0 : 8 4 、 2 0 1 1 : 3 8 )。 ま た 。「 以 旧 換 新 」 政 策 に よ り 、 表 3 に リ ス ト さ れ た 家
電 買 い 換 え に 10% の 補 助 を 与 え た 。 こ の 結 果 こ れ ら 家 電 の 売 り 上 げ は 2009 年 7
表3. 中国のミドルクラス出現と社会経済構造の変化
2000
2005
一人あたり所得(米ドル)
946
1726
都市賃金(元、年額)
9333 18200
都市賃金(ドル、年額)
1127
2221
CPI (2000=100)
100
106
住宅床面積(竣工分、1万平米)
54860 66142
コンビニ店舗数
3324* 10043
スーパー(ハイパー含む)店舗数
10281* 18924
小型自家用車新規登録台数(万台)
149*
371
耐久消費財普及率(100世帯あたり台数)
洗濯機(都市家計=U)
91
96
洗濯機(農村家計=R)
29
40
冷蔵庫 U
80
91
冷蔵庫 R
12
20
カラーTV U
117
135
カラーTV R
49
84
エアコン U
31
81
エアコン R
1
6
PC U
10
42
PC R
0
2
2009
3734
32244
4720
118
82102
15779
35717
979
96
53
95
37
136
109
107
12
66
7
資料)中華人民共和国国家統計局、『中国統計年鑑』各年版。
注)*は2002年データ
11
中 国 の コ ン ビ ニ は 、 ま ず 特 定 都 市 で 展 開 が 開 始 さ れ る 。 上 海 で は 「 可 的 」、「 良
友 」、「 喜 子 多 」 と 並 ん で 日 系 の 「 全 家 ( フ ァ ミ リ ー マ ー ト )」、「 7 - e l e v e n 」、「 羅
森( ロ ー ソ ン )」な ど が 見 ら れ る 。チ ェ イ ン ス ト ア 全 体 に つ い て は 中 国 連 鎖 経 営 協
会編『中国連鎖経営年鑑』が詳しい。これによれば、スーパー、コンビニとも外
資系の大手が本格的に参入していることがよくわかる。
8
月以後急増した。家電の普及率をミドルクラス化現象として捉える場合にはこの
政策効果について留意しなければならない。
自家用車についても、ミドルクラス上位の所得層とニュー・リッチによる購入
が急拡大している。大型や中型自家用車の新規登録台数はほぼ横ばいか減少傾向
に あ る が 、ミ ド ル ク ラ ス 向 け の 小 型 自 家 用 車 の 新 規 登 録 台 数 は 2 0 0 5 年 の 3 7 1 万 台
か ら 2008 年 に は 592 万 台 、 2009 年 に は 979 万 台 へ と 急 増 し て い る 。 ま た 、 小 型
の 下 の ミ ニ ク ラ ス 自 家 用 車 も 2 0 0 8 年 の 1 2 万 台 か ら 2 7 万 台 へ と 急 増 し て い る 。こ
れには、ミドルクラスの出現と共に交通網の整備、安価な小型車の供給、内外自
動車メーカーによる相次ぐ小型モデルの投入などが関係している。実際、都市部
に は 、 北 京 市 海 淀 区 閔 庄 路 12に 見 ら れ る よ う に 内 外 自 動 車 デ ィ ー ラ ー が 軒 を 並 べ
ている地域も増加しており、モータリゼーションの一般家庭への普及が感じられ
る 。な お 、自 家 用 車 に つ い て も 2 0 0 9 年 1 月 か ら 1 0 月 末 ま で 1 6 0 0 C C 以 下 の 車 輌
購 入 税 が 1 0 % 、2 0 1 0 年 末 ま で は 7 . 5 % 軽 減 さ れ た と い う 政 策 要 因 に 留 意 し な け れ
ばならない(経済産業省
2 0 1 0 : 8 4 )。
4. 中 国 ミ ド ル ク ラ ス の 定 義 と 規 模
世界的には多様なミドルクラスの定義があり、定義の仕方も様々である。表 4
は 中 国 に つ い て の 代 表 的 な 定 義 を 、比 較 し や す い よ う に 、期 間( 月・年 )、通 貨( 元 ・
ド ル )、 収 入 あ る い は 支 出 の 単 位 ( 世 帯 ( = 家 計 )・ 1 人 ) に つ い て 共 通 単 位 に 換
算したものである。ただし、名目価格表示であるので、比較のためには物価上昇
率を考慮する必要があるが、ドルベースで見ればその影響は少ない。月収を年収
に換算する際には、労働者のボーナスを考慮して、1年=13ヶ月の換算率を使
用 し た 。こ の 他 、G D P 、家 計 所 得 額 、家 計 消 費 支 出 額 が カ バ ー す る 項 目 は 大 き く 異
な る の で 注 意 し な け れ ば な ら な い 。 ま ず 第 1 に 、 GDP は 、 家 計 消 費 支 出 額 の 合 計
である民間消費支出の他に、政府消費支出、固定資本形成、在庫電動、純輸出を
含 む 。従 っ て GDP は 家 計 消 費 支 出 額 よ り 遙 か に 大 き い 。例 え ば 、2009 年 で は 家 計
消 費 支 出 額 は GDP の 35% で し か な い 。ま た 、厳 密 に 言 え ば 、所 得 額 と 支 出 額 と は
異なる。家計調査における消費向けの支出額は、各家計の経済活動に基づく所得
額に他の家計等からの所得の純移転を加え、更に貯蓄分を除いた部分である。ま
た 2009 年 家 計 調 査 に よ れ ば 、 都 市 部 家 計 の 消 費 向 け 支 出 は 家 計 総 収 入 額 の 65%
で あ り 、 農 村 部 で は 56% で あ る 。
諸 定 義 の う ち 、A D B ( 2 0 1 0 ) の 定 義 は 、ミ ド ル ク ラ ス を 1 日 2 ド ル の 貧 困 予 備 層
以 上 と し て お り 、 BoP(Base of Pyramid)ビ ジ ネ ス の 分 析 に は 適 切 か も 知 れ な い が 、
ここで対象としているミドルクラスの分析には適さない。政府統計である『中国
城 市( 鎮 )生 活 與 価 格 年 鑑 』(以 下 、家 計 調 査 )で は 、所 得 お よ び 支 出 の 10 分 位 の
12
こ こ に は 、日 産 、V W, K I A , R o e w e , B u i c k , ト ヨ タ な ど の 現 地 合 弁 企 業 の 車 を
販 売 す る デ ィ ー ラ ー が 軒 を 並 べ て お り 、2 0 1 0 年 11 月 に は お 客 で 混 み 合 っ て い た 。
9
うち下から 3 分位から 8 分位までをミドルクラスとし、更にそれが低位・中位・
