道民カレッジほっかいどう学 大学インターネット講座 「ダンスを楽しもう

道民カレッジほっかいどう学
大学インターネット講座
「ダンスを楽しもう~『踊る』ダンスと『見る』ダンス~」
札幌大学 短期大学部
柴田 詠子
助教
◇講座の内容◇
・普段の日常生活の中では「ダンス」はあまり馴染みがない方が多いかもしれない。
・実はダンスには色々な楽しみ方がある。
・その 1 つが近年注目されている「コミュニティダンス」。
・地域のなかで幅広い年齢層の人がダンスを通じてコミュニケーションを楽しむもの。
・ダンスには「踊る」だけでなく「見る」という楽しみ方もある。
・芸術作品としてのダンスを見ることで、日常とは違った新しい感覚や刺激を受けることができる。
・今回は「踊る」ダンスと「見る」ダンス、それぞれを紹介しながら、ダンスとみなさんの生活と
の関わり方を考えたい。
◆「踊る」ダンス◆
・コミュニティダンスは 1960 年代に、イギリスで動き始めたコミュニティアートの一領域と考え
られる。
・コミュニティアートは演劇を中心に始まった。
・やがてアートは特定の人々だけではなく、もっと市民に開かれ理解されるべきと考えられる様に
なった。
・コミュニティアートは、アーティストと市民、又は普段交流のない市民同士が出会う貴重な場と
なり、お互いに成長する機会を提供するものと見なされる様になった。
◆コミュニティダンスとは◆
・年齢、性別、国籍、障害の有無に関わらず、誰もがダンスを楽しむことが出来る。
・コミュニケーションを通じて表現や価値観の多様性を知ることが出来る活動。
・アーティストがこの活動に関わり、地域住民と共同でダンス作品の制作を行う。
・教育や福祉の現場でも自己表現やコミュニケーションの一環としても行われている。
・日本では南村千里さんという女性がイギリス留学でコミュニティダンスを学び、日本で実践した
事がきっかけとなり、2000 年代後半にかけて全国的に展開されるようになった。
札幌大学コミュニティダンスサークル『ひつじ舞踊団』の活動風景(取材 VTR)
・毎回参加する方は流動的。
・
「ダンス」そのものに関心を持ち始めた方などのリピーターも増え、様々
なダンスに挑戦して頂いている。
◆「ひつじ舞踊団」のテーマと内容◆
・J-POP ダンスから、キッズダンス、即興ダンス、舞踏、社交ダンスなど、
様々なジャンルのダンスを行っている。
・西岡音頭とは、西岡地区で行われている盆踊りで、コミュニティダンス
にふさわしいテーマ。
・バチャータはドミニカ共和国発祥のペアダンス。
・テーマは様々だが、ワークショップの時間は毎回2時間。
・前半1時間は「今日行うダンスはどのようなダンスなのか」という紹介を行っている。
・ダンスが成立した歴史的背景や実際に踊っている映像など DVD 資料を使って紹介している。
・グループワークや簡単なステップを練習するアイスブレイクの時間となっている。
・後半1時間は実践的な内容に挑戦する時間。
・ワークショップの最後には参加した感想や気付いた点などをシェアする時間を設けている。
◆参加者◆
・これまで「ひつじ舞踊団」のプログラムには 6 歳か
ら 85 歳と幅広い年齢層の人々が参加している。
・中でも、60 代の参加者が一番多く、次いで 50 代と 20
代が多く参加している。
・男女比では、男性が 36%、女性が 64%と女性の比率が
高く、ペアダンスやサルサなど男女ペアで踊るワー
クショップでは、男性の参加が目立っている。
◆参加の目的◆
・「ひつじ舞踊団」参加者の目的は多様。
・参加目的の中で最も多かったのは「講師・内容に興味
がある」という項目。
・次いで多かったのは「運動不足解消」という項目。
・この項目は主婦層からの回答が多く、ダンスは楽しく
身体を動かすことができる、シェイプアップ効果が
ある、など気軽に参加できるイメージがあることが
わかる。
