ISSN 2187-4360 CODEN: GYDKA9 岐阜薬科大学紀要 第 64 号 平成27年6月30日 THE ANNUAL PROCEEDINGS OF GIFU PHARMACEUTICAL UNIVERSITY No. 64 2015 目 総 次 説 先天性サイトメガロウイルス感染症の実態と予防・治療の方向性 ・・・・井上直樹・・・・(1) 造血器腫瘍患者への化学療法支援に対する臨床薬学的研究 ・・・・宇佐美英績、寺町ひとみ・・・・(11) 緑内障治療薬の探索と薬理学的検討 ・・・・葛西洋芳、原英彰・・・・(21) がん薬物療法における薬学的介入の指標構築に関する研究 ・・・・木村美智男、寺町ひとみ・・・・(28) 光 化 学 反 応 を 利 用 す る 新 規 炭 素 -酸 素 及 び 炭 素 -炭 素 結 合 形 成 反 応 に 関 す る 研 究 ・・・・崔蕾、伊藤彰近・・・・(37) スルホニウム化合物の物理化学的性質に基づいた抗アレルギー薬の開発 ・・・・多田幸雄・・・・(46) 一般論文 大学生のストレス反応の違いが認知的評価に及ぼす影響 ・・・・杉浦春雄、坂本太一、杉浦浩子・・・・(56) 研究論文 (平成 26 年1月より平成 26 年 12 月までに発表) ・・・・(60) 岐 薬 紀 要 岐 阜 薬 科 大 学 Ann. Proc. 岐阜市大学西1丁目25番地4 Gifu Pharm. Univ. Gifu Pharmaceutical University 1-25-4 Daigaku-Nishi, Gifu 501-1196 あ 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 1-10 (2015) 1 ―総説― 先天性サイトメガロウイルス感染症の実態と予防・治療の方向性 井上直樹 要約:サイトメガロウイルス(CMV)は、胎盤を介して胎児に感染(先天性感染)し、胎児の流産・死産や出生児の小頭症・ 神経学的障害などを引き起こす。我々は先天性 CMV 感染について、①実態調査、②既存薬での治療と新規薬剤開発、③ ワクチンの基礎検討を行ってきた。①出生 2-3 週以内の尿中 CMV の検出により先天性感染が診断可能であることを利用 して、濾紙を用いた簡便な尿採取・CMV 検査スクリーニング法を確立し、厚生労働科学研究班で 2 万 3 千人の新生児の スクリーニングを実施した。先天性代謝異常よりも多い新生児 300 人に1人の頻度で先天性 CMV 感染が発生し、その約 3 割が出生時に症状・異常を呈すること、年長同胞が主な感染源であることを明らかにした。②既存抗 CMV 薬による新 生児治療は未承認であるため、研究班で基準を策定し、症候性児に限り治療を行い、ウイルス学的指標を解析した。その 結果、6 週間以上の長期投与が時として必要となること、血漿中ウイルス量が臨床症状と一定の相関があることを明らか にした。既存薬には副作用や耐性出現など限界があるため、新規薬剤の開発が求められている。そこで、CMV レポータ ー細胞を樹立し、約 1 万のランダム化合物から新規抗 CMV 化合物を探索した。同定した化合物の一つ 1-(3,5-dichloro-4pyridyl)piperidine-4-carboxamide は、感染初期に作用する新規化合物であり、小動物で抗 CMV 活性が確認された。③妊娠 モルモットモデルを用いた解析から、糖蛋白 B ベースのワクチンでは胎盤での cell-to-cell でのウイルス増殖を阻害でき なかったことから、新たな方法論でのワクチン開発が重要と考えられた。新規薬剤・ワクチンが開発中であるため、当面 は妊婦の啓発が対策の鍵となる。 索引用語:サイトメガロウイルス、胎盤感染、核酸検査、ガンシクロビル、ワクチン Epidemiology, Prevention, and Treatment of Congenital Cytomegalovirus Infection Naoki INOUE Abstract: Congenital cytomegalovirus (CMV) infection causes birth and developmental disorders. CMV infection can be diagnosed via urine specimens collected within 2–3 weeks after birth. We studied the epidemiology and treatment of CMV infection as well as anti-CMV drugs and vaccines. First, we developed a rapid and convenient urine collection method and CMV detection assay using filter paper inserted into a diaper. Our study group, supported by funding from MHLW, screened 23,000 newborns using the CMV assay and found that the frequency of congenital CMV infection was 1 in 300 newborns, which is higher than any metabolic genetic defects. Around 30% of the infected infants exhibited clinical abnormalities at birth. Epidemiological analyses indicated that childto-pregnant mother was the main transmission route. Second, based on the protocol defined by the study group, some symptomatic patients were treated with anti-CMV drugs, and viral loads in these patients were analyzed. We found that treatment lasting >6 weeks was sometimes required and that viral loads in plasma specimens correlated with clinical manifestations. Because side effects and the development of resistance limit the use of available anti-CMV drugs and because there are only a few drugs in clinical trials, there is a need to develop new anti-CMV drugs. We established a CMV reporter cell line, screened 9,600 random compounds, and identified some compounds with anti-CMV activity. One of these compounds, DPPC, inhibited an early step of infection and was effective in an animal model. Third, in the congenital CMV infection model of guinea pigs, we found that the current vaccine strategy based on glycoprotein B cannot block cell-to-cell viral transmission in the placenta. Considering the current situation, the most effective method of CMV prevention may be to educate pregnant mothers to avoid viral exposure. Key phrases: cytomegalovirus, placental infection, nucleic acid diagnosis, ganciclovir, vaccine 岐阜薬科大学生命薬学大講座感染制御学研究室(〒501-1196 岐阜市大学西 1 丁目 25-4) Laboratory of Microbiology and Immunology, Gifu Pharmaceutical University (1-25-4 Daigaku-nishi, Gifu 501-1196, JAPAN) 井上直樹:先天性サイトメガロウイルス感染症の実態と予防・治療の方向性 2 1.先天性サイトメガロウイルス感染症とは り同定し、抗 CMV 薬による早期治療やリスク児としての フォローアップによる難聴や精神発達遅滞などの後遺症 サイトメガロウイルス(CMV)は、口唇ヘルペスの原因で ある単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘や帯状疱疹の原因 発症時の早期介入を可能にすることが現時点で最善の対 策と考えられる。 である水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)などと同じヘルペス 先天性感染の同定には、出生後 2-3 週以内に採取した新 ウイルス科に属するウイルスである。通常は、小児期に無 生児の尿に高力価の CMV が排泄されることを利用して、 症候性に感染し、生涯、感染者において潜伏感染状態で保 尿中の CMV をウイルス分離する方法が用いられてきた。 持され、疾病を引き起こすことはない。しかし、HIV 感染 しかしながら、これまで大規模なスクリーニングが行われ や移植などで免疫抑制条件におかれると再活性化し、肺 難かった背景としては、尿の収集・保存、尿からのウイル 炎・網膜炎などを始めとした日和見感染症を起こす。妊婦 ス分離や PCR などには膨大な労力と費用が必要であるこ に CMV が初感染、もしくは異なる型の株が再感染すると、 とがあげられる。欧米では、乾燥血、いわゆるガスリー血 胎児に感染が及び、胎児の中枢神経系などに不可逆的な障 濾紙、を用いたスクリーニングが試みられているが、血液 害が生じ、流産・死産や出生児の精神運動発達遅滞や難聴 中の CMV 量が極めて少ないためスクリーニングの感度が などの神経学的障害(先天性 CMV 感染症)を起こす。我々 低い 6)。我々は、簡便迅速かつ安価な先天性 CMV のスク は、臍帯(臍の緒)は胎児由来の組織であり、乾燥臍帯中 リーニング法として、尿を吸収した濾紙片そのものを鋳型 に CMV DNA が存在すれば先天性感染を後向視的に診断 としてリアルタイム PCR を行う方法を開発し 7)、この方 可能であることを利用して、3 歳までに発症した感音性の 法を用いて、3 年間で全国 6 地域(北海道、福島、首都圏、 高度難聴の 15%が、また、原因不明の発達遅滞の 25%が、 愛知、兵庫、長崎)の市中の開業産科から小児集中治療室 先天性 CMV 感染が原因であることを明らかにしてきた などを有する拠点病院までを含む 25 施設で、約 2 万 3 千 1),2)。また、オーストラリアの研究グループは、死産組織の 人の新生児について先天性 CMV 感染の調査を厚生労働科 解析から、先天性 CMV 感染が死産の 15%程度の原因とな 学研究班(代表 藤枝憲二・古谷野伸)により行った。そ っていると報告している 3)。 の結果、地域性なく、全国で平均 300 人の新生児に 1 人の 世界的にみると、全出生児の 0.4~2.3%程度が CMV 感染 先天性 CMV 感染児が出生していること、その 3 割に明確 の新生児として出生し、そのうちの一部が出生時に症候性 な臨床症状もしくは石灰化や脳室拡大などの頭部画像異 である。症候性の新生児は、低出生体重や肝機能障害、血 常が見られることを明らかにした 8)。新生児期での死亡例 小板減少による紫斑などが出生直後より明らかとなり、先 も 1 例見られている。後述するように、症候性であった児 天性 CMV 感染を疑うことは難しくない。しかし、無症候 の一部には、抗 CMV 薬を用いた治療が行われた。感染が 性児の場合、新生児期には症状が全くなく数ヶ月後に発達 確認された児 72 人のコホートは 2 年以上経った現在でも や神経学的障害に気づかれることもまれではない。 維持され、出生時に無症候であった 45 人中 5 人で難聴な 10~20%程度の先天性感染児にこうした障害が生じる一方 どの遅発性の後遺症が見られている(古谷野ほか、未発表)。 で、残りの感染児は無症状で経過する。このように同じ先 先天性 CMV 感染および感染症の発生頻度は、現在スクリ 天性 CMV 感染でありながら、重度の障害を残す例から無 ーニングが実施されている先天性代謝異常の発生頻度よ 症状まで、その臨床像は多岐にわたっている。また、先天 りも多い(Table 1)。 性 CMV 感染に対する治療は、抗 CMV 薬の副作用とその 効果の問題から適応基準や治療終了の目安などが未確立 であり、さらに CMV 感染に対するワクチンも実用化され ていない。 2.我国での先天性CMV感染の検査と疫学 先天性 CMV による障害は早期診断できれば言語・認識 能力形成等の早期介入により一定の機能的回復を図るこ Table 1. 先天性代謝異常・CMV 感染の頻度 疾患名 先天性CMV感染 ダウン症(35歳以上) 先天性CMV感染-出生時症候性 ダウン症(全体) クレチン症 先天性副腎過形成 ガラクトース血漿 フェニルケトン尿症 ホモシスチン尿症 メープルシロップ尿症 頻度 1/300 1/300 1/1,000 1/1,000 1/3,000 1/15,000 1/40,000 1/80,000 1/250,000 1/400,000 とができる 4)。また、出生時難聴が診断された感染児に対 疫学的解析により、同定した感染児にはスクリーニング する抗 CMV 薬治療により聴覚改善が見られることが、欧 で陰性となった新生児に比して、有意に年長児が存在する 米から報告されている 5)。しかし、聴覚障害に限ってみて ことが明らかとなった。そこで、感染児とその年長兄弟の も、先天性 CMV 感染に伴う難聴の半数以上が遅発性であ 尿中 CMV 株について、遺伝子解析を行ったところ 86%で るため、現行の新生児聴覚検査では検出できない。したが 同一であり、年長児から妊婦、そして胎児に感染が伝播し って、先天性 CMV 感染児を出生時にスクリーニングによ たことが示された。また、不一致のケースの中にも、母親 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 1-10 (2015) が看護婦であったり糖尿病などで定期的に通院していた りといったリスクも見られた。 3 GCV は、アシクロビル(ACV、ゾビラックス)と類似した 薬剤として開発されたデオキシグアノシンのデオキシリ 我々の開発したスクリーニング検査法は長崎大学や神 ボースの 2’を削ったもので、DNA 複製反応に取り込まれ 戸大学に技術移転され、すでに両地域では日常的なスクリ ると、次のヌクレオチドとの結合ができなくなり、複製反 ーニングに生かされている。現在、我々は、この検査法を 応が途切れる DNA 鎖伸長阻害薬(chain terminator)として作 検査会社で実施できるようにする作業を進めている。なお、 用する。経口 GCV の生体内利用率はわずか 6〜9%であり、 スクリーニングで陽性となった児の核酸検査による確定 成人の標準的投与量(1g,1 日 3 回)に対して 12 カプセル/ 診断は、現段階では研究検査としてなされているが、全新 日を要する。このためにバリンエステル化されたプロドラ 生児を対象とした CMV スクリーニング体制を構築するた ッグとして開発されたのが VGCV であり、450mg 錠剤 2 めには、体外診断用医薬品として承認された核酸検査法を 錠,1 日 1 回または 1 日 2 回が服用される。GCV、VGCV 確立する必要がある。その申請に必要な臨床性能試験を目 は、CMV がコードする UL97 プロテインキナーゼによっ 的とした研究が、厚生労働科学研究班(代表 藤井知行東 て一リン酸化される。ACV 同様に細胞の酵素によって二 大教授)と検査試薬メーカーとの共同研究として進行中で リン酸、三リン酸化され、ウイルス DNA ポリメラーゼを ある。 競合的に阻害しウイルス DNA 複製を阻害する。FOS は無 機ピロリン酸の有機類似物質であり、特異的にウイルスの 3.先天性CMV感染症の治療 DNA ポリメラーゼのピロリン酸結合部位に直接作用し、 その活性を抑制して抗ウイルス効果を示す。 1) 既存抗 CMV 薬の効果機序と副作用 こうした薬剤は、移植や HIV 感染に伴う CMV 感染症の 米国において CMV 網膜炎への適用が認められている 治療に有効であることが実証されているが、先天性 CMV IE2 遺伝子に対するアンチセンス RNA である fomivirsen 感染症への適用は日本を含め世界的に未承認である。その を除き、現時点で臨床利用可能な抗 CMV 薬の最終標的は、 理由のひとつには、GCV および VGCV においては骨髄抑 ウイルス DNA ポリメラーゼによる DNA 合成阻害である。 制(特に好中球減少)や催奇形性、精子形成の低下、発ガ 現在、日本で承認されている抗 CMV 薬は、ガンシクロビ ン性など、FOS においては強い腎毒性などの副作用の懸念 ル(GCV、デノシン)、バルガンシクロビル(VGCV、バリキ がある。なお、GCV や VGCV による重度の好中球減少 サ)およびフォスカルネット(FOS、ホスカビル) (Fig. 1, 1~3) (500/μL 未満)の場合は,顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF) のみである。 または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を使った O N NH N RO まれな有害作用としては、発疹、発熱、窒素血症、肝機能 N NH2 N 骨髄刺激か,または薬物投与の中止が必要となる。比較的 NH2 OH O RO O OH OH O P NH2 障害、悪心および嘔吐がある。現在の抗 CMV 薬は、長期 O 使用により薬剤耐性株が出現することが知られており、第 HO OH R= H OH 1. GCV 2. VGCV P O O O R= H N 3. FOS 1 選択薬剤である GCV・VGCV 耐性となった場合、FOS が O(CH2)3O(CH2)15CH3 4. CDV 用いられるが、これに耐性が出現した場合、治療に用いる 5. CMX001 OH H O O N O H NH HO N N ことが可能な薬剤がない。 O O O N O O NH2 CF3 N H O F N OH O OH 7. artesunate 6. CPV 2) 既存抗 CMV 薬を用いた治療 N O 先天性 CMV 感染症に対する既存抗 CMV 薬を用いた治 療は承認されていないため、参画した厚生労働科学研究班 8. AIC246 では、治療プロトコール案を策定し、治療対象や投与薬剤 Cl NH2 HN N O HO Cl HN N 明と親権者の同意を前提に治療を行った。対象は、原則生 N 後 30 日以内、開始時 1,200g 以上、修正在胎 32 週以上で 10. DPPC Cl OH N N O N HO 量を厳しく制限し、親権者の要望、担当医による丁寧な説 HN N N Cl 明確な症候性を呈する感染児とし、除外基準として OH 9. maribavir 11. roscovitine F F O F S F F NH N H N N 12. FIT-039 Fig. 1. チニン>1.5mg/mL(または CCr <10mL/min/1.73m2) 、抗ウ O HO F F F O 13. Cmp1 抗 CMV 活性を有する化合物 VGCV(GCV)投与による消化管障害の存在・既往、クレア イルス薬治療が困難な他の重症疾患とした。臨床サイドで S は、症状、血算、肝・腎臓機能を指標として治療を進める 一方、基礎サイドの我々は尿中や血中の CMV 量をウイル ス学的指標として定期的に測定した。これまでに、20 例以 井上直樹:先天性サイトメガロウイルス感染症の実態と予防・治療の方向性 4 上の治療をサポートしたが、症例により薬物治療効果には 年長児の尿中では、37 人中 28 人(76%)が陽性であった。 大きな差があった。実際の治療例のウイルス量変動を Fig. 健常児の無症候性感染でも、時として血液中に検出可能な 2 に示した。この症例は、点状出血、肝脾腫、脳室拡大が ウイルスが出現するかは不明である。 見られる重症例で、GCV 投与により血中、特に血漿中の 108 ウイルス量が当初低下したが、同時に副作用として好中球 107 尿 106 減少が生じたため、投与を中止し、G-CSF 投与により好中 105 球数の増加を図り、GCV の再投与が行われ、最終的に症 104 状の安定化が図られた。 103 ウイルスコピー数/ml 108 ウイルスコピー数/ml 0 GCV G-CSF GCV 好中球減少 107 血球 106 12 24 36 106 血漿 105 104 103 0 12 24 36 106 血液 105 105 104 血漿 104 103 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 32 34 出生後週数 103 0 Fig. 2. 先天性 CMV 感染症の GCV 治療例 12 出生後月齢 24 36 顕性 1 顕性 2 不顕性1 不顕性2 不顕性3 不顕性4 不顕性5 不顕性6 不顕性7 不顕性8 不顕性9 これまで国内外では 6 週間の GCV 投与を基本としてき たが、相当数の症例で 6 週間後に血中ウイルス量のリバウ ンドが見られ、網膜炎などの臨床症状が再燃したケースも あり 9)、長期投与が望ましいという印象がある。すでに、 Fig. 3. 抗 CMV 薬治療を伴わない先天性感染児(症候性 2 例、無症候性 9 例)のウイルス学的指標変動 3) 薬剤耐性 HSV 感染に対する ACV 耐性出現率に比して、CMV 感 海外では、6 週間の GCV 投与に対して長期(6 カ月)VGCV 染症に対する GCV 耐性出現率は低い。GCV の一リン酸化 投与の効果と安全性を検討する第 3 相臨床試験(NCT0046 に必要な UL97 が CMV の増殖に必須であるため、耐性で 6817)が実施され、重篤な副作用は発生しておらず、その治 あるが増殖性に影響を与えないような変異は限られるた 療効果も良好であるということが国際学会などで報告さ めである。しかし、GCV 耐性 CMV 株の出現率は、宿主の れている。現時点では、治療は出生後早期に実施すること 免疫の状態によって異なり、心臓や肝臓移植で 1.5~2%、 を前提としているが、遅発性障害が発生した後に使用して 肺移植で 5~9%である。適用例が少数であることから、先 効果があるかに対するエビデンスは少なく、難聴発症にと 天性感染では不明である。CMV に対する GCV の効き方 もない生後 5 ヶ月に治療開始し聴覚改善を認めた例 10)な は、HSV に対する ACV の効き方に比べ緩やかであり、時 どがあるのみである。なお、血球中にウイルス DNA が検 として、効果が遅いことから耐性株が出現した可能性があ 出されても、そのことはウイルスが増殖していることを意 ると思われがちであるが、検査を実施してきた多数の症例 味しないが、血漿中にウイルスが存在することは、血中で を見てみると、投与後 2 週間もすれば次第に効果が明確に のウイルス増殖を示すことが移植患者などでは知られて なる場合が多く、耐性の出現によるものであることは、ほ おり、先天性感染児でも移植患者と同様に、臨床的症状と ぼない。CMV の場合、ウイルス分離に 2~3 週程度を要す 血漿中のウイルス量の間には一定の相関が見られた。 る場合も多く、生物学的方法で GCV 耐性か感受性かを決 一方、薬剤治療の対象とならなかった先天性感染児も後 めるのは、相当の手間と時間がかかり、臨床的対応が困難 遺症発症がないかをモニターするために長期に CMV 量を となる。このため、耐性変異が知られる UL97 およびポリ 測定した。その結果をまとめたものが Fig. 3 である。ここ メラーゼ遺伝子の特定の領域を解析するのが現実的であ から言えることは、尿中のウイルス量は長期に高値であり、 る。決定した塩基配列中に既知耐性変異が存在するかどう 2 年以上経っても CMV が尿に排出されていること、時と か は 、 www.informatik.uni-ulm.de/ni/mitarbeiter/HKestler/ して血中にウイルスが出現していることである。尿中の継 hcmv/で解析できる。既知変異が見つからない場合、生物 続的ウイルス排出は、先天性感染児に限ったことではなく、 学的方法での検討が必要となる。 健常児が後天的に感染した場合においても 2~4 年間尿中 にはウイルスが排出され続けていると考えられている。実 4) 新規抗 CMV 薬の開発 際、1~5 歳児 108 人からランダムに尿を採取し、CMV DNA Fig. 1(4~11)に代表的な新規抗 CMV 化合物の構造、 が 1 ml の尿中に 1 万コピー以上あるかを見てみると、27% Table 2 にその標的と開発段階、Fig. 4 に CMV 増殖ステ が陽性であった(井上、未発表)。また、先天性感染児の ップをまとめた。 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 1-10 (2015) Table 2. 新規抗 CMV 化合物の標的・開発状況 増殖過程 標的 侵入~ ① 不明 前初期過程 ② 前初期過程 cdk (細胞) ~DNA複製 不明 pyrimidine 合成(細胞) ③ DNA複製 DNA polymerase terminase ④ 通称 略称等 Fig 1 動 物 5 b. 新規標的プロセスに対する薬剤開発の状況 臨床試験 文献 NCT番号 段階(対象) 現時点で、薬効や副作用について第 2 相以上の臨床試験 で検討された DNA 複製以外を標的とする抗 CMV 薬は、 DPPC 10 △ roscovitine FIT-039 11 12 △ artesunate 7 ○ III(HST)効果なし 三つのみである。 6 00284687 8 抗マラリア薬として用いられている artesunate に抗 CMV 活性があることがわかり、動物モデルでの効果が実 Cmp1 13 ○ CMX001 5 ○ CPV 6 ○ I(健常成人) AIC246 8 証された後、6 例の造血幹細胞移植患者での CMV 感染症 カプシド 形成 UL97 kinase maribavir 9 ○ II(他剤治療不能) II(HST) 01143181 00942305 3 に対する先制攻撃治療の臨床試験に用いられたが、設定さ 01433835 4 れた投与量ではウイルス学指標から見て、改善した患者と II III進行中 01063829 02137772 III(肝臓移植) III(HST)効果なし 00497796 00411645 不十分な患者が出る結果となり、投与量などを再検討する 13 14 動物モデルでの検討:○あり △部分的 HST:造血幹細胞移植 NCT番号:ClinicalTrials.govで検索可能な臨床試験番号 必要があることが明らかとなった 13)。また、ウガンダの小 児 に お い て 抗 マ ラ リ ア 薬 artesunate と sulfadoxinepyrimethamine に投与群を分け、血中 CMV の陽性率を比較 することで、artesunate の抗 CMV 効果を検証しようとした 感染粒子 初期蛋白 前初期蛋白 が、3 日の薬剤投与では効果がなかった 後期蛋白 。Artesunate の 14) 2 量体誘導体が、より高い抗 CMV 活性を示すことから 15)、 mRNA その臨床応用のための検討が開始されている。Artesunate カプシド の作用点は不明であるが感染初期の阻害と考えられてい る。しかし、その誘導体は artesunate と異なる作用点を有 するとする報告もある。 カプシドにウイルス DNA を注入するために、糸巻きの ように連続的に合成されたウイルス DNA をゲノムサイズ ウイルスDNA ① ③ 吸着・侵入 ⑤ 初期蛋白(複製酵素)発現 ウイルスDNA複製 ② 核膜へのカプシド移動 核へのウイルスDNA注入 前初期蛋白(転写因子)発現 エンベロープの獲得 細胞外への放出 ④ 後期蛋白(構造蛋白)発現 カプシド形成 DNAパッケージング Fig. 4. CMV の細胞内増殖ステップ模式図 に 切 断 す る 酵 素 terminase を 標 的 し た benzimidazole ribonucleoside 誘導体 BDCRB が開発されたが、生体内での 代謝が早く、速やかに不活化されることから実用化は断念 された 16)。同様の薬剤として AIC246 (N-[5-(aminosulfonyl)4-methyl-1,3-thiazol-2-yl]-N-methyl-2-[4-(2-pyridinyl)phenyl] acetamide)が開発され、造血幹細胞移植での CMV 感染症 予防の第 2 相臨床試験が実施され、良好な結果が得られて いる 17)。また、HIV integrase と CMV terminase には、構造 a. DNA 複製を阻害する核酸アナログ シドフォビル(CDV)は、長時間作用性のヌクレオチド類 活性に類似点があり、HIV integrase 阻害薬 raltegravir が抗 似物質で,ヘルペスウイルス科のみならず、アデノウイル CMV 活性を有するため 18)、その類似化合物からより高い ス、ヒトパピローマウイルス、ヒトポリオーマウイルスな 活性化合物の検索が行われている。 どの DNA ウイルスの複製を阻害する。CDV は、ACV や Maribavir は BDCRB 類似化合物だが、terminase ではな GCV 耐性株に対しても有効である。我国において、未承 く CMV UL97 が標的である。UL97 は、DNA 複製に必須 認である CDV は、GCV 耐性出現に際して FOS が使用で な polymerase-associated protein UL44 のリン酸化やカプシ きない場合に有用と考えられている。副作用としては、腎 ドの核から細胞質への放出に関与するなど多機能な蛋白 障害、代謝性アシドーシス、好中球減少などがある。 質であり、その機能を maribavir は阻害する。第 1-2 相試 CDV は経口吸収率が低く腎毒性等の問題があった。こ 験での良好な成績をもとに、肝移植および造血幹細胞移植 のため膜透過性が向上した誘導体 CMX001 が開発された。 での CMV 感染症予防を指標とした第 3 相試験が行われた 他薬剤で治療不能な重篤症例に対する多施設非盲検試験、 が、薬効不十分という結果に終わった 19),20)。 および幹細胞移植での CMV 感染症予防の第 2 相臨床試験 において 100 mg 週 2 回投与で副作用なく薬効が見られた 基礎研究レベルで同定され開発が継続されている新規 抗 CMV 化合物も一握りにすぎない。 が、200 mg 週 2 回投与では下痢が頻発することが報告さ 我々は、CMV が感染するとルシフェラーゼ発現が誘導 れた 11)。CDV の methylenecyclopropane 修飾体 cyclopropavir されるレポーター細胞を樹立し、この細胞株を用いて 9600 (CPV) は、動物モデルで著効し 種類のランダム化合物から抗 CMV 活性を示す化合物をス 近終了した。 12)、第 1 相臨床試験も最 クリーニングした。その一つが、1-(3,5-dichloro-4-pyridyl) piperidine-4-carboxamide (DPPC)であり、CMV の細胞への 井上直樹:先天性サイトメガロウイルス感染症の実態と予防・治療の方向性 6 Table 3. CMVワクチン開発の現状 ワクチン の種類 接種内容 弱毒生 精製ウイルス 蛋白 +アジュバント サブユ ニット 蛋白発現DNA +アジュバント ワクチン名 開発メーカー等 免疫原 となる蛋白 臨床試験 段階 NCT番号 アジュバント等 Towne Wistar ウイルス全蛋白 2相 Towne-Toledoキメラ Aviron/MedImmune ウイルス全蛋白 1相 01195571 MF59 2相 00133497 00125502 1相 00435396 gB/MF59 Chiron/Sanofi gB GSK1492903 GlaxoSmithKline gB AS01 TransVax(ASP0113) Vical/アステラス gB, pp65 CRL1005 poloxamer + benzalkonium chloride (BAK) 01877655 3相中 02103426 01974206 CyMVectin Vical/アステラス gB, pp65 Vaxfectin lipid 前臨床 Alphavax/Novartis gB, pp65, IE1 蛋白発現 AVX601 ウイルスベクター 侵入から前初期蛋白の発現までの感染初期に作用するこ 1相 00439803 CMV 活性を示すことが証明されている 27)。 とを明らかにした 21)。さらに、in vivo imaging を用いた解 析から、マウス CMV に対しても一定の効果があることを 示した 22)。現在、DPPC 4. CMV ワクチン開発の現状と我々の取組み 以外の同定した抗 CMV 化合物数 種についての解析も進めている。また、VZV に対するレポ CMV 感染症は、HIV 感染や移植に伴う日和見感染症と ーター細胞も樹立し、CMV と同様な解析を進めている。 先天性 CMV 感染症に大別される。ワクチン開発にあたっ その中で、ヘルペスウイルス科で構造が類似しているカプ ては、前者では主に細胞性免疫、後者では液性免疫の誘導 シドの主要構成成分である主要カプシド蛋白を標的とす が重視されてきた。日和見感染症の場合には、すでに潜伏 る新規化合物を同定し 23)、詳細な作用機序や類似化合物を 感染している状況下で、細胞性免疫の低下に伴って、再活 検討することにより、CMV を含めた全てのヘルペスウイ 性化が起こると考えられているためである。一方、先天性 ルス科ウイルスに作用する化合物を同定することを試み 感染では、妊婦の初感染で重症化することが知られている ている。 ためである。もちろん、再活性化が先天性 CMV 感染に寄 CMV 感染は、宿主因子を修飾し、より増殖しやすい細 与した症例もある 28)。先天性感染のリスクが年長児の存在 胞環境を誘導する。こうした宿主因子の阻害薬は、細胞毒 にあること、血清学的にみて少なくとも 6 割以上が妊婦の 性を有する可能性もあるが、ウイルス選択性が高い薬剤も 初感染、型が異なるウイルス株による再感染が 1 割程度と あり、その場合、薬剤耐性が生じないという利点がある。 考えられることから 29)、液性免疫に加えて細胞性免疫がワ 多様な cyclin-dependent kinase (cdk)を阻害する roscovitine クチンにより誘導されることは望ましいが、一義的には、 は、CMV を含めヘルペスウイルス科ウイルスの増殖を阻 特異的抗体誘導により、ウイルス血漿を阻止し、臓器への 害する 24)。VZV については、すでにヒト組織を移植した 感染、特に胎盤への感染を防ぐことが先天性 CMV 感染に 重症複合免疫不全マウスモデルでその in vivo での効果は 対するワクチンとしては重要と考えられる。その目的のた 示されているが めに、弱毒生ワクチンと中和抗体の標的である糖蛋白 、CMV については動物での結果は得ら 25) れていない。我々もいくつかの cdk 阻害薬の抗 CMV 活性 B(gB)に対するサブユニットワクチンの大きく 2 つの流れ を検討したが、感染させる細胞によっては毒性が強く、選 で開発が進められてきた。主なワクチン候補とその開発状 択性は発表されているほどは良くなかった(井上、未発表)。 況を Table 3 にまとめた。 多くの種類の cdk を阻害する薬剤では細胞毒性もおのず と強くなるため、cdk7 や cdk9 のみを阻害する薬剤(例え ば FIT-039)を用いることで、選択性が改善されたという 報告もある 26)。 核酸合成前駆体となる pyrimidine リボ核酸生合成で重要 1) 弱毒生ワクチンと細胞指向性 CMV は、各宿主の CMV は似ているものの、ヒト CMV (HCMV)はヒトに、マウス CMV はマウスのみに感染する、 即ち、宿主域が極めて限定されるという特徴を持っている。 な細胞酵素 dihydroorotate dehydrogenase に対する阻害活性 このため、ヒトに対して各ウイルス株の病原性を知る方法 を有するリウマチ治療薬 leflunomide が抗 CMV 活性を示 は、 「人体実験」しかなく、実際米国で 70 年代に行われた すことから、この酵素の阻害薬がスクリーニングされ、同 ことは、新鮮分離株で病原性が強いと思われる Toledo 株 定された化合物 Cmp1 が、CMV を含めたヘルペスウイル と実験室で長期培養されて病原性が弱くなったと思われ ス科、ワクシニア、アデノウイルスなど様々なウイルスに る Towne 株を囚人に接種して、血清学的指標で感染を確 対して強い抗ウイルス活性を持つこと、マウスモデルで抗 認し、臨床症状、リンパ球・血小板数や肝機能などの検査 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 1-10 (2015) 値での異常を測定することで、Towne 株が弱毒であること 7 ることを見出した。さらに、個体での増殖性が低下した株 を示すとともに、Towne 株接種者に後から Toledo 株を感 には約 240kb のゲノム中に約 1.6kb の欠失があること、こ 染させ、既感染者と比較して、感染防御が可能かを検討し の領域が HCMV の UL128、UL130 に対応する蛋白質をコ たのである。その結果、Towne 株は病原性がない点では安 ードしていることを明らかにした 36)。詳細な検討の結果、 全なワクチンとなりえるが、曝露される強毒株の量が増え GPCMV の UL128、UL130、UL131A に対応する蛋白質が ると感染を防御するには不十分であることがわかった 30)。 ペンタマーを形成し、いずれの蛋白質も GPCMV がマクロ そのため、弱毒株 Towne を大きく 4 領域に分けて、それ ファージに感染するために必須であることを見出した 37)。 ぞれの領域のみを強毒株 Toledo のゲノムと置き換えた交 細胞レベルの増殖には不必要で、個体での増殖には必須 雑ウイルス(キメラ) 4 株が構築された。このキメラウイ の遺伝子が UL128-131A 領域も含め、多数あると考えられ、 ルス 4 株を CMV 既感染者に接種する第 1 相臨床試験が行 こうした遺伝子群の中で病原性に関与するものをノック なわれ、いずれの株でも副反応は起こらなかった 31)。残念 アウトするが免疫誘導は低下しないような弱毒株の作製 ながら、キメラウイルスを開発したベンチャー企業は資金 により新たな弱毒生ワクチンが開発されることが期待さ 繰りのために、その後の開発を中断している。 れる。そのためには、GPCMV の感染動物モデルは有用で CMV は 200kb を越える大型のウイルスであるために、 あり、我々は現在、個体、特に胎盤での増殖に関与する遺 1989 年に実験室株 AD169 の全塩基配列が報告されて以来、 伝子群の解析と個体での感染防御に関わる遺伝子群を検 塩基配列決定技術が革新的に飛躍したこの 10 年間になっ 討している。 て、やっと Towne 株や新鮮分離株の多くの全塩基配列が 決定されることになった。そうした解析から、線維芽細胞 2) gB をベースにしたワクチン を用いて長期培養された実験室株には、比較的長い欠失変 一方、ヒト血清中の抗体の解析から、ウイルス粒子上に 異領域があること、新鮮分離株も一定期間培養すると特定 存在する gB、gH、gM/gN 複合体の 3 種類の抗原に対する の領域に塩基配列の変化が見られることが明らかになっ 抗体が、CMV の線維芽細胞への感染を中和することが、 32)。さらに、遺伝子領域としての安定性を欠く領域にコ 以前から明らかになっており、他のヘルペスウイルスとの た ードされる UL128、UL130、UL131A 遺伝子に欠失や点変 類似性から、gB がその主要な中和の標的と考えられ、gB 異が存在することと各 CMV 株の内皮細胞・上皮細胞指向 に対する抗体を誘導することを目的としたワクチンの開 性の喪失の間に相関があることが明らかにされた 33)。これ 発が行なわれてきた。gB のデリバーの観点から、精製蛋 らの 3 蛋白質は、それぞれが内皮・上皮細胞への指向性に 白質サブユニットワクチン、DNA ワクチン、そしてウイ 必須であるとともに、CMV の細胞への感染に必須である ルスベクターワクチンの 3 種類が開発中である。 gH および gL と複合体(ペンタマー)を形成していること サブユニットワクチンとしては、膜貫通領域を除いた 株弱毒 gB を CHO 細胞にて発現し、精製蛋白質にアジュバントを 生ワクチン接種者から得られた血清と自然感染で既感染 添加したものを用いて、臨床試験が行われている。出産 1 となっている者の血清を比較すると、線維芽細胞に CMV 年以内で、もう 1 人子供を持ちたいと考えており、かつ 感染を成立させることを阻止する(中和する)抗体価は同 CMV の感染歴がない 14~40 歳の女性を接種対象として、 程度であるにもかかわらず、Towne ワクチン接種者の血清 CMV 感染と感染フローの期間がエンドポイントとしてワ には、内皮細胞への感染を中和する抗体価が、既感染者よ クチンの効果が検討された が明らかにされた 34)。ここで重要な報告は、Towne 。このワクチンを 3 回筋肉 38) 。言いかえると、 内接種後 1 年以上のフォローアップ期間において、プラセ Towne 生ワクチン株では、内皮細胞への感染を阻止できる ボ群 216 人中 31 人に感染が起ったのに対して、gB ワクチ 抗体が誘導されないということであり、その原因は、内皮 ン接種群では 225 人中 18 人に感染が見られ、100 年人単 りも格段に低いというものである 35) 細胞への感染に関与するペンタマー構成 3 蛋白質がコー 位の感染率計算から、gB ワクチンの感染防御効果は 50% ドされていないためである。従って、ペンタマーに対する であることが明らかになった。一定の防御が示されたこと 免疫誘導が可能なワクチンの開発が重要であるとされ、現 は画期的であるが、実用的ワクチンとして求められる防御 在そのための基礎研究が進行している。 効果には達しておらず、その後の解析から、予想以上に早 我々は、小動物で唯一先天性感染を起こすモルモット CMV (GPCMV)を用いた研究を行ってきたが、その過程で く免疫減弱が起こるため、接種スケジュールの再検討やア ジュバントの変更が必要と思われる。 ATCC より購入したウイルスストックが 2 種類の株からな Vical 社は、マウスモデルでの感染防御効果の成績を背 っていることに気がつき、それらを分離して両株の性質を 景に、gB に加え、細胞性免疫を誘導する細胞質抗原であ 解析したところ、両株ともに線維芽細胞では同じように増 る pp65 を発現させる DNA ワクチンを開発し、アジュバ 殖できるが、モルモットにそれぞれ接種したところ、一方 ントを変えて移植を対象にした製剤と先天性感染を対象 の株が他方に比して、各臓器への伝播が有意に低下してい にしたものを作製している。前者については、造血幹細胞 井上直樹:先天性サイトメガロウイルス感染症の実態と予防・治療の方向性 8 移植患者を対象にした第 2 相試験で、CMV 感染症の指標 を同定するための血清学検査は、ほとんど普及していない。 となるウイルス血漿の頻度と程度が、ワクチンにより有意 米国における研究では、血清学検査により過去に感染歴が に減少するという結果が得られている。しかし、現実的に ない、即ち、未感染であることから妊娠中に初感染のリス は、CMV 感染症が 1 回でもあった患者の割合が、62%か クがあるとわかった場合、妊婦は手洗いなどの予防策を徹 ら 32%に減少しているが、劇的に CMV 感染症が抑制され 底するなど行動様式を変化させ、結果として先天性感染の ているわけではない 39)。なお、ワクチン接種により GVHD 頻度が約半分に低下することが明らかにされた やその他の感染症の頻度などを含め副反応が増加するこ り、風疹の抗体検査同様に妊娠検査に CMV 抗体検査を含 とはなかった。後者の DNA ワクチンについては、マウス めると CMV 感染率が低下する。未感染妊婦に対する啓発 とウサギを用いて、gB 抗体の上昇と pp65 に対する IFNγ が感染率を半減させることは最近のフランスのグループ 産生細胞数を測定し、免疫が誘導されたことを示している の研究でも実証されている 44)。 40)。なお、Vical 社は少し前からアステラス製薬の傘下とな 43) 。つま 啓発の主な内容は、感染源が自身の子供であることから、 オムツ交換後の手洗いの励行、子供の食べ残しをたべない っている。 第 3 の方法として、アルファウイルス科のベネズエラ脳 など、平易な内容で行うことが重要とされている。残念な 炎ウイルスの組換えベクターを用いて、gB および pp65 を がら、先天性 CMV 感染症に関する妊婦の認知度は低く、 発現させる AVX601 が開発され、第 1 相臨床試験におい さらに、医療関係者においても十分な知識がない現状があ て、CMV 未感染者への接種により中和抗体と細胞性免疫 る。患者会が組織され、メディアに取り上げられるように が誘導されることが示されている 41)。このライセンスは、 最近はなってきたが、7~8 年前に新生児の CMV スクリー ベンチャー企業 Alphavax から Novartis に売却されている。 ニング調査を開始した頃は、調査目的を説明するために サブユニット、DNA ワクチン、ウイルスベクターワク 100 人程度と話しても、看護婦など医療関係者以外の妊婦 チンのいずれを見ても、gB に対する抗体の誘導のみでは、 全員がサイトメガロウイルスという単語すら知らないと ワクチンとして不十分な効果しか得られないのではない いうのが実情であった。 かと考えられる。その原因を検討すべく、我々は GPCMV 風疹や水痘など明確な臨床症状を呈する疾患では、IgG 感染妊娠モルモットモデルにおいて、gB 発現アデノウイ 抗体が陽性であれば、胎児に影響が出るような直近の感染 ルスベクターを用いて免疫した後、GPCMV を感染させ、 歴がないことが保証される。しかし、CMV の妊婦初感染 感染防御を検討したところ、確かに、gB 免疫により胎児 では、臨床症状はせいぜいが発熱程度であるため、IgG 抗 への感染が抑制された。しかし、一旦、胎盤を介して胎児 体が陽性であっても、感染が 1 ケ月前に起こったのか 10 に感染が及ぶと、胎児のほとんどの臓器に感染が拡大して 年前なのかを判定することが難しい。その仕分けをできる しまっていた。胎盤の免疫病理染色による解析で、gB 免 方法が、IgG avidity 検査と言われるもので、抗原刺激が継 疫により母体血と接触する胎盤辺縁でのウイルス増殖が 続すると再構成された抗体遺伝子の抗原認識部位に体細 抑制されているのに対して、胎盤内部ではコントロール群 胞変異が起こり、より抗原に対する親和性の強い抗体の割 とウイルス増殖において差がみられないこと、そして胎盤 合が多くなっていくことを利用して、尿素などを抗原抗体 内ではウイルスが cell-to-cell の様式で増殖していることが 反応に添加した場合と無添加の場合を比較することで、親 による免疫では、一旦組 和性の強い抗体の割合を測定し、その割合が低い場合に比 織内(少なくとも胎盤内)に入り込み cell-to-cell で増殖す 較的直近での感染があったと判定することができる。この るウイルスを制御することは不可能であり、新たな抗原や 検査法試薬は、体外診断用医薬品となっていないため、現 免疫法の開発が必要になっていると思われた。 在、CMV 未感染妊婦を対象にした前向き研究を行い、検 明らかになった 42)。従って、gB 査法の臨床有用性を厚生労働科学研究班で検討している。 5. 今できること 2) レジストリー ワクチンもない、感染妊婦や出生時に無症状・軽症の感 先天性 CMV 感染児をスクリーニングする体制の構築と 染新生児を治療できる抗 CMV 薬もないという状況下にお ともに、感染の実態や治療状況を常時モニタリングできる いて、研究開発以外に今できることは、血清学検査の体外 仕組みが必要であり、その第一歩として感染症法第 5 類対 診断用医薬品化、妊婦に対する啓発、医師の判断のための 象疾患(小児科定点対象疾患)として、発生動向のサーベ 相談窓口の設置、感染児のレジストリーの充実などである。 ーランスがなされるべきである。ワクチンで予防可能な疾 患であるがゆえに、先天性風疹症候群は感染症法にもとづ 1) 血清学検査と啓発 現時点では、妊婦の CMV 感染を治療する方法がないた めに、CMV 感染歴がなく妊娠中の感染リスクがある妊婦 き、全数把握がなされているが、先天性 CMV 感染症には ワクチンがないという本末顚倒の議論で対象疾患から外 されるべきではない。全数把握がなされていない現状では、 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 1-10 (2015) 9 Table 4. 先天性CMV感染の対策の方向性 行政的対策 (厚労省、都道府県) 対策目的 短期的対策 (主に臨床) 長期的対策 (主に研究) 陽性児への対応・治療 情報集約 感染症法対象疾患化 既存薬の適用承認申請 治療基準策定 相談・治療拠点の構築 新規薬剤の開発 陽性リスク児の早期発見 検査費用補助 全新生児スクリーニング 核酸検査の体外診断用医薬品化 発症リスク因子の同定 陽性胎児の早期発見・治療 検査費用補助 IgG avidity検査の体外診断用医薬品化 妊婦の抗体検査の推進 抗体治療法の確立 感染・発症予防 保健所などによる教育・啓発 産科での妊婦教育・啓発 ワクチン開発 小児科を中心に感染患児を登録し、予後予想のためのリス ク因子の疫学的解析や、治療が行われた場合の転機を解析 するエビデンスの集積を図る必要があると考えられる。 6.総括 先天性 CMV 感染症は、単一病原体による感染症であっ ても、300 人に 1 人の子供の人生を困難へと変えてしまう ものであり、対策としてどの局面で何ができるかが多様で ある。本稿では、薬剤やワクチン開発の現状を紹介するこ とで、研究サイドから見た対策を中心に記載したが、Table 4 に示すように、有機的にさまざまな対策がなされること が求められている。 7.謝辞 先天性 CMV 感染児のスクリーニング調査ならびに治療 に関する研究は、20-26 年度厚生労働科学研究費補助金成 育疾患克服等次世代育成基盤研究事業(代表者:藤枝憲二・ 古谷野伸、山田秀人、藤井知行)により、多くの医療関係 者の協力のもとに実施された。抗 CMV 化合物に関する研 究は、25-26 年度科学研究費補助金基盤研究 C(代表者: 井上直樹)および 18-23 年度厚生労働科学研究費補助金新 興再興感染症研究事業(代表者:森康子、西條政幸)によ り、ワクチンに関する研究は、22-24 年度創薬基盤推進研 究事業(代表者:井上直樹)により実施された。 8.引用文献 1) Ogawa H., Suzutani T., 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Adverse event management leads to continuous treatments, a relative dose intensity, and quality of life. Therefore, we evaluated the prevalence of steroid withdrawal syndrome (SWS) to assess the relevance of steroid tapering in non-Hodgkin lymphoma (NHL) patients who received general NHL chemotherapy. We conclude that steroid tapering is a safe and effective treatment method. If the patient has serious symptoms of SWS, steroid tapering should be introduced aggressively and early, especially in elderly patients. We then examined the frequency of herpes zoster as a fatal infection in NHL patients. Significant risk factors for the development of herpes zoster were post-autologous peripheral blood stem cell transplantation, relapse, 10 or more total treatments, and the use of two or more regimens. We recommend that it is necessary to consider the prophylactic use of low-dose anti-viral drugs in patients who have a higher risk of herpes zoster. We also recommend further observation of other opportunistic infections associated with chemotherapy usage. In addition, we examined the appropriate potassium supplementation conditions to treat hypokalemia induced by liposomal-amphotericin B (L-AMB), which is recommended as a first-line anti-fungal drug for hematological patients. Hypokalemia greater than grade 3 was exhibited by 53.8% patients. It is necessary to begin potassium supplementation prior to the reduction of serum potassium levels to <2.83 mEq/l. Potassium supplementation at an early stage of L-AMB treatment is important to prevent severe electrolyte abnormalities. Key phrases: Hematological Patient, Chemotherapy, Steroid Withdrawal Syndrome, Herpes Zoster, Hypokalemia a) 大垣市民病院薬剤部(〒503-8502 岐阜県大垣市南頬町 4-86) Department of Pharmacy, Ogaki Municipal Hospital, Gifu (4-86 Minaminokawa-cho, Ogaki-shi, Gifu 503-8502, Japan) b) 岐阜薬科大学実 践 薬 学 大 講 座 病院薬学研究室(〒501-1196 岐阜市大学西 1-25-4) Laboratory of Clinical Pharmacy, Gifu Pharmaceutical University (1-25-4 Daigaku-nishi, Gifu 501-1196, Japan) 12 宇佐美英績ら:造 血 器 腫 瘍 患 者 へ の 化 学 療 法 支 援 に 対 す る 臨 床 薬 学 的 研 究 1. 緒言 する一般的な通常量化学療法のステロイド使用方法は、大 量ではあるが、使用期間は 3〜5 日間という短期間投与で 造血器腫瘍は、白血病をはじめ悪性リンパ腫、多発性骨 あり、一般にステロイド taper を施行されることはない。 髄腫などいわゆる血液がんと称される。その治療方法は、 そのため、実臨床では SWS は散見され、quality of life 抗悪性腫瘍剤を用いた化学療法が主となるが、肺がんや大 (QOL)の低下に繋がる例も少なくないのが現状である。 腸がんなど固形がんの延命を目的とする治療に比し、治癒 NHL は、化学療法により治癒や延命が期待でき、治療強 を目的とするため強力で複雑な治療が施行される。また、 度をいかに維持できるかが重要なポイントとなる疾患で 入院期間は、他疾患に比べ長期となり、身体的ストレスが ある 大きく精神的・社会的不安も大きい。そのため、造血器腫 低下させずにスケジュール通り治療を遂行するためには、 4-7)。その中で薬剤師の役割として、患者の QOL を 瘍分野を熟知した専門薬剤師が医師、看護師らとともにチ SWS 症状軽減に対する支援が重要となる。そこで、NHL ーム医療の一員として、化学療法施行時の安全性および副 患者に対する通常量化学療法後の SWS 出現頻度と SWS 作用の確認はもとより、支持療法への参画や患者の精神的 症状軽減を目的としたステロイド taper の効果をレトロス ケアなどを行う必要がある。日本病院薬剤師会は、2006 ペクティブに検討した。 年からがん専門薬剤師の認定制度を開始し、2010 年から は日本医療薬学会にその制度を移管し継続されている。が 対象および方法 ん専門薬剤師は、がん医療における薬剤師として薬物療法 2008 年 4 月〜2010 年 3 月の間に当院で高用量のステロ に関して身に付けた高度な知識・技能を活用し、その安全 イドを含む通常量化学療法を施行した 初発 NHL 患者 116 性と有効性の確保に責任をもって行動する必要があり、が 例を対象とした。患者背景および施行レジメンを Table 1 ん領域全般に対して幅広い知識が必要とされる。造血器腫 に示した。ただし、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板 瘍分野においても深い知識が必要となるが、その分野にお 減少性紫斑病、自己免疫性疾患などを合併しているためス ける専門薬剤師の必要性を報告したものはない。 テロイド長期投与を併用している患者は対象外とした。 本総説では、大垣市民病院(以下、当院)における造血 器腫瘍患者への化学療法支援に対する薬剤師の臨床薬学 Table 1. Characteristics of Patients 的介入による効果を検証し得られた知見を述べる。 2. 通常化学療法後のステロイド離脱症状と ステロイド漸減療法効果 1) ステロイドは、細胞のステロイドレセプターを介し、核 内で endonuclease を活性化させアポトーシスを誘導する ことにより抗腫瘍作用を示す。そのため、ステロイドは造 血器腫瘍に対して他の抗がん剤とともに抗腫瘍効果を期 待する key drug の1つとして汎用されている。しかしなが ら、ステロイドの 1 回内服投与量は、免疫系疾患治療時の 投与量に比して多いことが特徴である。したがって、ステ ロイドを投与された造血器腫瘍患者では、生理的分泌量を 上回るステロイドが投与されることとなり、その中止後に 一過性な副腎皮質機能の抑制が起こることが多い。その症 状としては、副腎機能不全による食欲不振、昏睡、倦怠感、 吐き気、体重減少、頭痛、発熱などがよく見られるが、ま れに関節痛、筋肉痛、腹痛、嘔吐なども見られる 2, 3)。こ れ ら は 、 い わ ゆ る ス テ ロ イ ド 離 脱 症 候 群 ( steroid withdrawal syndrome: SWS)と言われ、症状の程度や出現 期間は患者によって様々である。したがって、ステロイド の投与が長期の場合は、急激な投与中止を避け、徐々に投 与量を減量するステロイド漸減療法(以下、ステロイド taper)が推奨されている。しかし、成人における非ホジキ ンリンパ腫(Non-Hodgkin's Lymphoma: NHL)患者に対 Abbreviations: SWS, steroid withdrawal syndrome; CHOP, cyclophosphamide (CPA), doxorubicin (ADM), vincristine (VCR), prednisolone (PSL); DeVIC, dexamethasone (Dex), etoposide (ETP), ifosfamide, carboplatin; hyper CVAD-A, CPA, VCR, ADM, Dex. * : The following CHOP like regimens were counted as one regimen. CHOP (CPA, ADM, VCR, PSL), CVP (CPA, VCR, PSL), THP-COP (pirarubicin, CPA, VCR, PSL). ** : Kruskal-Wallis test. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 11-20 (2015) 調査項目は、通常化学療法におけるステロイド使用後に出 現した SWS 出現頻度を調査した。また、SWS が出現した 13 Table 3. Comparison of SWS Symptoms Grade Before and After Steroid Tapering 患者の中で、ステロイド taper を行った群と行わなかった (医師の判断で taper が必要とされなかった)群との症状 の grade を比較検討した。さらに、SWS 軽減を目的とした ステロイド taper 効果の検討を行った。 SWS 出現頻度 高用量のステロイドを含む通常量化学療法を施行した NHL 患者 116 例中、SWS が出現したのは 70 例(全症例の 60.3%)であった。症状別では、倦怠感が 70 例(全症例の 60.3%)、食欲不振が 32 例(全症例の 27.6%)、頭痛が 3 例 (全症例の 2.6%)、関節痛が 2 例(全症例の 1.7%)であ った。SWS が出現した患者の中で、ステロイド taper を行 った群と行わなかった群の各症状出現 grade を Table 2 に示 す。症状の grade 比較は、ステロイド taper を行った群で 有意に倦怠感(p<0.001)、食欲不振(p=0.005)が出現し ていた。 Table 2. Frequency of Patients with Each Grade of SWS Symptoms Abbreviations: SWS, steroid withdrawal syndrome; PSL, prednisolone; Dex, dexamethasone; HDC, hydrocortisone; CHOP, cyclophosphamide (CPA), doxorubicin (ADM), vincristine (VCR), PSL; DeVIC, Dex, etoposide, ifosfamide, carboplatin; hyper-CVAD, CPA, VCR, ADM, Dex. * : Wilcoxon signed - ranks test. 今回調査した NHL 患者に対する化学療法のステロイド 投与は、3〜5 日間と短期間ではあるが、SWS 症状は全症 例の 60.3%と高頻度に出現した。NHL 患者に対する通常化 学療法のステロイド投与量は、1 日に prednisolone は 60mg/m2〜100mg、dexamethasone は 40mg で、生理学上必 Numbers are frequency in 70 patients with steroid withdrawal syndrome, separated into the two groups with or without steroid tapering. Maximum symptoms' grade was recorded by common terminology criteria for adverse events version 3.0. Abbreviations: SWS, steroid withdrawal syndrome. * : Mann-whitney’s U test. 要とされる副腎皮質ホルモンの約 20〜60 倍と大量であり、 このために SWS が高頻度に出現したと考えられる。出現 した主な SWS 症状は、倦怠感が 70 例(全症例の 60.3%)、 食欲不振が 32 例(全症例の 27.6%)で、grade 3 と重篤に 至った例も 5 例(全症例の 4.3%)存在した。そのうち 4 SWS 軽減を目的としたステロイド taper 効果 例は、高齢者(78-86 歳)であったが、今回検討した SWS 症状の強さおよび患者の QOL を考え SWS が出現した 出現に関する危険因子に高年齢(70 歳以上)は、有意な 70 例中 22 例(全症例の 19.0%)にステロイド taper を行っ 因子とはならなかった。しかし、SWS 症状が出現した 70 た。その効果は、22 例中 19 例(86.4%)に見られ、ステ 例中、ステロイド taper を行った群と行わなかった群との ロイド taper を行った前後で有意に(倦怠感: p<0.001、食 年齢比較は、行った群が有意に高かった(p=0.011)。