高 位 ミ ド ル ク ラ ス に 3 分 割 さ れ て い る 13。 た だ し 、 こ の 統 計 の 不 便 な 点 は 、 そ れ
ぞれの所得層の所得範囲が示されておらず、各所得の平均所得が示されているだ
けである。このため、表 4 においても下位ミドルクラスの平均から上位ミドルク
ラスの平均までをミドルクラスの範囲とせざるを得なかった。もう 1 点は、統計
の 代 表 性 の 問 題 で あ る 。こ の 家 計 調 査 は 都 市 を 対 象 と し た も の で 、2 0 0 9 年 の 都 市
人 口 は 約 6 . 2 億 人 で あ る 。こ れ に 対 し 、2 0 0 9 年 の 調 査 世 帯 数 は 6 5 5 0 6 世 帯 で あ り 、
世 帯 あ た り の 平 均 人 数 2.89 人 で 換 算 す る と 約 19 万 人 で あ る 。 つ ま り 、 0.03% の
サンプルであり、解釈においては、この点に留意する必要がある。
中国でよく参照される中国の研究者あるいは研究機関による定義に、国家統計
局 の Cheng Xuebin 氏 の 定 義 が あ る 。 2005 年 に 、 年 間 所 得 60,000 元 か ら 500,000
元 ( 世 帯 収 入 、 世 帯 平 均 2 . 9 6 人 ) を 中 間 層 と 定 義 し た ( Ta n 2 0 1 0 ) 。 1 人 あ た り
で は 、 20,000-168,918 元 で あ る 。 社 会 科 学 院 の 2004 年 の 報 告 で は 、 所 得 定 義 を
使 用 せ ず 、 1 人 あ た り 資 産 が 150,000-300,000 元
($18,100-36,200)と 定 義 さ れ
て い る ( Wo n g 2 0 1 0 ) 。 ま た 、 海 外 の 研 究 機 関 に よ る も の で 、 中 国 に つ い て ミ ド ル
ク ラ ス を 定 義 し た も の に 、 McKinsey Global Institute (2007)が あ る 。 こ こ で の 定 義
は 、 2000 年 の 1 人 あ た り 年 収 が 25000 元 か ら 100000 元 で あ る 。 Deutche Bank
Research (2009)は 、 範 囲 を 1 人 あ た り 年 間 可 処 分 所 得 が 1300 ド ル ~ 2400 ド ル と
している。
こ の 他 、世 界 各 国 に つ い て 統 一 的 な ミ ド ル ク ラ ス 基 準 と し て 、Euromonitor
Wo r l d I n c o m e D i s t r i b u t i o n を 使 用 し た 、 経 済 産 業 省 『 通 商 白 書
の
2009 年 版 』 や み
ず ほ 総 合 研 究 所 ( 2010)の 、 世 帯 可 処 分 所 得 5000 ド ル か ら 35000 ド ル と い う 定 義
が あ る 。 ま た 表 4 に は 載 せ て い な い が 、 Wo r l d B a n k ( 2 0 0 6 ) で は 、 1 人 あ た り 所 得
を ブ ラ ジ ル の 1 人 あ た り 年 間 所 得( 3 9 1 4 ド ル )と イ タ リ ア の 1 人 あ た り 年 間 所 得
( 16746 ド ル ) の 間 に 設 定 し て い る 。
表 4 の 諸 定 義 を 年 間 1 人 あ た り 所 得 で 見 る と 、両 極 端 の A D B と M c K i n s e y を 除
け ば 、下 限 が 2 0 0 0 ド ル 前 後 と な っ て い る 。上 限 は バ ラ つ い て お り 、低 い の が 家 計
調 査 の 3374 ド ル 、 Euromonitor と McKinsey が 12000 ド ル あ た り と な っ て い る 。
Cheng の 20615 ド ル は 、 い わ ゆ る ニ ュ ー ・ リ ッ チ を 含 ん で い る と 思 わ れ る 。
次節では、ミドルクラス像を踏まえた数量分析をおこなうので、ここで筆者な
りの大まかな定義をしておきたい。北京におけるヒアリングに基づけば、大卒夫
婦の所得の将来像は次のようになる。大卒あるいは修士修了の初任給(月給)を
3000 元 と し 、 年 収 を そ の 13 倍 と す れ ば 、 年 収 は 39000 元 ( 6.77 元 /ド ル で 5760
元 ) と な る 。 3 0 才 の 月 収 を 4 0 0 0 元 と す れ ば 年 収 が 5 2 0 0 0 元 ( 7 7 6 6 ド ル )、 4 0 才
に な る と 個 人 差 が 大 き く な る が 、 月 収 5000 元 と す れ ば 65000 元 ( 9601 ド ル ) と
なる。夫婦共働きとすれば、世帯収入は、その 2 倍である。この世帯の夫婦がそ
ろ っ て 3 0 才 に な っ た 時 、小 型 乗 用 車 の 価 格 は 夫 婦 の 年 収 の 1 年 分 に あ た る 。ま た 、
13
付 表 2 と し て 、 2000 年 、 2005 年 、 2009 年 の デ ー タ を 示 し た 。
10
郊 外 の 簡 素 な 団 地 住 宅 は 1 0 0 万 元 か ら 1 5 0 万 元 で あ る の で 、夫 婦 の 年 収 の 1 0 ~ 1 5
年分に当たるが、一人っ子であるので両方の両親からの補助があるケースも多い
よ う で あ る 。こ れ を 参 考 に 、本 稿 で は 、ミ ド ル ク ラ ス を 年 間 1 人 あ た り 所 得( G D P )
が 5 0 0 0 ド ル か ら 1 5 0 0 0 ド ル の 人 々 と 定 義 す る 。こ の 数 値 は 、家 計 調 査 の ミ ド ル ク
ラ ス の 定 義 と も そ う か け 離 れ て は い な い 。 ま ず GDP に 35% を か け て 民 間 消 費 支
出 に 換 算 す る と 1750 ド ル ( 6.831 元 /ド ル で 11952 元 ) ~ 5250 ド ル ( 35857 元 )
と な る 。2 0 0 9 年 の 家 計 調 査 の 階 層 ご と の 1 人 あ た り 平 均 所 得 は 、低 位 ミ ド ル ク ラ
ス( 中 等 偏 下 収 入 戸 )で 1 2 3 4 5 元 、中 位 ミ ド ル ク ラ ス( 中 等 収 入 戸 )で 1 6 8 5 8 元 、
上 位 ミ ド ル ク ラ ス ( 中 等 偏 上 収 入 戸 ) で 23050 元 、 そ の 上 の 高 収 入 戸 で 31171 元
