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(2004) 『水道事業の民営化:地域住民にとって望ましい水

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卒業論文
水道事業の民営化
∼地域住民にとって望ましい水管理のあり方とは∼
上智大学外国語学部英語学科
国際関係副専攻 下川雅嗣助教授
A9951425
岡本美恵子
2003 年 12 月
目次
はじめに
第一章
私たちにとっての水
第一節
命の源・生活の基盤
第二節
様々な水問題
第三節
国際的な水会議
第二章
水管理の変化
第一節
公共セクターによる管理とその問題
第二節
民営化推進派の主張
第三節
先進国での動き
第四節
発展途上国での動き
第三章
水ビジネスの特徴と問題点
第一節
民営化の様々な種類
第二節
水ビジネスの特徴
(1)安定性・将来性
(2)寡占状態
第三節
第四章
民営化反対派の主張
事例研究
第一節
先進国
(1)フランス
(2)イングランド・ウェールズ地方
( 3 ) 2001 年 以 降 の ウ ェ ー ル ズ 地 方
第二節
発展途上国
(1)ブエノス・アイレス
(2)マニラ
第三節
第五章
人間開発先進都市、ポルトアレグレ
事例研究のまとめと考察
第一節
事例の比較研究
第二節
水道事業民営化の根本的問題点
おわりに
参考文献
はじめに
近年、環境破壊や人口増加によって水の価値は高まり、様々な水問題に対して強い関心
が寄せられている。家庭用の水道水に注目してみると、発展途上国の都市部で進められて
い る 水 道 事 業 の 民 営 化 に 対 し て 、様 々 な 議 論 が 展 開 さ れ て い る 。今 年 3 月 に は 京 都 で 世 界
水 フ ォ ー ラ ム が 開 催 さ れ た が 、そ こ で も 、民 営 化 が 最 善 の 策 だ と 強 調 す る 国 際 金 融 機 関 と 、
民 間 セ ク タ ー の 導 入 に 反 対 を 唱 え る NGO な ど の 団 体 と 、両 者 の 主 張 は 真 っ 向 か ら 対 立 し 、
合意には至らなかったようだ。
水道事業は、これまで主に公共セクターによって管理されてきたが、設備老朽化や資金
不 足 が 課 題 と な っ て い た 。 そ こ で 19 世 紀 半 ば か ら 、 い く つ か の 地 域 で 民 間 セ ク タ ー 導 入
が行われ始めた。先進国においては、フランスとイギリスで大規模な民営化が行われてお
り、発展途上国では、国際金融機関の圧力を受ける形で、海外の多国籍企業による民営化
が急増している。現在、民間セクターによる水道サービスを受けている人は、世界人口の
5% に 過 ぎ な い が 、 こ れ か ら 民 間 セ ク タ ー の 導 入 が 加 速 す る 分 野 で あ る と 言 わ れ て い る 。
このように資金調達と効率的な運営を期待して推し進められた民営化ではあるが、実際
民営化されたところでは、貧困者層へのサービス提供が行われなかったり、料金が不当に
値上がりしたりするといった問題が多い。最終的に経営が困難になり、サービスを中止し
てその地域から撤退した企業もある。なぜこのような問題が起きたのだろうか。民間セク
ターを導入して、成功した例は全くないのだろうか。また、先進国であるフランスやイギ
リスではうまくいっているのだろうか。
以上のような問題意識のもと、本論文では先進国や発展途上国における水道事業民営化
の事例をいくつか挙げ、その問題の本質を探り、適正な価格ですべての人に行き渡る水道
事業を運営するための方法を提示する。
事例研究の結果分かったことは、先進国においても発展途上国においても、民営化には
いろいろなレベルの契約があり、料金の値上がりやサービス提供の偏りといった問題は、
あるレベルを超えた民営化が行われた際に起きているということである。つまり、資本投
資までも民間セクターに任せる民営化においては、適正な価格設定やサービス提供が実現
されることはほとんどない。この場合、規制機関が設けられていたとしてもあまり機能し
ないことが多い。一方、同じ民営化ではあっても、ある一部の運営や維持活動のみを民間
企業に委託するという契約であれば、費用を最小限に押さえることが可能になり、より多
くの人へサービス提供が行われる。以上のことから、効率的であり、尚且つ適正な価格で
すべての人に行き渡る水道事業は、資本投資における責任及び権限は自治体や住民が持ち
つ つ 、運 営 維 持 の み を 民 間 セ ク タ ー に 任 せ て い く こ と に よ っ て 、実 現 可 能 に な る と 言 え る 。
全体の構成としては、まず第一章で私たちにとっての水の重要性を確認し、その後、現
在の水問題やそれに対する国際会議などを紹介する。第二章では、公共セクターが行って
き た 水 管 理 に 民 間 セ ク タ ー が 導 入 さ れ て き た プ ロ セ ス や そ の 背 景 を 述 べ る 。続 く 第 三 章 で 、
水ビジネスには一体どういった特徴があるのか、そしてその問題点はどこにあるのかを探
る。これらのことを踏まえた上で、第四章では事例研究として、先進国からはフランス、
4
イ ン グ ラ ン ド・ウ ェ ー ル ズ 地 方 、2001 年 以 降 の ウ ェ ー ル ズ 地 方 を 取 り 上 げ る 。発 展 途 上 国
で は 、ア ル ゼ ン チ ン の ブ エ ノ ス・ア イ レ ス と 、フ ィ リ ピ ン の マ ニ ラ の 事 例 を 見 る 。そ し て 、
人間開発の面で先進的であるブラジルのポルトアレグレも取り上げてみたい。最後に、こ
れ ら の 事 例 を 比 較 し 、地 域 住 民 に と っ て ど の よ う な 水 管 理 が 望 ま し い の か と い っ た こ と を 、
第五章で述べる。
5
第一章
私たちにとっての水
第一節 命の源・生活の基盤
普段の生活においては、水の大切さを意識することはほとんどない。蛇口をひねれば自
然に出てくるものであり、公園や駅などでは水飲み場があるところも多く、そこまで高価
なものを利用しているという意識がないからだ。そのようなわけで、誰がどのように管理
し て い る の か と い う こ と を 考 え る こ と も 、あ ま り な い だ ろ う 。私 た ち に と っ て 水 は 、
「そこ
に あ る 」 こ と が 当 た り 前 と な っ て い る の だ 。 し か し 、「 そ こ に な い 」 こ と を 考 え て み る と 、
いかに水が私達の命を支えてくれているのかが分かる。
水は私たちの命の源である。人間にとって水がないということは死を意味し、他のもの
で代替することが不可能でもある。また、水がなければ食物を生産することさえ不可能で
あり、いうまでもなく工業の発展などなおさら無理である。こうして考えてみると、いか
に水が私たちの生活の基盤となっているかということが理解できる。このように私たちに
とって大変貴重なものであるが、最近では環境汚染や人口増加によって水の稀少性は高ま
る一方である。よって、水をいかに管理し利用するかということは、我々が普段考えてい
る以上に重要なことなのである。
第二節
様々な水問題
このように人間が生きていくのに必要不可欠な水だが、問題はたくさんある。まず、も
と も と 私 た ち が 飲 め る 水( つ ま り 淡 水 )は 、地 球 上 の 全 水 量 の 2.53% に す ぎ な い ( 表 1 参
照 )。 し か し 、 近 年 で は 環 境 汚 染 に よ る 水 質 の 悪 化 や 、 ダ ム 開 発 な ど に よ る 水 サ イ ク ル の
変化などによって、私たちが利用できる水は不安定なものになっている。国際河川のある
国々では、その水利権をめぐって争いが繰り広げられており、これからは水戦争の世紀だ
とも言われるほどだ。
6
表1 地球上の水の量
水 の 種 類
淡水
海水
地下水
うち淡水分
氷河等
湖水
うち淡水分
沼地・河川
その他
合計
合計(淡水)
量
(1,000km3)
1,338,000
23,400
10,530
24,064
176.4
91.0
13.62
330.38
1,385,984
35,029
全水量に
対する割合 (%)
96.5
1.7
0.76
1.74
0.013
0.007
0.001
0.022
100
2.53
全淡水に
対する割合 (%)
‐
‐
30.1
68.7
‐
0.26
0.036
0.904
‐
100
出所:国土交通省土地・水資源局水資源部
『日本の水資源(平成15年版)−地球規模の気候変動と日本の水資源問題−』
大蔵省印刷局、2003年58頁より作成。
日照りが続き水不足になる地域がある一方で、洪水や暴風などにより水が多すぎること
で 被 害 を 受 け て い る 地 域 も あ る 。 世 界 で は 、 約 11 億 人 も の 人 が 清 潔 な 水 へ の ア ク セ ス が
できていない(グラフ 1
参 照 )。 不 衛 生 な 水 は 病 気 の 原 因 と な り 、 水 起 因 疾 患 で の 死 亡 者
は 毎 年 700 万 人 に も の ぼ る と い う i 。
グラフ1 衛生的な水へのアクセスができない11億人の地域別割合
ラテンアメリカ/
カリブ諸島
6%
移行経済地域
4%
サブサハラアフリ
カ
25%
中東/北アフリカ
4%
東南アジア/パ
シフィック
42%
南アジア
19%
出 所 :UNICEF(http://www.childin fo.org/eddb/water/current.htm)より作 成 。
第三節
国際的な水会議
1992 年 、「 水 と 環 境 に 関 す る 国 際 会 議 」 が ア イ ル ラ ン ド の ダ ブ リ ン で 開 催 さ れ 、 同 年 、
「環境と開発に関する国連会議」がブラジルのリオジャネイロで開催された。前者の会議
で 発 表 さ れ た ダ ブ リ ン 宣 言 ( The 1992 Dublin Principles) に は 、「 水 を 経 済 財 と し て 管 理
することは、効率的で公平な利用を達成するための、そして水資源の保護を促進するため
の 重 要 な 方 法 で あ る 」 と 明 記 さ れ て い る ii 。 世 界 銀 行 が 発 行 し て い る パ ン フ レ ッ ト に よ る
7
と 、 ダ ブ リ ン 原 則 の 1 つ に は 、「 使 用 ニ ー ズ の 拡 大 は 、( 中 略 ) 経 済 原 理 に 基 づ い て 満 た す
必 要 が あ る 」と い う 項 目 が 含 ま れ て い る 。こ の 宣 言 に よ っ て 、世 界 銀 行 な ど の 国 際 機 関 は 、
水分野においても市場の役割を拡大するよう取り組み始めた。
こ の 二 つ の 会 議 を 受 け 、 新 た に 設 立 さ れ た 機 関 の 一 つ が 「 世 界 水 会 議 ( WWC: World
Water Council)」 で あ る 。 WWC は 、 国 際 機 関 や 巨 大 水 企 業 が そ の 中 心 部 を な す 民 間 シ ン
ク タ ン ク で 、 官 民 連 携 ( PPP: Public Private Partnership) を 推 進 す る こ と を 最 大 の 目 的
と し て い る 。 2000 年 3 月 に 第 2 回 世 界 水 フ ォ ー ラ ム が オ ラ ン ダ の ハ ー グ 開 催 さ れ た が 、
NGO な ど の 一 般 参 加 は 認 め ら れ て お ら ず 、 世 界 の 水 市 場 で ど う や っ て 利 益 を 得 る か と い
う内容が話し合われた。ここで取り決められたコンセンサスでは、水が「基本的人権(ど
の 人 も 水 に ア ク セ ス す る 権 利 を 持 っ て お り 、政 府 は そ れ を 保 障 せ ね ば な ら な い も の )」で は
な く 、「 基 本 的 ニ ー ズ ( 市 場 を 介 し て 必 要 な 分 を 提 供 す れ ば よ い も の )」 で あ る と 合 意 さ れ
た 。2003 年 3 月 に 京 都 で 開 催 さ れ た 第 3 回 世 界 水 フ ォ ー ラ ム で 、よ う や く NGO な ど の 参
加 が 実 現 し た 。し か し 、
「 官 民 連 携 」の セ ッ シ ョ ン で は 1 つ の 意 見 に ま と ま ら ず 、結 局 話 し
合いは並行線のまま終わったと言われている。
安全な水へのアクセスを促進させるための数値目標も国際レベルで設定されている。
