タックス・プランニング - Keio University

納税義務者①
2015年度3学期
専門科目
タックス・プランニング
Ⅹ国際税務
村上 裕太郎
非永住者以 非永住者以外の居
外の居住者 住者
日本国籍を有して
おらず、かつ過去10
居住者
年間のうち5年以下
非永住者
の期間国内に住所
または居所を有す
る個人
非居住者 居住者以外の個人
国内に住所
を有し、また
は現在まで
引き続いて1
年以上居所
を有する個
人
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2
納税義務者②
課税所得の範囲
納税義務者の種類
 住所
非永住者以
外の居住者
 生活の本拠(通常、住民票のある場所)
※客観的事実によって判断
居住者
 居所
非永住者
 住所以外の場所で、相当期間継続して居住する場所
非居住者
3
4
課税所得の範囲
すべての所得
1. 国内源泉所得
2. 国外源泉所得
 国内で支払い
 国外から送金
国内源泉所得
国際税務
国内法と国際法
 国際税務の重要論点
 国際租税法という法律はない!
 経済はグローバル化しているが、税制は制会共通ルール
がないので、ローカル。
 日本の場合
 国内法と国際法
 租税条約とはなにか?
 個人
 日本人が海外で働く、外国人が日本で働いた場合の課税関係
 個人:居住者は全世界所得を日本で課税(所法7一)
 法人:内国法人は全世界所得を日本で課税(法法5)
 法人
 外国法人が日本に支店を設立した場合
 恒久的施設(PE)とは?
 過少資本税制
 外国税額控除
 移転価格税制
二重課税をどう排除するか?
 外国税額控除(法法69)や租税条約の存在
租税競争
国際税務の考え方
 企業を自国に誘致するため、税率を極端に引き下げている
国々(tax haven;租税回避国)の存在
 1998年4月28日OECD閣僚理事会で、OECD租税競争報告書
を公表(国際的な協調によって税の引き下げ競争に歯止め
をかける目的)
 ゲーム理論による租税競争の弊害
①
②
③
④
B
そのまま
税率下げ
そのまま
50, 50
25, 75
税率下げ
75, 25
30, 30
A
日本の税法の課税関係の検討
租税条約等の課税関係の検討
上記より、日本の課税関係を決定
相手国での課税関係も考慮
外国税額控除
租税条約(tax treaty)①
 従業員を海外に出向させる場合
⇒海外勤務が1年以上になる場合は「非居住者」
(国内源泉所得のみ日本で課税)
⇒海外勤務が1年未満の場合は「居住者」
(全世界所得を日本で課税)
 海外から短期出張者を受け入れる場合
⇒日本の「非居住者」
⇒租税条約の存在も考慮する必要
 国内法と租税条約のどちらが優先されるか?
 日本:租税条約優先
 アメリカ:同レベル(後法優先)
 条約で課税されることになっているが、国内税法に規定が
ない場合は?
 課税されない
日米租税条約14条
アメリカの会社員が日本に短期出張(滞在日数183日以
下)した場合、日本では課税しない
租税条約(tax treaty)②
租税条約(tax treaty)③
日本の租税条約締結国(65条約、96カ国、平成28年2月現在)
 租税条約
2国間政府での相互協議にもとづき、二重課税の排除等を
目的として締結されるもの
 一般の税法条文と定義が異なる(たとえば、法人と個人を区別し
ていない)
 その国の交渉力に依存する部分が大きい
 相手国の国内法にしか関係しない条文が含まれている
 条文自体が抽象的(解釈の余地が大きい)
 多国間(Multilateral)租税条約は現在存在しておらず、二国間
(Bilateral)の条約のみ
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/182.htm
租税条約(tax treaty)④
租税条約(tax treaty)⑤
 研究活動と日米租税条約20条
1 一方の締約国内にある大学、学校その他の教育機関にお
いて教育又は研究を行うため当該一方の締約国内に一時
