Overseas Fishery Cooperation Foundation of Japan 評価報告書 インド洋まぐろ類委員会(IOTC) ― インド洋におけるまぐろ類漁業統計整備促進のための協力プロジェクト ― (終了時評価-2014 年 4 月) プロジェクトの概要 機関名 プロジェクト名 実施期間 覚書署名機関 及び 事業実施機関 インド洋まぐろ類委員会 インド洋におけるまぐろ類漁業統計整備促進のための 協力プロジェクト 2013 年 6 月 21 日~2014 年 3 月 31 日 覚 書 署 名 : インド洋まぐろ類委員会(以下 「IOTC」* という。 ) 実 施 機 関 : IOTC 事務局、関係沿岸国漁業統計担当部署 プロジェクト実施の経緯と背景 IOTC は、インド洋における高度回遊性魚類(ま ぐろ、かつお、かじき類)の管理、保存及び最 適利用の促進を目的として、1993 年 11 月の第 105 回 FAO 理事会にて採択されたインド洋まぐ ろ類委員会設立協定(1996 年 3 月発効)に基づ き設立された地域漁業管理機関である。現在の 加盟国は日本を含む 30 カ国及び 1 機関(EU)で ある。 IOTC では、インド洋における まぐろ・かつお 類の漁業統計情報システムの整備が課題となっ ており、公益財団法人海外漁業協力財団(以下 「財団」という。 )は、IOTC の要請に応え、2002 年~2010 年 3 月にかけて、IOTC 関係沿岸国を中 心とした漁業統計情報システムの整備に関する i * Indian Ocean Tuna Commission 技術協力プロジェクトを実施した。 また、2009 年の第 13 回 IOTC 年次総会において、インド洋における漁業統計の精度向上の ため、地域オブザーバー制度が採択され、2010 年 7 月から実施されているが、IOTC は財団の これまでの協力を高く評価し、2010 年 5 月 18 日付け書簡により引き続き財団に対し、地域オ ブザーバー制度に関連した零細漁業のポートサンプリング活動への協力を要請した。 財団はこれに応え、IOTC 関係沿岸国のうち、インド洋水域まぐろ類の資源評価をする上で 重要な沿岸国を絞り込み、財団専門家による技術指導と人材育成を行うことを目的として、本 プロジェクトを実施することとした。 目標・成果・活動内容等 上位目標 プロジェクト目標 成 果 インド洋におけるまぐろ類資源の持続的利用の実現 IOTC 関係沿岸国におけるまぐろ類の漁業統計精度の改善及び人材育成 IOTC 関係沿岸国から提出されるまぐろ類漁業統計の精度が向上し、収 集された漁業統計が有効利用される。 IOTC 関係沿岸国の零細漁業に関するポートサンプリングデータ等の収 集及び処理に関する技術指導 活 動 (1) コモロにおける漁獲量推定トレーニング並びに枠取り調査 (2) インドネシアにおける漁獲量推定ワークショップ報告書の作成・ 出版及び延縄船サンプリング状況調査 (3) スリランカにおけるポートサンプリング調査支援 (4) モーリシャスにおけるビンナガ資源ポートサンプリングの現状調査 財団側 ・専門家: 長期専門家(資源);1 名 ・事業費: 約 25 百万円 ・主な資機材: PC、サーバー、プリンター、バイク 投 入 相手国側 ・カウンターパート: IOTC 総括責任者;1 名 IOTC 実務担当者;1 名 IOTC 関係沿岸国;8 名(コモロ…2 名、インドネシア…2 名、 スリランカ…2 名、モーリシャス…2 名 ・プロジェクト関連施設: プロジェクト用事務室の提供 評 価 事 項 ii 妥 当 性 1.プロジェクトの妥当性 IOTC では、資源管理の基礎となる漁獲量及び漁獲努力量等の漁業統計システムの構築を 進めてきているところである。 本プロジェクトは、IOTC 関係沿岸国から提出される漁業統計の信頼性を高め、漁業統計 の精度向上を支援するもので、IOTC の方針と合致しており、妥当である。 2.環境に対する配慮はなされていたか まぐろ類漁業統計の精度改善を目指すもので、環境に新たな負荷を与えるものではない。 3.水産資源に対する配慮はなされていたか インド洋におけるまぐろ類の漁業統計の精度向上と有効利用を図ることで、水産資源の管 理を促進することに貢献している。 効 率 性 1.資機材、専門家の投入における効率性 覚書締結後、直ちに長期専門家が派遣され、IOTC 関係国における漁業統計処理・収集を 改善するための技術指導を行うとともに必要な資機材を供与した。 このことにより、漁業統計処理に係る技術指導は、効果的、効率的に実施され、期待され た能力を発揮した。 