2000 年 9 月 に 行 わ れ た ミ レ ニ ア ム ・ サ ミ ッ ト で は 、 ミ レ ニ ア ム 開 発 目 標 ( Millennium
Development Goals) 採 択 さ れ た 。 こ れ に よ る と 2015 年 ま で に 、 安 全 な 水 へ の ア ク セ ス
ができていない人を半減するということが目標とされている。
8
第二章
水管理の変化
1990 年 代 頃 ま で 公 共 セ ク タ ー が 管 理 す る も の だ と 考 え ら れ て い た 水 道 事 業 だ が 、民 間 セ
クターを導入するケースが増加している。国の大部分で民間セクターを導入しているのは
フランスとイギリスのみであるが、発展途上国を中心に多くの都市部で民間企業への業務
委託が行われ始めた。現在、公式な民間セクターによるサービス提供を受けている人口は
約 3 億 人 で 、 世 界 人 口 の 約 5% に 達 し て い る iii 。
第一節
公共セクターによる管理とその問題
従来、世界における水道管理はそのほとんどが公的機関によって実施されていた。水は
限りある資源であり自然からの恵みであるといった観念が強かった上に、水道事業の性質
上、公的独占によって運営されるのが最も効率的だと考えられていたからだ。
しかし近年、水道設備の劣化や資金不足という問題が深刻化してきた。まず先進国の例
を い く つ か 挙 げ る と 、ニ ュ ー ヨ ー ク で は 水 道 の 本 管 が 毎 年 600 本 も 折 れ て い る 。ロ サ ン ゼ
ル ス で は 、 製 造 後 100 年 経 っ て い る 水 道 配 管 網 が 今 だ 使 わ れ て い る iv 。 東 京 で も 、 明 治 時
代に作られた下水道管が現在も使われているケースがあり、古いものから改修が進められ
ている最中である v 。これまでは応急処置でどうにか維持してきたものが、限界に達しつ
つ あ る と こ ろ が 多 く な っ て い る の だ 。特 に 、水 道 管 が 早 く か ら 導 入 さ れ て い た 都 市 部 で は 、
施設の老朽化による高い漏水発生率という問題を抱えている地域が多い。
一方発展途上国では、設備が古く水質が悪いだけではなく、急激な都市化による人口増
加のために、現在のシステムでは水へのアクセスができていない人口が多い。さらに漏水
や 盗 難 が 多 い た め 無 収 率 vi も 高 い 。 こ の よ う な 状 況 に あ り な が ら 、 資 金 不 足 は 先 進 国 以 上
に 深 刻 だ 。 発 展 途 上 国 や 移 行 経 済 国 で は 、 持 続 的 な 発 展 の た め に は 年 間 1800 億 ド ル の 投
資 が 必 要 だ と さ れ て い る 。 し か し 、 2000 年 現 在 で は 750 億 ド ル し か 投 資 さ れ て い な い 状
態 で 、新 た な 資 金 調 達 源 を 探 す 必 要 に 迫 ら れ て い る vii 。こ の よ う に 先 進 国 に お い て も 発 展
途上国においても、資金不足という問題が生じてきたのだ。
第二節
民営化推進派の主張
公共セクターが抱えていた問題を解決するために出てきた政策が、民間セクター導入で
ある。水道事業はその性質上、他の公益事業よりも民営化への慎重な意見が根強かったも
のの、世界的な自由化の流れの中で、市場メカニズムに基づいて運営される民間セクター
の効率性が強調され始めた。
民間企業が水道事業に参入した場合、競争原理が働き需給バランスのゆがみが解消され
無駄がなくなるというのだ。民間の技術やノウハウを生かすことによって、サービスの質
を向上させることができる。年毎に予算をたてる公共部門と違い、比較的長い期間での計
画をたてることもできる。これらの作用によって水道料金は下がり、さらには、余った収
益をまだ水道設備が整っていない場所に再投資できるのだと言う。そして、自治体や国の
9
負担は減り、さらにもし水道事業をすべて民間セクターに売却すれば、政府にとっては大
きな収入にもなるというわけだ。
第三節
先進国での動き
そ も そ も 水 道 事 業 の 民 営 化 は 、1850 年 頃 民 間 セ ク タ ー へ の 委 託 を 開 始 し た フ ラ ン ス に 端
を発している。フランスのケースはこの時代特異なものであった。次の民営化が行われた
の は 、1989 年 に 初 の 完 全 民 営 化 に 踏 み 切 っ た イ ギ リ ス の イ ン グ ラ ン ド と ウ ェ ー ル ズ 地 方 だ 。
以後その他の先進国でも民営化の動きはあるものの、フランスやイギリスのように大規模
なものはあまり見られない。一部の地域で限定的に民間セクターを導入しているケースが
多く、経営がうまく行かず早くも民間セクターが撤退した地域も出ている。
ア メ リ カ で は 、1992 年 に ブ ッ シ ュ 政 権 下 で イ ン フ ラ 部 門 の 民 営 化 が 始 ま っ た 。現 在 民 間
セ ク タ ー が 水 道 事 業 に 導 入 さ れ て い る 地 域 は 、全 体 の 約 15% で あ る 。し か し 、す で に 失 敗
に終わってしまったケースもある。アメリカ最大の民営化が行われていたアトランタ市で
は 、20 年 間 の コ ン セ ッ シ ョ ン 契 約 が 結 ば れ て い た が 、契 約 を し て い た ス エ ズ 社 は よ い パ フ
ォ ー マ ン ス が 行 え ず 追 い 出 さ れ 、 契 約 は わ ず か 4 年 間 で 破 綻 し て し ま っ て い る viii 。
日本の水道事業は、地方自治体が大きな権限を握っており、民間委託は労務代替的な料
金徴収や検針などに限られていた。しかし、事業経営は厳しくなる一方で国や地方からの
補 助 金 に 頼 っ て い る 部 分 も 大 き い 。 そ こ で 何 度 か 水 道 法 が 改 正 さ れ 、 2002 年 4 月 に よ う
やく、浄水場においては維持管理や水質管理の技術業務をすべて民間企業に委託できるよ
う に な っ た ix 。 こ の 改 正 に よ っ て 、 群 馬 県 太 田 市 、 広 島 県 三 次 市 な ど が 浄 水 場 に 限 り 民 間
企 業 へ の 全 面 委 託 に 踏 み 切 っ て い る 。三 次 市 で は 2003 年 1 月 に 委 託 を 開 始 し 、そ の 結 果 、
浄水場の運営費は半減したと報告されている x 。
第四節
発展途上国での動き
1990 年 以 降 に 水 道 事 業 の 民 営 化 が 爆 発 的 に 増 加 し た の は 、主 に 発 展 途 上 国 の 都 市 部 に お
け る も の で あ る 。 実 際 、 表 2 が 示 す よ う に 発 展 途 上 国 に お い て は 、 1990 年 以 前 の 6 年 間
で 民 営 化 契 約 が 行 わ れ た ケ ー ス は た っ た 8 件 で あ っ た の に 対 し 、 1990∼ 97 年 の 契 約 数 は
97 件 に も な る 。
10
表2 発展途上国での民営化件数
総額 (100
契約数
契約増加率 万ユーロ) 増額増加率
全発展途上国
1984-90年
1990-97年
地域別 (1990-97年)
東アジア
東ヨーロッパ/中央アジア
ラテンアメリカ/カリブ海地域
中東/北アフリカ
サブサハラアフリカ
8
97
1137%
30
15
40
4
8
300
25,000
7900%
12,000
1,500
8,300
3,300
37
出所:Prinwass, Overview (http://www.geog.ox.ac.uk/ prinwass/overview.shtml)。
発展途上国でこれほど民営化が増加したのはなぜだろうか。その要因として、世界銀行
や IMF な ど の 国 際 金 融 機 関 か ら 圧 力 を 受 け た こ と が 挙 げ ら れ る 。多 く の 発 展 途 上 国 は 国 際
金融機関からの援助を受けているが、その債務返済が苦しくなっている。そこで、国際金
融機関は確実に返済をしてもらうために、新規融資に条件をつけるなどして、発展途上国
の支出をできる限り少なくさせようとしているのだ。公的事業を民営化させるのはその効
果的な方法の 1 つである。
例 え ば 、世 界 銀 行 は 、
「 構 造 調 整 プ ロ グ ラ ム 」の 条 件 の 一 つ に 水 道 の 民 営 化 を 入 れ る こ と
が あ る 。 こ れ は 、 世 界 銀 行 の 傘 下 に 入 っ て い る 国 際 金 融 公 社 ( IFC: International Fund
Corporation) を 通 し て 行 わ れ る こ と が 多 い 。 IFC は 、 主 に 民 間 セ ク タ ー を 支 援 す る こ と
で 経 済 成 長 を 促 す こ と を 目 標 に し て い る 機 関 で 、水 に 関 す る 事 業 に こ れ ま で 約 5 臆 ド ル も
支援してきた。世界銀行は、公共か民間かという古い二極対立の問題ではないと言ってい
る。協力して資金を出し合い、すべての人に安全な水を提供するという目標を共に達成し
ていこうとも謳っている。しかし、資金を出すことで、経済原理に基づいたメカニズムを
強要するのなら、資金面では協力できていても、主権は民間企業に握られてしまうという
ことになりかねない。
IMFは 、 2000 年 度 中 に 貸 し 付 け た 40 カ 国 の う ち の 12 カ 国 に 、 水 道 民 営 化 も し く は コ
スト回収の条件をつけていた。
「 貧 困 軽 減 と 成 長 促 進 」と い う 計 画 に 沿 っ て 、そ の 大 部 分 が
行 わ れ た xi 。ア ジ ア 開 発 銀 行( ADB: Asian Development Bank)も 、民 間 セ ク タ ー の 導 入
によって市場原理が働くため、水の高価値利用が実現し事業の効率性が増すという点を強
調 し て い る 。ま た 、EU傘 下 の ヨ ー ロ ッ パ 投 資 銀 行 や 欧 州 開 発 銀 行 も 、同 様 の 政 策 を 取 っ て
いる。
発 展 途 上 国 側 と し て は 、水 道 事 業 以 外 の 分 野 で も 現 在 必 要 な 投 資 を し て も ら う た め に は 、
世 界 銀 行 や IMF な ど の 方 針 に 従 わ ざ る を 得 な い 。こ う し て 、公 共 セ ク タ ー で の 運 営 が 順 調
に行っているにも関わらず、住民の反対を押し切りながら民営化に踏み切る地域もある。
国別に見てみると、アルゼンチン、フィリピン、マレーシアなどで巨額のプロジェクト
が 実 施 さ れ て い る ( 表 3 参 照 )。
11
表3 水道事業への民間投資総額
トップ5の発展途上国 (1990-97年)
総額
プロジェクト
(100万ユーロ)
件数
国
アルゼンチン
6,837
7
フィリピン
6,435
3
マレーシア
5,362
6
トルコ
1,360
2
メキシコ
660
12
出所:Prinwass, Overview
(http://www.geog.ox.ac.uk/ prinwass/overview.shtml)。
12
第三章
第一節
水ビジネスの特徴と問題点
民営化の様々な種類
一口に水道事業の民営化といっても、実は様々な形態がある。どの形態を採用するかに
よって、民営化による影響は大きく異なる。よって、ここではその違いを明らかにしてお
く。表 4 では、資産所有、資本投資、運営・維持のそれぞれの分野において、公共セクタ
ー と 民 間 セ ク タ ー の ど ち ら が 責 任 及 び 権 限 を 持 っ て い る か で 、大 き く 5 つ の 事 業 形 態 に 分
類している。
表4 民営化形態ごとの主な責任所在
サービス契約/
リース契約/
コンセッション
マネジメント契約 アフェルマージュ契約
契約
BOTタイプ
売却/
完全民営化
資産所有
公共
公共
(リース契約では
民間が賃貸借)
公共
新規施設のみ
民間
民間
資本投資
公共
公共
民間
新規設備のみ
民間
民間
運営・維持
民間/公共
民間
民間
新規設備のみ
民間
民間
契約期間
1-10年
8-15年
25-30年
20-30年
不定
出所:Budds, Jessica and McGranahan, Gordon, Are the Debates on Water Privatization Missing the Point?
