七宝について - ECHO-LAB

七 宝 に つ い で (定
方)
七 宝 に つ いて
仏 教 に お け る七 宝 と は何 々であ ろう か。 七 宝 の原 語 は
定
方
dfkgjiw
晟
Velu-
170
kdsjfidsi
に く
kjgi
fdlgkf
dklji
dkjik
大 乗 仏 教 も だ いた い同 じ であ る 。 梵 文 阿弥 陀 経 (荻原 、一九
dskfj
がkあ げ ら れ で
sovanna,
dfiuh
dsjhes
Vimanava
dkjdiklj
で い る。 パ ー リ で は
sa-(頗 梨)、 琉 璃 、 赤 珠 、 馬 璃 、 車 渠 (経 に よ つ で順 不 同) と し で 出
ptaraで
tあ
nる
a。tatn
はa
宝 物 一般 を さ し、 必 ず し も 宝 石
sutjdgu
kaが あ げ ら れ、Mahakig
riya,
に す る 。 ま た ﹁七 宝﹂ は単 に ﹁重 要な る宝 石 ﹂ を 意味 し た の
171, に
1城
8壁
4等
) の七素 材 と し で
ratをn問
a題
か も し れ ず、 そ の内容 は何 で あ つでも よ か つた か も 知 れ な い
phalika,
日鋤鴬 を 意 味 し な いが、 こ こ で は宝 石 と し で の
が 、 一方 で は多 く の経 典 が ほ ぼ同 内 容 の七 つ の宝 石 名 をあ げ
いる 。
kdskjgijh
で いる。 そ れ で、本 論 で は、 そ れ ら の名 が今 日 のど の宝 石 を
意 味 す る かを 問 題 にす る の であ る。 こ の研 究 に 利 用 で き る資
dubarna,
六頁) に は
saptarと
aし
tで
naの
料 に次 のも のが あ る。 )
(
一梵 巴漢 の仏 典 。 そ こに 列 挙 さ れ た 七
s
pjaltosl
ldskgoが
dk
あcげiで
種 類 の宝 石 の名 を 拾 いあ げ る 。(
二) 中 世 イ ンド宝 石 専 門 書 、 す
あ る。 梵 文 無 量 寿 経 (荻原、六八頁以下)に も 同 じも のが列 挙
さ れ で いる
し であ る が、 順 序 が違 う 。す な わち 前 者 で第 七 (sapta
とma)
dlskodlod
な わ ち種 々の ラ ト ナ シ ャー スト ラ。 (三) 古 代 イ ンド の宝 石 に言
及 す る外 国 人 の書 物。 エリ ュト ラ海 案 内 記、 プ リ ニウ スの博
物 誌 、 中 国 の史 書 や本 草 類 。(
四)
考 古 学 的 資 料 。 (五) 宝 石 に 関 す
galibva
ji
khjifdj
kjdi
とl
ある
d。
fkjdf
ksdjubji
kdjgidk
文法華経、二〇 七頁 )に は
msusjkh
がg
後j
者 では 五 番 目 に 配 さ れ 、asma-
る 現代 の科 学 的 専門 書 。
garbが
h第
a 七 とさ れ で いる。 梵 文 法 華 経 (
荻原・ 土田、改訂梵
﹁七 宝 ﹂ は長 阿含 経 (
大 正 一、 一一四下)、大 楼 炭 経 (大正 一、
二七七中)、 起 世 因本 経 (
大 正 一、 三六六上) に、 金 、 銀 、 水 精
-84-
一方 、 こ れ ら の 漢 訳 、 も し く は こ れ ら の異 本 の 漢 訳 で 、 こ
I
阿 弥陀 経 系
れ に 相 当 す る箇 所 は 次 の とお り であ る 。
(1
羅)
什 訳 ﹁阿 弥 陀 経 ﹂ 金 、 銀 、 琉 璃 、 頗 梨 、 車 渠 、 赤 珠 、 馬
﹁称 讃 浄 土 仏 摂 受 経 ﹂ 金 、 銀 、 吠 琉 璃 、 頗 眠 迦 、 赤
璃 (大 正 一二、 三 四 七 上 )
(2
玄)斐 訳
無量寿経系
真 珠 、 阿 湿 摩 掲 拉 婆 、 牟 娑 落 掲 拉 婆 (大 正 一二、 三 四九 上)
II
︹ま た は 珊 瑚 ︺、 虎 珀 、 車 渠
(
大 正 一二、 二 八 三 中)
(
1) 支 婁 迦 識 訳 ﹁無 量 清 浄 平 等 覚 経 ﹂ 金 、 銀 、 水 精 、 琉 璃 、 白
玉
︹
白 玉 ︺、 號 珀 、 車 渠
︹
水 精 ︺、
(大 正 一 二、 三
(2) 支 謙 訳 ﹁仏 説 阿 弥 陀 三 耶 三 仏 薩 楼 仏 檀 過 度 人 道 経 ﹂ 白 銀 、
黄 金 、 水精 、 琉 璃 、 珊 瑚
