平成 29 年3月15日 平成29年度事業計画 Ⅰ 自動車運送事業を取り巻く経済・社会情勢と課題 1 我が国を取り巻く経済・社会情勢 昨年来の経済情勢を概観してみると、雇用・所得環境の改善が続く中で、四半期ベースの GDP成長率も、年間を通じ、前期比、前年同期比ともプラスとなるなど、総じて緩やかな回復 基調が続いている。一方で、イギリスのEU離脱、アメリカ新大統領の誕生とそれに伴う大幅な 政策変更の可能性、相変わらず頻発するテロの脅威など、社会はむしろその不透明性、不確 実性を増してきている。 こうした中で環境問題に着目してみると、一昨年末に長い議論の末にようやくまとまった地 球温暖化防止のための「パリ協定」が、予想よりも早く、昨年 11 月には発効の運びとなった。ま た、自動車を中心にローエミッションからゼロエミッションへ、環境規制強化の動きが一部の国 ・地域で拡がりをみせはじめるなど、国際的には一定の盛り上がりを見せた。しかし、その一方 で、アメリカの新政権が、環境規制の緩和と「パリ協定」からの離脱を主張するなど、環境問題 についても、少なくとも短期的には、先行きの不透明感が増しているともいえる。 このように昨今の経済・社会情勢としては、足元の実体経済の面では比較的堅調に推移し ているものの、先行きはむしろ不透明感、不確実性が強まってきているといえる。 2 自動車運送事業をめぐる情勢 このような全般的な経済・社会情勢の下にあって、自動車運送事業をめぐる情勢をみてみる と、貨物輸送については、いわゆる通信販売の発展で宅配貨物を中心に堅調な動きがみられ、 また、旅客輸送についても、外国人観光客の急増で、貸切バスのみならず路線バスの乗降人 員も増加するなど、需要面からは、総じて底固さがうかがえる。 また、2014 年の前半まで、自動車運送事業の大きな経営圧迫要因であった原油価格の動 向も、同年後半に急落の後、一昨年は年半ばに若干の上昇傾向がみられたものの、その後、 総体的には比較的低位安定的に推移し、これにより自動車運送事業者の収益環境の改善に 寄与する好循環が続いている。しかしながら、エネルギー情勢をめぐっては、中東情勢が相変 わらず不安定なことに加え、昨年末にはOPECの減産合意が成立し、また、アメリカの新政権 の政策が国際的な経済社会情勢に与える影響も不透明な中で、現状のような低位安定的な 価格動向がいつまで持続できるか予断を許さない状況にあるともいえる。 加えて、近年特に顕著になってきた運転手を中心とする労働力不足の問題が、ここに来て、 事業発展のための深刻な隘路となりつつあり、その解決のため、物流・人流のより一層の効率 化が求められている。 1 更に、最近のスキーバスの事故を契機に自動車運送事業の安全問題についての国民の関 心は非常に高まっていることから、昨年末にはバス事業を中心にその安全規制の強化が図ら れたところである。 以上のように、自動車運送事業をとりまく経営環境は、足元では原油価格の高騰に翻弄さ れた一時期の厳しい状況は脱したものの、不透明性、不確実性はむしろ強まっているともいえ、 中長期的には引き続き厳しい状況にあるといえる。 こうした中で近時、自動車技術の分野では、電動化と自動運転技術への関心と期待が国際 的にも急速に高まっており、自動車運送事業においては、このような新技術をどのように取り入 れ活用していくかが、新しい重要課題として今後顕在化してくるものと考えられる。 3 自動車運送事業の課題 以上の経済・社会全般及び自動車運送事業をめぐる諸情勢の中にあって、当機構の事業 に関連する自動車運送事業の課題を挙げれば、以下の通りである。 (1) 環境問題への対応 一昨年末に合意された地球温暖化防止のための「パリ協定」は、昨年 11 月に予想以上の 早さで発効した。我が国も、同協定に基づき「2030 年度に 2013 年度比 26%減」との温暖化ガ ス削減目標を国連に提出し、これに基づく新たな取り組みが始まった。 運輸部門はわが国の温暖化ガス排出量の約2割を占めることもあり、全体目標のベースとな る部門別の削減量としても、同じ期間(2013 年度~2030 年度)に27%減という意欲的な数値 が想定されているところである。 地球温暖化対策をめぐっては、「パリ協定」合意まで国際的な議論が難航したこともあって、 我が国では、近時、この問題への国民の関心の低下が懸念されるところとなっている。しかし、 一方で、国際的には、自動車の環境規制で、ローエミッションからゼロエミッションへの動きが 一部の国・地域で拡がりを見せ始めているほか、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治 (Governance)の3つの観点を考慮した投資手法として「ESG投資」が注目されるようになるなど、 環境対策がサスティナブルな社会を維持・構築していく上で欠くことのできない重要な課題で あるとの認識が深まってきている。従って、自動車運送事業としても、中長期的な視点から、引 き続き、環境問題への息の長い取り組みが求められるところとなっている。 (2) 運輸燃料の多様化への対応 一昨年7月に政府において策定された「長期エネルギー需給見通し」でも指摘されたように、 「運輸燃料の多様化」を進めることは、エネルギーセキュリティの面からも、国土強靭化の面か らも、喫緊の課題である。 足元では比較的低位安定的に推移している原油価格の動向もあり、自動車運送事業者の 2 間におけるこの問題への関心の低下が懸念されるところとなっており、軽油回帰、ディーゼル 車回帰の傾向さえみられるようになっている。 しかし、一歩翻って背景となる国際情勢をみてみると、先述したようにその不透明感はむし ろ増してきており、現状のような傾向がいつまで継続するかは、予断を許さない状況となってい る。自動車運送事業としても、改めてこの問題への不断の取り組みが求められるところである。 (3) 輸送の省エネ化、効率化の推進 自動車運送事業における省エネ対策は、環境対策やエネルギーセキュリティにもつながる 対策であり、このため、これまでも、自動車自身の燃費性能向上とともに、エコドライブの推進 が図られてきたところである。