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MICEの実践 2020年 東京五輪に向けて

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MICEの実践
2020年
東京五輪に向けて
ホテルメトロポリタン
蓮見
秀樹
1. はじめに
2020年の東京五輪招致成功は昨年のビッグニュースの1つであるとともに、国内中の多くの事柄
について目標、道筋を示すものとなった。ホテル業界にとっても明るい話題の1つであるが、宴会では
一般企業宴会(いわゆるパーティー)や婚礼宴会が縮小し代替案としてのMICE需要確保の期待が高
まる。東京五輪は強力なMICE案件であるため世界中の企業が関心を持っている。6年半後の事なの
で全ては掴めぬものの、この特別な 2週間(開催期間)はホテルで何が行われるのか、過去の五輪の
検証、実体験、2020年の開催計画をもとに予想し、どんな準備を行えばよいか検討したい。JOC、
東京都によるプレゼンテーションは見事に成功し招致はかなったが、これからは各施設(ホテル)が自身
の優位性をアピールし、自社に誘致を行う。条件の満たされていない施設は何を狙えば良いのか・・・
併せて考えたい。
2. 五輪はどのくらい利益が出るのか
~長野五輪を例に考える~
短期間とはいえ、世界中の注目を集める五輪開催都市のホテルは、はたして儲かるのか? MICE
に関する検証を行うため、当時私の所属した、宿泊、料飲、宴会部門を合わせ持つ総合ホテルの財務デ
ータを見る事とする。諸元については以下のとおりとする。
期間:1998年2月6日(前泊)~2月22日(開催期間17日間)
場所:長野市内 Mホテル・235室、4 レストラン、9 宴会場(大宴会場1000㎡)
条件:IOCや国内外VIP滞在よりも企業からの予約を優先。五輪招致委員会への施設
提供を抑えた。
収支:別表のとおり
街の熱気に押されて従業員のモチベーションも高かったが、17日間で6700万円の利益増になる。
ホテルの規模からすれば、非常に良いビジネスであり、どの施設も五輪の機会を逃す事の無いよう誘致
に力を入れると思われる。
3. 東京五輪で考えられるMICE需要
夏季五輪は世界最大のスポーツイベントであり、大型のMICE案件と位置づけられる。どのような
利用が考えられるか予想する。
M・IOCを中心とした大会本部機能。各種競技連盟のミーティング。(運営会議)
・国際放送センターに直結した各国への情報発信。(広報会議)
・政府、自治体、各種団体、企業のための協議ブース。
I・
(各国企業が)優良顧客を招待しての報奨旅行。観戦、歓談、自国選手との交流。
・自社優良社員への報奨としての五輪観戦、東京観光の懇親会場としての利用。
C・大会を前提として数年前より数次行われる国債会議(大会)。それに伴う懇親会。
・東京五輪アピールのための会見。
E・自社ブランド商品の展示会。会場内での飲食、支援選手ら有名人との交流。ワールドワイドパート
ナー企業の展示。JOCとスポンサー契約のある国内企業の利用。
・
(各国)大使館の取りまとめによる自国企業の合同展示会。
その他、オフィシャルスポンサー以外の企業でも世間の関心の高さからイベント実施の
可能性もあり、各国大使館による選手、役員の大規模慰労会が考えられる。
また、視点を変えて長野五輪と比較すると次のような相違点が予想される。
① 東京開催のため、MICEに対応できる機能を有する施設はある程度整備済である。
② 会場事業者は国際会議、大規模展示会などの経験を既に有している。
③ 夏季開催(7月24日~8月9日)であるため宴会、婚礼需要の少ない時期である。
④ 宿泊施設は選手村より10キロ圏内に37000室を確保。IOCの基準を満たす。
⑤ 政治、経済の主要施設は東京に集中し、VIPの移動は容易である。
⑥ 交通インフラは整備済。冬季より天候による交通遅延は少ない。
⑦ 都市機能が巨大である事から対象物が多く、警備には人手を要する。
これより考えられる案件と、東京五輪の特性(長野との相違)をまとめてみると・・・
① 買い手市場(施設の数、経験、時期的要因により主催者の会場選択の自由度が向上)
② 都市整備により参加者を抑制する要素が少なく、MICE規模は拡大する。
③ 今後、宿泊特化ホテルは増加しても宴会機能を有するホテルの新築計画は少ない。 MICE需要
は現行施設+新規参入(貸イベントホール、ユニークベニューの要素を持つゲストハウス)と競合
する。
