家庭用燃料電池による電力需要のピークカットに関する研究

新潟大学工学部建設学科建築学コース
卒業研究梗概 平成 23 年度
家庭用燃料電池による電力需要のピークカットに関する研究
T08K722G 山田康司
指導教員 赤林伸一教授
1 研究目的
IT 化による電力需要の増加や震災による電力不足に
より、住宅においても電力消費の抑制が求められている。
又、電力は蓄電が困難なため、電力需要がピークの時間
帯の電力消費量を抑制し、平準化することが重要である。
電力消費の抑制手法の1つとして家庭用燃料電池コー
ジェネレーションシステム ( 家庭用 FCCGS) による自家
発電が挙げられる。本研究では、家庭用 FCCGS の導入に
よる買電力削減量、1次エネルギー消費量*1及び CO2 排
出量を求め、電力需要のピークカット効果及び省エネル
ギー効果を検証することを目的とする。
2 住宅単体におけるピークカット
2.1 解析対象:図1に解析対象住宅*2を、表1に各住
宅における解析対象機器を示す。解析対象地域は東北電
力管内における各県庁所在地*3とする。
2.2 解析方法:生活スケジュール自動生成プログラム
SCHEDULE 及び熱負荷シミュレーションソフト TRNSYS に
より、解析対象住宅の空調負荷、給湯負荷及び機器消費
エネルギーを算出する。算出したデータを基に電力及び
ガス消費量を求め、各住宅の買電量、1次エネルギー消
費量及び CO2 排出量の時間変化を求める。
2.3 家庭用 FCCGS の稼働条件:表2に家庭用 FCCGS の
定格能力及びピーク時間帯を示す。東北電力管内全体の
電力供給量*4 から電力のピーク消費量を 1400 万 kW と
設定*5 し、この消費量を超える時間帯をピーク時間帯
とする。ピークカット及び必要な給湯量を満たすため、
表1 解析対象機器
従来ガス併用住宅
家庭用FCCGS使用住宅
給湯
暖房
高効率ガス給湯器
高効率ガス暖房器
[熱効率95%]
[熱効率90%]
家庭用FCCGS
エアコン
[COP=3]
NN
洗面所
LDK
浴室
和室
ガス消費量[kW]
家庭用FCCGSの
定格能力
発電効率[%] 給湯効率[%] 総合効率[%]
2.0
35
45
80
起動用エネルギー[kW]
発電量[kW]
給湯量[ℓ/h]
貯湯量[ℓ]
電気:0.5 ガス:0.5
0.7
15 (60℃)
200
ピーク時間帯
冬季
9時~11時、16時~18時
夏季
9時~19時
表3 1次エネルギー換算係数及び CO2 排出原単位
電気
8500
予備室
ホール
3 東北電力管内におけるピークカット
3.1 解析方法:東北電力管内全体における電力供給量
及び SCHEDULE により算出した給湯負荷に基づき、東北
電力管内における家庭用 FCCGS 導入前後の電力供給量、
1次エネルギー消費量、CO2 排出量の削減量を求める。
表2 家庭用 FCCGS の定格能力及びピーク時間帯
台所レンジ
ガスレンジ
レンジフード
排気風量
300m 3/h
トイレ
トイレ
単位 :[mm]
冷房
設定したピーク時間帯に家庭用 FCCGS を稼働させ、定格
出力 (0.7kW) で発電を行う。又、家庭用 FCCGS を稼働し
た際に発生した余剰電力は逆潮流 * 6させる。
2.4 1次エネルギー消費量及び CO2 排出量の解析条件:
算出した各負荷及び、表3に示す1次エネルギー換算係
数及び CO2 排出原単位により、各住宅における1次エネ
ルギー消費量及び CO2 排出量を求める。
2.5 解析結果:図2に新潟の冬季、夏季における各住
宅の買電量、電力の逆潮流量及び1次エネルギー消費量
を示す。家庭用 FCCGS は起動時に 0.5kW の電力とガスを
必要とするため、両日とも家庭用 FCCGS が稼働を開始す
る時間帯に買電量は約 0.25kWh/h、1次エネルギー消費
量は約 0.1 ℓ /h 程度、従来ガス併用住宅を上回る。又、
買電量、1次エネルギー消費量ともに1日の総量では夏
季より冬季の方が多く削減される。これは冬季に比べ夏
季は使用湯量が少なく、家庭用 FCCGS の稼働時間が短く
なるためである。
ガス
1次エネルギー換算係数[kℓ/kWh]
8~22時
2.57×10 -4
上記以外の時間帯
2.39×10 -4
-4
0.93×10
CO 2排出原単位[kg/kWh]
0.550
0.184
表4 家庭用 FCCGS の稼働条件及びピーク時間帯の設定条件
階段
CB2
2階ホール
解析case 定格発電出力[kW] 導入台数[万台]
7300
家庭用FCCGSの
稼働条件
MB
CB1
(1)外観パース (2)1階平面図 (3)2階平面図
図1 解析対象住宅*2