2.技術移転の効率性 技術移転の対象となる IOTC 関係沿岸国のカウンターパートの能力、経験及び担当業務に 適合した漁業統計整備等の実践的な指導を実施した。 なお、IOTC のカウンターパートは統計の知識と IOTC 沿岸国での漁業統計の情報収集、科 学者への漁業統計整備に関する多方面での指導を行った経験を有しており、移転する技術は 沿岸国カウンターパートの習得水準に適合していた。 有 効 性 1.プロジェクト目標の達成度 IOTC 及び IOTC 関係沿岸国の実態を把握した上で活動計画を作成し、効率的・効果的に実 iii 施した。カウンターパートも計画どおり投入されて技術移転が実施されたことから、目標達 成度は高い。 2.プロジェクト活動項目及び期待された成果の達成度 IOTC 関係沿岸国の零細漁業に関する ポートサンプリングデータ等の収集及び処 理に関する技術指導として、コモロ、イン ドネシア、スリランカ、モーリシャスの 4 ヵ国を対象とし、活動を実施した。 沿岸性マグロデータ発掘協議 (1) コモロにおいては、2010 年度に OFCF プロジェクトで実施した第 1 回目の枠取り調査 並びにサンプリング調査(IOTC 予算)の結果を用い、本プロジェクトにおいて 2012 年 5 月に漁獲量推定トレーニングを実施した(サンプリング調査は、2012 年 2 月以降も EU 予算にて継続) 。このトレーニングを踏まえて、本プロジェクトにおいて第 2 回目の枠 取り調査を実施した。統計収集システムがないため、まず、枠取り調査で漁船数を調査 し、それに基づくサンプリング調査を実施し、5%のカバー率を達成する調査システムを 確立した。また、調査データから、漁獲量の推定作業の道筋を付けた。 (2) インドネシアにおいては、2011 年度の OFCF プロジェクトで漁獲量推定ワークショッ プを実施したことから、同国の統計収集やデータ処理システムの問題点が明らかとなり、 今後の活動への指針が得られた。本プロジェクトでは、このワークショップの提言の下 に、インドネシア EEZ 内で操業する延縄船のサンプリング状況の調査を実施し、2010 年 度のワークショップの成果を広く共有するため、これらを報告書に纏め出版した。 (3) スリランカからは、ポートサンプリング調 査に係る要請があり、2012 年 10 月に覚書を交 わし 11 月から翌年 2 月までの 4 ヵ月間、ポー トサンプリング調査の支援を行った。この調査 では、調査員の増員、調査域のカバー範囲の拡 大により、沿岸・沖合漁業の 5%のカバー率を 達成するシステムを確立した。 ワークショップ現地指導 iv (4) モーリシャスにおいては、温帯性まぐろ類作業部会からのビンナガ資源調査に係る必要性 の提言を受け、データの収集や処理、ポートサンプリングの現状を調査した。 以上のプロジェクト活動の成果として、IOTC 関係沿岸国から提出されるまぐろ類漁業統 計の精度が向上した。これにより、資源評価の信頼性が高まるなど、資源の有効利用方策に 成果が活かされている。 インパクト 1.プロジェクト上位目標に対するインパクト IOTC 沿岸関係国の中には、まぐろ類資源を精度よく評価するための漁獲統計の整備が十 分行なわれていない国があり、それらの国々に対し、科学委員会や作業部会は漁獲データの 精度向上を強く望んでいる。プロジェクトの実施により、今まで得られていない海域と分野 での漁業統計情報の入手が可能となること及び精度が低いとされてきた関係国における漁 業統計情報の精度が向上することなどから、より資源評価の信頼性が向上した。 このプロジェクト活動の成果は、上位目標であるインド洋におけるまぐろ類資源の持続的 利用の実現の達成に少なからず貢献すると見込まれる。 2.相手国あるいは対象地域に与えるインパクト 本プロジェクトの実施により、インド洋におけるまぐろ類の漁獲及びまぐろ類資源に関連 する資料収集・統計分析の精度が向上し、まぐろ類資源の持続的利用促進に寄与することか ら、関係各国の漁業者が持続的なまぐろ漁業を営むことが可能になると期待され、IOTC 加 盟国の漁業経営に間接的効果が見込まれる。 持 続 性 プロジェクト効果の持続の見込み IOTC は、本プロジェクトで得られる加盟各国からの精度が向上した漁業統計を収集・分 析し、資源管理に役立てていくこととしており、終了後もカウンターパートの技術と知識及 び資機材は有効に活用される。また、IOTC による技術指導の活動とその効果は継続される 見込みである。 以上 v
© Copyright 2024 Paperzz