で あ る 。 従 っ て 、 筆 者 の 定 義 は 、 2009 年 家 計 調 査 の ミ ド ル ク ラ ス 全 体 ( 全 家 計 の
60% ) と そ の 上 の 10 分 位 ( 全 体 の 10% ) に ほ ぼ 対 応 し て い る 。 上 限 の 15000 ド
ルには自家用車や住宅購入が可能となる所得水準を反映させた。ここでの分析目
的 は 新 た な 消 費 パ タ ー ン を 持 つ 新 ミ ド ル ク ラ ス で あ る の で 、 BoP 層 や ニ ュ ー ・ リ
ッチは定義から除くべきであると考えた。
表4.中国ミドルクラスの所得及び支出による定義
比較のための換算(所得表示で統一)
オリジナルの定義
世帯、年、
元
人、年、元
人、月、元
Euromonitor:世帯、年、ドル(2009年)、所得
下限
5000
34157
11819
上限
35000
239100
82733
世帯、年、
ドル
人、年、
ドル
比較のための換
算値の名目年、
他
909
6364
5000
35000
1730 2009年、市場為
12111 替レート
Chen Xuebin(国家統計局):世帯、年、元(2005年)、所得
下限
60000
60000
20270
1559
上限
500000
500000
168919
12994
7322
61020
2474 2005年、市場為
20615 替レート
McKinsey Global Institute:人、年、元(2000年実質)、所得
下限
25000
78250
25000
1923
上限
100000
313000
100000
7692
9452
37806
3020 2000年、市場為
12079 替レート
ADB: 人、日、ドル(2005年PPP)、中位ミドル$4-10、上位ミドル$10-20
下限
4
14910
5037
387
上限
20
74548
25185
1937
4322
21608
1460 2005年、PPP為
7300 替レート
2009城市家計調査:人、年、元(2009年)、下位ミドル平均-上位ミドル平均、所得
下限
12345
35677
12345
950
5223
上限
23050
66615
23050
1773
9752
1807 2009年、市場為
3374 替レート
長田の定義: 一人あたりGDP、年、ドル(2009年)
下限
5000
34548
11954
上限
15000
103643
35863
1750 2009年、市場為
5250 替レート
920
2759
5058
15173
資料)経済産業省(2009), McKinsey Global Institute (2006),
Tan(2010)、国家統計局城市社会経済調査司(2010).
注) 1.市場為替レートは年平均レート、 2005年PPPレートは3.45元/$。1世帯平均人数
2.都市世帯平均人数は、家計調査結果の3.13人(2000年)、2.96人(2005年)、2.89人(2009年)。
3.ボーナスを考慮して、1年=13ヶ月で換算。
4.2009年データによれば、家計消費支出はGDPの約35%
5.Euromonitorについては、使用データ集の年である2009年を基準年とみなした。
11
中国におけるミドルクラスの人口規模については、人口・所得成長・所得階層
パ タ ー ン の 連 動 モ デ ル に よ る 推 計 が 近 年 盛 ん で あ る が 14、 多 く の 仮 定 に も 基 づ い
た 推 計 で あ る 。 そ れ ぞ れ の 定 義 を 前 提 と し 、 通 商 白 書 ( 2010) で は Euromonitor
の デ ー タ に 依 拠 し て 5 億 人 ( 2 0 1 0 年 )、 M c K i n s e y G l o b a l I n s t i t u t e ( 2 0 0 6 ) で は 独 自
の モ デ ル 推 計 に よ り 9 億 人 ( 2015 年 ) が 提 示 さ れ て い る 。
筆 者 の 大 ま か な 推 定 で は 、 ミ ド ル ク ラ ス 人 口 は 2009 年 時 点 で 約 5 億 人 で あ る 。
ま ず 、 中 国 の 1 人 あ た り 年 収 が 5000 ド ル 以 上 の 省 /省 級 市 /省 級 区 の 人 口 合 計 は 、
4.36 億 人 ( 2009 年 ) で あ る 。 こ れ に 5000 ド ル 以 下 の 省 の 都 市 部 に お け る ミ ド ル
クラスが加わる。約 5 億人という推計値は、そう的外れではないだろう。
5. 中 国 ミ ド ル ク ラ ス 出 現 の 経 済 構 造 へ の 影 響
ミ ド ル ク ラ ス 出 現 の 経 済 的 影 響 は 、典 型 的 に は 消 費 行 動 の 変 化 と な っ て 現 れ る 。
消費パターンの変化は、家計調査などの統計に基づくが、それはサンプル家計に
おけるデータであり、国全体の消費構造との関係が直接的にはわからない。そこ
で、家計調査情報をも含んでいると考えられるが、更に多くの統計との整合性な
どが検討されて作成されたと思われる総額が国民所得統計の家計消費と一致する
統 計 を 利 用 す る 。表 5 は 国 民 所 得 統 計 の 家 計 消 費 を 品 目 別 か つ 農 村 と 都 市 に 分 け 、
消 費 構 造 変 化 を 示 し た も の で あ る 。こ の 品 目 分 類 で 最 も 遡 及 で き る の が 2 0 0 6 年 で
あ る が 、新 ミ ド ル ク ラ ス の 消 費 行 動 が 顕 著 に な っ た の が 2 0 0 6 年 以 後 と 言 っ て も 良
いので、一定の変化を捉えることが出来る。前提として指摘しておかなければな
ら な い こ と は 、消 費 支 出 は 農 村 と 都 市 に 分 け ら れ 、約 7 5 % は 都 市 の 消 費 で あ る の
で、都市の消費構造の変化が国全体の消費構造の変化に与える影響が大きいと言
表5.消費パターンの変化(%)
食品
衣服
住宅
家庭用品・サービス
医療保健
交通通信
教育・文化・娯楽
金融サービス
保健サービス
その他
計
2006
41.1
5.7
18.2
4.3
6.6
9.7
10.3
1.4
0.5
2.2
100.0
農村
2009増減
-0.4
0.1
-1.1
0.8
1.6
0.3
-1.8
0.2
0.5
-0.1
0.0
2006
29.1
8.4
17.7
4.7
8.6
10.7
11.3
2.3
1.6
5.5
100.0
都市
2009増減
0.3
0.0
-0.2
0.5
1.0
0.5
-1.5
-0.1
0.1
-0.5
0.0
資料)国家統計局、『中国統計年鑑』各年版.