〇 三中-下)︹ 十 礁 磯 (三 〇 四 上)︺
(
3) 康 僧 鎧 訳 ﹁仏 説 無 量 寿 経 ﹂ 金 、 銀 、 琉 璃 、 頗 梨
珊 瑚 、 砺 璃 、 車 渠 (大 正 一二、 二 七 〇下 )
(
4) 菩 提 流 志 訳 ﹁無 量 寿 如 来 会 ﹂ 黄 金 、 白 銀 、 琉 璃 、 頗 梨 、 赤
珠 、 馬 璃 、 (美 ) 玉 (大 正 一 一、 九 六 上-中)
(
5) 法 賢 訳 ﹁大 乗 無 量 寿 荘 厳 経 ﹂ 金 、 銀 、 瑠 璃 、 頗 梨 、 真 珠 、
﹁法 華 経 ﹂ (見 宝 塔 品) 金 、 銀 、 琉 璃 、 車 渠 、 馬 拶 、
法 華経系
疎礫 、 礪 璃 (
大 正 一二、 三 二 二 上-中)
III
(
1) 羅 什 訳
方)
真 珠 、 致口
塊 (大 正 九、 三 二 中)
七宝 についで (
定
(
2) 竺 法 護 訳 ﹁正 法 華 経 ﹂ 金 、 銀 、 琉 璃 、 水 精 、 珊 瑚 、 虎 魂 、
車 渠 、 馬 璃 (一〇 二 中-下)
参 考 に 次 の二 資料 を あげ で おく 。
(
3) 添 品 は (
1) に 従 う (一六 七 上)
﹁大 智 度 論 ﹂ 金 、 銀 、 毘 琉 璃 、 頗 梨 、 車 一
渠 、馬 璃 、赤 真 珠 (
大
正 二五 、 一三 四 上)
﹁一切 経 音 義 ﹂ 金 、 銀 、 瑠 璃 、 頗 梨 、 車 一
渠 、赤 真 珠 、礪 璃 (
大
以 上 の諸 資 料 を対 照 す る と、 七 宝 のう ち初 め の四宝 は そ の
正 五 四 、 四 六 四 上)
種 類 も 順 序 も ほ ぼ 一定 し で い る 。 こ れ は そ れ ら が 四 宝 と い う
rupya
が 金 と銀 を さ す こ と に 問 題 は
数 え 方 に よ つ でま と め ら れ で いる こと に も よ る ので あ ろ う。
さ で 、subarna
と
biakidを
fbi-
な い 。baiduryは
a中 国 語 に 音 訳 さ れ で 吠 琉 璃 ま た は 琉 璃 と
な り、 意 訳 さ れ で遠 山 宝 と な る 。遠 山 宝 は
含 量 (
遠 山) の 派 生 語 と み る 解 釈 に 従 つ た 訳 語 で あ ろ う 。 こ
(1)
Ratnap
の 山 は ブ ッ ダ バ ッ タ (Budjbhttの
a文
)章 を 解 釈 し た フ ィ ノ
(2)
ーに よ る と南 イ ンドに あ る 。 ブ ッダ バ ッタ は
を 書 いた 六世 紀 以後 の イ ンド の仏 教 徒 で あ る。
こ の宝 石 は 今 日 い う と こ ろ の ど の 宝 石 で あ ろ う か 。 最 大 の
︹
起 世 経 (大 正 一、 三 一 一中)、 起 世 因 本 経 (大 正 一、 三 六 六 中-
手 が か り は こ の宝 石 が 空 色 に た と え ら れ で い る こ と で あ る
下 )、 倶 舎 論 (大 正 二 九、 五 七 中)︺。 と こ ろ が 、 ガ ル ベ 、 タ ゴ ー
-85-
七宝 に つい で (定
方)
フ ァ イ ァ で な く 、 ラ ピ ス ・ラ ズ リ を さ す も の と考 え ら れ で い
﹁様 々 の透 明 石 ﹂ (第 五 十 六 節) な る 表 現 に こ の 石 が 含 ま れ で
(7)
ル、 フ ィ ノ ー は こ れ を 猫 目 石 と 考 え で い る 。 猫 目 石 は 淡 緑 色
ュト ラ海 案 内 記 に は こ れ の み を さ す 語 は な く 、 そ の か わ り に
る 。 で は サ フ ァ イ ア を さ す 語 は 何 で あ つ た か と い う と 、 エリ
(3)
の石 だ か ら 、 仏 教 に 伝 わ る 考 え と 矛 盾 す る 。 し か し 、 同 一の
(4)
宝 石 が 種 々 の 色 を 呈 す る こ と は 多 い 。 ベ リ ル、 ト ル マリ ン、
水 晶 な ど が よ い 例 で あ る 。 ブ ッダ バ ッ タ に よ る と 、 <蝕仙口曙 ⇔
い た と考 え ら れ 、 ま た プ リ ニ ゥ ス (76)プ
、ト レ マ イ オ ス (
あ
I,
(9)
のベリュロスの語の中にもこれが含まれた可能性が
に も ﹁種 々 の 色 ﹂ (amelavaが
)あ つた 。 だ か ら 、 同 じ 一 つ