Experiences from Africa, Asia and Latin America Environment and Urbanization , Vol.15, No.2, 2003, p89. と、
北野尚宏・有賀賢一「上下水道セクターの民営化動向―開発途上国と先進国の経験―」『開発金融研究所報』
2000年7月第3号、2000年、68頁との両方により作成。
・ サ ー ビ ス 契 約 / マ ネ ジ メ ン ト 契 約:修 理 や 料 金 徴 収 な ど 特 定 分 野 に お け る 運 営・維 持
活 動 を 、一 定 期 間 民 間 企 業 に 委 託 す る 。サ ー ビ ス 契 約 の 方 が 、マ ネ ジ メ ン ト 契 約 よ り
も契約期間が比較的短い。
・ リ ー ス 契 約 / ア フ ェ ル マ ー ジ ュ 契 約:民 間 企 業 が 運 営・維 持 の あ ら ゆ る 分 野 を 担 当 す
る。リース契約では、民間企業が公共セクター所有の資産を賃貸借する。
・ コ ン セ ッ シ ョ ン 契 約:運 営・維 持 だ け で は な く 、長 期 的 な 資 本 投 資 計 画 ま で も 民 間 企
業 に 任 せ ら れ る 。つ ま り 、水 道 事 業 全 体 の 経 営 責 任 が 民 間 セ ク タ ー に 委 ね ら れ る こ と
になる。新たに作られた資産は、契約終了後に返却される。
・ BOT( Build-Own-Transfer)タ イ プ:契 約 期 間 内 に お い て 、民 間 企 業 が 建 設 、所 有 、
運 営・維 持 活 動 を 行 い 、契 約 終 了 後 に そ の 設 備 を 返 却 す る 。大 規 模 な 拡 張 事 業 を 行 う
場合には、この契約が多い。
・ 売 却 / 完 全 民 営 化:資 産 を 含 む 事 業 の す べ て を 民 間 企 業 に 売 却 す る 。こ の タ イ プ の 契
約 は め ず ら し く 、イ ギ リ ス の イ ン グ ラ ン ド と ウ ェ ー ル ズ 地 方 、そ し て チ リ の 一 部 く ら
13
いである。
国 際 機 関 が 1990 年 代 以 降 推 し 進 め よ う と し て い る 官 民 連 携 は 、 政 府 が 民 間 企 業 と 公 式
的に契約を結ぶものである。具体的には、民間企業が少なくともリース契約/アフェルマ
ージュ契約以上の支配権を持っているもので、主にコンセッション契約を指していると考
え ら れ る 。一 方 、官 民 連 携 が 叫 ば れ る 以 前 か ら 言 わ れ て い た「 民 間 セ ク タ ー の 参 加( PSP:
Private Sector Participation)」 は 、 サ ー ビ ス 契 約 / マ ネ ジ メ ン ト 契 約 か ら 売 却 / 完 全 民
営化までのすべてを指し、さらには非公式的な契約も含んでいた。
こ の 論 文 で の「 民 営 化 」と は 、
「 民 間 セ ク タ ー の 参 加:PSP」が 指 し て い る も の と 同 じ も
のを、つまりすべてのレベルにおける民間セクターの導入を指す。資産までも売却する形
態は、特に「完全民営化」もしくは「売却」と表現することにする。
第二節
水ビジネスの特徴
(1)安定性・将来性
水は人が生きていくために絶対に必要なものなので、その需要が減少することはまずな
い 。そ の 上 、世 界 全 体 に お け る 水 不 足 や 都 市 化 に よ る 水 供 給 の 課 題 も 深 刻 化 し て き た た め 、
これから水の価値は高まっていく一方である。よって、水供給サービスはビジネスにとっ
て非常に安定しており、将来的にも大きなチャンスのある事業と言える。
仮に、気候や為替変動などのリスクによりサービス提供が危うくなったとしても、他の
事業よりも政府からの援助を受けやすい。その上、民間セクターの進出にあたっては、ほ
ぼ必ずと言ってよいほど国際金融機関からの援助がある。その場合、民間セクターのリス
クを最小限にとどめるために、政府がその企業の利潤を保証することが国際金融機関から
も求められるのである。これらのことから、いよいよリスクが少ない分野だと言える。
(2)寡占状態
まず世界的に見て水企業の数は少なく、世界の水市場は極度の寡占状態となっている。
フ ラ ン ス の 巨 大 総 合 サ ー ビ ス 会 社 で あ る ス エ ズ 社 と ビ ベ ン デ ィ 社 xii が 、特 に そ の 支 配 領 域
を 広 げ て お り 、こ の ト ッ プ 2 社 で 世 界 中 の 150 カ 国 2 億 人 以 上 に 供 給 し て お り 、世 界 水 市
場 の 実 に 70% の 売 上 を 占 め て い る xiii 。 そ の 後 に 、 イ ギ リ ス の テ ム ズ ウ ォ ー タ ー 社 ( 親 会
社 は ド イ ツ の RWE)な ど が 続 く 形 と な る 。表 5 は 、水 の 主 な 民 間 企 業 と そ の 業 績 を 示 し て
いる。
14
表5 水道・下水部門の主な民間企業
企業名
国
スエズ社
ビベンディ社
テムズ・ウォーター社
アグアス・デ・バルセロナ社
SAURインターナショナル社
仏
仏
独
西
仏
プロジェクト件数*
水の売上高 世界中の顧客数
投資額*
(件)
(100万人)
(10億ユーロ)
(10億US$)
(1990-2001年) (1990-2001年)
(2002年)
(2002年)
44
18.1
10.0
115
25
3.1
13.6
110
13
3.3
2.7
37
14
10.6
n/a
n/a
5
38
2.5
36
* 投資は、そのプロジェクトにかかった全投資を示しており、会社個別のものではない。
また、小さなプロジェクトでここに含まれていないものもいくつかある。
出典:Budds, Jessica and McGranahan, Gordon, Are the Debates on Water Privatization Missing the Point?
Experiences from Africa, Asia and Latin America
Environment and Urbanization , Vol.15, No.2, 2003, p.105.を邦訳したもの。
その他に比較的小規模のものとして、総合サービス会社ではなく水関連の様々な事業に
特化した企業が複数ある。これらの専門企業を買収、または子会社化しようと、大手数社
の駆け引きが繰り広げられている状況だ。
第三節
民営化反対派の主張
民間セクター導入を反対している団体の一番の主張は、水が基本的人権であるという考
え方に基づいている。つまり、お金を持っていない人も含めたすべての人が、水へアクセ
ス す る 権 利 を 与 え ら れ る べ き だ と い う 主 張 で あ る 。水 を「 天 の 恵 み 」と 捉 え 、
「企業による
水 道 事 業 そ の も の が 、生 命 や 人 間 性 の 尊 厳 に 対 す る 許 し 難 い 挑 戦 で あ る 」 xiv と 主 張 す る 人
もいる。
利益を最大化し、株主へより高い配当金を払うことが目的の民間セクターでは、料金の
払えない人へサービスを提供するインセンティブがわかない。料金が回収できなければ利
益 を 上 げ る こ と が で き な い か ら だ 。そ こ で 、ス ラ ム や 不 法 占 拠 区 な ど に 住 む 貧 困 地 域 に は 、
設 備 拡 大 の た め の 投 資 も し な い の で あ る xv 。ま た 、競 争 の 働 き に く い 水 道 事 業 に お い て は 、
不 当 に 水 道 料 金 が 吊 り 上 げ ら れ る こ と が 多 い 。し か も 住 民 に 対 し て の 説 明 責 任 が な い た め 、
彼らに相談が行われずに値上がりしてしまうのだ。さらに、総合サービス会社が水道事業
を 行 っ て い る 場 合 、 水 道 事 業 で 上 が っ た 利 益 を 他 の 分 野 に 投 資 す る こ と も あ る と い う xvi 。
以上のように、民間セクターに任せてしまうと、すべての人にとっての安全な水へのア
クセスが実現されない。よって民間セクターに任せるのではなく、政府や自治体などの公
共部門が運営すべきだというのである。
15
第四章
事例研究
世界では実際にどのような水道の民営化が行われ、どのような結果が出ているのだろう
か。この章では、民営化が実施されている主な地域を取り上げ、前章で取り上げた一般的
な特徴や反対派の主張などを考慮に入れながら、各事例を研究する。
事例を見ていくにあたって特に注目する項目は、以下の 3 点である。
・ 企業の導入は競争的であるか
・ 水道料金の設定・変更は公平で納得のいくものであるか
・ 規制機関はその機能を果たしているか
第一節
先進国
まず先進国の事例としては、国の大部分で積極的に民間セクターの導入を行っている以
下 の 3 地 域:
( 1 )19 世 紀 半 ば か ら 民 間 企 業 を 水 道 事 業 に 導 入 し て き た フ ラ ン ス 、
( 2 )1989
年 に 完 全 民 営 化 さ れ た イ ン グ ラ ン ド ・ ウ ェ ー ル ズ 地 方 、( 3 ) 2001 年 以 降 NPO 法 人 が 水
管理を行っているウェールズ地方、を取り上げる。
(1)フランス
フ ラ ン ス に お け る 水 道 事 業 の 民 営 化 は 、 ジ ェ ネ ラ ル デ ゾ ー 社 が 設 立 し た 1853 年 に ま で
さ か の ぼ る 。そ れ 以 降 、150 年 の 歴 史 を か け て 少 し ず つ 移 行 し て き た よ う だ 。水 道 事 業 は 、
地方分権化政策により、地方自治体に多くの権限が与えられている。設備の売却は認めら
れていないので完全民営化は存在しないが、公共セクターといくつかの民営形態が混在し
て い る 状 態 だ 。 95 あ る 郡 の う ち 92 の 水 道 事 業 に 何 ら か の 形 で 民 間 セ ク タ ー が 導 入 さ れ て
お り 、 全 人 口 の 約 80% が 民 間 セ ク タ ー か ら 水 道 サ ー ビ ス を 受 け て い る xvii 。
現在採用されている主な事業形態は、以下の 4 つに分類できる。
・ 自治体での運営:事業全体の責任を自治体が請け負う
・ ア フ ェ ル マ ー ジ ュ 契 約 :「 公 設 民 営 」 で 、 施 設 の 管 理 運 営 は 市 町 村 が 担 当 し 、 民 間 企
業 は 管 理 運 営 の み を 委 託 さ れ る ( 5∼ 10 年 契 約 )
・ コ ン セ ッ シ ョ ン 契 約:民 間 企 業 が 管 理・運 営 に 加 え 、新 規 設 備 の た め の 投 資 も 行 う( 10
∼ 30 年 契 約 )
・ 第三セクター方式:官民合弁会社を設立し、市町村も資本の一部を負担する
150 年 前 に 民 営 企 業 へ の 委 託 が 始 ま っ た 頃 か ら 主 に と ら れ て き た 形 態 は 、 ア フ ェ ル マ ー ジ
ュ契約である。自治体での運営は小さな町や村で行われている。コンセッション契約は最
近になって出てきた形態であるが、あまり投資されない点が問題になっている。
規 制 機 関 と し て は 、 国 と 地 方 自 治 体 で 監 視 の 役 割 を 分 担 し て い る 。 国 は 水 質 が EU 指 定
の水準に適合しているかを確認したり、自治体と民間企業の契約が適正なものであるか監
督したりする。一方で、料金や細かい事業内容については地方自治体に任させている。
契約は競争入札で行われているが、企業数や各企業の市場規模を見ると、必ずしも競争
16
が 行 わ れ て い る 環 境 と は 言 え な い 。 1993 年 ま で は 、 大 手 の 民 間 水 道 会 社 8 社 と 小 規 模 会
社 が 多 数 存 在 し て い た 。し か し 、90 年 代 か ら 企 業 同 士 の 合 併 に よ る 企 業 の 大 型 化 が 進 ん だ 。
現 在 で は 、ス エ ズ 社 と ビ ベ ン デ ィ 社 が 多 く の 地 域 で 支 配 権 を 獲 得 し て お り 、こ の 2 社 が フ
ラ ン ス 本 土 で 85% の 市 場 を 持 っ て い る xviii 。 ス エ ズ 社 と ビ ベ ン デ ィ 社 同 士 で 、 も し く は そ
れらの企業が他の水道企業と共同で、新たな子会社を設立することで競争を避けることも
あ る xix 。
民 間 部 門 に お け る 水 質 基 準 の 遵 守 率 は 、公 共 部 門 と 比 べ 4 倍 よ か っ た と 言 わ れ て い る xx 。
では、料金はどうだろうか。表 6 は、自治体、代理委託/民間、官民合弁会社それぞれの
業 務 形 態 に よ っ て 提 供 さ れ る 水 の 価 格 を 、1994 年 か ら 1999 年 ま で の 6 年 間 で 比 較 し た も
のである。ここでいう「代理委託/民間」には、アフェルマージュ契約のものとコンセッ
ション契約のものが両方含まれているため、その両者の水料金の違いは読み取れない。し
か し 、自 治 体 が 運 営 す る よ り も 、民 間 会 社 や 官 民 合 弁 会 社 の 方 が 、10% 前 後 高 い 料 金 と な