注)都市家計消費支出額は総家計消費支出額の74.1%(2006年)、76.2%(2009年)。
14
例 え ば 、柳 川 範 之・森 直 子( 2 0 1 0 )、M c K i n s e y G l o b a l I n s t i t u t e ( 2 0 0 6 ) 、H o m i K h a r a s
( 2 0 1 0 ) 、 Wo r l d B a n k ( 2 0 0 6 ) な ど 。
12
うことである。消費パターンを見ると、農村では食品への支出が減少しているも
のの、都市では食品への支出が増加している。両地域において,消費に占めるシ
ェアが増加したのは耐久消費財を含む家庭用品・サービス、医療保険費、交通通
信費などである。これに対して、教育・文化・娯楽や住宅費は減少している。つ
ま り 、中 国 に お い て は 、集 計 的 に 見 る と「 エ ン ゲ ル 係 数 の 減 少 と サ ー ビ ス の 増 加 」
というように単純には要約出来ない複雑な変化が起こっている。
さて本節の目的は、ミドルクラスの出現が消費行動の変化を通じて、どのよう
に経済構造(生産構造)に影響を与えるかを数量的に把握し、将来の動向につい
て 示 唆 を 得 る こ と で あ る 。分 析 に は 、利 用 可 能 な 投 入 産 出 表 の 中 で は 最 新 の『 2 0 0 7
年 中 国 投 入 産 出 表 』( 国 家 統 計 局 国 民 経 済 核 算 司 作 成 ) を 使 用 す る 。 分 析 方 法 は ,
標準的な産業連関分析による最終需要変化の生産誘発額と輸入誘発額の推計であ
る。モデルとしては、以下のような競争輸入タイプのモデルを使用した。
^
X =
^
(I –(I - M) A)-1 ((I - M)Fd+ E)
(式1)
^
こ こ で X は 生 産 額 ベ ク ト ル 、 A は 投 入 係 数 行 列 。 Mは 輸 入 係 数 行 列 ( 対 角 要 素 は
品目ごとの輸入係数で、その他要素はゼロ)で、輸入係数は内需に対して定義し
^
た 。F d は 国 内 最 終 需 要 行 列( あ る い は ベ ク ト ル )、 E は 輸 出 ベ ク ト ル で あ る 。M F d
は国内最終需要のうち直接輸入によって供給された部分である。また、輸入誘発
^
額 は MX で 与 え ら れ る 。 分 析 に 使 用 し た の は 、 42 部 門 統 合 表 で あ る 。
シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 分 析 で は 、 投 入 係 数 と 輸 入 係 数 は 2007 年 に 固 定 し た ま ま で 、
最 終 需 要 マ ト リ ク ス の 中 の 民 間 消 費 ベ ク ト ル ( C) を 変 化 さ せ た 。
第 1 の分析では、ミドルクラス出現による消費パターンの変化が、生産構造と
輸 入 構 造 に 与 え た 影 響 を 見 る 。具 体 的 に は 、2 0 0 6 年 の 消 費 パ タ ー ン を 維 持 し た ま
ま 所 得 が 2009 年 水 準 と な っ た 場 合 の 民 間 消 費 ベ ク ト ル ( C1) に よ る 生 産 誘 発 額
( X 1 ) と 輸 入 誘 発 額 ( M 1 ) と の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 推 計 ( ケ ー ス 1:「 2 0 0 6 年 か ら の 比 例
的 成 長 ケ ー ス 」 と 呼 ぶ ) と 、 2009 年 の 現 実 の 民 間 消 費 ベ ク ト ル (C2)に よ り 誘 発 さ
れ た 生 産 誘 発 額 (X2)と 輸 入 誘 発 額 (M2)と の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 推 計 ( ケ ー ス 2 ) を
比 較 す る 。 期 間 を 、 2006 年 か ら 2009 年 ま で と し た の は 、 詳 細 な 消 費 パ タ ー ン の
データが利用できるのはこの機関に限られるためである。期間は短いが、一応、
ミドルクラスの出現が加速した時期と一致しているので、一定の変化を読み取る
ことは出来るであろう。具体的には、以下の式で示される推計をおこない、誘発
額 ( X1 と X2、 M1 と M2)の 比 較 を お こ な う 。
^
^
^
^
(I –(I - M) A)-1 (I - M)C1
X1 =
^
^
(式3)
M1= MX1+MC1
(I –(I - M) A)-1 (I - M)C2
X2 =
^
^
M2= MX2+MC2
(式2)
(式4)
(式5)
第 2 の分析では、消費パターンの変化の影響を際立たせるために、全国民がミ
ド ル ク ラ ス 化 す る と い う 大 胆 な 仮 定 を お い た 民 間 消 費 ベ ク ト ル (C3)に よ る 「 シ ミ
ュ レ ー シ ョ ン 推 計( ケ ー ス 3 )、を お こ な い 、そ の 結 果 を「 比 例 的 成 長 ケ ー ス 」
(ケ
13
ー ス 1) と 比 較 す る 。 推 計 式 は 以 下 の 通 り で あ る 。
^
^
(I –(I - M) A)-1 (I - M)C3
X3 =
^
^
M3= MX3+MC3
(式6)
(式7)
こ こ で は 、 国 民 所 得 統 計 と 整 合 的 な 2009 年 家 計 消 費 構 造 に 2009 年 家 計 調 査 の 中
位 ミ ド ル ク ラ ス の 消 費 パ タ ー ン を 仮 定 し 、家 計 消 費 総 額 に は 2 0 0 9 年 デ ー タ を 使 用
した。
シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に 用 い た 4 2 部 門 の 消 費 ベ ク ト ル は 、次 の よ う に 推 計 し た 。ま
ず、ケース1とケース 2 であるが『中国統計年鑑』の国民所得統計の一部として
提 供 さ れ る 1 0 部 門 分 類( 表 5 の 分 類 と 同 じ )で 示 し た 対 象 年 の 都 市 ・ 農 村 そ れ ぞ
れ に お け る 消 費 額 を C T ( コ ン ト ロ ー ル・ト ー タ ル ) と し 、1 0 部 門 分 類 の 各 部 門 の 消
費 額 を 2 0 0 7 年 投 入 産 出 表( 以 下 I - O 表 )の 都 市 ・ 農 村 そ れ ぞ れ の 消 費 ベ ク ト ル の
構 成 比 を 用 い て 分 割 し 、最 終 的 に 4 2 部 門 の 消 費 ベ ク ト ル を 推 計 し た 。な お 、細 か
な 点 で あ る が 、国 民 所 得 統 計 か ら 得 ら れ る 1 0 部 門 分 類 の 消 費 ベ ク ト ル は 購 入 者 価
格 表 示 で あ る の に 対 し 、 こ こ で 使 用 す る I-O 表 は 生 産 者 価 格 表 で あ る の で 、 I-O
表 の 商 業 マ ー ジ ン 率 0.082 を 適 用 し て 購 入 者 価 格 を 生 産 者 価 格 へ 変 換 を す る と と
