感染対策と薬物療法 MRSAの薬物治療とTDM バンコマイシン等の場合,1日2回を1日1回投与とすると,トラフ値に至るまでの時間 が延びることになりますか? トラフ値から次のトラフ値へ至るまでの時間が延びることによる side effect への影響は いかがでしょうか? バンコマイシン等の場合,1日2回投与とするとトラフ値が,小児以外では安全域とされる10μg/mL 以下にまで下がってきません.安全域を15μg/mL以下とすれば,バンコマイシンの添付文書にある1 回1gを1日2回投与でもピークは十分に上がり,トラフ値は15μg/mL程度になります.しかし,1回 500mgを1日4回投与した場合,トラフ値は20μg/mLまで上がり,何日も投与した場合,腎障害が惹 起されます.したがって,1日1回投与の場合,時間が延びることにより,安全なトラフ値に達する ことができます. 時間が延びることで,トラフ値が安全域まで下がってくるので,副作用は軽減されます.トラフ 値に存在する時間ですが,理想的なトラフ値を8μg/mLとすれば,1日1回投与において,3∼4時間 ぐらいと思われます. また,トラフ値を8μg/mLと設定して,その濃度で3時間程度経過しても,MRSAに対するバンコ マイシンはMICの5倍以上ありますから,効果の減弱にはつながらないと思われます. (松山賢治) 62
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