的に滞在する個人であって、他方の締約国において第四
条1にいう居住者に引き続き該当するものが、その教育又
は研究につき取得する報酬については、当該一方の締約
国に到着した日から二年を超えない期間当該一方の締約
国において租税を免除する。
 日本スイス租税条約4条2
双方の締結国の居住者となる個人については、権限のあ
る当局は、合意により、この条約の適用上その個人が居
住者であるとみなされる締結国を決定する
租税条約(tax treaty)⑥
ハリ・ポタ翻訳の松岡さん、35億円申告漏れの指摘①
 日米租税条約(183日ルール)
 アメリカ(ハワイ含む)の居住者の定義には『グリーンカー
ド所有者』が当てはまる
 しかしそうでなくても、「その年度の米国在住期間が31日
以上で、かつその年度を含めた過去3年間の米国在住期
間の合計が183日以上(前年度の日数は3分の1、前々年
度は6分の1を乗じて計算)」という取り決めに該当してい
れば居住者となる
 アメリカの居住者は、国内源泉所得であれ海外源泉所得
であれ、すべての所得(全世界所得)がアメリカでの課税
対象
(asahi.com 2006年7月26日より)
 世界的ベストセラー「ハリー・ポッター」シリーズの日本語訳で知られる翻
訳家の松岡佑子さん(62)が同シリーズの翻訳料収入をめぐり、東京国
税局 から04年分までの3年間で35億円を超える申告漏れを指摘され
たことが分かった。松岡さんはスイスに居住しているとして日本で申告し
ていなかったが、実際には生活の本拠が日本にあり、申告が必要と認定
されたとみられる。追徴税額は過少申告加算税を含め7億円を超える模
様だ。
 松岡さんは課税処分を不服として異議申し立てを行う一方、スイス居住
者と認めてもらうため、日本とスイスの国税当局による相互協議を申し立
てたとされる。
 関係者によると、松岡さんは当時、「ハリー・ポッター」を邦訳し日本で出
版する権利を持つ出版社「静山社」(東京都新宿区)の代表取締役を務
める一方、同社から翻訳業務を請け負い、巨額の翻訳料を得ていた。
ハリポタ②
ハリポタ③
 01年7月、スイス・ジュネーブ市にマンションを購入し、東京都新宿区に
所有するマンションから住民票を移した。スイス居住者だとして翻訳料を
日本で税務申告せず、静山社が翻訳料の20%の所得税を源泉徴収し
て国に納めていた。
 税法上、日本に生活の本拠がある「居住者」だと、国内外の所得を日本
で申告納税する義務がある。高額所得者の場合、住民税を合わせた税
率は 50%。一方、「非居住者」なら原則として日本で生じた所得の源泉
徴収だけで済む。スイスで申告すれば、地方税を含む税率は40%弱と
みられ、日本で納めた分も控除されるため、結果的に節税になる。
 しかし、関係者によると、松岡さんはスイス移住後も頻繁に来日し、静山
社代表として出版業務を取り仕切ったり、「ハリー・ポッター」の営業活動
をしたりしていた。滞在中は新宿区のマンションに居住。04年までの3年
間は日本での滞在日数がスイスを上回っていたとされる。
 こうした事情から、国税局は、生活の本拠が日本にあり、松岡さんは「居
住者」にあたると認定。源泉徴収で納めた所得税だけでは足りない分を
追徴課税した模様だ。
 松岡さんは国際会議の通訳として活躍していたが、97年に亡くなった夫
の後を継いで静山社代表に就任。その後、同社が「ハリー・ポッター」シ
リーズの出版の権利を取得し、99年から出版している。松岡さんは05
年12月に代表を辞任し、取締役に退いた。
 松岡さんの話 スイス、日本の当局による協議に委ねられており、結論
が出るまでは公に発言できない。いずれの国の税務当局からも課税逃
れとの指摘 を受けたことは一度もない。01年にスイスの永住許可を取り、
ジュネーブですでに5年間住んでいる。スイスで納税し、生活を楽しんで
いる。
確認問題
法人税と国際税務①
 以下のケースにおける課税関係はどうなるか?
 日本に外国法人の支店ができた。この会社は日本で税金
を支払う義務はあるか?