も に 、 部 門 番 号 30 に 商 業 マ ー ジ ン を 計 上 し た 。 生 産 者 価 格 の 10 部 門 分 類 で の そ
れ ぞ れ の 部 門 の 消 費 額 は 、 既 に 述 べ た よ う に I-O 表 の 消 費 ベ ク ト ル の 部 門 間 比 率
で分割した。その際に使用した部門コンバーターは、付表 3 の通りである。次に
ケース3では、上記10部門分類による都市ミドルクラスの消費構成額の統計は
無 い の で 、『 中 国 城 市 ( 鎮 ) 生 活 與 価 格 年 鑑 2 0 1 0 』 か ら 、 1 0 部 門 分 類 に 対 応 す る
消 費 パ タ ー ン (構 成 比 )を 得 て 、 こ れ に 総 消 費 額 を 乗 じ た も の を C T と し た 。 シ ミ
ュレーションに使用した消費ベクトルは、付表 4 の通りである。
シミュレーション結果は、比例的成長のケース 1 をベースケースとし、ケース
2、ケース3と比較するという形式で表6に示した。実際の計算はケース1とケ
ース2については都市・農村別に行い、その結果は付表5に示したが、明瞭な結
論が導出しにくいため、ここでは表 6 によって結果を検討する。
ま ず ケ ー ス 2 の 2006 年 か ら 2009 年 へ の 消 費 パ タ ー ン の 変 化 の 影 響 は そ れ ほ ど
際立ってはいないが、消費のウェイトが高まった部門で国内生産が増加し、同時
に輸入も増えている。また、一次産品の輸入が農林水産業、食品・タバコ、サー
ビスの一部で増加している。全部門合計では生産増が輸入増を上まわっており、
消費パターンの変化は総合的には純国内生産を増大させることがわかる。ケース
3の総ミドルクラス化のケースではその変化は更に顕著である。国全体の生産増
は輸入増を大きく上回り、内需主導型の成長メカニズムが強化される。農林水産
業では、生産誘発も輸入誘発も大きいが、金額としては生産増が輸入増を大きく
上回る。繊維・衣服部門も生産誘発と輸入誘発共に大きいが、金額的には生産増
が輸入増を大きく凌駕する。逆に、金融、環境保全、不動産、電気ガス水道など
の部門の生産誘発が大きく縮小している。これは、ミドルクラスの消費パターン
から想定されていることとは一致しない。その原因として、家計調査の消費項目
にはこれらセクターとの対応関係を正確に示す情報がないため、仮定した消費パ
14
ターンではこれらセクターの消費が過小推計され、他のセクターの消費が過大推
表6 消費のパターン変化の生産・輸入への影響
2006年の消費パターンを2009年消費額に適用した場合を基準とし、下記の消費パターン
を2009年消費額に適用した場合の差額を%で示す。
2009年都市ミドルクラス
2009年消費パターン
消費パターン
生産増-
I-O部門
生産誘発 輸入誘発 直接輸入 輸入増
生産増-
生産誘発 輸入誘発 直接輸入 輸入増
(億元)
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
農林水産業
石炭鉱業
原油天然ガス
金属鉱業
非金属鉱業
食品・タバコ
繊維
衣服・履き物
木材加工
製紙・印刷など
石油精製・核燃料
化学
非鉄金属
金属精錬
金属製品
一般機械
輸送用機械
電気機器
通信機器
精密機器・オフィス機器
芸術品・その他製造業
スクラップ・廃棄物
電気
ガス
水道
建設業
運輸業
郵便
情報産業
卸・小売り業
ホテル・ケータリング
金融業
不動産業
リース・ビジネスサービス
研究開発
総合技術サービス
環境保全・公共施設
対家計サービス
教育
保健・社会サービス
文化・スポーツ・娯楽
公共サービス
計
-0.37
-0.06
0.70
3.36
4.21
-0.44
0.58
0.29
3.26
0.30
0.56
4.56
0.23
2.48
2.23
2.89
2.26
3.24
2.61
0.64
11.73
2.43
-0.64
-1.61
-1.76
2.05
1.40
0.29
3.17
0.30
-10.25
1.47
-2.23
-3.87
1.38
0.43
-8.87
6.49
-13.95
13.30
-9.86
0.60
0.26
-0.62
0.50
0.67
2.23
1.38
-1.63
0.58
0.52
0.72
-0.04
0.97
3.93
0.69
2.12
0.86
2.52
0.95
0.49
1.36
-0.45
0.87
1.49
0.62
0.62
0.62
0.65
0.33
0.41
0.76
0.61
-0.15
0.30
0.62
-0.18
0.64
0.62
0.62
0.21
0.59
0.62
-0.43
0.62
1.15
0.15
-0.26
0.00
0.00
0.00
0.49
0.20
0.20
1.18
1.79
-0.85
9.21
-0.19
0.00
1.18
0.79
3.20
8.40
3.70
6.52
10.47
0.00
0.00
0.01
0.01
0.00
2.37
0.23
2.72
0.00
-10.62
1.05
0.00
-10.74
0.00
0.00
0.00
4.83
-2.60
1.91
-6.89
0.00
1.24
-117
-2
7
4
12
-142
36
27
38
10
31
648
4
120
41
76
128
90
11
-3
-32
6
-83
-11
-13
12
113
0
142
42
-781
122
-313
-101
0
2
-484
201
-630
1223
-101
-1
332
(億元)
14.62
-16.06
-7.75
1.12
0.64
29.02
33.16
41.74
7.44
9.78
-6.82
7.57
-11.21
1.71
5.11
0.46
4.85
2.94
4.20
-13.21
46.62
7.01
-18.37
-32.78
-30.27
-24.94
6.05
11.62
6.50
2.49
3.33
-28.16
-42.27
6.37
7.06
4.96
-57.56
20.87
-8.61
-9.56
5.08
6.91
3.71
21.86
0.35
-6.55
2.78
5.54
17.72
28.76
18.31
5.61
7.89
1.33
6.68
5.43
2.69
4.65
0.91
2.62
-2.75
2.50
-6.35
7.30
6.54
7.35
7.37
7.37
6.63
6.73
6.77
2.83
7.32
1.51
3.94
7.36
0.51
6.05
7.36
7.36
3.73
7.28
7.32
2.49
7.34
4.75
1.69
-4.36
0.00
0.00
0.00
32.42
2.02
39.59
3.23
6.07
-18.70
15.93
-3.99
0.00
3.79
4.02
7.56
19.85
6.32
3.82
40.80
0.00
0.00
0.17
0.17
0.00
3.00
1.12
7.13
0.00
4.81
-14.70
0.00
19.54
0.00
0.00
0.00
16.26
-1.93
-1.35
6.31
0.00
12.26
4608
-441
-90
-8
-4
9349
2043
3929
81
345
-393
1070