エコドライブは、比較的取り組みが容易であり、CO2 削減の面か らも非常に高い効果が見込まれることから、自動車運送事業者の間では、広く実践されている 省エネ対策である。加えて、エコドライブは安全運転の確保にもつながることが実証されており、 これらマルチな効果が期待できる施策として、今後とも精力的に取り組んでいく必要がある。 更に、近時、車両の走行や輸送体系そのものを省エネ、低炭素化していく取り組みへの関 心が高まっている。とりわけ、それが自動車運送事業にとっての喫緊の課題である労働力不足 への対応にも大きな効果が期待できることから、大いに注目されるところとなっている。このた め、自動運転技術を活用した隊列走行や車両動態管理による運行管理の高度化など、IT技 術を駆使した車両走行の効率化を目指した技術開発や実証事業などが各方面で行われてい る。加えて、トラックから鉄道や船舶へのモーダルシフトや共同輸配送、公共交通機関の利用 促進、宅配ボックスの設置による再配達輸送の削減など、輸送体系全体の効率化によって、 省エネ・低炭素化を図ると同時に、運転手不足の問題にも対応する総合的、複合的な取り組 みも始まっている。自動車運送事業者としても、このような新しい取り組みへの関心を高め、積 極的にこれらの技術や施策を事業に取り入れていく努力が求められるところとなっている。 (4) 交通安全対策の推進 交通安全の確保は、自動車運送事業者が何を差し置いても取り組まなければならない要諦 である。近年のスキーバス等の事故を契機として、バス事業を中心にその事業規制の強化が 図られるとともに、SAS(睡眠時無呼吸症候群)をはじめとする健康起因性疾患による事故防 止対策が検討されている。 また、これまでのデジタルタコグラフやドライブレコーダといった機器に加え、衝突被害軽減 ブレーキ、車線逸脱警報装置等の先進的な交通安全支援機器の活用による事故防止への取 り組みも本格化してきている。 更に、ITを活用した自動車の自動運転技術への関心も高まっており、自動車運送事業とし ても、こうした最先端の技術の開発動向と、これらの技術を活用した交通安全対策にも注目し ていく必要がある。 3 4 当機構の取り組み これらの自動車運送事業の当面する課題を踏まえ、当機構としても、平成29年度事業計画 においては、 (1) 環境優良車の普及促進 (2) 環境・省エネ機器等を活用した輸送の省エネ化・効率化 (3) 交通安全対策の推進 (4) 低炭素型ディーゼル車の普及促進や物流CO2 削減に係る補助金の執行 (5) (1)~(4)に係る調査研究事業 の5つを引き続き事業の柱として取り組んでいく。 その際、これまでに述べてきた自動車運送事業を取り巻く経済・社会情勢と課題を踏まえ、 次の3点に特に留意して事業を推進することとする。 (1) 環境問題、エネルギー問題への関心の喚起 原油価格の低位安定化や運転手不足の問題への関心の高まりもあり、自動車運送事業者 の間で環境問題やエネルギーセキュリティ問題への関心が、相対的に低下しているのではな いかとの懸念がある。これらの問題への対策は、直ちに事業収益に結びつくものではないもの の、不断の取り組みによって、中長期的には事業の持続的発展に多大な効果が見込めるもの であることを、あらゆる機会を通じて訴え、その理解の増進を図ることとする。 (2) 施策の総合性・複合性への着目 近年注目される環境・省エネ対策は、エネルギーセキュリティ対策としても、交通安全対策 としても、有効であるばかりでなく、物流・人流の効率化を通じて、現在の自動車運送事業の 喫緊の課題である労働力不足の問題の解決にも資する総合的・複合的な施策となってきてい る。当機構としても、環境対策・エネルギー対策を進めることによる総合的・複合的な効果にも 着目し、それを強調する等によって、自動車運送事業者のこれらの問題への関心を高め、そ の取り組みを促進することとする。 (3) IT 技術の動向への注視 近年、自動車分野でも、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)など、IT技術を駆使し た先進的な技術の開発やその自動車運送事業への活用が注目を集めている。当機構としても、 このようなIT技術については、その動向を十分把握するとともに、自動車運送事業者への情報 提供等を通じて、その理解の増進と積極的活用を図るべく注力することとする。 4 Ⅱ 平成 29 年度事業計画の具体的内容 以上のような経済・社会情勢の変化及びこれに伴う自動車運送事業の諸課題に適切に対応 していくため、当機構では、平成 29 年度の具体的な事業を以下のとおり展開していくこととす る。 1 環境優良車の普及促進 ⑴ 天然ガス自動車の普及促進 (基本的考え方) ○環境問題への対応及び運輸燃料の多様化の両面から、引き続き、天然ガス自動車の普及促進 に積極的に取り組む。 ○天然ガス自動車を廻っては昨年来、国による様々な支援をはじめとして、普及のための環境整 備が進められている。 ●平成 28 年度から、大型 CNG トラックに対する環境省所管のエネルギー特別会計からの新 たな助成制度「先進環境対応トラック・バス導入加速事業」(以下「先進トラック・バス導入促 進事業」という。)が、スタートしたこと。 ●一昨年末、大手自動車メーカーが大型 CNG 車(新車)を製造し、これを市場に投入したこ と。 ●大型 LNG トラックの開発・実証事業が、環境省の補助金を得て、28 年度から三ヵ年計画で スタートしたこと。 ●中小型 CNG 車のエンジン性能向上を目指す開発、実証走行実験への取り組みが、関係 者の協力を得て 28 年度から三ヵ年計画でスタートしたこと。 ●29 年度予算において、レジリエンスの観点から、天然ガスインフラの整備促進の一環とし て、自動車の天然ガス供給スタンドへの助成制度(更新・増強投資への助成)が創設され たこと。 ●高圧容器等に関する安全基準の見直し(国際基準との調和)が進捗していること。 ●29 年度より、アメリカのシェールガスの輸入が開始される予定となっていること。 ○一方、国民の地球温暖化ガス削減問題への関心は、近時低下傾向にあり、自動車運送事業者 の間でも、運転手不足の問題が深刻化していることもあって、環境問題等への関心は、最近は 相対的に低下が懸念される状況となっている。