っていることは明らかだ。
表6 業務形態別の水道料金(1994∼1999年)
(年間消費量120立方メートルの平均価格、単位: フランスフラン、水道・下水)
運営方法
自治体
代理委託/民間
官民合弁会社
1994年
1,489
1,784
1,734
1995年
1,621
1,908
1,812
1996年
1,716
1,993
1,963
1997年
1,803
2,050
2,014
1998年
1,848
2,100
2,076
1999年
1,841
2,100
2,101
出所:ホール・ディビッド「Water in Public Hands」公共サービス国際研究ユニット(PSIRU)、2001年。
http://www.jichiro.gr.jp/psi_world/news...licy/water_in_public_hands/contents.htm
(2)イングランド・ウェールズ地方
数少ない完全民営化が実施されているのが、イギリスのイングランド地方とウェールズ
地 方 だ 。 イ ギ リ ス の 水 管 理 は 、 元 々 地 方 自 治 体 が 行 っ て い た が 、 1974 年 に 10 の 水 管 理 公
社( Water Authorities)に 統 合 再 編 成 さ れ た 。こ の 10 公 社 が 完 全 民 営 化 さ れ た の が 、1989
年 の サ ッ チ ャ ー 政 権 下 で あ る 。2014 年 ま で の 25 年 間 と い う 長 期 の 契 約 が 締 結 さ れ た 。政
府は当時、財政悪化に苦しめられていたため、水道事業を民営化することで支出削減がで
き 、売 却 に よ る 政 府 収 入 を 得 ら れ る こ と が 大 き な 魅 力 だ っ た xxi 。実 際 こ の 政 府 収 入 は 、52
億 ポ ン ド ( 約 1 兆 円 ) に も な っ た と 言 わ れ て い る xxii 。 ま た 、 ECの 水 質 基 準 も 厳 し く 、 そ
の基準を守るには巨額の投資が必要で、それが政府にとって負担が大きかったのも、理由
の1つだった。
10 の 公 社 が そ れ ぞ れ に 完 全 民 営 化 さ れ た こ と で 、他 企 業 と の 比 較 と い う 間 接 的 な 競 争 が
可 能 な 環 境 で あ る 。し か し 、1991 年 の 取 り 決 め に よ る と 、競 争 入 札 が 実 施 さ れ る た め に は 、
そ の 通 知 が 10 年 前 に は 予 告 さ れ て い な け れ ば な ら な い と い う こ と に な っ て い る 。 こ れ に
よ っ て 、 新 た な 入 札 に よ る 競 争 の 可 能 性 は 少 な い xxiii 。
料金制度に関しては、契約時にプライス・キャップ(料金上限規制)という規制が設け
17
ら れ た 。 こ こ で 採 用 さ れ た の は 、( RPI+ K) 公 式 と い う も の で 、 こ れ は 、 小 売 物 価 価 格 上
昇 率 ( RPI) よ り も K%上 乗 せ し て 水 道 料 金 を 引 き 上 げ る こ と が 許 さ れ る と い う も の で あ
る 。 表 7 は 、 各 民 間 会 社 に 要 求 さ れ た 指 数 K の 値 で あ る 。 1990/ 91 年 か ら 1994/ 95 年
の 間 で は 、年 間 3.0% か ら 7.0% 、1995/ 96 年 か ら 1999/ 2000 年 の 間 で は 、年 間 2.0% か
ら 5.5% の K 値 が 認 め ら れ て い た こ と が 分 か る 。
表7 各水道会社の指数Kの値 (1989年8月2日公表)
会社名
ANGLIAN
NORTH WEST
NORTHUMBRAIN
SEVERN TRENT
SOUTH WEST
SOUTHERN
THAMES
WELSH
WESSEX
YORKSHIRE
平均
1990/91-1994/95年
(%)(年間)*
5.5
7.0
5.0
5.5
5.5
6.5
6.5
6.5
4.5
3.0
5.0
1995/96-1999/2000年
(%)(年間)*
5.5
3.0
5.0
2.0
5.0
5.0
5.5
4.5
3.0
3.7
*これらの値は、最終的に10の各企業によって合意されたものを示す。
出所:野村宗訓「イギリス水道事業の民営化」『公益事業研究』第45巻、第1号、1993年、37頁。
こうして上限が設けられたわけだが、問題点もあった。まず、採用された公式が、通信
部 門 が 民 営 化 さ れ た 際 に 導 入 さ れ た( RPI− X)公 式 で は な か っ た こ と で あ る 。こ れ は 、水
道料金が、通信部門の料金より大きく値上がりされることが、許容さることを意味する。
ま た 、 各 企 業 で Kの 値 が 異 な る こ と も 問 題 で 、 こ れ で は 企 業 間 の 競 争 が 促 さ れ な い ば か り
か 、 地 域 に よ っ て 住 民 の 負 担 が 変 わ っ て く る こ と に も な る xxiv 。
契約後の変化としては、以下のような事実が明らかになっている。完全民営化された
1989 年 に 比 べ て 、 そ の 3 年 後 に は 26∼ 46% の 料 金 値 上 が り が 実 施 さ れ て い た 。 そ し て 6
年 後 に は 、 109% も 増 加 し て い た 。 こ の よ う な 急 激 な 料 金 の 値 上 が り に よ っ て 給 水 を 停 止
せ ざ る を 得 な く な っ た 利 用 者 数 が 、 1991 年 に は 21,000 件 に の ぼ り 、 前 年 と 比 べ て 1.77
倍 も 上 昇 し て い た xxv 。
民営化後は全般的にサービスの質が向上し、設備投資も行われ漏水が減ったといったよ
うな成果もあがっていた。しかし一方で、上記のような価格上昇の背景として、株主への
高 配 当 や 役 員 へ の 高 報 酬 と い う 問 題 も あ っ た 。 表 8 で は 、 完 全 民 営 化 さ れ た 年 ( 1989 年 )
と 比 較 し た 、1992 年 時 点 に お け る 各 民 間 企 業 会 長 の 報 酬 額 と そ の 増 加 率 が 、水 道 料 金 の 増
加率と共に掲載されている。
18
表8 各水道企業の会長給与(1992年) (増加率は1989年と比較したもの)
シェアー
水道料金
会長報酬
会社名
会長
報酬(£)
オプション* 増加率(%) 増加率(%)
THAMES
R WATTS
160,000
265,000
30
290
SEVERN TRENT
J BELLAK
149,000
161,000
31
193
NORTH WEST
D GROVE
144,000
260,000
29
206
WELSH
J JONES
143,000
290,000
37
211
SOUTHERN
W COURTNEY
142,000
185,000
29
202
WESSEX
N HOOD
128,000
225,000
32
198
YORKSHIRE
Sir JONES
119,000
137,000
26
105
ANGLIAN
B HENDERSON
91,000
80,000
46
107
SOUTH WEST
K COURT
89,000
137,000
32
117
NORTHUMBRAIN Sir STRAKER
51,000
62,000
27
28
* シェアーオプションとは、最高額の報酬を受け取る会長が、その報酬を株式で受け取ること。
出所:財団法人自治体国際化協会「イングランドとウェールズの水道」
『CLAIR REPORT』No. 077、1993年、26頁。 http://www.clair.or.jp/j/forum/c_report/cr077m.html
地 域 独 占 体 制 と な っ て い た こ れ ら の 企 業 の 事 業 活 動 を 監 視 ・ 規 制 す る た め に 、 OFWAT
( Office of Water Services) と い う 公 的 機 関 が 設 置 さ れ て い た 。 OFWATは 主 に 、 顧 客 サ
ービスや水質、財務状況などをチェックしていた。しかし、料金の値上がりや会長の高報
酬 と い う 問 題 に き ち ん と 取 り 組 ん だ の は 、 民 営 化 さ れ て 10 年 後 の 1999 年 の こ と で あ る 。
OFWATは 各 企 業 に 対 し 平 均 12% の 料 金 引 き 下 げ を 求 め た 。 こ れ に よ り イ ン グ ラ ン ド ・ ウ
ェールズ地方の水道料金は、他のヨーロッパ地域とほぼ同レベルの水準に戻った。ただ、
企業に対する様々な罰則を厳しくすることによって、それが料金の値上がりに転嫁される
こ と を 常 に 恐 れ な け れ ば な ら な い と い っ た 、 複 雑 な 事 情 も あ っ た よ う だ xxvi 。
( 3 ) 2001 年 以 降 の ウ ェ ー ル ズ 地 方
ウ ェ ー ル ズ 地 方 で は 、1997 年 に 発 足 し た 労 働 党 ブ レ ア 政 権 が 、民 営 化 後 の 公 益 事 業 が 巨
額 な 利 益 を 上 げ て い る こ と を 問 題 視 し 、 追 加 的 な 課 税 を 実 施 し た 。 さ ら に 、 OFWAT設 立
以降、株価下落や格付けの引き下げによって水道企業の経営は悪化していた。そのような
中 、2001 年 5 月 に 新 た に 設 立 さ れ た の が 、非 営 利 団 体( NPO)の 水 道 会 社 Glas Cymruで
あ る 。Glas Cymruは 、一 般 の 株 式 会 社( Company Limited by Shares)と 違 い 、Company
Limited by Guarantee( CLG)と い う 形 態 を と っ て い る 。そ の 大 き な 特 徴 は 、買 収 に 必 要
な 18 億 ポ ン ド ( 3,420 億 円 ) の 資 金 を ほ ぼ 全 額 社 債 発 行 に よ っ て 集 め た こ と で あ る xxvii 。
こ れ は デ ッ ト ・ フ ァ イ ナ ン ス ( debt finance) で あ る が 、 水 道 事 業 は 、 需 要 が ほ ぼ 一 定
であり安定しているということで、国際格付け組織からも、ある程度の評価をもらってい
る。この形態が可能にする、株式会社と大きく異なる効果は、株主が存在しないために利
潤 を 配 当 金 に 回 す 必 要 が な い と い う こ と だ 。こ れ で 、投 資 を 増 加 さ せ る こ と が 可 能 に な り 、
高すぎる株主への配当金という問題点はクリアされている。
19
もう一つの大きな特徴としては、効率的な運営によるコスト削減のために、業務の大半
を民間企業に外部委託している点が挙げられる。しかし、主な責任・権限は企業に与えら
れ て お ら ず 、 事 業 全 体 の 資 本 投 資 の 責 任 は あ く ま で Glas Cymru に あ る 。 表 9 を 見 る と 、
1 つの企業に委託するのではなく、業務内容ごとに細分化していることが分かる。契約期
間 も 3、 4 年 と 短 め で あ り 、 こ れ は サ ー ビ ス 契 約 / マ ネ ジ メ ン ト 契 約 と い う レ ベ ル の 民 営
化である。
表9 Glas Cymruが実施している業務外部委託
業務内容
委託先
契約期限
水道供給・汚水処理
United Utilieis
2005年3月31日
Wessex Water
Swansea CC
下水施設運営
2004年3月31日
Carmarthenshire CC
PGS Atlantic Power
顧客サービス
Thames Water
2005年3月31日
水質検査
Severn Trent Water 2005年7月31日
ITサービス
Logica
2005年3月31日
出所:清水誠「デットファイナンスによるNPO水道会社の誕生」
『日経研月報』9月号、2002年、55頁。
GlasCymru の 成 果 に つ い て は 、こ れ か ら 結 果 を 見 て い く 段 階 で あ る が 、新 た な 水 道 事 業
管理の方法として内外から関心が寄せられている。
第二節
発展途上国
発展途上国ではガボンのように、マネジメント業務を民営化したことによって、普及率
の上昇と料金の引き下げが共に実現した地域もいくつか報告されている。一方で、国際金
融機関からの提案による売却やコンセッション契約が失敗し、大きな被害を被っている地
域 は 数 多 い 。特 に 有 名 な 例 と し て は 、南 米 ボ リ ビ ア の コ チ ャ バ ン バ が 挙 げ ら れ る 。IMF と
世界銀行の構造調整のもとで完全民営化された水道事業体が、料金を急激に値上げし、大
規模な住民デモにまで発展した。インドネシアでも様々な水関連プロジェクトに世界銀行
が介入しており、その流れの中でジャカルタの水供給公社は、海外多国籍企業とのコンセ
ッション契約を結ばざるを得ない状況に追い込まれた。現在、水道料金や雇用など様々な
問題が発生している。
