各種抗菌薬の薬物動態（★印は尿中排泄率50％以上の腎排泄型抗菌薬） 特に重要です。 臨床的に重要な殺菌性抗菌薬は概して腎排泄性の薬物が多いことに気がつきます。βラクタム系抗菌薬・アミノグリコシド系抗菌薬ははほぼ腎排泄型でクリア ランスも大きくないのにVdは0.3L/ｋｇ以下（極性が高いため細胞膜を通過できない＝細胞外液のみに分布する）と小さいため、尿細管で分泌されやすいペニシリ ン系やカルバパネム系抗菌薬の半減期は１時間前後と短いことにも気づくかもしれません。またセフトリアキソンが１日１回投与可能なのは蛋白結合率が高いた め間質液に移行できないためVdが小さいものの、糸球体濾過されにくいため腎クリアランスが非常に低く総クリアランスも低く、半減期が長くなったことに起因す るのかもしれません。 逆に脂溶性で肝代謝型抗菌薬の多くは何故か静菌性抗菌薬が多く、細胞内寄生菌に有効な抗菌が多いことにも気がつきます。フルオロキノロン系抗菌薬はレ ボロキサシンのイメージが強いためか腎排泄性のイメージが強いですが、この表を見るとそうでもないことが分かり、しかもVdが大きいためか、細胞内寄生菌にも 有効です。 成分名 ペニシリン系 経口セフェム 第1世代 第2世代 第3世代 第4世代 モノバクタム系 カルバペネム系 ペネム系 ホスホマイシン系 アミノグリコシド系 グリコペプチド系 ポリペプチド系 ST合剤 フルオロキノロン系 オキサゾリジノン系 マクロライド系 リンコマイシン系 グリシルサイクリン系 ペニシリン系 ★ベンジルペニシリンカリウム ★アンピシリン ★アモキシシリン ★アスポキシシリン ★ピペラシリン セフェム系 ★セファレキシン ★セファクロル ★セフロキシム △セフィキシム ？セフテラムピボキシル ★セフジトレンピボキシル ？セフジニル ★セフチブテン ★セフポドキシムプロキセチル ？セフカペンピボキシル ★セファゾリン ★セフォチアム ★セフメタゾール ★フロモキセフ ★セフォタキシム セフォペラゾン ★スルバクタム △セフトリアキソン ★セフタジジム ★セフォゾプラン ★セフピロム ★セフェピム モノバクタム系 ★アズトレオナム カルバペネム系 ★イミペネム ★シラスタチン ★メロペネム パニペネム ★テビベネムビボキシル △ビアぺネム ★ドリペネム ペネム系 ？ファロペネム ホスホマイシン系 ★ホスホマイシン アミノグリコシド系 ★アルベカシン ★アミカシン ★ゲンタマイシン ★カナマイシン ★ストレプトマイシン ★トブラマイシン グリコペプチド系 ★バンコマイシン ★ テイコプラニン ポリペプチド系 ★キュビシン ST合剤 ★スルファメトキサゾール ★トリメトプリム フルオロキノロン系 ★シプロフロキサシン ？トスフロキサシン ★パズフロキサシン ノルフロキサシン ★レボロキサシン ★ガレノキサシン シタフロキサシン プルリフロキサシン ★ロメフロキサシン モキシフロキサシン オキサゾリジン系 ザイボックス マクロライド系 エリスロマイシン クラリスロマイシン ロキシスロマイシン アジスロマイシン リンコマイシン系 クリンダマイシン リンコマイシン グリシルサイクリン系 チゲサイクリン 商品名 尿中排泄率 蛋白結合率 （％） （％） クリアンス 分布容積 t1/2 （mL/min （時間） （L/kg) ) ペニシリンGカリウム ビクシリン サワシリン ドイル ペントシリン 60～85 82±10 86±8 70～80 71±14 40~50 18±2 18 8.4 30 CL/F: 1024 182.6 156±24 ND 156±42 0.5 1.3±0.2 1.7±0.3 1.8 0.93±0.12 0.3~0.42 0.28±0.07 0.21±0.03 不明 0.23 ケフレックス ケフラール オラセフ セフスパン トミロン メイアクト セフゾン セフテム バナン フロモックス セファメジンα パンスポリン、ハロスポア セフメタゾン フルマリン セフォタックス、クラフォラン セフォビッド、セフォペラジン スルペラゾン配合剤 ロセフィン モダシン ファーストシン セフピロム マキシピーム 91±18 52±17 90 41±7 23～26(経口) 99 26〜33(経口) 53～68 81±5 ND 80±16 65〜93 80±13 91.6 55±10 29±4 70〜80 49±13 84±4 87.8 88.7 75 14±3 25 35～50 67±1 74.6 91.5 73.1 65 27±4 45 89±2 8〜40 70 28.5 36±3 89〜93 21〜40 90〜95 21±6 6〜8 8.2〜11.7 12.4〜18.6 294±66 366±90 ND 114±12 102～107 93 84〜144 40～76 144±6.6 ND 57±10.2 200〜336 87±6 282 222±36 72±12 222 14.4±3.6 107.2 