それ故に、天然ガス自動車の普及も伸び悩み傾 向となっている。 ○しかし、環境問題は息の長い取り組みが必要であり、天然ガス自動車を取り巻く国等の環境整備 が再び進捗し始めた今こそ、その普及促進に向けた一層の努力が必要である。そのためには、 自動車運送事業者の天然ガス自動車への関心を高め、その理解の増進をより一層図るととも に、関係者間の緊密な連携を図ることが不可欠である。 5 ○当機構としても、このような関係者間の連携の架け橋としての役割を積極的に分担していくことと し、そうした連携の一環として、大型 LNG 車、中小型 CNG 車に係る実証事業に精力的に取り 組む。併せて、国民及び自動車運送事業者の間における天然ガス自動車への関心を高め、そ の理解の増進を図る最大限の努力を行う。 (具体的事業内容) ① 大型CNG車の普及促進 ア 大型CNG車メーカー新車の普及促進 ○ 平成 27 年 12 月に市場投入された大型CNG車メーカー新車の本格的な普及に向 けて最大限の努力を行う。 ○ このため自動車運送事業者のみならず、荷主企業、一般国民に大型CNG車の環境 への優位性をアピールして、その理解の増進を図るとともに、「先進トラック・バス導入 促進事業」による助成制度を最大限活用できるよう、同事業の補助金執行団体である (公財)日本自動車輸送技術協会(JATA)とも緊密に連携して、制度の周知、同事業 の活用に向けての自動車運送事業者に対する支援等に全力で取り組む。 イ 大型CNG車モデル事業のフォローアップ 平成 25~27 年度に当機構が代表申請者として参画した「大型CNGトラックを活用し た低炭素中距離貨物輸送のモデル構築事業」における「新潟運輸・日本自動車ターミ ル共同事業」「ニヤクコーポレーション・大阪ガス共同事業」「名古屋陸送・東邦ガス共 同事業」「岡山県貨物運送・大阪ガス共同事業」について、今年度も引き続きデータの 収集・分析等そのフォローアップに遺漏なきを期す。 ② 大型LNG車の開発普及 ア 大型LNG車の開発・実証事業 ○ 平成 28 年度に環境省の「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」の採 択を受け、同事業の補助金も活用して、平成 30 年度までの三ヵ年に渡り取り組むこと となった「大型LNGトラック及び最適燃料充填インフラの開発・実証事業」(以下、「大 型LNG車開発・実証事業)という。)について、精力的に取り組む。 ○ 大型LNG車は、CNG車に比べ、その走行距離が長く、実用性に優れることから、自 動車運送事業者の間でのこうした点への理解の増進を図る。 ○ 大型LNG車開発・実証事業においては、車両開発、LNGスタンドの整備、自動車運 送事業者による実証走行など多岐にわたる検討が必要であることから、当機構としても これに可能な限りの支援を行う。 ○ 特に同実証事業の実施に当たっては、燃料供給インフラも同時に整備していく必要 があり、このため自動車メーカーはもちろん、燃料供給事業者等の関係者との緊密な 連携が不可欠である。中立的な立場にある当機構としては、そうした連携の要となり、 いわゆる架け橋としての役割を積極的に担っていく。 6 イ 国内外の情報収集 経済性、環境性及び実用性などから、諸外国において開発が進められている大型LN G車やDDF(ディーゼル二燃料)車等について、内外の情報を収集し、関係者に提供す る。 ③ 中小型CNG車の普及促進 ア 中小型CNG車のエンジン開発、実証事業への参画 ○ 昨今のディーゼル車の性能向上から、現状の中小型CNG車とディーゼル車との環境 性能は相対的に差が縮小する傾向にある。 ○ このため、関係者が連携して乗用車分野で既に実用化されている燃費改善技術(ダ ウンサイジング、ミラーサイクル)を搭載した国内初の高効率小型CNGトラック用エンジ ンを開発する「中小型 CNG 車のエンジン性能向上のための開発、実証走行事業」(以 下「中小型 CNG 車エンジン開発・実証事業」という。)を行う。 ○ 本実証実験は、28 年度に着手し、30 年度までの三ヵ年で実施する。 ○ 当機構としては、「大型 LNG 車開発・実証事業」と同様に、関係者の連携の架け橋と しての役割を積極的に担っていくこととする。 イ 国土交通省の補助金を活用した中小型 CNG 車の普及促進 平成 29 年度予算において改正された国土交通省の「地域交通のグリーン化に向け た次世代環境対応車普及促進事業」(以下「地域交通グリーン化・環境対応車補助事業」 という。)等を活用して、引き続き中小型CNG車の普及促進を図る。特に、中小型CNG 車は、平成 10 年代に導入された車両が順次その代替のピークを迎えていることから、こ れらの代替車両として極力CNG車の導入が図られるよう、ユーザーたる個別の自動車 者(特に当機構の公益リースを利用している事業者)の理解を求めるべく最大限の努力 をする。併せて新たなユーザーを確保すべく、あらゆる機会を通じ、天然ガス自動車の 有用性等をアピールしていく。 ④天然ガス自動車に係る関係者連携、啓発活動 ア 天然ガストラック普及セミナーの開催 ○ 天然ガストラックに関する技術開発動向、天然ガストラックを取り巻く国内外の状況、 国、トラック協会等の助成制度(補助・助成制度の概要、当該助成の申請手続き)等を 主たる内容として、自動車運送事業者を対象とする当機構主催のセミナーを新たに企 画・開催する。 ○ 開催に当たっては、行政、自動車メーカー、燃料供給事業者及び自動車運送事業者 等の関係者の協力を得て、天然ガス自動車に係る内外の情勢、実証実験の結果や世 界のエネルギー事情等をベースに、自動車運送事業者の理解の増進、積極的な情報 発信を行う。 7 イ 「天然ガストラック普及推進協議会」の運営 平成26年より当機構が事務局となって開催している「天然ガストラック普及推進協議 会」を引き続き開催、運営し、関係者間での情報交換や具体的普及方策の検討等を 積極的に行う。 ウ 関係者間の緊密な連携 ○ 天然ガス自動車の普及にあたっては、自動車運送事業者や自動車メーカーのみなら ず、燃料供給事業者、燃料インフラ整備事業者等関係者が多岐にわたることから、そ の間の緊密な連携を図ることが必要不可欠である。 ○ 「大型LNG車開発・実証事業」、「中小型CNG車エンジン開発・実証事業」等の開 発・実証事業はもちろんのこと、天然ガス自動車の啓発、情報発信、情報交換等普及 活動に当たっても関係者間の連携が欠かせない。 ○ 当機構としては、あらゆる機会を通じて情報交換、意見交換等を行うことにより、関係 者間の緊密な連携と情報・認識の共有化・一体感の醸成に取り組む。 ⑵ 低炭素型ディーゼル車の普及促進(後述 P14~) ⑶ 電気自動車その他の環境優良車の普及促進 (基本的考え方) ○ローエミッションからゼロエミッションへの流れの中で、欧米や中国では、電気自動車や燃料電 池自動車(以下「電気自動車等」という。)への関心が急速に高まりつつある。 ○これまで、電気自動車と言えば乗用車を中心にその普及が考えられてきたが、最近では商用車 分野においても、電動化への動きが見られるようになっている。 ○我が国においても、特に自治体や家電メーカー中心に、観光バスやコミュニティバスへの電気バ スの導入に強い関心を示すところも出てきており、既に実証走行実験や営業走行に至っている ケースも見受けられるようになっている。 ○当機構としても、このように急速に関心が高まっている電気自動車、とりわけ商用車分野におけ る電動化の動きに注目することとし、各般にわたる情報収集や関係者間での検討会に参画する 等積極的に取り組んでいく。 ○併せて、従前より取り組んでいるハイブリッド車その他の環境優良車の普及促進に引き続き取り 組んでいく。 (具体的事業内容) ① 電気自動車等の普及促進に係る積極的取り組み ア 補助制度活用による電気自動車等の普及促進 国土交通省の補助制度として、これまで電気自動車等については、「地域交通のグリ ーン化を通じた電気自動車の加速度的普及促進事業」が、天然ガス自動車、ハイブリ 8 ッド車については、「環境対応車普及促進対策事業」(以下「環境対応車補助事業」と いう。)が用意されてきたが、29 年度は、これらの制度が「地域交通グリーン化・環境対 応車補助事業」に一本化させたことに鑑み、これまで「環境対応車補助事業」の活用を 通じて蓄積してきた当機構のノウハウや公益リース事業を、電気自動車等の普及促進 にも活用するなど、これに積極的に取り組む。 イ 電気自動車等の導入に関する動向の把握 ○ 電気自動車等に係る内外の情報収集、導入状況の把握等に努める。 ○ 電気自動車等の導入に当たっては、自治体その他の関係者間で行われる検討会や 実証実験等に係る情報を積極的に収集し、必要に応じ、これに参画・協力すべく努力 する。この場合、自治体が積極的な役割を担うことが多いことに鑑み、自治体との連携 に留意する。 ② ハイブリッド車その他の環境優良車の普及促進 ○ ハイブリッド車等の環境優良車について、「地域交通グリーン化・環境対応車補助事 業」や自治体、各種団体の補助制度も活用して、その普及促進を図る。 ○ 「地域交通グリーン化・環境対応車補助事業」については、当機構の公益リースを利 用しないトラック事業者に対しても行っている、申請の経由や内容のチェック等申請事 務への支援に遺漏なきを期す。 ○ 自動車運送事業者のニーズに応じ、補助金等を活用しない当機構の一般リースを通 じて、低燃費・低排出ガスディーゼル車等の普及を促進する。 ③ 普及説明会等の開催・関係者間の連携強化 (基本的考え方) ○環境優良車の普及促進のためには、各種補助事業等に係る周知を図ることが必要である。とり わけ、近時、自動車運送事業者その他の関係者の間の環境問題への関心の低下が懸念され る現況にあっては、これらの者の自動車の環境問題へのより一層の意識向上と理解の増進が 不可欠となっている。 ○環境優良車の普及、そのための検討、実証事業の実施等に当たっては、関係者間の連携が不 可欠であり、その強化のため、当機構として架け橋の役割を積極的に担っていく。 (具体的事業内容) ○ 国、トラック協会等の助成制度の概要、当該助成の要件、申請手続き等について、引 き続き普及説明会を開催する。 ○ 29 年度は「地域交通のグリーン化・環境対応車補助事業」や「低炭素型ディーゼルト ラック普及加速化事業」(以下「低炭素型ディーゼル車普及事業」という。)については、 それぞれ比較的大きな制度改正が行われていることから、その周知、情報提供等に万 9 全を期す。 ○ これらの補助制度に係る申請手続きに遺漏なきを期すため、申請者等に対するきめ 細やかな指導・助言等を行う。 ○ 行政、自動車運送事業者、自動車メーカー、燃料供給事業者等の関係者と協調・連 携して、イベント、セミナー、シンポジウム等を開催し、又はこれに積極的に参加する。 特に、29 年度は、新たに天然ガス自動車に係るセミナーを企画・開催する(既出 P.7)。 ○ 「大型LNG車開発・実証事業」等の実証事業や環境優良車普及のための各種検討 に積極的に対応すべく努力する。 2 環境・省エネ機器等を活用した輸送の省エネ化・効率化 (基本的考え方) ○エコドライブについては、当機構において、経済産業省の補助金も活用して平成 17 年度よりこ れを支援する機器(EMS 機器)の普及を図ることを中心に、ハード・ソフトの両面からその実践へ の取り組みを支援してきた。 ○エコドライブは、自動車運送事業者にとって、省エネ及びこれを通じた CO2 削減のため身近で かつ高い効果の見込める施策である。当機構では、公益リースを通じて、累計で 143,963 台の 車載器を車両に備え付け、毎年 6~8%程度の燃費改善の実績を上げてきた。 ○エコドライブは、このような環境・省エネ対策としての有用性だけでなく、交通の安全に対しても 多大な効果が見込めることが実証されている。当機構としては、今後とも、引き続き、このような エコドライブに対する自動車運送事業者のより一層の理解の増進とエコドライブへの取り組みを 支援していく。 ○これまでの EMS 機器等に対する経済産業省、国土交通省連携のエネルギー特別会計からの 補助制度(省エネルギー型トラック運送に係る革新的省エネルギー機器の実証事業)は、29 年 度より、「トラック・船舶等の運輸部門における省エネルギー対策事業費補助金(トラック輸送の 省エネ化推進事業)」(以下「トラック輸送の省エネ化補助事業」という。)