・ワークショップの実施回数を増す毎に「ひつじ舞踊
団」の活動が参加者から口コミで広がるようになり、
「友人から誘われて参加した」
という意見も多くなっ
てきた。
親子ダンス参加者の感想(取材 VTR)
・初めての方でも「楽しめる」ところがコミュニティダ
ンス。
・参加者の感想に共通することは、初心者・経験者に限
らず、ダンスを通じて「日常生活では体験することの
ない刺激を得た」という点。
・ダンスのワークショップに初めて参加した人でも、導
入から丁寧に教えてもらえることで、抵抗なくダン
スを楽しみながら参加できた人も多くいる。
・ダンススクールや連続の講座では、長年継続している
中に初心者が入りにくい、というイメージを持って
いる人が多くいる。
・「ひつじ舞踊団」のワークショップは毎回新しいダンスを体験するための入口として設定してい
るので、初めてでも参加しやすい内容。
・参加者の年齢層も幅広く、ダンス経験の制限もないので、クラス内での上下関係などが出来にく
く、誰もが平等に参加できる、というメリットがある。
・「ひつじ舞踊団」は一般的なコミュニティダンスの活動の中ではかなり特殊な例。
・
「地域の人々の生活とダンスを身近にする」、そして「アーティストと地域を身近にする」という
点では、一般的なコミュニティダンスと同様の役割を果たしている。
・「ひつじ舞踊団」は今後も地域住民が参加しやすい活動形態をとって、さらに多くの方が参加で
きるような場所にしていきたい。
◆「見る」ダンス◆
・ダンスには「踊る」だけではなく、
「見る」という楽しみ方もある。
・舞台芸術としてのダンス鑑賞は、一般の方にはなじみにくいものと言える。
・映画や音楽コンサート、スポーツ観戦のような娯楽的な楽しみと比較すると、舞台芸術鑑賞の敷
居は高く、実際はダンス関係者同士の鑑賞が圧倒的に多い。
「見る」ダンスを広く普及しようと色々な取り組みをしている団体をご紹介します。
(取材VTR)
◆コンテンポラリーダンスの歴史◆
・
「コンテンポラリーダンス」という言葉の語源はフ
ランス語の「La danse contemporaine(ラ・ダンス・
コンテンポランヌ)」にある。
・70 年代にアメリカでは「モダンダンス」、
「ポスト・
モダンダンス」の動きがあった。
・その流れが 80 年代初頭のフランスでは、
「Nouvelle
Danse(ヌーヴェルダンス)」
、直訳すると「新舞踊」
として反バレエ・脱バレエ的な形で動きを見せる。
・後に「コンテンポラリーダンス」という言葉で、世
界的に広がっていった。
・その動きは日本にも伝わっている。
・1980 年代後半から 90 年初頭に入ると、日本でもフ
ランスやドイツの現代の社会状況を反映した「同時
代性」のダンス作品が上演され、
「コンテンポラリ
ーダンス」という言葉が定着するようになった。
・
「コンテンポラリーダンス」は日本語に訳すと「現
代のダンス」という意味。
・古い形式にとらわれず、現代という時代を反映し
た舞踊をジャンル問わず指した言葉。
・クラシックバレエや日本舞踊、JAZZダンスや
HIPHOPダンスのように特定のジャンルとし
て確立されているものではない。
・「コンテンポラリーダンス」という言葉が登場して 30 年ほど経つ。
・今日も世界各地で新しい流れが生まれてきている。
・また、その地域に根付いていた民族舞踊などが合流し、各地域の特性も現れてきている。
・常に同時多発的に新しい形へと変動していくのが「コンテンポラリーダンス」の魅力になると思
われる。
◆北海道コンテンポラリーダンス普及委員会取り組み◆
・「Conte Sapporo」の初期の企画として人気があったのは「舞踏 BAR」という企画。
・北海道・小樽市在住で活動中の舞踏家・田仲ハルさんがナビゲーターとなり、舞踏の魅力を発信
するイべント。
・舞踏に関するレクチャーやパフォーマンス、土方巽や大野一雄の貴重な舞踏映像上演会の他にも、