100 100〜135 97.2 0.90±0.18 0.67±0.33 0.9～1.2 3.0±0.4 0.83 0.8〜1.3 1.6〜1.8 2.4 2.3±0.3 0.96〜1.06 1.8±0.4 1 1.5±0.3 0.76 1.1±0.3 2.2±0.3 1.3 7.3±1.6 1.6±0.1 1.56〜1.96 1.4〜2.3 1.6〜1.8 0.26±0.03 0.36 0.13～0.18 0.30±0.03 0.2 0.5 ND 0.2 0.46±0.03 ND 0.14±0.04 0.3〜0.52 0.18±0.04 0.19 0.23±0.06 0.14±0.03 0.17〜0.32 0.16±0.03 0.23±0.02 0.24 0.28 0.17〜0.27 アザクタム 68±8 56 114±6 0.7±0.2 0.16±0.02 チエナム チエナム配合剤 メロペン カルベニン オラペネム オメガシン フィニバックス 69±15 70±3 60〜65 21.3 62(経口) 52.8 75 <20 〜35 2〜12 4～7 67 4～7 6～9 174±18 180±18 ND 188 207 175 200～222 0.9±0.1 0.8±0.1 1.0〜1.1 0.75～1.0 0.68～1.0 1.1～1.5 0.9 0.23±0.05 0.20±0.03 0.3〜0.4 0.2～0.35 Vd/F: 0.9 0.3 0.2～0.3 ファロム ND 86〜91 50 1 0.65 ホスミシン 85.5 0〜3 ND 1.1〜3 0.2〜0.3 ハベカシン アミカシン ゲンタシン カナマイシン ストレプトマイシン トブラシン 80 98 >90 90 50〜60 90 3〜12 4±8 <10 0 48±14 <10 90 78±36 88.6 84±12 72±18 98 ± 31.3 1.5〜3 2.3±0.4 2〜3 2.1±0.2 2.6±0.4 2.2±0.1 0.3 0.27±0.06 0.31±0.10 バンコマイシン タゴシッド 79±11 46〜56 30±10 90 84±6 18 5.6±1.8 83〜98 0.43～1.25 0.9〜1.1 ダプトマイシン 52~73 90~93 8~10 7~10 0.11~0.12 バクタ バクタ 80 56 62±5 37±5 55.2±24 114±18 10.1±4.6 10±2 0.21±0.02 1.6±0.2 シプロキサン オゼックス/トスキサシン パシル・パズクロス バクシダール クラビット ジェニナック グレースビット スオード バレオン/ロメバクト アベロックス 65±12 45(経口) 80〜94 26〜32 90 32～44 80以上 36～43(経口) 70～80 20 40 15-37 30.7 15〜20 25±6 79～80 80以上 51～52 20 50 360±72 CL/F 350 390 432±18 210±42 67.8 264 CL/F 540 245 94 4.1±0.9 3.9 1.7 5.0±0.7 5.7±1.0 10～12 5～7 8～9 8 12～15 1.8±0.4 Vd/F: 2.9 0.6〜0.9 3.2±1.4 1.8±0.3 1.4 2.3～2.8 5～7 1.1～1.5 1.7～2.7 リネゾリド 30 31 105 5.3〜5.9 0.７〜0.9 エリスロシン クラリス/クラリシッド ルリッド シスロマック 12±7 36±7 4.5 9 84±3 42〜50 98 12〜20 546±246 438±114 48 600 1.6±0.7 3.3±0.5 6〜14 62〜68 0.78±0.44 2.6±0.5 ND 33.3 ダラシン リンコシン 13 14±6 93.6±0.2 85±2 282±78 126±30 2.9±0.7 5.1±1.5 1.1±0.3 1.3±0.2 タイガシル 7.3 71～89 200～300 8.2～24.3 7～9 0.25±0.02 0.33±0.08 テトラサイクリン系 クロラムフェニコール系 テトラサイクリン系 ドキシサイクリン ミノサイクリン ビブラマイシン ミノマイシン 41±19 11 88±5 76 35.4±10.8 60±54 16±6 16±2 0.75±0.32 1.3±0.2 25±15 53±5 144±12 4.0±2.0 0.94±0.06 クロラムフェニコール系 クロラムフェニコール クロロマイセチン ★は腎排泄性抗菌薬、△は肝腎消失型抗菌薬、？は消失経路不明の抗菌薬を示す。 無断転載を禁じます（熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター・平田純生 2014年12月作成）
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