として、発展的に改正さ れ、車両動態管理システム等 IT を活用したよりグレードの高い機器の導入支援により、運行管 理の高度化、効率化をめざす形へと変わることが決定されている。 ○当機構としては、以上のような制度変更の趣旨を踏まえ、「トラック輸送の省エネ化補助事業」を 活用して、運行管理の高度化・効率化を図り、もって、省エネや地球温暖化ガスの削減、更に は輸送の安全に寄与していくこととする。 ○併せて、これらの環境・省エネ機器の導入が、輸送の効率化を通じて、現在の自動車運送事業 の最大の課題である労働力不足の問題の解決にも資することなど、総合的・複合的な施策とし ても位置付けられることから、その意義・必要性への関係者の理解を深めるべく努力する。 ○これらの先進的な環境、省エネ機器は、高度な IT システムを駆使したものもあることから、自動 車運送事業者におけるこれらの機器への親和性を高める取り組みにつき検討することとする。 10 (具体的事業内容) ⑴ 車両動態管理システムの導入支援 ① 「トラック輸送の省エネ化補助金」事業への参画 ○ 新しい補助制度である「トラック輸送の省エネ化補助事業」について、積極的な情報 収集、自動車運送事業者への周知を図ることにより、車両動態管理システム導入の意 義、同補助制度の趣旨、それが示す運行管理の高度化・効率化の方向性等について の理解の増進を図る。 ○ 車両動態管理システムを最大限活用するためには、IT を活用した高度な機器(クラウ ド型等)への親和性を高める必要があり、また、荷主をはじめ関係者間での緊密な連携 を図る必要がある。こうした点についての自動車運送事業者の理解を深めるとともに、 必要に応じ、IT 技術等最新技術への親和性を高めるための取り組みを検討することと する。 ○ 以上により、このような新しい高度なシステムの導入を促進し、輸送のより一層の省エ ネ化・効率化を目指す。 ○ 本補助制度においても補助事業実施後のデータ収集及びそれによる補助事業の効 果測定が求められている。新制度においてどのようなデータ収集が必要になるかは、 現在関係省庁等で検討が行われているが、当機構としては、その結論を踏まえ、当機 構の公益リース事業を活用して機器の導入を図る事業者が係るデータ収集に遺漏なき を期すこととする。 ② 普及説明会の開催 「トラック輸送の省エネ化補助事業」の概要及びその申請手続等を主たる内容とする 普及説明会を開催する。特に、本事業は、平成 29 年度から新しい制度となることにから、 その趣旨、事業内容等について十分把握するとともに、関係者への周知とその理解の増 進に遺漏なきを期す。 ⑵ エコドライブの推進 ① エコドライブ総合診断事業の推進 自動車運送事業者等における自動車の使用実態に合ったきめ細かなエコドライブを 提案することを目的として、平成20年度に創設した「エコドライブ総合診断事業」を、こ れまで当機構が各種補助事業への参画等により培ってきた知見を反映させるなどして、 その充実・強化を図りつつ、引き続き推進する。 ② その他エコドライブの実践支援 EMS 機器への助成制度は、「トラック輸送の省エネ化補助事業」へと転換するが、そ こで補助対象となっている機器は、これまでの EMS 機器としての機能も併せ持つもの 11 であること。「低炭素型ディーゼル車普及事業」においても、その助成の前提としてエコ ドライブの実践が補助要件とされていることから、当機構としてもあらゆる機会を通じて、 これまで蓄積してきたエコドライブに関する知見を提供するなどエコドライブの実践へ の支援に引き続き精力的に取り組む。 3 交通安全対策の推進 (基本的考え方) ○ここ数年に発生したスキーバスの事故等により、自動車運送事業における交通安全問題への関 心が、より一層高まっている。こうした中で、昨年にはバス事業の安全に係る規制の強化を図る 改正道路運送法が成立している。 ○また、近時、自動車の安全をサポートする機器の技術開発は目覚ましく、衝突被害軽減ブレー キ、車線逸脱警報装置などの先進的な機器の普及が本格化する状況となっている。また、自動 運転技術の開発に対する関心も国際的に高まってきており、その制度面も含めた検討が急がれ る状況にある。このように自動車技術は新しいステージを迎えているともいえ、これら高度な機器 を装備した、より安全・環境性能に優れた自動車の普及がいよいよ始まろうとしている。 ○当機構は、これまで、デジタル式運行記録計やドライブレコーダ等の安全機器の普及促進及び SAS スクリーニング検査を行う当機構の関連法人への支援を中心に、交通安全対策に取り組ん できたが、このような自動車に係る最新の技術等の開発が進展する中で、当機構としても、最新 機器の技術開発動向を十分に把握し、近年急速に関心の高まってきた自動車の自動運転技術 の交通安全対策への活用にも着目しながら、交通安全対策の進展に適切に対応していく必要 がある。 ○一方、関越自動車道におけるツアーバス事故を契機に関心の高まった、SAS をはじめとする健 康起因性の疾患による事故の防止については、引き続き関連法人の行う SAS スクリーニング検 査を支援するほか、心疾患をはじめその他の健康起因性の事故対策にも注視していく。 ○更に、運転手の健康管理のために開発された様々な最新機器システムの開発動向の把握、実 際の活用の検討等にも取り組んでいく。 (具体的事業内容) ⑴ 交通安全に係る機器の普及促進 ① 交通安全に係る機器の普及促進 ア 国土交通省補助金を活用した安全機器の普及促進 国土交通省の自動車運送事業の事故防止対策支援推進事業のうち、「過労運転防 止のための先進的な取り組みに対する支援」、「運行管理の高度化に対する支援」の補 助金を活用して、引き続き、自動車運送事業者に対するデジタル式運行記録計、ドライ ブレコーダ、居眠り運転警報システム等の自動車の交通安全機器の普及促進を図る。 12 イ 貨物自動車用ドライブレコーダ選定事業 (公社)全日本トラック協会のドライブレコーダ助成事業を支援するため、平成 23 年 度に策定した「貨物自動車用ドライブレコーダ選定ガイドライン」に基づき、引き続き、助 成対象機器選定作業を実施する。