④ 施設規模、経験に基づくサービスの充実、警備の容易さからホテル優位と思われる。
となる。
「顧客企業にとってMICEの大小に大切さの違いはないが、大型のMICEイベントになるに
つれ予算も莫大となり、決算権はトップマネジメントに移行するので(中略)顧客企業の本質に迫る事
が重要」※①の言葉どおり主催者の求めるものを見極め 「安易に提案するのではなく、その前にどれ
だけニーズを探れるか」※②の上に立つプレゼンテーションと打合せが重要になる。
4. MICE開催にあたり注意すべき事
次に五輪MICEの開催に向け、最も注意すべき事は何かを考える。ここでは東京に 施設数が多い
ことから比較的需要の多くを望める都心施設(選手村から8キロ圏内)とその外側にある郊外施設に分
ける事とする。
都心施設は世界最大でのイベントであるため需要は多いと予想される。大会本部、公式行事の会場に
選ばれる事は大変な名誉であるが、条件も厳しく決定についての主導権を 施設は持ちにくい。ワール
ドワイドパートナーなど大企業の誘致成功が望まれるが、五輪 MICEはサプライヤーがあまりに多
岐にわたるため「取りまとめ役」が要る。広告代理店、旅行代理店、PCOなどイベント企画会社、各
国大使館、企業の日本支社(海外本社)などの交渉相手が誰であるか見極める必要がある。
「直接の顧客
は日本人」※③が国際会議の通例であり五輪時も同様と思われるが、決定権者である人物が理解し易い
様に、英文のHP,ファクトシートは作成しておきたい。また、海外企業とのイベントを成功させるた
めに最も押さえるべき点は「貸切の認識」の整理と考える。大規模MICEには「宴会場貸切」が条件
となる事があるが、長野での経験、グループホテルで行われた外国企業の展示会を検証すると、次の様
な苦労話が実例として浮かぶ。
① 宴会場貸切に際し、ホワイエ、廊下を含め指定デザインへの作り替えを求められた。
② 貸切の概念から、防火扉、スプリンクラーに養生を施され防災上の協議に難航した。
③ 宴会場貸切はバックヤード、厨房も含むと認識された。
④ 宴会場内に多数の冷蔵庫など大型什器の設置を行い仮設電源を用いる事となった。
⑤ 客室も一部使用させたが、飲食場所への変更など客室以外に作り変えられた・
⑥ 調理スタッフの本国よりの派遣に応じる事を求められた。
(衛生問題に抵触)
⑦ 貸切により利用時間(準備、宴席開催)が24時間体制となった。
⑧ 開催後のダメージチェックにより200万円の修復費用を要した。
(保険で支払った)
などである。全宴会場、フロアー一括など貸切の形態は異なるが、徹底した作り込みと妥協しない「イ
ベントへの想い」に対し「契約書の作成」に何が反映できるかが最も注意すべき点であろう。主催者の
要求実現はMICEの目的達成に不可欠の要素である。ホテルからの制限は主催者の「悩み・心配」に
変わる。目的達成と悩みの解消について深く理解し、様々な角度から検討し解決策を提案して信頼を得
る「ソリューション誘致」※④ができるかが試されるところである。国際会議の誘致が「経験豊富な担
当者」
「充実した設備備品」
「ホスピタリティ」
「日本の魅力アピール」から「COMMUNICABLE」
「FLEXIBLE」
「CARING」などのソリューションへと移行する必要を塾で学んだが五輪時に
はこれが当てはまる。また、会場は高い天井高を活かし「ど派手」になるので「ひょっとしたら出来る
かもしれない」※⑤と思える要求にはトライして「主催者に利益をもたらし来場者に貴重な情報(体験)
をもたらす」※⑥事の出来る内容を提案したい。
郊外施設(池袋にあるホテルメトロポリタンもこれに当たるが)は立地上やや不利になるので通常宴
会が、DISPLACEMENT EFECT(需要置換効果)の影響を受ける懸念も考慮したい。こ
れは、もともと宴会閑散期である事に加え、混雑、宿泊料金の高騰、厳重な警備が行われる東京で、結
婚式、企業研修、学会を敢えて行うか?の疑問である。このため宴席の開催時期や場所が他にシフトす
る事が予想されるが、企業イベント(展示会、報奨旅行)は注目の集まる場所にこそ価値があり催行の
可能性は高いと考える。五輪は8月9日に閉会なので、いわゆる「お盆休み」直前である。日本人の有
給消化率の低さからも「五輪時期+お盆休み」の長期休暇は取り辛く、儲かる時期に主催者はビジネス
に専念するであろう。都心施説から需要のオーバーフローも起こるので取り込む体制を今から確立する
事が重要である。どうしたらよいか?池袋の具体例を挙げて考える。
① 地域(池袋)の知名度を国内外ともに上げる努力。