-200
77
88
5
269
76
8
20
-141
11
-2372
-210
-217
-154
485
5
285
339
248
-2355
-5924
159
-5
28
-3141
642
-394
-885
45
-12
7266
出所)筆者計算。
計されたという可能性がある。修正には、現在より更に詳細な家計消費データが
必要となる。このようにシミュレーション分析に限界はあるが、少なくとも、ミ
15
ドルクラスの出現が、中国経済の成長軌道を外需主導型から内外需両輪の主導型
へ導く可能性は示されたと考える。
【付記】
本 論 文 は 、 科 学 研 究 費 補 助 金 ( 挑 戦 的 萌 芽 研 究 、 平 成 22 年 度 ~ 平 成 23 年 度 ) に
よる研究「新興アジア経済大国における消費爆発と内需主導型発展メカニズムの
創 出 過 程 」( 課 題 番 号 2 2 6 5 3 0 3 3 ) の 研 究 成 果 の 一 部 で あ る 。
16
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17
統計書
( 日 本 ) 行 政 管 理 庁 他 共 同 編 集 ( 1 9 7 5 )『 接 続 産 業 連 関 表 昭 和 3 5 - 4 0 - 4 5 年 』、
全国統計協会連合会。
( 日 本 ) 総 務 省 統 計 局 ( 2 0 0 6 ) 『 新 版 日 本 長 期 統 計 総 覧 』、 日 本 統 計 協 会 。
(中国)国家統計局『中国統計年鑑』各年版。
( 中 国 )国 家 統 計 局 城 市 社 会 経 済 調 査 司( 2 0 0 1 )
『中国価格及城鎮居民家庭収支調
査統計年鑑
2001』
( 中 国 ) 国 家 統 計 局 国 民 経 済 核 算 司 ( 2 0 0 9 )『 2 0 0 7 年 中 国 投 入 産 出 表 』
( 中 国 )国 家 統 計 局 城 市 社 会 経 済 調 査 司『 中 国 城 市( 鎮 )生 活 與 価 格 年 鑑 』2 0 0 7 、
2008、 2009、 2010 年 版
( 中 国 ) 中 国 連 鎖 経 営 協 会 編 『 中 国 連 鎖 経 営 年 鑑 』 2009、 2010 年 版
18
付表1.日本産業連関表分析用部門コンバーター
分析用分類
59(一部159)部門分類
01 一般作物
02 工芸作物
03 繊維用畜産
02 畜産
04 その他畜産養蚕
03 林業
05 林業
04 漁業
06 漁業
07 石炭・亜炭
08 鉄鉱石
05 鉱業
09 非鉄金属鉱石
10 原油・天燃ガス
11 その他鉱業
06 肉・酪農品
12 屠殺・肉・酪農品
13 水産食品
07 その他食品
14 精穀・製粉
15 その他食料品
16 飲料
08 飲料・たばこ
17 タバコ
09 衣服など
21 身の回り品(衣服等)
18 天然繊維・紡績
10 その他繊維製品
19 化学繊維・紡績
20 織物・その他繊維製品
22 製材・木製品
23 家具
24 パルプ・紙
11 木・皮革・ゴム加工
25 印刷出版
26 皮革・皮革製品
27 ゴム製品
28 基礎化学製品
12 化学
29 化学繊維原料
30 その他の化学製品
31 石油製品
13 石油・石炭製品
32 石炭製品
14 窯業土石製品
33 窯業土石製品
34 銑鉄・粗鋼
35 鉄鋼一次製品
15 金属
36 非鉄金属一次製品
37 金属製品
16 一般機械
38 一般機械
17 家電
3702民生用機械(159部門分類)
18 電気機械(家電除く)
39 電気機械(3702除く)
19 自動車
3830自動車(159部門分類)
20 輸送機械(自動車除く)
40 輸送機械(3830除く)
23 住宅新建築
4001住宅新建築(159部門分類)
24 建築(住宅除く)
43 建築(4001除く)
25 土木
44 土木
45 電気
26 電気・ガス・水道
46 都市ガス
47 水道
27 商業
48 商業
28 金融・保険
49 金融・保険
29 不動産業
50 不動産業
51 運輸
30 運輸・通信
52 通信
31 公共サービス
54 公共サービス
32 娯楽サービス
8400娯楽サービス(159部門)
33 飲食店
8501飲食店(159部門)
34 その他サービス
55 その他サービス(8400,8501除く)
53 公務
67 梱包
35 その他
57 分類不明
60 不動産賃料
66 事務用品
注)右欄は行政管理庁他共同編集(1975)『1960-1965-1970接続表』
の部門分類
01 農業
19
付表2.階層別所得と収入
最低収入戸10%
低収入戸10%
中等偏下収入戸20%
中等収入戸20%
中等偏上収入戸20%
高収入戸10%
最高収入戸10%
一人あたり年収
2000
2005
2678
3377
3658
5202
4651
7177
5930
9886
7524
13596
9484
19687
13390
31237
2009
5940
8956
12345
16858
23050
31171
51349
(元)
一人あたり年支出
2000
2005
2009
2540
3111
4900
3274
4295
6743
3947
5574
8738
4794
7308
11309
5894
9140
14964
7102
12102
19263
9250
19153
29004
国家統計局城市社会経済調査司(2010)『中国城市(鎮)生活與価格年鑑』
付表3.消費部門コンバーター
国民所得統計の消費分類
I-O 42部門分類
食品
01,06
衣服
07,08
住宅
02,11,13,23,24,25,33
09,10,12,15,16,18,20,21
家庭用品・サービス
40,
医療保健
17,19,27,28,29
交通通信
31,34,39,41
教育・文化・娯楽
金融サービス
保健サービス
その他
32
37,42
20
付表4. シミュレーション用消費ベクトル
家計消費パターン
2006農村 2009農村
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
計
0.20354
0.00470
0.00000
0.00000
0.00000
0.17365
0.00806
0.04402
0.00184
0.00123
0.00487
0.01100
0.00271
0.00000
0.00126
0.00009
0.02158
0.00762
0.01856
0.00110
0.00335
0.00000
0.02733
0.00252
0.00278
0.00000
0.02377
0.00034
0.02524
0.08200
0.04092
0.01757
0.12209
0.00294
0.00000
0.00000
0.02019
0.01174
0.04652
0.06069
0.00419
0.00000
1.00000
0.20156
0.00441
0.00000
0.00000
0.00000
0.17196
0.00821
0.04487
0.00219
0.00146
0.00456
0.01311
0.00254
0.00000
0.00150
0.00010
0.02218
0.00909
0.01908
0.00131
0.00400