A) アメリカ人の会社員が日本に3ヶ月出張した場合の日本で支払
われた給与(アメリカの居住者に該当)
B) 日本人の研究者がアメリカで2年間の在外研究をした対価として
日本の研究機関から受け取る給与
C) アメリカ人の招聘教授が3年間日本に滞在し、日本の大学から
受け取る給与(アメリカの居住者に該当)
①
②
③
④
日本の税法の課税関係の検討
租税条約等の課税関係の検討
上記より、日本の課税関係を決定(条約優先)
相手国での課税関係も考慮
 法人税法2条
3 内国法人:国内に本店又は主たる事務所を有する法人
4 外国法人:内国法人以外の法人
法人税と国際税務②
法人税と国際税務③
 A国法人がB国に工場を建てて、B国で自動車販売をする
場合
 二重課税の排除方法
① B国で稼いだ所得はB国で課税する。(源泉地国課税)
② B国の工場はあくまでもA法人の一部であるので、A国法人の所
得だけでなく、他の国で稼いだ所得をすべてA国で課税する。
(居住地国課税)
⇒実際は、B国で源泉地国課税され、A国で居住地課税され
る場合が多い=B国所得について二重課税
法人税と国際税務④
 外国税額控除方式
A国(税率40%)
B国(税率20%)
A国法人
支店
A国所得=200
全世界所得=300
B国所得=100
税金
120-20
税金
20
B国で支払った税
金を控除
恒久的施設(PE)①
 A米国法人は日本に支店を設けて販売活動をおこなって
いる。
 国外所得免除方式
A国(税率40%)
B国(税率20%)
A国法人
支店
A国所得=200
B国所得=100
税金
80
税金
20
 B米国法人は従業員を日本に派遣して、ホテルの一室を
拠点に販売活動をおこなっている。
日本における課税関係は異なるか?
恒久的施設(PE)②
恒久的施設(PE)③
(国税庁ウェブサイトより)
外国法人の区分
(法法141)
所得の種類
(法法138)
国内に恒久的施設を有する法人
支店その他事業 1年を超える建設作業等を行い又は
を行う一定の場 一定の要件を備える代理 人等を有
所を有する法人 する法人
1号 PE
2号 3号 PE
(法法141一)
(法法141二、三)
国内に恒久的施
設を有しない法
人
PE無
(法法141四)
源泉徴収
(所法
212(1)
213(1))
事業の所得(法法138一)
-
-
-
【非課税】
無(注1)
資産の運用又は保有による所得(〃
一)
-
-
-
-
無(注2)
資産の譲渡による所得(〃一)
-
-
-
不動産の譲渡に
よる取得及び法
令187(1)一~五
に掲げる所得
無(注3)
その他の国内源泉所得(〃一)
-
-
-
-
無
人的役務の提供事業の対価(〃二)
-
-
-
-
20%
不動産の貸借料等(〃三)
利子等(〃四)
配当等(〃五)
貸付金利子(〃六)
使用料等(〃七)
事業の広告宣伝のための賞金
(〃八)
生命保険契約に基づく年金等
(〃九)
定期積金の給付補てん金等
(〃十)
匿名組合契約等に基づく利益の分配
(〃十一)
-
-
-
-
20%
15%
20%
20%
20%
-
(国内事業に
帰せられるもの)
 PEの種類
(1)「1号PE」:支店、工場等
(2)「2号PE」:建設等の作業などで1年を超えて行うもの
(3)「3号PE」:国内に置く代理人等
(4) PEを有しないもの
20%
【源泉分離課税】
20%
-
15%
-
20
アマゾンとPE
倉庫はPEなのか?①
 米インターネット通販大手アマゾン・コムの関連会社が、東京国税局の税
務調査を受け、05年12月期までの3年間で、140億円前後の追徴課税
を受けていた
 関連会社は日本国内に支店を置かず、顧客との契約などを直接行って
いたが、日本の顧客への配送などの機能は、日本にあるアマゾン・ジャ
パン等が行っていた
 東京国税局は、これらのアマゾン・ジャパン等の日本法人が、米関連会
社の恒久的施設としての機能を果たしていることから、日本顧客への販
売に関する所得を日本での事業所得と認定
国税庁タックスアンサーによると…
日本国内に恒久的施設を有するかどうかを判定するに当たっては、形式的に
行うのではなく機能的な側面を重視して判定することになります。例えば、事業
活動の拠点となっているホテルの一室は、恒久的施設に該当しますが、単なる
製品の貯蔵庫は恒久的施設に該当しないことになります。
http://www.lotus21.co.jp/works/sample/608sample.pdf
倉庫はPEなのか?②
【日米租税条約におけるPE】
 例示
「事業の管理場所」、「支店」、「事務所」、「工場」、「作業場」、「鉱山、石油又
は天然ガスの坑井、採石場その他天然資源を採取する場所」
 期限がある工事現場
工事現場、工事は12ヶ月を超える場合は恒久的施設にみなされる
 恒久的施設に含まれないもの
a. 自社の物品又は商品の保管、展示、引き渡しのためのみに使用すること。
b. 自社の物品又は商品の保管、展示、引き渡しのためのみに保有すること。
c. 自社の物品又は商品を他の企業が加工するためのみに保有すること。
d. 物品又は商品の購入、情報の収集のためのみに一定の場所を保有するこ
と。
 代理人
契約締結権限を有する代理人も恒久的施設とみなされる。ただし、仲立人、
問屋その他の独立の地位を有する代理人を通じて行う場合は、恒久的設備
とはみなされない。
確認問題
 以下のケースにおける課税関係は?