86)
の語 が 仏 教 徒 の 集 団 と 非 仏 教 徒 の 集 団 に お い で そ れ ぞ れ 別 の
る 。 他 の学 者 は プ リ ニウ ス (125
の) ksdgshを サ フ ァ イ ア
berull
はu
、sプ リ ニ ゥ スに よ れ ば 、 イ ン ド に 産 し 、 他 で は
と考 え で いる。
lajava
殆-ど 産 し な い。 そ れ は 六 角 形 に 切 る こ と に よ つ で 面 か ら の 反
lazu
とlい
iう オ リ エ ン ト
(8)
色 の宝 石を さ す 語 に 転 化 し で い つた と考 え る こと も で き る。
lap(
i
石s
)と い う ラ テ ン語 と
さ で 、 青 色 の 石 に は い ろ い ろ あ る 。 第 二 候 補 の ラ ピ ス ・ラ
ズ リは
の (? ) 言 葉 と の合 成 語 で あ る 。lazuの
l語
i源 であ る
射 光 が強 ま る。 最 も 好 ま れ る
berull
のu
にsせ も の を つ く る
berulは
lu
海sの緑 色 を も つ も
rt(
aア ラビ ァ語
の で、 以 下、 薄 い緑 を 帯 び た黄 色 い石 、 も つと緑 の薄 い石、
lazuは
rd
中)
世 イ ンド の宝 石 書 に も あ り、 現代
ノ・ン ド 語 に も 残 つ で い る 。 ラ ピ ス ・ ラズ リ の産 地 は ア フ ガ ニ
hacijkdre な る 石 、aeroidな
eる
s石、 ろう 色 (
黄 色) の
(5)
スタ ンの バダ フ シ ャ ンに あ つた が、 こ の石 は古 く か ら周 辺 の
ド人 は水晶 をも と に とり わ け
石 、 オ リ ー ブ 油 色 の 石 、 水 晶 に 似 た (無 色 の)石 で あ る 。 イ ン
(6)
の ﹁歌 手 ウ ル ・ ニナ の像 ﹂ の 目 を は じ め 遺 品 が 多 く あ る 。 次
(10)
bjaidyの
aに せ も
baidur
はya
よ く 合 致 す る 。 こ の 二 つ の 言 葉 は 同 一の 語 で あ る 可 能 性 さ え
る と 、 プ リ ニゥ ス の berull
とu
ブsッ ダ バ ッ タ の
の と し で ガ ラ ス (kacや
a)
水 晶 (sphatが
ik
あa
る)。 こ う し で み
は竹 の葉 の色 を 呈 す るも の であ り 、 ま た
色 があ り、 最 も す ぐ れ た のは 孔 雀 の胸 の部 分 の青 い色、 ま た
一方 、 ブ ッ ダ バ ッ タ に よ れ ば 、baidurに
ya
は いろ い ろ の
の にた け で いた、 と。
高度 文 明 で 用 い ら れ た 。西 紀 前 二 九〇 〇 年 頃 の シ リ ア の マリ
に の べ る よ う に 、 エ リ ュト ラ海 案 内 記 の ﹁サ ッ ペ イ ロ ス﹂ が
ラ ピ ス・ ラ ズ リ を さ す な ら ば 、 こ の石 は 西 紀 一世 紀 ご ろ に も
盛 ん に 取引 き さ れ で い た こ と に な る。
第 二 に サ フ ァ イ ァ が あ る 。 エリ ュト ラ 海 案 内 記 (第 三 十 九
120)
節) に バ ル バ リ コ ンか ら 輸 出 さ れ る 宝 石 と し で サ ッ ペ イ ロ ス
ksd
sappir
のu
語sが 出 で い る 。 し か し 、 こ れ ら は い ま の サ
(sappheが
iあ
ro
げsら
)れ 、 プ リ ニゥ ス (dslg
にも
-86-
(11)
強 い 。 そ し で 、 ラ テ ン語
(14)
も ガ ラ ス器 かも しれ な い。 東大 寺 献 物 帳 に は ﹁藍 色 琉 璃 、 浅
緑琉 璃 、 緑 琉 璃 ﹂ とあ り 、 正倉 院 に は瑠 璃 、 白 瑠 璃 、 緑 瑠 璃
berulが
lu
、sそ れ が 指 し た 宝 石 と
bery
のl
う ち に 求 め る こ と は当 を え
vaidur
をyこ
aの
berylに 伝 え ら れ で い る な ら 、わ れ
とも に、 正 しく 今 日 の
われの
が つく ら れ た の だ から 、 ガ ラ ス器 が琉 璃 の名 のも と に販 売 さ
vaiduの
rに
yせ
aも の
ス製 品 で あ る。 先 述 の よう に ガ ラ スで
