焼却灰の資源化 -東京湾埋立処分場の延命化に向けて- 平成27年6月10日 平成27年度第1回区民との意見交換会 東京二十三区清掃一部事務組合 技術課長の塚越です。 「焼却灰の資源化-東京湾埋立処分場の延命化に向けて-」につい て説明します。 前回の区民との意見交換会でも少し触れていますが、焼却灰の資源化は、今年2月に改定 した「一般廃棄物処理基本計画」 (以下「基本計画」という。)の中で新たに加わった取組項 目です。 1 一般廃棄物処理基本計画の施策の体系 目 標 循 環 型 ご み 処 理 シ ス テ ム の 推 進 施 策 取 組 1 効率的で安定した中間 処理体制の確保 (1) (2) (3) (4) (5) 安定稼働の確保 ごみ受入体制の拡充 不適正搬入防止対策 計画的な施設整備の推進 ごみ処理技術の動向の把握 2 環境負荷の低減 (1) 環境保全対策 (2) 環境マネジメントシステムの活用 3 地球温暖化防止対策 の推進 (1) 熱エネルギーの一層の有効利用 (2) 地球温暖化防止対策への適切な対応 (3) その他の環境への取組 (緑化、太陽光発電、雨水利用等) 4 最終処分場の延命化 (1) ごみ処理過程での資源回収 (2) 焼却灰の資源化 (3) 破砕処理残さの埋立処分量削減 5 災害対策の強化 (1) 廃棄物処理施設の強靭化 (2) 地域防災への貢献 2 こちらが基本計画の施策の体系です。 計画の目標である「循環型ごみ処理システムの推進」を実現するため、5つの施策を設け ています。焼却灰の資源化は赤枠部分になりますが、4つ目の施策である「最終処分場の延 命化」の取組の一つとして位置づけられているものです。 2 東京湾内の最終処分場 3 こちらは、東京都が設置・管理している最終処分場です。 現在、東京23区では、中央防波堤外側埋立処分場及び新海面処分場で埋立処分を行って います。 東京都の使い分けとしては、中央防波堤外側埋立処分場(赤枠部分)では有機分を含んだ ものを埋立て、新海面処分場(ピンク色の枠部分)では有機分は一切入れないということに なっています。そのため、焼却灰の埋立ては新海面処分場のみで行っています。 なお、中央防波堤外側埋立処分場では、不燃ごみから資源となるものを回収した残りのそ の他ごみを埋立てています。これは、不燃ごみの中には一部有機分が付着しているためです。 この新海面処分場をすべて埋め立ててしまうと、23区内の最終処分場はなくなってしま います。新海面処分場より先は海ですが、ここに新たな処分場を建設する許可・認可は下り ないと言われているため、東京港内に新たな最終処分場を確保することは極めて困難です。 また、東京港内ではなく、23区内の土地に新たな最終処分場を設置することもまず不可能 であると考えているため、現在の最終処分場をできる限り長く使用することを考え、取り組 んでいかなければなりません。 3 最終処分量の推移 (図:一廃計画27 P.5 図-2-4) 4 これまでの23区の最終処分量の推移です。 平成12年度以降は、おおむね横ばい又は微減で推移していました。 平成18年度以降は、各区におけるごみ減量化の取組、3Rの推進、当組合では廃プラサー マルや灰溶融処理等を実施することで減少傾向となっていました。 しかし、平成22年度以降、最終処分量は微増又は横ばいで推移し、前基本計画の目標(予 測値)を大きく上回る結果となり、目標を達成できていません。この要因としては、東日本 大震災の影響により、前基本計画の取組項目であった「焼却灰の全量処理」を見直したこと が挙げられます。 この取組の内容としては「主灰の全量溶融」と「飛灰の資源化の検討」がありましたが、 東日本大震災の影響やスラグの有効利用量の見通しを踏まえ、灰溶融処理の規模縮小や飛灰 の資源化の検討を中止しました。 