神田通信機株式会社

19072041.pdf
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企 業
1992
神田通信機
松 丸 美佐保
(マツマル ミサホ)
神田通信機株式会社社長
赤字基調を脱却し大幅な増益を達成
◆2007年3月期の業績報告
当社グループは、情報と通信の両分野の技術を持つ強みを生かし、情報通信ネットワークをオールインワン
でサポートし、市場ニーズに適合したソリューションビジネスを展開している。
当期は受注高が61億4百万円(前期比3.7%増)、売上高が61億41百万円(同1.2%増)、営業利益が1億84
百万円、経常利益が2億59百万円、当期純利益が2億78百万円となった。売上は微増であるが、営業利益は前
期の5.5倍に増加した。原価率を0.4ポイント改善し、販管費も1億11百万円削減できた。経常利益が1億90百
万円増加した。持ち分法適用会社の業績が好調に推移したことも経常利益に寄与した。
貸借対照表では、資産合計が1億86百万円の減少となった。これは主に、投資有価証券の時価の減少による
固定資産の減少である。負債合計が3億70百万円減少したのは、仕入債務が減少したことによる。純資産合計
が1億85百万円増加したのは、利益剰余金が増加したことによる。
キャッシュフロー(CF)は、営業CFが前期比2億9百万円増の3億98百万円、投資CFが前期比1億54百万
円減の25百万円、財務活動CFは前期比30百万円増でゼロであった。現金および現金同等物期末残高は11億
94百万円と前期比4億24百万円の増加となった。
◆2008年3月期の業績見通し
製造部門であった㈱神田製作所は、当社事業と関連性がなくなっているため、同社からの全株式買い取りの
申し出を応諾することにした。これにより、同社は連結から外れて独立した企業となった。
セグメント別売上は、通信事業が5億円増の44億32百万円、情報事業が2億円減の13億83百万円を見込ん
でいる。賃貸事業は、工場跡地や支店用地の活用を考えており、現在駐車場として使っている土地が一時使え
なくなるので、減少となる。情報事業は大手顧客で受注のずれが発生するため減収を予想している。通信事業
は、これから拡販するセキュリティ分野の売上増を見込んでいる。2006~2007年3月期には、売上に占める
本社の割合が58%、支店が41%であった。2008年3月期は本社が61~62%、支店が38~39%を目標として
いる。
営業利益は、過去十余年赤字基調が続いていたが、2006年3月期に黒字転換し、当期(2007年3月期)は
大幅な黒字化を達成することができた。前期にマイナス83百万円であった情報事業は、当期にマイナス19百
万円に圧縮されており、2008年3月期には黒字化する予定である。通信事業は、前期の1億61百万円から今期
は95百万円となる見込みである。これは、前期は大手顧客におけるネットワークインフラの構築や官公庁関
連の工事等、利益率の高い仕事が多かったが、今期は中規模の工事が多く前期ほど利益が望めないことと、当
社の設備が老朽化しているので、改修・修理費用が掛かるためである。売上原価率はほぼ一定であるが、販管
費は増加すると予想している。
メンテナンスサービスは、当社の利益の柱となっており、受注システムの納入が完了するとハードウエア、
ソフトウエア、ネットワークに関して保守契約を締結する。これが一時は8億50百万円に落ち込んだが、2007
年3月期は9億39百万円まで回復した。今期は2.6%増の9億63百万円、2009年3月期は10億円を目標にして
いる。契約件数は約2,700件で横ばいであるが、保守を行う拠点数は増加傾向にある。保守契約に伴って、ソ
フトウエアのカスタマイズや電話移設や増設の保守工事売上が保守契約売上の1.1倍あり、保守契約売上と保
守工事売上を合計すると、2007年3月期には売上の34%を占めた。
配当については、3円の基調は同じで、創立60周年記念配当2円を加えて5円配当となる予定である。
◆事業内容の紹介
情報通信市場は次世代ネットワーク(NGN)に向かっており、当社は情報と通信を融合したトータルな技
術力という独自の強みで対応していく。創立60年に当たり「ICT60」という標語を掲げている。当社を支え
本著作物の著作権は、社団法人 日本証券アナリスト協会 R に属します。
ているのは"開発力"、"信頼性"、"技術力"、"協業力"の四つであり、これにより自社ブランドシステムによる
市場拡大、IPソリューションによる受注の拡大、ワンストップサービスによる信頼性の確保、アライアンスに
よる新規事業の開拓を目指す。
具体的な事業内容として、最初にIPシステムの構築事例を紹介する。これは光ネットワークで約200拠点の
IPセントレックスおよびアプリケーション拡張システムを構築するというものである。顧客は資本金661億
円、従業員数5,200名の鉄道会社である。各拠点にテレフォニーマネジャーというサーバー型IP-PBXを配置
し、無人駅には端末を置き、自営の光ネットワークを利用してセンターからすべての拠点を繋いでいる。もし
障害が発生した場合、別に設けてあるバックアップ拠点に自動的に切り替わり、ネットワークは停止すること
