2. 甲状腺疾患を自分で診断し、治療する d

甲状腺 DotJP
Thyroid DotJP presented by Sumire Hospital
2. 甲状腺疾患を自分で診断し、治療する
d-ⅳ. 亜急性甲状腺炎の自己治療法
亜急性甲状腺は風邪のような症状のあとに、甲状腺のある首に強い痛みを伴う炎症がおこり、発熱と甲状
腺機能亢進症による症状が出てくる病気です。原因はまだはっきりしていませんが、ウイルスの感染では
ないかと考えられています。動悸や手の震えなどの甲状腺機能亢進症の症状が出てくるのは、炎症によっ
て甲状腺が壊されて甲状腺ホルモンが血液中にもれて出てくるからです。副腎皮質ホルモン剤が非常によ
く効く病気です。
この疾患の治療に関しては、二つのポイントがあります。
z ものを飲み込んだ時に痛みが強くなり、発熱も伴っていることから風邪と間違われて治療を受けてい
ることがあります
症状が軽い場合は風邪のために投与された消炎鎮痛剤でも症状が改善することがあります。しかし、
抗生物質は効きませんし、たいていは痛みや熱などの症状が、なかなかとれないので不安になってし
まっている患者さんを多く見受けます。これは治療というよりも診断にかかわる問題で、風邪と言わ
れたがなかなか熱が下がらない、のどの痛みがとれないという時には、痛みのある場所がのどの奥な
のか首の前なのかをご自分で確かめることが大事です。亜急性甲状腺炎では、甲状腺のある首の前を
押さえると痛みますが、風邪ではのどの奥(いわゆるのどちんこのあるところ)や首の横のほうのリ
ンパ腺が痛みます。
z 亜急性甲状腺炎には副腎皮質ホルモン剤が非常によく効くのですが、この疾患の治療に慣れていない
医師では、その使用が適切でないことがあります。
副腎皮質ホルモン剤の使用をためらって、非ステロイド性の消炎鎮痛剤で治療するために、いつまで
たっても痛みや熱がとれなくてつらい状態が続くケースがあります。また、副腎皮質ホルモン剤で治
療をはじめても、副作用がでるのを心配しすぎて投与量が不十分であったり、早く減量しすぎたりす
るために症状がなかなかとれない、あるいはすぐに症状が再発するということが見受けられます。
それでは、間違いなく亜急性甲状腺炎と診断された時の治療について説明します。この病気は、特に治療
しなくても 3∼6 ヶ月で自然に良くなると考えられていますので、痛みも強くなく発熱も軽度であれば、消
炎鎮痛剤くらいで様子をみてもよろしいでしょう。しかし、痛み、発熱、甲状腺機能亢進症の症状が明ら
かな場合は、副腎皮質ホルモン剤の使用をためらうことはありません。
亜急性甲状腺炎は、不快な症状があればすべて副腎皮質ホルモン剤で治療してよろしいでしょう。その理
由は
z 非常によく効き、翌日に症状がとれる
z うまく使えば、副作用はほとんど出ない
z 薬は、必ず中止できる
副腎皮質ホルモン剤の使い方
副腎皮質ホルモン剤は、最初に十分な量を飲んで、2∼3 ヶ月で中止します。副腎皮質ホルモン剤としては
プレドニゾロンが一般的に使われます。ほとんどの場合は、プレドニゾロンを一日 20∼30mg 飲みますと
翌日には症状がとれます。場合によっては、一日 45mg くらい必要なこともありますが、それでも一週間
情報提供: すみれ病院 院長 浜田昇、副院長 岡本泰之
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もすれば内服量を減らすことができますので、怖がることはありません。最初に十分効く量を飲むことが
大事です。
次に薬の減らし方です。副腎皮質ホルモン剤を飲んで発熱や痛みなどの症状が完全に取れれば、一週間後
から量を減らしていきます。その後の減量の仕方は一定したものはなく、ケースバイケースでちょっと難
しい所があります。十分量の副腎皮質ホルモン剤の内服を長く続け過ぎると、副作用のでる可能性が高く
なりますし、早く減らし過ぎると病気が再発してくるからです。副腎皮質ホルモン剤の減らし方の関して
は、専門家の勘のようなところがあって表現するのは難しいのですが、おおまかには次のようになります。
まず発熱や痛みがあったり、炎症の程度を調べる検査である赤沈値に異常があれば減量はできません。そ
れらに異常がなくても甲状腺が大きく腫れていたり、押さえて痛みがあったりすれば副腎皮質ホルモン剤
を減らすのは難しいでしょう。
その他には、食事は何を食べても結構ですし、特に安静にすることはありません。しかし、治療中はあま
り無理をしますと再発しやすいと言われています。またいくら内服するのが短期間であっても、副腎皮質
ホルモン剤の副作用についての注意が必要です。まず胃潰瘍や結核、糖尿病にかかったことが無いか、あ
るいは現在かかっているか、血圧、血糖、胸部レントゲン撮影、心電図を調べておくことが必要です。そ
して副腎皮質ホルモン剤の服用中は胃薬をいっしょに飲んでおいた方が良いでしょう。
病気の経過は?完全に治る?
ほとんどの方は、数ヶ月で良くなります。甲状腺機能に関しては、最初は炎症のために甲状腺ホルモンが
漏れて甲状腺機能亢進症になりますが、その後炎症で甲状腺が壊れてしまってホルモンが作れないために
一時的に甲状腺機能が低下します。しかし、特に甲状腺ホルモン剤などの治療の必要もなく自然に回復し
ます。この病気は完全に治ってしまう病気と考えてよろしいでしょう。
良くなってしまえば、まず再発することはありません。まれに再発がみられるという報告がありますが、
そのために治ってからも経過観察するという必要はありません。ただ亜急性甲状腺炎のあと、これも非常
に頻度は低いのですが、甲状腺機能低下症から回復しないこともありますので、甲状腺ホルモンが完全に
正常に戻るまでは経過観察が必要でしょう。
情報提供: すみれ病院 院長 浜田昇、副院長 岡本泰之
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