4 焼却灰の資源化の取組 新たな取組 • 主灰のセメント原料化 • 主灰のセメント原料化の拡大のための前処 理・脱塩処理の検討 • 主灰に含まれる金属の回収の検討 継続する取組 • 主灰の溶融処理(2工場稼働継続) • 炉底メタル、溶融メタルの資源化 • 飛灰の資源化の動向把握、その他資源化技術 の調査 5 そこで、基本計画の改定に当たっては、「焼却灰の全量処理」について見直した内容を継 続するとともに、新たな取組を実施していくこととしました。 新たな取組としては、 「主灰のセメント原料化」を中心とし、 「主灰のセメント原料化の拡 大のための前処理・脱塩処理の検討」、 「主灰に含まれる金属回収の検討」の3つがあります。 継続する取組としては、 「主灰の溶融処理」を葛飾・多摩川の2工場で来年度以降も行い、 スラグの需要見込みに沿って灰溶融処理を行っていきます。 また、溶融処理過程で生成される「炉底メタル、溶融メタルの資源化」についても引き続 き取り組みます。 「飛灰の資源化の動向把握、その他資源化技術の調査」については、現状では飛灰には放 射性物質が濃縮されているため、当面資源化は難しい状況にありますが、民間の資源化施設 の動向把握に努め、その他の資源化技術と併せて調査を進めていきます。 ここから先は、新たな取組について中心に説明していきます。 5 焼却灰について • ストーカ炉の主灰をセメント原料化 ストーカ炉 流動床炉 飛灰 飛灰 主灰 不燃物 6 本日の本題である焼却灰の資源化について説明する前に、既にご存知かもしれませんが、 焼却灰について簡単に説明をします。 当組合では、大きく分けて火格子(ストーカ)式焼却炉と流動床式焼却炉の2つのタイプ の焼却炉が稼働しています。現在稼働している19工場のうち、16工場がストーカ炉です。 ストーカ炉の底から出る燃え殻は主灰(ボトムアッシュ)と呼び、排ガス中に含まれ集じ ん器などで回収されるばいじんは飛灰(フライアッシュ)と呼びます。 焼却灰のセメント原料化において対象とする焼却灰は、ストーカ炉の主灰のみです。 流動床炉の焼却灰については、炉の構造上ほとんどの灰が飛灰となるため、セメント原料 化の対象とはなりません。なお、流動床炉の底からは主灰ではなく不燃物が出ますが、これ は主に金属です。不燃物は融点の関係でセメント原料化にはあまり向かないと言われていま す。鉄もセメントの原料に必要ですが、焼き鉄であることや輸送コスト・効率面を考慮し、 流動床から出る不燃物はセメント原料化には使用しません。 6 主灰のセメント原料化とは • 主灰を粘土の代替原料として、民間のセ メント工場で一般的なセメント(普通ポ ルトランドセメント)を製造 原料工程 石灰石 粘土 焼成工程 仕上工程 出荷 せっこう けい石 鉄原料 主灰で代替可能 仕上げ ミル 原料ミル クリンカ サイロ セメント サイロ 7 それでは、主灰のセメント原料化について説明します。 主灰のセメント原料化とは、清掃工場から搬出した主灰を用いて、民間のセメント工場で 普通ポルトランドセメントを製造することをいいます。普通ポルトランドセメントとは、単 に「セメント」と呼ばれるほど一般的なセメントです。 セメントは、石灰石、粘土、けい石、鉄原料を混ぜて焼成することでクリンカを作り、そ のクリンカを粉砕し、せっこうを加えて混ぜることで製造ができます。 セメント原料の粘土は、二酸化ケイ素(一般的に「シリカ」ともいう)や酸化アルミニウ ム等を含む原料であり、主灰にもこれらの成分が含まれていることから、代替原料として有 効利用ができます。 しかし、主灰を原料として使うには、事前に鉄くず等の異物の選別が必要であること、塩 素濃度が比較的高いため原料を調合しなければならないといった課題もあります。 