「2015 年 新入社員意識調査」結果 「定年まで」の意識高まるも、「転職」志向も増加 景気回復への期待感やそれに伴う人手不足から企業の新卒求人は改善傾向にあるものの、昨年の就職 活動も厳しい状況が続いた。そのような中、今春も多くの新入社員が社会人生活の第一歩を踏み出し た。毎年、県内企業の新入社員を対象に当社が実施するアンケート調査結果から、今年の新入社員の 意識を探ってみたい。 ◇調 査 名:「新入社員意識調査」 ◇調 査 時 期:3月 25 日(水)~4月 24 日(金) ◇調 査 対 象:当社開催の新入社員研修に参加した新入社員 ◇有効回答数:668 人<男性 348 人(52.1%)、女性 320 人(47.9%)> ■入社動機は「資格や能力が発揮できそう」が最多で4割 『入社を決めた主な動機は何か』(複数回答)と尋ねたところ(図1)、今年も「自分の資格や能力 が発揮できそう」 (40.0%)が最も多く、昨年より 1.8 ポイント増加した。次いで多い「企業イメージ がよい」は 27.8%と 1.1 ポイント増加した。「企業イメージがよい」との回答は、昨年、3年ぶりに 前年差-4.3 ポイントと大きく下落に転じており(2012 年:29.9%→13 年:31.0%→14 年:26.7%)、大 企業を重視する傾向は依然続いているものの、近年は企業規模にこだわらない姿勢も出てきているよ うだ。 図1 入社を決めた主な動機 上位10項目(複数回答) 2015年 0% 5% 10% 2014年 15% 20% 2013年 25% 30% 35% 自分の資格や能力が 発揮できそう 45% 40.0 38.2 39.3 27.8 26.7 企業イメージがよい 31.0 19.2 19.0 18.8 業績がしっかりしている 17.3 16.5 16.2 会社のある場所がよい 13.7 12.2 10.9 先生に勧められた 13.5 14.4 これから発展しそう 9.2 9.2 通勤の都合 福利制度・厚生施設が 充実している 17.2 11.7 8.7 8.2 8.9 8.3 9.5 8.4 社員教育に熱心 親戚、知人などの紹介 40% 4.3 7.8 7.6 ㈱しがぎん経済文化センター 「2015 年 新入社員意識調査」結果 1 / 10 ■女性は「協調性」、男性は「体力」「集中力」にも自信あり 『社会人として必要なもののうち、あなたが自信を持てるもの』 (複数回答)を尋ねたところ(図2 -1)、 「協調性」 (29.8%)が最も多く、昨年に比べて+6.1 ポイントと3年ぶりに大きく増加に転じ た。次いで「意欲・やる気」 (22.2%) 、 「忍耐力」(20.8%)と続いたが、どちらも近年減少する傾向 にある(25.6%→22.8%→22.2%、23.6%→22.2%→20.8%)。最多となった「協調性」だが、男性の 24.6%に対し女性は 35.4%と 10 ポイント以上高く(図2-2)、女性のほうが自信を持っている人が 多い。一方、男性は「体力」 (19.7%、女性:10.4%)、「集中力」(17.1%、女性:10.1%)で、女性よ りも割合が高くなった。 図2-1 あなたが自信を持てるもの 上位10項目(複数回答) 2015年 0% 5% 2014年 10% 2013年 15% 20% 25% 協調性 23.7 22.2 22.8 意欲・やる気 20.8 忍耐力 22.2 20.7 責任感 17.4 19.1 35% 29.8 26.1 25.6 23.6 23.6 18.3 社交性 30% 20.7 16.3 15.4 15.5 継続力 15.3 14.8 14.9 体力 柔軟性 14.4 14.9 12.4 13.7 14.4 13.1 集中力 11.9 根性 13.2 13.2 図2-2 あなたが自信を持てるもの〔男女別〕(複数回答) 男性 0% 5% 10% 女性 15% 20% 25% 35% 24.6 協調性 40% 35.4 22.3 22.2 意欲・やる気 18.8 忍耐力 23.1 20.5 20.9 責任感 社交性 15.9 継続力 16.5 16.1 体力 19.0 19.7 10.4 13.9 14.9 柔軟性 集中力 17.1 10.1 根性 10.8 13.0 5.2 5.4 創造力 4.9 4.4 主体性 知識・技能・資格 その他 30% 2.2 0.3 3.2 1.6 ㈱しがぎん経済文化センター 「2015 年 新入社員意識調査」結果 2 / 10 ■働きがい、「社会に貢献している時に感じる」は減少傾向 『どのような時に働きがいを感じると思うか』(複数回答)と尋ねたところ(図3)、「仕事が面白 いと感じる時」 (70.2%)が最も多く、次いで「職場の雰囲気が良いと感じる時」 (44.7%)と続いた。 