0.00000
0.02562
0.00236
0.00261
0.00000
0.02444
0.00035
0.02594
0.08200
0.03365
0.02415
0.11445
0.00241
0.00000
0.00000
0.01920
0.01399
0.03825
0.07500
0.00345
0.00000
1.00000
2006都市
0.087719
0.001137
0.000000
0.000000
0.000000
0.179722
0.004049
0.073450
0.001958
0.001667
0.012328
0.008209
0.004314
0.000000
0.001608
0.000283
0.025016
0.007076
0.019271
0.000560
0.005649
0.000000
0.034701
0.005176
0.005086
0.000000
0.022997
0.000661
0.030639
0.082000
0.050985
0.036002
0.099612
0.012946
0.000000
0.000000
0.050494
0.015829
0.032242
0.079396
0.007216
0.000000
1.000000
家計消費ベクター(2009)<数値><億元>
2009都市ミ
2009都市
2009農村 2009都市 2009農村 2009都市 2009合計
ドル
0.088579
0.001126
0.000000
0.000000
0.000000
0.181483
0.004046
0.073393
0.002169
0.001846
0.012209
0.009093
0.004272
0.000000
0.001781
0.000314
0.026085
0.007838
0.020095
0.000620
0.006257
0.000000
0.034366
0.005126
0.005037
0.000000
0.023981
0.000690
0.031949
0.082000
0.044374
0.035586
0.098651
0.011267
0.000000
0.000000
0.045693
0.017533
0.028061
0.088197
0.006280
0.000000
0.999999
0.117429
0.000643
0.000000
0.000000
0.000000
0.240591
0.005358
0.097183
0.002602
0.002214
0.006971
0.010906
0.002439
0.000000
0.002137
0.000376
0.026462
0.009402
0.020386
0.000744
0.007505
0.000000
0.019621
0.002927
0.002876
0.000000
0.024327
0.000700
0.032411
0.082000
0.051653
0.014079
0.056324
0.013116
0.000000
0.000000
0.017900
0.021030
0.032665
0.067748
0.007310
0.000000
1.000033
21
(2009都
(2006農 (2006都 (2009農 (2009都
ミドルパ
パターン) パターン) パターン) ハパターン)
ターン)
5869
8096
5812
8175
14224
136
105
127
104
78
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
5007
16588
4958
16750
29143
232
374
237
373
649
1269
6779
1294
6774
11772
53
181
63
200
315
35
154
42
170
268
140
1138
132
1127
844
317
758
378
839
1321
78
398
73
394
295
0
0
0
0
0
36
148
43
164
259
3
26
3
29
46
622
2309
640
2408
3205
220
653
262
723
1139
535
1779
550
1855
2469
32
52
38
57
90
97
521
115
577
909
0
0
0
0
0
788
3203
739
3172
2377
73
478
68
473
355
80
469
75
465
348
0
0
0
0
0
685
2123
705
2213
2947
10
61
10
64
85
728
2828
748
2949
3926
2364
7568
2364
7568
9933
1180
4706
970
4096
6257
507
3323
696
3284
1705
3520
9194
3300
9105
6822
85
1195
70
1040
1589
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
582
4660
554
4217
2168
338
1461
403
1618
2547
1341
2976
1103
2590
3957
1750
7328
2163
8140
8206
121
666
99
580
885
0
0
0
0
0
28834
92296
28834
92296
121134
付表5.シミュレーション結果詳細(都市・農村別)
(1)2009年の消費額に2006年の消費パターンを適用したケース(ベースケース)
2006年の比例増大(2006年の消費パターン+2009年の消費額)
生産誘発
輸入誘発
農村
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
計
10537
674
531
85
70
7981
1282
1616
266
830
1237
3965
356
1142
423
725
1365
739
607
49
30
84
2720
84
109
124
1985
16
976
3257
1627
1521
3795
649
19
171
619
643
1391
1778
195
-19
56252
都市
22690
2090
2123
315
250
25635
5191
8324
935
3007
4855
13058
1406
4112
1501
2621
4984
2622
2146
162
170
309
10160
539
588
471
6456
84
3700
10600
6281
6873
10204
2976
56
516
4829
2537
3134
7430
923
-64
186797
計
33227
2763
2653
400
320
33616
6473
9940
1201
3837
6091
17022
1762
5254
1924
3346
6349
3361
2754
212
200
393
12880
623
697
596
8440
100
4676
13858
7908
8394
13999
3625
75
686
5447
3180
4524
9208
1118
-83
243049
農村
270
29
359
96
26
149
68
41
25
71
95