また、必要に応じ、有識者・学識経験者より構成され る委員会において、具体的機種の選定、ガイドラインの改定等を行う。 ウ 自動車安全機器普及のための情報発信 自動車安全機器普及のための普及説明会を開催し、自動車運送事業者等に対して、 デジタル式運行記録計、ドライブレコーダ、居眠り運転警報システム等安全機器に係る 助成制度の概要、同機器の有効性等について説明し、その普及促進を図る。 ② 先進的な安全機器の導入促進のための情報収集 自動車の自動運転技術その他の最新の交通安全技術の動向について精力的に情 報収集を行う。近年、自動車分野でも、IT技術を活用した先進的な技術開発や自動車 運送事業への活用への関心が高まりをみせつつある。当機構としても、このようなIT技 術の活用については、幅広くその動向を注視するとともに、自動車運送事業者への情 報提供等を通じてその理解を深めるべく努力する。 ⑵ SASスクリーニング検査事業に対する支援や健康起因性疾患による事故対応の取り組み ① SASスクリーニング検査事業に対する支援 自動車運送事業の運転者に対するSASのスクリーニング検査事業を実施する(一財) 運輸・交通SAS対策支援センターに対し、引き続き所要の支援を行う。 ② その他の健康起因性疾患による事故対応の取り組み 関心の高まっている健康起因性疾患による事故防止対策について、健康管理、過労 運転防止に効果が期待出来る機器の情報収集を行うとともに、その活用の可能性や導 入条件等の検討及び必要に応じ、そのための実証実験等を実施するなど、新たな健 康管理機器システム導入への取り組みを支援する。 13 4 低炭素型ディーゼル車の普及促進及び物流関係CO2 削減に係る補助金の執行 (基本的考え方) ○当機構は、平成 26 年度より「先進環境対応型ディーゼルトラック導入事業(以下「環境ディーゼ ル車補助事業」という。)」の補助金執行団体として、また 28 年度より「物流分野における CO2 削減対策促進事業」(以下「物流 CO2 削減促進事業」という。)の補助金執行団体として参画 し、これらの事業を遺漏なく遂行しているところである。 ○29 年度も、引き続き「物流 CO2 削減促進事業」及び「環境ディ-ゼル車補助事業」を発展改正し た「低炭素型ディーゼル車普及事業」の補助金執行団体に応募し、これらに採択されたところで ある。 ○29 年度は、いずれの事業についても、事業内容や補助率等が改められるなど、その充実・強化 が図られたところであり、当機構としても、これら事業の趣旨を踏まえ、改めてその周知を図るとと もに、引き続きこれらの補助金執行事業に万全を期すこととする。 (具体的事業内容) ⑴ 低炭素型ディーゼル車普及事業の推進 ① 29 年度事業への参画 ○ 本事業は、これまでの「環境ディーゼル車補助事業」に引き続き、特に燃費性能に優 れた最新のディーゼルトラックの普及を加速化することによって、ディーゼルトラックから 排出される CO2 を削減しようとするものである。 ○ 当機構は、平成 26 年度より「環境ディーゼル車補助事業」の補助金執行団体として、 毎年度 3,000 台以上の環境対応型ディーゼルトラックの普及を図ってきた。 ○ 29 年度は、補助対象となるディーゼルトラックをより燃費性能に優れたものに限定す る一方、古い車両の廃車を伴わない増車であっても補助対象とする(補助率は異なる) など、その普及加速化のための制度の充実・強化が図られている。 ○ 当機構としては、特にこのような制度改正の趣旨も踏まえ、補助金執行団体として、本 事業の執行に万全を期す。このため全国で事業説明会を開催し、事業の周知を図ると ともに、個々の申請者へのきめ細やかな対応、指導・監督に努めることとする。 ○ 27 年度、28 年度と連続して募集期間の満了を待たずして補助金申請の累計額が予 算額を上回ったため、途中で募集を打ち切ることとなった。29 年度は、このような事業 の申請状況も勘案し、より一層幅広く事業者のニーズに応えられるよう、公募方法、時 期等につき検討する。 ② 28 年度事業のフォローアップ 「環境ディーゼル車補助事業」は、そのフォローアップのため、補助年度及びその後 1年間の燃費データの収集・分析が義務付けられていることから、28 年度事業に参加し た車両 3,701 台の燃費情報の収集・分析を適切に行う。 14 ⑵ 物流CO2削減促進事業の推進 ① 29 年度事業への参画 ○ 本事業は、物流のより一層の効率化と、その総合的、一体的なシステムへの転換が 求められている状況をとらえ、物流システム全体の低炭素化を図ろうとするものである。 29 年度は、「高品質低炭素型低温輸送システムの構築促進事業」(以下「低炭素型低 温輸送構築事業」という。)や「宅配システムの低 CO2 化推進事業」(以下「宅配低 CO2 化事業」という。)など新規の補助事業が多く計上され、物流から発生する CO2 削減対策として、その充実・強化が図られている。 ○ 当機構は、28 年度に初めて補助金執行団体として本事業に参画し、ここまで特段の 遺漏なく事業を執行したところである。29 年度も引き続き、同事業の補助金執行団体 に応募し、これに採択されたことからその執行に万全を期すものとする。 ○ 当機構としては、「低炭素型低温輸送構築事業」や「宅配低 CO2 化事業」などの新 規事業について、その事業の趣旨、要件等を十分把握するとともに物流事業者等を対 象とする事業説明会の開催等を通じてその周知徹底を図る。更に、申請に当たっての 個々の申請者へのきめ細やかな対応、指導・監督・助言に努めることにより、申請手続 き等に遺漏なきを期す。 ○ 当機構がこれまで培った各般のノウハウを最大限活用し、申請案件の CO2 削減効 果の適切な評価に万全を期す。 ② 28 年度事業のフォローアップ 平成 28 年度事業において補助金の交付を行った事業については、申請された事 業が計画通り推進されているか確認するなど、そのフォローアップを確実に実施してい く。 15 5 調査研究事業の推進、積極的な情報発信 (基本的考え方) ○当機構ではこれまで、公益リース事業を活用した環境優良車等の普及促進というハード整備を 中心とし、国等からの委託による調査事業をソフト事業の柱として行ってきた。 ○しかし近時、国等の補助事業では、その成果のフォローアップとして、燃費や CO2 削減量等の 効果分析等が求められることも多くなり、ハード・ソフトを一体的に推進しなければならないことが 多くなってきている。 ○29 年度事業では、このような傾向が更に顕著となっており、例えば「車両動態管理システムの導 入」では、環境・省エネ車載器の整備だけでなく、車両動態管理を通じた運行管理の高度化・ 効率化をめざし、システム構築で得られた各種データの獲得とその活用も事業の一つの柱とな るなど、ハード・ソフト一体型の事業となっている。 ○また、近時の自動車の電動化やIT技術の活用による運行管理等の高度化に見られるように、最 新技術の開発、実用化のスピードは著しく、そのための環境整備も本格化しつつある。当機構 としても、こうした高度技術について積極的に情報収集し、ノウハウを蓄積し、その利活用の検 討会への参画を検討するなど、精力的に取り組んでいくこととする。 ○一方、「物流 CO2 削減促進事業」における「宅配低 CO2 化事業」にみられるように、直接には CO2 削減を目的としつつも、自動車運送事業の喫緊の課題となっている運転手不足への対策 としても期待されるなど、総合的、複合的な観点からの施策の推進が求められる事業も多くなっ てきている。 ○当機構としては、その事業の推進に当たっては、近時、このように施策の総合的、複合的な推進 が必要となってきていることに十分留意するとともに、これまで当機構が培ってきたノウハウが 様々な形で活用されるよう、その積極的な提供に努めることとする。 (具体的事業内容) ⑴ 調査研究事業の推進・積極的な情報収集 ① 国際共同研究への参加及び情報発信 ア 国際エネルギー機関(IEA)における国際共同研究への参加 ○ 当機構が日本国政府の指定機関として参加するIEAの「自動車用先進燃料実施協 定(以下「AMF実施協定」という。)」について、本年度も引き続きその執行委員会に参 加し、国際共同研究を推進する。特に、29 年度は、執行委員会メンバーとして新たに (独)自動車技術総合機構交通安全環境研究所の参加も得られることとなったので、同 研究所とも協力しながら、国際共同研究に資する積極的な情報提供等を行っていく。 ○ また、29 年度は、執行委員会の日本での開催が予定されていることから、当機構もそ の事務局の一員として、他の執行委員会メンバーとも協力しながら同委員会が実りある ものとなることを期す。 16 イ 情報発信 ○ 国際共同研究の成果、IEA からのニュースレター、執行委員会等の機会に得られた 海外事情等に係る情報については、メールマガジンを創刊するなどして、自動車者及 びその団体、地方自治体その他関係者に積極的に情報発信していく。 ウ 海外事情その他内外の情勢に係る調査・情報収集 ○ AMF実施協定の執行委員会への参加等の機会を利用し、各国の環境優良車等の 技術動向、普及状況及び施策並びに自動車用代替燃料、国際的なエネルギー供給 の動向等に関する調査・情報収集を精力的に行う。 ○ 電気自動車、燃料電池自動車、LNG車等の環境優良車の動向、これを普及させる ための環境整備、自動車の低燃費、低排出ガスとなる使い方及び環境・安全に係る機 器・装置等に係る情報その他の海外事情等について、精力的に調査及び情報収集に 努める。 ② 各種補助事業における燃費、CO2排出量分析調査等 「低炭素型ディーゼル車普及事業」、「先進トラック・バス導入促進事業」、「トラック輸送 の省エネ化補助事業」等の補助事業において、補助金執行団体又は補助対象事業者 として、その効果分析等のためのデータ収集・分析に遺漏なきを期す。 ③ 電動化技術、自動運転技術等の最新技術の動向把握 最近、急速に関心の高まっているこれら最新の技術開発、普及動向に注目し、必要 に応じ、これらに係る関係者の行う検討会、実証事業等にも積極的に参画、協力する など、精力的にその情報収集に努める。 ④ その他の調査研究事業 ア 次世代大型車開発・実用化促進に関する事業 国の行う次世代大型車開発・実用化促進事業(「高効率次世代ディーゼルエンジン」、 燃料多様性の確保(大型LNG車の実用化促進)、実走行時の燃費向上・排出ガス対 策)等への参画を目指す。 イ その他の調査、情報収集 国、関係団体等が行う自動車の環境対策等に関する調査研究・環境優良車の実証 実験等に伴うデータの分析調査、環境・安全機器・装置に係る調査・研究等について、 受託の機会が得られるよう努力するとともに、自主的な調査・研究にも、積極的に対応 する。 17 ⑵ 関係者との連携強化、積極的な情報発信 (基本的な考え方) ○天然ガス自動車の普及の項でも述べたように、その普及促進に当たっては、自動車運送事業者 のみならず、自動車メーカー、燃料供給事業者等との連携が欠かせない。 ○また、近時の施策の総合化、複合化に伴って、関係者も多岐にわたることが多くなることから、そ の推進に当たってはその間の連携強化が必要となってきている。 ○このような関係者の連携に当たっては、当機構としても、これまでのように受動的にその調査研 究の成果や培ったノウハウの提供を行うだけでなく、積極的に関係者間の架け橋となって、事業 をコーディネートする役割が求められるところとなっている。 ○更に、これまで当機構が環境優良車の普及活動やエコドライブの推進を通じて培ってきた様々 なノウハウを新しい技術導入への取り組みや各種実証実験等様々な場面で活用されるよう、積 極的に提供していく必要がある。 ○一方、環境対策は、直接収益に結びつかないことが多いこともあって、地道な息の長い取り組み を必要とする。そのような持続的な取り組みをサポートするためには、一般国民も含めた不断の 情報発信が欠かせないことから、積極的にこれに取り組む。 (具体的事業内容) ① 関係者との連携強化 ア 天然ガス自動車の普及促進に係る関係者間の連携 ○ 大型LNGトラックの開発・実証その他の各種実証事業等への参画・支援(既出 P.6) ○ 中小型CNG車エンジン開発・実証事業等への参画 (既出 P.7) ○ 「天然ガストラック普及促進協議会」等関係者連携・啓発活動(既出 P.7) イ 当機構の有するノウハウの提供・活用 (i) エコドライブに係るノウハウの提供・活用 エコドライブが、省エネ、CO2 削減、更には交通安全にとっても身近で、かつ、効果の大 きい取り組みであることは先述のとおりであり、当機構としてもその推進に引き続き積極的に 取り組んでいく。