7 主灰のセメント原料化の特徴 • 適正処理が可能 二次廃棄物の発生ゼロ 重金属・ダイオキシン類の適正処理 • セメント工場の受入能力は大きく、セメ ントは汎用性あり • 処理における留意点 前処理(主灰中の鉄くず等選別) 塩素濃度に合わせた原料調合 8 主灰のセメント原料化の特徴について説明します。 1つ目は、適正処理が可能であるということです。焼却灰の処理を委託するに当たっては、 適正に処理できるということが重要です。 セメント工場に搬入された主灰は、基本的にセメントとなるか排ガスとして出ていくだけ となります。主灰の前処理過程で鉄くずは発生しますが、これは鉄スクラップとして資源化 されるため、主灰のセメント原料化による二次廃棄物は発生しません。 主灰に含まれる重金属やダイオキシン類についても適正処理されます。重金属は、元来天 然原料や他の廃棄物にも含まれているものですが、主灰中の重金属はセメント焼成により安 定化されます。ダイオキシン類は1,450℃以上の高温で分解されるため、こちらについても セメント焼成により分解されます。 2つ目に、セメント工場は受入能力が大きく、主灰の大量処理が可能であるということと、 セメント製品は汎用性があるため確実に有効利用されるということがあります。 セメント工場の受入能力の試算としては、一般社団法人セメント協会が公表している今年 度のセメント生産の見通しは5,600万トンであるため、全国にあるすべてのセメント工場で 主灰を1%受け入れたと仮定すると、50万トンを超える受入能力があることになります。 3つ目は、処理する上での留意点があることです。 主灰には焼却不適物である鉄くずなどの異物が含まれているので、これらを選別しなけれ ばなりません。分別されていても清掃工場に持ち込まれるごみの中には鉄分が含まれおり、 8 焼却しても鉄くずが残ってしまいます。実証確認では、主灰の中には約5%の鉄くずが入っ ていることが確認されています。つまり、100トンの灰の中には5トンの鉄くずが入ってい るということです。この鉄くずは、当然セメントの原料にはならず、そのままだと廃棄物に なってしまうため、セメント会社で灰の付着を落とし、鉄スクラップとして資源化し有効利 用しています。 また、セメントのJIS規格では塩素濃度は0.035%以下となっていますが、主灰の塩素濃度 は1%程度であるため、他の原料と調合して調整する必要があります。そのため、製造され たセメントにおける主灰の利用割合は、セメント重量に対して最大で1%程度となります。 この3つ目の特徴についてですが、当組合で主灰の前処理(鉄くずの選別、塩素濃度の調 合)を行うことができれば、前処理設備のないセメント工場にも灰を搬入することが可能と なります。そのため、より多くの灰を資源化するためにも、これらの前処理について今後検 討を進めていきます。 9 主灰のセメント原料化①運搬方法 • 運搬容器は、長さ20フィート、水密性の ある天蓋付き鉄道貨物用コンテナ(最大 積載量10トン) 4か所にベンチレータ(フィルタ付の換気口) 9 清掃工場からセメント工場までの運搬方法について説明します。 搬入先は、鉄くず等の選別ができ、かつ受入余力のあるセメント工場となるため、現状で は関東のセメント工場には搬出していません。 そのため、遠距離の運搬に適した鉄道を利用することとし、運搬容器には鉄道貨物用コン テナを使用しています。東日本大震災や大島町の災害がれき受入れで使用したコンテナは12 フィート(約3.6メートル)でしたが、主灰の運搬には20フィート(約6メートル)のコンテ ナを使用しています。水密性があり、最大積載量は10トンです。コンテナ上部の天蓋は開け ることができるので、清掃工場の通常の灰積出場で上から主灰を積み込むことができます。 長時間の運搬で時間が経つにつれ、主灰に含まれるアルミ等が水分やアルカリ分と反応し て水素ガスが発生し、ちょっとした静電気等で爆発を招くおそれがあります。