① 日本国内に支店を有し、日本国内で不動産賃貸をおこ
なっている
② 日本国内にPEはなく、内国法人の株式から配当を得た
③ 日本国内にPEはなく、日本の土地を譲渡した
過少資本税制①
過少資本税制②
 外国法人が日本に子会社を設立し、新規事業を立ち上げ
る場合
 過少資本税制(措法66の5)
日本の子会社が外国親会社から資本金の3倍を超えて借入
をした場合、その超える部分に係る支払利息は損金不算入
① 外国親会社が子会社に全額出資する場合
② 出資と貸付を部分的にする場合
税法上の扱いはどう異なるか
 制度の目的
日本の法人税率が高い場合、日本の子会社の支払利息を
多くすることにより、親会社に所得をシフトすることを防ぐた
め
過少資本税制③(全額出資)
日本(税率40%)
子会社
過少資本税制④(全額貸付;金利20%)
B国(税率20%)
資本金
200
親会社
日本(税率40%)
B国(税率20%)
貸付金
200
子会社
配当
60
親会社
配当
36
国内所得=100
B国所得=60
税金
40
税金
12
国内所得=100-40=60
税金
24
B国所得=40+36=76
支払
利息
過少資本税制⑤
外国税額控除①
 過少資本税制(措法66の5)
日本の子会社が外国親会社から資本金の3倍を超えて借入
をした場合、その超える部分に係る支払利息は損金不算入
 日本の法人が海外に進出する場合、
 制度の目的
日本の法人税率が高い場合、日本の子会社の支払利息を
多くすることにより、親会社に所得をシフトすることを防ぐた
め
① 海外に支店を作る
② 海外に子会社を作る
税法上の扱いはどう異なるか
税金
15
受取
利息
外国税額控除②
外国税額控除③
 直接税額控除(支店の場合)
 間接税額控除(子会社の場合)適用前
日本(税率40%)
B国(税率20%)
日本(税率40%)
B国(税率20%)
会社
支店
親会社
子会社
国内所得=100
海外所得=50
B国所得=50
国内所得=100
受取配当金=40
B国所得=50
税金
10
合 計 =150
税金
60 – 10
=50
税金
10
合 計 =140
税金
56
外税控除
B国へ納付
A国へ納付
B国へ納付
配当=40
A国へ納付
外国税額控除④
外国税額控除⑤
 間接税額控除(子会社の場合)適用後
 外国子会社から受ける配当等の益金不算入(法法23の2)
日本(税率40%)
親会社
子会社
国内所得=100
受取配当金=50
B国所得=50
税金
10
合 計 =150
税金
60 – 10
=50
A国へ納付
外税控除
内国法人が外国子会社から受ける配当等の額について、その内国
法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しな
い。これに伴い、間接外国税額控除制度は、所要の経過措置を講
じたうえ、廃止する。
B国(税率20%)
配当=40
 益金不算入の金額
B国へ納付
内国法人が外国子会社から受ける配当等の額につき益金の額に
算入しないこととする場合には、その配当等に係る費用に相当する
金額としてその配当等の額の5%に相当する金額を、益金の額に算
入しないこととされる配当等の額から控除する。
配当等の益
金不算入額
=
外国子会社から受ける
剰余金の配当等の額
-
外国子会社から受ける剰
余金の配当等の額×5%
外国税額控除⑥
外国税額控除⑦
 外国税額控除限度額(法法69①)
法人税額から控除できる外国税額は、次のうちの小さいほうの金
額となる。
A) 控除対象外国税額
 控除余裕額
控除限度額>控除対象外国法人税額の場合の超過額
B) 控除限度額=全体所得にかかる法人税×
国内所得
国外所得
当期の国外所得
当期の全体所得
国内所得
法人税
控除限度額
外国法人税
余裕額