第4位の「社会に貢献していると感じる時」 (20.8%)に働きがいを感じる人は年々減少する傾向にあ る。入社間もない新入社員にとって、自社の事業が社会でどのように役立っているかという実感はな かなか持てないのかもしれない。日々取り組む仕事と社会がどうつながっているのか、企業側も新入 社員の意識を高めるための工夫が必要だろう。 図3 どのような時に働きがいを感じるか(複数回答) 2015年 0% 10% 20% 2014年 30% 2013年 40% 50% 80% 73.3 44.7 45.6 43.7 職場の雰囲気が良いと感じる時 給料・ボーナスをもらう時 26.3 26.0 24.2 社会に貢献していると感じる時 20.8 23.4 26.2 15.8 17.6 16.3 自分を理解してくれる上司がいる時 6.9 4.4 5.3 昇進昇格する時 同僚と競争している時 70% 70.2 68.5 仕事が面白いと感じる時 その他 60% 2.1 1.3 2.0 1.8 4.3 5.4 ㈱しがぎん経済文化センター 「2015 年 新入社員意識調査」結果 3 / 10 ■「どんな仕事も一生懸命に」が7割 『仕事が自分に合わないときはどうするか』と尋ねたところ(図4)、例年どおり「どんな仕事で も一生懸命やる」 (70.6%)が最も高くなったものの、昨年より 6.3 ポイント低下し、近年減少傾向に ある。一方、 「好きな仕事なら一生懸命やるが、嫌いな仕事はそこそこに」 (9.5%→12.7%)、 「上司と 話し合ってその仕事を変えてもらう」(7.4%→10.0%)が昨年より増加した。 図4 仕事が自分に合わないときはどうするか どんな仕事でも一生懸命やる 好きな仕事なら一生懸命やるが、 嫌いな仕事はそこそこに 転職する その他 0% 2015年 2014年 10% 20% 30% 40% 70.6 50% 上司と話し合ってその仕事を替えてもらう 60% 70% 80% 12.7 76.9 2013年 10.0 9.5 78.5 ㈱しがぎん経済文化センター 90% 10.4 100% 3.0 3.6 7.4 5.5 4.3 1.9 3.3 2.3 「2015 年 新入社員意識調査」結果 4 / 10 ■「管理職にこだわらない」が最多となるも、4年連続で減少 『社会人としてどのような道を進みたいか』と尋ねたところ(図5)、「いろいろな仕事を経験し たいが、管理職にはこだわらない」(33.8%)が最も多くなったものの、4年連続で減少した。次い で「いろいろな仕事を経験し、部下を持つような管理職になりたい」(25.0%)、「一つの分野を勉 強し、その道の専門職になりたい」(22.2%)が続いた。 男女別でみると、男性は「管理職になり たい」(39.3%)が最も多く、3年連続で増加した。女性は「管理職にはこだわらない」(41.3%) が最も多いものの、3年連続で減少。一方で「専門職になりたい」(26.0%)が昨年より4.5ポイント 増加し、男性(18.8%)に比べ、女性のほうが専門職を志望する割合が高くなっている。 