実証確認を行 う中で、この水素ガスの滞留が確認されたため、コンテナに4か所のベンチレータ(ガス抜 き)を設置しました。ただ、コンテナに穴を空ければ中の灰も出てしまうので、ベンチレー タ内部に飛散防止用のナイロン製フィルタを取り付け、水素のみを抜く工夫を施しました。 運搬経路としては、まず清掃工場から東京貨物ターミナル駅又は隅田川駅までトラックで 運びます。走行距離や運搬先に合わせ、この2か所の貨物駅のうち適切な方を選択していま す。その後、鉄道でセメント工場の最寄りの貨物駅まで運搬し、再びトラックに積み替え、 セメント工場まで運搬します。このコンテナについては、本日屋外に用意していますので後 ほど見学していただきます。 10 主灰のセメント原料化②27年度の計画 • 搬出元の清掃工場 中央、港、品川、大田、千歳、新江東、 有明の7工場 • 搬入先のセメント工場 北海道、青森県、岩手県、福岡県に所 在する5か所を予定 • 搬出量 5,000トン • この他に実証確認(新たな搬出元、搬入先の 検討、確認)を実施 10 主灰のセメント原料化の今年度の計画について、概要を説明します。 搬出元は、中央、港、品川、大田、千歳、新江東、有明の7工場です。搬入先は北海道、 青森県、岩手県、福岡県にある5か所のセメント工場を予定しています。 これらの搬出元・搬入先については、昨年度実証確認を行い、運搬や処理状況について確 認ができたことから、今年度から本格実施とし、平成27年度は5,000トン程度の主灰を搬出 する計画です。 今年度は、この本格実施分の他に、今後の搬出規模拡大のため、新たな搬出元と搬入先に ついて実証確認を行う予定です。 搬出元は墨田と板橋の2清掃工場、搬入先は2か所程度のセメント工場で、主灰の搬出量 は700トン程度を予定しています。 11 主灰のセメント原料化③計画数量 年 度 主灰のセメント原料化量 28 10,000トン程度 29 15,000トン程度 30 20,000トン程度 31 25,000トン程度 32 30,000トン程度 11 基本計画に記載している計画数量について、来年度以降の計画を説明します。 まず、当組合の焼却灰の発生量は年間おおよそ30万トンで、そのうち主灰が約20万トン、 飛灰が約10万トンとなっています。 計画としては、来年度以降5,000トンずつ増やし、平成32年度までに年間3万トンのセメ ント原料化を目指します。その後、民間セメント工場の受入状況を見て、さらに2万トン程 度の拡大に向けて取り組んでいきます。 さらなる取組の実施に向けて、先ほど説明した前処理や脱塩処理等についても検討してい きます。また、前処理の実施により主灰から回収した金属を資源化していくことについても 検討します。 12 最終処分量の予測 (図:一廃計画27 P.27図-7-1) セメント原料化(段階的実施) 1の削減取組 不燃ごみ・粗大ごみ処理残さの焼却処理推進 セメント原料化拡大(段階的実施) 2の更なる削減に 向けた取組 主灰の前処理等検討 前処理施設等整備 主灰中の金属回収 不燃・粗大施設整備 資源・可燃性残さの回収による焼却処理の拡大 12 最終処分量の予測としては、焼却灰の資源化を段階的に拡大することに加え、不燃・粗大 ごみ処理残さの焼却処理等を推進することで、平成36年度以降は29.1万トン程度となること を予測しています。これに加え、今申し上げた取組をさらに進めることにより、平成41年度 の最終処分量は19.8万トンとなることも予測しています。 最終処分場は将来的にひっ迫する可能性があるため、最終処分量削減の取組について、で きる限り早期の達成を目指していきます。 13 ご清聴ありがとうございました。 以上、ご清聴ありがとうございました。 14
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