 余裕額も超過額も3年間繰越すことが可能
国外所得
超過額
法人税
 控除限度超過額
控除限度額<控除対象外国法人税額の場合の超過額
外国法人税
外国税額控除余裕枠利用事件①
外国税額控除余裕枠利用事件②
 スキームの概要
 実際の取引
 被上告人(邦銀)、C社(ニュージーランド)、E社(クック諸島)、F社(クッ
ク諸島):E社、F社はC社の子会社
 クック諸島法人E社から同F社に対して直接資金を貸し付けると、クック
諸島ではF社からE社に支払われる利息に対して15%の源泉税が課せ
られる。
 この源泉税をC社は外国税額控除で取り戻すことができない。
 E社が邦銀のシンガポール支店(S支店)に5000万ドルを預金し、S支
店はF社に5000万ドル貸し付ける。
 F社がS支店に利息の支払いをする際に15%の源泉税が課されるが、
邦銀は外国税額控除の余裕枠があった。(日本から外国税額控除を
受けるので、源泉税を取り戻せる)
 邦銀はF社から取引参加料を得ることができる。(S支店がE社に支払う
利息について、シンガポールの源泉税は課されない。)
C社
(NZ)
貸付
5000万ドル
子会社F社
(クック諸島)
子会社E社
(クック諸島)
利息
510万ドル
源泉税
90万ドル
外国税額控除余裕枠利用事件③
外国税額控除余裕枠利用事件④
 本件スキーム
 判決
1億1千万円
C社
(NZ)
 判決日等 最高裁判所 平成17年12月19日判決
 判決結果 逆転国側勝訴(確定)
子会社E社
(クック諸
島)
子会社F社
(クック諸島)
源泉税
90万ドル
貸付
5000万ドル
利息
510万ドル
6億2千万円
7億3千万円
預金
5000万ドル
S支店
(シンガポール)
預金利息
582万ドル
7億1千万円
 要旨
本件取引は、全体としてみれば、本来は外国法人が負担すべき外
国法人税について我が国の銀行が対価を得て引き受け、その負担
を自己の外国税額控除の余裕枠を利用して国内で納付すべき法
人税額を減らすことによって免れ、最終的に利益を得ようとするも
のである。・・・そうすると、本件取引に基づいて生じた所得に対する
外国人税を法人税法69条の定める外国税額控除の対象とすること
は、外国税額控除制度を濫用するものであり、さらには、税負担の
公平を著しく害するものとして許されないというべきである。
邦銀
(日本)
IBM事件①
IBM事件②
 スキームの概要
 ⽇本IBMの100%⽶国親会社は、平成14年4⽉に⽇本⼦会社
(⽇本IBMから⾒ると兄弟会社)である有限会社に⽇本IB
Mの株式全部を1兆9,500億円で譲渡
 この有限会社は、⽶国親会社が⽇本IBM株式譲渡の2か⽉前
に会計事務所から買ってきた会社であり、税務当局はペーパー
カンパニーと認定しているが、IBMは中間持株会社と主張
 そしてその後この有限会社は、⽇本IBMに3回に渡り(平成
14年12⽉、平成15年12⽉、平成17年12⽉)、⽇本IBMの
発⾏済株式の約 22%を約4,298億円で譲渡(⽇本IBMから
⾒ると⾃⼰株式の取得)
 有限会社は、⽶国親会社から買ってきた単価とまったく同じ単
価で、3回の株式譲渡をしているので会計上の譲渡損益はゼロ
 税務上は約3,995億円の譲渡損失とみなし配当が両建てで計上
されたうえで、みなし配当は益⾦不算⼊のため結果的に約
3,995億の税務上の損⾦が発⽣
http://www.zeiseiken.or.jp/faq/soshiki_saihen/sosaihen_tna_maestro_IBM_1_554.pdf
IBM事件③
IBM事件④
現⾦預⾦
譲渡損失
中間持株会社(単位:億円)
4,298 IBM株式
3,995 みなし配当
4,298
3,995
益金不算入
資本⾦等
利益積⽴⾦
⽇本IBM(単位:億円)
303 現⾦預⾦
3,995
4,298