この節では、国際金融機関によってコンセッション契約を締結させられたが、失敗して
企 業 が 撤 退 し た 例 で あ る( 1 )ア ル ゼ ン チ ン の ブ エ ノ ス・ア イ レ ス と 、
( 2 )フ ィ リ ピ ン の
マニラを取り上げる。
(1)ブエノス・アイレス
ア ル ゼ ン チ ン で の 公 益 事 業 の 民 営 化 は 、1989 年 、カ ル ロ ス・メ ナ ム 内 閣 が 国 家 行 政 改 革
法 ( National Administrative Reform Law)を 制 定 し た こ と に 始 ま る 。当 時 、ア ル ゼ ン チ
20
ンはハイパーインフレーションに陥っており、公益事業は緊急課題とされ、インフレ脱却
の 解 決 策 と し て 民 営 化 が 推 し 進 め ら れ た 。 水 道 事 業 が 民 営 化 さ れ た の は 、 1993 年 5 月 だ
が 、そ れ 以 前 の 1992 年 8 月 に 電 気 が 、同 年 12 月 に ガ ス が そ れ ぞ れ 民 営 化 さ れ て い る 。さ
ら に 、 地 下 鉄 ( 1994 年 1 月 )、 電 話 ( 1999 年 2 月 ) も 後 に 続 い た xxviii 。
水 道 事 業 が 民 営 化 さ れ る 1993 年 ま で は 、公 益 事 業 法 人 で あ る OSN( Obras Sanitarian de
la Nacion) と い う 機 関 が 運 営 を し て い た 。 都 市 貧 困 層 は OSNか ら 無 料 で 水 を 得 る こ と の
で き る と い う シ ス テ ム が あ っ た よ う で あ る 。ま た 、1992 年 当 時 、水 道 事 業 の 経 営 は 黒 字 で
あ っ た と い う こ と も 報 告 さ れ て い る xxix 。
しかし一方で、以下のような様々な問題点も指摘されていた。
・ 水質の悪化
・ 低い下水処理率による環境汚染や健康被害
・ 投資不足
・ 無 収 率 40− 50 %
・ ポンプや配管システムの老朽化
このような状況であった公共事業の運営を引き継いだのが、アグアス・アルヘンティー
ナ ス ( Aguas Argentinas) で あ る 。 こ れ は 、 ス エ ズ 社 の 前 身 で あ る ス エ ズ ・ リ ヨ ネ ー ズ ・
デ・ゾ ー 社 xxx を 中 核 と す る コ ン ソ ー シ ア ム だ 。入 札 に よ っ て 、1993 年 5 月 、30 年 間 の コ
ン セ ッ シ ョ ン 契 約 が 結 ば れ た 。 ア グ ア ス は 入 札 に お い て 26.9%の 料 金 割 引 を 提 示 し 、 こ の
契 約 を 勝 ち 取 っ た の で あ る 。 IFCや ADBか ら の 資 金 貸 付 は 巨 額 で 、 IFCか ら は 5 臆 ド ル 以
上 、 ADBか ら は 9000 万 ド ル ほ ど の 援 助 が あ っ た と さ れ る 。 一 方 、 ス エ ズ ・ リ ヨ ネ ー ズ ・
デ ・ ゾ ー 社 が 出 資 し た の は 、 3000 万 ド ル で あ っ た xxxi 。
1993 年 、 契 約 時 の 普 及 率 は 、 全 人 口 8580000 人 の う ち 水 道 サ ー ビ ス を 受 け て い る 人 が
70 % 、下 水 で は 58% だ っ た 。こ の 契 約 に よ っ て 設 定 さ れ た 業 務 目 標 は 以 下 の 表 10 に ま と
められている。
表10 アグアス・アルヘンティーナスの5年ごとの業務目標
水道サービ 下水サービ ネットワーク修理率
契約後の年数 スの受容者 スの受容者
水道
下水
割合
割合
契約当時(1993年)
の状況
70
58
0
5年後
81
64
9
10年後
90
73
12
20年後
97
82
28
30年後
100
90
45
(%)
無収水の
割合
0
2
3
4
5
45
37
34
28
25
出所:Loftus, Alexander J. and McDonald, David A,
Of Liquid Dreams: Political Ecology of Water Privatization in Buenos Aires
Environment and Urbanization , Vol.13, No.2, 2001, p.189.
この契約では、貧困層にもサービスを提供せねばならないという法的規制はなく、保有
条件の定まっていない土地の居住者に供給する義務もなかった。むしろ、料金滞納者への
21
サービスを停止する権限が付与されていたという。また、コストがある一定の基準を上回
れば料金をあげてもよいことになっており、利益幅が政府から保証されている契約であっ
た xxxii 。
も ち ろ ん 、こ の よ う な 契 約 に は 反 対 運 動 も あ っ た 。OSNの 従 業 員 は ス ト ラ イ キ を 起 こ し
たが、最終的にはそのような活動は圧力で封じ込められてしまった。アグアスが、株式保
有 プ ロ グ ラ ム ( PPP: Programma de Propiedad Paticipada) を 導 入 し た の で あ る 。 こ れ
は 、元 OSN従 業 員 に ア グ ア ス の 株 を 10% 分 保 有 す る こ と を 認 め る と い う も の で あ る 。さ ら
に、民営化に協力した者に関しては、反対派よりも早く給料がもらえるような仕組みにな
っていた。そのようなわけで、労働者団体には拒否権が与えられていたが、どの団体もそ
れ を 行 使 す る こ と は な か っ た 。結 果 、7600 人 の 従 業 員 が 4000 人 へ と 削 減 さ れ 3,600 人 が
解 雇 さ れ る と い う こ と も 含 め 、 全 会 一 致 で 認 証 さ れ た の で あ る xxxiii 。
以下の表は、アグアス・アルヘンティーナスの株保有内訳を示すものだが、株式保有プ
ロ グ ラ ム に よ っ て 従 業 員 に 10% の 株 式 が 与 え ら れ て い る 。 ま た こ の 表 か ら 、 IFC が 5%の
株 を 保 有 し て い る こ と も 分 か る 。つ ま り IFC は こ こ か ら 利 益 を 得 る わ け で あ る が 、民 営 化
を 推 し 進 め る 主 体 が 株 を 保 有 す る こ と に 問 題 が あ る の で は な い か と い う 指 摘 も あ る( 表 11
参 照 )。
表11 アグアス・アルへンティーナスの株保有内訳
投資家
株保有割合(%)
スエズ・リヨネーズ・デ・ゾー社
34.73
アグアス・デ・バルセロナ社
25.01
従業員(PPPによるもの)
10.00
Banco de Galicia
8.26
ビベンディ
7.55
Aguas Inversora
5.20
国際金融公社(IFC)
5.00
Anglian Water
4.25
全体
100.00
出所:Loftus, Alexander J. and McDonald, David A,
Of Liquid Dreams: Political Ecology of Water Privatization in Buenos Aires
Environment and Urbanization , Vol.13, No.2, 2001, p.185.
監 視 機 関 と し て は 、 ETOSS( Ente Tripartito de Obras y Servicious Sanitarios) が 設
置され、顧客の代表としてサービスの質や契約内容の遵守などを監視した。メンバーは地
域、地方、国家レベルで選出された役員から成る。
普 及 率 は 上 昇 し て い る 。契 約 3 年 後( つ ま り 1996 年 )に は 、上 水 普 及 率 は 70%か ら 77%
へ 、 下 水 道 は 58%か ら 60% へ と 上 昇 し た 。 さ ら に 1999 年 に は 、 上 水 が 82.4% 、 下 水 が
61.0%に な っ た 。 し か し 、 中 心 地 と そ の 他 の 地 域 で は 、 配 水 管 と 下 水 管 の 敷 設 率 に 大 き な
差 が あ っ た よ う だ xxxiv 。
料 金 に 関 し て は 、 26.9% の 値 下 げ で 入 札 し た わ け だ が 、 実 は 入 札 以 前 に か な り の 値 上 げ
が 実 施 さ れ て い た 。1991 年 2 月 に は 、イ ン フ レ の た め に 25% 、同 年 4 月 に 29% の 値 上 げ
22
が 実 施 さ れ 、1992 年 4 月 に は 水 道 料 金 に 消 費 税 が 導 入 さ れ た こ と で 、ま た 値 上 が り し た 。
この値上げが民営化と直接的な関係があるかどうかははっきりしないが、民営化の正当性
が強調されるという効果はあったと言われている。実は、民営化直前のこれら一連の価格
上 昇 が な け れ ば 、ア グ ア ス が 提 示 し た 価 格 と い う の は OSNが 設 定 し て い た よ り も 高 い 値 段
だ っ た こ と に な る xxxv 。
さ て 、 民 営 化 後 で は ど う だ ろ う か 。 契 約 で は 、 最 初 の 10 年 間 の 値 上 げ は 認 め ら れ ず 、
そ れ 以 後 は 5 年 ご と に 見 直 さ れ る こ と に な っ て い た 。 し か し 契 約 1 年 後 の 1994 年 、 早 く
も料金は値上げされている。最貧困層への水供給を早く確実に実施することや、ある地域
での敷設拡大を加速させることが、その理由だった。しかしこういったことは入札の時点
で計算に入れておくべきことである。この料金変更により、契約で決められたことが交渉
可 能 で あ る と い う こ と を 示 す 前 例 と な っ て し ま っ た と 言 え る 。1996 年 ま で に 、料 金 を 払 え
ず に 支 払 い を ス ト ッ プ し た 人 は 30% い る と 伝 え ら れ て い る xxxvi 。
1998 年 に 行 わ れ た 再 交 渉 で は 、最 貧 困 層 の た め 開 栓 料 金 の 免 除 を 政 府 が 決 定 す る と い っ
た よ う な 、貧 困 者 層 の こ と を 考 え た 政 策 も 実 施 さ れ た が 、こ の 時 に も ア グ ア ス は 11.7% の
料 金 値 上 げ を 求 め た 。 ETOSSは こ れ に 反 対 し て 1.6% の 値 上 げ し か 認 め な か っ た が 、 そ の
後 政 府 の 介 入 が あ り 、 最 終 的 に は 4.6% の 増 加 を 許 さ れ て い る xxxvii 。
問題は、このように値上げしておきながらもアグアス社の収入がかなり上がっていたこ
と で あ る 。 1994 年 か ら 2000 年 の 純 資 産 利 益 率 は 平 均 19% ( ア ル ゼ ン チ ン 上 位 200 社 の
平 均 は 4.5% )に も な っ て い た 。ま た 、歳 入 の う ち 利 益 が 占 め る 割 合 は 、1995 年 に 28.9% 、
1996 年 に 25.4% 、 1997 年 に 21.4% で あ っ た 。 イ ン グ ラ ン ド と ウ ェ ー ル ズ 地 方 で さ え 、
1998-99 年 に 9.6% 、1999-2000 年 に 9.3% で あ っ た こ と か ら も 、ア グ ア ス が 相 当 な 利 益 を
上 げ て い た こ と が 分 か る xxxviii 。
ブエノス・アイレスでは、イングランド・ウェールズ地方と違って最初から規制機関が
設けられていたわけだが、結局、政府や企業の圧力に負け十分にその機能を発揮できなか
った。政府は市場を開放しようとしている真っ最中だったので、国の信用性を汚すような
ことはできない。それで安全な水をすべての人に供給しようというよりは、世界の金融市
場における自国の評判を落とすまいと、企業を守ることに必死だった。一方企業側も、こ
れから世界の水市場への拡大を図っている矢先であり、ここでの成否がこれからの経営活
動 に 関 わ る と い う こ と が 、 何 よ り も 重 視 さ れ て い た の で あ る xxxix 。
ま た 公 開 協 議 は 、 契 約 7 年 後 の 2000 年 に 初 め て 開 催 さ れ た と い う こ と だ 。 し か し 、 企
業の業務成績の話がその大半を占め、住民との話し合いには十分な時間が割かれなかった
xl 。
そ の 後 、2001 年 に は ア ル ゼ ン チ ン 経 済 が 崩 壊 し 、料 金 の「 ド ル 化 」は 廃 止 さ れ た 。し か
し 、 対 外 債 務 は 膨 れ 上 が り 、 2002 年 2 月 に は 、 ス エ ズ 社 は 自 ら の 義 務 の 停 止 を 一 方 的 に
通 知 し て い る 。現 在 は 、ア ル ゼ ン チ ン 政 府 を 相 手 に 、世 界 銀 行 の 下 部 組 織 で あ る ICSID( 国
際投資紛争解決センター)に提訴している最中だ。
23
(2)マニラ