図5 社会人としてどのような道を進みたいか いろいろな仕事を経験し、部下を持つような管理職になりたい 一つの分野を勉強し、その道の専門職になりたい 特に考えていない 0% 10% 2015年 合計 25.0 2014年 合計 25.9 20% 30% 40% いろいろな仕事を経験したいが、管理職にはこだわらない 管理職にも専門職にもならず、一般社員でよい その他 50% 60% 70% 33.8 80% 22.2 34.1 90% 6.4 20.9 4.4 11.5 13.4 100% 1.1 1.4 2.6 2015年 男 39.3 27.0 18.8 10.9 1.5 0.6 2014年 男 38.7 2015年 女 9.3 2014年 女 10.9 27.4 41.3 41.9 ㈱しがぎん経済文化センター 20.3 26.0 21.5 10.7 10.6 8.9 12.2 16.5 2.3 0.6 0.3 「2015 年 新入社員意識調査」結果 5 / 10 ■「資格取得」を目指すが約半数 『自分自身の技能や能力アップのために、どのような勉強が必要か』(複数回答)と尋ねたところ (図6) 、 「資格を取得する」 (44.2%)が最も多く、次いで「パソコンスキルを向上させる」 (34.2%) 、 「セミナーに参加する」 (26.7%) 、 「外国語を勉強する」 (23.0%)となった。 「資格を取得する」では、 一級建築士、簿記、宅地建物取引士(宅建)等、業種によって具体的な資格名の回答が多くあった。 また「外国語を勉強する」で具体的記述があったのは「英語」が 106 人で最も多く、次いで「中国語」 16 人、 「フランス語」3人となった。 図6 自分自身の技能や能力アップのために、どのような勉強が必要か(複数回答) 0% 5% 2015年 2014年 2013年 15% 20% 25% 10% 30% 35% 40% 45% 50% 44.2 46.1 45.4 資格を取得する 34.2 パソコンスキルを向上させる 32.0 31.7 26.7 28.0 29.7 セミナーに参加する 23.0 23.7 外国語を勉強する 29.5 特に必要とは思わない その他 8.1 4.6 5.8 5.5 5.1 9.2 ㈱しがぎん経済文化センター 「2015 年 新入社員意識調査」結果 6 / 10 ■ 57.3%は「定年まで」。「よい仕事があれば転職」も増える 『定年まで勤めたいか』を尋ねたところ(図7-1)、「そうしたい」(57.3%)が最も多く、4年 連続で増加した。安定志向はさらに高まっているようだ。一方で「他によい仕事があれば転職する」 が2年連続で増加(14.8%→15.9%→17.4%)し、全体としては 2006 年から 13 年まで、8年間減少 傾向が続いていた転職に対して少し前向きになってきたようだ。 男女別にみても、男性の方が割合は高いものの、男女ともに「他によい仕事があれば転職する」と の“転職志向”は上昇傾向にある(次ページ、図7-2、図7-3)。また、男性では「いずれ独立し たい」(6.5%)が今年も第3位になったものの、近年減少傾向にあり、起業や独立志向は弱まってい るようだ。女性では「結婚したらやめる」 (11.1%)が前年比+1.1 ポイントと4年ぶりに微増となっ たものの、 「子供ができたらやめる」 (15.0%)は3年連続で減少した。結婚・出産後も働くという女 性の割合は近年増加する傾向にあり、少子高齢化が課題となる中で、育児休業など子育て支援制度の 充実や、制度を利用しやすい職場環境の構築が求められる。 図7-1 定年まで勤めたいか 0% 10% 2015年 20% 2014年 30% 2013年 40% 50% 17.4 15.9 14.8 他によい仕事があれば 転職する 7.2 7.3 7.9 子供ができたらやめる 5.3 4.9 5.4 いやになったらやめる 4.4 4.1 3.1 その他 4.3 4.0 いずれ独立したい 70% 57.3 56.7 55.2 そうしたい 結婚したらやめる 60% 4.1 6.3 7.2 7.2 ㈱しがぎん経済文化センター 「2015 年 新入社員意識調査」結果 7 / 10 図7-2 定年まで勤めたいか(男性) 2015年 0% 10% 20% 2014年 30% 2013年 40% 50% 60% 70% 68.6 66.8 65.4 そうしたい 19.1 17.5 16.7 他によい仕事があれば 転職する 6.5 いずれ独立したい 2.1 3.1 2.6 いやになったらやめる 子供ができたらやめる 9.6 10.3 