服薬指導の基礎【 P 318 】 ◎ 妊婦、小児、高齢者などへの服薬指導において、配慮すべき事項を列挙できる 参考文献 実践 妊娠と薬 「患者インタビュー」虎の巻 高齢者ケア薬剤管理マニュアル ADL と薬剤 ≪指導のポイント≫ ①妊婦、授乳婦への服薬指導における配慮すべき事項について説明する。 ②小児、保護者への服薬指導における配慮すべき事項について説明する。 ③高齢者の特性と服薬指導における配慮すべき事項について説明する。 (小児への苦い薬の飲ませ方、嚥下困難な高齢者への対応などの事例を見せながら説明する) ≪補足と解説≫ 妊娠中に普通に服薬して問題になる薬剤はそれほどない。しかし、妊娠中の薬の投薬が問題に なることが余りにも多いのは投薬の意義や安全性の説明が不十分であるためである。 また、人間の成長や加齢と共に臓器や組織に形態的変化が生じ、機能が変わるため、薬の作用 にも注意が必要である。 ①妊婦への投与の原則 ・最終月経から28日以上たった生殖可能婦人については常に妊娠を念頭に置く ・薬剤は必要性があって投与するものであり、そのことを常に患者に説明する。 ・てんかん、膠原病など慢性疾患患者については、計画的に妊娠するように常に指導する。 ・薬剤は必要量をできるだけ短期間投与する。 ・できるだけ単剤投与する。 ・添付文書で「投与しないこと」 「投与しないことが望ましい」となっている薬剤については 原則として投与しない 例:避妊が必要な薬(催奇形性がある) エトレチナートカプセル(チガソン) リバビリンカプセル(レベトール) 流産の危険性がある ミソプロストール錠(サイトテック) ②高齢者への薬剤投与の原則 ・特に腎機能・肝機能の低下に注意する。 ・投与制限がある薬がある(下記に一例をあげます) フルニトラゼパム錠(サイレース錠など) 1 回 1mg まで アルプラゾラム錠(ソラナックス錠など) 1 日 1.2mg をこえない トリアゾラム錠(ハルシオン錠など) 1回 0.125mg~0.25mg まで リルマザホン塩酸塩錠(リスミー錠など) 1回 2mg まで -Ⅲ- 28 - エチゾラム製剤(デパス錠・細粒など) 1日 1.5mg まで フルトプラゼパム錠(レスタス錠など) 1日 4mg まで ロルメタゼパム錠(ロラメット錠など) 1回 2mg をこえない メキサゾラム製剤(メレックス錠・細粒など)1日 1.5mg まで ③ 小児への投与の原則 小児は小児薬用量で投与する必要がある。 Augsberger の式や Von Harnack の表を用いる 実際は、体重別の投与量を掲示していたりすることで、作業の簡素化を図っていることが 多い。 ≪させてみようQ&A≫ ①妊婦、授乳婦へ服薬指導する際、どのようなことに気をつけなければならないでしょう? 妊娠時期(初期、中期、後期)と薬剤の胎児への影響、授乳婦では母乳中への移行がチェック ポイントです。ただし、薬剤の服用は多少の危険性があっても継続しなければならない場合があ り、医師の治療方針を踏まえ患者に不安を与えないようにする必要があります。不安を与えてし まうと薬剤の服用を中止してしまう例もあるため、患者の妊娠、授乳に対する気持ちを推し量り ながら慎重に対応することが大切です。 ②小児、保護者へ服薬指導する際、気をつけることはなんでしょう? 子供自身で薬を使えない可能性が高いため、保護者も含め使用方法を伝える必要があります。 また剤形によってコツがいるものもあります。その子供がどのような薬なら使えるのか、またど のような物を普段好んでいるのかなど情報を収集することが大切です。 ③高齢者へ服薬指導する際、気をつけることはなんでしょう? 老化に伴う精神機能(理解力) ・運動・動作機能の低下を認識した上で患者個々の服薬能力を把 握して問題点を明らかにする必要があります。患者の薬に対する考え方、薬品に対する理解力、 服薬能力、コミュニケーション能力、基本的認知能力などの情報を得て服薬指導の目標を立てる ことが大切です。 ④高齢者など、飲み込みがうまくできない方に気をつけることはなんでしょう? 嚥下困難な患者様には、一般的に、錠剤を粉砕して服用させますが、錠剤によっては粉砕がで きなかったりするケースがあります。その場合、散剤や口腔内崩壊錠に剤形変更を依頼すること があります。たとえば、アスパラカリウム錠は吸湿性が高く、PTP シートから出しての保管はで きないため、散剤に変更依頼をすることもあります。 -Ⅲ- 29 -
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