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「山口県中部で発見された活断層−内陸直下型地震の発生予測を目指して」
研究の背景・目的:
私たちの研究グループでは,山口県中南部において長さ約 60km におよぶ大原湖断層系
の存在を確認し,その北部を構成する木戸山西方断層が約 3,500 年前(縄文時代晩期)に
活動したことを明らかにしてきている.図1に山口県中南部で確認された断層の位置を示
す.木戸山西方断層の北東には,地層を分ける地質断層として,阿東町徳佐から篠目まで
NE-SW 方向に延びる徳佐‐地福断層の存在が指摘されていた.地形とトレンチ発掘調査
結果ら,この断層が活断層であることを明らかにし,新しく
地福断層
と名づけた.
私たちの研究グループでは,阿東町篠目中郷において,木戸山西方断層北部と徳佐‐地
福断層南部でそれぞれ断層露頭を発見した.現在,その性状と活動性を詳しく調査・研究
し,内陸直下型地震の発生予測に関するデータを得てきている.
主な成果:
阿東町篠目中郷の国道 9 号線から約 200m北に位置する一般県道迫田篠目線の道路工事
に伴う法面掘削の際に 2 ヶ所で断層露頭が出現した.
断層露頭 A : 掘削法面中央部に幅約 10cm の明瞭な白色断層ガウジを伴う断層が見事な
断層が出現した.この断層の走向・傾斜は N47°E82°E である(図2).
断層の上盤側下部では破砕した流紋岩質凝灰岩(白亜紀阿武層群篠目累層)が認められ
る.この凝灰岩を覆って,礫層がほぼ水平に厚く堆積する.礫層中には数枚の薄いシルト
層が挟まれている.一方,下盤側下部では凝灰岩の上端が断層に沿って下方にずらされて
いる.下盤側の凝灰岩を覆う礫層は上盤側のものと異なり,基質がルーズである.この礫
層を削りこんでローム層と礫混じり砂層が堆積している.
下盤側のローム層の中央部 3mカラム,南端 80cmカラムで試料を採取し,火山ガラス含
有率を測定した結果,AT火山ガラスが確認された.ローム層下部では14C年代測定の結果,
約 9,000 年前の値が得られている.しかし,この層はAT火山ガラスの含有率が高いことか
ら,降灰後から堆積までの時間間隙が短いと推定され,2 万年前後に堆積したと判断した.
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C年代との矛盾については,現在検討中である.
断層露頭 B : この露頭は断層露頭 A の北 200m 付近で地福断層に沿ったリニアメント上
に位置する.断層は破砕した流紋岩質凝灰岩中に認められ,断層面に沿って幅約 2cm の
黄白色の断層ガウジを伴う.断層の走向・傾斜は N29°E78°W である.断層と被覆層と
の関係は明らかになっていない.
今後の展開:
木戸山西方断層と地福断層との関連性を調べ,断層の連結性や連動性についてのデータ
を得る.また,地福断層の活動性について調査を行い,この断層の地震リスクを見積もる.
研究メンバー・連絡先(アドレス)
化学・地球科学科
地球科学講座
金折裕司,理工学研究科
森岡達也(金折研究室)
[email protected]
関連文献:
金折裕司,2005,山口県の活断層,近未来社,名古屋,119p.
図 1 山口県中南部に存在する活断層と断層露頭の分布(金折,2005 に加筆)
(a)
(b)
図 2 木戸山西方断層の断層露頭 A における露頭写真(a)とスケッチ(b)