628
23
105
34
172
106
115
311
182
93
57
18
18
18
18
69
20
31
18
38
25
18
190
40
18
18
26
18
18
29
18
3721
都市
824
103
1414
344
90
463
286
164
88
250
327
2112
81
374
119
614
378
422
1142
641
330
202
62
62
62
64
233
70
108
60
131
85
62
665
132
62
62
92
62
62
101
62
13070
22
計
1093
132
1774
441
116
612
354
205
113
321
423
2741
104
479
153
786
484
536
1453
823
423
259
80
80
80
82
302
90
139
78
169
110
80
855
172
80
80
118
80
80
130
80
16791
農村
298
18
16
16
16
213
26
78
17
18
25
60
17
16
17
16
75
47
260
38
83
16
16
16
16
16
41
16
45
15
58
19
16
34
16
16
16
24
20
18
26
16
1846
直接輸入
都市
440
53
51
51
51
702
67
383
56
60
123
157
57
51
56
55
271
144
863
87
415
51
51
50
50
51
128
54
165
46
221
71
51
313
51
51
51
85
59
59
108
51
6007
計
738
71
66
66
66
915
93
461
73
78
148
218
74
66
73
71
346
191
1124
125
498
66
66
66
66
66
169
71
210
61
279
90
66
347
66
66
66
109
79
77
134
66
7852
(2)2006年から2009年への消費パターン変化の結果(2009年の実態)
2009年の消費パターン+2009年の消費額
生産誘発
輸入誘発
農村
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
計
10411
664
536
90
75
7848
1312
1648
280
840
1246
4244
356
1182
436
756
1389
781
622
50
36
87
2661
80
103
130
2008
16
1003
3271
1425
1711
3577
639
19
171
589
706
1151
2191
173
-19
56491
都市
22694
2098
2136
324
259
25621
5199
8321
960
3009
4879
13555
1410
4201
1531
2687
5104
2690
2203
163
187
316
10136
534
581
478
6551
84
3822
10629
5672
6807
10109
2846
57
518
4375
2681
2743
8242
834
-65
187180
計
33104
2762
2672
414
334
33469
6510
9969
1240
3849
6125
17798
1766
5384
1967
3443
6493
3470
2826
213
224
403
12797
613
684
608
8559
100
4824
13900
7097
8518
13687
3485
76
689
4964
3387
3893
10433
1008
-83
243671
農村
266
29
363
100
27
146
69
41
26
71
97
666
23
108
35
178
107
116
317
180
94
58
18
18
18
19
70
20
32
18
38
25
18
191
40
18
18
27
18
18
29
18
3788
都市
821
103
1423
351
91
456
287
165
88
250
330
2183
81
381
120
627
382
423
1156
639
333
204
62
62
62
64
233
70
109
61
131
85
62
663
133
62
62
92
63
63
100
63
13196
23
計
1087
132
1786
450
118
602
356
206
114
321
427
2848
105
489
155
806
489
539
1472
819
427
262
81
80
80
83
303
91
140
78
169
110
81
854
173
81
81
118
81
81
129
81
16984
直接輸入
農村
295
18
16
16
16
211
26
79
18
18
24
69
17
16
17
16
77
53
267
42
96
16
16
16
16
16
41
16
46
15
51
20
16
31
16
16
16
25
19
18
24
16
1874
都市
444
53
51
51
51
709
67
383
56
61
123
169
57
51
57
56
280
154
898
91
454
51
51
50
50
51
131
54
170
46
199
71
51
279
51
51
51
89
58
60
100
51
6075
計
739
71
66
66
66
919
93
462
74
79
147
238
74
66
74
72
357
207
1165
133
551
66
66
66
66
66
173
71
216
61
250
91
66
310
66
66
66
114
77
79
124
66
7950
(3)2009年に全人口がミドルクラス化
2009年のミドルクラス(中等戸)消費パターン+2009年の消費額
生産誘発
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
計
輸入誘発
38087
2319
2448
405
322
43370
8619
14089
1290
4212
5676
18311
1564
5343
2022
3361
6656
3460
2869
184
294
421
10514
419
486
447
8950
111
4980
14203
8171
6030
8081
3856
80
720
2312
3844
4135
8328
1175
-89
252074
直接輸入
1333
132
1658
453
123
720
456
242
120
346
429
2924
110
492
161
793
497
521
1489
771
454
276
86
86
86
88
322
96
143
84
172
114
86
860
183
86
86
122
86
86
133
86
17588
24
750
68
66
66
66
1211
95
644
76
82
120
252
71
66
76
74
372
229
1195
129
702
66
66
66
66
66
174
71
225
61
293
77
66
415
66
66
66
127
77
76
142
66
8815