なく稼働できる。無人駅はLAN端末で改札しており、近くの基幹拠点がIP監視カメラとIPインタホンを使っ
て監視しており、何かトラブルがあった場合はこの基幹拠点が対応する仕組みになっている。この事例の最大
の特徴は、自営の光ネットワーク上に映像と音声とデータ(トリプルプレイ)が流れている点である。
もう一つの事例は、キャリアとの連携による基幹5拠点並びに全国地方拠点の音声および業務ネットワーク
構築である。顧客は資本金750億円、従業員8,200名、拠点数約250カ所の保険会社であり、当社が構築した
音声共用網、他メーカーの勘定系システム、キャリアのインターネット網をすべて当社が繋ぎ、各拠点にス
イッチを配備して音声とデータを総合的に流している。
このような構築で重要なのは保守サービスであり、当社は24時間365日ワンストップでサポートするサービ
スメニューをそろえており、綾瀬に立ち上げたコンタクトセンターを中心にサポートメニューの拡大と顧客満
足度向上を図っている。
◆事業計画
十余年続いた赤字基調から脱却するため、2006年3月期は「業績回復」を目指してこの目的を達成し、2007
年3月期は「安定利益の確保」を目標にして予算を上回る業績を上げることができた。2008年3月期は中期経
営計画の仕上げの年であり、60周年にも当たるので「成長と飛躍の年」と位置付け、安定利益確保にまい進
する。
事業方針として、ネットワーク構築により音声と情報および映像を統合したソリューションビジネスを展開
する。具体的には、IPソリューション、セキュリティ、自社ブランドの3事業の拡大・開拓を行う。2007年3
月期の実績では、この三つで11億29百万円であったが、2008年3月期は8億39百万円増の19億68百万円を目
指している。このための課題と施策は以下の通りである。
①IPを核としたソリューションの受注拡大
VoIPゲートウェイによる拠点間のIP化、企業内セントレックスの統合、IP-PBXやSIPサーバーを導入した
モバイルセントレックスなどのソリューションを手掛けていく。
②セキュリティビジネスによる新規市場の開拓
四つのビジネスを展開している。第1は学校緊急通報システムである。前回の説明会以来、新宿区45カ所、
中央区30カ所、中野区43カ所の幼稚園、小学校、中学校に設置された。第2は指静脈認証システムである。こ
のシステムは現在話題になっているが、当社は3年ほど前から国立高専向けに135セットの納入実績がある。
これは、会計業務の最終決裁権を持つ人の指静脈を記憶しておき、指を入れない限り予算執行ができない仕組
みになっている。現在は、病院と金融機関に営業を展開している。第3はインターネット型入退出管理システ
ムである。通常のIDカードシステムとは少し異なり、建物のドアにはすべて電気錠とコントローラーがあり、
ミューチップシールタグでID認証を行って入退出を管理する。ここで行われたことは電話回線経由ですべて
カスタマーセンターに転送され、そのデータセンターに全拠点の入退出情報が記憶される。顧客の管理者は
USBキーを使ってその情報を参照できる。したがって、一括して本社で監視できるので労務費を節約できる。
また、ミューチップタグは日立製作所だけしか作れないもので、1枚200円であり、通常のIDカードの十分の
一である。また生保や損保のように外交員の入れ替わりが激しい会社でも、シールを張るだけで書き換えの手
間も省ける。このシステムは、ある生保会社の全国1,350カ所に導入されることが決定した。第4は通話録音
システムで、J-SOX法に対応したものであり、出先でのすべての通話をインターネット経由で通話録音シス
テムサーバーに記録し参照できるようにする。現在、ある証券会社に34拠点分の見積もりを出しているとこ
ろである。
③自社ブランドの拡販
独立行政法人向け財務会計システムは霞ヶ関近辺を中心に21法人、国立大学の4大学と国立高専55カ所、社
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会福祉法人向け総合システムは250カ所の納入実績がある。その他、CTI電話受付システム、レガシー PBXビ
ハインド型SIPサーバー、IP-PBXアドオン型簡易CTIソフトウエアを開発し、自社ブランドで販売している。
④サービス事業の充実による顧客満足度の向上
コンタクトセンターが全国をサポートしており、この最大の目的は障害受け付けである。また、約1万社の
納入先の設備原簿をデータベース化しており、レイアウト変更等の窓口にもなっている。
⑤組織の改善と強化による原価低減と効率促進
急速なイノベーションに対応するための柔軟なプロジェクトチームの推進強化、システム開発部門の集中と
選択による改善、ビジネスユニットの統廃合、教育体系に基づいた社員のスキル向上と営業プロセス管理の充
実に努めている。具体的には営業・技術者・CEの人員構成を最適化して1人当たりの売上を伸ばし、社員に
公的資格の取得を奨励し、知的資産を蓄積している。
(平成19年6月12日・東京)
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