② 地元自治体(東京都、豊島区)との連携。区内施設を利用した地域イベントの創出。
③ 五輪に関わる近隣セグメントの発掘とセールス強化。
④ 小さなMICE(企業、自治体)を毎年受注し、実績作り。
⑤ ホームページの充実。
こうした基本的な環境整備を行い五輪の傘の内側に入る取組みが必要である。具体的には① 銀座、六
本木、浅草、新宿、秋葉原、などは各エリアに特長があり誰もが地名をイメージし易い環境がある。池
袋は城北地区の大ターミナルであるが、知名度は先述の地域より低い。そこで豊島区が2012年に取
得したWHOの推進する国際認証「セーフコミュニティ」を打出し地域住民の他、旅行者にも「安全・
安心創造都市」実現への努力をアピールする。また、新たな街のブランドとして「マンガ、アニメ、芸
術」を掲げ、クールジャパンとして国内外に発信する「キーワード」を地域とともにホテルが定着させ
る事が 重要と思われる。また、MICE誘致の取り組みとしてデパート、ホテル、物販店が企業ネッ
トワークを結んだ「池袋インバウンド推進協議会」があるが、連携を強化したい。
②
ホテルに隣接した「東京芸術劇場」
(東京都歴史文化財団運営・大ホール1999名収容)との相互
施設利用の可能性の検討。ベニューとしての利用を協議する・
③
池袋から近い北区西が丘の「国立スポーツ科学センター」は競技団体、研究機関と連携し、国内ト
ップレベルの競技者への支援を行う機関である。スポーツ科学、医学の研究がなされるが五輪に向けミ
ーティングや強化合宿の頻度が上がると思われるので、強いコネクションを構築したい。また、五輪時
に埼玉県川越市で開催されるゴルフ、朝霞市で開催の射撃に関する展示会、懇親会獲得にターゲットを
絞りセールスを強化して行きたい。
④ 過去にホテルでMICE実績のある企業は、医療関係や外資系企業が多い。豊島区に
外資企業はおおよそ30~40社と聞いたことがあるが、五輪開催までに段階的に周辺企業のMICE
案件を獲得し、実績を積む事としたい。近隣区には小規模ながら優良企業も多いため信頼関係の構築を
行い五輪時のイベント実施の期待を込めて営業を強化したい。
⑤ 行えば必ずMICEを獲得できる保証はないが、①~④の施策を地道に行い、これら
が複合的に結びつく事が郊外施設には必要である。そのハブとなるのは、HPを中心としたWEBの情
報であるので機能強化は重要である。例えば、日常の展示会や会議(小さなMICE)の開催報告を支
社が海外本社に送った時、
五輪時に再び利用できる施設かどうか決定権者はWEBを参考にするだろう。
その時(英文も含め)五輪、日本を表すキーワード、施設の優位性、地域の情報が記載されたINDE
Xや、館内情報を1~2枚にまとめたファクトシートがある事や、HPからダウンロードできて資料に
組み込める写真の 存在など画面の作り込みが重要である。地域の取り組みの記事は検索者の個人的興
味にヒットして記憶に残るかもしれない。報告内容や評判(口コミ)の裏付けは既にWEBで世界的に
なされているし「情報過多においては自分に必要な情報のみを得るツールを選択する様になる」※⑥た
めその発信方法の整備は、立地上不利な施設ほど重要となっていく。
などである。
5. おわりに
このレポートは2020年の事を語っているので予想の域を出ない。都心、郊外のホテルとも施設ご
との強みを持つのでマーケティングは独自のものとなる。しかし「MICEは予約の次期が早いために
催行が保証され易い」※⑦案件であるため、ホテルに6年半の余裕はない。五輪開催決定をMICEの
「定義が曖昧で取り組み難い」
「主催者の目的が理解不足」
「連携がない」
「規制の壁」※⑧といった課題
への挑戦に向けて気持ちを変える好機と捉え、インフラ整備と相俟って東京を「MICE都市」にする
努力を行いたい。
注釈
※ ① 2013 年 5 月 31 日 浅井新介
塾長講義資料 3 ページより
※ ② 2013 年 6 月 7 日 浅井新介
塾長講義資料より
※ ③ 2013 年 6 月 21 日 川島久雄
先生講義資料より
※ ④ 2013 年 6 月 21 日 川島久雄
先生講義資料より
※ ⑤ 2013 年 7 月 19 日 於久田幸雄
先生講義資料より
※ ⑥ 2013 年 7 月 19 日 於久田幸雄
先生講義資料より
※ ⑦ 2013 年 8 月 2 日
徳永清久
先生講義資料より
※ ⑧ 2013 年 8 月 2 日
徳永清久
先生講義資料より
別表 長野冬季五輪収支
1. 収入増加
(単位=千円)
宿泊
レストラン
一般宴会
合計
五輪期間
H 10. 2/6 前泊+2/7~