ピーク時間帯の
設定条件
case1
case2
case3
case4
case5
冬季
夏季
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
180
170
160
160
140
稼働時間[h]
冬季
夏季
11
7
8
5
6
4
5
3
4
3
電力供給量が1400万kW以上 *5になる時間帯
3.2 家庭用 FCCGS の稼働条件:表4に家庭用 FCCGS の
稼働条件及びピーク時間帯の設定条件を示す。家庭用
FCCGS は case 毎に定格出力、導入台数及び稼働時間を
変化させる。又、東北電力管内全体における電力供給量
のピーク時間帯を冬季、夏季で設定し、稼働の際には
ピークを下回るようにグループ単位 (10 ~ 80 万台 ) で
稼働時間帯をそれぞれ振り分けて家庭用 FCCGS を稼働さ
せる。東北電力管内全体を解析対象とした場合にも各住
宅において発生する余剰電力は逆潮流させる。
3.3 解析結果:図3に case 1における冬季、夏季の家
庭用 FCCGS 導入前後の電力供給量及び家庭用 FCCGS 導入
後の1次エネルギー削減量を示す。電力供給量は夏季の
10 時において最大で約 30 万 kWh/h 程度ピーク値を上回
るが、冬季、夏季ともにピークカットは概ね達成される。
1日の総量では家庭用 FCCGS の導入により、電力供給量
は冬季約 1900 万 kWh/ 日、夏季約 1200 万 kWh/ 日削減さ
れる。又、1次エネルギー消費量は冬季約 1000k ℓ / 日、
夏季約 100k ℓ / 日削減され、冬季においては夏季の約
10 倍の量が削減される。
逆潮流量
従来ガス住宅買電量
家庭用 FCCGS 住宅買電量
従来ガス住宅1次エネルギー消費量
家庭用 FCCGS 住宅1次エネルギー消費量
原油削減量
電力供給量(従来)
原油削減量
電力供給量(従来)
電力供給量(家庭用FCCGS導入後)
原油削減量電力供給量(従来)
電力供給量(従来)
電力供給量(家庭用FCCGS導入後)
1次エネルギー削減量
電力供給量
( 従来電力供給量(家庭用FCCGS導入後)
) 電力供給量(家庭用FCCGS導入後)
電力供給量
( 家庭用 FCCGS 導入後 )
原油削減量
0.8
家庭用 FCCGS 住宅買電量
0.6
従来ガス住宅
1次エネルギー消費量
1.20
従来ガス住宅買電量
0.96
0.72
逆潮流量
0.4
0.48
0.2
0.24
0.0
2:00
4:00
6:00
8:00
10:00 12:00 14:00 16:00 18:00 20:00 22:00
*7
(1) 1月 20 日 ( 冬季 )
1.2
1350
1350
1350
1350
1300
0.6
0.72
0.4
0.48
0.2
0.24
0.0
0.00
0:00
2:00
4:00
6:00
8:00
450450
450 450
450
1250
1250
1250
1250
1100
電力供給量 ( 家庭用 FCCGS 導入後 )
300300
300 300
300
1200
1200
1200
1200
1000
1次エネルギー削減量
150150
150 150
150
1150
1150
1150
1150
900
0
(1) 1月 20 日 ( 冬季 )* 7
10:00 12:00 14:00 16:00 18:00 20:00 22:00
1500
電力供給量 [ 万 kWh/h]
0.96
900
家庭用 FCCGS 稼働時間帯
750
1300
600
ピーク設定値
1200
450
1100
300
1000
150
900
0
800
-150
0:00
2:00
4:00
6:00
8:00
10:00 12:00 14:00 16:00 18:00 20:00 22:00
(2) 8月5日 ( 夏季 ) *7
電力供給量(従来)
8月5日
8月5日
8月5日
8月5日
電力供給量(家庭用FCCGS導入後)
従来ガス住宅買電量
家庭用FCCGS住宅買電量
逆潮流量
1月 20 日
1月20日
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
12.0
14.0
1月 20 日
1月20日
16.0
0
27500
28000
28500
29000
電力量 [kWh/ 日 ]
29500
30500
31000
31500
(3) 電力供給量
従来ガス住宅
8月5日
8月5日
1次エネルギー削減量
家庭用FCCGS住宅
1月 20 日
1月20日
0.0
30000
電力供給量 [ 万 kWh/ 日 ]
(3) 買電量及び逆潮流量
8月5日