SWS 欲不振: p=0.003)症状の改善がみられた。22 例の化学療 出現には年齢差はないが、高齢者で出現すれば重篤化とな 法、ステロイド taper の投与期間、投与量、ステロイドの り得る可能性があるため積極的にステロイド taper を行う 種類および前後での grade 比較を Table 3 に示した。 必要があると考えられる。今回、ステロイド taper 期間は 平均 4.4 日間(範囲: 2〜8 日)であり、一定の見解に至 視床下部・下垂体・副腎皮質系の抑制は、糖質コルチコ っていない。しかし、NHL に対しての通常量化学療法の イドの大量投与によって引き起こされ、投与量、投与期間 ステロイド使用は、3-5 日と短期間の大量投与のため、短 あるいは使用する副腎皮質ステロイドの種類によって左 いステロイド taper 期間でも効果は十分にあったと考える。 8) 右される 。ステロイド投与期間が短期であっても、副腎 皮質萎縮を引き起こす可能性があり 9)、1 週間以上にわた り継続するとの報告もある 10, 11) なお、ステロイド taper により重篤な副作用には至らなか った。また、ステロイド taper を開始するタイミングは、 。また、長期のステロイ 有効であった 19 例では平均 2.5 コース目(範囲: 2〜5 コ ド投与ともなれば、数週間にわたり副腎皮質機能の回復が ース目)からと早期に行った。逆に無効であった 3 例(case 遅れることもある 8, 12)。 No.20-22)は、全て 7 コース目から初めて行ったが症状の 改善はみられなかったため、早期から導入することも重要 宇佐美英績ら:造 血 器 腫 瘍 患 者 へ の 化 学 療 法 支 援 に 対 す る 臨 床 薬 学 的 研 究 14 であると考える。SWS は急激に出現し、その後、徐々に Table 4. Baseline Characteristics of Patients 自然治癒に至る。しかし、患者は、抗がん剤自体の副作用 や病態の悪化ではないかと不安に陥る場合も少なくない。 抗がん剤の主な副作用だけでなく、患者の QOL や精神状 態に影響を与える SWS に対しても、詳細な説明や積極的 な支援療法を含めた指導を行うことは重要である。NHL 患者に対する通常量化学療法後のステロイド taper は、短 期間であっても有効性は高く安全に施行でき、SWS 症状 が強ければ早期に取り入れ、特に高齢者へは重篤化を防ぐ ため積極的に行う必要があることが示唆された。 3. 非ホジキンリンパ腫患者における帯状疱疹の 出現頻度と危険因子 13) NHL に対する化学療法は、相対的治療強度(relative dose intensity: RDI)を低下させない強力な治療を施行するた め、重篤な副作用が懸念される。特に強度な骨髄抑制は、 免疫力低下を引き起こし易感染状態となり、重篤な感染症 を引き起こす場合がある。臨床現場で、化学療法による免 疫力低下のため細菌感染や真菌感染により治療中断を余 儀なくされる症例をしばしば経験する。また、帯状疱疹の 出現で治療の中断を余儀なくされ RDI 低下を招く症例も 少なくない。そこで、帯状疱疹の出現頻度、出現時期、出 現に関わる危険因子および帯状疱疹出現による化学療法 の遅延日数を調査し検討を行った。 対象および方法 Abbreviations: auto PBSCT, autologous peripheral blood stem cell transplantation. * : The following CHOP like regimens were counted as one regimen CHOP (cyclophosphamide: CPA, doxorubicin: ADM, vincristine: VCR, prednisolone: PSL) R-CHOP (rituximab: RIT, CPA, ADM, VCR, PSL) CVP (CPA, VCR, PSL) R-CVP (RIT, CPA, VCR, PSL) THP-COP (pirarubicin: THP, CPA, VCR, PSL) R-THP-COP (RIT, THP, THP, CPA, VCR, PSL). ** : fludarabine or cladribine. *** : Fisher’s exact probability test. 2007 年 1 月から 2009 年 12 月までの 3 年間に当院血液内 科で何らかの化学療法を完遂し、その間に服薬指導を実施 した NHL 患者 170 例を対象とし、患者背景を Table 4 に示 Table 5. The Onset Time of Herpes Zoster Infection in Changing White-blood Cell Count した。ただし、全治療終了後でも帯状疱疹を出現する場合 があるため、化学療法後にも追跡が可能である症例を調査 対象とした。 帯状疱疹出現頻度および時期 * : Post autologous peripheral blood stem cell transplantation treatment. 全体で 14.7%(25/170 例)に帯状疱疹が出現していた。 帯状疱疹出現時期は、化学療法開始から 30 日以内の患者 が 76.0%(19/25 例)と多く、中でも骨髄回復時期が最も Table 6. The Onset Time of Herpes Zoster Infection in Total Treatments 多かった。また、最後の化学療法から 30 日以上経過し、 治療を終了している患者は 24.0%(6/25 例)であり、その うち 3 例が自家末梢血幹細胞移植(autologous peripheral blood stem cell transplantation: auto PBSCT)後患者で治療 終了から 5〜11 ヶ月後に出現していた。 化学療法を開始してから骨髄抑制が回復するまでの白 血球推移にともなう期間別出現時期を Table 5 に示した。 骨髄抑制開始時期(最低点前)は 24.0%(6/25 例)、最下 点付近は 16.0%(4/25 例)、骨髄回復時期は 36.0%(9/25 例)、化学療法開始から 30 日以降は 24.0%(6/25 例)であ * : Post autologous peripheral blood stem cell transplantation treatment. り、その内の半数は auto PBSCT 後患者であった。また、 帯状疱疹出現時点における化学療法総施行数を Table 6 に 示した。総施行数が 1〜3 コースが 16.0%(4/25 例)、4〜6 コースが 24.0%(6/25 例)、7〜9 コースが 16.0%(4/25 例) 、 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 11-20 (2015) 15 10 コース以上が 44.0%(11/25 例)であり、その内の 3 例 が 9.4%、Czuczman ら 21)が 15.0%と報告している。今回、 は auto PBSCT 後患者であった。 11.2%と同程度であったが、帯状疱疹出現のリスク因子に は至らなかった(オッズ比 0.933、95%信頼区間 0.344-2.528、 造血幹細胞移植後の帯状疱疹出現の報告として、 p=0.892)。RIT の他にも、fludarabine や cladribine などのプ Locksley ら 14)は骨髄移植後患者の 20〜50%が移植後 3〜6 リンアナログ製剤でも遅延的なリンパ球減少が重篤なウ ヵ月頃をピークに、Tomonari ら 15)は臍帯血移植後で 30 イルス感染を引き起こす可能性があり注意が必要である ヵ月の累計帯状疱疹出現率が 80%以上にものぼると報告 22, 23) をしている。同種移植など移植後に免疫抑制剤を長期使用 用頻度も高くなることが考えられるため、治療後において し、帯状疱疹が出現する危険性が高い症例においては も長期的な注意が必要である。 。今後、低悪性度リンパ腫に対してこれらの薬剤の使 ACV 長期投与による帯状疱疹出現予防も試みられている。 Kanda ら 16)や Kim ら 17)は ACV の投与量を 1 回 200mg の 帯状疱疹出現による治療の遅延 1 日 2 回、投与期間を免疫抑制剤中止時までとし、Asano 帯状疱疹出現後も治療を継続した 17 例において、出現 ら 18)は 1 回 200mg の 1 日 1 回で少なくとも移植時より 1 直前と直後に施行した化学療法の通常インターバルから 年以上予防内服を継続することで重症例や最終的な帯状 遅延した日数を比較検討したところ、有意差はないものの 疱疹累積出現頻度を低下させることが可能であることを (p=0.056)、平均 6.6 日から平均 14.2 日に延長した(Fig. 2)。 報告している。今回は、移植後に免疫抑制剤を使用しない 次回の化学療法を 1 ヶ月以上も延期せざるを得ない程、重 自家移植や通常量化学療法施行患者のため、治療を終了し 篤化した症例も存在し、RDI 低下となる要因のひとつとし てから帯状疱疹を出現した症例はわずか 3.5%(6/170 例) て考えられる。 であり、同種移植に比べてはるかに低いものであった。 帯状疱疹出現に関わる要因解析 NHL 患者における帯状疱疹出現に関する要因解析の結 果をフォレストプロットとして Fig. 1 に示した。有意な因 子として、自家末梢血幹細胞移植後(オッズ比 6.455、95% 信頼区間 1.225-34.019、p=0.043)、再発患者(オッズ比 3.826、 95%信頼区間 1.591-9.198、p=0.002)、総治療回数 10 回以 上(オッズ比 5.211、95%信頼区間 2.065-13.145、p<0.001)、 使用レジメン 2 種類以上(オッズ比 3.228、95%信頼区間 1.355-7.694、p=0.006)が見出された。 Fig. 2. The extension of interval of the treatments comparing post-herpes zoster infection to pre-infection NHL の治療成績を向上させるためには、いかに RDI を 維持し治療を遂行するかがポイントとなる。近年では、 granulocyto-colony sitmulating factor(G-CSF)などの支持療 法の発達により、RDI を高めることが可能となった 24)。し かし、強力な化学療法により免疫機能低下が遅延し、細菌 や真菌などの重篤な感染症にいたる場合も少なくない 25)。 また、帯状疱疹も免疫力低下に伴って、宿主の水痘・帯状 疱疹ウイルス(varicella zoster virus: VZV)が再活発化し 神経症状、皮膚症状をともない出現し、著しい QOL の低 Fig. 1. Forest plot of the risk factors contributing to herpes zoster infection Abbreviations: PBSCT, peripheral blood stem cell transplantation; OR, odds ratio; CI, confidence interval. * : significant difference at p<0.05. NHL に対する化学療法の中で、免疫機能への影響が示 唆される薬剤にヒト-マウスキメラ型抗 CD20 モノクロー ナル抗体の rituximab(RIT)がある。RIT 併用化学療法に おける帯状疱疹の出現は、Ito ら 19)が 8.3%、Aksoy ら 20) 下を来たす場合もあり、RDI 低下の要因となる感染症のひ とつとして成り得る。また、帯状疱疹後神経痛にて鎮痛剤 の使用が長期必要となり、痛みのコントロールが必要とさ れる症例もある。そのため、対象患者へは帯状疱疹出現に 対する抗ウイルス薬の予防投与を推奨することにより化 学療法に対する副作用支援となることが示唆された。 宇佐美英績ら:造 血 器 腫 瘍 患 者 へ の 化 学 療 法 支 援 に 対 す る 臨 床 薬 学 的 研 究 16 4. Liposomal-Amphotericin B 投与による 低カリウム血症と適正なカリウム補正 Table 7. Patient demographics and baseline characteristics 26) 免疫不全患者に出現する真菌感染症は予後不良の合併 症であり適切な治療が重要である。Amphotericin B(AMB) はカンジダ属やアスペルギルス属またはクリプトコッカ ス属など幅広い抗真菌スペクトルを有し使用されてきた 27)。しかし、腎毒性をはじめとした副作用の問題のため、 リポソーム化された Drug Delivery System 製剤である Liposomal -Amphotericin B(L-AMB)が開発され、その有 用性や腎毒性の軽減も報告され 28)AMB に代わるものとな っ た 。 米 国 感 染 症 学 会 ( Infectious Diseases Society of America: IDSA)のガイドラインなどにおいても造血器腫 瘍領域において第 1 選択薬に推奨され、汎用されている 29, 30) 。しかし、AMB よりも毒性は軽減されたものの、低カ リウム血症によるカリウム補正を余儀なくされることも 少なくない。そこで、L-AMB 投与時における低カリウム 血症出現度および適正なカリウム補正の検討をレトロス ペクティブに行った。 対象および方法 2010 年 4 月〜2013 年 3 月までに当院血液内科において、 L-AMB が初回投与された 100 例を対象とした。ただし、 L-AMB の投与期間中に、フロセミドや補液など血清カリ ウム値に影響を与える薬剤の定期的な追加または中止し た 症 例 お よ び L-AMB 投 与 前 に 血 清 カ リ ウ ム 値 が Abbreviations: L-AMB, Liposomal-Amphotericin B; K, serum potassium; ML, malignant lymphoma; AML, acute myeloid leukemia; ALL, acute lymphoblastic leukemia; MDS, myelodysplastic syndromes; MM, multiple myeloma; AA, aplastic anemia. * : Mann-whitney’s U test. 3.0mEq/L 未満(低カリウム血症 grade 3 以上)の 7 例の患 者を除外した。93 例のうちカリウムの補正を行った群(補 正群)48 例(51.6%)と行わなかった群(非補正群)45 補正群および非補正群のカリウム値推移 L-AMB 投与前後における血清カリウム値の継時的な推 例(48.4%)に分け調査を行った。L-AMB の投与方法は、 移を補正群と非補正群に分け、Fig. 3, 4 に示す。補正群で 1 日 1 回 1〜2 時間かけて投与を行った。 は、L-AMB 投与前とカリウム補正開始時の血清カリウム 値は、平均で 3.8±0.5 mEq/L から 2.8±0.6 mEq/L へと有意 患者背景 に減少し、補正後は 3.3±0.6 mEq/L へと有意に上昇した。 患者背景を Table 7 に示す。補正群と非補正群の各 また、L-AMB 投与後(投与終了 2.9±2.6 日後)では、3.7 L-AMB 総投与量は 2485.1±1730.6mg および 1485.6± ±0.8 mEq/L へ投与前と比べて、有意な差はなく血清カリ 1345.6mg で、1 日あたりの平均投与量は、それぞれ 125± ウム値は回復した。非補正群では、L-AMB 投与前と投与 30mg/日および 110±25 mg/日であった。また、各 L-AMB 中の最低血清カリウム値は、3.9±0.5 mEq/L から 3.2±0.5 の投与期間は平均で、19.8±14.2 日および 12.9±8.4 日で mEq/L へと有意に減少し、L-AMB 投与後(投与終了 2.0 あった。 ±1.5 日後)も 3.4±0.8 mEq/L と投与前と比べ、有意な差 があり回復はなかった。 低カリウム血症出現度とカリウム補正 Grade 3 以上の低カリウム血症(血清カリウム値<3.0 mEq/L)を来した症例は 50/93 例(53.8%)であった。カ L-AMB 投与時にカリウム補正を行った要因解析 L-AMB 投与時にカリウム補正群と非補正群の違いに影 リウム補正を行ったのは 48/93 例(51.6%)で、総カリウ 響を与えた要因検索を行うため、影響が考えられる 9 項目 ム補正量は 519.6±506.1mEq で、1 日あたりの平均カリウ について単変量解析を行った。なお、量的データの独立変 ム補正量は 32.6±13.4 mEq/day であった。また、カリウム 数は連続変数として解析を行い、その結果を Table 8 に示 補正期間は平均で、14.4±14.0 日間であった。 す。その結果、 「L-AMB 総投与量」 (オッズ比 67.97、95% 信頼区間 4.34–<1000; p<0.01)、 「L-AMB 用量」 (オッズ比 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 11-20 (2015) 25.57、95% 信頼区間 2.31– 395.36; p=0.01)、「L-AMB 投 与期間」(オッズ比 224.62、95% 信頼区間 5.26–<1000; 17 Table 9. Multivariate Analysis of factors affecting potassium supplementation during L-AMB Administration (N=93) p<0.01)および「L-AMB 投与中の最低血清カリウム値」 (オ ッズ比 0.07、95% 信頼区間 0.01– 0.55; p=0.01)に有意な 差が認められた。これらの要因の ROC 下面積(area under the curve: AUC)は 0.75、0.63、0.71、0.66、カットオフ 値は 2001.45mg、118.5 mg/日、16.44 日間、2.98mEq/L であ った。カットオフ値に基づいて多変量解析を行った結果を Table 9 に示す。その結果、「L-AMB 投与中の最低血清カ Abbreviations: L-AMB, Liposomal-Amphotericin B; OR, odds ratio; CI, confidence interval. カリウム補正群における適正補正に関する要因解析 リウム値(≦2.98mEq/L)」(オッズ比 3.62、95% 信頼区間 カリウム補正を開始し、その後血清カリウム値が 3.0 1.44–9.59; p<0.01)の症例で有意にカリウム補正が行われ mEq/L 以上(grade 2 以下)を維持できる適正なカリウム ていた。 補正が可能となる要因の単変量解析を影響があると考え られる 12 項目について行った。なお、量的データの独立 変数は連続変数として解析を行い、その結果を Table 10 に 示す。その結果、 「カリウム補正開始時の血清カリウム値」 (オッズ比 151.51、95% 信頼区間 12.60–733.52; p<0.01) に有意な差が認められた。この要因の ROC の AUC は 0.81、 カットオフ値は 2.83 mEq/L であった。単変量解析にて p<0.25 であった 5 項目にて多変量解析を行った結果を Table 11 に示す。その結果、「カリウム補正開始前カリウ ム値が 2.83 mEq/L 以上」で有意な差が認められた(オッ ズ比 14.21、95% 信頼区間 1.95-310.72; p=0.02)。また、 Fig. 3. Change in serum potassium level during L-AMB administration in the supplementation group カリウム補正期間や L-AMB 用量などに有意な差は認めら れなかった。 Table 10. Univariate Analysis of the factors affecting proper potassium supplementation (N=48) Fig. 4. Change in serum potassium level during L-AMB administration in the non-supplementation group Table 8. Univariate Analysis of factors affecting potassium supplementation during L-AMB administration (N=93) Abbreviations: L-AMB, Liposomal-Amphotericin B; AUC, area under the curve; PS, performance status; OR, odds ratio; CI, confidence interval. Table 11. Multivariate Analysis of the factors affecting proper potassium supplementation (N=48) Abbreviations: L-AMB, Liposomal-Amphotericin B; AUC, area under the curve; OR, odds ratio; CI, confidence interval. Abbreviations: L-AMB, Liposomal-Amphotericin B; PS, performance status; OR, odds ratio; CI, confidence interval. 宇佐美英績ら:造 血 器 腫 瘍 患 者 へ の 化 学 療 法 支 援 に 対 す る 臨 床 薬 学 的 研 究 18 免疫力が高度に抑制された血液疾患患者は、発熱性好中 の中での臨床薬剤師の必要性が高まる分野である。今回、 球減少症(febrile neutropenia: FN)が頻発し、FN が持続 造血器腫瘍患者への化学療法支援に対する薬剤師の薬学 するような場合は確定診断前から真菌感染症を疑い抗真 的介入による効果を目的とし臨床薬学的検討を行った。 27)。L-AMB は幅広い 非ホジキンリンパ腫患者に対する通常量化学療法後の スペクトルを有し殺菌的に作用するため、原因真菌が同定 ステロイド離脱症状について、その出現頻度とステロイド できないような状況においても有用な治療薬であり、他の 漸減療法による症状軽減効果の研究の結果、ステロイド離 抗真菌剤との比較試験においても有効性が報告され 31, 32) 脱症候群(SWS)の症状は、倦怠感や食欲不振などが高い 菌剤による経験的治療が開始される 、 経験的治療の中心的薬剤である 28)。 出現率であった。しかし、ステロイド漸減療法による症状 L-AMB による低カリウム血症は、L-AMB が腎尿細管細 軽減効果は、短期間のステロイド taper でも有効性は高く 胞膜に作用し透過性が亢進されるために出現すると考え 安全に施行できる。特に高齢者は SWS 症状が重篤化する られている 33, 34)。その出現割合は 36)が Ringdén ら 35)が 36%、 場合もあるため積極的に行う必要があると考えられ化学 51.3%と報告し、今回の調査でも grade 3 療法継続への支援となることを明らかにした。また、非ホ 以上の低カリウム血症は、53.8%と高頻度に出現し、注意 ジキンリンパ腫患者における帯状疱疹の出現頻度と危険 を要する副作用のひとつである。血清カリウム値を比較す 因子解析から帯状疱疹出現危険因子として、自家末梢血幹 ると投与前では差は無いものの、L-AMB 投与中の最低血 細胞移植後、再発患者、総治療回数 10 回以上、使用レジ 清カリウム値は補正群で有意に低かった。しかし、L-AMB メン 2 種類以上を見出した。帯状疱疹も、細菌感染や真菌 投与終了後では、補正群の方が有意に高く、回復が早かっ 感染などと同様に QOL の低下を招き、RDI の低下によっ た。今回、カリウム補正は、48/93 例(51.6%)に行われて て治療成績の低下も危惧されため、これらの対象患者へは いた。カリウム補正を行った補正群と行わなかった非補正 帯状疱疹出現に対する抗ウイルス薬の予防投与を推奨す 群を比較すると補正群は、有意に L-AMB の投与期間は長 ることにより化学療法に対する副作用支援となることを く、投与量も多かった。カリウム補正群と非補正群の違い 明らかにした。さらに、L-AMB 投与による低カリウム血 に影響を与えた因子の多変量解析を行った結果、L-AMB 症と適正なカリウム補正に関する研究の結果、L-AMB 投 投与中の最低血清カリウム値が 2.98mEq/L 以下の症例で 与時における grade 3 以上の低カリウム血症は高頻度に出 有意にカリウム補正が行われていた。また、L-AMB 投与 現しており、カリウム補正後、血清カリウム値が 3.0 mEq/L 時における適正なカリウム補正の重要な因子として、補正 以上(grade 2 以下)を維持できている適正なカリウム補 開始時の血清カリウム値に有意な差がみられた。L-AMB 正の重要な因子として、カリウム補正開始前の血清カリウ 投与後、血清カリウム値が 2.83 mEq/L を下回る前にカリ ム値が 2.83 mEq/L 以上を見出した。そのため、血清カリ ウム補正を開始することが、血清カリウム値を 3.0mEq/L ウム値が 2.83 mEq/L を下回る前にカリウム補正を開始す 以上(grade 2 以下)に保ち、適正な補正を行うための条 ることが必要であり、血清カリウム値が低下しすぎない早 件であることが明らかになった。そのため、L-AMB 投与 期から補正を行うことが電解質異常の重篤化を予防する 開始から定期的な血清カリウム値のモニタリングを行い、 ためには、重要であることを明らかにした。 Sunakawa ら 値が低下しすぎない早期からカリウム補正を行い、電解質 本研究では、造血器腫瘍患者への化学療法支援とその効 異常の重篤化を予防することが重要である。免疫力が高度 果を詳述し、副作用軽減、RDI および QOL の向上に関し に抑制された血液疾患患者は、侵襲性真菌感染症が致命的 て重要な知見が得られ、薬剤師による薬学的介入の重要性 に成り得る。そのため、L-AMB による電解質異常の重篤 を明らかにした。副作用の中にも見落とされがちな事象や 化を予防することが副作用管理に重要であると考える。 未知のものもある。そのため、化学療法による副作用デー タを蓄積し解析を行い患者へフィードバックすることが 5. 結論 治療に対して不安を抱える患者の安心へと繋がる。近年、 新規抗がん剤の開発も目覚ましいものがあり、新たなる治 がん領域は幅広いが、固形がんと血液がんに大別できる。 療方法が次々に考案され、新たなる副作用の管理も必要と 固形がんの主要な治療手段は、初期には手術・放射線・化 なる。本研究は、造血器腫瘍患者が治癒を目指し治療を完 学療法が適応されるが、手術不能となれば化学療法が主と 遂させるため、薬剤師が安全かつ有効な治療への貢献に寄 なり、その治療目的も延命となる。一方、血液がんの治療 与できるものと考える。 手段は、化学療法が中心で完治を目標とする。そのため、 化学療法は固形がんに比べ強力となり副作用の出現率も 高い。副作用コントロールの善し悪しが治療の継続性、 RDI あるいは患者の QOL の低下に繋がる恐れがある。そ のため、副作用のマネージメントが重要となりチーム医療 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 11-20 (2015) 6. 引用文献 1) Usami E., Kimura M., Yoshimura T., Yasuda T., Teramachi H., Sugiyama T., Tsuchiya T., Jpn. 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Haematol., 122, 802-805 (2003). 16) Kanda Y., Mineishi S., Saito T., Saito A., Yamada S., Ohnishi M., Chizuka A., Niiya H., Suenaga K., Nakai K., Takeuchi T., Makimoto A., Tanosaki R., Kami M., Tanaka Y., Fujita S., Watanabe T., Kobayashi Y., Tobinai K., Takaue Y., Bone Marrow Transplant., 28, 689-692 (2001). 17) Kim DH., Kumar D., Messner HA., Minden M., Gupta V., Kuruvilla J., Chae YS., Sohn SK., Lipton JH., Clin. Transplant., 22, 770-779 (2008). 18) Asano-Mori Y., Kanda Y., Oshima K., Kako S., Shinohara A., Nakasone H., Sato H., Watanabe T., Hosoya N., Izutsu K., Asai T., Hangaishi A., Motokura T., Chiba S., Kurokawa M., Am. J. Hematol., 83, 472-476 (2008). 19) Ito K., Okamoto M., Maruyama F., Handa K., Yamamoto Y., Watanabe M., Tsuzuki M., Mizuta S., Kumazawa S., Ohta H., Nakano I., Emi N., Gan To Kagaku Ryoho, 37, 99-102 (2010). 19 20) Aksoy S., Harputluoglu H., Kilickap S., Dede DS., Dizdar O., Altundag K., Barista I., Leuk. lymphoma, 48, 1307-1312 (2007). 21) Czuczman MS., Koryzna A., Mohr A., Stewart C., Donohue K., Blumenson L., Bernstein ZP., McCarthy P., Alam A., Hernandez-Ilizaliturri F., Skipper M., Brown K., Chanan-Khan A., Klippenstein D., Loud P., Rock MK., Benyunes M., Grillo-Lopez A., Bernstein SH., J. Clin. Oncol., 23, 694-704 (2005). 22) Wijermans PW., Gerrits WB., Haak HL., Eur. J. Heamatol., 50, 292-296 (1993). 23) Morrison VA., Rai KR., Peterson BL., Kolitz JE., Elias L., Appelbaum FR., Hines JD., Shepherd L., Martell RE., Larson RA., Schiffer CA., J. Clin. Oncol., 19, 3611-3621 (2001). 24) Lyman GH., Dale DC., Friedberg J., Crawford J., Fisher RI., J. Clin. 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Chemother., 18, 456-465 (2012). 7. 特記事項 本総説は、岐阜薬科大学博士論文(乙 356 号)の内容を 中心にまとめたものである。 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 21-27 (2015) 21 ―総説― 緑内障治療薬の探索と薬理学的検討 葛西洋芳 a), 原英彰 b)* 要約:緑内障は、自覚症状がなく視力が徐々に低下し、失明に至る危険性の高い慢性疾患の一つである。緑内障発症の原 因の一つは眼圧が亢進し、眼底部にある視神経が物理的障害を受けて、視力が低下すると考えられている。そのため、眼 圧を下げることが緑内障治療の第一選択肢となる。眼圧は房水の産生量と流出量のバランスで制御されており、線維柱帯 細胞の収縮弛緩の変化でこのバランスが調節されている。仮に房水流出量が減少すれば、眼圧は徐々に高まり、緑内障の 発症危険率が高まる。現在のところ、主経路からの房水流出を促進させる薬剤が少なく、新しい作用機序を有する治療薬 の開発、販売が望まれている。本研究では、主経路からの房水流出促進を評価するためブタ由来線維柱帯細胞を用いた 3 次元コラーゲンゲル培養方法を in vitro で簡便に評価する方法を構築し、多数の薬剤を評価した結果、cyclin 依存性 kinase (CDK)阻害薬である roscovtine が強いコラーゲンゲル収縮抑制作用を示した。Roscovitine には R 体と S 体の 2 つの異 性体が存在するため、両異性体をウサギに点眼した後の眼圧下降作用を検討したところ、いずれも眼圧下降作用を示し た。さらに培養神経節細胞を用いたストレス負荷試験で roscovitine 両異性体の抗ストレス作用を検討したところ、S 体の 異性体のみに保護作用が認められた。 索引用語:眼圧、3 次元コラーゲンゲル培養方法、roscovitine Screening and pharmacological research for anti-glaucoma drugs Hiroyoshi KASAIa), Hideaki HARAb)* Abstracts: Glaucoma comprises group of eye diseases that gradually diminish eyesight, often without warning or symptoms. Loss of vision results from optic nerve damage, which was once attributed primarily to high intraocular pressure (IOP). Therefore, lowering IOP is the first choice for glaucoma therapy. The IOP is regulated by a balance between aqueous inflow and outflow, and is modulated by changes in the contractile state of the TM. If aqueous outflow decreases, IOP may gradually increase, resulting in hypertensive glaucoma. At present, only a limited number of agents that have the capability of modulating outflow through the conventional route are available. Identification of new and improved agents that can improve outflow is therefore important. We developed a 3-D collagen gel assay using primary porcine trabecular meshwork (pTM) cells and evaluated the inhibitory effects of various agents on the contractility of collagen gel. Roscovitine, a cell cyclin-dependent kinase (CDK) inhibitor, strongly induced relaxation of pTM cells. Additionally, we investigated the effects of both the R- and S-isomer on the IOP of rabbits and on the death of cultured retinal ganglion cells. In the in vivo rabbit experiment, instillation of both isomers significantly lowered the IOP. In the in vitro cell experiment, the S-isomer alone inhibited tunicamycin- and glucose deprivation-induced cell damage. Key phrases: intraocular pressure, 3-D collagen gel assay, roscovitine 1.緒言 に至る危険性の高い慢性疾患の一つである。緑内障発症 の原因の一つは眼球内圧(眼圧)が亢進することであ 緑内障は、自覚症状がなく視力が徐々に低下し、失明 a) り、眼底部にある視神経が物理的障害を受けて、視力が わかもと製薬株式会社医薬開発統括部(〒108-8330 東京都中央区日本橋本町 2 丁目 2-2) Pharmaceutical Development Division, Wakamoto Pharmaceutical Co., Ltd. (2-2-2 Nihonbashi Honcho, Chuo-ku, Tokyo 103-8330, JAPAN) b) 岐阜薬科大学生体機能解析学大講座薬効解析学研究室(〒501-1196 岐阜市大学西 1 丁目 25-4) Department of Biofunctional Evaluation, Molecular Pharmacology, Gifu Pharmaceutical University (1-25-4 Daigaku-nishi, Gifu 501-1196, JAPAN) 22 葛西洋芳ら:緑 内 障 治 療 薬 の 探 索 と 薬 理 学 的 検 討 低下する。眼圧が 1mmHg 高まれば、緑内障の進行が 1019%高まると言われている 1)。そのため、眼圧を下げるこ とが緑内障治療の第一選択肢となる。 眼圧は、房水の産生率と流出率のバランスそして眼灌 流圧で恒常的に維持されている。房水は眼内へ栄養素を 運搬し、あるいは老廃物を排出しやすくするための毛様 体より産生され、後房を経て前房へ流入し、眼外へ流出 される。房水の流出系は 2 つ存在し、線維柱帯-シュレ ム管を介した主経路およびぶどう膜強膜を介した副経路 が存在する。ヒトや脊椎動物では、房水の 80-90%は主経 路を介して眼外へ排出される(Fig.1)。 Fig. 2 分類 薬物療法による現在販売されている眼圧下降薬の 細胞骨格調節薬である ethacrynic acid7)、cytochalasin B も しくは D8)、latrunculin-A もしくは B9) の他に、細胞内シグ ナル調節薬である H-710)、Y-2763211)、ML-912)のような各種 キナーゼ阻害薬が細胞骨格を変化させることが報告され ている。これら調節薬が房水流出量を促進し、眼圧下降さ せることがサルやウサギを用いた研究成果で明らかとな っている 10)。したがって、細胞間収縮の調節に関する研究 が房水の流出促進薬の創薬に繋がると考えられる。 細胞間収縮能を評価する方法として、3 次元コラーゲン ゲル培養法が広く普及している 13)。本法は簡易的に in vitro Fig. 1 房水の流れ http://www.hayashi.or.jp/disease/detail/c/2/i/72/から改変引用 で細胞間収縮能を評価することが可能であり、線維芽細胞 を用いた多数の研究報告がなされている。すなわち、線維 芽細胞が、 (1)結合組織由来の細胞外マトリックスの産生 線維柱帯は幾つかのユニークな特徴を持っている。すな わち、 (1)細胞外マトリックス(Ⅰ型、Ⅲ型、Ⅳ型、Ⅴ型、 Ⅵ型のコラーゲン)や糖タンパク質(ラミニンやフィブロ ネクチン)の生合成や分泌機能を有する 2)、 (2)マトリッ 源であること、(2)皮膚 13)、肝臓 14)、心臓 15)、平滑筋 16) の創傷治癒、線維化促進に寄与していることが報告されて いる。さらに、角膜の実質細胞 17)、テノン嚢由来の線維芽 細胞 18)、網膜色素細胞 、硝子体のヒアロサイト 20)、線 19) クスメタロプロテイナーゼ(matrix metalloproteinase:MMP) 維柱帯細胞 ファミリー(MMP-1、2、3、9)や MMP 阻害タンパク質 養法が広く利用されている。 (tissue inihibitor of metalloproteinase:TIMP-1)を産生する 3)、 (3)マクロファージのようなファゴサイトーシス や平 滑筋細胞の機能特性を有することが報告されている 4,5)。 前述の通り、眼圧は房水の産生量と流出量のバランスで 制御されており、線維柱帯細胞の収縮弛緩の変化でこのバ ランスが調節されている。仮に房水流出量が減少すれば、 眼圧は徐々に高まり、緑内障の発症危険率が高まる。現在 国内外で販売されている殆どの薬剤は房水産生量を抑制 するか、あるいはぶどう膜強膜流出量を促進させる薬理作 用を有し、単独もしくは併用で使用されているが治療的満 足度は決して高くはない。また、主経路の房水流出量を促 進させる薬剤はピロカルピンやイソプロピルウノプロス トンが使用されているに過ぎない。そのため、異なる作用 機序を有する薬剤の早期開発が望まれている。薬物療法に 目を向けると、日本では多数の緑内障治療薬が今日臨床の 現場で使用されている(Fig. 2)6)。 21)を用いた研究でも 3 次元コラーゲンゲル培 また、ウシ胎仔血清(fetal bovine serum:FBS)22) や形質 転換増殖因子(transforming growth factor:TGF)- β1、上皮 細胞増殖因子(epidermal growth factor:EGF)、血小板由来 増殖因子(platelet-derived growth factor:PDGF)-BB、塩基 性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor:bFGF)、 fibronectin および vitronectin といった多種の成長因子がコ ラーゲンゲル収縮を促進する 23,24) 。 TGF-β1 が Rho- associated protein kinase(Rho-associated kinase:ROCK) や myosin light chain kinase(MLCK)を活性化し、ウシ由来線 維柱帯細胞間の収縮をコラーゲンゲル培養法にて評価出 来ることを報告している 21)。さらには、細胞内シグナルに 関わる因子がミオシン-アクチンによる収縮弛緩システム や細胞の進展や運動に寄与することを示唆している。 一方、眼圧上昇により、酸化ストレス、虚血、興奮毒性、 小胞体ストレス等が網膜神経節細胞に加わり、同細胞死に 至ると考えられている 25-27)。したがって、眼圧下降作用だ 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 21-27 (2015) 23 けではなく、種々のストレスで誘導された網膜神経節の細 胞障害に対して予防や保護することが緑内障治療に大い に役立つと考えられる。 始めに、ブタ由来の線維柱帯細胞を用いた 3 次元コラー ゲンゲル培養法を使って、多種多様の薬剤によるコラーゲ ンゲル収縮抑制を評価し、さらにこの収縮抑制作用が細胞 障害に起因しているか検討した。 つぎに、前述した検討結果より、強いコラーゲンゲル収 縮抑制を示した cyclin 依存性 kinase(CDK)阻害薬である roscovitine に着目した。すなわち、種々のストレス 28,29) に 対して発現上昇し、アポトーシスや興奮毒性 29-31)にも関わ る CDK のアイソフォームである CDK2、CDK4 と CDK5 を roscovitine が阻害することが報告されている。そのため、 roscovitine が網膜神経節細胞死に対して保護効果をもたら すことが考えられる。また roscovitine は R 体と S 体のラ セミ体のため、各アイソマーにより異なる生理活性を示す と考えられる。実際、小脳虚血に対する保護効果が異なっ ていることが報告されている 32)。そのため、眼圧下降作用 や網膜神経節細胞死に対しても同様の傾向があると推測 されるため、roscovitine の両アイソマーによる正常なウサ ギの眼圧下降作用と培養網膜神経節細胞におけるストレ ス障害に対する作用を検討した。 2.ブタ線維柱帯由来細胞を用いたコラーゲンゲ ル培養法と roscovitine によるコラーゲンゲル収縮 抑制効果 豚眼球(北海道畜産公社)から初代培養で得た pTM と 豚腱由来のⅠ型コラーゲン(新田ゼラチン)を低温下で混 合後し、24 ウェルのセルカルチャープレートに播種し、1 時間培養してゲル化させた。ゲル化したコラーゲン層の上 に 0.5%もしくは 2%の FBS(三光純薬)入り培地で 10-8-105M に調製した各種薬剤を重層し、マイクロスパチュラ等 を使ってカルチャーウェルに固着していたコラーゲンゲ Fig. 3 Effects of FBS and additive PDGF-BB on contraction of collagen gel containing pTM cells. A showed representative photographs of collagen gel stained by crystal violet after 48hours culture and effect of PDGF-BB on both concentration of FBS-stimulated collagen gel contraction and viable cells. Various concentrations of PDGF-BB solution were added and cultured on collagen gels in the presence of FBS at concentrations of 0.5%. B showed the areas of collagen gels were measured and data were shown as % of collagen gel’s area without FBS. Red columns were 0.5% FBS-stimulated contraction and blue columns were 2% FBS. Simbols, “-” or “+” were shown with or without FBS. Solid line was shown as cell viability (%). Data were the mean ± SE of triplicate. *P<0.05, ***P<0.005 versus 0.5% FBS alone, #P<0.05, ###P<0.005 versus 2% FBS alone. These results were cited from ref 33. 0.5%の FBS 存在下、roscovitine は 10-5M 濃度で細胞毒性 を示さずコラーゲンゲル収縮を有意に抑制した(Fig.4)。 しかし、2%の FBS 存在下では、roscovitine によるコラー ゲンゲル抑制作用は減弱した。データは示していないが、 今回の結果より複数の薬剤がコラーゲンゲル収縮を抑制 することが明らかだったが、その作用は roscovitine と異な り細胞毒性を示したため、コラーゲンゲル収縮自体が誘導 されなかった。 ルを外して浮遊させた。37℃、48 時間共培養後、収縮した コラーゲンゲルを 0.1%クリスタルバイオレット染色液で 染色後に撮影し、NIH image1.6.2 で染色された面積を数値 化し、各種薬剤によるコラーゲンゲルの収縮に対する抑制 率を算出した。FBS 存在下、種々の濃度の PDGF-BB を添 加すると、濃度依存的なコラーゲンゲル収縮が認められた (Fig.3)。 Fig. 4 Effects of roscovitine on collagen gel contraction induced by 0.5% and 2% FBS and viable cells. Various concentrations of roscovitine were added and cells were cultured on collagen gels in the presence of FBS at a concentration of 0.5% or 2%.The areas of collagen gels were measured and data were shown as % of collagen gel’s area 24 葛西洋芳ら:緑 内 障 治 療 薬 の 探 索 と 薬 理 学 的 検 討 without FBS. Red columns were 0.5% FBS-stimulated contraction and blue columns were 2% FBS. Simbols, “-” or “+” indicated with or without FBS. Solid line was shown as cell viability (%). Data were the mean ± SE of triplicate. #P<0.05 versus 2% FBS alone. These results were cited from ref 33. Table 1 には、今回用いた各種薬剤のコラーゲンゲル収 縮に対する 50%抑制率(ID50)と 50%細胞障害率(LD50) の関連性をまとめた。その結果、3 つのカテゴリーに分類 されることが明らかとなった。すなわち、グループ A には 細胞毒性を全く示さずコラーゲンゲル収縮を示す薬剤が 属し(ID50<<LD50)、roscovitin はここに分類された。グル ープ B にはわずかながらの細胞毒性を有してコラーゲン ゲル収縮抑制を示す薬剤が分類され(ID50<LD50)、グルー プ C には細胞毒性を与えてコラーゲンゲル収縮自体が誘 導出来なかった薬剤が分類された(ID50>LD50)。 Table 1 ID50 and LD50 values for various inhibitors of collagen gel contraction by pMT cells. These results were cited from ref 33. Fig. 5 Effects of the S-isomer (A) and R-isomer (B) of roscovitine on intraocular pressure. Roscovitine S-isomer and R-isomer significantly lowered IOP at 1, 2, 3 and 4 h after administration when compared to the control eyes. Data were shown as mean±SE (n = 6). *P < 0.05, and **P < 0.01 versus control (Paired t-test). These results were cited from ref 34. 4.RGC-5 を用いた脱酸素・脱グルコース (oxygen and glucose deprivation:OGD)ストレ スに対する roscovitine の保護効果 培養中の RGC-5 から、グルコース不含の培地に置換し、 低酸素条件下(94%窒素-5%炭酸ガス-1% 酸素)で OGD ス トレスを誘導した(低酸素化)。OGD ストレス誘導後、グ ルコース含有の培地に再置換し、追加培養した(再酸素化)。 3.正常ウサギを用いた roscovitine による眼圧 下降作用 4%のポリエチレングリコール 4000 水溶液で 0.1%に懸 濁させた roscovitine の両アイソマー溶液を 50 µL ずつ正常 なウサギの左眼に点眼し、僚眼である右眼には 4%のポリ エチレングリコール 4000 水溶液を同量点眼し、眼圧を Model 30 Classic Pneumatonometer ( Medtronic Xomed Ophthalmics)で測定した。その結果、roscovitine の両アイ ソマーを正常ウサギへ点眼した場合の眼圧推移を Fig. 5 に 示した。両アイソマーともに、いずれの時間帯においても 有意に眼圧を下降させ、その効力は同程度であった。 Roscovitine の両アイソマーは OGD ストレス誘導後に添加 した。細胞生存率は追加培養後に Hoechst33342 と PI を添 加し、染色された細胞数を計測し算出した。その結果、1µM の S 体 roscovitine は細胞障害を有意に抑制した。しかし、 0.01-1 µM の R 体 roscovitine で前処置しても OGD ストレ スに伴う細胞障害を抑制しなかった(Fig.6)。 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 21-27 (2015) 25 Fig. 7 Effects of R-isomer and S-isomer of roscovitine on cell damage induced by tunicamycin in RGC-5 cell cultures. A and C Representative fluorescence microscopy image of Hoechst 33342 and PI stained cells (added 27 h after tunicamycin treatment). B showed the roscovitine S-isomer at 0.01 or 0.1 µM had no effect on RGC-5 cell death induced by tunicamycin and showed a significant protective effect at 1 µM. D showed the roscovitine R-isomer at 0.01 or 0.1 µM had no effect on RGC-5 cell death induced by tunicamycin and strongly promoted cell death at 1 µM. Data were shown as mean ± SE (n = 6). ##P < 0.01 versus control (Student’s t-test or Welch’s t-test). *P < 0.05, and **P < 0.01 versus vehicle plus tunicamycin treated group (Dunnett’s test). Scale bar represented 50 µm. These results were cited from ref 34. 6.考察 Fig. 6 Effects of the R-isomer and S-isomer of roscovitine on cell damage induced by oxygen–glucose deprivation (OGD) in RGC-5 cell cultures. A and C showed representative fluorescence microscopy image of Hoechst 33342 and PI staining (OGD for 4 h and reperfusion for 16 h later). B showed the roscovitine S-isomer had no effect at 0.01 or 0.1 µM on RGC-5 cell death induced by OGD, but showed a significant protective effect at 1 µM. D showed the roscovitine R-isomer had no effect at 0.01 or 0.1 µM on RGC-5 cell death induced by OGD, but strongly promoted cell death at 1 µM. Data were shown as mean ± SE (n = 6). ##P < 0.01 versus control (Student’s t-test or Welch’s t-test). *P < 0.05, and **P < 0.01 versus vehicle plus OGD treated group (Dunnett’s test). Scale bar represented 50 µm. These results were cited from ref 34. 5.RGC-5 を用いた tunicamycin 誘導小胞体スト レスに対する roscovitine の保護効果 培養中の RGC-5 に tunicamycin を添加し小胞体ストレス を誘導した。小胞体ストレスを誘導後、前述した OGD 誘 導ストレスの検討と同様、Hoechst33342 と PI を添加し染 色された細胞数を算出した。1 µM の S 体 roscovitine は細 胞障害を有意に抑制した。しかし、0.01-1 µM の R 体 roscovitine で前処置しても小胞体ストレスに伴う細胞障害 を抑制しなかった(Fig.7)。 ブタ線維柱帯由来細胞を用いた 3 次元コラーゲンゲル 培養法を構築し、多種多様の薬剤を用いてコラーゲンゲル 収縮抑制を評価したところ、細胞毒性を示さずコラーゲン ゲル収縮を抑制する薬剤を見出した。すなわち、このよう な薬剤が組織障害性を示さず線維柱帯組織からの房水流 出を促進させる可能性があると考えられる。 CDK 阻害薬である roscovitine が現在までに緑内障研究 に応用された報告がない。今回の実験結果より、CDK 阻 害薬が細胞障害性を示さず、線維柱帯組織の収縮弛緩を調 節することが示唆されたため、これまでに報告されている PKC 阻害薬(現在開発中止)や ROCK 阻害薬(2014 年本 邦で初めて承認、発売中)と同様、緑内障治療薬になりう ることが大いに期待される。 一方、roscovitine には R 体と S 体のアイソマーがあり、 両アイソマーを正常なウサギに単回点眼したところ、いず れも有意な眼圧下降作用を示した。また、OGD ストレス と tunicamycin 誘導小胞体ストレスに対する両アイソマー の神経保護作用を in vitro で検討したところ、S 体の roscovitine は神経保護作用を示したが、R 体の roscovitine は神経保護作用を示さなかった。 Roscovitine が阻害する酵素、すなわち CDK は線維芽細 胞 35) やメサンギウム細胞 36) に発現するⅠ型コラーゲン および関節軟骨細胞 37) のⅡ型コラーゲンの産生を調節す ることが報告されている。したがって、roscovitine が眼圧 を調節する可能性が示唆された。p21Cip、p27 および p57 のような内因性の CDK 阻害物質が存在しているが、これ ら阻害物質は緑内障の網膜 glia 細胞で低下しており、一方 TGF-βや結合組織増殖因子(connective tissue growth factor : CTGF)等の線維化を促進する因子の活性化が報告されて いる 38),39)。内因性の CDK 阻害物質は CDK1、CDK2、CDK4 その他 kinase を阻害する。緑内障患者の SNP 解析より、 p16INK4a お よび p14ARF をエン コー ド する遺 伝子の Cyclin-dependent kinase inhibitor 2A ( CDKN2A ) お よ び p15INK4b をエンコードする遺伝子 CDKN2B に変異が起 きていることが報告されている 40)。すなわち、緑内障に罹 葛西洋芳ら:緑 内 障 治 療 薬 の 探 索 と 薬 理 学 的 検 討 26 患すると内因性の CDK 阻害物質が機能不全となり、その 8.謝辞 結果 CDK が過剰に活性化されていると考えられている。 本研究に際し、終始御指導と御鞭撻を賜りました岐阜薬 過剰に活性化された CDK が線維柱帯組織でのコラーゲン 科大学生体機能解析学大講座薬効解析学研究室准教授の の産生を促進させ、コラーゲンによる線維化を介して房水 嶋澤雅光先生並びに同助教の鶴間一寛先生に深謝致しま 流出が低下し、眼圧が上昇すると考えられる。したがって、 す。 roscovitine が CDK の活性化を阻害することで、コラーゲ 本研究に際し、御協力と御助言を賜りました岐阜大学医 ン産生量を減らし、眼圧を下降させる可能性が示唆された。 学部眼科学教室教授の山本哲也先生、前大学同講師の青山 CDK のアイソフォームである CDK2、CDK4 および 裕美子先生、岐阜薬科大学生体機能解析学大講座薬効解析 CDK5 が虚血状態にて神経細胞死を誘導することが報告 学研究室諸氏に感謝致します。とくに共同研究者として御 されている 41)。今回の研究より、S 体の roscovitine がこれ ら CDK アイソフォームを阻害し、保護作用を示したと考 えられる。しかしながら、R 体の roscovitine は神経保護作 協力いただきました石坂光絵修士並びに今村知代修士に 厚く感謝致します。 本研究の遂行に際し、生前より本研究の機会を賜り、ま 用がなく、むしろ細胞障害を誘導させた。以上の結果より、 た御指導と御鞭撻を賜りましたわかもと製薬株式会社の roscovitine のアイソマーにより、CDK の阻害反応が異なる 前常務取締役の故白澤榮一博士に深謝致します。 ことが示唆された。種々の CDK アイソマーが様々な条件 本研究の遂行にあたり、御支援と御鞭撻を賜りましたわ 下でアポトーシスの誘導もしくは細胞保護を促し、恒常性 かもと製薬株式会社代表取締役社長の神谷信行氏、前取締 を維持しているかもしれない。とくに CDK2 は細胞周期の 役の鈴木宏和氏、取締役の平田晴久博士、共同研究者の倉 G1/S 期を停止させ、過剰に活性化すると細胞死を誘導し、 澤崇修士並びに高橋佑次修士に厚く感謝致します。 CDK2 の阻害薬がアポトーシスを促進させる Bcl-xs をア ップレギュレートさせることが報告されている 42)。したが 9.引用文献 って、基質に対する阻害活性の程度が RGC-5 の細胞死に 重要であると考えられる。Roscovitine の両アイソマーが CDK および細胞内情報伝達を司る kinase に影響を及ぼし、 細胞機能性を変化させているかもしれない。今後、CDK の 基質と細胞内情報伝達との関係を更に明らかにすること で、異なるアイソマーの roscovitine を用いた研究を発展さ せ、将来の新規緑内障治療薬の開発に繋がる可能性を明ら かにした。 7.結論 本研究では、新しい作用機序を有する緑内障治療薬、と くに主経路からの房水流出経路と線維柱帯の収縮弛緩に 着目して、ブタ由来線維柱帯細胞を用いた 3 次元コラーゲ ンゲル培養方法を確立し、多種多様の薬剤を in vitro で簡 便、かつ探索的に評価することを可能にした。また、コラ ーゲンゲル収縮抑制作用を示した薬剤は細胞毒性を介し た場合と介さない場合に分類されることが明らかとなっ た。 コラーゲンゲル収縮抑制を示した薬剤のうち、異性体を 有する roscovtine を正常なウサギに点眼し眼圧下降作用を 検討したところ、両異性体共に眼圧下降作用を示した。さ らに、培養神経節細胞を用いたストレス負荷試験で抗スト レス作用を検討したところ、異性体のうち S 体のみに保護 作用が認められた。 以上より、roscovitine のような CDK 阻害薬が新しい緑 内障治療薬の候補になりうることが明らかとなった。 1) Chauhan, B.C., Mikelberg, A.G. 