3.8 2.5 4.4 その他 結婚したらやめる 80% 0.0 0.6 0.6 0.0 0.0 0.0 図7-3 定年まで勤めたいか(女性) 0% 5% 10% 2015年 2014年 2013年 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45% そうしたい 42.1 他によい仕事があれば 転職する 15.6 14.0 12.4 子供ができたらやめる 15.0 15.9 44.9 44.9 18.0 11.1 10.0 11.7 結婚したらやめる いやになったらやめる 3.8 5.3 4.8 5.6 その他 いずれ独立したい 50% 1.6 7.0 8.6 4.3 3.4 ㈱しがぎん経済文化センター 「2015 年 新入社員意識調査」結果 8 / 10 ■初めての給料は「家族へのプレゼント」 『初めての給料の使い道』(複数回答)を尋ねたところ(図8)、「家族などにプレゼントする」 (64.3%)が最も多く、次いで「貯蓄する」(47.9%)、「自分の身の回り品を買う」(34.2%)となっ た。 「家族へのプレゼント」は昨年(67.9%)より 3.6 ポイント減少した一方、 「貯蓄する」 「友人との つき合いに使う」は昨年より増加し(それぞれ 41.0%→47.9%、12.0%→19.1%)。家族への感謝を 形にしつつ、自分のために使おうという気持ちも強まっているようだ。 図8 初めての給料の使い道(複数回答) 2015年 0% 10% 20% 2014年 2013年 30% 40% 50% 60% 64.3 家族などにプレゼントする 63.4 貯蓄する 41.0 34.2 34.4 自分の身の回り品を買う 友人とのつき合いに使う 12.0 スポーツや趣味、旅行、 レジャー等に使う 12.3 12.6 13.8 5.4 記念になるものを買う 英会話や資格取得など、 自己啓発の費用に使う その他 70% 2.6 2.9 80% 67.9 47.9 52.6 43.9 19.1 23.0 9.5 8.7 5.1 2.5 2.6 4.1 ㈱しがぎん経済文化センター 「2015 年 新入社員意識調査」結果 9 / 10 ■理想の上司は今年も「イチロー」と「天海祐希」が人気 『理想とする上司像を有名人に例えると』と尋ねたところ(表)、男性の上司としては、米大リー ガーの「イチロー」を 54 人(男性 41 人、女性 13 人)が挙げ、10 年連続の1位となった。女性の上 司では女優の「天海祐希」が 74 人(男性 26 人、女性 48 人)で6年連続の1位となった。 『その有名人を選んだ理由』では、 「イチロー」は「仕事ができそう」「率先して手本を見せてくれ そう」が各 22 人で最も多く、次に「目標ややり方をはっきり示してくれそう」が 19 人で続いた。 「天 海祐希」を選んだ理由は、「頼りになりそう」が 33 人で最も多く、次いで「面倒見がよく、何でも相 談できそう」(31 人)となった。 表 理想とする上司像 男性の上司 回答数(人) 順位 女性の上司 回答数(人) イチロー 54 1 天海祐希 74 松岡修造 38 2 真矢みき 19 明石家さんま 18 3 江角マキコ 17 池上彰 16 4 仲間由紀恵 17 長谷部誠 15 米倉涼子 12 3 5 ■モチベーションや持続性を高める工夫を 回復の兆しが見えつつあるものの、昨年の就職活動も厳しい状況が続いた。そのような中、自らの 資格・能力を生かせる企業を志望する傾向は変わらず強い。また「協調性」に自信がある新入社員が 大きく増加したのに対し、「意欲・やる気」「忍耐力」が減少傾向にあるのは気がかりだ。一方、男女 とも「定年まで働く」との意識は高いものの、転職に前向きな姿勢も見える。仕事へのモチベーショ ンや持続性を高めながらいかに能力発揮を促していくか、受け入れる企業側も努力と工夫が求められ る。 2015 年6月 ㈱しがぎん経済文化センター 産業・市場調査部 長山 真由美 ㈱しがぎん経済文化センター 「2015 年 新入社員意識調査」結果 10 / 10
© Copyright 2024 Paperzz