と 称 す る 圷や 小 玉 が現 存 す る が、 こ れ ら 現存 す るも のは ガ ラ
属 さ な いが、 古 代 人 に厳 密 な 区 別 は でき な か つた かも し れな
れ た であ ろ う ご と は想 像 に 難 く な い。 し か し、 慧 琳 音 義 (大
(15)
で い る で あ ろ う 。 サ フ ァ イ ア は コ ラ ンダ ム に 属 し ベ リ ル に は
い か ら 、vaidurは
ya
サ フ ァイ アであ る 可 能 性 も あ る。 し か
正五四、三 一七中) に は琉 璃 に つ いで ﹁天 生 の神 物 に し で是 れ
人 間 錬 石 の造 作 、焔 火 所 成 の瑠璃 に非 ざ る な り ﹂とあ る か ら 、
し 、 サ フ ァ イ ア は イ ン ド 語 で は ニー ラ (nil
とa呼
)ば れ る 。 プ
nili
とoい
sう 名 が で
慧 琳 に した が え ば、 琉 璃 は本 来 は ガ ラ スでな い と いう こと に
リ ニウ ス (114
に)イ ン ド産 の 宝 石 と し で
る が、 プ リ ニゥ スの説 明 か ら だ け で は、 こ の
な る。
nill
がoサ
s フ
ァ イ アを さ す か ど う か 決 定 で き な い。 少 な く と も 色 の説 明 に
vaiduに
ry
つa
い で長 々と述 べた が 、 そ の正 体 に つ い で 結
い る。 水 精 は ﹁水 の精 ﹂ であ る と いう 意 味 で、 無 色 透 明 の水
sphati
はk中a国 語 で破 喫 と音 訳 さ れ、 水 精 と意 訳 さ れ で
論 は保 留 にし でお く 。
さ れ た 。 プ リ ニ ウ ス (114
に)。callと
ai
いn
うa宝 石 が で で く る
晶 を さ した こ とは 間 違 いな い だ ろう 。 中 世 イ ンド宝 石 書 でも
第 三 に ト ル コ石 が あ る 。 こ れ も エジ プ ト で 空 の 色 の 象 徴 と
は ず れ があ る。
が 、 こ れ が ト ル ロ石 と さ れ で い る 。 産 地 は 今 日 の ソ 連 領 ト ル
(12)
キ ス タ ン で 、 ウ ォ ー ミ ング ト ンに よ れ ば 、 こ れ は イ ンド の バ
sphatの
ik
一a
つ 。candurは
k月
k光
aに
r 触 れ で水 を 出 す と さ
sphat
のi
如kくaに 輝 く 水 ﹂ の
ル バ リ コ ンか ら 輸 出 さ れ た 。
(16)
れ、 詩 の中 に も ﹁ヒ マラ ヤ の
句 が あ る と い う 。 大 智 度 論 (大 正 二 五、 一三 四 上) に は ﹁氷 化
次 に 琉 璃 が ガ ラ スで あ る 可能 性 も考 えな け れ ば な ら な い。
漢 書 西 域 伝 の 注 に ﹁師 古 日 、 大 秦 国 出 青 黄 黒 白 赤 紅 繧 紺 紫 緑
し で頗 梨 珠 とな る ﹂ と あ り、 西 洋 でも 水晶 は ア ルプ スの氷 の
(17)
ろ う 。 第 ニ ク シ ャ ー ナ朝 の都 の跡 と み ら れ る ベグ ラ ム か ら 出
十 種 琉 璃 ﹂ と あ る の は シ リ ア の ガ ラ ス製 品 を さ し た も の で あ
bila
あur
sphat
をi水k晶
aと 訳
化 石 とす る説 が あ つた 。 現 代 の学 者 は
sphatにi由
k来
aす
す こと に 一致 し で いる 。 現代 イ ンド語 で は 水 晶 を
phatとa呼kん で いる が 、 後 者 は
た ガ ラ ス器 も シ リ ア 方 面 か ら も た ら さ れ た も の で あ る 。 法 顕
(13)
る いは
方)
が 五世 紀 初 頭 に ア フガ ニスタ ン の ハッダ でみ た ﹁瑠 璃 の鍾 ﹂
七 宝 に つい て (
定
-87-
七 宝 に つい で (
定
方)
る で あ ろ う 。水 晶 も 、 瑠 璃 と 同 じ よ う に 、 ガ ラ ス製 の 模 倣 品
(22)
四、四六三下)。 他 方 に 礪 磯 は馬 の脳 み そ に 似 で いる か ら 馬 脳
cuysと名 づ け ら れ た と いう 説 も あ る が、 これ も 納得 で き る 説 明 で
あ る。 問 題 の火 山 岩 の大 き さ は馬 の脳 ぐ ら いが普 通 で、 そ れ
