第11回講義ノート(無線通信への応用)

電磁波工学
第11回 無線通信システムと回線設計
(固定局通信・移動体通信・衛星通信)
柴田幸司
講義ノート
無線通信と回線設計
無線機器の信号(電磁波)を
空間に放射し、情報(デジタル・
アナログ)を伝送する手法
---通信方式(送受信点による分類)---
固定通信 ・・・ マイクロ波・中継回線(4,5,6G),
携帯電話のエントランス回線、(TV・ラジオ放送) 移動体通信 ・・・ 携帯電話、モバイル(コンピュータ)通信、
VICS、ETC、WiMAX
衛星通信 ・・・ 一般の衛星放送、業務用通信
衛星を用いた車・車間、車・固定間通信(ETSⅧ)
回線設計とは
送信信号電力がノイズ電力を上回って受信できることを補償すること
無線通信機器の構成 (AM放送の場合)
発振器
アンテナ
1485kHz
送信回路
マイクロ
フォン
アンテナ
1485kHz
変調
回路
高周波
増幅回路
局部発振器
1035kHz
455kHz
受信回路
(ヘテロダイン増幅の場合)
高周波 周波数 中間周波 検波(復調) イヤフォン
増幅回路 変換器 増幅回路 回路
無線通信機器の回線設計(送信機系)
発振器
+0dBm
アンテナ
高周波電力 高周波電力
増幅回路
増幅回路
電力
+30dB
1485kHz
マイクロ
フォン
変調回路
変換損失
-10dB
-10dBm
dBmについて
+20dB
+20dBm
1mW
1485kHz
+40dBm
→ 0dBm
 XmW 
電力(dBm)  10  log10 

 1mW 
 1mW 

log
10
1mW →
  10  log10 1  0dBm
10 
 1mW 
 0.1mW 
1
10

log

10

log
10
 10dBm
0.1mW →


10
10
 1mW 
 XmW
10  log10 
 1mW

  A[dBm]

X [mW]  10
-20dBm →
+20dBm →
+40dBm →
10
20
10
10
 10  2  0.01mW
20
10
10
A[dBm]
10
40
10
 10 2  100 mW
 10 4  10000 mW  10 W
自由空間の伝搬損失
波源からd[m]離れたあ
る点で観測される電力
Pi
Pd 
4d 2
d
Pi
入力電力
送信アンテナ利得
Gt
Pi
Pd 
4d 2
Pr
この値自体はも
ともとマイナス
球の表面積
c
2
を自由空間伝搬損
失と言い、dBでは
 4d 
Loss  10  log10 

  
受信断面積
受信機での受信電力は
波長で規格化  
f
  
Loss  

 4d 
d
d 離れた点での電力密度
入力電力
Gr
Pt
ガウスの法則と同じ考え方
d 離れた点での電力密度
受信アンテナ利得
2
Pr  Gt  Pd  Gr
4
Pi
2
 Gt 
 Gr
2
4d 4
  

  Gr  Gt  Pi
 4d 
電力は距
離の2乗
に反比例
2
2
[dB] となる。
(損失が+だから分子分母が逆)
空間での電力損失
となる。
回線系
AMラジオのバーアンテ
ナは利得が得られない
送信アンテナ
2dBi
受信アンテナ
-20dBi
距離 100km
Pt=+40dBm
f
3
148510 [Hz]
( f)
d
Pr: 有効電力?
1001000
[m]
 8
2.9979210
f
Sloss (  )
P
10log
( f)
4  d
40
2
A1
Total
Pr
P
Sloss (  )  75.882
[dB]
A1
Total  53.882
Pr
2
A2
Sloss (  )
[dBm]
A2
20
受信系(ヘテロダイン方式)
局部発振器
1035kHz
0dBm
アンテナ
455KHz
-54dBm
Ref点
出力電力
+20dB
-34dBm
高周波
増幅回路
(LNA)
-10dBm
+10dBm
中間周波
周波数
検波(復調) イヤフォン
増幅回路
変換器
回路
-10dB
周波数変換器での合成電力
20dB
-34dBm → 3.981×10-4mW
0dBm → 1mW 3.981 10 4  1  1mW  0dBm
実際の出力
-10dBm
コンバージョンロス
スーパーヘテロダイン受信機の場合
ノイズレベルについて
アンプからノイズが発生
入力雑音なのでNi
回路にて発生する入力雑音電力N
Ni  k T  B
ここで
k  1.38 10 23
(ボルツマン定数)
T: 絶対温度, B: 帯域幅
入力雑音電力は、kが一定なので温度が高く、帯域幅が広いほど雑音が多い
AM放送の場合
絶対零度は-273.15℃で、これを0ケルビンという。温度が25℃の場合は、ケルビン
で表すと298.25Kとなる。また、AM放送の帯域幅を6kHzとすれば
N i  kTB  1.38 10 23  298.25  6 10 3
 8.28 10 20  298.25  2.47 10 3 10 20
 2.47 10 17 W
 2.47 10 14 mW
10log 2.4710
14
 136.073 dBm
伝送線路や周波数変換器の損失により、ノイズレベル上昇
キャリアレベルとノイズレベルの比→ C/N比
を得る。一方、今回のAM放送の場合にはC=-54dBmなので、C/N比は
-54-(-136)=82dB となり、充分な余裕のある回線系であると分かる。
BS放送の受信系の例
絶対零度は-273.15℃であり、これを0ケルビンとすれば、温度が25℃の場合には、
これをケルビンで表すと298.25Kとなる。また、BS放送の帯域幅は27MHzなので Ni  k T  B
 1.38 23  298.25  27 10 5
 1.1113 W
10
10log 1.1110
 99.547
 129.54dBW
 99.54dBm
1W=0dBW 1mW=0dBm
雑音測定に関しては、一般にT=290Kが標準温度Toとして定義
回路設計においては、この入力される信号と雑音の比( S/N )がどれぐらいあり、
回路内部でどれくらいの雑音が発生し、最終的な出力として、どれくらいの( S/N )
となるかをみることが、低レベル信号を扱う受信系の回路設計では重要である。
受信機の入力換算雑音電力
図に示す受信系において、受信帯域フィルタの挿入損失をL1=3dB、受信ミキサ回路の雑音指数を
F2=3dB、変換利得をG2=10dB、IF増幅回路の雑音指数をF3=7.8dB、帯域幅をB=20kHzとする時、この受
信系の雑音電力の入力変化値を計算せよ。但し、周囲温度がT0=290Kにおけるk・T0(kはボルツマン定
数)の値を-174dBm/Hzとする。
受信帯域
フィルタ
受信
ミキサ
局部発振
回路
受信フィルタの雑音指数をF1とすると
F1  L1  3dB  2(真数)
損失L1を利得G1で表すと
1 1
G1    0.5
L1 2
IF増幅
回路
となる。よって、この受信系の雑音指数Fは
F  F1 
2 .0  1 6 .0  1
F2  1 F3  1