フ ィ リ ピ ン の 首 都 圏 マ ニ ラ で は 、 1970 年 か ら マ ニ ラ 市 政 府 の 下 部 組 織 で あ る MWSS
(Metro-Manila Waterworks and Sewage System)が 水 道 事 業 を 担 当 し て い た 。MWSS は 、
公共水栓を設けることで無料の水を提供していた。しかし、民営化される以前の水道事情
は、ブエノス・アイレスの状況よりさらに深刻だったことが分かる。具体的には以下のよ
うな状況だった。
・ 高 い 無 収 率 ( 1996 年 56% )
・ 低 い 普 及 率 ( 1996 年 上 水 道 6 7% 、 下 水 道 8% ) xli
・ 劣悪な水質(伝染病の可能性)
1992 年 に 就 任 し た ラ モ ス 大 統 領 の 民 営 化 政 策 と 、 1995 年 か ら 導 入 さ れ た IMFの 構 造 調
整 プ ロ グ ラ ム に よ っ て 、 水 道 事 業 の 民 営 化 が 進 め ら れ た 。 そ の 際 、 IFCが 民 営 化 の モ デ ル
作 り に 携 わ っ て い る xlii 。
国 際 機 関 と 政 府 に よ っ て い ろ い ろ な 検 討 が な さ れ た 結 果 、 マ ニ ラ で も 25 年 間 の コ ン セ
ッ シ ョ ン 契 約 が 行 わ れ る こ と に な り 、 1997 年 8 月 に 入 札 が 実 施 さ れ た 。 競 争 を 促 す こ と
を目的として、フランスのモデルに倣い二つの地域に分割された。人口の多い西区では、
フィリピン地元企業のベンプレス社と、フランスのスエズ・リヨネーズ・デ・ゾー社など
からなるコンソーシアム:マイニラッド・ウォーター社が、一方富裕層の多い東区では、
フィリピンの地元企業のアヤラ社、イギリスのユナイディッド・ユーティリティーズ社、
米ベクテル社、そして日本の三菱商事などが出資する、マニラ・ウォーター社が、それぞ
れ 契 約 を 結 ぶ こ と に な っ た 。 監 督 公 的 機 関 に は 、 元 々 運 営 し て い た 政 府 組 織 の MWSS が
担うことになった。
料 金 は 、 1 立 方 メ ー ト ル あ た り 8.78 ペ ソ で あ っ た も の を 、 西 区 の マ イ ニ ラ ッ ド が 4.97
ペ ソ へ 、東 区 の マ ニ ラ・ウ ォ ー タ ー が 2.32 ペ ソ へ そ れ ぞ れ 値 下 げ し た 。表 12 は 、両 社 の
契 約 直 前 ( 1996 年 ) の 状 況 と 、 5 年 ご と の 業 務 目 標 で あ る 。
表12 2社の5年ごとの業務目標 (%)
普及率
契約後の年数
無収率
上水道
下水道
浄化槽
契約直前(1996年)の状況
67.0
8.0
1.0
56.0
5年後 87.0
7.0
39.0
37.1
10年後 98.0
15.0
40.0
31.8
15年後 98.0
26.0
36.0
29.4
20年後 98.0
38.0
33.0
27.2
25年後 98.0
54.0
29.0
25.0
出所:石田恭子・佐久間智子編 『水の民営化の実情
∼アジアの実例と水の民営化・商品化を推し進める力∼』
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、2003年、13頁。
しかしこの契約には、市民との協議は義務付けられておらず、他の人に自分の水を分け
与えたり売ったりしてはならないといった決まりもあった。その他にも、契約にあたって
24
市民に具体的な情報が提供されなかったこと、フィリピンの大財閥へさらに権力と富が集
中 す る こ と 、そ し て 5400 人 か ら 2000 人 へ の 雇 用 削 減 が 予 定 さ れ て い た こ と な ど に 対 し て 、
批 判 が 挙 が っ て い た xliii 。普 及 率 に 関 し て は 2 社 と も 目 標 を 達 成 し た と 主 張 し て い る が 、1
家族の平均人数を多く見積もるなどのトリックがあるのではとの疑いもある。無収率は、
1998 年 に は 68%へ 上 昇 し て し ま っ た xliv 。
料 金 の 設 定 は 、当 初 ブ エ ノ ス・ア イ レ ス と 同 様 に 10 年 間 は 料 金 の 値 上 げ は 行 わ ず 、5 年
ごとに見直しをすることになっていた。しかしマニラでも、入札前に料金の大きな値上げ
が 行 わ れ て い た 。1996 年 8 月( 入 札 の 5 ヶ 月 前 )、水 道 料 金 が 38% 上 昇 さ れ た の だ 。こ れ
も民営化とは直接関係ないかもしれないが、これによって、企業が料金の大幅な引き下げ
を提示することができたのは間違いない。フィリピンのある政府役人は、民営化前に料金
を上げることが民営化の過程で有効だということを、アルゼンチンのブエノス・アイレス
の 例 か ら 学 ん だ と 言 っ て い る xlv 。
そ れ 以 後 も 、 料 金 の 値 上 げ は う な ぎ の ぼ り に 続 く こ と に な る が 、 そ れ は 1997 年 に 通 貨
危 機 が 起 こ っ た こ と に 因 る 。民 営 化 前 、MWSSに は 8 臆 ド ル の 対 外 債 務 が あ り 、そ の 90%
を西区のマイニラッドに委譲していた。そしてこの通貨危機が発生したことで、マイニラ
ッ ド の 債 務 義 務 は 急 激 に 増 加 し た の だ っ た xlvi 。
料 金 で 為 替 差 額 の 損 失 を ま か な う た め に 、値 上 げ が 何 度 か 要 求 さ れ た 。2001 年 に は 、マ
イニラッドがコンセッション契約料の支払いを停止したため、政府は料金の値上げを許可
す る し か な か っ た 。 こ の よ う に し て 、 2002 年 1 月 に 西 区 で は 15.46 ペ ソ 、 東 区 で は 6.75
ペ ソ に な り 、 2003 年 1 月 に は 、 西 区 で 21.11 ペ ソ 、 東 区 で 12.21 ペ ソ と な っ た xlvii 。
2002 年 12 月 、マ イ ニ ラ ッ ド は 1 ヶ 月 以 内 の 契 約 破 棄 を 通 告 し 、失 敗 の 原 因 は 政 府 に あ
る と し て 賠 償 金 を 求 め た 。 続 く 2003 年 2 月 に は 、 コ ン セ ッ シ ョ ン の 正 式 終 結 を 発 表 し た
が、国際商工会議所によって保留を命じられている。
第三節
人間開発先進都市、ポルトアレグレ
最 後 に 、 99.5% の 水 供 給 率 を 誇 る ア ル ゼ ン チ ン の ポ ル ト ア レ グ レ に お け る 、 水 管 理 成 功
の 秘 訣 を 探 る 。ポ ル ト ア レ グ レ は 、ブ ラ ジ ル 南 部 に あ る 人 口 約 140 万 人 の 都 市 で あ る 。
「参
加 型 民 主 主 義 の モ デ ル 」と し て 近 年 注 目 を 浴 び て お り 、2001 年 1 月 に 世 界 社 会 フ ォ ー ラ ム
が 開 催 さ れ た 場 所 だ 。 国 連 開 発 基 金 ( UNDP) が 公 表 し て い る 人 間 開 発 指 数 で は 、 ラ テ ン
ア メ リ カ の 人 口 100 万 人 以 上 の 都 市 で は 最 上 位 に 位 置 し て い る xlviii 。
ポルトアレグレでは以前、水道事業が民間企業によって運営されていた時代があった。
フ ラ ン ス で 初 め て 民 間 セ ク タ ー が 導 入 さ れ た わ ず か 8 年 後 の 1861 年 、 Hidráulica
Porto-alegrenseと い う 民 間 会 社 が 水 供 給 を 任 さ れ て い る 。同 時 期 、水 道 設 備 が 未 接 続 の 地
域 に 水 供 給 を 行 う た め に 、Companihia Hidráulica Guahybenseと い う 会 社 も 設 立 さ れ た 。
し か し 1904 年 、 地 方 自 治 体 が こ の 2 社 か ら 経 営 を 引 き 継 ぎ 、 市 議 会 が 水 管 理 局 を 設 立 し
た 。 そ し て 1961 年 に は 、 そ の 管 理 局 が DMAE ( Water and Sanitation Municipal
Department) に 移 行 さ れ 、 現 在 に 至 る ま で 水 道 管 理 を 実 施 し て い る 。 DMAEは 、 発 足 当
初 よ り 「 配 当 金 な し 」 と い う 政 策 を 貫 き 、 利 益 は す べ て DMAEを 管 理 す る た め の 再 投 資 に
25
回 さ れ て い る xlix 。
で は 、 DMAEの 財 政 管 理 ・ 運 営 方 法 な ど を 具 体 的 に 見 て み る 。 ま ず 、 1 つ め の 大 き な ポ
イ ン ト は 、市 か ら の 独 立 性 に あ る 。形 式 上 は 市 が DMAEを 所 有 し て い る こ と に な っ て い る
た め 、 DMAEの 責 任 者 は 市 長 に 任 命 さ れ る 。 し か し そ れ 以 外 で は 、 管 理 面 に お い て も 財 政
面においても市からの影響を一切受けていないのである。よって、必要な資金は補助金を
もらうことはなく自分達で借りている l 。
2 つめの特徴は、一般公開される討議会が毎週開催されていることだ。この会議によっ
て 、DMAEの 主 な 決 め 事 は す べ て 承 認 さ れ な け れ ば な ら な い こ と に な っ て い る 。出 席 者 は 、
様々な市民団体の代表者から成っており、団体の例をいくつか挙げると以下のようなもの
が あ る li 。
・ 通商団体
・ エンジニアリング団体
・ 大学
・ 環境保護団体
・ メディア団体
そ し て 3 つ め の 特 徴 は 、 参 加 型 予 算 lii が 実 施 さ れ て い る こ と だ 。 こ れ は 水 道 部 門 に 限 ら
ず市のすべての事業に対して行われ、何に投資すべきかを住民が決めるシステムである。
年 間 40 か ら 50 回 開 催 さ れ 、プ ロ ジ ェ ク ト ご と に 利 益 と 費 用 が 評 価 さ れ た 優 先 事 項 リ ス ト
を見ながら、住民が市に行ってほしい活動内容に投票することができるのだ。
最 後 の 特 徴 と し て は 、競 争 入 札 に よ る 下 請 け 委 託 を 行 っ て い る こ と が 挙 げ ら れ る 。接 続 、
修理、メインテナンス、データ管理など実に様々な作業を委託している。よって民営化の
レ ベ ル で 分 類 す れ ば 、サ ー ビ ス 契 約 / マ ネ ジ メ ン ト 契 約 に な る 。 委 託 先 は 、 ほ と ん ど が ブ
ラジル企業である。海外多国籍企業のブラジル子会社にもいくぶんかは委託している。こ
の 2 種 類 の 委 託 先 が 95% を 占 め 、海 外 の 多 国 籍 企 業 へ の 直 接 的 な 委 託 は ほ と ん ど し て い な
い liii 。
で は 、 そ の よ う な 特 徴 を 持 つ DMAE に よ っ て ど の よ う な 水 道 管 理 が 行 わ れ て い る の だ
ろ う か 。以 下 の 表 13 で 、料 金 、普 及 率 、無 収 率 の 変 化 が 分 か る 。料 金 は 1998 年 か ら 2002
年 の 間 に お よ そ 2 倍 に 上 昇 し て い る 。し か し 、こ れ は 討 議 会 で 認 証 さ れ た 上 で の 値 上 げ で
あり、低所得者のためには利用者に上乗せされた料金が補助金として利用されている。普
及 率 で は 、 2001 年 人 口 の 99.5% に 水 道 が 接 続 さ れ る ま で に な り 、 か な り の 高 数 値 を 実 現
し て い る 。 残 り の 0.5% は 危 険 な 土 地 か 、 も し く は 環 境 保 全 の 面 で 制 限 が あ る 地 域 と な っ
て お り 、 そ の よ う な 地 域 に 住 む 人 々 に は DMAE が 水 タ ン ク の ト ラ ッ ク で 供 給 を 行 っ て い
る。
26
表13 DMAEの水道料金、普及率、無収率の変化(1990∼2002年)
普及率(%)
水道料金
年
無収率 (%)
(m3)(R$)
水道
下水
1990
‐
95.0
70.0
‐
1992
‐
‐
‐
49.5
1994
‐
‐
‐
46.3
1996
‐
‐
‐
44.5
1998
0.6
‐
‐
39.2
2000
0.8
‐
‐
34.7
2001
0.8
99.5
84.0
34.4
2002
1.1
‐
‐
‐
出所:Hall, David, Emanuele Lobina, Odete Maria Viero, and Hélio Maltz,
"Water in Porto Alegre, Brazil -Accountable, Effective, Sustainable and Democratic-"
A PSIRU and DMAE paper for WSSD Joburg, August 2002.