の あ つ た 可 能 性 が あ る 。プ リ ニ ゥ ス (29
に)よ れ ば 、水 晶
talll
にu
非m常 に よ く 似 た ガ ラ ス製 品 が つ く ら れ た 。水 晶 は ピ
(19)
プ ラ ー ワ ー の スト ゥー パか ら 発 見 さ れ で いる 。
る が、 ﹁馬 の脳 み そ ﹂ 説 は こ の説 とも 関 係 が あ り そ う であ る 。
assgalで
lは
a ass
はa
馬 (skt. の
a意
sと
vさ
aれ
)
を割 れ ば 内 部 に は縞 模 様 の石 が つま つ で い る 。lskamgjg
い。lohitamkは
t赤
a真 珠 と 訳 す 経典 が 多 い。lohi
がt赤
a
さ ら に漢 訳 に は號 珀 の訳 語 も あ る 。號 珀 は針 葉 樹 の樹 脂 の化
のパーリ
で、muktが
a真 珠 であ る。ピ ンク系 の真 珠 を 意 味 す る か とも
石 で あ つで、 と き ど き 内部 に虫 や 植 物 の 断 片 を と じ こ め た
七 宝 のう ち最 後 の三 つに 関 し で は 特 に 経典 に よ る違 いが多
思 わ れ る が 、他 の経典 の訳 語 が 示 す よ う に、 これ は 珊瑚 かも
﹁虫 入 り ﹂ が あ る 。 石 の胎 と は こ れ の こ と か と も 思 わ れ る
(20)
し れ な い。 珊瑚 を 珠 状 に加 工 し た ら、 こ れ を 赤 い真 珠 と みた
が 、 よ く わ か ら な い。 サ フ ァイ ア で内 部 に小 石 を 含 む も のも
(24)
aksjdgidkと
mg
い う ら し い。 フ ィ ノ ー は ア マ ラ コ ー シ ャ を 参
(23)
で る気 持 が 起 き でも 不思 議 で は な い。 大 智 度論 の註 (
大正二
(21)
五、 一三四上)に は ﹁是 れ 珊瑚 に非 ず ﹂ と あ る が 、 フ ィ ノー の
と同 じ のよ う で、 結 局、 珊 瑚 の よ う に 思 わ れ る 。 つ ま り、
ピプ ラー ワー の スト ゥー パか ら出 土 し た も の の中 で は ペ ッ ペ
あ げ る 三 つ のリ ストを対 照 す る と、lohitamはukltoahdit照
aし で asmsdjgha=
メエラ ル ド と し で い る が 、 信 じ 難 い。
mjdusudkdは 中 国 で は 多 く 車 渠 と 意 訳 さ れ 、 玄 斐 に お
し れ な い。
llokdjgはk珠 状 の珊瑚 、 lloddj
はk
未a
加 工 の鉤 状 (ankaが
)玉 髄 cornelと
i報
an
告 し で い る の が、 これ に相 当 す る か も
の珊 瑚 を さ す の では な いだ ろ う か 。 ピプ ラー ワ ー の ス ト ゥー
パか ら の出 土 品 中 に こ の両 種 の珊 瑚 が あ る 。
拉 婆 と音 訳 さ れ で いる 。asma
は 石 、garbh
はa胎 の意 で あ
さ 二三 寸 で、 殻 内 は白 哲 で玉 のよ う であ る。﹂(諸橋大漢和 ﹁車
輪 の渠 に似 でお り 、 大 き いも のは 長 さ 二三 尺 、 巾 約 一尺 、 厚
六世紀)に よ れ ば ﹁海 産 の大 貝 で背 上 に聾 の文 様 が あ つ で車
うね
い で は 牟 娑 落 掲 拉 婆 と 音 訳 さ れ で い る 。 車 渠 と は 李 時 珍 (一
る 。 周 知 のよ う に 砺磯 と いう のは 火 山岩 の空 洞 内 に 石 英 の結
渠﹂より)百 科 事 典 の ﹁し ゃ こ﹂ の記 述 も ほ ぼ これ に等 し い。
asmagarb
はh多aく馬 脳 と漢 訳 さ れ、 玄 突 で は 阿 湿 摩 掲
晶 が 発 達 し で でき た も の であ る 。 そ の形 状 は ま さ し く 石 の胎
翻 訳 名 義 大 集237に は
わだち
内 に でき た 宝 石 であ る 。 慧 琳 も 、 礪 璃 の項 の下 に ﹁石 蔵宝 と
smdnf-mdmにf対
dし で 漢 訳 ﹁陣
訳 す のは 石 の中 に 生 ず る か ら で あ る﹂ と い つ で い る (大 正五
-88-
礫 等 名 ﹂ と配 し で い る。 鐙障 訂 は ほ ら貝 で あ る が、 宝 石 や