8月5日
0
0
00
1050
1400
(2) 8月5日 ( 夏季 ) *7
0.0
600600
600 600
600
ピーク設定値
1600
1次エネルギー消費量 [ ℓ ]
電力量 [kWh/h]
0.8
750750
750 750
750
1300
1300
1300
1300
1200
家庭用 FCCGS 稼働時間帯
1.20
900900
900 900
900
1400
1400
1400
1400
1400
1.44
1.0
電力供給量 ( 従来 )
1100
-150
1100
-150
1100
-150
1100
-150
800
0:002:00
2:004:00
4:006:00
6:008:00
8:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
20:00
22:00 -150
0:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
20:00
22:00
0:00
2:00
4:00
6:00
8:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
20:00
22:00
0:00
2:002:00
4:004:00
6:006:00
8:008:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
20:00
22:00
0:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
20:00
22:00
0.00
0:00
1050
1050
1050
1050
1050
家庭用 FCCGS 稼働時間帯
1450
1450
1450
1450
1500
1次エネルギー削減量 [k ℓ ]
電力量 [kWh/h]
家庭用 FCCGS 住宅
1次エネルギー消費量
1次エネルギー消費量 [ ℓ ]
家庭用 FCCGS 稼働時間帯
1次エネルギー削減量 [k ℓ ]
1500
1500
1500
1500
1600
1.44
1.0
*1:1次エネルギーは原油量換算値を用いる。
*2:日本建築学会標準住宅モデル
*3:青森、盛岡、仙台、秋田、山形、福島、新潟の7都市
*4:東北電力が公開している東北電力管内における電力供給量 (2008 年~ 2011 年 )
*5:電力のピーク消費量は東北電力の全電源による発電量から原子力発電による発電量を差し引い
た値を参考にしている。
*6:逆潮流とは自家発電により発電した余剰電力を電力会社線側に逆流させることを言う。現在、
電力会社は家庭用 FCCGS からの逆潮流を認めていない。
*7:東北電力管内 (2008 年~ 2011 年 ) における冬季、夏季の最大電力供給日
参考文献
文1) 市川裕幸、赤林伸一、坂口淳:「全電化住宅とガス併用住宅を対象としたエネルギー消費量及
び CO2 に関する研究 その4家庭用燃料電池を使用した戸建住宅を含めた各住宅のエネルギー消費量
の検討」、日本建築学会大会学術講演梗概集、D-2、905-906、2011 年
文2) 赤林伸一、坂口淳、市川裕幸:「全電化住宅とガス併用住宅を対象としたエネルギー消費量及
び CO2 に関する研究 その5家庭用燃料電池を使用した戸建住宅を含めた各住宅の年間の CO2 排出量
の検討」、日本建築学会大会学術講演梗概集、D-2、907-908、2011 年
電力供給量 [ 万 kWh/h]
1.2
4 まとめ
①家庭用 FCCGS 使用住宅において、家庭用 FCCGS 稼働開
始時のみ、他の時間帯に比べ電力消費量及び1次エネ
ルギー消費量が従来ガス併用住宅を大きく上回る。
②夏季は使用湯量が少なく家庭用 FCCGS の稼働時間が短
くなるため、冬季に比べて電力及び1次エネルギーの
削減量が少なくなる。
③冬季、夏季の両日ともに家庭用 FCCGS の導入により、
東北電力管内における電力供給量のピークカットは概
ね達成される。
④東北電力管内全体における冬季の 1 次エネルギー削減
量は夏季の約 10 倍となる。
1月
20 日
1月20日
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
1次エネルギー消費量 [ ℓ / 日 ]
(4) 1次エネルギー消費量
図2 各住宅の買電量、逆潮流量及び1次エネルギー消費量
( 住宅単体 新潟 )
0
200
400
600
800
1000
1次エネルギー削減量 [k ℓ / 日 ]
(4) 1次エネルギー削減量
図3 電力供給量及び1次エネルギー削減量
( 東北電力管内 case 1)
1200