http://www.psiru.org/reportsindex.asp
このようにポルトアレグレの水道事業は、住民の意見を聞きながらすべての人への水供
給を成功させている。これは他の地域のモデルにも成りうるだろう。ただ、この地域では
水部門以外のこともすべて住民主体で決められており、そのために社会全体が人間開発先
進的であるという事実がある。そのためにスラムがないなど、他の発展途上国とは異なっ
た背景を持っているということは、注意しておかねばならない。
27
第五章
事例研究のまとめと考察
以 上 6 つ の 事 例 か ら 、ど の よ う な こ と が 言 え る だ ろ う か 。そ れ ぞ れ の 契 約 形 態 と 責 任 所
在を再確認し、パフォーマンスの比較結果をまとめる。そして、水道事業の民営化で起き
ている問題の本質を探り、住民にとって望ましい水管理の方法について筆者の考えを述べ
たい。
第一節
事例の比較研究
各 地 域 の 民 営 化 形 態 と そ れ ぞ れ の 形 態 に お け る 責 任 所 在 は 、 表 14 の よ う に な る 。
表14 各地域の民営化形態と主な責任所在のまとめ
先進国
地域
民営化の形態
フランス
リース契約/
アフェルマージュ契約
イングランド・
ウェールズ地方
2001年以降の
ウェールズ地方
責任所在
運営・維持 資本投資 資産所有
公共
民間
民間
売却/完全民営化
サービス契約/
マネジメント契約
大部分が
民間
公共
ブエノス・アイレス
コンセッション契約
民間
公共
マニラ
コンセッション契約
民間
公共
ポルトアレグレ
サービス契約/
マネジメント契約
発展途上国
人間開発先進国
大部分が
民間
公共
出所:筆者作成
特 に 注 目 す る 予 定 で あ っ た 競 争 、料 金 、規 制 の 3 つ を 中 心 に 6 項 目 に 分 け て 、こ れ ら の
事例を比較した結果をまとめる。
(1)企業の導入は競争的であるか
・ 入 札 が 実 施 さ れ て い て も 、も と も と 水 分 野 の 企 業 数 は 限 ら れ て お り 寡 占 状 態 で あ る た
め、競争には限度がある。
・ 最 初 の 入 札 が 競 争 的 に 行 わ れ た と し て も 、完 全 民 営 化 や コ ン セ ッ シ ョ ン 契 約 は 契 約 期
間が長期にわたるため、それ以降の競争はない。
2001 年 以 降 の ウ ェ ー ル ズ 地 方 や ポ ル ト ア レ グ レ の よ う に 、比 較 的 短 期 間 の 契 約 で 数 多 く の
企業に分割委託すれば、競争は促される。
(2)水道料金の設定・変更は公平で納得のいくものであるか
・ イ ン グ ラ ン ド・ウ ェ ー ル ズ 地 方 、ブ エ ノ ス・ア イ レ ス で は 、料 金 が 吊 り 上 げ ら れ る 一
方で、役員報酬が並外れて増加していた。
28
・ ブ エ ノ ス・ア イ レ ス で は 住 民 と の 協 議 が き ち ん と な さ れ な い ま ま 、料 金 変 更 が 行 わ れ
た。マニラでも、協議の義務はなかった。
・ 一 方 、ポ ル ト ア レ グ レ で の 値 上 が り は 、報 酬 や 配 当 金 で は な く 投 資 に 回 さ れ る た め の
も の で あ り 、 住 民 も 納 得 し て い る 。 2001 年 以 降 の ウ ェ ー ル ズ 地 方 で も 、 利 潤 を 配 当
金 で は な く 投 資 に 回 せ る 形 態 の CLG が 設 立 さ れ た 。
料金の値上げが何のためのものであるか、住民は納得しているかといったことが重要であ
る。水道網の拡大や老朽化した設備の修理などに必要な投資のための値上げは、住民の合
意と貧困層へのフォローのもとで行われるべきである。
(3)規制機関はその機能を果たしているか
・ イ ン グ ラ ン ド・ウ ェ ー ル ズ 地 方 で は 、規 制 機 関 が で き て も 、水 道 事 業 と い う サ ー ビ ス
の内容上、企業の経営も考慮されていた。
・ ブ エ ノ ス・ア イ レ ス や マ ニ ラ で は 規 制 機 関 が 設 置 さ れ て い て も 、政 府 や 企 業 の 圧 力 に
負けてしまい機能していない。
・ フ ラ ン ス や ポ ル ト ア レ グ レ の よ う に 自 治 体 や 住 民 が 権 限 を 持 っ て い る と こ ろ で は 、比
較的問題が少ない。
規制機関があったとしても、民間企業が大きな責任を委ねられると、企業が優位になり規
制は効かない。よって、最初から企業にそこまでの責任を持たせないことが重要だ。また
政府よりも自治体の方が、より住民のことを考えた規制ができる。
(4)貧困者層への考慮
・ イ ン グ ラ ン ド・ウ ェ ー ル ズ 地 方 や ブ エ ノ ス・ア イ レ ス で は 、料 金 の 値 上 が り に よ り 料
金の支払いができなくなり、給水を止められる人が増加した。
・ ブ エ ノ ス・ア イ レ ス 、マ ニ ラ で は 政 府 が 無 料 の 水 を 提 供 し て い た が 、民 営 化 後 そ れ が
な く な っ て し ま っ た 。特 に マ ニ ラ で は 、民 営 化 後 に は 他 人 に 水 を あ げ た り 売 っ た り す
ることが禁止されていた。
・ ポ ル ト ア レ グ レ で は 、水 道 網 の 通 っ て い な い と こ ろ に は ト ラ ッ ク で の 供 給 が 行 わ れ て
いる。
企業は貧困者を考慮に入れない。むしろ、自分達の利益を守るために貧困者をないがしろ
にする傾向がある。これは政府、もしくは自治体がきちんと責任を持つべきである。
(5)海外からの投資
・ 海 外 か ら の 融 資 を 受 け る 場 合 、経 済 危 機 が 起 き る と 返 済 が 大 変 に な る 。そ れ は 、ブ エ
ノス・アイレスやマニラの例から明らかだ。
・ ポ ル ト ア レ グ レ で は 、国 際 金 融 機 関 か ら の 融 資 を 受 け て い る が 貸 し 出 し 条 件 は あ ま り
なく、自治体主体の運営ができている。また自治体の財政と切り離されているので、
水道事業のみでの独立した経営ができる。
外部からの資金に対する必要性は強い。しかし発展途上国は経済が安定していないので、
それも考慮に入れるべきである。また、民営化への強制的な条件のない融資が行われるべ
きだ。さらに、自治体のバランスシートを改善するための民営化で、住民が犠牲になって
はならない。
29
(6)水と住民との距離∼透明性と説明責任∼
・ ブ エ ノ ス・ア イ レ ス で は 住 民 へ の 説 明 が 全 く な い 。企 業 の 説 明 責 任 の 相 手 は 、株 主 で
ある。
・ ポ ル ト ア レ グ レ で は 住 民 が 予 算 や 組 織 の 運 営 内 容 を 決 め て お り 、住 民 の 際 限 が 大 き い 。
DMAE の 説 明 責 任 は 、 市 民 団 体 か ら 成 る 討 議 会 の メ ン バ ー に あ る 。
民間セクターの導入レベルが増せば増すほど、水と住民との距離は広がる一方である。透
明性や説明責任の面から考えても、自治体、あるいは住民が、水管理・水利用における関
与・意思決定といった権限を手放されるような契約は望ましくない。
第二節
水道事業民営化の根本的問題点
第一節では細かい比較を行ったが、では水道事業民営化の根本的な問題は一体どこにあ
るのだろうか。本論文の事例では、不当な料金設定や偏ったサービス提供などの問題が深
刻だったのは、イングランド・ウェールズ地方(完全民営化/売却)と、ブエノス・アイ
レス、マニラ(コンセッション契約での民営化)である。これらの地域では、管理・運営
に加え事業全体における資本投資の権限までも民間セクターに委託されていた。
このような形態の水道事業の民間運営が難しいのは、水は人間の生命に関わるもので、
どの人もアクセスできる権利を持っているものだからである。他の商品と同じように単に
市場均衡が成立し、料金の支払いができる人だけにサービスが提供されればよいというも
のではない。貧困者層にもアクセスできるようなサービスであるべきなのだ。しかし利益
追求が目的である民間企業からすれば、料金回収ができるか定かでない貧困者層へサービ
スを提供したり、貧困者が負担を感じず払うことのできる料金を設定したりするインセン
ティブはわかない。よって、資本投資をそのような分野へ回すことがないのは、当然のこ
とだ。さらには、水道事業は自然独占性が働く分野であり、競争が存在しない。そのこと
も、不適切なサービスを生み出す要因となっている。
このように、水道事業民営化の問題は、生命に関わる水であるにも関わらず、民間セク
ターに資本投資の権限までも委譲してしまうことで発生していると言える。
おわりに
民営化にはいろいろなレベルの契約があり、料金の値上がりやサービス提供の偏りとい
った問題は、あるレベルを超えた民営化が行われた際に起きている。すでに述べたことだ
が、資本投資までも民間セクターに任せる民営化においては、適正な価格設定やサービス
提供が実現されることはほとんどない。
では、すべての地域住民にとって望ましい水道事業とはどのようなものなのだろうか。
い く つ か の 事 例 を 研 究 し て み る と 、フ ラ ン ス( ア フ ェ ル マ ー ジ ュ 契 約 )や 、2001 年 以 降 の
ウェールズ地方、ポルトアレグレ(サービス契約/マネジメント契約)においては、民間
セクターの導入が成果を上げていることが分かった。これらの契約においては、運営・管
理の一部、またはそのすべてを民間企業に委託することで、費用を最小限に抑え政府や自
30
治体の財政負担を軽減している。一方で、資本投資に関しては自治体が責任を持っている
ので、不当な料金設定やサービスの偏りといった問題が起こることはない。つまり、同じ
民営化ではあっても、ある一部の運営や維持活動のみを民間企業に委託するという契約で
あれば、費用を最小限に押さえることが可能になり、より多くの人へサービス提供が行わ
れるのだ。
以 上 の こ と か ら 、効 率 的 で あ り 、尚 且 つ 適 正 な 価 格 で す べ て の 人 に 行 き 渡 る 水 道 事 業 は 、
資本投資における責任及び権限は自治体や住民が持ちつつ、運営維持のみを民間セクター
に任せていくことによって、実現可能になると言える。
2006 年 3 月 に は 、 カ ナ ダ ・ モ ン ト リ オ ー ル に て 第 4 回 世 界 水 フ ォ ー ラ ム が 開 催 さ れ る
予定になっている。この会議までに、一歩進んだ解決策が見出されるのであろうか。その
間にも、清潔な水にアクセスできないために大きな負担を強いられている人はいるのだ。
地域住民にとって望ましい水管理が早急に実現されることを願いたい。
31
i
中 川 淳 「 世 界 水 フ ォ ー ラ ム の 意 義 を 揺 さ ぶ る 民 営 化 論 争 」『 国 際 開 発 ジ ャ ー ナ ル 』 6 月 号 、
2003 年 。
ii Budds, Jessica and McGranahan, Gordon, “Are the Debates on Water Privatization
Missing the Point? Experiences from Africa, Asia and Latin America” Environment and
Urbanization , Vol.15, No.2, 2003, pp.91.を 邦 訳 し た 。
iii Ibid. , p. 88.
