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記者会見結果報告
2013 年 3 月 5 日 10:30-12:00
Speaker: 鈴木浩 福島大学名誉教授/福島県復興ビジョン検討委員会・IGES フェロー
(Dr. Hiroshi Suzuki, Chair of the Fukushima Prefecture Reconstruction Committee)
「福島の今と復興への視点」
場所: フォーリンプレスセンター(日本プレスセンタービル 6 階)
2013 年 3 月 5 日(火)、内幸町のフォーリン・プレス・センターにて鈴木浩福島大学名誉
教授/IGES シニアフェローが、
「福島の今と復興への視点」というタイトルにて、外国人記
者向け会見を行いました。ドイツ、アメリカ、中国、フランス、オランダなど 15 か国から
40 名の外国人記者の参加を得ました。震災後2年を迎え、復興ビジョン検討委員会座長と
して前線で復興に取り組む鈴木名誉教授が、震災初動期における対応の問題、仮設住宅や
除染に関連する課題、福島県や市町村の取り組み、FAIRDO の活動などを紹介、質疑応答
を受けました。
FPC 会見の様子
http://fpcj.jp/modules/news3/index.php?page=article&storyid=496&storytopic=3
AFP の記事
http://www.globalpost.com/dispatch/news/afp/130305/fukushima-lags-japan-tsunami-re
covery-official
<質疑応答>
[Q1: Sueddeutsche Zeitung (Germany)]
前の政権に不満なようだが、現政権は原発再稼働に前向きのようだ。何が変わったのか。
[A1: 鈴木名誉教授]
原発事故への対応は、大きく変わってはいない。
ただし、復興予算をどうつけていくかという点については、民主党政権よりもずっと大き
く膨らみをもって対応しているといえる。
誤解を恐れずに言うと、今の復興予算は公共事業ばかり。地域社会、経済を滅ぼすものと
危惧する。
[Q2: Handelsblatt (German Financial Daily)]
原子力政策について、現政権ではどう変わると予想しているか。
[A2: 鈴木名誉教授]
私自身、原子力を利用したエネルギーには、これだけ過酷な事故を起こすというリスクが
あり、それを認めながら続けることには懐疑的。
けれども、再生可能エネルギーを育てることや、もっと重要なこととして、今のライフス
タイル、大量生産、大量廃棄、大量消費を変えていくコンセンサスをとる必要があると思
っている。個人的にもそのような努力をしたいと思う。
[Q3: Trouw (Netherlands)]
メンタルヘルスについて。メンタルヘルスの問題は起きていると思うか、エスカレートさ
せないために十分なケアがされていると思うか。
[A3: 鈴木名誉教授]
現実は、シビア。被災者の人たちが自分たちで状況を話し合い、ケアする体制ならよいが、
被災者たちが出会っても、それぞれの状況を話し合うということになっていない。そんな
状態で、新しいことを始めようというエネルギーもわかない。であれば、被災者でない人
たちが、被災者の話を黙って聞くことが必要なのだろうが、それも足りない。
震災後、多くのボランティアが宮城、岩手など被災地を訪れたが、福島は素通りされた。
最近になってようやく福島にも訪れるようになった。復興の格差、支援の格差が課題の一
つ。
[Q4: AP 通信 (US)]
除染ばかりが注目される一方で、(食品管理、行動管理など、放射線防護に関する)他のオ
プションがないというが、変えることはできるか?
また、除染の廃棄物処理の場所、長期的にはどうなると考える?
[A4: 鈴木名誉教授]
最初の質問については、政府と行政が自主避難の選択肢を認め、自主避難をする人たちを
支援することが大事。今のところそれが不足している。自主避難には何の補償もなく、冷
たい対応をされている。
廃棄物処理については、まず、今の汚染の実態やデータを、地域の人達と共有し、コミュ
ニティで話し合うことができれば変わると思う。しかし今のところ、地域住民はお客さん
扱い。地域住民から、行政や専門家への不信が募る。ICRP ダイアローグのように、話し合
う機会をもっと増やし、続けていくことができればよい。私達の目標でもある。
[Q5: AFP (France)]
除染ばかりがフォーカスされることで、他の問題はあるか?