価 値 の高 いダ イ ヤ モ ンドや ルビー が な い こ と で あ る 。 そ し
にそ の例 があ る。 竜 谷大 学 編 ﹁仏 教 大辞 彙 ﹂ の ﹁七 宝 ﹂ の項
adama
(ダ
sイ ヤ モ ンド) (55を
)あ げ 、 以 下 、 真 珠 (62)、smara-
の で あ る 。 プ リ ニウ ス は 宝 石 中 で 最 も 価 値 あ る も の と し で
装 飾 品 と し でも 用 い ら れ る。 vdskjgkd
やh rckchdod で 、 も し か す れ ば 、 サ フ ァ イ ア と 真 珠 す ら な い か も し れ な い
には ﹁陣 礫 と は 紗蒔 訂 若 く は之 よ り転 化 せ る語 の音 訳 に非
ざる か ﹂ と あ る 。 と にか く車 渠 が貝 であ る こ と には 問 題 はな
渠 で あ る か ど う か は 依 然 と し で不 明 であ る 。辞 書 に よ れ ば 、
る 。 一方 、 エ リ ュ ト ラ 海 案 内 記 に よ つ で も 、 ダ イ ヤ モ ン ド と
mas、
真 珠 、berullの
u産
s地 と し で イ ンドを 筆頭 にあ げ で い
よ う であ る) (62)、beru(
l7
l6
u
を
)
sあ げ で い る 。 し か も 、 巴ada-
gudu(
s
エメ ラ ルド、 た だ し エメ ラ ル ド以 外 のも のを も 含 ん で い る
masar
はaエメ ラ ルド、 galvaは
rk
水a
晶 とさ れ で いる が、
真 珠 が 西 紀 一世 紀 ご ろ 南 イ ン ド 諸 港 か ら の 西 方 へ の 重 要 な 輸
musaragがaこ
lv
のa
車
mkldsjgは
k果
dし
va
で これ ら の合 成 語 だ ろ う か 。慧 琳 音義 の
出 品 で あ つた こ と が 知 ら れ る 。 ま た 今 日 セ イ ロ ンは ル ビ ー と
さ そ う であ る 。 し か し 、 イ ンド語 の
﹁牟娑 羅﹂ の項 目 (大正五四、 六三〇下) の下 に は馬 脳 と 出 で
サ フ ァ イ ァ の産 出 国 と し で名 高 い が 、 上 述 の南 イ ンド の 諸 港
(25)
いる 。 ま た ﹁牟 娑 洛 宝 ﹂ の項 目 (六四 一下) の下 に ﹁是 れ 紺 色
kjds
igkj
kdjgi
jditw
203)、
一方 、 イ ン ド 宝 石 専 門 書 は 宝 石 中 の 宝 石 (mdjgd)
kl
とg
しdu
は 西 紀 前 一世 紀 か ら 宝 石 収 集 が 盛 ん に な つ た 。
(26)
dkgjで
i いた 可 能 性 が 強 い。 因 み に 、 ロ ー マ の 富 裕 階 級 の あ い だ で
か ら 運 び だ さ れ た ﹁様 々 の 透 明 石 ﹂ の な か に そ れ ら が 含 ま れ
dsljg
kdiは
dkkmdgljsd
を 海 産 の宝 石 十 種 の
ad
(k
ji
kd
d
宝 な り ﹂ と あ る 。 フィ ノー は こ の色 によ つ で これ を ア メジ ス
II
ト (紫 水 晶)か と し で い る 。 し か し 、culla
kgjkk
で
ddsl
一つ に 数 え で い る 。 (も つとも こ の十 種 の中 に は 金 、 銀 、 琉 璃 も
い る。 これ ら は そ れ ぞ れ 阿 修羅
Bala
の骨 、 歯 、 血 、 購 、 胆
の五 つを あ げ で
含 ま れ で い る。) 大 多 数 の 漢 訳 が 示 し で い る よ う に 、 こ れ は や
汁 か ら 生 れ たも の と さ れ る が、 これ が 宝 石 の色を 説 明 し で い
mfdsugktu
は り車 渠 であ ろう 。 ペ ッペに よ る と、 ピプ ラ ー ワー 出 土 品 中
る こ と は 明 ら か で あ る (購 は恐 ら く 碧 眼)。 そ し で 、 そ の 他 の
バ ッタ の ラト ナ バ リ ー ク シ ャーは 六 世 紀 以 後 の も の ら し い
フ ァ イ ア、 エ メ ラ ル ド を 意 味 し た こ と が 断 定 で き る 。 ブ ッダ
記 事 も 参 照 し で 、 こ れ ら が ダ イ ヤ モ ンド 、 真 珠 、 ル ビ ー 、 サ
vajra,
にも 貝 製 品 ら しき も の があ る と いう 。
