第 10 回日本語教育学会林大記念論文賞 受賞論文 ≪論文名≫ 「高度外国人材のビジネス日本語能力を評価するシステムとしてのビジネス日本語 Can-do statements の開発―BJT ビジネス日本語能力テストの測定対象能力に基づいて―」 掲載号:『日本語教育』157 号(2014 年 4 月発行) 、pp.1-15 執筆者:葦原恭子氏(琉球大学)、小野塚若菜氏(東京富士大学) 【授賞理由】 本論文では、 筆者が試みたビジネス日本語能力を評価するための Can-do statements(CDs) の、開発の経過とその検証結果が明確かつ丁寧に論じられている。その内容は、グローバ ル化に伴い日本企業に就労する外国人の増加が見込まれる中、日本語教育の社会貢献の一 つとして期待されるビジネス日本語能力の評価システムの開発を前進させ、日本語教育学 の実践的展開を推し進めるものとなっている。CDs については、今後も継続的に開発と検証 を重ね、実効性の高い評価システムとして確立することが期待される。 (1) 日本語教育現場に対する示唆が具体的である。 CDs は、日本語教育の現場のみならず、ビジネス人材の育成を行う機関や外国人高度人 材を必要とする企業にとって、現場のニーズを考慮した具体的な提案となっている。今 後、開発途中の CDs の完成に期待したい。また、広く活用されている BJT ビジネス日本 語能力テストの検討をもとに CDs の項目の構築を行っているが、言語教育現場における CDs の開発・運用に関しても、具体的な示唆が多い。 (2) 論旨が明確で,論文としての完成度が高い。 ビジネス日本語能力の評価方法に関する問題点の整理、CDs 開発の意義と開発過程、そ して検証方法とその結果の順序立てた説明が、図表などを効果的に利用して述べられて いる。 (3) 新しいテーマにチャレンジしている。 就労前の学習者のビジネス日本語能力を測ることに特化している点、CDs 開発過程で学 習者へのヒヤリング調査による修正を施している点に挑戦が見られる。ビジネス日本語 CDs の結果を、外部基準である BJT の得点との関係性から検証し、更に内部一貫性の検査 も行っており、その手法も評価された。 (4) 専門領域をこえたわかりやすさを有する。 CDs 開発の経緯や調査の手続きがわかりやすく示されている。また、客観的データに基 づき、平易な表現で論じているため、他領域の者にも理解しやすい。 以上 第 10 回日本語教育学会林大記念論文賞 要 受賞論文 旨 高度外国人材のビジネス日本語能力を評価するシステムとしての ビジネス日本語 Can-do statements の開発 —BJT ビジネス日本語能力テストの測定対象能力に基づいて— 経済のグローバル化を背景に,日本企業に就職を希望する高度外国人材に対する就職支 援事業が実施されている。一方で,企業における高度外国人材の活用があまり進んでいな い要因として,採用時の能力判定が難しいことが挙げられている。また,高度外国人材の ビジネスコミュニケーション能力を伸ばす教育の必要性が指摘されている。そこで,本研 究では,ビジネス日本語能力を評価するシステムとして,また,ビジネス日本語教育の現 場における到達目標レベルの設定に活用することを目的としてビジネス日本語 Can-do statements を開発した。開発にあたっては,BJT ビジネス日本語能力テストの測定対象能 力を参考に項目を構築した。そして,予備調査に基づいて再検証を行った結果,ビジネス 日本語 Can-do statements の妥当性が高まった。しかし,一部の項目には問題点が残って いることから,今後の更なる検証の必要性を指摘した。 Developing Business Japanese Can-do Statements as a Method to Evaluate Business Japanese Proficiency of High-Skilled Foreign Personnel: Measuring the Objectives of the Business Japanese Proficiency Test ASHIHARA Kyoko and ONOZUKA Wakana Various employment support projects have been instituted for high-skilled foreign personnel seeking job opportunities at Japanese companies due to the globalization of the Japanese economy. The utilization of high-skilled foreign personnel has not been progressing sufficiently in Japan, and one of the causes is the difficulty of evaluating their business Japanese proficiency accurately in the course of the recruiting process. Currently, a solution is being sought to build up adequate training for high-skilled foreign personnel to develop their business communication proficiency. Accordingly, this study also describes the process of developing Business Japanese can-do statements as a way to evaluate business Japanese proficiency. Furthermore, one of the purposes for developing the Business Japanese can-do statements is to define the attainment targets for training in business Japanese. The items of the can-do statements were composed by analyzing the measuring objectives of the Business Japanese Proficiency Test. After the preliminary surveys were completed, the can-do statements were revised, and the validity of the majority of the items was then improved upon. However, it is still necessary to verify the can-do statements to improve the overall validity of several of the items. (ASHIHARA: University of the Ryukyus; ONOZUKA: Tokyo Fuji University)
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