舞踏体験・白塗り体験会など、参加者が楽しめるコンテンツが多くあった。
・「舞踏 BAR」なので、飲み物をオーダーするシステムになっている。
・ウェイトレスも白塗りで舞踏の動きをしながら飲み物を運んでくれるので、頼んでから手元に届
くまで時間がかかる。
・田仲ハルさんの舞踏レクチャーも非常に面白い語り口調でその魅力を紹介。
・舞踏の一般的な「怖い、おどろおどろしい・・・」というようなイメージが払拭されるイべント。
・会場を劇場の中に限らず、より一般の方の日常に近づける、というアイディアもコンテンポラリ
ーダンスの中では多く取り入れている。
・2011 年には、平原慎太郎さんのワークショップショーイング公演、
「punctual people」の宣伝を
兼ねて、札幌市の中心部の地下歩行空間やビルの店舗内でもパフォーマンスを展開。
・2016 年 5 月には、札幌市中央区にある浄土真宗観音寺本堂で゙
現代文学演舞「地獄変」という公演
を行った。
・札幌を拠点に活躍する演出家・橋口幸恵さんと平原慎太郎さんのダブル演出で、芥川龍之介の「地
獄変」「藪の中」
、三島由紀夫の「葵上」の三作を上演し、非常に高い芸術性で好評を博した。
・「北海道コンテンポラリーダンス普及委員会」は斬新な企画でコンテンポラリーダンスの普及活
動を行ってきたが、北海道のダンスシーンの課題はまだまだたくさんある。
今後の活動の展望に関して、森嶋さんはこのようにお話しています。(VTR)
・ダンスを含む芸術作品は発信する側、受信する側の双方向性のコミュニケーションにより成立す
る。
・様々なコミュニケーションツールが発展した今日、芸術作品は最もわかりにくいコミュニケーシ
ョンなのかもしれない。
・しかし、言葉では伝えにくい事柄を表現するためのコミュニケーション手段として芸術は発展し
てきた。
・感じ方や受け取り方は人それぞれで異なり、何が正解という基準もないが、受信する側の多種多
様な価値観が、発信する側の刺激となり、また次の作品を生み出す原動力へとつながっていく。
・
「わからない」
、
「難しい」という先入観を捨てて、今自分の中で感じることを大事にしながら、ダ
ンスや芸術作品に触れてみると、新しい楽しみ方があるかもしれない。
◆まとめ◆
・今回は「踊る」ダンスと「見る」ダンスのそれぞれの団体の活動を見て頂いた。
・この 2 つの団体の活動に共通していることは、ダンスと皆さんの生活をより近い関係にすること
に焦点を置いていること。
・なぜそれが大切かというと、ダンスは人々の生活の中で常に発展してきたから。
・ダンスの歴史は人類の歴史とともに始まった。
・ダンスは人間の本能的な行為で、祝い事や礼拝、求愛、権力への抵抗など、自分の言葉では表現
できないことを表現するために、自分たちの身体で踊ってきた。
・やがて舞台芸術としてのダンスが成立し、伝統芸術としても発展してきた。
・このように 歴史を振り返ってみると、ダンスは「踊る」、
「見る」という二つの目的をもって発展
してきた。
・今の時代は、様々な情報が簡単に手に入り、人々の生活がどんどん便利にそしてスピードを増し
てきている。
・そんな中、身体を動かしたり、芸術作品に触れて心を感動させたりするという至ってシンプルな
行為が後回しにされている。
・人々の生活からどんどん遠ざかってきているように見える。
・しかし、そのように変わっていく世の中でも、ダンスはまた新しい形を見せながら発展していく
可能性がある。
・時代の変化や、地域性の違いにかかわらず現在も世界各地で新しいダンス文化が形成されていま
す。
・今後、北海道でどのようなダンス文化が形成されるか、どう作っていくかは、みなさんの行動も
一つの重要な要素になる。
・
「踊る」ダンス、
「見る」ダンス、もし触れる機会があったら是非体験していただき、ダンスを楽
しんでいただきたい。