 2 .0 

 5 .0
0 .5
0.5  20
G1
G1  G2
10 log10 5.0  7 dB
を得る。よって、雑音電力の入力換算値Ni[dBm]は


B  10 log10 20 10 3  43dBHz
より
N i  kTBF  174  43  7  124dBm
を得る。つまり、入信電力とこのノイズの値の比がC/N比となる。
移動体通信
基地局
・固定局と、移動局および、移動局同士での通信
問題点
移動による直接波伝搬の断絶やマルチパスにより、常時接続が難しい
解決法
基地局 → アダプティブアレーなど
移動局 → ダイバシティ方式など
携帯電話網の回線設計
端末アンテナ
2dBi
Pt=+10dBm
基地局アンテナ
5dBi
距離 2km
Pr: 有効電力?
800MHzでの自由空間伝搬損失 :-130.51dB
2000GHzでの自由空間伝搬損失 :-138.47dB
受信電力として
は8dBの差
ダイバシティ方式
信号の強いアンテナに電子的
なスイッチで切り替える方式
送・受信機
・マルチセクタアンテナ技術
任意方向からの電波を捕らえ
る為にアンテナをスイッチで
切り替える技術
メリット ・単位アンテナの利得を
大きく出来る。
・マルチパスに強い
通信試験衛星 ETSⅧ
有線通信について
・固定電話(電線、光ファイバ)
・ADSL
・光ファイバ
ADSLとその帯域幅
8Mでは上り25kHz~138kHz、下り138kHz~1104kHz
26M(24M)は25kHz~2200kHzの範囲
ISDNが使用している周波数帯(0~320kHz)の中心が160kHz
ADSLの伝送損失
計算例
インターネットサイト
における計算値
870m
-17dB
自宅
NTT局
平行2線
未知数
伝送線路損失式の逆算
2
X
10  log10    17
d
電力は距離の2乗に反比例
基本式の作成
https://lios-web.ntteast-lineinfo.jp/LiosApp1/home/index.jsp
X
20  log10    17
d
 X   17
log10   
 d  20
→
17
これより
X
 10 20
d
ここで、d=870mだから
X  d 10
となるので
X  d 10
17
20
17
20
と変形される。
 870  0.126  109.62  110
となる。これより、電話線による電力損失は
2
 110 
 110 
Loss  10  log10 
20
log


[ dB ] ・・・(1)

10 
 d 
 d 
で計算できることが分かった。
上記式での電話線の損失と距離との関係
距離[m]
損失[dB]
500
-13.15
1000
-19.17
2000
-25.19
3000
-28.72
4000
-31.21
5000
-33.15
実際(測定値)は
線路長5013m 伝送損失-50dB
1式と異なる
近似式による補正

 130
Loss  20  log10 
 0.0225 [ dB ]

 d
距離[m]
損失[dB](近似式)
870
-17.929
2000
-25.193
3000
-33.625
4000
-40.0
5013
-49.288
参考式
で計算した場合
損失[dB](測定値)
-18.0
-50.0
計算値は周波数によっても異なる
実際の測定値は計算値とは異なる。
(株)NTTのホームページより
引用
同軸ケーブルの損失
導体損失
r
3.61
Zo
K1
f
d
7
[dB/m]
d:内導体外径[m]
K1:内部導体の材質
D:外導体内径[m]
K2:外部導体の材質
Z0:線路インピーダンス
f :周波数[Hz]
K2K3 
10
D
K3:外部導体の形状
誘電損失
g
9.1  tand f 10
ε :絶縁体の比誘電率

r
8
[dB/m]
δ :絶縁体の誘電正接(損失角)
g [dB/m]
K1=1 (銅単線)
K2=2 (銅網線)
K3=1 (平滑管)
8Mbpsでの最高周波数
f=1104[KHz]
テフロン絶縁の同軸線路
D
10.010
3
1.510
d
3
Zo


2.3
r
g
tand
2 10
4
  4.41 10
3
60  D
ln
d

Zo  75.055
[dB/m]
 1000  4.41
[dB/km]
 5000  22.052
[dB/km]
平行2線より
損失少ない
光ファイバの伝送損失
石英ファイバで,伝送損失0.6dB/km(波長1300nm)以下
長距離伝送が可能
デジタル通信について
無線LANのブロック図
RFフィルタ
ダウン コンバータ IFアンプ
デジタル 変復調回路
I/Q
復調器
ピン
スイッチ
発振器
I/Q
変調器
パワーアンプ RFフィルタ
アップ コンバータ
ベースバンド部
アンテナ
ローノイズ
アンプ
PC