たとえば、1mSv/年という基準は福島の復興にとっては厳しすぎるという考えがある。
[A5: 鈴木名誉教授]
1mSv は科学の問題というよりリスク・コミュニケーションの問題。リスクとどう向き合う
かという議論をコミュニティレベルで行うことが大事。ゼロリスクはありえない。リスク
なしで生活ができるような社会でない。
もっと深刻な問題としては、仕事がなく、若者たちが福島を離れつつあること。どういう
仕事をつくれば、この状況を変えていけるか、それを考えなくては。
[Q6: Stars & Stripes (US)]
地下水の安全というのはどうなっている?ペットボトルの水の需要が高いと聞いているが。
地下水の汚染は、根拠のある話か、たんなる風評なのか。
[A6: 鈴木名誉教授]
私自身は情報がない。福島大学の中には、地下水のモニタリングをしているグループもあ
る。
[Q7: APTN (US)]
住民の期待は変わったか?除染の効果、除染の目標が達成できないかもしれないというこ
とについてどのように理解されているか。また、これから帰還しようとする人たちに、こ
の問題はどう捉えられているか。
[A7: 鈴木名誉教授]
浪江町の復興計画に関して話したが、どうやって町を再建するかと考える時、汚染の高い
地域と普通に暮らすことが可能な地域がある現状から出発する必要がある。科学的なデー
タを示すことで、住民の気持ちは変わってくる。
大事なことは、運良く、住んでいた土地の線量が低かった人達だけが帰れるのではなく、
そういった地区を、浪江町の多くの人達が帰ってくることができる仮の町、再建の拠点と
すること。そういう理解が広がりつつある。
[Q8: dpa German Press Agency (Germany)]
なぜ、政府は除染を重視したのか。これほどの大規模な事故、状況をコントロールできる
と見せたかったのか、友人である東電と建設会社に仕事を与えたかったのか。
[A8: 鈴木名誉教授]
出発点はシンプル。人々は、原発が安全だと信じこまされていた。だから、事故のあと、
政府に、土地を事故前に戻すべきだと要求するのも自然な考え方ではないか。政府が、最
初から除染ばかりを考えていたとは思わない。
結果的には、大手ゼネコンが潤っているが下請会社には十分な金が回っていない、人件費
にも差が付いている。そういう状況はあちこちで指摘されていて、私も是正しなくてはな
らないと思っている。
[Q9: Handelsblatt (Germany)]
原子力の未来について。事故のあと、敦賀に行ったが、地域の人も原子力推進を支持して
いた。現政権は、原子力推進に前向き。自民党政権になってから再稼働の可能性は高まっ
たか。前政権が表明していた原発依存ゼロという目標は、達成困難になったと考えるか。
[A9: 鈴木名誉教授]
現政権は新(NEW)政権ではない。「再」政権。原子力については、過去、自民党が行な
ってきた政策をそのまま続けようとしている。60 年代以降、地域経済は原発が支えるとい
うことになってきた。原発以外の地域産業がほとんどなくなっているところで、原子力推
進の期待が高いのは仕方ない。それをどう変えていくかが大事。
[Q10]
農業について。浪江や飯舘で、復活、維持される可能性はあるのか。
[A10: 鈴木名誉教授]
大変厳しい。私自身、飯舘にも関わってきたのでそういう方向を志向してきたが。
1960 年代以降、日本の政策高度経済成長が功を奏したのは、あえて言えば、農業や漁業を
切り捨てたからだと思う。
そういう中で、農家、漁業家は戦ってきたが、日本政府は TPP への参加を表明している。
どうなるか、心配。大変厳しいと思っている。
(IGES からの参加:
以上
PMO 渡部厚志、RSS 土井恵美子)