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Continued, effective, and safe therapies in cancer chemotherapy and pharmacotherapy designs that aim to maintain and improve quality of life in terminal care are particularly challenging in a clinical setting. Therefore, we aimed to establish indicators for pharmaceutical intervention during cancer pharmacotherapy for use by hospital pharmacists. For adjuvant chemotherapy with tegafur/gimeracil/oteracil potassium (S-1) after surgery for stomach cancer, reductions in body mass index during the time before surgery to commencing the administration of S-1 were less in the patients who were able to continue the S-1 treatment (1.68 ± 0.83) than in the patients in whom therapy had to be ceased or reduced (2.78 ± 1.89). Additionally, significant factors correlated with cessation or reduction of S-1 owing to adverse effects included serum albumin levels < 3.5 g/dL and creatinine clearance rates < 80 mL/min. For total parenteral nutrition for home use, when the addition of insulin to total parenteral nutrition could not be avoided, the residual ratio of insulin was reduced if the number of grams of carbohydrates per gram of sodium bisulfite (G/g) was ≤364.6, but not if the number of grams was ≥466.0. Indicators of the terminal stage in patients, such as reduced food intake and abnormalities in kidney or liver function, were used to establish a condition score. In those with scores of ≥6/11 points, steroids had little effect on malaise. In conclusion, the findings of the present study are very useful indicators, for pharmacists, in a clinical setting. They may help to prevent adverse effects and to improve efficacy when implementing pharmaceutical interventions during cancer pharmacotherapy. Key phrases: gastric cancer, cancer chemotherapy, total parenteral nutrition, insulin, terminal stage a) 大垣市民病院薬剤部(〒503-8502大垣市南頬町4-86) Department of Pharmacy, Ogaki Municipal Hospital, (4-86 Minaminokawa-cho, Ogaki, Gifu 503-8502, Japan) b) 岐阜薬科大学実践薬学大講座病院薬学研究室(〒501-1196 岐阜市大学西 1 丁目 25-4) Laboratory of Clinical Pharmacy, Gifu Pharmaceutical University (1-25-4 Daigaku-nishi, Gifu 501-1196, JAPAN) 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 28-36 (2015) 1.緒言 29 上を目的とした処方設計が、臨床上の大きな課題である。 そこで、がん薬物療法時に、病院薬剤師による薬学的介入 がん薬物療法においては、安心かつ安全で質の高いがん のための指標を構築することを目的に大垣市民病院(以後、 医療を提供できるよう、専門性を活かし、医療従事者間の 当院とする)の入院・外来患者を対象に研究を行った。 連携と補完を重視した多職種でのチーム医療を推進する そこで、本総説では、胃がん術後補助化学療法と進行・ 再発胃がん化学療法(first-line、second-line および third-line) 施行時の安全性と治療継続性、在宅用高カロリー輸液の処 方設計として、輸液に添加されたインスリンの残存率と患 者の血糖コントロール、およびインスリンの力価低下の原 必要がある。その役割のひとつは、患者が安心して有効か つ安全な治療を継続できるようにサポートすることであ る。そのために、がん専門薬剤師に求められることの 1 つ が、抗がん剤治療における副作用の管理である。副作用管 理を適切に行うことは、治療の中止や抗がん剤の安易な減 量を行うことなく、治療を完遂することに繋がる。 実臨床においては、副作用の出現により治療が中断され 因について論述する。 2.胃がん化学療法における安全性と治療継続性 ることが少なくなく問題である。数ある抗がん剤の副作用 2-1.術後補助化学療法における S-1 療法 のなかでも頻度が高く、患者が最も苦痛に感じるのは悪 心・嘔吐、便秘や下痢、口内炎などの消化器症状と倦怠感 である。重篤な副作用は患者の quality of life(QOL)を低 下させるだけでなく治療意欲をも低下させることになる。 臨床において、抗がん剤の減量や休薬は、副作用 grade に 応じて行われている。したがって、患者の QOL を低下さ せることなく治療を継続できるように、重篤な副作用が発 現する前に減量・休薬、もしくは治療の変更を行うための 共通な指標が望まれる。終末期ケアにおいては、疼痛に関 しては world health organization(WHO)方式の疼痛治療法 という世界的なスタンダートが確立されているが、倦怠感 の緩和ケアはまだ確立していない。終末期患者への安易な 薬物療法の継続は、逆に副作用の発現を促すことになる。 したがって、薬学的介入のためのエビデンスが望まれる。 近年、化学療法を受ける患者の治療環境は、外来化学療 法が急速に普及してきた。その背景には、制吐剤である 5-hydroxytryptamine3(5-HT3)受容体拮抗剤、好中球減少 に対する granulocyte-colony stimulating factor(G-CSF)製 剤などの支持療法が確立されている点が挙げられる。また、 多くの施設で行われている薬(副作用)の説明書の利用は、 情報提供を行うにあたり簡便で有効な方法の 1 つであり、 Stage II・III 胃がんにおける術後補助化学療法の標準治 療は、tegafur・gimeracil・oteracil potassium(S-1)療法で ある。しかし、白血球減少、好中球減少などの骨髄抑制、 食欲不振、悪心・嘔吐、下痢、口内炎などの副作用により、 コンプライアンスの低下がもたらされ S-1 の継続が困難に なることがある。したがって、S-1 による副作用の発現を 未然に防ぐことができれば、患者の QOL を低下させるこ となく服薬コンプライアンスを上げることができると考 える。 S-1 の治療継続性と非血液毒性の発現率 S-1 による胃がん術後補助化学療法において、Adjuvant Chemotherapy Trial of TS-1 for Gustric Cancer(ACTS-GC) 試験での完遂率は 12 ヶ月で 65.8%であり、その 42.4%は S-1 の投与量を下げることにより継続でき予後が良好であ ったとされている 2)。本検討においても、完遂率は 64.2% (43/67)で同様の結果となった(表 1)。 表 1.治療終了理由 患者指導に役立てられている。我々は、副作用セルフチェ n = 67 ックシートを用いた副作用モニタリングを通して、5-HT3 完遂 受容体拮抗剤(制吐剤)が投薬された患者はがん化学療法 途中で減量なしに完遂 後に便秘の訴えが多いことを把握した。そして、がん化学 (投与初回からの減量は7例) 療法施行時の 5-HT3 受容体拮抗剤併用と便秘の関係を証 し、抗がん剤投与初日からの便秘対策が重要であることを 明らかにした 1)。このことは、現在、病院薬剤師が患者を 指導する上で便秘対策におけるひとつの指標となり、患者 の QOL 向上へと繋がっている。 以上のように、病院薬剤師は、医師と協働して、薬学的 介入、すなわち、患者に最適な薬物療法を提供し、QOL 向上に努める必要がある。特に、がん化学療法においては first-line から second-line および third-line に進むにつれ有効 で安全な治療を継続し、終末期ケアでは QOL の維持・向 途中で減量・投与方法変更し完遂 30 (44.8%) 13 (19.4%) (投与初回からの減量は3例) 服薬コンプライアンス不良 1 ( 1.5%) 中止 副作用により中止 16 (23.9%) (投与初回からの減量は5例) 再発のため中止 6 ( 9.0%) 1 ( 1.5%) 交通事故のため中止 “完遂”の中で服薬コンプライアンス不良の 1 例、“中止”の中で再 発のため中止の 6 例と交通事故のため中止の 1 例は、本検討から 除外した。 木村美智男ら:が ん 薬 物 療 法 に お け る 薬 学 的 介 入 の 指 標 構 築 に 関 す る 研 究 30 S-1 療法における非血液毒性の発現率は、S-1 開始 1 – 3 本検討においても、基準投与量にて S-1 の投与を開始した コース目に多く、途中で減量または中止となる症例では 1 症例と最初から減量して S-1 の投与を開始した症例は、同 コース目に高い副作用発現を認めた。これらのことは、S-1 様な非血液毒性の発現を示した(図 1)。また、初回から の適正使用情報においても 1 コース目に S-1 による副作用 の減量投与例が 10 例存在し継続群としてみなして検討し の発現が高く、原らの 1 – 2 コース目に多く認めるという たが差はなかった。したがって、初回からの減量症例を継 報告 3)とも一致している。標準的な 4 週投与 2 週休薬では、 続群と減量群にそれぞれ含めても問題はないと考える。 3 週目から出現する全身倦怠感や食欲不振などが原因で S-1 の減量または中止に影響を及ぼす因子としては、血 S-1 の継続が困難になる場合があることが報告されている 清アルブミン値(Alb) 3.5 g/dL 未満、クレアチニンクリ 4)。本検討においても、減量または中止症例(29 アランス値(CrCl) 80 mL/min 未満が見出された。また、 例)にお ける原因の多くは同様であった。 術後治療開始までの日数が短い(30 日未満)患者は S-1 の服薬を継続できる傾向がみられた(図 2)。これは、術 A ( ) 副 作 用 発 現 率 % 後早期から S-1 の投薬が可能な患者は、術後の合併症がな 100 100 90 90 80 80 70 70 60 60 く手術侵襲からの回復が早く、栄養学的に十分な状態であ ったことが推察される。 50 50 40 40 30 30 20 20 10 10 00 11 22 33 44 55 66 77 ( ) 副 作 用 発 現 率 % オッズ比( 95% 信頼区間) p値 2.403(0.788‐7.335) 0.1194 年齢 ≧ 70 2.319(0.754‐7.132) 0.1381 術後治療開始日数 < 30 0.351(0.122‐1.011) 0.0597 Alb < 3.5 9.227(1.056‐80.603) 0.0196 CrCl < 80 5.850(1.222‐27.995) 0.0221 BMI < 18.5 0.471(0.095‐2.337) 0.3527 胃切除部位(全摘) 2.008(0.648‐6.220) 0.2234 臨床病期(Ⅲ) 0.777(0.263‐2.293) 0.6477 88 コース数 B 要因 性別(男性) 100 100 90 90 80 80 70 70 60 60 50 50 40 40 30 30 20 20 10 10 00 0.010 継続 11 22 33 44 55 66 77 88 コース数 図 1.非血液毒性の発現率(コース別) A * 基準投与量開始:基準投与量にて S-1 の投与を開始した症例 (n=41) ■ 減量投与量開始:最初から減量して S-1 の投与を開始した症 例(n=18) B ▲ 継続群:S-1 の服薬期間が 8 コース以上の症例(n=30) ● 中止・減量群:副作用により中止または減量した症例(n=29) 0.100 1.000 10.000 100.000 オッズ比 中止・減量 図 2.ロジスティック回帰分析による S-1 の減量または中止に影 響を及ぼす要因解析 Alb:血清アルブミン値、CrCl:クレアチニンクリアランス値、 BMI:body mass index 患者の BMI 減少と治療継続性 手術前から S-1 服薬開始時までの body mass index(BMI) 減少量をみると、中止・減量群は、継続群に比べて有意な 減少を認めた(図 3)。このことは、副作用により S-1 の減 量または中止となるような患者は術後の経口摂取量低下 したがって、副作用軽減のため 2 週投与 1 週休薬、3 週 などにより、体重減少を認めていることを示唆する。 投与 2 週休薬、腫瘍細胞の細胞周期と正常細胞の細胞周期 これらのことより、胃がん術後においては、外科侵襲に 4)などの投与法が検討され、それ よる影響、術後の経口摂取量低下、体重減少、performance らの有用性が報告されている。また、臨床では副作用が発 status(PS)の悪化、がんによる免疫低下などにより、手 現しても休薬期間の延長や減量などにより S-1 の服用を継 術前と比べ体力が十分に戻っていない場合があることが 続することが行われている。しかし、副作用が生じ S-1 の 推測される。胃がん術後症例は手術の結果生じる胃の貯留 投与量を減量しても、血中濃度では十分量が保たれている 機能、調節的排出機能、消化吸収機能などの低下により、 可能性もあるという報告 5)があり、減量後も同様な副作用 栄養障害の状態にあるために、消化器系副作用の発現頻度 が生じる可能性はある。 の高い抗がん剤により早期から副作用を認めたと考えら の差を利用した隔日投与 れる。 S-1 の投与継続性に影響を及ぼす因子 副作用は減量投与例の場合に発現が低いことが予想さ 胃がん術後と 5-Fu の血中濃度 れるが、規定投与例での有害反応の発現率は 66.7%、減量 これまでに、S-1 投与時の fluorouracil(5-FU)血中濃度 投与例の有害反応の発現率は 72.7%であり、1 回投与量と と副作用発現との関係についての検討がなされている。松 副作用との関連が認められなかったという報告がある 本ら 5)は、抗がん剤の area under the blood concentration curve 3) 。 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 28-36 (2015) 31 (AUC)の増加と副作用の発生とは正に相関し、血中 5-FU 化学療法による血液毒性(発熱性好中球減少や血小板数減 の AUC が 800 ng・h/mL を超えると grade 3 以上の副作用 少)の危険因子であるという報告がある 13)。一方、倦怠感、 を認めやすいとしている。Van Groeningen ら 6)や Findlay 食欲不振などの grade 3 以上の非血液毒性は、Alb と CrCl ら 投与時に が低い場合に有意に認められた(表 2)。このことは、 は 5-FU の血中濃度に個人差が大きく、過剰な濃度になっ S-1+cisplatin 療法中、患者に不快な思いを与え QOL に影響 た場合には副作用が出現する可能性が高くなるとしてい を及ぼす。 7)は、胃がん、食道がんの術後患者では、S-1 る。このことは、S-1 による胃がん術後補助化学療法施行 患者は、消化管術後の状態であることから吸収の過程での なんらかの異常が起こり、5-FU の血中濃度に影響を及ぼ す可能性があると推測される。 表 2.CrCl と Alb からみた血液・非血液毒性(grade3 以上)の 発生率 Group 血液毒性 I 3.8% (5/133) 6.0% (8/133) II 8.4% (9/107) 5.6% (6/107) III 7.7% (2/26) 15.4% (4/26) IV 11.4% (5/44) 45.5% (20/44) p=0.0359 55 4.5 3.5 33 2.5 *2 *3 22 1.5 表 3.副作用によって S-1+cisplatin 療法が中止となるリスク因子 の解析 11 0.5 00 継続群 継続群 中止・減量群 中止・減量群 図 3.BMI 減少量 BMI:body mass index、 BMI 減少量=手術前の BMI-S-1 開始前の BMI 継続群の BMI 減少量は 1.68±0.84、中止・減量群の BMI 減少量 は 2.78±1.89 であり、両群間に有意差(p=0.0359)が認められた。 2-2.進行・再発療法における S-1+cisplatin 療法、paclitaxel と irinotecan 療法 現在、進行・再発胃がんに対する first-line としての標準 化学療法である S-1+cisplatin 療法は、S-1 単独療法に比べ 消化器系の副作用が高頻度で発現することが報告されて いる *1 Group I:Alb≥3.5 g/dL and CrCl≥78 Group II:Alb≥3.5 g/dL and CrCl<78 Group III:Alb<3.5 g/dL and CrCl≥78 Group IV:Alb<3.5 g/dL and CrCl<78 *1:p<0.0001、*2:p<0.0001、*3:p=0.0063 44 B M I 減 少 量 非血液毒性 8,9) 。従って、治療に際し高頻度に出現する倦怠感や 消化器系副作用が、患者に苦痛を与えることも少なくない と考えられる。 要因 オッズ比 95%信頼区間 p値 年齢 0.01 < 0.01 – 1.71 性別 (男性) 1.32 0.19 – 9.13 0.4378 1.69 – 167.53 0.0243 PS (≧1 ) 12.62 0.0828 Alb (<3.5 ) 321.14 18.71 – > 999 CrCl (<78) 35.23 3.38 – > 999 0.0123 S-1におけるtreatment dose 0.15 < 0.01 – 5.96 0.3534 Cisplatinにおけるtreatment dose 0.72 0.01 – 48.30 0.8721 治療コース 0.16 < 0.01 – 23.76 0.5185 遅発性嘔吐対策 (無し) 1.83 0.03 – 12.63 0.6327 0.0015 PS:performance status、Alb:血清アルブミン値、CrCl:クレアチ ニンクリアランス値 Treatment dose:実際の投与量×100 / 標準投与量 副作用により治療が中止となるリスク因子として、Alb が 3.5 未満、CrCl が 78 mL/min 未満が見出された。また、 PS によって grade 3 以上の非血液毒性の発現率に差が認め られ、PS≧1 は副作用により治療が中止となるリスク因子 として見出された(表 3)。このことは、S-1 Plus cisplatin 一方、進行・再発胃がん患者に対する second-line 以降と versus S-1 In RCT In the Treatment for Stomach cancer しては、weekly paclitaxel 療法(PTX)、irinotecan 単独療 (SPIRITS)trial 8)では、PS≧1 の場合、S-1+cisplatin 療法 法(CPT-11)、S-1+paclitaxel 療法、S-1+irinotecan 療法な は S-1 単剤療法と治療効果に差がない原因の 1 つであるか どが日常診療において用いられている。そして、生存期 もしれない。副作用により治療が中止となる群では、当初 間の延長は first-line 以降の治療に依存し paclitaxel や から CrCl が低く注意が必要である。CrCl が低いにもかか irinotecan を使い切ることが大切であるとされている 10-12)。 わらず S-1 または cisplatin が減量されていなければ、副作 しかし、second-line、third-line でのがん化学療法は、患者 用が多く発現することは当然である。ティーエスワン適正 状態により治療への忍容性が低下するおそれがある。 使用ガイド(大鵬薬品工業株式会社)では、CrCl が 60 mL/min 以上 80 mL/min 未満の場合は、必要に応じて S-1 First-line としての S-1+cisplatin 療法の安全性評価 本研究において、grade 3 以上の血液毒性の発生は、Alb と CrCl の違いにより差は認められなかった。しかし、栄 養状態を示す指標の 1 つである低アルブミン血症は、がん は 1 段階減量するとある。しかし、今回の結果から、Alb 3.5g/dL 未満の場合は 1 段階減量すべきであると考える。 木村美智男ら:が ん 薬 物 療 法 に お け る 薬 学 的 介 入 の 指 標 構 築 に 関 す る 研 究 32 Second-line としての PTX、third-line としての CPT-11 継続することができると考えられる。 の安全性評価 Second-line(CPT-11)および third-line(PTX)での個別 本検討において、second-line に PTX を行い third-line の副作用をみると、second-line(CPT-11)において、倦怠 (CPT-11)に移行した患者(27.7%)は、移行率が悪い結 感は高い発現率(73.3%)を示した。これは、second-line 果であった。本症例では、second-line 開始時の PS や Alb として paclitaxel 療法を施行した場合(2nd line PTX)にお から、second-line に PTX を行った患者はもともと状態が ける third-line(CPT-11)と同様である。下痢は、third-line よくなかったと考えられる。PTX は腹膜播種を伴っている (PTX)において多く(63.6%)認められた。一方、2nd line 場合に選択されることが多く、高度腹膜播種を含んでいる PTX における second-line(PTX)では 8.5%の発現率にす ため、third-line まで治療ができなかったと推察する。一方、 ぎない。この原因として病状の進行による影響を推測する。 West Japan Oncology Group(WJOG)4007 試験では、高度 腹膜播種は除外されている 14)。すなわち、WJOG4007 試 好中球減少と third-line への移行 験と本検討において、second-line(PTX)から third-line Second-line に PTX または CPT-11 を行い third-line に移 (CPT-11)への移行率の違いは、実臨床と臨床試験との違 行 し た 患 者 に お い て 、 好 中 球 減 少 は third-line よ り いが影響していると考える。本検討において、second-line second-line にて多く認められた(表 4)。Second-line および (PTX)、third-line(CPT-11)における中止事由は、ともに third-line における treatment dose から、これらの患者は progressive disease(PD)または PS の低下による中止が多 third-line にて減量投与されていたわけではない。Shitara く、adverse events(AE)による中止は 1 例のみであった。 ら また、second-line(PTX)および third-line(CPT-11)にお 好中球減少と予後には関係があるとしている。したがって、 ける dose は、ほとんどが 100%であり third-line に移行した third-line での化学療法施行による好中球減少と予後には 患者の状態はよくないにもかかわらず、second-line(PTX) 、 因果関係が予想される。 16)は、second-line にて PTX を施行した患者において、 third-line(CPT-11)において重篤な副作用はほとんどなか った。これらのことより、実臨床において second-line に PTX を行い third-line として CPT-11 を行っても PTX と 表 4.Third-line に移行した患者における second-line および third-line での好中球減少の発現状況 CPT-11 は忍容性があり、治療を継続することができると 2nd line PTX Second-line PTX 考えられる。 Second-line(PTX)および third-line(CPT-11)での個別 の副作用をみると、third-line(CPT-11)において、倦怠感 は高い発現率(76.9%)を示した。重篤な副作用ではなか ったものの、患者状態が悪い場合は重篤になる可能性があ るため注意したい。 Second-line としての CPT-11、third-line としての PTX の安全性評価 Second-line に CPT-11 を行い third-line(PTX)に移行し た患者(73.3%)は、WJOG4007 試験の結果と同等であっ た。Kawamura ら 15)は、副作用が軽度であり、PS に問題が なければ third-line を行うことは適当であるとしている。 本症例では、PS や Alb から、third-line(PTX)に移行でき なかった患者は、second-line(CPT-11)開始時には状態が よくなかったことがいえる。また、third-line(PTX)施行 中は、さらに患者状態が悪化していることが分かる。 Second-line(CPT-11)および third-line(PTX)における dose は、ほとんどが 100%であった。それらにもかかわらず、 second-line(CPT-11)、third-line(PTX)において、重篤な 副作用はほとんどなく AE による中止は 1 例のみであった。 これらのことより、実臨床において second-line に CPT-11 を行い third-line として PTX を行っても second-line および third-line に対して PTX と CPT-11 は忍容性があり、治療を 2nd line CPT-11 Third-line CPT-11 Second-line CPT-11 Third-line PTX total Second-line Third-line 好中球減少 (+) 10 2 5 3 15 5 好中球減少 (-) 3 11 7 9 10 20 P value p=0.0016 p=0.3864 p=0.0039 2nd linePTX:second-line に paclitaxel 療法を施行 2nd line CPT-11:second-line に irinotecan 療法を施行 PTX:paclitaxel therapy、CPT-11:irinotecan therapy 3.在宅用高カロリー輸液の処方設計 3-1.インスリン添加時の残存率の長期試験 と患者の血糖コントロール 手術後や経口摂取不能の患者における糖尿病や耐糖能 低下などによる血糖値の調節・維持を目標として、高カロ リー輸液内にインスリンを添加することは広く行われて いる。これらの患者が HPN(在宅中心静脈栄養:home parenteral nutrition)に移行した場合、インスリンの自己注 射を勧めるが、それが不可能な場合には、訪問看護婦や家 族の介助を得て、毎日点滴内にインスリンを添加するよう に指導している。しかし、これらが実行できないため、薬 剤部であらかじめ高カロリー輸液内にインスリンを添加 したものを投薬せざるを得ない事例を経験した。 これまで、インスリン残存率の検討は全てインスリン添 加後 24 時間までの検討である。そこで、安全かつ適切な 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 28-36 (2015) 33 高カロリー輸液処方を構築し患者に提供することを目的 のインスリン残存率の低下はインスリン自体の力価低下 に、高カロリー輸液内にインスリンを添加した後、その残 によるものであると考えられる。 存率を 7 日目まで測定するとともに患者の血糖値を解析 インスリン残存率と患者の血糖コントロール した。 患者の朝食前、および夕食前の血糖値と投薬日までの日 総合ビタミン剤添加群 数の間に有意な相関はみられなかったが、血糖値は、朝食 総合ビタミン剤無添加群 (%) イ ン ス リ ン 残 存 率 * * 100 90 80 * * * * * 前、夕食前ともに投薬日までの日数に応じて高くなる傾向 を示した。また、朝食前と夕食前の血糖値を比較すると、 * * 70 60 50 40 * * * * * * 2 日目以降では後者において血糖コントロール不良となっ ている(図 6)。 * * * 30 朝食前 朝食前 20 10 0 夕食前 夕食前 (mg/dl) Mean±S.D. 400 400 直後 30min 1h 3h 6h 12h 1h 12h 2日目 1日目 1h 12h 3日目 1h 12h 5日目 Mean±S.D. n=3 * 1h 350 350 12h 7日目 p<0.05 図 4.ソービタ®添加の有無による輸液バッグ内液中のインスリン 残存率の経日的推移 300 300 血 糖 値 250 250 200 200 150 150 100 100 50 00 総合ビタミン剤添加群 総合ビタミン剤添加群 (%) 総合ビタミン剤無添加群 総合ビタミン剤無添加群 イ ン ス リ ン 残 存 率 90 90 80 80 70 70 60 60 50 50 40 40 30 30 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 Mean±S.D. n=3 * p<0.05 100 100 図 6.血糖値の経日的推移 * * * * * 朝食前の血糖値はソービタⓇ無添加の高カロリー輸液を * 投薬している際(21 時から 9 時)の測定値であり、夕食 * 前の血糖値はソービタⓇ添加の高カロリー輸液を投薬して 20 20 10 10 いる際(9 時から 21 時)の測定値である。つまり、これ 00 直後 直後 30min 30min 1h 1h 3h 3h 1日目 6h 6h 12h 1h 12h 1h 12h 12h 2日目 1h 1h 12h 12h 3日目 1h 1h 12h 12h 5日目 1h 1h 12h 12h 7日目 までのインスリン残存率の測定結果より考えれば、朝食前 のインスリン残存率は夕食前の残存率よりも高値を示し ているはずである。それにもかかわらず、実際には夕食前 図 5.ソービタ®添加の有無による滴下液中のインスリン残存率の 経日的推移 の方が血糖コントロールが悪いという結果が生じたこと 輸液バッグ内液中、および滴下液中のインスリン残存率 インスリン残存率が低下したことによる影響が考えられ 高カロリー輸液にソービタ®を添加した場合にも、同様 になる。これは、昼間の光によるインスリン分解により、 る。また、1 日目は最高血糖値と最低血糖値の差が小さい に輸液バッグ、輸液ライン、ファイナルフィルターへのイ のに対し 2 日目以降はそれが大きくなっていた。このこと ンスリン吸着が抑制された。高カロリー輸液内に添加され からも 2 日目以降は血糖コントロール不良となっている たソービタ®は経時的に力価低下することから、ビタミン ことがうかがえる。 補給の観点からはあまり期待できないが、インスリン吸着 の抑制という点では有用であると考える。 しかし、本検討では、その後の輸液バッグ内液、および 滴下液におけるインスリン残存率は、それぞれ 2 日目、3 日目以後は経日的な低下を示した(図 4, 5)。また、試験 管内においても同様に経日的なインスリン残存率の低下 を示し、特に 3 日目以降でその傾向が顕著であった。輸液 バッグ内液ではインスリン添加 1 時間後くらいから、滴下 液では同じく 6 時間後くらいからインスリン残存率がほ ぼ一定となったことより、この時点において輸液バッグ、 輸液ライン、ファイナルフィルターへのインスリン吸着は 飽和状態に達したと考えられる。したがって、これから後 一方、朝食前においては、相関が認められなかったが、 夕食前における血糖値とインスリン残存率との間には相 関が認められた(図 7)。さらに、入院中、高カロリー輸 液投薬当初を除き、血糖コントロールは食事の摂取有無に 関わらず、良好であることより、血糖値の上昇に食事の摂 取が及ぼす影響はないと考えられる。 以上の事実より、経日的インスリン残存率の低下に伴い 患者の血糖値も上昇している可能性を明らかにした。 木村美智男ら:が ん 薬 物 療 法 に お け る 薬 学 的 介 入 の 指 標 構 築 に 関 す る 研 究 34 朝食前 (%) 86 86 r=0.620, p=0.2649 84 84 イ ン ス リ ン 残 存 率 82 82 80 80 78 78 76 76 74 74 72 72 00 50 100 50 150 100 200 150 200 (mg/dL) 血糖値 夕食前 (%) 92 92 r=0.882, p=0.0377 90 90 88 イ 88 ン 86 ス 86 84 リ 84 ン 82 残 82 存 80 率 80 インスリン残存率に影響を及ぼす糖質の種類、およびその 配合比 ユニカリック®L・N に含まれる亜硫酸水素ナトリウムと 78 78 76 76 ムへの影響は考慮しなかった ** 投薬日毎に添加した上室液に含まれる亜硫酸水素ナトリウ ム量 NaHSO3 : 亜硫酸水素ナトリウム、Glu:グルコース、Fru:フル クトース、Xyl:キシリトール YL, YN : ユニカリック®L・N に含まれる亜硫酸水素ナト リウムと糖質量をそれと同じ割合に配合したもの YN-A : YN に含まれるグルコース量をアミノトリパ®1 号・2 号に含まれるグルコース・フルクトース・キシリト ール量に換算して調製したもの YN-Fru : YN に含まれるグルコースをフルクトースに置き換えた もの YN-Xyl : YN に含まれるグルコースをキシリトールに置き換えた もの A1, A2 : アミノトリパ®1 号・2 号の下室に含まれる亜硫酸水素ナ トリウムと糖質量をそれと同じ割合に配合し、投薬日毎に上室液 を添加したもの A1-Glu : A1 に含まれる糖質をグルコースに置き換え、投薬日毎に 上室液を添加したもの A1-Fru : A1 に含まれる糖質をフルクトースに置き換え、投薬日毎 に上室液を添加したもの A1-Xyl : A1 に含まれる糖質をキシリトールに置き換え、投薬日毎 に上室液を添加したもの 糖質量をそれと同じ割合に配合した検体 YL と YN では、 0 50 0 100 50 150 100 200 150 200 血糖値 250 250 (mg/dL) 経日的なインスリン残存率の低下を認め、前者は後者に比 べより低い残存率であった。また、既報 19)より、インスリ ン残存量の測定実験に用いた試験管へのインスリン吸着 図 7.血糖値とインスリン残存率の相関 の影響はない。したがって、この残存率の低下は、浅原ら の報告 17)のようにインスリン自体の分解と思われる。一方、 3-2.インスリンの残存率に及ぼす アミノトリパ®1 号・2 号に含まれる亜硫酸水素ナトリウム 亜硫酸水素ナトリウムおよび糖質の影響 量と糖質量をそれと同じ割合に配合した検体 A1 と A2 で は、7 日間残存率の低下は認められなかった。 インスリンは亜硫酸イオンの存在によって分解が促進 されるが、そこにグルコースが共存するとこの反応は抑制 されるという報告 17)がある。また、既報 18)より、高カロ リー輸液中の亜硫酸水素ナトリウム量と糖質量、糖質の種 類、およびその配合比が、インスリンの残存率に影響を及 ぼすのではないかと推測した。そこで今回は、これを検証 すべく各種の検体を調製し(表 5)、インスリンの長期残 存率に対する亜硫酸水素ナトリウムおよび糖質の影響を 検討した。 次に、ユニカリック®N に含まれるグルコースをフルク トース、およびキシリトールに置き換えた検体 YN-Fru と YN-Xyl、そしてアミノトリパ®1 号・2 号に含まれるグル コース、フルクトース、キシリトールの配合比(4 : 2 : 1) に換算して調製した検体 YN-A では、インスリン残存率は いずれも YN とほぼ同様な経日的推移を示し、7 日目には 大きく残存率が低下した(7 日目の 24 時間後のインスリ ン残存率は、YN が約 84%、YN-A が約 84%、YN-Fru が約 89%、YN-Xyl が約 86%である)。一方、アミノトリパ®1 表 5.ユニカリック®L・N およびアミノトリパ®1 号・2 号をモデ ルにした各検体の組成 号に含まれるグルコース・フルクトース・キシリトールの 総量をグルコース量、フルクトース量、キシリトール量に 置き換えた検体 A1-Glu、A1-Fru、A1-Xyl では、いずれも ® ® 対象 ® *ユニカリック L *ユニカリック N 検体 コントロール YL YN YN-A YN-Fru YN-Xyl NaHSO3 (g/100mL) 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 ® *アミノトリパ 1号 A1 0.05 A1-Glu 0.05 ** A1-Fru 0.05 ** 0.05 ** *アミノトリパ 2号 A1-Xyl A2 0.05 ** (+ 0.02)(+ 0.02)(+ 0.02)(+ 0.02) 0.05 ** (+ 0.02) Glu(g/100mL) ― 13.02 18.2 10.4 ― ― 13.3 23.3 ― ― 16.7 Fru(g/100mL) ― ― ― 5.21 18.23 ― 6.7 ― 23.3 ― 8.3 Xyl(g/100mL) ― ― ― 2.61 ― 18.23 3.3 ― ― 23.3 4.2 13.02 18.2 18.2 18.23 18.23 23.3 23.3 23.3 23.3 29.2 0 260.4 365 365 364.6 364.6 466.0 466.0 466.0 466.0 584.0 計 G/g A1 と同様に 7 日間残存率の低下を認めなかった。なお、 YL と A2 に含まれる糖質の種類、およびその配合比を変 えた YL 系と A2 系については、実験を行わなかった。何 故ならば、YN 系における YN-A、YN-Fru、YN-Xyl および A1 系における A1-Glu、A1-Fru、A1-Xyl は、それぞれ糖質 *今回の実験において、ユニカリック®L・N およびアミノトリパ ® 1 号・2 号に含まれる電解質や有機酸による亜硫酸水素ナトリウ の種類およびその配合比を変えたものがインスリン残存 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 28-36 (2015) 35 率に影響を及ぼすかどうかを検討した。すなわち、YN 系 有意差が認められた(図 8)。また、それらのインスリン および A1 系においてインスリン残存率に差がない場合に 残存率と G/g の間には有意な相関関係が認められた(図 9)。 は、YL 系および A2 系についても同様のことが推察され これらのことより、G/g の上昇とともにインスリンの分 解が抑制されたことがうかがえる。さらに、A1 と A2 に るからである。 これらのことより、高カロリー輸液に添加されたインス おけるインスリン残存率は 90%超であり有意差が認めら リンの残存率には、糖質の種類、およびその配合比は関与 れず、G/g が少なくとも 466.0 以上であるとインスリンは せず、亜硫酸水素ナトリウム量と糖質量が影響を及ぼすこ 7日間安定であった。 一方、アルデヒド基をもつグルコースを含む多くの輸液 とが検証された。 剤では、亜硫酸水素ナトリウムの存在下で bisulfite-glucose 付加物を形成する。それゆえ、グルコースが亜硫酸水素ナ * * * 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 イ ン ス リ ン 残 存 率 トリウム存在下でのインスリンの安定化に関与している * (%) 100 * Mean±S.D. n=3 * p<0.05 と考えられている 17)。また、前述の結果より、糖質の種類 * の違いは、インスリン残存率に影響を及ぼさないことから、 フルクトースとキシリトールもグルコースと同様に、亜硫 酸水素ナトリウムと付加物を形成し、インスリンの安定化 に間接的に関与していることが推測される。 コントロール YL YN A1 A2 0 260.4 364.6 466.0 584.0 *G/g 以上のことより、溶液中の G/g が 364.6 以下の場合、イ ンスリン残存率は低下し、さらに G/g が小さいとその低下 に及ぼす影響も大きくなる。一方、少なくとも、G/g が 466.0 図 8.コントロールと検体 YL、YN、A1、A2 におけるインスリ ン残存率の比較(7 日目の 24 時間後) * G/g:亜硫酸水素ナトリウム 1g に対する糖質のグラム数 事実により、今後、在宅用高カロリー輸液にインスリンを 添加して投薬せざるを得ない場合に、より安定性の高い製 剤を選択する上で、ひとつの指標になることが明らかにな r=0.961 p<0.05 (%) 以上の場合にはインスリン残存率は低下を示さない。この った。 100 イ ン ス リ ン 残 存 率 5.結論 80 60 本研究では、がん薬物療法時に、病院薬剤師による薬学 40 的介入のための指標を構築することを目的に、がん化学療 20 法と在宅輸液療法における薬物療法の安全性と継続性を 検討し、以下に示す知見を得た。 0 0 100 200 300 400 500 亜硫酸水素ナトリウム1gに対する糖質のグラム数 図 9.G/g とインスリン残存率の相関 始めに、胃がん化学療法時の安全性と継続性について後 ろ向き調査を行った。胃がん術後の補助療法としての S-1 療法において、副作用により S-1 の減量または中止となる ような患者は、術後の経口摂取量低下などにより体重減少 亜硫酸水素ナトリウムとグルコース量の関係 を認めていることを明らかにした。進行・再発胃がん化学 浅原ら 17)は、インスリンは亜硫酸イオンの存在により分 療法である S-1+cisplatin 療法(first-line)においては、副 解が促進されるが、グルコースを添加することにより濃度 作用により治療が中止となるリスク因子として、1)Alb 3.5 依存的に分解が抑制されるとしている。すなわち、このこ g/dL 未満、2)CrCl 78 mL/min 未満、3)PS 1 以上が見出 とは亜硫酸イオン量に対しグルコース量が多ければ、イン された。これらのリスク因子を有する患者に対して、S-1 スリンの分解が抑制されることを意味する。したがって、 又は cisplatin を 1 段階減すべきであることを明らかにした。 このことを検証すべく亜硫酸水素ナトリウム 1g に対する 進行・再発胃がんにおける second-line および third-line 時 糖質のグラム数(G/g)を用いて本実験結果の解析を行っ の paclitaxel と irinotecan は、重篤な副作用がほとんどなく た。先ず、各検体の G/g はコントロールが 0、YL が 260.4、 治療を継続することが可能である。しかし、paclitaxel に YN 系が 364.6、A1 系が 466.0、A2 が 584.0 であった。こ おいては third-line における下痢の発現、irinotecan におい れらの中で、コントロール、YL、YN、A1 の 7 日目の 24 ては、second-line および third-line ともに倦怠感の発現には 時間後のインスリン残存率を比較すると、それらの間には 特に注意する必要があることを明らかにした。 次に、在宅用高カロリー輸液の処方設計として、輸液に 木村美智男ら:が ん 薬 物 療 法 に お け る 薬 学 的 介 入 の 指 標 構 築 に 関 す る 研 究 36 添加されたインスリンの残存率と患者の血糖コントロー ル、およびインスリンの力価低下の原因を追究した。その 結果、経日的インスリン残存率の低下に伴い患者の血糖値 も上昇していることを明らかにした。高カロリー輸液に添 加されたインスリンの残存率には、糖質の種類、およびそ の配合比は関与せず、亜硫酸水素ナトリウム量と糖質量が 影響を及ぼすことが検証された。また、溶液中の亜硫酸水 素ナトリウム 1g に対する糖質のグラム数(G/g)が 364.6 以下の場合には、インスリンの残存率は低下を示し、G/g が小さいとその低下に及ぼす影響は大きいが、466.0 以上 の場合には低下を示さないことが示唆された。 以上、本研究において得られた知見は、臨床に携わる薬 剤師が、がん薬物療法時に薬学的介入を実践する際の極め て有用な指標となり、副作用の予防および治療効率の向上 に貢献できると考える。 6.謝 辞 本研究に際し、ご指導とご鞭撻を賜りました元岐阜薬科 大学実践薬学大講座病院薬学研究室教授 土屋照雄先生、 岐阜薬科大学実践薬学大講座実践社会薬学研究室教授 杉山正先生に深く感謝します。 本研究を実施する機会を与えていただき、ご理解とご協 力を賜りました岐阜県薬剤師会会長(元 大垣市民病院薬 剤部長)山崎太先生、大垣市民病院薬剤部長 同薬剤部 森博美先生、 吉村知哲先生、ならびにセコムメディファーマ 株式会社(元 大垣市民病院薬剤部)一川悦子先生に心よ り感謝いたします。 7.引用文献 1) 木村美智男, 宇佐美英績, 安田忠司, 亀井桂太郎, 磯谷 正敏, 医療薬学, 33, 863-868 (2007). 2) Sakuramoto S., Sasako M., Yamaguchi T., Kinoshita T., Fujii M., Nashimoto A., Furukawa H., Nakajima T., Ohashi Y., Imamura H., Higashino M., Yamamura Y., Kurita A., Arai K., N. Engl. J. Med., 357, 1810-1820 (2007). 3) Hara A., Tokuhara T., Takahashi Y., Izumi N., Iwamoto S., Satake K., Jpn. J. Cancer. Chemother., 31, 601-604 (2004) 4) Arai W., Hosoya Y., Hyodo M., Yokoyama T., Hirashima Y., Yasuda Y., Nagai H., Shirasaka T., Int. J. Clin. Oncol., 9, 143-148 (2004). 5) Matsumoto H., Hirai T., Hirabayashi Y., Murakami H., Higashida M., Kawabe Y., Fuchimoto M., Fujikura H., Hato S., Urakami A., Yamashita K., Tsunoda T., Jpn. J. Cancer Chemother., 34, 869-873 (2007). 6) Van Groeningen C.J., Pinedo H.M., Heddes J., Kok R.M., de jong A.P., Wattel E., Peters G.J., Lankelma J., Cancer Res., 48, 6956-6961 (1988). 7) Findlay M.P.N., Raynaud F., Cunningham D., Iveson A., Collins D.J., Leach M.O., Clinical Cancer Res. Ann. Oncol., 7, 47-53 (1996). 8) Koizumi W., Narahara H., Hara T., Takagane A., Akiya T., Takagi M., Miyashita K., Nishizaki T., Kobayashi O., Takiyama W., Toh Y., Nakagi S., Yamamura Y., Yanaoka K., Orita H., Takeuchi M., Lancet, 9, 215-221 (2008). 9) Koizumi W., Tanabe S., Higuchi K., Sasaki T., Nakayama N., Mihara S., Nakatani K., Nishimura K., Shimoda T., Azuma M., Katada C., Hanaoka N., Naruke A., Ryu T., Ishido K., Saigenji K., Jpn. J. Cancer Chemother., 33, 57-63 (2006). 10) Shitara K., Matsuo K., Mizota A., Kondo C., Nomura M., Takahari D., Yokota T., Ura T., Ito S., Sawaki A., Tajika M., Kawai H., Muro K., Gatric Cancer, 14, 155-160 (2011). 11) Thuss-Patience P.C., Kretzschmar A., Bichev D., Deist T., Hinke A., Breithaupt K., Dogan Y., Gebauer B., Schumacher G., Reichardt P., Eur. J. Cancer, 47, 2306-2314 (2011). 12) Kang J.H., Lee S.I., Lim do H., Park K. W., Oh S. Y., Kwon H. C., Hwang I. G., Lee S. C., Nam E., Shin D.B., Lee J.,Park J. O., Park Y. S., Lim H. Y., Kang W. K., Park S. H., J. Clin. Oncol., 30, 1513-1518 (2012). 13) Kloft C., Wallin J., Henningsson A., Chatelut E., Karlsson M. O., Clin. Cancer Res., 12, 5481-5490 (2006). 14) Ueda S., WJOG4007trial. American Society of Clinical Oncology, 48th Annual Meeting 2012, Abstract#4002. 15) Kawamura H., Yokota R., Watarai H., Yokota K., Tanioka T., Tsunoda Y., Masuko H., Tanaka K., Yamagami H., Hata T., Okada K., Ishizu H., Kondo Y., Jpn. J. Cancer Chemother., 37, 1051-1054 (2010). 16) Shitara K., Matsuo K., Takahari D., Yokota T., Shibata T., Ura T., Ito S., Sawaki A., Tajika M., Kawai H., Muro K., Annals of Oncology, 21, 2403-2409 (2010). 17) Asahara K., Yamada H., Yoshida S., Chem. Pharm. Bull., 39, 2662-2666 (1991). 18) 木村美智男, 一川悦子, 森博美, 山崎太, 医療薬学, 29, 230-236 (2003). 19) 木村美智男, 一川悦子, 森博美, 山崎太, 医療薬学, 28, 108-115 (2002). 8.特記事項 本総説は、岐阜薬科大学博士論文(乙 357 号)の内容を 中心にまとめたものである。 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 37-45 (2015) 37 ―総説― 光化学反応を利用する新規炭素-酸素 及び炭素-炭素結合形成反応に関する研究 崔蕾, 伊藤彰近* 要約:近年、有機合成化学の分野においては、「ヒトと環境に優しい化学技術」いわゆる「グリーンケミストリー」の概 念を念頭において研究を進めることが必要不可欠となっている。特に化学反応へのエネルギー供給は、「グリーンケミス トリー」を実践する際に重要なファクターの一つである。「光」は質量がなく、反応後も副産物を出さない特長を有する 非常に優れた試薬として考えることができる。本研究では環境負荷低減を目指し、試薬としての「光」を利用した新規炭 素-酸素及び炭素-炭素結合形成反応の開発を行った。その結果、光化学反応を用いたジェミナルジヒドロペルオキシドの 新規合成法の開発、光酸素酸化を利用したワンポットエポキシ化反応の開発、及びフルオラスケミストリーに基づく新規 反応の開発に成功した。 索引用語:光化学、有機分子触媒 Development of Novel C-O and C-C Bond-forming Photochemical Reactions Lei CUI, Akichika ITOH* Abstract: Recently, environmentally friendly chemical technologies, classified under ‘green chemistry,’ have been the focus of increased attention. It is imperative for us to consider environmental concerns. Among others, energy supply for reactions is a significant factor in practical applications. Light is an important factor in many reactions; therefore, it can be described as a type of reagent. Because this clean reagent leaves behind no residue and has neither shape nor weight, it is an important component in examinations of environmentally benign processes. In this paper, we report our recent work using light as a reagent in reactions. As a result, we have developed a series of reactions driven by light. Key phrases: Photochemical Reaction, Organocatalyst 1.緒言 「光」は質量がなく、反応後も副産物を出さない特長を トラキノン類を用いたときも同様に高収率でカルボン酸 類を得ることに成功した (Scheme 1)。1) 有する、非常に優れた試薬として考えることができる。光 エネルギーを効率的に化学反応へ変換するために光増感 剤を用いる方法が広く研究されている。これまで主として 用いられてきた遷移金属触媒に対し、有機分子触媒は一般 に金属触媒に比べ安価で、廃棄物の毒性が低いものが多い ことから注目を集めている。 当研究室では光と分子状酸素を用いる光酸素酸化につ いて検討を行っており、一般的に酸化されにくい芳香環上 メチル基は触媒量の臭化マグネシウム存在下、対応するカ ルボン酸へ収率良く酸化されることを見出した。さらに、 臭化マグネシウムの代わりに有機分子光触媒であるアン Scheme 1.1 光化学反応の発展空間は非常に広いと考えられるが、 「光」を試薬として用いたメタルフリーな反応は限られて おり、検討の余地がある興味深い分野である。そこで、以 下の目的を念頭に置き、光化学反応に基づく新規反応の開 発検討を行うこととした。 岐阜薬科大学創薬化学大講座合成薬品製造学研究室(〒501-1196 岐阜市大学西 1 丁目 25-4) Laboratory of Organic Chemistry, Gifu Pharmaceutical University (1-25-4 Daigaku-nishi, Gifu 501-1196, JAPAN) 崔蕾ら:光化学反応を利用する新規炭素-酸素及び炭素-炭素結合形成反応に関する研究 38 i) 環状ペルオキシド化合物の重要な中間体として注目 (entries 6 - 10)。次にアルデヒド、芳香族ケトンについて検 されているジェミナルジヒドロペルオキシド 討を行ったところ、芳香族アルデヒドでは良好な収率で (gem-dihydroperoxide: gem-DHP)の環境負荷低減合成法の gem-DHP を得ることができたが、脂肪族アルデヒドでは 開発 gem-DHP ではなくヒドロキシヒドロペルオキシドが生成 ii)フルオラス化合物の光化学反応における展開検討 することが分かった (enties 11, 12)。また、芳香族ケトン の一つであるアセトフェノン (1m) は反応性が低く対応 2.ジェミナルジヒドロペルオキシドの新規合成法の開発 する gem-DHP は低収率だった (entry 13)。 2.1.過酸化水素によるジェミナルジヒドロペルオキシ ドの簡便無触媒合成 Table 2.1 Study of reaction conditions アーテミシニンは多剤耐性マラリアにも有効な天然物 である。2)その活性部位はエンドペルオキシド構造である と考えられており、また様々な環状ペルオキシド構造を有 する化合物の抗マラリア作用が確認されている。このよう な背景の中、環状ペルオキシド化合物の重要な中間体であ る gem-DHP が近年注目を集めており、その合成法につい て多くの検討がなされている。3) gem-DHP はケトンやアル デヒドをジヒドロペルオキシ化して合成するのが一般的 であるが、これまでに報告されている合成法のほとんどが 高濃度の過酸化水素が必要、或いは強酸や重金属などの触 媒が必要であるという問題点を有している。そこで、より Table 2.2 Syntheses of gem-dihydroperoxides 簡便な方法を目指し、まず過酸化水素を用いる gem-DHP の無触媒合成を検討した。 一般に過酸化水素による酸化は、溶媒の影響が非常に大 きいことが知られている。4) そこでまず溶媒検討を行った (Table 2.1)。調査基質として 4-tert-butylcyclohexanone (1a) を 0.3 mmol 用い、アルゴン雰囲気中各種溶媒 (3 mL) に 35%過酸化水素水を加え、室温にて攪拌した。調査した内、 メタノール、ジクロロメタンでは収率が低く(entries 1 and 2)、ジエチルエーテル、トルエンでは中程度の収率で目的 の gem-DHP が得られた (entries 3 and 4)。さらに、酢酸エ チル、tert-ブチルメチルエーテル、アセトニトリル、イソ プロパノールでは良好な収率で gem-DHP を得ることがで き た (entries 5 - 8) 。 調 査 し た 溶 媒 の 中 で は 特 に 1,2-dimethoxyethane (DME)が最も高収率で目的物を与える ことが分かった(entry 9)。一般に極性溶媒は良い収率を示 しており、また、溶媒の酸性度も大きく反応に影響してい ること、及び水素結合能が高い溶媒ほど効率良く gem-DHP を与えていることが分かる。さらに entry 9 から 11 は過酸 化水素の当量について検討した結果を示すが、反応を速や かに進行させるためには 5 当量の過酸化水素が必要であ ることが分かった。 以上の最適化の結果をもとに一般化の検討を行った (Table 2.2)。一般的な六員環ケトンを基質に用いた場合は、 Table 2.1 に示すように、本反応が極性溶媒で水素結合能 高収率で対応する gem-DHP を得ることができた (entries 1 の高い DME 溶媒において非常に良い収率を示しているこ - 4)。2-Methylcyclohexanone (1e) では立体障害のため、中 とより、反応機構を次のように推測している。まず溶媒で 程度の収率となった (entry 5)。また、その他の環状ケトン ある DME と過酸化水素が水素結合することにより反応性 および直鎖の脂肪族ケトンにおいても反応はスムーズに が高められる。活性化された過酸化水素は、基質のカルボ 進行し、いずれも良好な結果を与えることが分かった ニル炭素を攻撃し、ヒドロキシペルオキシド (3)を生成す 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 37-45 (2015) 39 る。3 は脱水を経て、ペルオキシカルベニウムイオン (4) 反応が全く進行しなかったことから、これらの要素が必須 になり、更にもう一分子の過酸化水素が攻撃することによ と考えられる。 り、目的の gem-DHP へ変換されるものと考えられる 以上の最適化条件を用いて、本反応の一般化について検 討した (Table 2.4)。一般的なケトン類を基質に用いた場合 (Scheme 2.1 )。 は、対応する gem-DHP を良好な収率で得ることができた (entries 1 - 10)。アルデヒド類はキセノンランプを用いた合 成法と同様に、対応する目的物は全く得られないか或いは 低収率となった (entries 11 and 12)。また、アセトフェノン (1m) については反応時間を 72 時間に延長して検討を行 ったが、収率は改善されなかった (entry 13)。 Table 2.4 Syntheses of gem-dihydroperoxides Scheme 2.1 2.2.酸素酸化によるジェミナルジヒドロペルオキシド の合成 一方で過酸化水素は優れた酸化剤ではあるが、その爆発 性や皮膚への腐食性の問題が依然として危惧される。そこ で、試薬として過酸化水素を用いない gem-DHP の環境負 荷低減型合成法を目指し、光酸素酸化反応の適用を検討す ることにした。 同様に 4-tert-butylcyclohexanone (1a)を調査基質とし、 種々の検討を行った結果を Table 2.3 に示した、Entry 1 に 示すように、光源として 500 W キセノンランプ、溶媒と して i-PrOH、光増感剤としてはアントラセンを用いると 良好な収率で gem-DHP を与えることが分かった。また、 entry 3 に 示し ま す よ う に 、 増 感 剤 に ア ン ト ラ キ ノ ン (Anthraquinone: AQN)を用いると、汎用蛍光灯からの可視 光照射でもスムーズに反応が進行することを見出した。溶 媒においては i-PrOH が最も適しており、触媒としてアン トラキノンを 0.1 当量用いた時に最も効率よく反応が進行 した (entry 3)。Entries 10 - 12 に示すように、触媒が存在し ない場合、光を照射しない場合及び酸素が存在しない場合、 Table 2.3 Study of reaction conditions fluor ece nt lamp, O2 catalyst (equiv) O t OOH OOH solvent, r t, 20 h Bu 1a (0 .3 mmol) entry 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 a) 1 t 2a solvent i Pr OH Pr OH i Pr OH A cO Et MeO H i Pr OH i Pr OH i Pr OH i Pr OH i Pr OH i Pr OH i Pr OH i catalyst (e quiv) anthracene (0.02) AQN ( 0.1) AQN ( 0.1) AQN ( 0.1) AQN ( 0.1) AQN ( 0.2) AQ N (0.05) AQN ( 0.1) AQN ( 0.1) no ne 9,1 0-cyanoa nthr ace ne (0 .1) methylene blue (0.1 ) H NMR analysis. b) Irrad iated by 5 00 W Xe lamp. c) This reaction was car ried out in th e dar k. d) The r eaction was carrie d out under Ar. 次に本反応の反応機構を解明するために検討を行った。 酸素雰囲気中、イソプロパノール (5 mL) にアントラセン Bu yie ld (% ) a) 90 b) 70 b) 1 00 0 tr ace 76 84 0 c) 0 d) 0 0 0 (0.006 mmol) あるいはアントラキノン (0.03 mmol) を加 え、それぞれキセノンランプまたは汎用の蛍光灯から外部 照射した。その後反応混合物にイソプロパノール (10 mL)、 酢酸 (1 mL)、飽和ヨウ化カリウム水溶液 (3 mL) を順次加 えて 5 分間加熱還元した後、0.1 M チオ硫酸ナトリウム水 溶液によるヨードメトリー滴定を行った。その結果、キセ ノンランプから 10 時間外部照射した場合は 4.62 mmol の チオ硫酸ナトリウムが必要であり、汎用の蛍光灯から 20 時間外部照射した場合は、6.57 mmol のチオ硫酸ナトリウ ムが必要であった。Scheme 2.2 に示すように、本滴定にお いて一分子の過酸化水素に対し、二分子のチオ硫酸ナトリ 崔蕾ら:光化学反応を利用する新規炭素-酸素及び炭素-炭素結合形成反応に関する研究 40 ウムが必要である。従ってこの検討結果は、過酸化水素あ ら検討されている。しかしながら、これまでのフルオラス るいはヒドロぺルオキシドが系中で発生していることを タグ導入法のほとんどは、基質にハロゲン等の置換基を必 示している。 要とするクロスカップリング反応であった。