以 上 、疑 点 を 残 し な が ら も 、七 宝 の だ い た い の 内 容 を み た 。
いま こ れ ら を 全 体 と し で 眺 め る と 一つ の事 実 に 気 が つく 。 そ
方)
れ は七 宝 のう ち に、 イ ンド の宝 石 とし で名 高く 、 宝 石 申 でも
七宝 に つ い で (定
-89-
が 、 西 紀 一世 紀 こ ろ か ら 六 世 紀 こ ろ に か け で 、 仏 教 の 七 宝 に
や ム ー ジ リ ス港 に も ち こ ん だ こ と が 知 ら れ で い る 。 ブ ッ ダ バ
ユト ラ海 案 内 記 で も 商 人 た ち が こ れ を イ ンド の バ リ ュガ ザ 港
方)
な か つ た 新 し い宝 石 が 主 役 と し で 登 場 し た こ と が わ か る 。 ま
ッ タ が 珊 瑚 の産 地 の 一つ と し で あ げ で い る
七宝についで (
定
た 、 ラト ナ パ リー ク シ ャー に よ つで、 ダ イヤ モ ンドは 主 に南
が準 宝 石
す な わち 外 国 で産 し た。)逆 に 仏 教 の 七 つ の 宝 石 の 名 は 殆 ど 中
リ 、 ト ル コ 石 、 紫 水 晶 の腕 飾 が あ り 、新 帝 国 時 代 (一五 八○-
エ ジ プ ト で は 、 第 一王 朝 (三〇 〇 〇 年 頃) に 金 、 ラ ピ ス ・ ラ ズ
さ き に メ ソ ポ タ ミ ヤ の ラ ピ ス ・ ラ ズ リ の遺 晶 に ふ れ た が 、
Romakす
aな わち 地 中 海 の こ と であ る。
(28)
ramak
もaフ ィ ノ
イ ンドか ら 、真 珠 、 ルビ ー、 サ フ ァイ アは セ イ ロ ンか ら産 出
ー に よれ ば
世 イ ンド 宝 石 書 に 出 で こ な い 。 わ ず か に 慈 胤 臼 饗
七 三 〇) に は 水 晶 、 硬 玉 、 玉 髄 、 孔 雀 石 、 ざ く ろ 石 、 真 珠 、
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と し で 現 わ れ 、spdsgjと
dgkldsjsu が
ラ ピ ス ・ ラ ズ リ 、 碧 玉 、 石 英 な ど の 石 や 陶 片 、 色 ガ ラ ス片 な
し た こ と が わ か る 。 (エメ ラ ルド は
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若 干 の 書 に 現 わ れ る の み で あ る 。 (梵文 法 華 経 の
ど が 象 嵌 そ の他 に 用 い ら れ 、 ダ イ ヤ モ ン ド 、 ル ビ ー 、 サ フ ァ
(30)
か ら 西 紀 前 後 の ガ ラ ス、 水 晶 、 め の う の首 飾 り や 、 ス サ か ら
(29)
書 に現 わ れ る。)珊 瑚 も
イ ア 、 オ パ ー ルは な か つ た ら し い と い う 。 イ ラ ンで は ギ ラ ン
uparatの
na
一つとし で現 わ れ る が、
v凱毎 日。 ま た は 箕 碧 巴鋤 と い う 別 の言 葉 に よ つ で で あ る 。
こ う し で み る と 、 七 宝 は 地 理 的 に 南 イ ンド と 関 係 の な い 土
サ サ ン朝 時 代 の 水 晶 や ヒ ヤ シ ン ス 石 が 出 で い る 。 イ ンダ ス文
カ けネ リ アン
地 の宝 石 観 を現 わ し で い る か、 あ る い はや や古 い時 代 の宝 石
相 (金 、 一
銀、 水 日
聞、 珊瑚 、 真 珠 、 玉一
髄、 ア メ ジ スト、 ト パ ー ズ) に
仏 教 の七 宝 は 西 紀前 四 世紀 ころ
羅 伽 陀)、 サ フ ァ イ ア (
因 陀 尼 羅 、摩 詞 尼 羅)、 ル ビ ー (
鉢 摩 羅 伽)、
智 度 論 (大 正 二五、 一三 四 上) は 七 宝 の ほ か に エ メ ラ ル ド (摩
日 聾 警 簿暴
料 は 比較 的 新 し いと推 定 し で よ い こ と が わ か る。仏 典 に も
以 上 に よ つ で、 宝 石 中 に ダ イ ヤ モ ン ド が 数 え ら れ で い る 資
ら れ でいる 。
明 で は装 飾 品 は金 、 フ ァ イ ア ン ス、 紅 玉 髄 、 ブ ロ ンズ で つく