このため、当機構が「エコドライブ総合診断事業」やEMS機器の普及事業 を通じて培ってきたノウハウをあらゆる機会を通じ、提供すべく努力する。 (ii) 関係者間での環境優良車等の普及方策の検討、実証事業等への参画とノウハウの提供 ○ 環境優良車、電動化や自動運転技術等の先進技術の導入に係る関係者間の検討会や 実証事業等が行われることが多くなってきている。 ○ 当機構としても、必要に応じ、こうした検討会や実証事業に参画し、当機構が有するノウ ハウを積極的に提供するよう努力する。 (iii) その他のノウハウの活用 自動車の燃費測定、排ガス分析、CO2 排出量分析等当機構が有する環境・安全に係る ノウハウの提供・活用により、自動車運送事業者における排出ガス低減、燃費改善、安全 18 対策等のソフト面からの支援の強化に努力する。 ② 積極的な情報発信 ア 当機構主催によるセミナーの企画・開催(既出 P.7) これまで、当機構では、国、自治体、関係団体等が開催するイベントセミナーに参加して 情報発信を行うことが多かったが、29 年度は新たに自動車運送事業者等を対象に天然ガ ス自動車に係る情報提供、意見交換の場として「天然ガス自動車普及セミナー」を企画・開 催する。 イ 公共団体の主催するイベント・講演会その他の環境対策促進啓発活動への参画 国、地方公共団体、公益法人等で設置している環境優良車の普及促進等を目的とし た協議会に参加するとともに、これらの者が実施する講習会、展示会、セミナー等に積 極的に参加し、環境優良車普及の重要性、エコドライブの必要性・有用性、環境・省エ ネ機器の効果等について、関係者はもちろん、広く一般国民に対する啓発活動を行う。 ウ 一般向け情報発信 (i) 自動車環境講座の開催 希望する自動車運送事業者又は学校をはじめとする一般の方を対象に、平成22年 度より行っている自動車環境講座を引き続き実施し、自動車の環境問題について、啓 発活動を行うとともに、同講座の内容の充実と積極的な PR に努める。 (ii) 講演会等での発表、専門紙掲載等 ○ 調査研究事業の成果は、講演会等で発表し、専門紙、業界紙、機関誌(ニュース LEVO)等に掲載するなど、各種媒体において情報発信を行う。29 年度は、特に IEA からの海外情報をメールマガジンの形で発信させるなど、その充実強化を図る。 (既出 P.17) ○ 各種イベント等において、環境優良車やトラック事業者のCO2削減その他の環境対 策への取り組みについて、特に荷主や一般国民向けのPR活動を強化するなど、より 一層の積極的な情報発信とその充実強化に努める。 エ 環境優良車、環境・省エネ機器等に係る普及資料の作成・配布 環境優良車、エコドライブ等の普及促進の為のパンフレット、リーフレット等を作成し、 関係者に広く配布するとともに、各種イベント等を通じて普及啓発に努める。 「低炭素型ディーゼル車普及事業」、「物流 CO2 削減促進事業」その他各種補助事 業等の公募要領等を作成し、自動車・機器メーカー、自動車運送事業者及び関係者 等に配布・周知し、申請事務等の円滑化を図る。 当機構のホームページ、機関誌等の充実を図るとともに、環境優良車及び環境・省エ ネ機器の有効性等について、業界紙等への情報提供・掲載を行い、関係者の理解増 進に努める。 19 6 事業運営の適正化、効率化 (基本的な考え方) ○ 当機構は、平成 28 年度までの「環境ディーゼル車補助事業」を発展改正した 29 年度の「低 炭素型ディーゼル車普及事業」の執行団体に応募するとともに、28 年度より新たに参画した「物 流CO2削減促進事業」に、29 年度も引き続き応募し、これらに採択されたことから、これらの補 助金の執行体制の整備、要員の確保、資金の管理等補助事業の適正な執行に万全を期すこと とする。 ○ 当機構の財務基盤の強化、安定化を図るため、その収入の大宗を占める公益リース事業の効 率化、いわゆる一般リース事業(国の補助を活用しない機器等のリース事業)の活用その他のリ ース事業の充実強化を図るとともに、事業全般にわたるコスト縮減、適正なリース債権管理等同 事業の適正な運営に万全を期す。 ○ リース債権の管理に当たっては、現在の債権管理システムが、平成 30 年までにコンピュータ システムのサポート終了への対応等に伴うシステムの更新が必要となっていること及びシステム の機能、能力の維持向上を図るため、同システムの更新に着手する。 (具体的事業内容) ⑴ 環境優良車、環境・省エネ機器等の公益リース事業の充実・強化及び適正な運営等 ①公益リース事業の充実・強化 ○ 環境優良車及び車両動態管理システム等の安全・環境機器につき、引き続き公益リ ースを行う。 ○ また、自動車運送事業者等のニーズに応じ、国等の補助制度を活用しない、いわゆ る一般リースにも引き続き取り組む。 ○ 29 年度は、大型 CNG 車、車両動態管理システム等が補助制度の変更等に伴って、 新たに公益リースの対象となることから、これらについても公益リースを活用してもらえ るよう最大限努力する。 ② 公益リース事業の適正な運営 ○ 債権管理システムを活用して、リース債権の管理に遺漏なきを期す。また、同システ ムの平成 30 年の代替に向け、次世代の債権管理システムの構築を行う。 ○ 事業運営全般にわたって、より一層のコスト縮減等、その効率化・合理化に努める。 ○ リース事業執行のための組織・要員体制の整備、事務処理のための設備・備品等の 整備に万全を期す。 20 ⑵ 補助事業の適正な執行体制の整備 「低炭素型ディーゼル車普及事業」及び「物流CO2削減促進事業」の執行団体に採択 されたことから、同事業の適正な執行に万全を期す。このため、その組織体制の整備、 要員の確保、資金の管理等補助金執行体制の整備、その充実・強化を図る。 21
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