6) より基質選 択性が広く、環境負荷低減型な導入法の開発が望まれる。 Scheme 2.2 3.1.可視光と分子状酸素を用いる新規オキシラクトン 化反応の開発 さらに、調査基質である 1a (0.3 mmol) をイソプロパノ 一般にラクトン骨格は生理活性を有する様々な化合物 ールに溶解し、酸素雰囲気中触媒量のアントラセンあるい に広く見られる重要な構造である。このため、簡便で一般 はアントラキノンを加え、それぞれキセノンランプまたは 性のあるラクトン合成法の開発が重要であり、これまでに 汎用の蛍光灯から外部照射した後、1H NMR 解析を行った 様々な反応が開発されてきた。7) その中で、オキソカルボ ところ、基質に比べ過剰量のアセトンが系中に存在してい ン酸を原料とするオキソラクトンの生成法として、2009 ることが分かった。 年に K. Ishihara らは、メタクロロ過安息香酸(m-chloroper そこでヨードメトリーの結果と光、酸素および光増感剤 oxybenzoic acid: m-CPBA)を再酸化剤とすることで触媒量 が必須であることを考慮し、本反応のメカニズムを次のよ のヨードベンゼンを用いる酸化的オキシラクトン化反応 うに考えた (Scheme 2.3)。酸素雰囲気中、触媒量の光増感 を報告している。8) 剤存在下、光を外部照射することで、イソプロパノールは そこで、有機分子増感剤を用いた光酸素酸化反応に適応 励起された光増感剤より水素を引き抜かれ、及びラジカル させると、添加物を加えない場合反応は進行しなかったが 種 (5) を与える。5 はもう 1 分子の励起した光増感剤によ (Scheme 3.1、(1))、添加物として無水トリフルオロ酢酸 り、アセトンへと変換される。一方で、水素引き抜きを行 (TFAA) を加えると、少量のケトラクトン (9a)が得られた った光増感剤は酸素をトラップし、ラジカル種 (6)を与え、 と同時に、エノールラクトン (10a)の生成が認められた 更に過酸化水素を生成するものと考えられる。系中で発生 (Scheme 3.1、(2))。 した過酸化水素が基質のカルボニル化合物と反応し、ヒド ロキシヒドロぺルオキシド 7 を経て、gem-DHP を与える もの推測している。 Scheme 3.1 エノールラクトンも酸化的オキシラクトン化反応の出 発物質として利用できが、それらの反応は当量以上のハロ ゲンソースの使用や紫外光が必要など、必ずしも環境に優 しいものとは言えない。9)また、その適用性も狭いことか Scheme 2.3 ら、更なる環境負荷低減型プロセスの開発が望まれる。そ こで今回、酸素雰囲気中、蛍光灯からの可視光照射下検討 3.フルオラスケミストリーに基づく新規反応の開発 一般に反応の活性化は、様々な因子が影響するが、その を行った。 まず、調査基質として 4-ベンゾイル酪酸 (8a)を 0.3mmol 中でも、前項でも述べたように、溶媒は最も大きいものの 用い、3 当量の TFAA 存在下、汎用の蛍光灯からの可視光 一つといえる。フルオラス (fluorous) とは親フルオロカー を照射し、種々の溶媒について検討を行なった。その結果 ボン性という意味の造語で、フルオラス化合物とはペルフ を Table 3.1 に示す。本反応では、目的の 9a 以外に、10a ルオロカーボン置換基を有する化合物を示す。その点にお もプロトン NMR 解析により生成されていることが分かっ いて、フルオラス溶媒は、酸素の溶解度が高く、酸素酸化 た。酢酸エチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン及 反応に適した溶媒と期待できる。 しかし、これらの特徴 びアセトンは、低収率で目的の 9a を与えた (entries 1 - 4)。 5) を利用した光化学反応は筆者の知る限り皆無であり、フル クロロホルム、ヘキサン、シクロヘキサン、HFE-7200 及 オラス化合物の光化学反応への展開は開発空間の広い分 び FC-77 を用いた場合、良好な収率を得ることができた 野であると考えられる。 (entries 5 - 9)。 その中でも特に entry 10 に示すように、FC-72 非フルオラス化合物のフルオラス化反応もまた、古くか を用いた場合に最も良い収率で目的の 9a を得ることが出 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 37-45 (2015) 41 来た。また、無溶媒条件では収率が低かった (entry 11)。 肪族五員環ケトラクトンは紫外光の照射が必要であり、低 Table 3.1 Study of solvent 収率に留まった (entry 10)。また六員環ケトラクトン及び 4 員環ケトラクトンを得ることはできなかった (entries 11 and 12)。 Table 3.3 Syntheses of ketolactones substrate 8 (0.3 mmol) en try fluor ece nt lamp, O2 TFAA (3 equiv.) FC-72, time pr oduct 9 produ ct ti me yield (%) a) O O 1 O 15 69 10 70 15 80 20 66 15 70 15 16 72 58 72 58 72 53 15 13 72 0 72 0 9a O O O 2 9b O O 3 O 9c tB u O O O 4 9d F O O O 5 次に、添加物の検討結果を Table 3.2 に示す。筆者が調 24 9 Cl O 査した中では、TFAA を用いた時のみ反応が進行し (entries O O 6 1 and 2)、また、entry 2 に示すように、2 当量の TFAA を用 9f MeO いた場合収率が低下したことから、TFAA は少なくとも 3 O 当量必要であることが分かった。TFAA を加水分解して得 7 O b) O 9g られるトリフルオロ酢酸 (TFA) を用いた場合でも反応は O 進行しなかった (entry 3)。 8 O b) O 9h Table 3.2 Study of additives O O O 9 9i O 10 c) O Me O 9j O 11 O b) O 9k O 12 b) O O 9l a) c) Iso lated yields. b) This reaction was carr ied o ut wi th 6.0 equi v of TFAA. This reactio n was ir radiated by 400 W UV lamp. 本反応のメカニズムを解明するために、エノールラクト 以上得られた条件をもとに、各種オキソカルボン酸を用 いて本反応の一般化について検討を行った (Table 3.3)。電 子供与基及び電子求引基を有するものはともによい収率 で対応するケトラクトンへと変換された (entries 1 - 5)。し かし、メトキシ基を有する基質では複雑な混合物を与え、 低収率でしかケトラクトンを得ることができなかった (entry 6)。また、立体的に混み合っている基質及びナフチ ル基を有するものでは、TFAA の当量を増やし反応時間を 72 時間に延長することで、対応するケトラクトンを良好 な収率で得ることが出来た (entries 7 - 9)。それに対し、脂 ン 10a を基質として用い様々な検討を行なった。まず、 TFAA を加えた場合収率が増加したことから、TFAA が反 応を促進していることが分かった (entries 1and 2)。また、 酸素が存在しない場合及び光を照射しない場合、目的のケ トカルボン酸がほとんど生成されなかったことから、本反 応には酸素及び光が必須であると考えられる。 崔蕾ら:光化学反応を利用する新規炭素-酸素及び炭素-炭素結合形成反応に関する研究 42 Table 3.4 Study of the reaction mechanism 促進しているものと考えられる。なお、本反応のメカニズ ムの詳細は未だに解明されておらず、今後更なる検討が必 要である。 3.2.有機光触媒を用いる光酸化還元的直接トリフルオ ロメチル化反応に関する研究 トリフルオロメチル基は様々な医薬品などに使用され る重要な置換基の一つである。なぜならば、多くの場合そ の導入は化合物の溶解度や親油性といった物理的性質を また、ラジカルスカベンジャーであるガルビノキシルを 変え、膜通過性を高め、生理活性を増加させる。10) それ 加えた場合、エノールラクトンが主として得られたことか ゆえ、これまでに多くのトリフルオロメチル化反応が開発 ら、10a から 9a を生成する反応はラジカル的に進行して されてきた。中でも、芳香環へのトリフルオロメチル基の いると推測できる。 導入法は盛んに研究されてきたが、これらの多くは基質に 次に、エノールラクトン 10a のフロンティア軌道の電子 ハロゲンやボロン酸等の置換基や配向基を必要とするク 状態を計算し、反応機構を解析した (Figure 3.1)。その結 ロスカップリング反応であった。これに対し、近年盛んに 果、10a は HOMO より LUMO に一電子励起するとき、C1C2 検討されているのは、芳香環への直接的トリフルオロメチ 間の二重結合性が弱まり、C1C3 間の二重結合性が増すこ ル化である。11) これらの反応は予め置換された基質を必 とが分かった。 要とせず大変有用であるが、その多くが金属触媒、活性が 高く不安定な試薬や過激な反応条件を必要としており、グ リーンケミストリーの概念に適ったものとは言えない。12) 一方で、2011 年に D. W. C. MacMillan らはルテニウム触 媒存在下、トリフリルクロライドを用いた直接光酸化還元 的トリフルオロメチル化反応を報告した。13)また、バラン らはトリフルオロメチルスルフィン酸ナトリウムを用い た、メタルフリーなトリフルオロメチル基のヘテロ環への 導入反応を報告している。14) Figure 3.1 HOMO and LUMO of 25a calculated by HF /6-31G(d). HOMO: −8.51 eV; LUMO: 2.88 eV. しかし、遷移金属触媒及び不安定な試薬や爆発性のある 試薬の使用など、改善すべき点がある。そこで今回、固体 で比較的に取り扱いやすいトリフルオロメチルスルフィ ン酸ナトリウムを用いて、メタルフリーな光酸化還元的直 接トリフルオロメチル化反応の開発について検討を行っ た。更に、より多数のフッ素原子を有するフルオラスタグ の導入についても検討した。 まず、調査基質として 1, 3-ジメトキシベンゼン (14a)を 用い、4 当量のトリフルオロメチルスルフィン酸ナトリウ ム存在下、添加物としてトリフルオロ酢酸 (TFA)を 0.06 当量加え、汎用の蛍光灯からの可視光を照射し、種々の触 媒について検討を行なった (Table 3.5)。アントラキノン (AQN) 類及び 9, 10-ジシアノアントラセン (DCA)では良 い結果が得られ、その他の色素系増感剤では低収率で目的 Scheme 3.2 以上の検討結果を踏まえると、本反応においてオキソカ ルボン酸 8a は TFAA によりエノールラクトン 9a へと変換 される。エノールラクトン 10a は光により光励起したのち に、酸素が付加し一連のラジカル反応を経てケトラクトン 9a を生成するものと考えられる (Scheme 3.2)。また、溶 媒である FC-72 の高い酸素溶解度及び濃縮効果は反応を 物を与えた。その結果よりアントラキノン-2-カルボン酸 (AQN-2-CO2H) を用いた時に最も良い収率を得ることが できた (entry 1)。 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 37-45 (2015) Table 3.5 Study of catalyst 43 延長やトリフルオロメチルスルフィン酸ナトリウムの当 量を増やすことが必要なものの、良好な収率で反応が進行 した (entries 8 - 10)。トリフルオロメチル化の位置選択性 は基質の電子分布や立体障害による影響を受けており、電 子密度が高く立体的に空いている場所が優先的に反応す ると考えられる。しかし原因については不明であるが、 entry 10 に示す 1-メチル-2-ピリドンを基質として用いた場 合、5 位ではなく 3 位がトリフルオロメチル化された。さ らに、1, 3, 5-トリメトキシベンゼンを基質に用い、反応さ せるスルフィン酸ナトリウム塩を変えることで、各々対応 次に添加物として、種々のブレンステッド酸、ルイス酸、 塩基を用いて検討を行った (Table 3.6)。その結果、entry 1 するフルオラスタグの導入にも成功した (entries 11 - 14)。 Table 3.8 Syntheses of perfluoroalkyl compounds (1) Ar, h (fluorescent lamp) AQN-2-CO2H (0.05 equiv) TFA (0.06 equiv) に示すように TFA を用いた時に最も効率よく反応が進行 した。また、TFA 無しでは収率が低下したことから、TFA が反応を促進していることが分かった (entry 2)。 substrate CF3SO2Na (0.15 mmol) (4.0 equiv) entry Table 3.6 Study of additives substrate MeO 1 product CH3CN (3 mL), 20 h product MeO OMe OMe CF3 4 14a time 2 yield a) 30 76 30 44 30 75 30 73 30 89 40 75 20 69 36 62 72 82 20 55 15a 2-CF3 : 4-CF3 = 1 : 2 MeO MeO CF3 2 OMe 14b OMe OMe 3 15b OMe OMe b) OMe 14c 15c F3C MeO 4 MeO Me MeO 5 MeO CF3 MeO Me MeO OMe 14d OMe 15d 14e OMe 最後に溶媒について検討を行った (Table 3.7)。アセトニ トリル、酢酸エチル及びアセトンを用いた場合、良い収率 OMe MeO 4 4-CF3 : 5-CF3 = 6 : 5 MeO MeO CF3 MeO OMe 7 OMe 14g MeO として用いるとトリフルオロメチル化は全く進行しなか O った。 Table 3.7 Study of solvents 15f 5 MeO は低収率で目的の化合物を得ることができた (entries 4 and 5)。しかし、ヘキサン及びテトラヒドロフランを溶媒 CF3 MeO 14f が得られた (entries 1 - 3)、クロロホルム及びメタノールで 15e OMe OMe MeO 6 CF3 Me 8 O Me N N N N O 15g 14h O CF3 N Me Me N N N 15h Me Me CF3 9 c) MeO OMe N N MeO 14i OMe N OMe O N 15i OMe Me 10 N Me 14j O N 15j F3C a) 最適化された条件をもとに、各種アレーン及びヘテロア レーンを用いて本反応の一般化について検討を行った (Table 3.8)。電子供与基を有するアレーン誘導体はどれも 良い収率でトリフルオロメチル置換体へと変換された (entries 1 - 7)。また、ヘテロアレーンの場合には、時間の Isolated yield. b) 3-CF3 was presented in trace yield. c) 8 equiv of CF3SO2Na was added. 崔蕾ら:光化学反応を利用する新規炭素-酸素及び炭素-炭素結合形成反応に関する研究 44 4.結論 Table 3.8 Syntheses of perfluoroalkyl compounds (2) substrate R fSO2Na ( 0.15 mmo l) entry 11 12 13 14 a) (4.0 equiv) 得ることに成功した。今回見出した合成法は取り扱いの容 pro duct OMe MeO 14b OMe OMe OMe R f Rf R Rf f Rf time = = = = C2F 5 C3F 7 C6F 13 C8F 17 ことにより、無触媒条件下対応する gem-DHP を収率良く pr oduct CH 3CN (3 mL), 20 h substr ate MeO 以上、まず過酸化水素水をおよび DME を溶媒に用いる Ar, h ν (fluor escent l amp ) AQN-2-CO2H (0.05 equiv) TFA (0.06 e quiv) 15K 15l 15m 15n 30 60 72 50 yield a) 79 83 76 92 Isolated yield. 易な 35%過酸化水素水を用いた非常に簡便な手法である。 次に、光増感剤としてアントラセンを用いることにより、 分子状酸素を利用する gem-DHP の合成に初めて成功した。 さらに光増感剤をアントラキノンに代えることで、汎用の 蛍光灯からの可視光照射でも本反応がスムーズに進行す 本反応のメカニズムを解明するために、Table 3.9 に示す ることを見出した。本反応は、原子効率の高い分子状酸素 検討を行った。光を照射しない場合及び触媒であるアント を用いている点、安全で安価な有機分子触媒を用いている ラキノン類が存在しないとき全く反応が進行しなかった 点などの特長を有しており、機合成上有用な反応と言うこ とこから、本反応には光及びアントラキノンが必須である とができる。 ことが分かる (entries 1 and 2)。さらに entry 3 に示すよう また、TFAA 存在下、溶媒として FC-72 を用い、酸素雰 に、ラジカルスカベンジャーであるガルビノキシルを 1 当 囲気中汎用の蛍光灯からの可視光照射により、オキソカル 量加えた場合、トリフルオロメチル化が全く進行しなかっ ボン酸を対応するオキソラクトンへ収率良く変換するこ たことから、本反応はラジカル反応であると推定できる。 とに成功した。 Table 3.9 Study of the reaction mechanism 最後に、トリフルオロメチルスルフィン酸ナトリウム存 在下、触媒としてアントラキノン-2-カルボン酸、添加物 としてトリフルオロ酢酸を用い、汎用の蛍光灯からの可視 光照射により、アレーン及びヘテロアレーンへの直接的な トリフルオロメチル基導入に成功した。また、スルフィン 酸塩を変えることで高度にフッ素化されたフルオラスタ グを導入することにも成功した。本反応はメタルフリーな 光酸素酸化還元的トリフルオロメチル化反応で、操作方法 以上の検討結果及びサイクリックボルタンメトリーの 測定より、本反応のメカニズムを次のように考える が簡便である点、有機分子触媒を用いている点、人体に無 害な可視光を用いている点などの特徴を有している。 (Scheme 3.3)。まず、光によって励起したアントラキノン これらの反応は従来法に比べ、環境負荷が低減され、グ とトリフルオロメチルスルフィン酸イオンの間で一電子 リーンケミストリーの概念に適った有機合成上有用な合 移動が起こり、ラジカル種 (16) を生成する。その後二酸 成法であるといえる。 化硫黄 (17) が脱離することで、トリフルオロメチルラジ カル (18) が得られる。このラジカル種 (18) がアレーン 5.謝辞 (19) 及びヘテロアレーンとカップリングし、更に分子軌 本研究に際して御懇意なる御指導と御鞭撻を賜りまし 道生産により本ラジカル種は非常に強い酸化力を持って た岐阜薬科大学合成薬品製造学研究室・三浦剛准教授 いることが分かったので、後のトリフルオロメチルアレー (現・東京薬科大学教授)、多田教浩講師に深甚なる感謝の ン (21) 生成における酸化剤としても作用すると推測で 意を表します。 きる。一方で、二酸化硫黄はアントラキノンラジカルアニ オン (AQN ・- 本研究に際して有益な御助言、並びにフロンティア軌道 ) から電子を受け取ることにより、アント の電子状態の計算及びサイクリックボルタンメトリーの ラキノン (AQN) へ変換させ、触媒サイクルを完成させる 測定をして頂きました岐阜薬科大学薬品分析化学研究 ものと考えられる。 室・宇野文二教授に衷心より感謝の意を表します。 元素分析およびマススペクトルを測定していただきま した岐阜薬科大学機器センター・細川美知子副手、林雅子 副手、堀田美春氏に感謝致します。 また本研究全般にわたり御協力頂きました岐阜薬科大 学合成薬品製造学研究室各位に感謝致します。 Scheme 3.3 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 37-45 (2015) 6.引用文献 1) (a) Hirashima, S.; Itoh, A. Green Chem. 2007, 9, 285. (b) Hirashima, S.; Itoh, A. Photochem. Photobiol. Sci. 2007, 6, 521. (c) Tada, N.; Hattori, K.; Nobuta, T.; Miura, T.; Itoh, A. Green Chem. 2011, 13, 1669. 2)(a) Masuyama, A.; Wu, J. M.; Nojima, M.; Kim, H. S.; Wataya, Y. Mini-Rev. Med. Chem. 2005, 5, 1035. (b) Tang, Y. Q.; Dong, Y. X.; Vennerstrom, J. L. Med. Res. Rev. 2004, 24, 425. (c) Wiesner, J.; Ortmann, R.; Jomaa, H.; Schlitzer, M. Angew. Chem., Int. Ed. 2003, 42, 5274. (d) Borstnik, K.; Paik, I. H.; Shapiro, T. A.; Posner, G. H. Int. J. Parasitol. 2002, 32, 1661. 3) (a) Terent'ev, A. O. Synth. Commun. 2007, 37, 1281. (b) Isakra, J. J. Org. Chem. 2007, 72, 6534. (c) Bunge, A. Tetrahedron Lett. 2009, 50, 524. 4) Amewu, R.; O’Neill, P. M. Org. Biomol. Chem. 2006, 4, 4431. 5) (a) Clark, L. C.; Gollan, F. Science, 1966, 152, 1755. (b) Riess, J. G.; Le Blanc, M.; Pure Appl. Chem., 1982, 54, 2383. 6) Xiao, J. –C.; Ye, C.; Shreeve, J. M. Org. Lett. 2005, 7, 1963. 7) general oxylactonizations see: (a) Yamada, K.; Kato, T.; Hirata, Y. J. Chem. Soc., Chem. Commun., 1969, 1479. (b) Igarashi, K.; Mori, Y.; Takeda, K.; Steroids, 1969, 13, 627. (c) Solujic, S.; Sukdolak, S.; Ratkovic, Z. Tetrahedron Lett., 1991, 32, 4577. (d) Moriarty, R. M.; Vaid, R. K.; Hopkins, T. E.; Vaid, B. K.; Prakash, O. Tetrahedron Lett., 1990, 31, 201. (e) Huang, X.; Zhu, Q.; Zhang, J. J. Chem. Research (S), 2001, 480. (f) Hou, R.-S.; Wang, H.-M.; Lin, Y.-C.; Chen, L.-C. J. Chin. Chem. Soc., 2005, 52, 1029. (g) Hou, R.-S.; Wang, H.-M.; Lin, Y.-C.; Chen, L.-C. Heterocycles, 2005, 65, 649. 8) (a) Uyanik, M.; Yasui, T.; Ishihara, K. Bioorg. Med. Chem. Lett. 2009, 19, 3848. (b) Uyanik, M.; Suzuki, D.; Yasui, T.; Ishihara, K. Angew. Chem. Int. Ed. 2011, 50, 5331. 9) (a) Warren, S. Tetrahedron Lett. 1986, 27, 101. (b) Margaretha, P. J. Chem. Soc., Chem. commun. 1986, 1477. 10) Müller, K.; Faeh, C.; Diederich, F. Science 2007, 317, 1881 11) For a review, see: Studer, A. Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 8950. 12) For example of trifluoromethylation, see: (a) Kino, T.; Nagase, Y.; Ohtsuka, Y.; Yamamoto, K.; Uraguchi, D.; Tokuhisa, K.; Yamakawa, T.; J. Fluorine Chem. 2010, 131, 98. (b) Tordeux, M.; Langlois, B.; Wakselman, C. J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1 1990, 2293. (c) Nalumann, D.; Wilkes, B.; Kischkewitz, J. J. Fluorine Chem. 1985, 30, 73. (d) Kischkewitz, D. Nalumann, Kischkewitz, J. J. Fluorine Chem. 1990, 47, 283. (e) Nalumann, D.; Kischkewitz, J. J. Fluorine Chem. 1990, 46, 265. (f) Sawada, H.; Nakayama, M.; Yoshida, M.; Yoshida, T.; Kamigata, N. J. Fluorine Chem. 1990, 46, 423. (g) Yoshida, M.; Yoshida, T.; Kobayashi, M.; Kamigata, N. J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1 1989, 909. (h) Tanabe, Y.; Matsuo, N.; Ohno, N. J. Org. Chem. 1988, 53, 4582. (i) Langlois, B. R.; Laurent, E.; Roidot, N. Tetrahedron Lett. 1991, 32, 7525. (j) Ji, Y.; Brueckl, T.; Baxter, R. D.; Fujiwara, Y.; Seiple, I. B.; Su, S.; Blackmond, D. G.; Baran, P. S. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2011, 45 108, 14411. (k) Fujiwara, Y.; Dixon, J. A.; O'Hara, F.; Funder, E. D.; Dixon, D. D.; Rodoriguez, R. A.; Baxter, R. D.; Herlé, B.; Sach, N.; Collins, M. R.; Ishihara, Y.; Baran, P. S. Nature 2012, 492, 95. (l) Kamigata, N.; Fukushima, T.; Yoshida, M. Chem. Lett. 1990, 649. (m) Kamigata, N.; Ohtsuka, T.; Fukushima, T.; Yoshida, M.; Shimizu, T. J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1 1994, 1339. (n) Ye, Y.; Lee, S. H.; Sandord, M. S. Org. Lett. 2011, 13, 5464. (o) Mejia, E.; Togni, A. ACS Nano 2012, 2, 521. 13) Nagib, D. A.; MacMillan, D. W. C. Nature 2011, 480, 224. 14) Ji,Y.; Brueckl, T.; Baxter, R. D.; Fujiwara, Y.; Seiple, I. B.; Su, S.; Blackmond, D. G. and Baran, P. S. PNAS. 2011, 108, 14411. 7.特記事項 本総説は、岐阜薬科大学博士論文(甲 157 号)の内容を 中心にまとめたものである。 多田幸雄:ス ル ホ ニ ウ ム 化 合 物 の 物 理 化 学 的 性 質 に 基 づ い た 抗 ア レ ル ギ ー 薬 の 開 発 46 ―総説― スルホニウム化合物の物理化学的性質に基づいた 抗アレルギー薬の開発 多田幸雄 要約:I 型アレルギー反応は、肥満細胞に結合している IgE に抗原が結合することで、細胞内顆粒に貯蔵されている各種 ケミカルメディエーターが放出されることにより惹起される。既存の抗アレルギー薬は、メディエーター遊離抑制薬およ び、ヒスタミン H1 拮抗薬、トロンボキサン阻害薬、ロイコトリエン拮抗薬であった。そこで、I 型アレルギー反応の原 因である IgE の作用を特異的に阻害できればアレルギー疾患の根本的な治療に繋がると考え、従来のメカニズムとは異 なる新しい抗アレルギー薬の開発を目指した。メチル基転移反応がアレルギー反応に関わっているのではないかという考 えに基づき、生体内メチル基供与体である S-adenosylmethionine は sulfonium 化合物であることと、S-methylmethionine (methylmethionine sulfonium chloride) がモルモットの抗体産生を増強することから、これをシード化合物とした。次いで、 sulfonium 化合物の種々の物理化学的性質と抗アレルギー作用および急性毒性との構造活性相関解析による、論理的な分 子設計を実施した。その結果、抗アレルギー薬: Suplatast Tosilate として認可された sulfonium 化合物 54b を創製するこ とができた。 索引用語:IgE、抗アレルギー薬、sulfonium 化合物、Suplatast Tosilate Development of Anti-allergic Drugs Using the Physicochemical Properties of a Sulfonium Compound Yukio TADA Abstract: Type I allergic reactions are caused by various chemical mediators released from mast cell by combining antigens and IgE antibodies. The existing anti-allergic drugs are mediator suppressants, histamine H1 antagonists, thromboxane inhibitors, and leukotriene antagonists. However, drugs that specifically inhibit IgE activity are expected to be efficacious for the treatment of type I allergic diseases. We sought to develop a new anti-allergy drug that functions outside the conventional mechanism. Methylmethionine sulfonium chloride (S-methylmethionine) was selected as a seed compound, because it reinforces guinea pig antibody production and may affect allergic reactions. We analyzed the structure-activity relationship between physical chemical properties and sulfonium compound-induced anti-allergic action or toxicity for rational molecular drug design. Based on these efforts, we identified sulfonium compound 54b, which was launched as Suplatast Tosilate. Key phrases: IgE, anti-allergic drug, sulfonium compound, Suplatast Tosilate 1.緒言 容体に結合した IgE と外来抗原との間に生じた抗原抗体 反応により、肥満細胞からヒスタミン、ロイコトリエン、 アレルギーとは免疫反応が特定の抗原に対して過剰に 血小板活性因子(PAF)、プロスタグランディン、トロンボ 亢進していることをいう。即時型アレルギーとも呼ばれる キサン等のケミカルメディエーターが放出されることに I 型アレルギー反応は IgE が関与するアレルギーである。 より、血管透過性の亢進や平滑筋収縮等のアレルギー反応 IgE は、抗原を認識した抗原提示細胞である樹状細胞によ が惹起される (Chart 1) 。その代表的な疾患としては、気 りナイーブ T 細胞が活性化された Th2 細胞が産生する 管支喘息、アレルギー性皮鼻炎(花粉症を含む)、蕁麻疹、 IL-4、IL-5、IL-13 のサイトカインによる刺激で、B 細胞が アトピー性皮膚炎等がある。 活性化され IgE が産生される。そして、肥満細胞の IgE 受 東京工業大学大学院総合理工研究科(226-8503 神奈川県横浜市緑区長津田町 4259) Interdisciplinary Graduate School of Science and Engineering, Tokyo Institute of Technology (4259 Nagatsuta-cho, Midori-ku,Yokohama, Kanagawa, 226-8503 JAPAN) 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 46-55 (2015) 47 c ナイーブ T 細胞 HPFC (T/C) compd 抗原提示細 (樹状細胞) Th2 細胞 IgE 抗原 肥満細胞 (IgE 受容体) Chart 1. 脱顆粒 サイトカイン産生 活性化 1 IL4, IL5, IL13 刺激 B 細胞 ケミカルメディエーター アレルギー I 型アレルギー反応の過程 I 型アレルギー反応は抗原と IgE により惹起されるので、 この IgE の作用を特異的に阻害し、生体防御機能の担い手 である IgM および IgG の作用は抑制しない薬が開発でき れば、アレルギー疾患の根本的な治療に繋がると考え、こ れまでとはメカニズムの異なる新しい抗アレルギー薬の πcalcd R NH2 CH2CH2CH a b LD50 (ip)(mmol/kg) -3.33 6 dose(mg/kg) /spleen /10 cell 500 1.42 1.42 1.27 >14.86 2 COOH CH2CH2NHCOCH 3 -1.26 4.46 160 1.23 3 CH2CH2OH -0.77 3.7 120 2.1 1.96 4 CH2CH2OCH3 -0.37 1.1 120 1.21 1.23 5 CH2CH2COOH -0.29 4.13 120 1.15 1.35 6 CH2CH2OCOCH3 0.17 2.96 100 1.38 1.38 7 CH2 0.26 1.35 100 1.07 1.22 8a CH3 0.56 0.72 _ _ _ 9 CH2CH2SCH 3 0.66 0.62 20 1.19 1.31 0.79 1.32 100 1.07 1.01 1.55 1.2 40 1.09 1.14 12 2.63 0.78 30 1.18 0.93 13 3.26 0.43 20 1.06 0.84 O O 10a CH2CH2 11 CH2CH2CH3 a b πcalcd was calculated by CLOGP (ver. 2.0.0). The value of LD50 was determined in male ddY c mice (n=5) by the up-down method at intraperitoneal administration. HPFC (T/C): HPFC formation of treatment / HPFC formation of control at intraperitoneal administration. 開発を目的として研究を開始した。 疎水性の低い置換基として 3-amino-3-carboxypropyl 基 2.第1リード化合物 3 の創製 (π calcd = - 3.33) を有する化合物 18) から、疎水性の高い置 換基として adamantyl 基 (π calcd = 3.26) を持つ化合物 13 の 研究を開始するに当たって、メチル基転移反応がアレル 腹腔内投与によるマウス急性毒性 (LD50)9) および HPFC ギー反応において重要ではないかという考えに基づいて 産生増強作用を測定した。HPFC (T/C) は化合物投与と非 その具体的な化合物を検討した。当時、メチル基転移反応 投与時の HPFC 産生の比を示した (Table 1)。毒性が低い抗 はアレルギー反応における肥満細胞の膜の流動化や好塩 アレルギー薬を開発することを目標としたので、HPFC 産 基球の細胞膜におけるメチル化反応に関連していること 1)-3)。 生試験の投与量は急性毒性 LD50(ip) の 1/10 程度を目安と 一方、生体内のメチル基転移反 した。置換基の疎水性が極めて低い化合物 1 は、非常に低 応 に お け る 唯 一 の メ チ ル 基 供 与 体 で あ る い毒性 (LD50 > 14.86mmol/kg = 5,000mg/kg) であり、疎水 が報告されていた S-adenosylmethionine は sulfonium 化 合 物 で あ り 、 性 の 高 い 化 合 物 13 は 最 も 強 い 急 性 毒 性 (LD50 = methylmethionine sulfonium chloride (S-methylmethionine) 0.43mmol/kg) を示した。また、化合物 5 が低毒性であっ は、モルモットにおいて抗体産生を増強させることが報告 たことから、sulfonium 化合物の置換基として carboxyl 基 されていた 4)-5) 。 の導入は毒性軽減のひとつの手段となることが示唆され そこで、S-methylmethionine をシード 化合物とし、リード化合物探索を実施した。 はじめに、Table 1 に示した dimethylsulfonium tosylate 誘 た。ここで、例外的に毒性の低い化合物 1 を除いた残り の 12 化合物において、化合物の急性毒性 (LD50) と置換 導体 (1-13) を合成し、免疫活性作用を有する sulfonium 化 基の疎水性 (π calcd) との定量的構造活性相関解析を行い、 合物を見出すために、IgM、IgG 抗体産生に及ぼす作用を 相関式 (1) を得た。以後、式において、n は化合物数、r は 検討した。方法としては、ヒツジ赤血球で免疫されたマウ 相関係数、s は標準偏差を示し、係数は 95%信頼限界を満 スに sulfonium 化合物を腹腔内投与し、IgM および IgG 足している。式 (1) は疎水性の高い置換基を導入するに hemolytic plaque forming cell (HPFC) 産生 6) への影響を調 従って、急性毒性が強くなること示しており、急性毒性の べた。物性としては置換基 R の疎水性を考慮した。 観点からはできるだけ疎水性の低い置換基が望ましいこ 一般に化合物の疎水性の指標としては n-オクタノール/ とが示唆された。 水系における分配係数 (P) の対数値 logP が用いられる。 また、置換基の疎水性の指標としては、置換基導入による 実測 logP の増減分を表す疎水性置換基定数 π が用いら れる。しかし、水溶性の極めて高い sulfonium 化合物の分 配係数の実測は困難であったため、CLOGP (ver. 2.0.0)7)に よる logP の計算による π calcd 値を用いた。 Table 1. マウスにおける LD50(ip) および HPFC 産生 増強作用 (CH3)2S+ - R CH3 SO3 - log(1/LD50) = 0.201 π calcd – 0.275 (n =12, r = 0.774, s = 0.229) (1) 一方、例外的に HPFC の産生増強作用が強かった化合物 3 を除いた 11 化合物( 1, 2, 4 -7, 9, 10a, 11-13)に関して、脾 臓あたり (/spleen) および 106 細胞あたり (/106cells) にお ける HPFC の産生増強作用と化合物の置換基の疎水性 (π calcd) との相関を検討した。脾臓あたり (/spleen) と疎水 性(π calcd) の間には有意な相関式は得られなかったが、106 細胞あたり (/106cells) に対して式 (2) が得られた。この 多田幸雄:ス ル ホ ニ ウ ム 化 合 物 の 物 理 化 学 的 性 質 に 基 づ い た 抗 ア レ ル ギ ー 薬 の 開 発 48 上に凸の2次式 (2) より、HPFC 産生増強作用に最適な疎 ン酸塩 (10a)と塩酸塩(10b)を用いた。sulfonium 化合物 水性置換基定数値 (π calcd) は − 2.75と計算される。従って、 10a,b の 50mM 溶液を第 1 水相とし、24 時間撹拌し、 化合物 1 (π calcd = −3.33) が疎水性の観点からは最も望ま 1,2-dichloroethane の液膜を介して第 2 水相へ sulfonium 化 しい化合物に近く、このタイプの sulfonium 化合物では、 合物が移行する輸送速度 (k) を測定した (Table 3)。 これ以上疎水性の低い化合物を検討する必要ないと判断 Table 3. 化合物 10a,b の会合定数(K)と輸送速度(k) した。 log (/106cells) = - 0.006 π calcd2 - 0.033 π calcd + 0.101 (n = 11, r = 0.900, s = 0.046) compd 10a 10b (2) ところで、化合物 3 のメチルエステル誘導体である化合 物 6 は弱い HPFC 産生増強作用しか示さなかったことから、 hydroxyl 基が、HPFC 産生増強作用および毒性軽減の観点 からも重要な置換基であると考えられる。化合物 1, 2, 4-7, 9, 10a, 11-13 と異なって hydroxyl 基を有する化合物 3 は HPFC 産生増強作用が強く急性毒性も低かったので、化合 物 3 を抗アレルギー薬開発の第 1 リード化合物に選定した。 3.Sulfonium 化合物の対アニオンの決定 Sulfonium 化合物は有機塩の一種であり、無機塩と異な a Λ∞ 56.90 95.08 a b K 1.81 0.58 c -7 2 k ( x 10 mol/hr・cm ) 3.03 0.003 Λ ∞: limiting conductance (10 4 S m 2 mol-1 ). b K: association constant. ck: transport rate. 塩酸塩(10b) に比べて p -トルエンスルホン酸塩(10a) は イオン対会合定数(K)で約 3 倍、輸送速度(k)において約 1,000 倍の値を示した。また、p -トルエンスルホン酸塩(10a) と等量の NaCl を加えた時の輸送速度 k は 2.83 x 10-7 mol/hr. cm2 であり化合物 10a 単独の場合と比べて殆ど変 化しなかった。従って、sulfonium 化合物はトシラートア ニオンを対アニオンとすることで、より好ましい消化管吸 収が期待できると考えた。以上の結果より、医薬品として は塩酸塩が一般的であるが、本研究を進めるに当たっては って有機溶媒にも溶解するが、水に極めて溶け易い性質を sulfonium 化合物の対イオンとして、トシラートアニオン 持っている。この様に親水性の高い sulfonium 化合物が経 (TsO-) を選択した。 口投与された際に、消化管から吸収され易い対アニオンを 見出すために、水相と有機相の分配に関連する sulfonium 4.Sulfonium 化合物の物理化学的性質と 化合物の物理化学的性質を検討した。4 級アンモニウム化 生物活性との相関解析 合物では形成したイオン対が適度の脂溶性を持つことで 消化管吸収が促進されることが知られている。そこで、 Sulfonium 化合物の methyl 基の反応性と抗体産生および sulfonium 化合物として最も基本的な trimethylsulfonium の 急性毒性との相関を解析するために、sulfonium 化合物の p -トルエンスルホン酸塩(8a)、過塩素酸 (8b)、および塩酸 H-D 交換反応速度 (kobsd/HD) およびメチル基転移反応速 塩 (8c) 水溶液の電気伝導度を測定し、イオン対会合定数 度 (kobsd/trans) を測定した。 (K)10)を求めた。その値 K の大きさは、塩酸塩 < 過塩素 酸塩<p-トルエンスルホン酸塩の順であった (Table 2)。 Sulfonium 化合物の化学的な特徴の一つに、sulfonio 基に 隣接するアルキル基水素原子のアルカリによる水素-重水 素 (H-D) 交換反応があり、その H-D 交換速度 (k obsd/HD) 11) Table 2. Trimethylsulfonium 化合物 8a,b,c の会合定数(K) を NMR 測定により求めた。硫黄原子に不飽和炭素原子が 結合している sulfonium 化合物 (14-20) の H-D 交換速度は、 a compd Λ∞ a Kb 8a 71.48 0.88 飽和炭素原子が結合している sulfonium 化合物 (3-5, 9, 11, 8b 104.71 0.74 12) に比べて 10 倍以上大きかった (Table 4)。しかし、こ 8c 108.15 0.51 れらの sulfonium 化合物の H-D 交換速度と HPFC 産生増強 L∞: limiting conductance (104 S m 2 m ol-1 ). b K : association constant. 作用との間には何の相関も見られなかった。 消化管吸収に関わる化合物の疎水性の指標として、一般 一方、マウス腹腔内投与による急性毒性 (LD50) に関し には flask shaking 法による n-オクタノール/水系の分配係 て、置換基として hydroxyl 基または carboxyl 基を有する 5 数 (P ) が用いられる。しかし sulfonium 化合物の n-オクタ 化合物 (3, 5, 17, 19, 20) は、他の化合物に比べて急性毒性 ノールに対する分配は非常に小さく、これを正確に測定す が低くかった。そこで、これらの 5 化合物 (3, 5, 17, 19, 20) ることが困難であったので、分配係数に代わる指標として に対しては擬変数 I = 1.0 を、 その他の 8 化合物(4, 9, 11, 12, 1,2-dichloroethane の液膜を用いて輸送速度 (k) を測定し 14-16, 18)には I = 0 を与えて H-D 交換速度と急性毒性と た の相関を解析すると、式 (3) が得られた。 11) 。化合物としては、比較的疎水性の高い tetrahydrofurylethyl 基を有する化合物の p -トルエンスルホ log(1/LD50) = 0.252 logk obsd/HD - 0.651 I + 0.633 (3) 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 46-55 (2015) H-D 交換反応速度とメチル基転移反応速度はどちらも (n = 13, r = 0.924, s = 0.169) この様に定性的、属性的な変数として擬変数 (I) を用い て解析することにより、hydroxyl 基または carboxyl 基を有 する化合物も含めて、 H-D 交換反応の速い sulfonium 化合 物ほど急性毒性が強くなる傾向にあることが分かった。 a No b k obsd/HD d e c 6 Σπ i calcd (mmol/kg) dose (mg/kg) /spleen /10 cell k obsd/trans 0.43 1305 120 2.1 1.96 -4 0.83 323.9 120 1.21 1.23 + 5 (CH3)2S CH2CH2COOH 5.76 ± 0.76 x 10 3.41 ± 0.61 x 10-4 0.91 1271 30 1.17 1.41 -3 1.86 190.4 20 1.19 1.31 -4 2.75 331.7 40 1.09 1.14 -4 3.83 248.6 30 1.18 0.93 3 (CH3)2S CH2CH2OH 2.51 ± 0.30 x 10 4.36 ± 0.21 x 10 4 (CH3)2S+CH2CH2OCH3 7.43 ± 0.71 x 10 6.39 ± 0.85 x 10 の低い化合物を得るためにはこの反応性の低い化合物、即 ち置換基が全てアルキル基であることが望ましいという 結論を得た。 また、急性毒性に関して、sulfonium 化合物の疎水性と を CLOGP (ver. HPFC (T/C) -4 + sulfonio 基の反応性の高さを示しており、出来るだけ毒性 して sulfonio 基の 3 つの置換基の疎水定数の和 (Σπi Table 4. Sulfonium 化合物の物性と生物活性 LD50 (ip) 49 TsO- 2.0.0)7) calcd) を用いて計算した。式 (3)、(4) と 同じく、擬変数 I を用いると式 (5) が得られ、式 (1) と 同様にこれらの化合物においても、sulfonium 化合物の疎 水性が高くなるほど急性毒性は強くなることが分かった。 TsO- log (1/LD50) = 0.112 Σπi calcd - 0.523 I + 0.482 (n = 13, r = 0.863, s = 0.224) TsO+ 9 (CH3)2S CH2CH2SCH3 3.98 ± 0.71 x 10 1.51 ± 0.12 x 10 (5) TsO+ 11 (CH3)2S CH2CH2CH3 1.32 ± 0.17 x 10 2.54 ± 0.81 x 10 + 12 (CH3)2S 2.97 ± 0.19 x 10 5.42 ± 0.43 x 10 TsO- 5.第 2 リード化合物 23 の創製と構造最適化 抗アレルギー薬開発のスクリーニング法として I 型アレ TsO- + 14 (CH3)2S 9.99 ± 1.3 x 10 -2 1.80 ± 0.27 x 10 -1 3.08 128.8 2.5 1.22 1.59 -1 3.02 126.3 2.5 1.01 1.16 2.54 111.7 2.5 1.34 1.61 1.18 996.3 25 0.95 1.08 TsO- 15 (CH3)2S+ homologous passive cutaneous anaphylaxis (PCA)13)を用いて、 OCH3 6.72 ± 0.88 x 10 1.82 ± 0.33 x 10 TsO- 16 (CH3)2S + TsO- 17 (CH3)2S+ ルギー反応のモデルである IgE 抗体で誘発した 48 時間 -1 COCH3 1.23 ± 0.15 x 10 7.57 ± 1.2 x 10 COOH 4.08 ± 0.54 x 10 1.23 ± 0.22 x 10 第 1 リード化合物の構造展開を行った (Table 5)。 Table 5. 第 1 リード化合物 3 の構造展開 -1 a 18 S+ 1.92 ± 0.29 x 10 -1 6.64 ± 0.90 x 10 1.08 ± 0.19 x 10 -1 8.28 ± 1.1 x 10 2.84 185.1 5 0.93 0.85 CH3 TsO- CH3 19 CH3 20 a S+ CH2CH2OH TsO- S+ CH2CH2COOH 7.12 ± 0.99 x 10 TsO- 3.36 ± 0.57 x 10 -2 1.88 2.19 346.6 1153 40 30 1.37 1.45 1.12 1.12 b Σπi calcd LD50 (ip) (mmol/kg) PCA inhibition (ip) (%) No -2 e 3 (CH3)2S+CH2CH2OH TsO- 0.43 4.69 5.7 4 (CH3)2S+CH2CH2OCH3 TsO- 0.74 1.11 15.1 21 (CH3)2S+CH2CH2O TsO- 2.21 1.27 19.7 22 (CH3)2S+CH2CH2O TsO- 2.77 0.79 41.8 23 (CH3)2S+CH2CH2O TsO- 2.99 0.52 72.7 24 (CH3)2S+CH2CH2O TsO- 4.01 0.43 30.5 25 (CH3)2S+CH2CH2O TsO- 4.56 0.31 23.3 b k obsd/HD: The rate constant of the H-D exchange reaction. k obsd/trans: The rate constan of the methyl transfer reaction. Σπ i calcd: The summation of pcalcd calculated by CLOGP (ver. 2.0.0). The value of LD50 (ip) was by the up-down method at intraperitoneal administration. e HPFC (T/C): HPFC formation of treatment / HPFC formation of control at intraperitoneal administration. c d 一方、IgE レセプターのブリッジングにリン脂質のメチ ル化が関与しているなどアレルギー反応にメチル基転移 反応が関わる例が報告されている 1)-4) 。 そこで、エタノール中、4-mercaptopyridine sodium salt に sulfonium 化 合 物 を 作 用 さ せ 、 生 成 す る 4-(methylthio)pyridine を測定し、メチル基の転移反応速度 a b Σπi calcd : The summation of πcalcd calculated by CLOGP (ver. 2.0.0). The value of LD50 was determined in male ddY mice (n=5) by the up-down method at intraperitoneal c administration. PCA inhibition (ip) (%): Homologous passive cutaneous anaphylaxis (PCA) at intraperitoneal administration.Dose 20mg/kg in rat. (k obsd/trans) を求めた (Table 4)。 このメチル基転移反応速度も HPFC 産生増強作用との 第 1 リード化合物 3 のラットへの腹腔内投与による PCA 間には相関は見られなかったが、式 (3) と同様に hydroxyl 阻 害 活 性 は 5.7% と 非 常 に 低 か っ た が 、 hydroxyl 基 を 基または carboxyl 基を有する化合物に擬変数 I=1 用いるこ methoxy 基に変えた化合物 4 では 15.1%と 3 倍近い阻害活 とにより、急性毒性の間に式 (4) が得られ、メチル基転 性を示したので、数種の alkyloxy 基および aryloxy 基を検 移反応が速いほど急性毒性が強くなることが分った。 討したところ、phenoxyethyl 基を有する化合物 23 は PCA 阻害活性が 72.7%と、抗アレルギー薬である Tranilast の log (1/LD50) = 0.145 log k obsd/trans - 0.645 I + (n = 13, r = 0.956, s = 0.130) 0.482 (4) PCA 阻害活性 45.1% (Table 6) より強い阻害活性を示し た。従って、この化合物 23 を第 2 リード化合物とし、構 造最適化を図った (Table 6)。 多田幸雄:ス ル ホ ニ ウ ム 化 合 物 の 物 理 化 学 的 性 質 に 基 づ い た 抗 ア レ ル ギ ー 薬 の 開 発 50 PCA 反 応 の 阻 害 値 と し て は 、 ロ ジ ッ ト 変 換 し た 値 Table 6. 第 2 リード化合物 23 の構造最適化 (1) Logit(PCA): log[PCA inhibition% / (100 - PCA inhibition% )] を用いた。 Σπi calcd No 26 CH3 CH3CH2 27 CH3CH2 CH3CH2 28 S+CH2CH2O a b c LD50 (ip)(mmol/kg) PCA (ip) inhibition(%) 3.44 _ 29.5 3.89 _ 18.7 3.52 0.53 30 TsO- S+CH2CH2O TsO- (CH3)2S+(CH2)3O Logit (PCA) = - 0.154 (Σπi calcd)2 + 0.886Σπi calcd - 1.494 (n = 15, r = 0.778, s = 0.246) (6) 化合物 23 は他の 14 化合物に比べて PCA 阻害活性が特に 高いため、式 (6) の相関 (r = 0.778) は良くないが、式と しては有意であった。この上に凸の 2 次式 (6) より PCA TsO- 29 (CH3)2S+(CH2)4O TsO- 4.05 0.25 -3.9 30 (CH3)2S+(CH2)5O 4.58 0.19 14.8 3.39 0.31 31.5 阻害活性に対する疎水性の最適な Σπi calcd 値は 2.88 と予 測され、この値に近い疎水性を持つ化合物 23:Σπi TsO- calcd = 2.99 が最も阻害活性が強く、これを越える化合物は得られ なかった。 31 (CH3)2S+CHCH2O CH3 TsO- またこれらの 15 化合物 (3, 4, 21-25, 28-35) に関して、こ れまでと同様に疎水性の増加は急性毒性を強めることが 32 (CH3)2S+CH2CHO TsO- O 33 3.39 0.64 36.2 3.39 0.13 42 3.43 0.24 26.1 4.05 0.25 -29.2 CH3 CH3 S+ TsO- 34 (CH3)2S+CH2CH2CH2 TsO- 35 a (CH3)2S+CH2CH2S TsO- 式 (7) により示された。 log (1/LD50) = 0.254 Σπi calcd - 0.456 (n = 15, r = 0.789, s = 0.250) (7) 次に、より阻害活性の強い化合物を得る目的で、第 2 リ b Σπi calcd : The summation of πcalcd calculated by CLOGP (ver. 2.0.0) The value of LD50 . was determined in male ddY mice (n=5) by the up-down method at intraperitoneal .c administration PCA inhibition(%): Homologous passive cutaneous anaphylaxis (PCA) at intraperitoneal administration in rat. Dose (ip) 20mg/kg in rat. ード化合物 23 のベンゼン環に Hammett σ と疎水性置換基 定数 π を指標に、化合物 23 のベンゼン環への置換基導入 を図った (Table 7)。始めに、chloro 基 (σ > 0、π > 0) およ び methyl 基 (σ < 0、π > 0) をベンゼン環のパラ、メタ、 オルト位に導入した。これらの化合物 39a-c, 40a-c は、リ はじめに、化合物 23 の dimethyl 基を methylethyl 基 (26)、 ード化合物 23 より PCA 阻害活性は低下した。しかし、パ diethyl 基 (27)に変換すると阻害活性は低下した。次に ラおよびメタ位に methyl 基(σ < 0)を有する化合物 40a,b dimethylsulfonio 基と phenoxy 基との間のエチレン鎖の部分 は Tranilast より阻害活性は弱いものの、30%以上の阻害活 を変換した。最初に化合物 23 のリンカー部分 (n=2) の長 性を示した。 (n= 4)、化合物 そこで、Hammett σ が負である電子供与性の置換基とし 30 (n= 5) では阻害活性は低下した。次に、エチレン部分 て hydroxyl 基、methoxy 基、ethoxy 基、tert-butyl 基をパラ に methyl 基を導入した化合物 31 と化合物 32 およびエチ およびメタ位に置換した化合物 41a,b, 42a,b, 43a,b, 44a,b さを変えた化合物 28 (n= 3)、化合物 29 レン部分と sulfonio 基を架橋した化合物 33 も PCA 阻害活 を合成した。また、パラ位に σ > 0、π < 0 の置換基として 性は低下した。 carboxyl 基を有する化合物 45 も合成した。阻害活性の全 また、化合物 23 の phenoxy 基の酸素原子の必要性を確 くなかった化合物 44a,b を除き、13 化合物(39a-c, 40a-c, かめるために、酸素原子を炭素または硫黄原子に変えた化 41a,b, 42a,b, 43a,b, 45)に関して、Hammett σ と PCA 阻害 合物 34、および化合物 35 を合成した。化合物 34 では阻 活性をロジット変換した Logit(PCA)との間に、式 (8) で 害活性は低下し、化合物 35 では全く阻害活性を示さなか 示した相関が見られ Hammett σ 値と負の相関があること ったことから、化合物 23 のエーテル酸素原子は PCA 阻害 が分かった。 活性に必要であると考えられた。 以上、ベンゼン環に置換基を導入した化合物の PCA 阻 ここで、化合物 23 の sulfide 化合物 36、sulfoxide 化合物 害活性は全てリード化合物 23 より低下したが、化合物 23 37 および sulfone 化合物 38 の PCA 阻害活性 (50mg/kg, rat に導入する置換基としては、電子供与性置換基 (σ < 0) が ip 投与) は各々、-5.1%、12.9%、10.3%であったことから、 望ましいことが示唆された。 PCA 反応阻害発現には sulfonio 基は重要であるとの結論を 得た。 また、carboxyl 基を有す化 45 は例外的に低毒性であっ たので、これ以外の 15 化合物(23, 39a-c, 40a-c, 41a,b, 42a,b, PCA 阻害活性がなかった 2 化合物 (29, 35) を除く 15 43a,b, 44a,b ) (Table 7) では、急性毒性と Hammett σ との 化合物 (3, 4, 21-28, 30-34) に関して式 (6) が得られた。 間に式 (9) に示す相関があった。相関係数 (r) は大きく 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 46-55 (2015) 51 ないが、Hammett σ と有意な相関があり、電子求引性の 大きな基は急性毒性が強くなる傾向が見られた。従って、 PCA 阻害活性と同様に、毒性の面からも導入する置換基 は電子供与性基 (σ < 0) が望ましいことが分かった。 一方、置換基の疎水性 π と PCA 阻害活性: Logit(PCA) との間には、有意な相関は見られなかった。 Chart 2. Acetylcholine 様作用を持つ化合物 Acetylcholine 様作用の強さを acetylcholine (1x10-9g/mL) Logit (PCA) = - 0.997 σ - 0.628 (n = 13, r = 0.716, s = 0.263) (8) log(1/LD50) = 0.523 σ + 0.402 (n = 15, r = 0.733, s = 0.108) (9) と化合物 (1x10-6g/mL) の各濃度における固有活性値( i.a.) の比 ( Ri.a.) を取り、+++; Ri.a. > 1.0、++; 0.5 < Ri.a. < 1.0、 +; 0 < Ri.a. < 0.5、- ; Ri.a. = 0 の 4 段階に分けた。