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t語
nは
a リ グ ・ヴ ェー ダ に す で に 三 回 み
の 知 ⋮識 を 表 わ し で い る か の い ず れ か で は な い か と い う 考 え が
生 じ る 。sapta
え る が 、そ れ が 何 を 意 味 し た か は 不 明 で あ る と い う 。し か し 、
た ぶん対 応 し で い る。 そ れ は ま た 前 方 アジ アと 称 す る地 域 の
ダ イ ヤ モ ンド (
越 闇 )を あ げ で お り 、 ミ リ ンダ パ ン ハ(PTS,
(? ) の ピ プ ラ ー ワ ー の 宝 石
宝 石 相 を 示 し で い るよ う に み え る 。 こ の地 域 に は、 金 、 銀 は
118
(27)
も ち ろ ん、 水 晶 、 ラピ ス ・ラズ リ、馬 脳 、真 珠 、 珊瑚 も あ つ
26は
7サ
) フ ァ イ ア、 ダ イ ヤ モ ン ド を あ げ 、 梵 文 法 華 経 は
に属 す る宝 石 を あ げ る も のが あ る。 すな わ ち、 大
た 。 な か ん ず く 珊 瑚 は 地 中 海 方 面 の産 物 と し で 有 名 で 、 エリ
pp.
-90-
(31)
大 日本 仏教 全 書 、 東 大 寺叢 書第 一、 一三頁 。
中 世 イ ン ド 宝 石 書 の う ち 一書 は 真 珠 の色 と し で 白 し か 考 え
ず 、 一書 は 蜂 蜜 色 、 黄 色 、 白 の 三 つ を あ げ 、 一書 は こ の 三 っ に
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青 を 加 え 、 一書 は 蜂 蜜 色 、 白 、 赤 (raktを
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)げ で い ると いう 。
Fompt.
31
30
荻 原 ・土 田 ﹁改 訂 梵 文法 華 経﹂ 三 六 二頁 。
人類 の美 術 、 古 代 イ ラ ン の美 術II、
新 潮 社、 二 二 二頁 。
29 友 部直 ﹁エジプ ト の工芸 ﹂ (講談 社 、世界 美 術 大系 、エジプ ト
美 術、 二〇 〇-二 〇 二頁 )
597.
参 照。
苑 音義 、 大 正五 四 、 四 四〇 下 )
22﹁ 馬 脳 玉属 也。 出 自 西 域 文理 交 錯 、 有 似馬 脳、 故 其 方 人 因 以
名之。
﹂ (北史 、 献 文 六 王伝 ) ﹁⋮⋮故 に謬 り で 馬 脳 と 云う 。﹂(慧
20
2
参3照 。
14
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djfi村 川 堅 太 郎 碧
pp.
13﹁ 高 僧 法 顕 伝 ﹂ (大 正 五 一、 八五 八 下 )
djfi
p.
p.
Plinius,
観 音 品 に相 当 す る箇 所 で く。冒鋤を あ げ で いる。 これ ら は 少 な
jfidk
(註 14 ) 参 照 。
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17
原 色 日本 の美 術 、 第 四巻 、 正倉 院 、 小学 館 、 昭 和 四 三 年。
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15
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く とも そ の箇 所 に関 す る限 り 、 新 し い段 階 を示 し で いる と 言
ラ ンダ ム
ト ル マリ ン
え る よ う で ある 。
4
andjgi
世 界 美 術大 系、 第 三巻、 オリ エ ント美 術 、 講 談 社 、 一九 六 三
(註 7 )
村 川 、 前 掲 書 、 二 三 一頁
25し
1.
か し 、 フ ィ ノ ー は そ う 考 え な い 。 Font,
方)
dlkji
﹁エリ ュト ゥ ラ ー 海 案 内 記 ﹂、 生 活 社 、 昭 和 二 三 年 、 一九 三 首
Empire
6
8
p.
11 ウ ォ ー ミ ン グ ト ン は そ う 考 え で い る 。Waiding
七宝に ついで (
定
-91-