自己遮蔽に頑健な物体追跡における除外領域検出精度の向上 (指導教員 今井 順一 准教授) 今井研究室 1231036 柏木 雄平 はじめに 除外した結果(図 7)を元に物体モデルを更新し, 移動物体の視覚追跡は画像処理に関する分野で広 追跡に利用する. く応用されている重要な技術である.代表的な手法 追跡対象 周囲領域 として,色分布による物体モデルを利用したパーテ ィクルフィルタによる追跡手法がある.さらに先行 研究[1]ではこのパーティクルフィルタに加えて深 図 1 RGB-D カメラ 図 2 RGB 画像 図 3 追跡物体候補 度情報を利用し,物体が回転して自己の一部分で今 まで見えていた領域が隠れ新たに違う領域が見える ようになる「自己遮蔽」に対して頑健な物体追跡を 実現した.しかしこの手法では,接している床面や 把持する人間の手などを追跡物体領域から分離でき 図 4 色広がり 図 5 除外色 図 6 除外領域 図 7 除外後 ず,誤って物体モデルに追加してしまうことで追跡 4. 実験 が破綻する問題がある.先行研究[1]では限られた条 先行研究[1]の手法で除外領域を正しく検出でき 件下でこれらを除外する処理を施しているが,汎用 ない条件において,提案手法が検出できるかを評価 性に欠けるため実用的ではなかった.そこで本研究 する実験を行った.追跡対象に対して,手に手袋を は,追跡物体の周囲に広がる色情報から除外領域を 着けた状態で把持する場合と,壁に隣接させた場合 検出することで,自己遮蔽に頑健な物体追跡におけ で追跡を行う.図 8 に従来手法,図 9 に提案手法の る除外領域検出精度の向上を図ることを目的とする. 追跡の様子を示す.それぞれの画像は左に追跡結果, 2. 既存手法 右に物体モデルを表した画像を示している.従来手 先行研究[1]の手法では,まず色分布モデルを利用 法では,追跡物体を手に手袋を着けた状態で把持す したパーティクルフィルタにより現在時刻における ると手袋が,壁に隣接させると壁が,それぞれ追跡 追跡物体の位置を検出する.その際,自己遮蔽が発 対象に含まれる.一方提案手法では,手袋で把持し 生すると,追跡物体の一部であるにも関わらず物体 ても手袋は追跡対象に含まれず,壁に隣接させた場 モデルに含まれていない色を持つために追跡物体と 合も含まれていない.すなわち,提案手法は除外領 して認識されない領域が生じる可能性がある.そこ 域検出精度の向上が実現できている. で,深度情報を利用した GraphCuts を適用し,追跡 物体と深度が連続する領域を物体モデルに含める処 理を行う.GraphCuts は,与えた情報と似た情報を 隣接後 もつ画素を一つの領域として切り出す手法である. 3. 提案手法 既存手法では深度情報を利用し追跡物体の一部と なる領域を検出するが,物体に接する床面や把持す 図 8 従来手法 (上:手袋 下:壁) る手など,本来除外すべき領域を分離できない.そ こで「追跡物体の一部である領域は既に検出されて いる追跡物体領域の近傍のみ存在し,除外すべき領 隣接後 域は追跡物体の周囲にまで広がって存在する」とい う仮定をおき,除外領域を検出する手法を提案する. 3.1 色の広がり検出 まず,RGB-D カメラ(図 1)から RGB 画像(図 2) 図 9 提案手法 (上:手袋 下:壁) と深度情報を取得し,既存手法と同様の処理を行う. 5. おわりに その後,RGB 画像を HSV 表色系に変換し,深度情 本研究では,追跡物体の周囲にまで広がる色を検 報により切り出された追跡物体候補(図 3)の周辺 出し,物体モデルに含まれない色を除外色とするこ 領域から色を抽出して、その色で連続する領域を検 とで,深度情報によって切り出された物体モデルか 出する.色の広がりを検出した例を図 4 に示す. ら除外領域を検出する手法を提案した.また,評価 3.2 除外領域の検出 実験を行いその有効性を示した. 3.1 で検出した除外候補領域の色が現在の追跡物 今後の課題として,追跡対象と同色の隣接物体へ 体の色分布モデルに含まれるか否かを確認し,含ま の対処などが挙げられる. れていない場合はその色を除外色とする.除外色を 参考文献 持つ領域の例を図 5 に示す.次に,定めた除外色を [1] 木辻亮,“深度情報を利用した移動カメラにお もとに色情報に基づく GraphCuts を適用して除外領 ける自己遮蔽に頑健な物体追跡の実現,” 2014 域を切り出す.検出した除外領域の例を図 6 に示す. 年度 千葉工業大学 情報科学部 情報工学科 3.3 追跡利用物体モデル作成 卒業論文,2014. 3.2 で得られた除外領域を図 3 の追跡物体候補から 1.
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