2/22
17 日間
売上高計
79,626
78,194
160,118
317,938
1 日平均
4,684
4,600
9,419
18,703
稼働率 100%
5.42 回転/日
H 9. 4 月~H 10. 1 月
1 日平均
2,420
2,412
稼働率 77.5%
3.06 回転/日
17 日間
+38,486
+37,190
+128,600
+204,276
1 日平均
+2,264
+2,188
+7,565
+12,017
五輪期間
収入増
11.47 件
/日(195 件)
1,854
6,686
5.38 件/日
しかし、大会期間中は五輪関係の宴会を優先し、婚礼の受注を控えたため、本来取れるべき婚礼収入の減少が
あった。
前年同時期
2/8
2/9
2/11
2/15
2/16
2/22
2/23
(土)
(日)
(祝)
(土)
(日)
(土)
(日)
先勝
友引
仏滅
友引
先負
先負
仏滅
本来取れるべき婚礼件数
4件
5件
0件
2件
6件
6件
0件
2/7
2/8
2/11
2/14
2/15
2/21
2/22
23 件
(土)
(日)
(祝)
(土)
(日)
(土)
(日)
大安
赤口
先負
赤口
先勝
先勝
友引
6件
5件
5件
2件
6件
6件
5件
35 件
35 件 × 3,976 千円/件 =139,160 千円
317,938 千円 - (6,686 千円×17 日+139,160 千円) = 65,116 千円・・・・・・五輪による実質収入増
2. 経費(増加分)の算出
(単位=千円)
2月
①人件費
諸手当
超過勤務手当
深夜勤務手当
早朝手当
特別繁忙手当
通常月平均
9,418 -
892 -
100 -
3,185
595
70
グループより応援者
11 名
配膳人給与
②業務委託費
⑤賃借料
6,233
297
30
1,800
3,161
27,392 -
21,752
5,640
パート・アルバイト
1,640 -
1,129
511
客室清掃
リネンサプライ
スチュワード
配膳委託
7,375
5,293
5,157
2,349
5,165
5,093
4,357
2,272
2,210
200
800
77
ガス 140
1,210
③光熱費(想定値 4~12% UP)
④備消耗品
増加分
食器類(不足分購入)
宿舎対応備品
パーテション
営業用消耗品
応援者家賃(光熱費含む)
冷蔵コンテナ借上
布団類借上
食器類借上
FAX 等機器類
電気 710
-
-
-
-
水道 360
6,273
420
740
303
7,736
242
681
247
566
290
2,026
増加分計
31,931
3. 収支
五輪期間中の利益
A = 五輪期間中の収入-(五輪期間中の原価+固定経費+経費増)
五輪が無い場合の利益
B = (通常売上+婚礼売上)-(通常原価+婚礼原価+固定経費)
五輪による増加額
C = A-B
※固定経費:五輪の有無に係わらず支出する人件費・物件費・諸経費・業務委託費・資本経費
2 月実績
増加分
(266,968 千円 - 31,931 千円) × 17 日/28 日 = 142,701 千円
五輪中の売上
A =
五輪中の原価
78,194 千円
160,118 千円
通常の売上
B =
原価率
79,626 千円
レストラン
宴会
レストラン
= 3,185 千円
× 29.4% = 22,989 千円
× 29.8%
= 47,715 千円
通常の原価
73,889 千円
原価率は H9.4~H10.1 の平均実績
婚礼原価
固定経費
(6,686 千円×17 日+139,160 千円) - (36,794 千円+70,832 千円+142,701 千円) =2.495 千円
41,140 千円
41,004 千円
宴会
31,518 千円
婚礼
139,160 千円
C =
× 4.0%
取れるべき婚礼
売上高
宿泊
経費増
317,938 千円 - 73,889 千円 + 142,701 千円 + 31,931 千円 =69,417 千円
売上高
宿泊
固定経費
原価率
× 4.0%
= 1,646 千円
× 29.4% = 12,055 千円
× 29.8%
=
36,794 千円
9,392 千円
× 50.9% = 70,832 千円
69,417 千円 - 2,495 千円 = 66,922 千円 ≒ 67,000 千円 ・・・・・・・ 五輪による利益増
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