iv ロ ス フ ェ ダ ー ・ ジ ェ フ リ ー 『 水 を め ぐ る 危 険 な 話
世界の水危機と水戦略』古草秀子訳、
河 出 書 房 新 社 、 2002 年 、 152 頁 。
v 『 朝 日 新 聞 』 2003 年 9 月 15 日 朝 刊 。
vi
無収率とは、配水されている水量のうち料金が回収できていない水の割合のことである。
vii 世 界 銀 行 「 水 ― 責 任 の あ る 成 長 と 貧 困 削 減 の 優 先 課 題
投資と政策改革に関するアジェン
ダ 」、 2 頁 。
viii 石 田 恭 子 ・ 佐 久 間 智 子 編『 水 の 民 営 化 の 実 情 ∼ ア ジ ア の 実 例 と 水 の 民 営 化 ・ 商 品 化 を 推 し
進 め る 力 ∼ 』「 環 境 ・ 持 続 社 会 」 研 究 セ ン タ ー ( JACSES)、 2003 年 、 4 頁 。
ix 石 上 圭 太 郎 「 上 下 水 道 の 民 営 化 に 向 け て 」
『 知 的 資 産 創 造 』 10 月 号 、 2001 年 、 42 頁 。
x 『 朝 日 新 聞 』 2003 年 3 月 15 日 夕 刊 。
xi バ ー ロ ウ ・ モ ー ド 、 ク ラ ー ク ・ ト ニ ー 、 鈴 木 主 税 訳 『
「 水 」 戦 争 の 世 紀 』 集 英 社 、 2003 年 、
155 頁 。
xii ビ ベ ン デ ィ 社 は 、 1853 年 に フ ラ ン ス で 初 め て 設 立 さ れ た 水 民 間 企 業 で あ る 「 ジ ェ ネ ラ ル ・
デ ゾ ー 社 」か ら 発 展・拡 大 し た 総 合 サ ー ビ ス 企 業 。ア メ リ カ や 日 本 に あ る ア ミ ュ ー ズ メ ン ト パ
ーク「ユニバーサル・スタジオ」の親会社でもある。
xiii 石 田 前 掲 書 、 6 頁 ( 注 8)
。
xiv 中 川 前 掲 書 、 68 頁 ( 注 1)
。
xv 石 田 前 掲 書 、7 頁( 注 8)に よ る と 、料 金 の 払 え る 人 だ け に サ ー ビ ス を 提 供 す る こ の 行 為 は 、
「 よ い 部 分 ( ク リ ー ム ) だ け を す く い 取 る 」 と い う 意 味 で 、「 ク リ ー ム ス キ ミ ン グ ( cream
skimming)」 と よ ば れ て い る 。
xvi バ ー ロ ウ 前 掲 書 、104 頁( 注 11)に よ る と 、ス エ ズ 社 の 場 合 、水 道 事 業 の 他 に エ ネ ル ギ ー ・
通 信 ・ 廃 棄 物 管 理 な ど も 行 っ て い る 。 総 収 入 の う ち 水 道 事 業 の 割 合 は 約 25% だ が 、 こ の 分 野
の成長が企業全体の成長を支えている。
xvii 永 元 哲 治 著 ・ 編 『 水 の 流 れ る 先 ∼ 水 の 民 営 化 と は ∼ 』 water advocates、 ANT
PRODUCTION、 2003 年 、 63 頁 。
xviii 石 田 前 掲 書 、 6 頁 ( 注 8)
。
xix ホ ー ル・デ ィ ビ ッ ド「 2002 年 の 多 国 籍 水 道 企 業 ∼ 財 務 の そ の 他 の 問 題 ∼ 」公 共 サ ー ビ ス 国
際 研 究 ユ ニ ッ ト ( PSIRU)、 2002 年 。
http://www.jichiro.gr.jp/psi_world/news…icy/multi_water_enterprise/contents.htm
xx 北 野 尚 宏・有 賀 賢 一「 上 下 水 道 セ ク タ ー の 民 営 化 動 向 ― 開 発 途 上 国 と 先 進 国 の 経 験 ― 」
『開
発 金 融 研 究 所 報 』 2000 年 7 月 第 3 号 、 2000 年 、 73 頁 。
xxi イ ギ リ ス 政 府 は 、 1984 年 に 通 信 部 門 、 86 年 に ガ ス 部 門 と 次 々 に 実 施 し た 民 営 化 で 、 株 式
売 却 に よ る 多 額 の 収 益 を 得 て い た 。そ れ が 水 道 事 業 の 売 却 の 後 押 し に も な っ た 。野 村 宗 訓「 イ
ギ リ ス 水 道 事 業 の 民 営 化 」 公 益 事 業 研 究 、 第 45 巻 、 第 1 号 、 1993 年 、 30 頁 。
xxii 清 水 誠「 デ ッ ト フ ァ イ ナ ン ス に よ る NPO水 道 会 社 の 誕 生 」
『 日 経 研 月 報 』9 月 号 、2002 年 、
51 頁 。
xxiii ホ ー ル 前 掲 ホ ー ム ペ ー ジ ( 注 19)
。
xxiv 野 村 前 掲 書 、 46 頁 ( 注 21)
。
xxv 財 団 法 人 自 治 体 国 際 化 協 会 「 イ ン グ ラ ン ド と ウ ェ ー ル ズ の 水 道 」
『 CLAIR REPORT』 No.
077、 1993 年 、 24-26 頁 。 http://www.clair.or.jp/j/forum/c_report/cr077m.html
xxvi 清 水 前 掲 書 、 53 頁 ( 注 22)
。
32
清 水 前 掲 書 、 51-54 頁 ( 注 22)。
Pírez Pedro, ”The Management of Urban Services in the City of Buenos Aires”
Environment and Urbanization , Vol.10, No.2, 1998, p219.
xxix Hardoy, Ana and Schusterman, Ricardo, ”New Model for the Privatization of Water and
Sanitation for the Urban Poor” Environment and Urbanization, Vol.12, No.2, 2000, p63.
Loftus, Alexander J. and McDonald, David A, ”Of Liquid Dreams: Political Ecology of
Water Privatization in Buenos Aires” Environment and Urbanization , Vol.13, No.2, 2001,
p184.
xxx 2001 年 3 月 、 ス エ ズ ・ リ ヨ ネ − ズ ・ デ ・ ゾ ー 社 か ら ス エ ズ 社 に 社 名 を 変 更 し た 。 そ の 際 、
水事業部門をオンデオという名称で統合した。
xxxi Loftus, op. cit. , p.183.
バ ー ロ ウ 前 掲 書 153 頁 ( 注 11)。
xxxii 北 野 前 掲 書 、 72 頁 ( 注 20)
。 バ ー ロ ウ 前 掲 書 、 98 頁 ( 注 11)。
xxxiii バ ー ロ ウ 前 掲 書 、 106 頁 ( 注 11)
。
xxxiv Loftus, op. cit. , p.188.
北 野 前 掲 書 、 72 頁 ( 注 20)。
xxxv バ ー ロ ウ 前 掲 書 、 98 頁 ( 注 11)
。
xxxvi Loftus, op. cit. , p.192.
xxxvii Ibid. Hardoy, op. cit. , p.65.
xxxviii バ ー ロ ウ 前 掲 書 、 98 頁 ( 注 11)
。 ホ ー ル 前 掲 ホ ー ム ペ ー ジ ( 注 19)。
xxxix Loftus, op. cit. , p.198.
xl Ibid. , p.196.
xli 無 収 率 と 普 及 率 の 数 値 は 、 石 田 前 掲 書 、 13 頁 ( 注 8) を 参 照 し て い る 。
xlii 同 上 書 、
11 頁 に よ る と 、IFCの こ の 助 言 に は 620 万 ド ル と い う 高 額 な 料 金 が か か っ て い る 。
xliii 永 元 前 掲 書 、 28 頁 ( 注 17)
。
xliv 石 田 前 掲 書 、 12 頁 ( 注 8)
。
xlv Loftus, op. cit. , p.190.
xlvi 永 元 前 掲 書 、29 頁( 注 17)に よ る と 、こ の 通 貨 危 機 に よ り 、マ イ ニ ラ ッ ド 社 の 債 務 は 26
臆ペソも増加したそうだ。
xlvii 同 上 書 、 30 頁 。 石 田 前 掲 書 、 12 頁 ( 注 8)
。
xlviii 北 沢 洋 子 「 2001 年 1 月 、 ポ ル ト ア レ グ レ ―
新しい運動の時代の始まり」
http://www.eco-link.org/jubilee/globalization2.htm
xlix Hall, David, Emanuele Lobina, Odete Maria Viero, and Hélio Maltz, "Water in Porto
Alegre, Brazil -Accountable, Effective, Sustainable and Democratic-" A PSIRU and DMAE
paper for WSSD Joburg, August 2002.
http://www.psiru.org/reportsindex.asp
Viero, Odete M., "Water Supply and Sanitation in Porto Alegre/ Brazil" Prinwass,
February 2003.
http://www.geog.ox.ac.uk/~prinwass/DMAE.PDF
l Viero同 上 ホ ー ム ペ ー ジ に よ る と 、 DMAEは 発 足 当 時 ( 1961 年 ) に 、 米 州 開 発 銀 行 よ り 315
万 米 ド ル の ロ ー ン を 受 け た 。こ の 貸 し 出 し に あ た っ て は 、条 件 が ほ と ん ど な か っ た 。現 在 で も
下 水 設 備 の 拡 大 や 汚 水 汲 み 上 げ 工 場 な ど の 建 設 な ど の た め に 、米 州 開 発 銀 行 か ら 巨 額 の 融 資 を
受けている。
li Hall前 掲 ホ ー ム ペ ー ジ ( 注 49)
。
lii 同 上 ホ ー ム ペ ー ジ に よ る と 、 こ の 参 加 型 予 算 は 、 1989 年 に 行 わ れ た 税 制 ・ 支 出 改 革 の 際 、
新 政 府 が 住 民 ミ ー テ ィ ン グ を 活 用 し た こ と に 始 ま る 。そ れ が 徐 々 に 確 立 さ れ た シ ス テ ム と な り 、
現在の参加型予算に至る。
liii Viero前 掲 ホ ー ム ペ ー ジ ( 注 50)
。
xxvii
xxviii
33
参考資料
【文献】
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http://www.childinfo.org/eddb/water/index.htm
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