その結果、 acetylcholine 様作用を示す化合物群 (23, 39a-c, 40a-c, 41a,b, 42a,b) と示さない化合物群 (43a,b, 44a,b, 45) に分けるこ とができた。化合物 23 以外の化合物 39a-c, 40a-c, 41a,b, Table 7. 第 2 リード化合物 23 の構造最適化 (2) 42a,b の acetylcholine 様作用は acetylcholine の 1/1,000 以下 と決して強いものではなかった。しかし、安全性の観点か PCA No σ π 23 (CH 3)2S+CH2CH2O 0 0 a b 3 c d e MV (Å ) inhibition (ip) (%) Ri.a. LD50 (ip) (mmol/kg) f Cl +++ 0.52 0.23 0.71 196.8 14.9 + 0.23 0.37 0.71 196.5 13.3 + 0.24 0.23 0.71 196.1 4.2 + 0.33 phenoxycholine、nicotine を比較対照として、sulfonium 化 -0.17 0.56 199.5 38.5 + 0.59 合物のカチオン部分の体積 0.43 3.2/CHARMm14) TsO- 化合物側の大きさに制限があるものと考え、acetylcholine、 Cl + 39c (CH 3)2S CH2CH2O Cl 40a (CH 3)2S+CH2CH2O CH3 TsO+ 40b (CH 3)2S CH2CH2O -0.07 0.56 TsO- 199.3 34.8 + -0.17 0.56 199.4 18.6 + 0.31 -0.37 -0.7 191.5 41.9 + 0.43 0.12 -0.7 191.3 13.7 ++ 0.32 -0.27 -0 207.6 23.8 + 0.88 TsO- CH 3 41a (CH 3)2S+CH2CH2O OH TsO+ 41b (CH 3)2S CH2CH2O TsO OH + 42a (CH 3)2S CH2CH2O (MV) を QUANTA を用いて計算した (Table7) 。Acetylcholine、 phenoxycholin、nicotine の MV は各々、157.1Å3、192.2Å3、 CH3 + 40c (CH 3)2S CH2CH2O OCH3 TsO- 168.1Å3 であった。強い acetylcholine 様作用を示した化合 物 23 の MV は 182.9Å3 であったが、化合物 43a (MV=225.6 Å3) 以上の MV を持つ化合物 43b, 44a,b では acetylcholine 様作用を示さなかった。但し、carboxyl 基を有する化合物 45 は、他の化合物とは異なり MV は 210.8Å3 でありながら 0.12 42b (CH ) S+CH CH O 32 2 2 TsO- -0 208.6 6.9 + 0.39 225.6 31.3 - 0.59 して carboxyl 基を持たず、acetylcholine 様作用を示さない sulfonium 化合物を得るには、カチオン部分がおおよそ OCH3 43a (CH 3)2S+CH2CH2O OC2H5 -0.24 0.38 TsO+ 43b (CH 3)2S CH2CH2O TsO- そこで、sulfonium 化合物が acetylcholine 様の作用を示す には、acetylcholine レセプターの活性部位と相互作用する 39b (CH 3)2S+CH2CH2O TsO- 合物の構造との相関を検討した。 72.7 TsO- 39a (CH 3)2S+CH2CH2O TsO- ら acetylcholine 様作用が全くない化合物を得るために、化 182.9 0.1 0.38 225.8 11.8 - 0.37 C(CH 3)3 -0.2 1.98 249.2 -50.9 - 0.51 -0.1 1.98 249.7 -31.2 - 0.39 以上、強い PCA 阻害活性とともに acetylcholine 様作用 0.45 -0.3 210.8 13.4 - 3.19 を有する化合物 23 のベンゼン環に種々の置換基を導入す OC2H5 + 44a (CH 3)2S CH2CH2O + 44b (CH 3)2S CH2CH2O + 45 (CH 3)2S CH2CH2O 225Å3 以上の MV を持つ化合物であれば良いことが分かっ た。 TsO- TsO- も acetylcholine 様作用を示さなかった。従って、置換基と C(CH 3)3 COOH TsO- ることで、Tranilast より弱いながらも比較的強い PCA 阻 45.1 Tranilast σ: Hammet σ of substituent. p: The substiuent constant. Volume (Å ) was calculated by QUANTA3.2 d /CHARMm. PCA inhibition (ip) (%): Homologous passive cutaneous anaphylaxis (PCA) in rat. e -6 -9 Dose (ip) 20mg/kg. Ri.a.: i.a.compound (1x10 g/ml) / i.a.acetylcholine (1x10 /ml). The intrinsic activity (i.a.) was obtained of heart contraction test in gunea pig isolated atria. +++: Ri.a.>1.0, f ++ : 0.5 < Ri.a.<1.0, + : 0<Ri.a.<0.5, - : Ri.a.=0. The value of LD50 was determined in male ddY mice a b c 3 (n=5) by the up-down method at intraperitoneal administration. ここで、リード化合物 23 は acetylcholine 様作用を有す る phenoxycholine と構造的類似性 (Chart 2) があること から副作用として、sulfonium 化合物の acetylcholine 様作用 が懸念された。 害活性があり、acetylcholine 様作用がない化合物 43a を得 ることができた。しかし、腹腔内投与では最も強い PCA 阻害活性 (投与量:20mg/kg、阻害 72.7%)を示した第 2 リ ード化合物 23 であっても、経口投与では極めて弱い阻害 活性 (投与量:50mg/kg、阻害率 7.5%)しか示さなかった (Table 8)。 そこで、経口投与における PCA 阻害活性の向上を目的 として、パラ位に ethoxy 基を持つ化合物 43a を参考に、 化合物 23 のベンゼン環のパラ位に、acetylcholine 様作用 を示さないと予測される大きさの MV を持つ alkyloxy を 導入することにした。 多田幸雄:ス ル ホ ニ ウ ム 化 合 物 の 物 理 化 学 的 性 質 に 基 づ い た 抗 ア レ ル ギ ー 薬 の 開 発 52 上した。しかし、さらに疎水性を高めた 3-phenoxy 基 Table 8. 第 2 リード化合物 23 の構造最適化 (3) (π calcd = 0.88) を有する化合物 49 では、阻害活性は高くな らず、急性毒性が強くなった。また、2,3-dihydroxypropoxy c LD50 (ip) π calcd No 23 (CH 3)2S+CH 2CH 2O a 0 3 b d PCA (po) inhibition (%) MV (Å ) (mmol/kg) 50mg/kg 100mg/kg 182.9 0.52 7.5 - 基の2つの hydroxyl 基を ethoxy 基とした 2,3-diethoxyoxypropoxy 基 (π calcd = 0.57) を有する化合物 50 も、PCA 阻 TsO- 害活性は化合物 49 と同程度で、急性毒性が強くなった。 OH 46a (CH 3)2S+CH2CH2O OCH2CHCH 2OH -1.78 259.6 0.79 19.8 25.3 -1.78 256.7 0.52 - 20.4 -1.78 257.6 0.64 - 13.4 -1.16 275.3 0.66 21.1 - -0.63 291.9 0.84 24.8 - 0.88 330.8 0.29 23.7 - 0.57 323.8 0.26 23.1 - TsO- TsO- 46c OH OCH2CHCH 2OH (CH 3)2S+CH2CH2O TsO- OH HOCH2CHCH2O OH 47 (CH 3)2S+CH2CH2O OCH2CHCH 2OCH3 (CH 3)2S+CH2CH2O OCH2CHCH2OC2H5 TsO- logit (PCA) (CH 3)2S+CH2CH2O log(1/LD50) 46b OH 48 TsOOH 49 (CH 3)2S+CH2CH2O TsO- 50 (CH 3)2S+CH2CH2O TsO- OCH2CHCH 2O Figure 1. πcalcd と Logit (PCA)および log(1/LD50)の相関図 OC2H5 OCH2CHCH 2OC2H5 a c 化合物 48 以外の化合物 23, 46a-c, 47, 49, 50 においては 19.5 Tranilast b 置換基の疎水性が増すに従って急性毒性が直線的に強く 3 πcalcd was calculated by CLOGP (ver. 2.0.0). MV (Å ) was calculated by QUANTA3.2/CHARMm. なる傾向があるのに対して、化合物 48 は例外的に弱い急 The value of LD50 was determined in male ddY mice (n=5) by the up-down method at d intraperitoneal administration. PCA inhibition (po) (%): Homologous passive cutaneous oral anaphylaxis (PCA) at administration. 性毒性を示した。一方、置換基の疎水性が増すに従って、 Hydroxyl 基を持つ化 41a (腹腔内投与量:20mg/kg、阻 害活性率 41.9%) が ethoxy 基を有する化合物 43a (腹腔内 投与量:20mg/kg、阻害活性率 31.3%) にも優る PCA 阻害 活性を示したことを踏まえて (Table7)、置換基として glycerylether: OCH2CH(OH)CH2OH 基を導入した。その化 合 物 46a の カ チ オ ン 部 分 の 体 積 (VM = 259.6Å3) は 化合物 46a, 47, 49, 50 では直線的に PCA 阻害活性が向上す る傾向があるが、化合物 48 は疎水性の増加分以上に阻害 活性が向上していた (Figure 1)。 以上の結果から急性毒性を考慮して、hydroxyl 基をひと つ残した 2-hydroxy-3-ethoxy 基 (π calcd = - 0.63) を置換基 に持つ化合物 48 を、第 2 リード化合物 23 の最適化化合物 とした。 acetylcholine 様作用を発現しないと予測されるに十分な大 きさであり、50mg/kg の経口投与において 19.8%の PCA 6.第3リード化合物 53k の創製と 阻害活性を示した。この阻害活性値は Tranilast と同程度で 医薬品候補化合物の決定 あった (Table 8)。また、glycerylether 基の望ましいベンゼ ン環の置換位置を確認するために、メタ置換誘導体 46b、 第 2 リード化合物 23 の構造最適化により見出した化 オルト置換誘導体 46c を検討した。経口投与 (100mg/kg) 合物 48 は、医薬品の候補化合物になり得ると考えた。 における PCA 阻害活性および急性毒性において、パラ位 しかし、この化合物 48 は、強い acetylcholine 作用を有 置換誘導体 46a は、わずかではあるがメタ、オルト置換誘 する phenoxycholine と共通なエーテル結合を有するの 導体より優れていた。 で、phenoxyethyl 基に基づく acetylcholine 様の副作用 ここで、化合物 46a の疎水性を表す Σπi calcd は、化合物 23 の Σπi calcd: 2.99 (Table 5) と glycerylether 基の π calcd: -1.78 (Table 8) の和、1.21 と計算できる。この値は、式 (6) より算出される PCA 阻害活性発現の最適値 Σπi が完全には払拭されていないのではないかという懸念 から、更に安全性の高い化合物を目指して、エーテル 結合の変換を検討した。 = そこで、メチレン結合(化合物 34)、およびのチオ 2.88 に比べて小さいことから、PCA 阻害活性を強めるに エーテル結合(化合物 35) (Table 6) 以外の結合様式 は化合物 46a の疎水性を上げる必要があると考えた。そ を検討し、アミド結合として carbamoyethyl 基を有す こで、化合物 46a の glycerylether 基 (π calcd = - 1.78) の る化合物 51 および、その N-置換基として、cyclohexyl 3-hydroxy 基を 3-methoxy 基に変換した化合物 47 (π = - 基を有する化合物 52、および phenyl 基を有する化合物 1.16) を合成したところ、50mg/kg の経口投与において 53a を合成した。化合物 53a には、第 2 リード化合物 PCA 阻害活性の僅かな向上が見られ、3-ethoxy 基 (π calcd 23 より弱いながらも PCA 阻害活性(27.1%, 100mg/kg, = - 0.63) に変えた化合物 48 ではそれ以上に阻害活性が向 腹腔内投与)があることを確認した (Table 9)。 calcd 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 46-55 (2015) 53 体 53j、3-hydroxypropoxy 誘導体 53l、2-hydroxypropoxy Table 9. 第 2 リード化合物 23 のエーテル結合から 誘導体 53m に比べて、化合物 53k の急性毒性(LD50、 アミド結合への変換 マウス)は低かった (Table 11)。以上の結果から、化 PCA (ip) inhibition (%) No 51 52 53a + (CH 3)2S CH2CH2CONH2 TsO- 50mg/kg 100mg/kg 2.4 13.7 + TsO- 9 17 + TsO- -8.3 27.1 (CH3)2S CH2CH2CONH (CH3)2S CH2CH2CONH a 合物 53k を第 3 リード化合物とした。 Table 11. 置換 propoxy 基を有する sulfonium 化合物の 急性毒性 (CH 3)2S +CH 2CH 2 CONH SO 3- R CH 3 a PCA inhibition (%): Homologous passive cutaneous anaphylaxis (PCA) at intraperitoneal administration. No 次いで、置換基の電子的および疎水的性質を指標に 種々の置換基を化合物 53a のベンゼン環のパラ位に a R OCH2CH2CH3 OCH 2CH(OH)CH 2OH 53j 53k 53l 53m LD50 (ip) (mmol/kg) a 0.22 2.21 0.71 1.09 OCH2 CH2 CH 2OH OCH2 CH(OH)CH 3 The value of LD50 was determined in male ddY mice (n=5) at intraperitoneal administrationby the up-down method. 導入した (Table 10)。Trifluoromethyl 53b、chloro 53d、 および fluoro 誘導体 53e では PCA 阻害活性は殆ど向 上しなかった。一方、acetyl 誘導体 53c、carboxymethyl 新たな第 3 リード化合物 53k は、腹腔内投与ではか 誘導体 53f、methyl 誘導体 53g、methoxy 誘導体 53h、 なり強い PCA 阻害作用が見られたものの、経口投与 および hydroxy 誘導体 53i では、化合物 53a より強い では阻害活性が低下した (Table 10)。これは同じ置換 PCA 阻害活性を示した(投与量: 50mg/kg)。これらの 基 を 持 つ 化 合 物 46a (Table 9) の 場 合 と 同 様 に 、 結果から、acetyl 誘導体 53c を除いて、trifluoro、chloro、 glycerylether 基の疎水性が低いことが原因と考えられ fluoro 基などの電子求引基に比べて carboxymethy、 た。一方、急性毒性は 2-hydroxypropoxy 誘導体 53m の methyl、methoxy 基のような電子供与基の方が PCA 阻 方が 3-hydroxy propoxy 誘導体 53l より低かったことか 害活性には望ましく、一方、methyl 誘導体 53g を除い ら (Table 11)、 化 合物 46a の 構造 最 適化 と 同じ く て chloro、fluoro、trifluoromethyl 基などの疎水性基よ 2-hydroxyl 基は残し、3-hydroxyl 基に疎水性基を導入 り、acetyl、carboxymethyl、methoxy、hydroxy 基のよ することにした。置換基の疎水性の指標としての疎水 うな親水性基の方が望ましいという傾向が認められた。 性置換基定数 π の計算値π calcd は CLOGP (ver. 2.0.0) を用いて求めた (Table 13)。 Table 10. 化合物 53a ベンゼン環パラ位へ置換基導入 Table 12. 化合物 53a のベンゼン環パラ位への置換基 (CH3)2S+CH2CH2CONH R CH3 SO3 導入 - OR2 (CH3 )S+CH2 CH 2CONH OCH2 CHCH2 OR1 CH 3 SO3- a No 53b 53c 53d 53e 53f 53g 53h 53i 53j 53k R CF3 COCH3 Cl F CH 2COOH CH3 OCH3 OH OCH2CH2CH3 OCH 2CH(OH)CH 2OH b PCA inhibition (%) 20mg/kg 50mg/kg -7.8 -10.3 9 25.1 -0.2 0.3 4 1.2 14.9 25.5 18.9 22 -4.4 17.4 21.9 9.7 13.8 29.8 38.7 34.9 b b 1.4 18.6 (PCA) at intraperitoneal administration. PCA inhibition (%): Homologous a No 54a 54b 54c 54d 54e 54f 55a 55b a R1 R2 CH3 H CH2CH3 H (CH2)2CH3 H (CH2)3CH3 H C6H 11 H C 6H5 H CH3 CH3 CH2CH3 CH2CH3 PCA (po) inhibition (%) 20mg/kg 50mg/kg 17.7 24.8 28.9 35.5 16.3 13.8 7.9 4.4 10.2 -7.4 14.4 4.6 17.9 10.5 0.1 5.1 PCA inhibition (%): Homologous passive cutaneous anaphylaxis (PCA) at oral administration. passive cutaneous anaphylaxis (PCA) at oral administration. R1 に hydroxyl 基より疎水性の高い置換基を導入し そこで、電子供与性基として propoxy 基を有する化 た 3-methoxy 誘 導 体 54a (π calcd = -1.16) お よ び 合物 53j および、第 2 リード化合物 23 の構造最適化と 3-ethoxy 誘導体 54b (π calcd = -0.63) では PCA 阻害活 同様に、より親水性の高い基として glycerylether 基を 性は上昇したが、それより疎水性の高い置換基を導入 有する化合物 53k を合成した。これらの化合物 53j, し た 3-propoxy 誘 導 体 54c (π calcd = -0.01) お よ び 53k はどちらも強い PCA 阻害活性(29.8%, 34.9%, 3-butoxy 誘導体 54d (π calcd = 0.43) では PCA 阻害活性 50mg/kg, 腹腔内投与)を示した。また、propoxy 誘導 が低下した。更に置換基の疎水性を上げた 多田幸雄:ス ル ホ ニ ウ ム 化 合 物 の 物 理 化 学 的 性 質 に 基 づ い た 抗 ア レ ル ギ ー 薬 の 開 発 54 2-cyclohexyloxy 誘 導 体 54e (π calcd = 0.87) お よ び 2-phenoxy 誘導体 54f (π calcd = 0.88) では PCA 阻害活 Table 14. 2-acetoxy-3-ethoxy 基を有す sulfonium 化合物 性が向上しないことを確認した。また、2,3-dihydroxy の PCA 阻害活性 OCOCH3 基を 2,3-dimethoxy 基または 2,3-diethoxy 基に換えた 化合物 55a (π calcd = 0.49) および化合物 55b (π calcd = SO3- OCH2CHCH2OCH2CH3 CH3 (CH3)2S+CH2CH2CONH 0.57) も合成し、その PCA 阻害活性が低いことを確認 した (Table 12)。 Table 13. CLOGP を用いて求めた置換基疎水定数 πcalcd (CH3)2S+CH2CH2CONH SO3- R CH3 No position 56a 56b 56c para ortho meta PCA (po) inhibition (%) 20mg/kg 50mg/kg 35.1 -2 18.2 a 30.2 20 17.7 a PCA inhibition (%): Homologous passive cutaneous anaphylaxis (PCA) at oral administration. No 53k 54a 54b 54c 54d 54e 54f 55a 55b a π calcd -1.78 -1.16 -0.63 -0.1 0.43 0.87 0.88 0.49 0.57 a R OCH 2CH(OH)CH 2OH OCH2CH(OH)CH2OCH3 OCH2CH(OH)CH2OCH2CH3 OCH2CH(OH)CH2O(CH2)2CH3 OCH2CH(OH)CH2O(CH2)3CH3 OCH2CH(OH)CH2OC6H11 OCH2CH(OH)CH 2OC 6H 5 OCH2CH(OCH3)CH2OCH3 OCH2CH(OC2H5)CH2OCH2CH3 π calcd was calculated by CLOGP (ver. 2.0.0). 以上の結果から、最終的に医薬品候補化合物として 化合物 54b を選定した。 7.抗アレルギー薬として望ましい sulfonium 化合物の疎水性 抗アレルギー薬として医薬品候補化合物 54b を見出 す過程においては、sulfonium 化合物の flask shaking 法 TsO- による分配係数の測定が困難であったことから、化合 物の疎水性の指標として疎水性置換基定数 π の計算 以上の結果から、PCA 阻害活性に最適な sulfonium 値 (π calcd) を用いた。従って、実際の疎水性に基づい 化合物の疎水性の存在が示唆され、一連の化合物の中 た化合物デザインではなかった。そこで、逆相薄層ク で は 最 も PCA 阻 害 活 性 の 強 い 化 合 物 で あ っ た ロマトグラフを用いて sulfonium 化合物の分配係数を 3-ethoxy-2-hydroxy-propoxy 誘導体 54b の疎水性がこれ 実測した。 に近いと考えられる (Figure 2)。 方法として、Table 15 に示した logP 値が既知の 10 PCA Inhibition %(20mg/kg, po) PCA Inhibition %(20mg/kg, po) 化合物 (logP:- 1.07 ~ 4.01)について、固定相にオク チ ル シ リ ル 化シ リ カ ゲ ル 逆相 薄 層 ク ロ マト グ ラ フ (Merck HPTLC RP-8 F254S) 、移動相に 50%(v/v) エタノ ール水溶液を用いて、Retention factor (Rf) を測定し 16)、 次いで、RM 値を式 RM = log(1/Rf– 1) より求めた。これ ら 10 化合物の logP と RM 値との間には、式 (10) に 示した良好な相関が見られた。 Figure 2. PCA 阻害活性 (20mg/kg, po) と CLOGP による 計算値(π calcd)および実測値(logKTLC)との相関図 一般に hydroxyl 基はエステルで保護した方が、経口 吸収性が良くなる事が知られているので、化合物 54b の 3-ethoxy-2-hydroxypropoxy 基 を 2-acetoxy-3- ethoxypropoxy 基に変えた化合物 56a を合成したが、そ の PCA 阻害活性は大きくは向上しなかった (Table 14)。 また、2-acetoxy-3-ethoxypropoxy 基のオルト置換誘 導体 56b およびメタ置換誘導体 56c も合成したが、パ ラ置換誘導体 56a より弱い PCA 阻害活性しか示さな かった。 標準とした化合物の logP と RM 値 Table 15. a b compd logP RM -1.07 -1.159 Uracil -0.62 -1.024 Sufanilamide -0.55 -0.902 Allopurinol 0.01 -0.555 Caffeine 0.26 -0.698 Sulfamethyzol 1.15 -0.211 Phthalimide 1.19 -0.306 Aspirin 2.14 0.161 Indole 3.18 0.523 Benzophenone 4.01 0.886 Biphenyl a logP values were listed in Bio-Loom (ver. 5.0). b RM = log(1/Rf -1) logP = 2.491 RM + 1.788 (10) 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 46-55 (2015) 55 11.謝辞 (n = 10, r = 0.995, s = 0.187 ) ここで、一般に分配係数 (P ) は、化合物の非解離型 における分配係数として logP 値で示されるが、onium 本研究に関して種々の貴重な御助言を賜りました 化合物の場合は常に解離型で存在しているので、分配 岐阜薬科大学、永澤秀子教授、堀 幹夫教授、(故) 係数としてはイオンペア形成分配平衡定数(K )が用 江田昭英教授、片岡 貞教授、および清水 洋教授 。そこで、sulfonium 化合物の分配係 に深甚なる謝意を表します。また、本研究全般にわ 数としては、クロマトグラフより得られた分配係数と たり御協力頂きました大鵬薬品工業株式会社の各位 いうことで、logP の代わりに logKTLC という表示を用 に厚く御礼申し上げます。 いられている 17) いた。 この方法を用いて、Table 13 に示した医薬品候補化 12.引用文献 合物 54b の創製に関わった化合物の logKTLC を測定し た (Table 16)。 Table 16. 化合物 54b 関連化合物の logKTLC (CH3)2S+CH2CH2CONH No 53k 54a 54b 54c 54d 54e 54f 55a 55b R CH3 R OCH 2CH(OH)CH 2OH OCH2CH(OH)CH2OCH3 OCH2CH(OH)CH2OCH2CH3 OCH2CH(OH)CH2O(CH2)2CH3 OCH2CH(OH)CH2O(CH2)3CH3 OCH2CH(OH)CH2OC6H11 OCH2CH(OH)CH 2OC 6H 5 OCH2CH(OCH3)CH2OCH3 OCH2CH(OC2H5)CH2OCH2CH3 SO3- a log K calcd -1.81 -0.38 0.06 2 2.94 1.48 1.52 0.57 1.26 a logK T LC: logP value was measured by reversed phase thin-layer chromatography. 実測した logKTLC と疎水性置換基定数の計算値 πcalcd との相対的な疎水性を比較すると、Figure 2 に示した 様に、化合物 53k, 54a,b 間では合っていたが、それ以 外の化合物 54c-f, 55a,b 間では違っていた。しかし、化 合物 54b より疎水性が高くなると PCA 阻害活性が低 下するという結果は同じであった。化合物 54b の 1) Hirata, F., Toyoshima, S., Axelrod, J., Waxdal, M. J., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 77, 862-865 (1980). 2) Dobozy, A., Hunyadi, J., Simon, N., Acta. Microbiol. Acad. Sci. Hung., 17, 303-309 (1970). 3) Riddik, D.H., and Gallo, R.C., 37, 282-292 (1971). 4) Richard, U.B., Clifford, S., Sato, S., Charles, D.B., Plant. Physiol., 31, 374-377 (1956). 5) Bizyaev, A. I., Vitam. U-Prir. Svoistva, Primen; Bukin, V. N. Ed.; Nauka: Moscow, USSR, pp 145-146 (1973). 6) Cunningham, A. J., Szenberg, A., Immunology, 14, 599-600 (1968). 7) Leo, A. J., Chemical Reviews, 93, 1281-1305 (1993). 8) Nippon Kayaku Co., Ltd., Fr. 1,394,705 9) Brownlee, K. A., Hodges, J. L., Rosenblatt. M., J. Am. Stat. Assoc. 48, 262-277 (1953). 10) Motomizu, S., Toei, K., Iwachido, T., Bull. Chem. Soc. Jpn. 42, 1006-1010 (1969) 11) Behr, J. P., Lehn, J. M., J. Amer. Chem. Soc. 95, 6108-6110 (1973). 12) Yano, Y., Okonogi, T., Tagaki, W., J. Org. Chem., 38, 3912-3915 (1973). 13) Tada, T., Okamura, K., J. Immunol., 106, 1002-1011 (1971). 14) Momany, F. A., Rone, R., J. Comput. Chem., 13, 888-900 (1992). 15) Bio-Loom (ver.5.0) (http://www.biobyte.com/bb/prod/ bioloom.html) 16) Kubota, T., Kano, K., Kawata, E., Hashizumi, H., Uno, B., Ann. Proc. Gifu Coll. Pharm. 39, 21-41 (1987). 17) Takayama, C., Akamatsu, M., Fujita, T., Quant. Struct.-Act. Relat., 4, 149-160 (1985). logKTLC 値は 0.06(分配係数=1.15)であり、第 2 リー ド化合物の最適化された化合物 48 の logKTLC 値は 13.特記事項 0.07(分配係数=1.17)であったことから、経口投与で PCA 阻害活性を示す sulfonium 化合物の望ましい分配 係数は約 1.2 であることが分かった。 10.結論 本研究で見出した医薬品候補化合物 54b は 1995 年、気 管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎の治療薬 Suplatast Tosilate として上市された。現在もアレルギー 性疾患の根治療法に関わる Th2 サイトカイン阻害薬に分 類されているものは Splatast Tosilate のみである。 本総説は、岐阜薬科大学博士論文(乙第 359 号)の内容 を中心にまとめたものである。 杉浦春雄ら:大学生のストレス反応の違いが認知的評価に及ぼす影響 56 -一般論文- 大学生のストレス反応の違いが認知的評価に及ぼす影響 杉浦春雄 1* 、坂本太一 1、杉浦浩子 2 要約:本研究では、大学生のストレス反応の違いが認知的評価に及ぼす影響について検討した。大学生 250 名 (男性: 180 名、女性:70 名、平均年齢:19.8±1.6 歳) に対して質問紙調査 (ストレス反応尺度、認知的評価尺度) を実施した。 その結果、対人・コントロール可能な状況 (状況 2) および対物・コントロール不可能な状況 (状況 3) では、ストレス低 群の方がストレス高群よりも「コントロール可能性」得点が有意に高かった。対物・コントロール可能な状況 (状況 4) で は、ストレス低群の方がストレス高群よりも「コントロール可能性」得点が有意に高く、ストレス高群と比較して「脅威 性」得点と「影響性」得点はストレス低群が有意に低かった。挑戦・脅威の状況 (状況 5) では、ストレス低群の方がス トレス高群よりも「挑戦」得点が有意に高かった。一方、「脅威性」得点はストレス高群が有意に高かった。これらの結 果から、解決しやすい状況下では、ストレス高群の認知的評価はネガティブになりやすいことが示唆された。 索引用語:ストレス反応、認知的評価、状況設定、大学生 Influence of Differences in Stress Response on Cognitive Appraisal in University Students Haruo SUGIURA 1 *, Taichi SAKAMOTO 1 and Hiroko SUGIURA 2 Abstract: This study examined the influence of differences in stress responses on cognitive appraisal in university students. A questionnaire survey (including the Stress Responses Scale and Cognitive Appraisal Scale) was administered to 250 university students (180 male, 70 female; average age: 19.8 ± 1.6 years). The results indicated that when the students were in a situation where they were able to control other people (Situation 2 ) or were unable to control events (Situation 3), the scores for “Controllability” were significantly higher for students in the low-stress group than for those in the high-stress group. When the students were in a situation where they were able to control events (Situation 4), the scores for “Controllability” were significantly higher and the scores for “Threat” and “Effect” were significantly lower for students in the low-stress group. When the students were in a challenging and threatening situation (Situation 5), the scores for “Challenge” were significantly higher and the scores for “Threat” were significantly lower for students in the low-stress group. The results indicate that the high-stress group tended to show negative cognitive appraisal under easily resolvable situations. Keyphrases: stress response, cognitive appraisal, situation setting, university students 1.緒 言 いを感じにくく、毎日が単調に感じ葛藤的ともいえるスト レス状況にあることも指摘されている 2)。しかしながら、 大学生活での主なストレッサーとして、友人、恋人、家 すべての大学生が学生生活にストレスを感じているわけ 族との不和等からなる人間関係、授業での発表や課題など ではなく、たとえ同じ環境下にあったとしてもストレスに からなる学業や就職や進路に関する悩み等が報告されて 対する感受性に違いがみられる。こうしたストレス反応の いる 1)。また、一部の学生には、大学生活に充実や生きが 1 岐阜薬科大学基礎教育大講座保健体育学研究室(〒502-8585 岐阜市三田洞東 5 丁目 6-1) Laboratory of Health and Physical Education, Gifu Pharmaceutical University (5-6-1 Mitahora-higashi, Gifu 502-8585 JAPAN) 2 岐阜大学医学部看護学科(〒501-1194 岐阜市柳戸 1 番 1) Nursing course, School of Medicine, Gifu University (1-1 Yanagido, Gifu 501-1194 JAPAN) 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 56-59 (2015) 違いに関与する要因の一つに、ストレッサーに対する認知 57 状況 1:対人・コントロール不可 (相手の意思によるも ので自分では状況が変えられない) 的評価がある。 認知的評価とは、ストレッサーに対する評価を行うスト レス処理プロセスであり、「脅威性」、「影響性」、「コミッ トメント」、 「コントロール可能性」の 4 つの側面が導き出 されている 3)。これまでの認知的評価とストレスに関する 研究では、個人が体験したストレスを自由記述し、その状 況に対して認知的評価を行い、その関連性を検討している。 その結果、「脅威性」が高い人はストレス反応が高いこと や「影響性」と「コミットメント」が心理的ストレス反応 状況 2:対人・コントロール可 (相手に対する自分の行 動次第で状況が変わる) 状況 3:対物・コントロール不可 (すでに決定した事項 で状況は変えられない) 状況 4:対物・コントロール可 (課題に対して自分の行 動で状況が変わる) 状況 5:脅威または挑戦 (個人の受け取り方次第で状況 を脅威とも挑戦ともとれる) に影響を及ぼしていることが見いだされている 1, 4)。また、 3.統計処理 認知的評価の「影響性」がストレス反応のすべての因子に 本研究で得られた数値は、平均値±標準偏差で示した。 大きく影響を及ぼしていることも明らかにされている 5, 6)。 ストレス反応尺度は主因子法による因子分析を行い、因子 これらいずれの研究において、ネガティブな認知的評価が 負荷量が 0.40 に満たない 3 項目を除外し、11 項目を分析 ストレス反応を喚起することを示唆しているが、先行研究 に用いた。ストレス反応尺度の合計得点を求め、その平均 では、ストレス状況を対象者が感じた状況に設定されてい 値 (25.7 点) を境に、ストレス高群とストレス低群に区分 るため、ストレス反応の高い人がネガティブな認知的評価 した。その 2 群で認知的評価の得点を比較した。比較には をしやすいということは明らかではない。このことから、 t検定を用い、有意水準は p<0.05 とした。 認知的評価の傾向がストレスに関係するか否かは、同じ状 4.倫理的配慮 況下での評価が必要であると考えられる。しかしながら、 倫理的配慮として、質問紙に研究の趣旨および方法、匿 著者らが知る限りでは、この点に注目した研究は見あたら 名性の保持、秘密厳守、データ管理の保証、非協力による ない。 不利益が生じないこと、回答は自由意思であること、回答 そこで、本研究では共通の状況を設定したストレス状況 に対する認知的評価を行い、ストレス反応の違いが認知的 の提出をもって同意とみなすことを記載した依頼文を添 付した。 評価に及ぼす影響について検討することを目的とした。 3.結果 2.対象と方法 1.ストレス反応について 1.対象 調査対象は、大学生 250 名(男性:180 名、女性:70 名、 平均年齢:19.8±1.6 歳)であった。なお、事前に本研究の目 的および趣旨を説明し、調査への参加の同意を得た。 2.調査方法 1) ストレス反応尺度 14 項目で構成されたストレス反応尺度 図 1 に対象者のストレス反応尺度得点の成績を示す。11 項目のストレス反応尺度の中で「強い疲労感」の平均値 (3.00±1.21 点) が一番高かった。次いで「集中力の低下」 であった (2.89±1.26 点)。11 項目の平均値は 25.7±7.3 点で あった。 7) を用いた。ス トレス反応がここ半年の間にどの程度あったかについて 5 「いつもある」、「1 日に何度かある」、「1 週間に何度かあ る」、 「1 ヶ月に何度かある」、 「ほとんどない」の 5 件法に いほど得点が高くなる。 2) 認知的評価 ストレス反応尺度得点 より実施した。得点は「いつもある」の 5 点から「ほとん どない」の 1 点までで、ストレス反応を経験する頻度が高 4 3 2 1 5 つの状況を設定し、それぞれの状況について 5 段階で 認知的評価の質問に回答してもらった。質問項目は、認知 0 的評価尺度 (CARS)3) の 8 項目を参考にし、「コミットメ ント」以外の「コントロール可能性」、 「脅威性」、 「影響性」 について 3 つの質問を設定した。なお、状況 5 では「コン トロール可能性」を「挑戦」に変えて質問した。 図 1 対象者のストレス反応尺度得点 2.ストレス高群と低群の状況認知について 表 1 に状況 1~5 におけるストレス高群と低群の認知評 杉浦春雄ら:大学生のストレス反応の違いが認知的評価に及ぼす影響 58 価得点の成績を示す。 本研究では共通の状況を設定したストレス状況に対す 状況 1 1) る認知的評価を行い、ストレス反応の違いが認知的評価に 「コントロール可能性」得点、「脅威性」得点、「影響性」 及ぼす影響について検討した。 得点においてストレス高群と低群に差異は認められなか った。 が認知的評価に及ぼす影響について検討した。対人状況で 状況 2 2) まず、対人状況と対物状況においてストレス反応の違い はコントロール可能な状況での「コントロール可能性」の 「コントロール可能性」得点では、ストレス低群がスト 1 項目のみ、対物状況ではコントロール可能な状況での レス高群より高い値を示し有意差が認められた (p<0.05)。 「コントロール可能性」、「脅威性」、「影響性」の 3 項目、 「脅威性」得点は、両群に差異は認められなかった。「影 コントロール不可能な状況での「コントロール可能性」の 響性」得点はストレス高群がストレス低群より高値傾向を 1 項目に差異が認められた。いずれもストレス高群が低群 示した。 よりもネガティブな認知的評価を示した。このことは、対 状況 3 3) 人状況より対物状況の方がストレスの高低による差が大 「コントロール可能性」得点では、ストレス低群がスト きいと考えられる。大学生のストレッサーの特徴を検討し レス高群より高い値を示し有意差が認められた (p<0.05)。 た研究では、被験者のストレッサーに対する自由記述にお 「脅威性」得点と「影響性」得点は、ストレス高群がスト いて、負担の内容を示す「うまくいってない」の次に「人 レス低群より高値傾向を示した。 間関係」というキーワードが多かったという結果を示して いる 1)。このことから、大部分の人にとって人間関係が大 状況 4 4) 「コントロール可能性」得点では、ストレス低群がスト きなストレッサーであり、対物状況よりも対人状況の方が レス高群より高い値を示し有意差が認められた (p<0.05)。 難しく、解決しにくい状況と言える。したがって、対人状 「脅威性」得点および「影響性」得点は、ストレス高群が 況のように多くの人がストレッサーと感じ、解決しにくい ストレス低群より高い値を示し有意差が認められた ような状況では、ストレス反応の違いが認知的評価に及ぼ (p<0.05)。 す影響が小さいと考えられる。一方、対物状況のような解 決しやすい状況においては、ストレス反応の違いが認知的 状況 5 5) 「挑戦」得点では、ストレス低群がストレス高群より高 評価に及ぼす影響が大きいと考えられる。 い値を示し有意差が認められた (p<0.05)。「脅威性」得点 次に、コントロール可能な状況とコントロール不可能な では、ストレス高群がストレス低群より高い値を示し有意 状況においてストレス反応の違いが認知的評価に及ぼす 差が認められた (p<0.05)。「影響性」得点はストレス高群 影響について検討した。コントロール不可能な状況では、 がストレス低群より高値傾向を示した。 対物状況での「コントロール可能性」の 1 項目のみ、コン トロール可能な状況では、対人状況での「コントロール可 表1 状況 1 2 3 4 状況 1~5 における認知的評価 コントロール可能性 脅威性 影響性 「脅威性」、 「影響性」の 3 項目に差異が認められた。いず 高群 3.10 ± 1.24 4.15 ± 1.11 4.18 ± 0.99 れもストレス高群が低群よりもネガティブな認知的評価 低群 3.32 ± 1.57 3.96 ± 1.09 3.99 ± 1.33 をしていた。これらの結果は、コントロール不可能な状況 高群 3.59 ± 1.20 3.99 ± 1.30 4.11 ± 1.09 よりコントロール可能な状況の方がストレスの高低によ 低群 3.77 ± 1.20 * 3.88 ± 1.35 3.86 ± 1.19 # る差が大きいことを示している。「明朗・積極性」の高い 高群 2.12 ± 1.46 4.81 ± 0.82 4.76 ± 0.89 人は、ストレッサーに対して素直に認知するのに対して、 低群 2.58 ± 1.42 * 4.61 ± 1.02 # 4.60 ± 0.97 # 「自己不確実性」の人は、自信喪失から曲解して物事を受 高群 3.08 ± 1.25 3.98 ± 1.16 4.31 ± 0.10 け止めるため不満が生じやすく、妥当性の高い解決が得ら 低群 3.70 ± 1.21 * 3.60 ± 1.21 * 3.89 ± 1.21 * れにくくなることが指摘されている 8)。また、ストレス場 脅威性 影響性 面に対する認知的評価と悲観・楽観性思考、ストレス反応 挑戦 5 能性」の 1 項目と対物状況での「コントロール可能性」、 ストレス 高群 3.53 ± 1.28 3.67 ± 1.21 3.52 ± 1.37 の関連を検討した研究では、悲観性思考が強ければ心理的 低群 3.98 ± 1.02 * 3.35 ± 1.23 * 3.15 ± 1.28 # ストレス反応が多くなることを明らかにしている 9)。さら に、認知的評価に悲観的思考が影響して評価をネガティブ 平均値±標準偏差、 * p < 0.05, # p < 0.10. 化させているのではなく、それ以前の段階で悲観的思考が (ストレス高群との比較). 働いてストレス反応を生起している可能性を示している 。このことから、ストレス状況の解釈に歪みがあるため、 9) 4.考察 認知的評価がネガティブに働くことを示していると考え られる。本研究で設定したコントロール可能な状況に対し 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64, 56-59 (2015) 59 て、ストレス高群が「コントロール可能性」を低く評価し レッサーでも「ストレスフル」と評価されストレス反応が たことは、こうした状況解釈の歪みが影響している可能性 高められていくと考えられた。 が考えられる。 5.まとめ 個人の受け取り方次第で挑戦とも脅威ともとれる状況 下でのストレス反応の違いが認知的評価に及ぼす影響に ついて検討した。脅威や挑戦が「ストレスフル」と判断さ 大学生を対象に、設定したストレス状況に対する認知的 れた場合、直面している障害や危険を克服できる自信が高 評価を行い、ストレス反応の違いが認知的評価に及ぼす影 い場合に「挑戦」が優位になるが、克服できる自信が低い 響について検討した。 場合には、「脅威」が優位になる事が明らかにされている 10)。本研究では、ストレス低群は高群に比べて、状況に対 して挑戦しがいがあり、苦痛ではないと認知しているのに 対して、ストレス高群は低群に比べて、状況を挑戦しがい その結果、以下のような知見を得た。 1.対人・コントロール不可能な状況では、ストレス反 応の違いが認知的評価に及ぼす影響はみられなかった。 2.対人・コントロール可能な状況では、ストレス低群 があると思わず、苦痛だと認知している。このことから、 の方がストレス高群よりも「コントロール可能性」得点が ストレス高群は低群に比べて脅威とも挑戦とも捉えられ 高かった。 る状況では、脅威が優位になり、影響性が高く、ストレス 3.対物・コントロール不可能な状況では、ストレス低 高群と比較してストレス低群は、挑戦と捉える人が多く、 群の方がストレス高群よりも「コントロール可能性」得点 苦痛に感じないと思われる。 が高かった。 以上のことから、ストレスの高低による認知的評価は 4.対物・コントロール可能な状況では、ストレス低群 「対人状況:コントロール不可」のような解決しにくい状 の方がストレス高群よりも「コントロール可能性」得点が 況下では差が生じにくく、 「対物状況:コントロール可能」 高く、「脅威性」得点と「影響性」得点が低かった。 のように、比較的解決しやすい状況下において差が生じる 5.脅威・挑戦の状況では、ストレス低群の方がストレ ことが明らかとなった。このことはストレス低群も解決し ス高群よりも「挑戦」得点が有意に高く、「脅威性」得点 にくい状況では、ストレス高群との差が小さいことも意味 はストレス高群が高い値を示し有意差が認められた。 している。また、ストレス高群と比較してストレス低群は、 これらの結果から、解決しやすい状況下では、ストレス 自分ではどうすることもできない状況を受け入れやすい 高群の認知的評価はネガティブになりやすいことが示唆 こと、さらに、脅威とも挑戦ともとれる状況では、ストレ された。 ス低群は前向きに捉え、脅威より挑戦が優位になりやすい 6.参考文献 ことが明らかとなった。 ストレスになるかならないかは、状況を克服することが 実際にできるか否かに関わらず、個人が主体的に「できる」 と評価した結果によるものであるという指摘がある 10)。 また、ストレッサーをコントロールできるものと評価する と、すべてのストレス反応が表出しにくいことも報告され ている 5)。つまり、状況を解決できるものか否かでストレ スとなるかならないかが決定されるのではなく、その状況 に対しコントロールできると感じる「コントロール感」が あるかないかによってストレス生起の有無が決定される ということが示されている。しかし、どのような状況下で 1) 真船浩介、鈴木綾子、 大塚泰正、 学校メンタルヘル ス、9、57-63 (2006) 2) 山田ゆかり、天野寛、 名古屋文理大学紀要、3、1-11 (2003) 3) 岡宏美、掛屋純子、山縣由子、小野晴子、新見公立短期 大学紀要、29、189-192 (2008) 4) 多田志麻子、三宅進、ノートルダム清心女子大学紀要、 23、81-87 (1999) 5) 水野喜子、石原金由、児童臨床研究所年報、13、21-34 (2000) も、こうした「コントロール感」の違いが生じるかどうか 6) 三浦正江、上里一郎、健康心理学研究、15、1-9 (2002) までは検討されていない。本研究の結果では、ストレス高 7) 酒井久実代、日本女子体育大学紀要、36、63-68 (2006) 低による「コントロール感」の差は、すべての状況に起こ 8) 折津政江、横山英世、野崎貞彦、村上正人、桂戴作、心 るのではなく、解決しにくい状況においてはストレス高群 も低群と同様の「コントロール感」であるが、解決しやす い状況においては、ストレス高群の方がストレス低群より も「コントロール感」が低いことが明らかとなった。すな わち、ストレスの高い人は、大きなストレッサーに直面す ることが多いわけではなく、解決しやすい状況に対して 「コントロール感」が弱いため、日常におこる小さなスト 身医学、39、595-602 (1999) 9) 川口美穂、岩手大学大学院研究紀要、9、37-45 (2001) 10)島津明人、ストレス心理学、川島書店、東京 (2002)、 31-53 研 究論 文抄 録 Abstracts of Published Reports (2014. 1 ~ 2014. 12) 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- 60 [Org. Biomol. Chem. 12, 6590-6597 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical & Medicinal Chemistry] A New Class of High-contrast Fe(II) Selective Fluorescent Probes Based on Spirocyclized Scaffolds for Visualization of Intracellular Labile Iron Delivered by Transferrin. Masato NIWA, Tasuku HIRAYAMA*, Kensuke OKUDA* and Hideko NAGASAWA* Iron is an essential metal nutrient that plays physiologically and pathologically important roles in biological systems. Herein, we report a new class of Fe2+-selective fluorescent probes based on the spirocyclization of hydroxymethylrhodamine and hydroxymethylrhodol scaffolds controlled by using our recently established N-oxide chemistry as a Fe2+-selective switch of fluorescence response. The spirocyclization strategy improved the turn-on rate dramatically, and reducing the size of the substituents of the N-oxide group enhanced the reaction rate against Fe2+. These new probes showed significant enhancements in the fluorescence signal against not only the exogenously loaded Fe2+but also the endogenous Fe2+levels. Furthermore, we succeeded in monitoring the accumulation of labile iron in the lysosome induced by transferrin-mediated endocytosis with a turn-on fluorescence response. [Drug Des. Devel. Ther. 8, 701-717 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical & Medicinal Chemistry] Optimization of Biguanide Derivatives as Selective Antitumor Agents Blocking Adaptive Stress Responses in the Tumor Microenvironment. Kosuke NARISE, Kensuke OKUDA*, Yukihiro ENOMOTO, Tasuku HIRAYAMA* and Hideko NAGASAWA* Adaptive cellular responses resulting from multiple microenvironmental stresses, such as hypoxia and nutrient deprivation, are potential novel drug targets for cancer treatment. We focused on developing anticancer agents targeting the tumor microenvironment (TME). In this study, thirteen new compounds, designed and synthesized on the basis of the arylmethylbiguanide scaffold of phenformin, were used in structure activity relationship studies of inhibition of hypoxia inducible factor (HIF)-1 and unfolded protein response (UPR) activation and of selective cytotoxicity under glucose-deprived stress conditions, using HT29 cells. The guanidine analog had activities comparable with those of phenformin. Our structural development studies provided promising candidates for a novel anticancer agent targeting the TME for selective cancer therapy, to be subjected to further in vivo study. [Free Radic. Res. 48, 990-995 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical & Medicinal Chemistry] Histological Detection of Catalytic Ferrous Iron with the Selective Turn-on Fluorescent Probe RhoNox-1 in a Fenton Reaction-based Rat Renal Carcinogenesis Model. Takahiro MUKAIDE, Yuka HATTORI, Nobuaki MISAWA, Satomi FUNAHASHI, Li JIANG, Tasuku HIRAYAMA*, Hideko NAGASAWA* and Shinya TOYOKUNI Iron overload of a chronic nature has been associated with a wide variety of human diseases, including infection, carcinogenesis, and atherosclerosis. Recently, a highly specific turn-on fluorescent probe (RhoNox-1) specific to labile ferrous iron [Fe(II)], but not to labile ferric iron [Fe(III)], was developed. In this study, we applied this probe to frozen sections of an established Fenton reaction-based rat renal carcinogenesis model with an iron chelate, ferric nitrilotriacetate (Fe-NTA), in which catalytic iron induces the Fenton reaction specifically in the renal proximal tubules, presumably after iron reduction. Notably, this probe reacted with Fe(II) but with neither Fe(II)-NTA, Fe(III) nor Fe(III)-NTA in vitro. [Chemistry 20, 4156-4162 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical & Medicinal Chemistry] Facile One-pot Synthesis of [1, 2, 3]Triazolo[1, 5-a]pyridines from 2-acylpyridines by Copper(II)-catalyzed Oxidative N-N Bond Formation. Tasuku HIRAYAMA*, Satoshi UEDA, Takahiro OKADA, Norihiko TSURUE, Kensuke OKUDA* and Hideko NAGASAWA* An efficient and simple method for the synthesis of various [1, 2, 3]triazolo[1, 5-a]pyridines has been established. The method involves a copper(II)-catalyzed oxidative N-N bond formation that uses atmospheric oxygen as the terminal oxidant following hydrazonation in one pot. The use of ethyl acetate as the solvent dramatically promotes the oxidative N-N bond-formation reaction and enables the application of oxidative cyclization in the efficient one-pot reaction. A mechanism for the reaction was proposed on the basis of the results of a spectroscopic study. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- [J. Heterocycl. Chem. 51, 518–522 (2014)] 61 [Lab. of Pharmaceutical & Medicinal Chemistry] Polycyclic N-Heterocyclic Compounds. Part 78: Synthesis of N-[2-([1,2,4]Oxadiazol-5-yl)cyclohepten-1-yl]formamide Oximes and their Evaluation as Inhibitors of Platelet Aggregation. Kensuke OKUDA*, Ying-Xue ZHANG, Takashi HIROTA and Kenji SASAKI N-[2-([1,2,4]oxadiazol-5-yl)cyclohepten-1-yl]formamide oximes were synthesized by fusion of (6,7,8,9-tetrahydro-5H-cyclohepta[1,2-d]pyrimidin-4-yl)amidines with hydroxylamine hydrochloride through a subsequent rearrangement reaction. Effects of the products as well as the structurally related N-[4-([1,2,4]oxadiazol-5-yl)-2,3-dihydro[1] benzoxepin-5-yl]formamide oximes and N-[4-([1,2,4]oxadiazol-5-yl)-2,3-dihydro[1]benzothiepin-5-yl]formamide oximes on platelet aggregation were evaluated. [J. Heterocycl. Chem. 51, 661–668 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical & Medicinal Chemistry] Polycyclic N-Heterocyclic Compounds. Part 76: Synthesis and Anti-platelet Evaluation of 2,4-Disubstituted 5,6-Dihydro[1]benzofuro[3’,2’:2,3]oxepino[4,5-d]pyrimidines. Kensuke OKUDA*, Jun-ichi TAKANO, Takashi HIROTA, Kenji SASAKI, Yuta NISHINA and Hiroyuki ISHIDA Reaction of several Vilsmeier reagents with 5-amino-2,3-dihydro[1]benzofuro[3,2-b]oxepin-4-carbonitrile gave tetracyclic 2-substituted 4-chloro-5,6-dihydro[1]benzofuro[3’,2’:2,3]oxepino[4,5-d]pyrimidines. The structure of one of these, the 4-chloro-2-phenyl derivative, was confirmed by X-ray crystallography. Treatment of the 4-chloro derivatives with simple amines as nucleophile afforded 2-substituted 4-amino derivatives. A pentacyclic compound was also obtained by dehydrative ring closure. These products were evaluated for anti-platelet activity and some showed potency comparable to aspirin. [J. Heterocycl. Chem. 51, 788–793 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical & Medicinal Chemistry] Polycyclic N-Heterocyclic Compounds. Part 83: Synthesis of 2,4-Disubstituted 5,6-Dihydro[1]benzofuro[3’,2’:2,3]oxepino[4,5-d]pyrimidines and 2,4,5-Trisubstituted 5,6-Dihydro[1]benzofuro[2’,3’:5,6]pyrano[4,3-d]pyrimidines from 4-Chloro-5,6-dihydro[1]benzofuro[3’,2’:2,3]oxepino[4,5-d]pyrimidines. Kensuke OKUDA*, Jun-ichi TAKANO, Takashi HIROTA and Kenji SASAKI Treatment of 2-substituted 4-chloro-5,6-dihydro[1]benzofuro[3’,2’:2,3]oxepino[4,5-d]pyrimidines with simple alcohols and thiols as nucleophile afforded 2-substituted 4-alkoxy (or sulfanyl) derivatives. In the case of alkoxide nucleophiles, rearranged reaction products were also obtained. X-ray crystallography was used to support the structure assignment of the rearranged product. [J. Heterocycl. Chem. 51, 891–898 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical & Medicinal Chemistry] Polycyclic N-Heterocyclic Compounds. Part 80: Synthesis and Evaluation of Effects on in vitro Pentosidine Formation of 5,6-Dihydro[1]benzothieno[3',2':2,3]thiepino[4,5-d]pyrimidine and Related Compounds. Kensuke OKUDA*, Yutaka ITSUJI, Takashi HIROTA and Kenji SASAKI Reaction of 3-(3-cyanopropylthio)[1]benzothiophene-2-carbonitrile with tert-BuONa gave 5-amino-1,2-dihydro[1]benzothieno[3,2-d]thieno[2,3-b]pyridine and 5-amino-2,3-dihydro[1]benzothieno[3,2-b]thiepin-4-carbonitrile. The latter compound served as a convenient scaffold for the synthesis of the new heterocycles, [1]benzothieno[3’,2’:2,3]thiepino[4,5-d]pyrimidines. All of our new tetracyclic products were evaluated for in vitro inhibitory activity on the formation of pentosidine, which is one of representative advanced glycation end products. 62 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- [J. Heterocycl. Chem. 51, 911–920 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical & Medicinal Chemistry] Polycyclic N-Heterocyclic Compounds. Part 82: Synthesis and Evaluation of Anti-platelet Aggregation Activity of 2,4-Disubstituted 5,6-Dihydro[1]benzothiepino[5,4-d]pyrimidine and Related Compounds. Kensuke OKUDA*, Takashi HIROTA and Kenji SASAKI We have synthesized a large number of tricyclic 2-substituted 4-alkylamino-5,6-dihydro[1]benzothiepino[5,4-d]pyrimidines as part of our research to develop new effective anti-platelet drugs. A variety of alkyl and aryl groups were used as substituents at the 2-position. Evaluation of the effects of the newly synthesized compounds on collagen-induced platelet aggregation revealed several promising anti-platelet candidates with potencies superior to aspirin. [J. Heterocycl. Chem. 51, 972–981 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical & Medicinal Chemistry] Polycyclic N-Heterocyclic Compounds. Part 75: Synthesis of 2,4-Disubstituted 5,6-Dihydro[1]benzoxepino[5,4-d]pyrimidines and 12-Substituted 1,2,4,5-Tetrahydro[1]benzoxepino[4,5-e]imidazo[1,2-c]pyrimidines as Potential Anti-platelet Aggregators. Kensuke OKUDA*, Yuko YAMAMOTO, Takashi HIROTA and Kenji SASAKI Libraries of tricyclic 2-substituted 4-alkylamino-5,6-dihydro[1]benzoxepino[5,4-d]pyrimidines and tetracyclic 12-substituted 1,2,4,5-tetrahydro[1]benzoxepino[4,5-e]imidazo[1,2-c]pyrimidines were synthesized as part of our research to develop new effective anti-platelet drugs. Several alkyl and aryl groups were used as substituents at the 2-position. Evaluation of the effects of the newly synthesized compounds on collagen-induced platelet aggregation revealed several promising anti-platelet candidates with potencies superior to aspirin. [J. Heterocycl. Chem. 51, 1528–1530 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical & Medicinal Chemistry] Polycyclic N-Heterocyclic Compounds. Part 81: Synthesis and Evaluation of Pentacyclic 1,2,4,5-Tetrahydro[1]benzothieno[2’,3’:6,7]thiepino[4,5-e]imidazo[1,2-c]pyrimidine and Related Compounds as Potential Anti-platelet Aggregators. Kensuke OKUDA*, Yutaka ITSUJI and Takashi HIROTA Dehydrative ring closure reactions were carried out on fused 4-(2-hydroxyethylamino (or 2-hydroxyethyloxy or 2-hydroxyethylthio)pyrimidines to give fused 2,3-dihydroimidazo[1,2-c] (or 2,3-dihydrooxazolo[3,2-c] or 2,3-dihydrothiazolo[3,2-c])pyrimidines. This reaction produced the pentacyclic dehydrated ring-closure derivatives from the 2-hydroxyethylamino-derivative and 2-hydroxyethylthio-derivative, respectively. In contrast, 2-hydroxyethyloxy-derivative gave the rearrangement product. Effects of the synthesized compounds on collagen-induced platelet aggregation were also evaluated. [J. Heterocycl. Chem. 51, 1607–1614 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical & Medicinal Chemistry] Polycyclic N-Heterocyclic Compounds. Part 79: Synthesis of 2,4-Disubstituted 6,7-Dihydro-5H-benzo[6,7]cyclohepta[1,2-d]pyrimidines as Potential Anti-platelet Aggregators. Kensuke OKUDA*, Takashi HIROTA and Kenji SASAKI Libraries of tricyclic 2-substituted 4-alkylamino-6,7-dihydro-5H-benzo[6,7]cyclohepta[1,2-d]pyrimidines were synthesized as part of our research to develop new effective anti-platelet drugs. Several alkyl and aryl groups were used as substituents at the 2-position. Evaluation of the effects of the newly synthesized compounds on collagen-induced platelet aggregation revealed several promising anti-platelet candidates with potencies superior to aspirin. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- [Chem. Eur. J. 20, 510-516 (2014)] 63 [Lab. of Organic Chemistry] Iron-Catalyzed Friedel-Crafts Benzylation Using Benzyl TMS Ethers at Room Temperature. Yoshinari SAWAMA,* Yuko SHISHIDO, Takahiro KAWAJIRI, Ryota GOTO, Yasunari MONGUCHI and Hironao SAJIKI* Friedel–Crafts benzylations between unactivated arenes and benzyl alcohol derivatives are clean and straightforward processes to construct biologically useful di- and triarylmethanes. We have established an efficient iron-catalyzed Friedel–Crafts benzylation method at room temperature that uses benzyl TMS ethers as substrates, which are poorly reactive under common nucleophilic substitution conditions. The reaction seems to progress through iron-catalyzed self-condensation of the benzyl TMS ether to the corresponding dibenzylic ether. The use of excess arene relative to benzyl TMS ether produced mono-benzylated arene (di- and tri-arylmethane products), whereas the use of excess benzyl TMS ether versus arene provided bis-benzylated arene (polyarylated products) in high yields and regioselectivities. In previous methods, the latter double Friedel–Crafts benzylations hardly proceed. [Heterocycles 88, 233-243 (2014)] [Lab. of Organic Chemistry] Cu/HP20-Catalyzed Solvent-Free Huisgen Cycloaddition at Ordinary Temperatures. Yoshiaki KITAMURA, Kazumi TANIGUCHI, Tomohiro MAEGAWA, Yasunari MONGUCHI, Yukio KITADE and Hironao SAJIKI* We have developed an environmentally friendly and highly efficient solvent-free Cu(I)-catalyzed azide-alkyne cycloaddition (CuAAC) reaction using a polymer-supported copper catalyst (Cu/HP20). Substrates poorly soluble in common organic solvents are also applicable to the present cycloaddition reaction without any solvents and provide the corresponding 1,4-triazole in high yields. [RSC Adv. 4, 8657-8660 (2014)] [Lab. of Organic Chemistry] Effect of Sodium Acetate in Atom Transfer Radical Addition of Polyhaloalkanes to Olefins. Yoshinari SAWAMA,* Ryosuke NAKATANI, Takahiro IMANISHI, Yuta FUJIWARA, Yasunari MONGUCHI and Hironao SAJIKI* The atom transfer radical addition of polyhaloalkanes, such as bromotrichloromethane and polyfluoroalkyl iodine, to olefins smoothly proceeds in the presence of sodium acetate as an efficient auxiliary agent in dimethoxyethane. The present transition metaland peroxide-free methodology is applicable to a broad scope of substrates. [Adv. Synth. Catal. 356, 313-318 (2014)] [Lab. of Organic Chemistry] Palladium on Carbon-catalyzed Gentle and Quantitative Combustion of Hydrogen at Room Temperatures. Yasunari MONGUCHI, Takashi IDA, Toshihide MAEJIMA, Takayoshi YANASE, Yoshinari SAWAMA, Yasushi SASAI, Shin-ichi KONDO and Hironao SAJIKI* A gentle oxidation of hydrogen in the presence of oxygen in various solvents was achieved under Pd/C-catalyzed conditions at ordinary pressures and temperatures. A quantitative generation of water toward the consumed oxygen was observed. The stability of H2O2, which would form as an intermediate, was increased in cold CF3CO2H even in the presence of Pd/C, and 64% H2O2 based on the consumed oxygen was detected. A mechanistic study revealed that the single electron transfer and generation of the hydroxyl radical are involved in the combustion process. The reactive oxygen species generated during the process was effectively utilized for the chemical oxidation of sulfides and phosphines to afford the corresponding sulfoxides and phosphine oxides, respectively. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- 64 [Chem. Eur. J. 20, 2631-2636 (2014)] [Lab. of Organic Chemistry] Chemoselective and Direct Functionalization of Methyl Benzyl Ethers and Unsymmetrical Dibenzyl Ethers Using Iron Trichloride. Yoshinari SAWAMA,* Ryota GOTO, Saori NAGATA, Yuko SHISHIDO, Yasunari MONGUCHI and Hironao SAJIKI* Methyl and benzyl ethers are widely utilized as protected alcohols due to their chemical stability, such as the low reactivity of the methoxy and benzyloxy groups as leaving groups under nucleophilic conditions. We have established the direct azidation of chemically stable methyl and benzyl ethers derived from secondary and tertiary benzyl alcohols. The present azidation chemoselectively proceeds at the secondary or tertiary benzylic positions of methyl benzyl ethers or unsymmetrical dibenzyl ethers and is also applicable to direct allylation, alkynylation, and cyanation reactions, as well as the azidation. [Tetrahedron 70, 4790-4798 (2014)] [Lab. of Organic Chemistry] Systematic Evaluation of the Palladium-Catalyzed Hydrogenation under Flow Conditions. Tomohiro HATTORI, Aya TSUBONE, Yoshinari SAWAMA, Yasunari MONGUCHI* and Hironao SAJIKI* Four types of heterogeneous Pd catalysts (10% Pd/C, 10% Pd/HP20, 0.5% Pd/MS3A, and 0.3% Pd/BN) were applied to the flow hydrogenation to systematically evaluate the appropriate conditions for the reduction of a wide variety of reducible functionalities. The use of 10% Pd/C and 10% Pd/HP20 allowed the hydrogenation of various reducible functionalities by a single-pass of the substrateeMeOH solution through the catalyst cartridge, while 0.5% Pd/MS3A and 0.3% Pd/BN catalyzed a novel chemoselective hydrogenation; only alkene, alkyne, azide, and nitro functionalities could be reduced with other coexisting reducible functionalities intact. [Green Chem. 16, 3439-3443 (2014)] [Lab. of Organic Chemistry] Rhodium on Carbon-Catalyzed Hydrogen Scavenger- and Oxidant-free Dehydrogenation of Alcohols in Aqueous Media. Yoshinari SAWAMA,* Kosuke MORITA, Tsuyoshi YAMADA, Saori NAGATA, Yuki YABE, Yasunari MONGUCHI and Hironao SAJIKI* The efficient and catalytic dehydrogenation of alcohols is a clean approach for preparing carbonyl compounds accompanied only by the generation of hydrogen gas. We have accomplished the heterogeneous rhodium-on-carbon catalyzed dehydrogenation of secondary, as well as primary, alcohols to the corresponding ketones and carboxylic acids in water under basic conditions. [Adv. Synth. Catal. 356, 1866-1872 (2014)] [Lab. of Organic Chemistry] Palladium on Carbon-Catalyzed One-Pot N-Arylindole Synthesis: Intramolecular Aromatic Amination, Aromatization, and Intermolecular Aromatic Amination. Yasunari MONGUCHI,* Takahisa MARUMOTO, Haruki TAKAMATSU, Yoshinari SAWAMA and Hironao SAJIKI* Indole and indoline derivatives were selectively and temperature dependently synthesized via the intramolecular cross-coupling reaction between the amino and aromatic bromine functionalities of 2-bromophenetylamine derivatives in the presence of 10% palladium on carbon (Pd/C), 1,1'-bis(diphenylphosphino)ferrocene (DPPF), and NaOt-Bu in mesitylene at 140 and 200 °C, respectively. The neutralization using acetic acid after formation of the indoline derivatives effectively promoted their aromatization, and the corresponding indole derivatives were obtained at 140 °C. Furthermore, various aryl groups were also introduced to the N-1 position of the indole, pyrrole, and carbazole by their direct intramolecular arylation with aryl halides and the one-pot protocol for the N-arylindole synthesis from 2-bromophenetylamine was developed. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- [Tetrahedron 70, 4540-4546 (2014)] 65 [Lab. of Organic Chemistry] Efficient Partial Hydrogenation of Trichloromethyl to Geminal-Dichloromethyl Groups in Platinum on Carbon-Catalyzed System. Yoshinari SAWAMA,* Takahiro IMANISHI, Ryosuke NAKATANI, Yuta FUJIWARA, Yasunari MONGUCHI and Hironao SAJIKI* While gem-dichloromethyl groups can be directly synthesized by the mono-dechlorination of the corresponding trichloromethyl groups, the suppression control of the over-reduction to form chloromethyl or methyl functionalities is quite difficult.We have established the efficient and widely applicable monodechlorination method of the trichloromethyl groups to form the corresponding gem-dichloromethyl groups using platinum on carbon in dimethylacetamide as a specific solvent at 25 °C under a hydrogen atmosphere. [Tetrahedron Lett. 55, 3160-3162 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical Synthetic Chemistry] 2-Chloroanthraquinone-catalyzed aerobic photo-oxidative synthesis of diacylamines from benzylamides. Izuho ITOH, Yoko MATSUSAKI, Akitoshi FUJIYA, Norihiro TADA, Tsuyoshi MIURA and Akichika ITOH* In this Letter, the aerobic photo-oxidative green synthesis of diacylamines from benzylamides in the presence of molecular oxygen and catalytic amounts of 2-chloroanthraquinone under visible light irradiation from a fluorescent lamp was reported. [Synlett 25, 1453-1457 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical Synthetic Chemistry] Aerobic photooxidative carbon-carbon bond formation between tertiary amines and carbon nucleophiles using 2-chloroanthra-9,10-quinone. Tomoaki YAMAGUCHI, Tomoya NOBUTA, Norihiro TADA, Tsuyoshi MIURA, Tatsushi NAKAYAMA, Bunji UNO and Akichika ITOH* Carbon-carbon bonds were formed between tertiary amines and carbon nucleophiles such as nitroalkanes, ketones, trimethylsilyl cyanide, or indole under aerobic photooxidative conditions by using 2-chloroanthra-9,10-quinone as an organocatalyst. This reaction uses harmless visible-light irradiation with molecular oxygen as the terminal oxidant. [Tetrahedron Lett. 55, 6543-6546 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical Synthetic Chemistry] Aerobic photooxidative synthesis of benzimidazoles from aromatic aldehydes and diamines using catalytic amounts of magnesium iodide. Yoshitomo NAGASAWA, Yoko MATSUSAKI, Toshiyuki HOTTA, Tomoya NOBUTA, Norihiro TADA, Tsuyoshi MIURA and Akichika ITOH* This Letter proposes a safe, mild, and environmentally benign method for the synthesis of benzimidazoles from aromatic aldehydes and diamines by aerobic photooxidation using irradiation with visible light, a catalytic amounts of magnesium iodide, which serves as both a Lewis acid and an oxidant, and molecular oxygen as the terminal oxidant. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- 66 [Synlett 25, 2613-2616 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical Synthetic Chemistry] Aerobic photooxidative synthesis of phenols from arylboronic acids using 2-propanol as solvent. Keita MATSUI, Takafumi ISHIGAMI, Tomoaki YAMAGUCHI, Eiji YAMAGUCHI, Norihiro TADA, Tsuyoshi MIURA and Akichika ITOH* A useful method for the synthesis of phenols from arylboronic acids with hydrogen peroxide generated in situ by aerobic photooxidation is reported. This reaction uses visible-light irradiation and easily handled 2-chloroanthraquinone as an organocatalyst under mild conditions, i.e., an air atmosphere and ambient pressure and temperature. Because of this method is metal- and base-free conditions, it represents an environmentally benign approach to the synthesis of phenols from arylboronic acids. [Tetrahedron: Asymmetry 25, 974-979 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical Synthetic Chemistry] Asymmetric conjugate addition of malonate to α,β-unsaturated ketones in water using a perfluoroalkanesulfonamide organocatalyst. Yuji KAMITO, Akira MASUDA, Hiroki YUASA, Norihiro TADA, Akichika ITOH*, Kosuke NAKASHIMA, Shin-ichi HIRASHIMA, Yuji KOSEKI and Tsuyoshi MIURA Perfluoroalkanesulfonamide organocatalyst efficiently promotes asymmetric Michael additions of malonates to enones in cyclohexane or water to produce the corresponding addition products with excellent yields and with up to 99% ee. [Tetrahedron Lett. 55, 4619-4622 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical Synthetic Chemistry] Cinchona-diaminomethylenemalononitrile organocatalyst for asymmetric conjugate addition of 1,3diketone to nitroalkene. Shin-ichi HIRASHIMA, KosukeNAKASHIMA, Yuki FUJINO, Ryoga ARAI, Takaaki SAKURAI, Masahiro KAWADA, Yuji KOSEKI, Miho MURAHASHI, Norihiro TADA, Akichika ITOH* and Tsuyoshi MIURA A diaminomethylenemalononitrile organocatalyst with a cinchona motif efficiently promotes the enantioselective conjugate addition of acetylacetone to various nitroalkenes to yield the corresponding addition products in high to excellent yields with up to 89 % ee. [RSC Adv. 4, 13191-13194 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical Synthetic Chemistry] Molecular-iodine-catalyzed aerobic oxidative synthesis of β-hydroxy sulfones from alkenes. Atsumasa KARIYA, Tomoaki YAMAGUCHI, Tomoya NOBUTA, Norihiro TADA, Tsuyoshi MIURA and Akichika ITOH* The synthesis of β-hydroxy sulfones from alkenes and sodium benzene sulfinates under aerobic oxidative conditions was achieved in the presence of a catalytic amount of molecular iodine. Molecular oxygen in air served as the terminal oxidant and the catalytic amount of molecular iodine acted as the sulfonyl radical initiator and peroxide reductant. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- [Synlett 25, 884-888 (2014)] 67 [Lab. of Pharmaceutical Synthetic Chemistry] Photooxidative cleavage of aromatic alkenes into aldehydes using catalytic iodine and molecular oxygen under visible light irradiation. Akitoshi FUJIYA, Atsumasa KARIYA, Tomoya NOBUTA, Norihiro TADA, Tsuyoshi MIURA and Akichika ITOH* A method for the photooxidative cleavage of stilbenes was reported to give aldehydes using O2 as the terminal oxidant, visible light, and a catalytic amount of I2 and trifluoroacetic acid. [Tetrahedron Lett. 55, 2703-2706 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical Synthetic Chemistry] Pyrrolidine-diaminomethylenemalononitrile organocatalyst for Michael additions of carbonyl compounds to nitro alkenes under solvent-free conditions. Kosuke NAKASHIMA, Shin-ichi HIRASHIMA, Masahiro KAWADA, Yuji KOSEKI, Norihiro TADA, Akichika ITOH* and Tsuyoshi MIURA The novel pyrrolidine-diaminomethylenemalononitrile organocatalyst I promotes the asymmetric conjugate addition of a carbonyl compound to a nitro alkene to afford the corresponding adduct in high yield with ≤99% ee under solvent-free conditions. [Tetrahedron Lett. 55, 4334-4337 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical Synthetic Chemistry] Solvent-free asymmetric conjugate addition of malonates to enones using a diaminomethylenemalononitrile organocatalyst. Shin-ichi HIRASHIMA, Takaaki SAKAI, Kosuke NAKASHIMA, Nana WATANABE, Yuji KOSEKI, Kanako MUKAI, Yohei KANADA, Norihiro TADA, Akichika ITOH* and Tsuyoshi MIURA Diaminomethylenemalononitrile organocatalyst 1 efficiently promotes the asymmetric conjugate addition of malonates to α,βunsaturated ketones to afford the corresponding addition products in high to excellent yields with up to 98% ee. [Fitoterapia 92, 9-15 (2014)] [Lab. of Pharmacognosy] Anti-androgenic activity of hydroxyxanthones in prostate cancer LNCaP cells. Toshinobu SHAKUI, Kazuhiro IGUCHI, Misako BABA, Kazuyuki HIRANO, Tetsuro ITO, Masayoshi OYAMA*, Munekazu IINUMA, Shigeyuki USUI, and Hideki TOSA Anti-androgens are used to treat prostate cancer. Here, we report that hydroxyxanthones from a plant extract act as antiandrogens in androgen receptor (AR)-positive prostate cancer LNCaP cells. Anti-androgenic activity of the ethanol extract from Garcinia subelliptica was observed in a luciferase assay using LNCaP/MMTV cells with a stably integrated mouse mammary tumor virus (MMTV) promoter. HPLC-based activity profiling followed by a chemical library-based assay strategy enabled the rapid identification of several active principles bearing a xanthone core substituted with hydroxyl and isoprenyl groups. Among the active compounds, 2-(1,1-dimethyl-allyl)-1,4,5,6-tetrahydroxyxanthone (subelliptenone F) was identified as a potent inhibitor of AR transcriptional activity. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- 68 [Tetrahedron Lett. 55, 314-318 (2014)] [Lab. of Pharmacognosy] Dehydroxylation of stilbenoid oligomers: absolute configuration determination via comparison of experimental and theoretical electronic circular dichroic spectra. Tetsuro ITO* and Tatsuo NEHIRA Dehydroxylation of naturally occurring oligomeric resveratrol derivatives resulted in the formation of compounds with dramatically reduced principal stable conformers. In addition, dehydroxylation allowed the determination of the absolute configurations of the original resveratrols via comparison of experimental and theoretical electronic circular dichroic spectra. Notably, the absolute configuration of pauciflorol B was identified using this novel procedure, which is the first application of dehydroxylated derivatives for the determination of the absolute configuration of naturally occurring polyphenols. [Tetrahedron 70, 5640-5649 (2014)] [Lab. of Pharmacognosy] Structure elucidation of highly condensed stilbenoids: chiroptical properties and absolute configuration. Tetsuro ITO*, Hiromi ITO, Tatsuo NEHIRA, Ryuichi SAWA, and Munekazu IINUMA We investigated the potential roles of the skeleton-based comparative study of electronic circular dichroism spectra for an application of absolute configuration determination of oligostilbenoids. This approach was ultimately achieved followed by the isolation and elucidation of relative configuration of upunaphenol Q (new compound) and vateriaphenol A, namely two octamers are dimeric tetramers of resveratrol. The common building blocks provides further insight into how smaller oligostilbenoids are apparently conserved during downstream metabolites, as well as providing additional impetus to resolve absolute configuration of highly condensed stilbenoids. They also underline the importance of studies on determination of absolute configuration of common building blocks in the chemical library and to provide chiroptical properties. [J. Ethnopharmacol. 155, 731-735 (2014)] [Lab. of Pharmacognosy] Effects of Sceletium tortuosum in rats. Melissa J. LORIA, Zulfiqar ALI, Naohito ABE*, Ikhlas A. KHAN, and Kenneth J. SUFKA ETHNOPHARMACOLOGICAL RELEVANCE: Broad historical and current uses in addition to diverse activity on CNS targets may make Sceletium tortuosum a useful therapeutic in a variety of clinical settings. This study sought to more broadly characterize activity of Sceletium tortuosum and mesembrine in a number of common, rodent-based assays that model nociception, depression, anxiety, ataxia, and abuse liability. MATERIALS AND METHODS: Male Sprague-Dawley were administered Sceletium tortuosum extract products and behavioral responses were evaluated in the conditioned place preference (CPP), hot plate, forced swim, elevated plus, and rotarod tests. [J. Appl. Biomed. 12, 291-299 (2014)] [Lab. of Pharmacognosy] Possible hepatocellular toxicity of EGCG under the influence of an inflammagen. Ibrahim G. SALEH, Zulfiqar ALI, Naohito ABE*, Farid M. HAMADA, Mohamed F. ADB-ELLAH, Larry A. WALKER, Ikhlas A. KHAN, and Mohammad K. ASHFAQ Epigallocatechin-3-gallate (EGCG) is widely used as a weight-controlling supplement. Concerns about its safety evoked after cases of hepatotoxicity occurred upon its use. The underlying factors that could be involved in EGCG associated hepatotoxicity are not fully studied. In this study, we investigated the possible impact of lipopolysaccharide (LPS), as an inflammagen, on the effect of EGCG on hepatocytes. HepG2 cells were treated with different concentrations of EGCG (100, 200, 500 μM), with and without LPS (10 nM)-presensitization of the cells. Viability of HepG2 cells decreased with the increased concentrations of EGCG; the viability was even lesser in LPS-presensitized cells. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- [J. Ethnopharmacol. 151, 361-364 (2014)] 69 [Lab. of Pharmacognosy] The effect of Salvia divinorum and Mitragyna speciosa extracts, fraction and major constituents on place aversion and place preference in rats. Kenneth J. SUFKA, Melissa J. LORIA, Kevin LEWELLYN, Jordan K. ZJAWIONY, Zulfiqar ALI, Naohito ABE*, and Ikhlas A. KHAN ETHNOPHARMACOLOGICAL RELEVANCE: Consumer use of botanicals has increased despite, in many instances, the paucity of research demonstrating efficacy or identifying liabilities. This research employed the place preference/aversion paradigm to characterize the psychoactive properties of Salvia divinorum ext. (10, 30, 100 mg/kg), salvinorin A (0.1, 0.3, 1.0 mg/kg), Mitragyna speciosa MeOH ext. (50, 100, 300 mg/kg), Mitragyna speciosa alkaloid-enriched fraction (12.5, 25, 75 mg/kg) and mitragynine (5, 10, 30 mg/kg) in rats. [Anal. Sci. 30, 519-522 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical Analytical Chemistry] Facile and Effective Pretreatment Using Stop and Go Extraction Tips for LC-MS/MS Analysis of Trace Amounts of DNA Adducts. Hiroya MURAKAMI, Rieko KAWAMURA, Takayoshi SAKAKIBARA, Yukihiro ESAKA, Yasushi ISHIHAMA and Bunji UNO* The preparation and application of a stop and go extraction tip (StageTip) used for pre-purification of sample solutions for LC–MS/MS analysis of DNA adducts was simplified and improved to increase throughput while maintaining high adduct selectivity. It was demonstrated that the StageTip composed of two sheets of a poly(styrene-divinylbenzene) copolymer disk was easily prepared and useful for selective extraction of trace amounts of DNA adducts from a sample solution containing a great quantity of normal deoxynucleosides. [Chem. Pharm. Bull. 62, 88-91 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical Analytical Chemistry] Electrochemical Analysis in a Liposome Suspension Using Lapachol as a Hydrophobic Electro Active Species. Noriko OKUMURA, Shiori WAKAMATSU and Bunji UNO* This study demonstrated that the electro-chemical analysis of hydrophobic quinones can be performed in liposome suspension systems. We prepared and analyzed liposome suspensions containing lapachol, which is a quinone-based anti-tumor activity compound. In this suspension system, a simple one redox couple of lapachol is observed. These results are quite different from those obtained in organic solvents. In addition, the pH dependence of redox behaviors of lapachol could be observed in multilamellar vesicle (MLV) suspension system. This MLV suspension system method may approximate the electrochemical behavior of hydrophobic compounds in aqueous conditions. A benefit of this liposome suspension system for electrochemical analysis is that it enables to observe water-insoluble compounds without using organic solvents. [J.Chromatogr. A 1358, 261-268 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical Analytical Chemistry] Stepwise Elusion Method in Micellar Electrokinetic Chromatography via Sequential Use of Lithium Perfluorooctadecyl Sulfonate and Lithium Dodecyl Sulfate. Yukihiro ESAKA*, Fumiaki RIN, Miki KOBAYASHI, Ryohei OSAKO, Hiroya MURAKAMI and Bunji UNO The present stepwise elution method of MEKC is performed by replacing the inlet reservoir of a first running solution containing lithium perfluorooctadecyl sulfonate (LPFOS) with that of a second running solution containing lithium dodecyl sulfate (LDS) during a single separation run in the absence of electroosmotic flow under acidic conditions, where LPFOS micelles work as carriers in first and then LDS micelles turn over. Effective separation of 15 nonionic aromatic compounds was controlled well by adjusting the time in the inlet reservoir, which could not be accomplished with systems using only LPFOS or only LDS, with significant changes in the elution order where necessary. Furthermore, separations with the present stepwise method were easily simulated. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- 70 [Chromatography 35, 155-162 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical Analytical Chemistry] Simultaneous Analysis of Polymethoxyflavones and Flavanone Glycosides in Citrus Fruits by Micellar Electrokinetic Chromatography Using Sodium Deoxycholate. Yukihiro ESAKA*, Hiroya MURAKAMI, Bunji UNO, Hiroko MURATA, Munekazu IINUMA and Toshiyuki TANAKA Simultaneous MEKC separation of polymethoxyflavones (PMFs) and flavanone glycosides (FGs) was achieved by using sodium deoxycholate (SDC) in the presence of DMSO. Fourteen flavonoids consisting of 4 flavanones, including three FGs and 10 flavones, including nine PMFs, were separated nearly completely using 10 mM phosphate buffer (pH 7.2), 75 mM SDC, 20% DMSO, and 10% acetonitrile as a running solution for MEKC. Additionally, we proposed a novel index that is an alternative to migration time and corrects variation of migration times in measurements successfully. Some of the flavonoids in fruits such as flat lemon and ponkan orange were identified with the help of this index. [Chem. Pharm. Bull., 62, 538-544 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical Enginnering] Characterization of a doxorubicin liposome formulation by a novel in vitro release test methodology using column-switching high-performance liquid chromatography. Naozumi OHNISHI, Hiromasa TOMIDA, Yousuke ITO, Kohei TAHARA and Hirofumi TAKEUCHI* A novel in vitro release test methodology for a liposome formulation was developed using a column-switching high-performance liquid chromatography (HPLC) system. Doxorubicin (DXR) liposome formulations were used as a model. To evaluate the release profile, this system can be used for determining the released and encapsulated DXR in the liposome formulation separately. Comparison with a conventional in vitro release test methodology by dialysis revealed that the methodology developed by column-switching HPLC had no rate-limiting process of membrane permeation of the drug (which is occasionally observed in the dialysis method). The developed method did not require a large amount of sample or a complicated pretreatment. In addition, the developed column-switching HPLC system was applicable for characterization of the encapsulation profile of liposome formulations. [Journal of the Society of Powder Technology, Japan 51, 16-24 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical Enginnering] Preparation of Co-ground Mixture of Erythritol and Micronized Crospovidone Using a Ball Mill for Orally Disintegrating Tablets. Eri KATSUNO, Yoshiko TAKEUCHI, Kohei TAHARA and Hirofumi TAKEUCHI* The purpose of this study was to prepare a co-ground mixture of erythritol and micronized crospovidone (M-CPVP) to prepare the orally disintegrating tablets (ODTs) by directly compressing. The co-ground mixture was prepared by ball milling. Several processing time for ball mill and the different ratio of M-CPVP/erythritol were tested to determine the appropriate agglomerates for designing the ODTs. The ODTs containing co-ground M-CPVP/erythritol mixture showed rapid disintegration (<30s) and adequate hardness of the tablets (tensile strength>1.0MPa). On the other hand, the powder mixture without this co-processing had poor compactibility, and the tableting trouble such as capping was observed. We could also demonstrate that ODTs containing ethenzamide, as an active ingredient, could be prepared using the co-ground M-CPVP/erythritol. [Sci. Rep., 4, 1-8 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical Enginnering] Involvement of Autophagy in Antitumor Activity of Folate-appended Methyl-β-cyclodextrin. Risako ONODERA*, Keiichi MOTOYAMA, Nao TANAKA, Ayumu OHYAMA, Ayaka OKAMATSU, Taishi HIGASHI, Ryusho KARIYA, Seiji OKADA and Hidetoshi ARIMA Autophagy, the major lysosomal pathway for recycling intracellular components including organelles, is emerging as a key process regulating tumorigenesis and cancer therapy. Most recently, we newly synthesized folate-appended methyl-β-cyclodextrin (FA-M-β-CyD), and demonstrated the potential of FA-M-β-CyD as a new antitumor drug. In this study, we investigated whether anticancer activity of FA-M-β-CyD in folate receptor-α (FR-α)-positive tumor cells is involved in autophagy. FA-M-β-CyD induced the formation of autophagic vacuoles, which were partially colocalized with mitochondria, in KB cells. Taken together, these results suggest that FR-α-expressing cell-selective cytotoxic activity of FA-M-β-CyD could be mediated by the regulation of autophagy, rather than the induction of apoptosis. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- [J. Drug. Target., 22, 211-219 (2014)] 71 [Lab. of Pharmaceutical Enginnering] Potential Use of Complex of Doxorubicin with Folate-conjyugated Methyl-β-cyclodextrin for Tumor-selective Cancer Chemotherapy Keiichi MOTOYAMA, Risako ONODERA*, Ayaka OKAMATSU, Taishi HIGASHI, Ryusho KARIYA, Seiji OKADA and Hidetoshi ARIMA In the present study, to expand the application of folate-conjugated M-β-Cyclodextrin (FA-M-β-CyD) for cancer chemotherapy, we evaluated the potential of FA-M-β-CyD as a tumor-targeting anticancer drug carrier at a low dose. Antitumor activity of DOX was increased by the complexation with FA-M-β-CyD, but not with folate-conjugated β-CyD (FA-β-CyD) or M-β-CyD in KB cells, a folate receptor-α (FR-α)-expressing cell line. The DOX/FA-M-β-CyD complex showed markedly high antitumor activity, compared to DOX alone and DOX/M-β-CyD complex, after an intravenous administration to FR-α-expressing tumor cell-bearing mice. These findings suggest that FA-M-β-CyD could be useful as a tumor-selective carrier for anticancer drugs. [J. Control. Release, 193, 35-41 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical Enginnering] Potential use of fucose-appended dendrimer/α-cyclodextrin conjugates as NF-κB decoy carriers for the treatment of lipopolysaccharide-induced fulminant hepatitis in mice. Chiho AKAO, Takahiro TANAKA, Risako ONODERA*, Ayumu OHYAMA, Nana SATO, Keiichi MOTOYAMA, Taishi HIGASHI and Hidetoshi ARIMA The purpose of the present study is to treat lipopolysaccharide (LPS)-induced fulminant hepatitis by NF-κB decoy complex with fucose-appended dendrimer (G2) conjugate with α-cyclodextrin (Fuc-S-α-CDE (G2)). Fuc-S-α-CDE (G2, average degree of substitution of fucose (DSF2))/NF-κB decoy complex significantly suppressed nitric oxide and TNF-α production from LPS-stimulated NR8383 cells by adequate physicochemical properties and fucose receptor-mediated cellular uptake. Intravenous injection of Fuc-S-α-CDE (G2, DSF2)/NF-κB decoy complex extended the survival of LPS-induced fulminant hepatitis model mice. These results suggest that Fuc-S-α-CDE (G2, DSF2) has the potential for a novel Kupffer cell-selective NF-κB decoy carrier. [J. Phar. Nutri. Sci., 4, 37-42 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical Physical Chemistry] Synthesis of Amphiphilic Blockcopolymer Using Mechanically Produced Macromonomers Possessing Anhydrate as a Terminal Group and Its Application to Polymeric Micelles. Shin-ichi KONDO*, Machi OMOTO, Yuka SAWAMA, Yasushi SASAI, Kenjiro TATEMATSU, Yukinori YAMAUCHI and Masayuki KUZUYA We have synthesized macromonomers by mechanochemical reaction of poly(benzyl methacrylate) (PBzMA) and maleic anhydride (MA). The amphiphilic blockcopolymer was synthesized with macromonomer of PBzMA and amino-terminated polyethylene glycol. The number average molecular weight of the produced amphiphilic blockcopolymer was 33,000. Polymeric micelles were readily prepared from the present amphiphilic blockcopolymer by a dialysis method. The mean diameter of the micelles measured by dynamic light scattering was about 146 nm. It was shown that the present macromonomer mechanically produced can be used for the synthesis of amphiphilic bockcopolymer to form polymeric micelles. [J. Photopolym. Sci. Thechnol. 27, 385-388 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical Physical Chemistry] Intermolecular Interaction of Cyclodextrin Derivatives Immobilized onto the Self-Assembled Phospholipid Layer Fabricated by Plasma-Assisted Method. Shin-ichi KONDO*, Masako SUZUKI, Yasushi SASAI Yukinori YAMAUCHI and Masayuki KUZUYA We immobilized cyclodextrin derivatives possessing Cy3 or Cy5 (Per-6-ABCD-Cy3 or Per-6-ABCD-Cy5) on the self-assembled phospholipid layer fabricated by plasma-assisted method (LDPE-StA-PC-SA) and observed the fluorescence intensity ascribed to Cy3 and Cy5. Inclusion complex between Per-6-ABCD-Cy3 and Per-6-ABCD-Cy5 immobilized onto the self-assembled phospholipid layer was formed, so that the fluorescence resonance energy transfer was observed. The inclusion complex was decomposed by the addition of polyethylene glycol (PEG). It was suggested that PEG could be detected with the present film and that the amount of PEG might depend on the decrease of fluorescence intensity. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- 72 [J. Photopolym. Sci. Thechnol. 27, 369-372 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical Physical Chemistry] Plasma Irradiation to Poly(acrylic acid) Brushes Fabricated on Polystyrene Substrate and its Characterization. Yasushi SASAI*, Akihiro KOMATSU, Shin-ichi KONDO, Yukinori YAMAUCHI and Masayuki KUZUYA We have previously reported the method for fabrication of poly (acrylic acid) (pAAc) brushes on polystyrene (PS) substrate using surface-initiated atom transfer radical polymerization. The resultant sufaces with high density pAAc brushes exhibited nonfouling properties against protein adsorption. In this study, we examined the effects of argon plasma irradiation to the pAAc-grafted PS substrate on the surface hydrophilicity and the protein adsorption property. The argon plasma irradiation caused the decarboxylation in pAAc brushes so that the protein nonfouling properties were lost even by short plasma irradiation. These results indicated that the the protein adsorption onto pAAc-grafted surfaces could be easily controlled by plasma irradiation and this plasma technique would be applicable for fabricating substrates for protein and cell arrasy system. [J. Photopolym. Sci. Thechnol. 27, 389-392 (2014)] [Lab. of Pharmaceutical Physical Chemistry] A New Drug Delivery System Using Plasma-Irradiated Polysaccharide. Yukinori YAMAUCHI, Masayuki KUZUYA, Yasushi SASAI and Shin-ichi KONDO* We attempted to control the drug release from a double-compressed tablet containing theophylline core with outer layer which was consisted of hydroxylpropyl methyl cellulose acetate succinate and myo-inositol, or hydroxypropyl methyl cellulose phthalate and lactose. By use of difference in degradation properties of organic compounds, the oxygen plasma-irradiation varied outer layer so as to cause release of drugs at different rates, depending on plasma operational condition. The scanning electron microscope analysis suggested that concurrent occurrence of cross-link reaction and the micropores formation on outer layer converted rapid-release system into sustained-release system. [J. Toxicol. Sci. 39, 173-177 (2014)] [Lab. of Hygienic Chemistry & Molecular Toxicology] Gene Expression Differences in the Duodenum of 129/Sv and DBA/2 Mice Compared with that of C57BL/6J Mice. Shunji IMAI, Maki TOKUMOTO, Yasuyuki FUJIWARA, Akiko HONDA, Hasegawa, Yoshiyuki SEKO, Jin-Yong LEE, Hisamitsu NAGASE* and Masahiko SATOH We compared the cadmium (Cd) concentration in the liver and kidney of different strains of mice after exposure to 50 ppm Cd for 30 days via drinking water. Cd concentration in the liver and kidney of C57BL/6J mice were higher than those of 129/Sv and DBA/2 mice. Microarray analyses were performed to compare the expression levels of transport-related genes in the duodenum among the three strains of mice. The expression levels of 9 and 11 genes were elevated more than 2.0-fold and 13 and 12 genes were reduced less than 0.5-fold in 129/Sv mice and DBA/2 mice, respectively. Among these low expressed genes, 10 genes were common between the two strains. These results suggest that some of those genes might be involved in Cd absorption and its toxicity. [Endocrinology 155, 4275-4286 (2014)] [Lab. of Hygienic Chemistry & Molecular Toxicology] A Mollusk Retinoic Acid Receptor (RAR) Ortholog Sheds Light on the Evolution of Ligand Binding. Juliana GUTIERREZ-MAZARIEGOS, Eswar Kumar NADENDLA, Daniela LIMA, Keely PIERZCHALSKI, Jace W. JONES, Maureen KANE, Jun-Ichi NISHIKAWA, Youhei HIROMORI, Tsuyoshi NAKANISHI*, Miguel M. SANTOS, L. Filipe C. CASTRO, William BOURGUET, Michael SCHUBERT and Vincent LAUDET Here we present the identification and characterization of a retinoic acid receptor (RAR) from the mollusk Nucella lapillus (NlRAR). NlRAR specifically binds to DNA response elements organized in direct repeats as a heterodimer with retinoid X receptor, but does not bind all-trans retinoic acid (atRA) or other retinoids. Furthermore, NlRAR is unable to activate the transcription of reporter genes in response to stimulation by retinoids and to recruit coactivators in the presence of these compounds. Our data suggest that, RAR in mollusks has lost its affinity for atRA, highlighting the evolutionary plasticity of its ligand-binding pocket. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- [J. Neurophysiol. Neurol. Disord. 2, 1-8 (2014)] 73 [Lab. of Molecular Biology] Caffeic Acid Phenethyl Ester Ameliorates Depression- and Anxiety-like Behaviors of Mice Exposed to Chronic Mild Stress. Atsushi TORATANI, Haruko SOGA, Hidefumi FUKUMITSU, Hitomi SOUMIYA, Yoshiko FURUKAWA, Shoei FURUKAWA. Depression- and anxiety-like symptoms appeared in mice when they were kept in cages and sequentially subjected to leaning, drenching, and rotation within 1-2 days for 3 weeks (chronic mild stress: CMS). Caffeic acid phenethyl ester (CAPE), a component of propolis, showed a preventive effect against both symptoms when administered during the stress loading, and CAPE also displayed a therapeutic effect against both symptoms when administered after the stress loading. Furthermore, CAPE restored the CMS-induced decrease in the level of the phosphorylated forms of ERK1/2 and CREB in the hippocampus to a normal level. These results suggest that CAPE is a promising tool for therapy of mood disorders through activation of the hippocampal signaling cascade. [Cell Mol. Neurobiol. 34, 1199-1208 (2014)] [Lab. of Molecular Biology] Imipramine ameliorates pain-related negative emotion via induction of brain-derived neurotrophic factor. Seiko YASUDA, MitsuhiroYOSHIDA, Hirotaka YAMAGATA, Yasutake IWANAGA, Hiromi SUENAGA, Kozo ISHIKAWA, Masako NAKANO, Satoshi OKUYAMA, Yoshiko FURUKAWA, Shoei FURUKAWA*, Toshizo ISHIKAWA. We aimed to characterize the antidepressant effects of imipramine (IMI) without analgesia based on brain-derived neurotrophic factor (BDNF)/TrkB-mediated signaling and gene expression in chronic pain. Present results show that IMI reduces pain-related negative emotion without influencing pain and that this effect is diminished by denervation of 5-hydroxytryptamine (5-HT) neurons and by anti-BDNF treatment. IMI also normalizes derangement of ERK/CREB coupling, which leads to induction of BDNF. This suggests a possible interaction between 5-HT and BDNF. [J. Clin. Biochem. Nutr. 54, 129-135 (2014)] [Lab. of Clinical Pharmaceutics] The Involvement of Endoplasmic Reticulum Stress in Bile Acid-induced Hepatocellular Injury. Tetsuo ADACHI*, Tomoyuki KAMINAGA, Hiroyuki YASUDA, Tetsuro KAMIYA and Hirokazu HARA Secondary bile acids produced by enteric bacteria accumulate to high levels in the enterohepatic circulation and may contribute to the pathogenesis of hepatocellular injury. Relative hydrophobicity has been suggested to be an important determinant of the biological properties of these compounds, although the mechanism by which bile acids induce pathogenesis is not fully understood. On the other hand, endoplasmic reticulum (ER) stress has been shown to be involved in the induction and development of various pathogenic conditions. In this report, we demonstrated that the intensities of cytotoxicity and ER stress in HepG2 cells triggered by the bile acids tested were largely dependent on their hydrophobicity. In conclusion, our study demonstrated that bile acids induced ER stress, which in turn stimulated apoptosis in HepG2 cells, in a hydrophobicity-dependent manner. [Biol. Pharm. Bull. 37, 1042-1049 (2014)] [Lab. of Clinical Pharmaceutics] Newly Synthesized ‘Hidabeni’ Chalcone Derivatives Potently Suppress LPS-Induced NO Production via Inhibition of STAT1, but not NF-κB, JNK, and p38, Pathways in Microglia. Hirokazu HARA*, Ryoko IKEDA, Masayuki NINOMIYA, Tetsuro KAMIYA, Mamoru KOKETSU and Tetsuo ADACHI In this study, to explore chalcone derivatives with potent nitric oxide (NO) inhibitory activity, we synthesized ten compounds based on 'hidabeni' chalcone and examined their effects on LPS-triggered inducible NO synthase (iNOS) expression and NO production. Compounds C4 and C10 potently inhibited NO production. C4 and C10 suppressed LPS-induced iNOS expression via the inhibition of STAT1, but not NF-κB, JNK, and p38, pathways. C4 and C10 also suppressed LPS-induced expression of interferon regulatory factor 1 (IRF-1), which is an important transcription factor involved in iNOS expression. Our findings indicate that these chalcone derivatives are candidate compounds for preventing microglia-mediated neuroinflammation. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- 74 [Hypertension 114, e03287 (2014)] [Lab. of Clinical Pharmaceutics] Plasma Levels of Nitric Oxide Metabolites are Markedly Reduced in Normotensive Men with Electrocardiographically Determined Left Ventricular Hypertrophy. Fumihiko KAMEZAKI, Masato TSUTSUI, Masao TAKAHASHI, Shinjo SONODA, Tatsuhiko KUDO, Yoshihisa FUJINO, Tetsuo ADACHI*, Haruhiko ABE, Masaaki TAKEUCHI, Toshihiko MAYUMI and Yutaka OTSUJI In this study, we tested our hypothesis that normotensive subjects with ECG-LVH have reduced nitric oxide production. A total of 840 Japanese male workers were enrolled, and 579 eligible subjects were studied. ECG-LVH was assessed according to the Sokolow-Lyon voltage criteria and the Cornell voltage-duration product. The median level of plasma NOx (nitrite plus nitrate), a marker of systemic nitric oxide production, was markedly lower in the normotensive subjects with ECG-LVH (n=73) than in those without (n=506), and the clinical characteristics were significantly different between the 2 groups (each P<0.05). [Int. J. Anal. Bio- Sci. 2, 155-162 (2014)] [Lab. of Clinical Pharmaceutics] EC-SOD Levels in Pre-dialysis Sera and the Relationship with HOMA-R. Yojiro MAEHATA, Kaori MAEHATA, Tetsuo ADACHI*, Akira TANAKA, Naoko IKOSHI, Naotaka KURODA, Naoya KISHIKAWA, Teruo SHIBA, Makoto MATSUSHITA, Takaharu YANAGISAWA, Eisuke MAEHATA and Hiroji SHIMOMURA The study patients were characterized as having diabetic nephropathy, which was renal insufficiency with glomerular deterioration in the majority of cases. Focusing on a combination of extracellular SOD (EC-SOD) and insulin resistance index (HOMAR) as a new marker in dialysis samples (N = 48), we examined its usefulness as an index of disease status. The results yielded a correlation coefficient of r = 0.740 (p < 0.001) and regression equation y = 22.3x + 108.1, which indicated usefulness. [Fitoterapia 92, 9-15 (2014)] [Lab. of Pharmaceutics] Anti-androgenic Activity of Hydroxyxanthones in Prostate Cancer LNCaP Cells. Toshinobu SHAKUI, Kazuhiro IGUCHI, Tetsuro ITO, Masako BABA, Shigeyuki USUI*, Masayoshi OYAMA, Hideki TOSA, Munekazu IINUMA and Kazuyuki HIRANO We reported hydroxyxanthones from a plant extract act as anti-androgens in androgen receptor (AR)-positive prostate cancer LNCaP cells. Anti-androgenic activity of the ethanol extract from Garcinia subelliptica was observed in a luciferase assay using LNCaP/MMTV cells. HPLC-based activity profiling followed by a chemical library-based assay strategy enabled the rapid identification of several active principles bearing a xanthone core substituted with hydroxyl and isoprenyl groups. Among the active compounds, 2-(1,1-dimethyl-allyl)-1,4,5,6-tetrahydroxyxanthone was identified as a potent inhibitor of AR transcriptional activity. A quantitative RT-PCR analysis revealed that treatment with the compound resulted in a significant reduction in AR-induced gene (KLK3) expression. Hydroxyxanthone may be a possible candidate for the development of a new anti-androgenic molecule. [Yakugaku Zasshi 134, 575-580 (2014)] [Lab. of Pharmaceutics] The Investigation of Understanding and Comfort of Patients Taking Divigel® 1 mg. Midori SODA*, Kaori OGAWA, Yaeko HARADA, Suzuko KAWAMOTO, Miyoko TANAKA, Mayuko YAMAGUCHI, Chie TAKAHASHI, Asako UENO, Takashi OSADA, Akiko OGURI and Keiko YAMAMURA Hormone replacement therapy (HRT) can improve the quality of life (QOL) of patients with menopausal symptoms. In this study, we investigated the understanding of medicines and diseases. Responses of 37 patients taking estradiol gel (Divigel®1mg) indicated that 70% of patients failed to use the gel as prescribed, and they had poor knowledge of both the sites where the gel shouldn’t be applied and appropriate measures to take if having forgotten to apply the gel (43% and 11% correct understanding, respectively). Accordingly, pharmacists should facilitate proper adherence to HRT to improve and maintain women’s QOL in the perimenopausal period, necessitating they actively provide pharmaceutical care such as preparing useful instructions patients can repeatedly use and periodically checking patients’ understanding of their HRT medications. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- [Jpn J. Pharm Health Care Sci. 40, 85-93 (2014)] 75 [Lab. of Pharmaceutics] Development and Implementation System of the Initial Dose Setting for Vancomycin in the Night Shift. Hiroko HAYASHI, Takashi NIWA, Shuri TAKEICHI, Yoshinori IMANISHI, Yuki TONOGAI, Shinji OKAYASU, Kiyoyuki KITAICHI*, Kimio YASUDA, Nobuo MURAKAMI and Yoshinori ITOH The aim of this study was to fill the evidence-practice gap by using a newly developed procedure manual for planning the vancomycin dosing schedule and verifying the impact of the implementation of the initial dose setting for vancomycin. 25 patients received an individual dose regimen using the present procedure (intervention group) and 23 patients taking the conventional dose by prescriber (non-intervention group) were enrolled. Clinical efficacy after 3 days of treatment was significantly superior, and the duration for 50% reduction of C-reactive protein and the duration for the reduction in body temperature to <37℃ were significantly shorter in the intervention group as compared with those in the non-intervention group. These findings suggest the present implementation system was useful for promotion of initial dose setting for vancomycin. [Mol. Brain. 7, 31 (2014)] [Lab. of Pharmaceutics] Comprehensive Behavioral Study of mGluR3 Knockout Mice: Implication in Schizophrenia Related Endophenotypes. Ryuta FUJIOKA, Takenobu NII, Akiko IWAKI, Atsushi SHIBATA, Isao ITO, Kiyoyuki KITAICHI*, Masatoshi NOMURA, Satoko HATTORI, Keizo TAKAO, Tsuyoshi MIYAKAWA and Yasuyuki FUKUMAKI We generated metabotropic glutamate receptor 3 (mGluR3) knockout (KO) mice and conducted comprehensive behavioral analyses. We assessed long-term potentiation (LTP) in the CA1 region in the hippocampi of KO and wild-type mice, and observed no differences in the amplitude of LTP between the two genotypes. In addition, we performed in vivo microdialysis measurements of extracellular dopamine in the nucleus accumbens, and observed enhancements in the methamphetamine-induced release of dopamine in KO mice. These results demonstrate that a disturbance in the glutamate-dopamine interaction may be involved in the pathophysiology of schizophrenia-like behavior, such as hyperactivity in mGluR3 KO mice. [Oncol. Lett. 7, 1665-1668 (2014)] [Lab. of Pharmaceutics] Effects of 14 frequently Used Drugs on Prostate-specific Antigen Expression in Prostate Cancer LNCaP Cells. Kazuhiro IGUCHI, Maki HASHIMOTO, Masafumi KUBOTA, Shuji YAMASHITA, Mitsuhiro NAKAMURA, Shigeyuki USUI*, Tadashi SUGIYAMA and Kazuyuki HIRANO The levels of prostate-specific antigen (PSA) are influenced by a number of drugs, such as non-steroidal anti-inflammatory drugs and statins. In the present study, the drugs prescribed to patients on a repeat prescription collected at the pharmacy of the Gifu Pharmaceutical University were examined for their effects on the levels of PSA expression in LNCaP cells. Among the 14 drugs investigated, betamethasone and dexamethasone was found to increase the levels of PSA mRNA expression in the LNCaP cells. This betamethasone-induced expression was mediated, at least in part, through androgen receptor transcriptional activation. Therefore, it would be interesting to examine whether the serum PSA levels in prostate cancer patients are influenced by betamethasone. [Anticancer Res. 34, 7271-7277 (2014)] [Lab. of Pharmaceutics] Polaprezinc Prevents Oral Mucositis in Patients Treated with High-dose Chemotherapy Followed by Hematopoietic Stem Cell Transplantation. Hiroko HAYASHI, Ryo KOBAYASHI, Akio SUZUKI, Masashi ISHIHARA, Nobuhiko NAKAMURA, Junichi KITAGAWA, Nobuhiro KANEMURA, Senji KASAHARA, Kiyoyuki KITAICHI*, Takeshi HARA, Hisashi TSURUMI, Hisataka MORIWAKI and Yoshinori ITOH We investigated whether polaprezinc in sodium alginate suspension (P-AG) prevents oral mucositis in patients with hematological malignancy receiving high-dose chemotherapy and radiotherapy followed by hematopoietic stem cell transplantation (HSCT). P-AG dramatically reduced the incidence of oral mucositis as compared to the control group treated with azulene gargle and pain associated with oral mucositis. On the other hand, P-AG had no influence on the incidence of other adverse events, tumor remission rate or the survival rate. Therefore, P-AG was found to be highly effective in preventing oral mucositis. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- 76 [Neurology 82, 705-712 (2014)] [Lab. of Medical Therapeutics & Molecular Therapeutics] Evaluation of SLC20A2 Mutations that Cause Idiopathic Basal Ganglia Calcification in Japan. Megumi YAMADA, Masaki TANAKA, Mari TAKAGI, Seiji KOBAYASHI, Yoshiharu TAGUCHI, Shutaro TAKASHIMA, Kortaro TANAKA, Tetsuo TOUGE, Hiroyuki HATSUTA, Shigeo MURAYAMA, Yuichi HAYASHI, Masayuki KANEKO, Hiroyuki ISHIURA, Jun MITSUI, Naoki ATSUTA, Gen SOBUE, Nobuyuki SHIMOZAWA, Takashi INUZUKA, Shoji TSUJI and Isao HOZUMI* To investigate the clinical, genetic, and neuroradiologic presentations of idiopathic basal ganglia calcification (IBGC) in a nationwide study in Japan. Six new mutations in SLC20A2 were found in patients with IBGC: 4 missense mutations, 1 nonsense mutation, and 1 frameshift mutation. Four of them were familial cases and 2 were sporadic cases in our survey. The members in the families with the same mutation had similar patterns of calcification in the brain and the affected members showed similar clinical manifestations. [Plos One 9, e105435 (2014)] [Lab. of Medical Therapeutics & Molecular Therapeutics] Ezrin Mediates Neuritogenesis via Down-regulation of RhoA Activity in Cultured Cortical Neurons. Yosuke MATSUMOTO, Masatoshi INDEN*, Atsushi TAMURA, Ryou HATANO, Sachiko TSUKITA and Shinji ASANO Ezrin, a member of Ezrin/Radixin/Moesin (ERM) proteins links between membrane proteins and actin cytoskeleton, and contributes to maintenance of cellular function and morphology. In cultured hippocampal neurons, suppression of both radixin and moesin showed deficits in growth cone morphology and neurite extensions. We demonstrated that the cultured cortical neurons prepared from the Vil2(kd/kd) mice embryo exhibited impairment of neuritogenesis. Moreover, we observed increased RhoA activity and phosphorylation of myosin light chain 2 (MLC2), as a downstream effector of RhoA in the Vil2(kd/kd) neurons. In addition, inhibition of Rho kinase and myosin II rescued the impairment of neuritogenesis in the Vil2(kd/kd) neurons. These data altogether suggest a novel role of ezrin in the neuritogenesis of the cultured cortical neurons through down-regulation of RhoA activity. [Sci. Rep. 4, 7283 (2014)] [Lab. of Medical Therapeutics & Molecular Therapeutics] The Homeobox Gene DLX4 Promotes Generation of Human Induced Pluripotent Stem Cells. Naritaka TAMAOKI, Kazutoshi TAKAHASHI, Hitomi AOKI, Kazuki IIDA, Tomoko KAWAGUCHI, Daijirou HATAKEYAMA, Masatoshi INDEN*, Naoyuki CHOSA, Akira ISHISAKI, Takahiro KUNISADA, Toshiyuki SHIBATA, Naoki GOSHIMA, Shinya YAMANAKA and Ken-ichi TEZUKA The reprogramming of somatic cells into iPSCs by defined transcription factors has been a well-established technique and will provide an invaluable resource for regenerative medicine. However, the low reprogramming efficiency of human iPSC is still a limitation for clinical application. Here we showed that the reprogramming potential of human dental pulp cells (DPCs) obtained from immature teeth is much higher than those of mature teeth DPCs. Furthermore, immature teeth DPCs can be reprogrammed by OCT3/4 and SOX2, conversely these two factors are insufficient to convert mature teeth DPCs to pluripotent states. Our findings indicate that DLX4 can functionally replace c-MYC and supports efficient reprogramming of immature teeth DPCs. [Toxicol Sci. 139, 121-132 (2014)] [Lab. of Medical Therapeutics & Molecular Therapeutics] The Ah Receptor Recruits IKKα to its Target Binding Motifs to Phosphorylate Serine-10 in Histone H3 Required for Transcriptional Activation. Hisaka KURITA*, Michael SCHNEKENBURGER, Jerald L. OVESEN, Ying XIA and Alvaro PUGA Aryl hydrocarbon receptor (AHR) activation by xenobiotic ligands such as TCDD is key to their toxicity. Following activation and nuclear translocation, AHR heterodimerizes with the ARNT and binds to AHR response elements (AhREs) in the promoter of target genes, such as Cyp1a1. Previously, we showed that concomitant with AHR binding, histone H3 in the Cyp1a1 promoter AhRE cluster became phosphorylated in serine-10 (H3S10), suggesting that the ligand-activated AHR recruited kinases to the AhRE to phosphorylate this residue. Our results showed complexes of AHR, ARNT, and IKKα could be coimmunoprecipitated from nuclei of TCDD treated Hepa1c1c7 and IKKα knockdown inhibited H3S10 phosphorylation in the Cyp1a1 enhancer. We conclude that AHR recruits IKKα to the promoter of its target genes and that AHR-mediated H3S10 phosphorylation. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- [Invest Ophthalmol Vis Sci. 55, 7652-7661 (2014)] 77 [Lab. of Medical Therapeutics & Molecular Therapeutics] Eyelid Closure in Embryogenesis is Required for Ocular Adnexa Development. Qinghang MENG, Maureen MONGAN, Vinicius CARREIRA, Hisaka KURITA*, Chia-yang LIU, Winston KAO and Ying XIA Mammalian eye development requires temporary fusion of the upper and lower eyelids in embryogenesis. Failure of lid closure in mice leads to an eye open at birth phenotype. Many genetic mutant strains develop this phenotype. Our results showed some eye abnormalities, such as smaller lens in the Map3k1-null mice and Harderian gland hypoplasia in the Dkk2-null mice, whereas other abnormalities were seen in all mutants examined. The common defects included corneal erosion/ulceration, meibomian gland hypoplasia, truncation of the eyelid tarsal muscles, failure of levator palpebrae superioris extension into the upper eyelid and misplacement of the inferior oblique muscle and inferior rectus muscle. In addition to providing a protective barrier for the ocular surface, eyelid closure in embryogenesis is required for the development of ocular adnexa, including eyelid and extraocular muscles. [J. Biol. Chem. 289, 10045-10056 (2014)] [Lab. of Microbiology & Immunology] Threonine 680 Phosphorylation of FLJ00018/PLEKHG2, a Rho Family-specific Guanine Nucleotide Exchange Factor, by Epidermal Growth Factor Receptor Signaling Regulates Cell Morphology of Neuro-2a Cells. Katsuya SATO, Tsuyoshi SUGIYAMA*, Takahiro NAGASE, Yukio KITADE and Hiroshi UEDA FLJ00018/PLEKHG2 (F018) is a guanine nucleotide exchange factor for the small GTPases Rac and Cdc42 and mediates actin cytoskeleton reorganization. The function of F018 is regulated by the interaction of heterotrimeric G protein Gβγ subunits. In this study we show that F018 is phosphorylated and activated by β1-AR stimulation-induced EGFR transactivation, and also by direct EGFR stimulation. We identified that Thr-680 is phosphorylated by EGFR stimulation thourgh Ras/MAPK pathway and that the mutant showed a limited response of the Neuro-2a cell morphology to EGF stimulation. Our results provide evidence that stimulation of the Ras/MAPK pathway by EGFR results in F018 phosphorylation at Thr-680, which in turn controls changes in cell shape. [J. Gen. Virol. 95, 1376-1382 (2014)] [Lab. of Microbiology & Immunology] Guinea Pig Cytomegalovirus GP129/131/133, Homologs of Human Cytomegalovirus UL128/130/131A, are Required for Viral Entry into Monocytes and Macrophages. Souichi YAMADA, Saki FUKUCHI, Kaede HASHIMOTO, Yoshiko FUKUI, Mihoko TSUDA, Michiyo KATAOKA, Harutaka KATANO and Naoki INOUE* The GP129, GP131 and GP133 genes of guinea pig cytomegalovirus (GPCMV) are homologues of human CMV UL128, UL130 and UL131A, respectively, which are essential for infection of endothelial and epithelial cells, and for viral transmission to leukocytes. Previously we demonstrated that a GPCMV strain lacking the 1.6 kb locus that contains these genes had a growth defect in animals. Here, we demonstrated that the WT strain, but not the 1.6 kb-deleted one, formed capsids in macrophages. To understand the mechanism, we prepared GPCMV strains defective in each of these genes, and found that they were all essential for the infection of macrophages but not of fibroblasts, suggesting the macrophage tropism as a determinants for viral dissemination in vivo. [Ann. Clin. Transl. Neurol. 1, 570-588 (2014)] [Lab. of Microbiology & Immunology] Aberrant Fetal Macrophage/Microglial Reactions to Cytomegalovirus Infection. Makiko SAKAO-SUZUKI, Hideya KAWASAKI, Taisuke AKAMATSU, Shiori MEGURO, Hiroaki MIYAJIMA H, Toshihide IWASHITA, Yoshihiro TSUTSUI, Naoki INOUE* and Isao KOSUGI To investigate innate immunity to cytomegalovirus (CMV) infection and its effects on cerebral corticogenesis, pregnant mice were intraplacentally infected with murine CMV (MCMV). MCMV antigens were found frequently in perivascular macrophages, and subsequently in neural stem/progenitor cells (NSPCs). Infection increased expression of inducible nitric oxide synthase and proinflammatory cytokines, resulting in infiltration of activated macrophages. In addition to the infected area, the numbers of both meningeal macrophages and parenchymal microglia increased even in the uninfected areas of brain due to recruitment of their precursors from other sites. MCMV infection globally disrupted the self-renewal of NSPCs. Thus, brain macrophages are crucial for innate immunity during infection in the fetal brain, while their aberrant recruitment may adversely impact on the stemness of NSPCs. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- 78 [J. Perinatal. Med. 42, 755-759 (2014)] [Lab. of Microbiology & Immunology] The IgG Avidity Value for the Prediction of Congenital Cytomegalovirus Infection in a Prospective Cohort Study. Yasuhiko EBINA, Toshio MINEMATSU Ayako SONOYAMA, Ichiro MORIOKA, Naoki INOUE*, Shinya TAIRAKU, Satoshi NAGAMATA, Kenji TANIMURA, Mayumi MORIZANE, Masashi DEGUCHI and Hideto YAMADA The maternal IgG avidity value for the prediction of congenital cutomegaloviru (CMV) infection was analyzed. Of 759 CMV IgG-positive women, 14 delivered newborns with congenital CMV infection. CMV IgG avidity indices in the congenital infection group (median 35.1%) were significantly lower than those in the non-congenital infection group (70.4%). A cutoff value of <40% IgG avidity index with 96.1% specificity and 64.3% sensitivity for congenital infection was determined. The highest sensitivity (88.9%), 96.2% specificity, 27.6% positive predictive value, 99.8% negative predictive value, and 96.1% accuracy were found when IgGavidity was measured in <28 weeks of gestation. [Brain & Dev. 36, 10-15 (2014)] [Lab. of Microbiology & Immunology] Quantitative Evaluation of Ventricular Dilatation using Computed Tomography in Infants with Congenital Cytomegalovirus Infection. Kiyomi MATSUO, Ichiro MORIOKA, Mai ODA, Yoko KOBAYASHI, Yuji NAKAMACHI, Seiji KAWANO, Miwako NAGASAWKA, Tsubasa KODA, Tomoyuki YOKOTA, Satoru MORIKAWA, Akihiro MIWA, Akio SHIBATA, Toshio MINEMATSU, Naoki INOUE*, Hideto YAMADA and Kazumoto IIJIMA To determine the risk factor for hearing impairment early in life due to congenital cytomegalovirus (CMV) infection, ventricle sizes of 21 uninfected infants and those of congenitally infected 11 and 8 infants without and with abnormal auditory brainstem response (ABR), respectively, were assessed by calculating Evans’ index (EI) and lateral ventricle width/hemispheric width (LVW/HW) ratio on brain computed tomography (CT) images. EI and LVW/HW ratio were significantly higher in the abnormal ABR group than the other two groups. LVW/HW ratio had a more association with abnormal ABR than EI. [J. Infec. Dis. 209, 1573-1584 (2014)] [Lab. of Microbiology & Immunology] Idiopathic Intrauterine Growth Restriction Caused by Cytomegalovirus Infection and Associated Placental Pathology. Lenore PEREIRA, Matthew PETITT, Alex FONG, Mitsuru TSUGE, Takako TABATA, June FANG-HOOVER, Ekaterina MAIJI, Martin ZYDEK, Yan ZHOU, Naoki INOUE*, Sanam LOGAHVI, Samuel PEPKOWITZ, Lawrence M. KAUVAR and Dotun OGUNYEMI To investigate possible underlying congenital cytomegalovirus (CMV) infection for idiopathic intrauterine growth restriction (IUGR), maternal and cord sera and placentas from 19 pregnancies, including 9 normal, 7 with IUGR, and 3 with preeclampsia, were analyzed. Among 7 IUGR cases, 2 primary and 3 recurrent CMV infections were identified. CMV replicated in glandular epithelium and lymphatic endothelium in the decidua, cytotrophoblasts, and smooth muscle cells in blood vessels of floating villi and the chorion, suggesting impairment of placental development and function. [Virus Res. 179, 241-246 (2014] [Lab. of Microbiology & Immunology] The Highly Conserved HCMV UL136 ORF Encodes Multiple Protein Isoforms Localizing in the Golgi Apparatus. Huanan LIAO, Jung-Hyun LEE, Rikita KONDO, Marei KATATA, Ken-Ichi IMADOME, Kenji MIYADO, Naoki INOUE*, Shigeyoshi FUJIWARA and Hiroyuki NAKAMURA The UL133-UL138 gene locus of the human cytomegalovirus (HCMV) genome is considered to play certain roles in viral replication, dissemination and latency in a host cell type-dependent manner. Here we characterized UL136 products by preparing a polyclonal antibody against UL136 products (pUL136). The anti-pUL136 antibody specifically recognized at least five protein isoforms of 29–17 kDa both in infected cells and in cells transfected with a construct expressing pUL136. The putative transmembrane domain of pUL136 was required for localization in the Golgi apparatus, and multiple AUG codons in the gene contributed to the generation of isoforms of the protein. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- [Microbiol. Immunol. 58, 72-75 (2014)] 79 [Lab. of Microbiology & Immunology] The Presence of Antibodies against the AD2 Epitope of Cytomegalovirus Glycoprotein B is Associated with Acute Rejection after Renal Transplantation. Kei ISHIBASHI, Tadahiko TOKUMOTO, Hiroki SHIRAKAWA, Toshiki OGURO, Tomohiko YANAGIDA, Norio TAKAHASHI, Masanori NOMIYA, Nobuhiro HAGA, Ken AIKAWA, Kazunari TANABE, Naoki INOUE*, Yoshiyuki KOJIMA and Tatsuo SUZUTANI The aim of this study was to evaluate the association between antibodies against cytomegalovirus (CMV) glycoprotein B (gB) and acute rejection after transplantation. Seventy-seven consecutive renal transplant recipients in a D + /R+ setting were studied. Biopsy-proven rejection occurred in 35% of the recipients. Among these recipients, 85% had antibodies against CMV gB. The rate of acute rejection was significantly higher in recipients with antibodies against gB than in those without them. Antibodies against gB can be a useful predictor of acute rejection in renal transplant recipients in a D + /R+ setting. [J. Dermatol. 41, 181-182 (2014)] [Lab. of Microbiology & Immunology] Unusually extensive disseminated herpes zoster with multiple ulcer formation in a methotrexate-treated rheumatoid arthritis patient. Risa KAKUTA, Utako OHKATA, Takeru FUNAKOSHI, Yumi FUJIO, Naoki INOUE*, Shinichi TAKAHASHI, Masayuki AMAGAI and Manabu OHYAMA An 84-year-old Japanese woman with vesicles/blisters and severely painful ulcers, which started to spread from the left leg 1.5 month prior to her visit, was referred to our clinic. Her medical history included rheumatoid arthritis treated with methotrexate 5mg/week, mizoribine 100mg/day and prednizolone 5mg/day for 20years and four episodes of herpes zoster (HZ). The swabs obtained from her vesicles detected varicella zoster virus (VZV). Despite intensive antiviral treatment, the patient developed VZV-viremia and eventually died. Virological investigation denied the possible emergence of antiviral resistant virus. This case emphasizes the necessity of preemptive management of VZV. [J. Clin. Virol. 61, 448-452 (2014)] [Lab. of Microbiology & Immunology] Evidence for Human Herpesvirus-6B Infection of Regulatory T-cells in Acute Systemic Lymphadenitis in an Immunocompetent Adult with the Drug Reaction with Eosinophilia and Systemic Symptoms Syndrome: A Case Report. Sohtaro MINE, Koyu SUZUKI, Yuko SATO, Hitomi FUKUMOTO, Michiyo KATAOKA, Naoki INOUE*, Chiho OHBAYASHI, Hideki HASEGAWA, Tetsutaro SATA T, Masashi FUKUYAMA and Harutaka KATANO A medication to treat respiratory symptoms caused a fatal case of drug reaction with eosinophilia and systemic symptoms (DRESS) syndrome with human herpesvirus-6B (HHV-6B)-associated lymphadenitis and virus-associated hemophagocytic syndrome. The lymph node structure was disrupted with infiltration of large lymphocytes containing HHV-6B. The infected cells were CD3+CD4+CD25+FoxP3+ T cells, suggesting a significant role of HHV-6 infection of regulatory T-cells in the pathogenesis of DRESS syndrome. [Clin. Infec. Dis. 59, 545-548 (2014)] [Lab. of Microbiology & Immunology] Molecular and Virological Evidence of Viral Activation from Chromosomally Integrated HHV-6A in a Patient with X-SCID. Akifumi ENDO, Ken WATANABE, Tamae OHYE, Kyoko SUZUKI, Tomoyo MATSUBARA, Norio SHIMIZU, Hiroki KURAHASHI, Tetsushi YOSHIKAWA, Harutaka KATANO, Naoki INOUE*, Kohsuke IMAI, Masatoshi TAKAGI, Tomohiro MORIO and Shuki MIZUTANI It has been unclear whether chromosomally integrated human herpesvirus 6 (ciHHV-6) can be activated with pathogenic effects on the human body. We present molecular and virological evidence of ciHHV-6A activation in a patient with X-linked severe combined immunodeficiency. These findings have significant implications for the management of patients with ciHHV-6. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- 80 [FASEB J., 28, 440-452 (2014)] [Lab. of Biochemistry] Antiobese function of platelet-activating factor: increased adiposity in platelet-activating factor receptor-deficient mice with age. Junko SUGATANI, Satoshi SADAMITSU, Masahiko YAMAGUCHI, Yasuhiro YAMAZAKI, Ryoko HIGA, Yoshiki HATTORI, Takahiro UCHIDA, Akira IKARI*, Wataru SUGIYAMA, Tatsuo WATANABE, Satoshi ISHII, Masao MIWA and Takao SHIMIZU Platelet-activating factor receptor (PAFR)-deficient mice developed a more severe obese state characterized by higher body mass (~25%) and epididymal fat mass (~55%) with age than that of wild-type (WT) littermates. PAFR-deficient mice did not show changes in the expression of critical genes involved in anabolic and catabolic metabolism in adipose, liver, and muscle tissues between 6 and 36 wk. We found that obesity in PAFR-deficient mice resulted from impaired brown adipose tissue (BAT) activity and suggest that the antiobese function of PAF occurs through β3- adrenergic receptor/uncoupling protein 1 expression in BAT. [Biol. Open., 3, 12-21 (2014)] [Lab. of Biochemistry] + + Functional coupling of chloride-proton exchanger ClC-5 to gastric H ,K -ATPase. Yuji TAKAHASHI, Takuto FUJII, Kyosuke FUJITA, Takahiro SHIMIZU, Taiga HIGUCHI, Yoshiaki TABUCHI, Hisato SAKAMOTO, Ichiro NAITO, Koji MANABE, Shinichi UCHIDA, Sei SASAKI, Akira IKARI*, Kazuhiro TSUKADA and Hideki SAKAI It has been reported that chloride-proton exchanger ClC-5 and vacuolar-type H+-ATPase are essential for endosomal acidification in the renal proximal cells. Here, we found that ClC-5 is expressed in the gastric parietal cells which secrete actively hydrochloric acid at the luminal region of the gland, and that it is partially localized in the intracellular tubulovesicles in which gastric H+,K+-ATPase is abundantly expressed. ClC-5 was co-immunoprecipitated with H+,K+-ATPase, but not with endogenous Na+,K+-ATPase. Our results suggest that ClC-5 and H+,K+-ATPase are functionally associated and that they may contribute to gastric acid secretion. [J. Biol. Chem., 289, 13112-13123 (2014)] [Lab. of Biochemistry] Tight junctional localization of claudin-16 is regulated by syntaxin 8 in renal tubular epithelial cells. Akira IKARI*, Chie TONEGAWA, Ayumi SANADA, Toru KIMURA, Hideki SAKAI, Hisayoshi HAYASHI, Hajime HASEGAWA, Masahiko YAMAGUCHI, Yasuhiro YAMAZAKI, Satoshi ENDO, Toshiyuki MATSUNAGA and Junko SUGATANI. Claudin-16 (CLDN16) regulates the paracellular reabsorption of Mg2+ in the thick ascending limb of Henle's loop. However, the mechanism regulating the tight junctional localization of CLDN16 remains unknown. In yeast two-hybrid systems, CLDN16 bound to syntaxin 8 (STX8), a target soluble N-ethylmaleimide-sensitive factor attachment protein receptor. An association between CLDN16 and STX8 was observed in rat renal homogenates and Madin-Darby canine kidney cells. Recycling assays indicated that STX8 siRNA decreased the trafficking of CLDN16 to the plasma membrane without affecting endocytosis. We suggest that STX8 mediates the recycling of CLDN16 and constitutes an important component of the CLDN16 trafficking machinery in the kidney. [Biochim. Biophys. Acta., 1843, 2079-2088 (2014)] [Lab. of Biochemistry] Nuclear distribution of claudin-2 increases cell proliferation in human lung adenocarcinoma cells. Akira IKARI*, Ryo WATANABE, Tomonari SATO, Saeko TAGA, Shun SHIMOBABA, Masahiko YAMAGUCHI, Yasuhiro YAMAZAKI, Satoshi ENDO, Toshiyuki MATSUNAGA and Junko SUGATANI Claudin-2 is expressed in human lung adenocarcinoma tissue and cell lines, although it is absent in normal lung tissue. However, the role of claudin-2 in cell proliferation and the regulatory mechanism of intracellular distribution remain undefined. Proliferation of human adenocarcinoma A549 cells was decreased by claudin-2 knockdown together with a decrease in the percentage of S phase cells. This knockdown decreased the expression levels of ZONAB and cell cycle regulators. Nuclear claudin-2 formed a complex with ZO-1, ZONAB, and cyclin D1. We suggest that nuclear distribution of claudin-2 is up-regulated by dephosphorylation and claudin-2 serves to retain ZONAB and cyclin D1 in the nucleus, resulting in the enhancement of cell proliferation in lung adenocarcinoma cells. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- [Drug Metab. Dispos., 42, 1708-1718 (2014)] 81 [Lab. of Biochemistry] Threonine-290 regulates nuclear translocation of the human pregnane X receptor through its phosphorylation/dephosphorylation by Ca2+/calmodulin-dependent protein kinase II and protein phosphatase 1. Junko SUGATANI, Yoshiki HATTORI, Yuji NOGUCHI, Masahiko YAMAGUCHI, Yasuhiro YAMAZAKI and Akira IKARI* The human pregnane X receptor (hPXR) is recognized as a xenobiotic-sensing nuclear receptor that transcriptionally regulates the gene expression of drug-metabolizing enzymes and transporters. Our study elucidates the mechanism by which the localization of hPXR is regulated through threonine-290. A phosphomimetic mutation at threonine-290 retained hPXR in the cytoplasm of HepG2, HuH6, and SW480 cells in vitro and the mouse liver in vivo even after treatment with rifampicin. We suggest that phosphorylation at threonine-290 by CaMKII may impair the function of hPXR by repressing its translocation to the nucleus. [Anticancer Drugs, 25, 868-877 (2014)] [Lab. of Biochemistry] Induction of aldo-keto reductases (AKR1C1 and AKR1C3) abolishes the efficacy of daunorubicin chemotherapy for leukemic U937 cells. Toshiyuki MATSUNAGA*, Ayano YAMAGUCHI, Yoshifumi MORIKAWA, Chihiro KEZUKA, Hiroaki TAKAZAWA, Satoshi ENDO, Ossama EL-KABBANI, Kazuo TAJIMA, Akira IKARI and Akira HARA Development of daunorubicin (DNR) resistance upregulated expression of aldo-keto reductase (AKR) 1C1 and AKR1C3 in human leukemic U937 cells, and the contribution of the two AKRs toward the DNR sensitivity was assessed using gene expression and RNA-interference techniques and specific inhibitors. AKR1C1 and AKR1C3 did not interfere with the cell differentiation caused by DNR, whereas their upregulation facilitated reduction of the anticancer drug and a reactive oxygen species (ROS)-derived lipid aldehyde 4-hydroxy-2-nonenal. These results suggest crucial roles of AKR1C1 and AKR1C3 in the acquisition of DNR resistance of leukemic cells by metabolizing both DNR and cytotoxic aldehydes derived from ROS-linked lipid peroxidation. [Toxicol. Appl. Pharmacol., 278, 180-189 (2014)] [Lab. of Biochemistry] Exposure to 9,10-phenanthrenequinone accelerates malignant progression of lung cancer cells through up-regulation of aldo-keto reductase 1B10. Toshiyuki MATSUNAGA*, Yoshifumi MORIKAWA, Mariko HAGA, Satoshi ENDO, Midori SODA, Keiko YAMAMURA, Ossama EL-KABBANI, Kazuo TAJIMA, Akira IKARI and Akira HARA Here, we show that treatment of human lung cancer A549 cells with a diesel exhaust quinone 9,10-phenanthrenequinone (9,10-PQ) at its concentrations of 2 and 5 μM elevated the potentials for proliferation, invasion, metastasis and tumorigenesis, all of which were almost completely inhibited by an antioxidant N-acetyl-l-cysteine, inferring a crucial role of ROS in the overgrowth and malignant progression of the cells. The treatment with 9,10-PQ remarkably increased expression of aldo-keto reductase (AKR) member 1B10 and matrix metalloproteinase-2. The metalloproteinase upregulation was almost completely abolished by AKR1B10 inhibitors, inferring that AKR1B10 is a key regulator involved in overgrowth and malignant progression of lung cancer cells. [Free Radic. Res., 48, 1371-1385 (2014)] [Lab. of Biochemistry] Nitric oxide confers cisplatin resistance in human lung cancer cells through upregulation of aldo-keto reductase 1B10 and proteasome. Toshiyuki MATSUNAGA*, Yukiko YAMAJI, Toshimasa TOMOKUNI, Hiromi MORITA, Yoshifumi MORIKAWA, Ayaka SUZUKI, Ayano YONEZAWA, Satoshi ENDO, Akira IKARI, Kazuhiro IGUCHI, Ossama EL-KABBANI, Kazuo TAJIMA and Akira HARA We here show that nitric oxide (NO) reduces damage of human lung cancer A549 cells caused by cisplatin (CDDP) through the suppression of apoptotic alterations and elevated proteolytic activity of 26S proteasome, indicating the possibility that NO participates in mechanisms underlying acquisition of the chemoresistance. Treatment with CDDP and NO promoted the induction of aldo-keto reductases (AKR) 1B10 as well as peroxynitrite formation. Collectively, these results suggest the NO functions as a key regulator controlling AKR1B10 expression and 26S proteasome function leading to gain of the CDDP resistance. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- 82 [Drug Metab. Dispos., 42, 803-812 (2014)] [Lab. of Biochemistry] Cloning and characterization of four rabbit aldo-keto reductases featuring broad substrate specificity for xenobiotic and endogenous carbonyl compounds: relationship with multiple forms of drug ketone reductases. Satoshi ENDO*, Toshiyuki MATSUNAGA, Yuki ARAI, Akira IKARI, Kazuo TAJIMA, Ossama EL-KABBANI, Sigeru YAMANO, Akira HARA and Yukio KITADE Multiple forms of reductases for several drug ketones were isolated from rabbit liver, but their interrelationship and physiologic roles remain unknown. We isolated cDNAs for four aldo-keto reductases (AKR1C30, AKR1C31, AKR1C32, and AKR1C33), which share high amino acid sequence identity with the partial sequences of two rabbit naloxone reductases. The four enzymes correspond to the multiple drug ketone reductases, and may function in the metabolisms of steroids, isatin and reactive carbonyl compounds, and bile acid synthesis. [Bioorg. Med. Chem., 22, 5220-5233 (2014)] [Lab. of Biochemistry] Synthesis of non-prenyl analogues of baccharin as selective and potent inhibitors for aldo-keto reductase 1C3. Satoshi ENDO*, Dawei HU, Toshiyuki MATSUNAGA, Yoko OTSUJI, Ossama EL-KABBANI, Mohmad KANDEEL, Akira IKARI, Akira HARA, Yukio KITADE and Naoki TOYOOKA Inhibitors of AKR1C3 are regarded as promising therapeutics for the treatment of prostatic and breast cancers. Baccharin was shown to be potent (Ki 56 nM) and highly isoform-selective inhibitor of AKR1C3. In this study, a series of derivatives of baccharin were synthesized, and their inhibitory activities for the enzyme were evaluated. Among them, two benzyl ether derivatives, 6m and 6n, showed an equivalent inhibitory potency to baccharin. The molecular docking of 6m in AKR1C3 has allowed the design and synthesis of 14 with improved potency (Ki 6.4 nM) and selectivity comparable to baccharin. Additionally, 14 significantly decreased the cellular metabolism of androsterone and cytotoxic 4-oxo-2-nonenal by AKR1C3 at much lower concentrations than baccharin. [Biol. Pharm. Bull., 37, 1848-1852 (2014)] [Lab. of Biochemistry] Probing AKR1C30 and AKR1C31 with site-directed mutagenesis: identifying the roles of residues 54 and 56 in the binding of substrates and inhibitors. Satoshi ENDO*, Yuki ARAI, Toshiyuki MATSUNAGA, Akira IKARI, Ossama EL-KABBANI, Akira HARA and Yukio KITADE Five rabbit AKRs that participate in the reduction of drug ketones and ketosteroids have recently been cloned and characterized. Among them, AKR1C30 and AKR1C31 show the highest amino acid sequence identity of 91%, but markedly differ in their substrate specificity. AKR1C30 reduces ketotifen and naloxone, whereas AKR1C31 does not reduce the two drugs. Residue A54 is located adjacent to the catalytic residue Y55 of AKR1C30. When we performed the mutagenesis of A54 to the corresponding residue of AKR1C31, the A54L mutation produced an enzyme that had almost the same substrate specificity as AKR1C31. Thus, the difference in the properties between the two enzymes can be attributed to their residue difference at position 54. [Cell Rep. 6, 366-376 (2014)] [Lab. of Pharmacology] Critical Role for Mast Cell Stat5 Activity in Skin Inflammation. Tomoaki ANDO, Wenbin XIAO, Peisong GAO, Siavash NAMIRANIAN, Kenji MATSUMOTO, Yoshiaki TOMIMORI, Hong HONG, Hirotaka YAMASHITA*, Miho KIMURA, Jun-ichi KASHIWAKURA, Tissa R. HATA, Kenji IZUHARA, Michael F. GURISH, Axel ROERS, Nicholas M. RAFAELS, Kathleen C. BARNES, Colin JAMORA, Yuko KAWAKAMI, and Toshiaki KAWAKAM Phospholipase C-β3 (PLC-β3)-deficient mice spontaneously developed eczematous skin lesions, in which hyperkeratosis and infiltration of inflammatory cells were shown with IgE elevation. The atopic dermatitis (AD)-like skin lesions depended on mast cell because PLCb-/-; KitWsh/Wsh mice did not develop the phenomena. PLC-β3 inhibits the proliferation of hematopoietic stem cells and myeloid cells by interacting with signal transducer and activator of transcription 5 (Stat5). Mast cell-specific deletion of Stat5 gene ameliorated the dermatitis. STAT5 phosphorylation and/or PLC-β3 expression may be clinical target for AD. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- [Biol. Pharm. Bull. 37, 1014-1020 (2014)] 83 [Lab. of Pharmacology] Collagen Gel Contraction Assay Using Human Bronchial Smooth Muscle Cells and Its Application for Evaluation of Inhibitory Effect of Formoterol. Yusuke SAKOTA, Yuji OZAWA, Hirotaka YAMASHITA, Hiroyuki TANAKA and Naoki INAGAKI* Normal human bronchial smooth muscle cells were embedded in collagen gel. The gels were contracted by stimulation of acetylcholine and histamine in a concentration-dependent manner. Formoterol, a long-acting β2-adrenoceptor agonist, inhibited histamine-induced collagen gel contraction. Fluticasone is steroidal preparation for inhalation. Although 10−10 M formoterol failed to inhibit gel contraction, it apparently inhibited the gel contraction after treatment with fluticasone for 4 and 12 hours. Additionally, 4 hour simultaneous pre-treatment with 10−8 M formoterol and fluticasone partially but significantly recovered the inhibitory effect of 10−8 M formoterol. The collagen gel contraction assay using human bronchial smooth muscle cells is useful for evaluating the effects of bronchodilating drugs. [Free Radic. Biol. Med. 72, 124-133 (2014)] [Lab. of Molecular Pharmacology] Temporal Activation of Nrf2 in the Penumbra and Nrf2 Activator-mediated Neuroprotection in Ischemia-reperfusion Injury. Toshinori TAKAGI, Akira KITASHOJI, Takao IWAWAKI, Kazuhiro TSURUMA, Masamitsu SHIMAZAWA, Shinichi YOSHIMURA, Toru IWAMA and Hideaki HARA* Oxidative stress plays a critical role in mediating tissue injury and neuron death during ischemia-reperfusion injury (IRI). The Keap1-Nrf2 defense pathway serves as a master regulator of endogenous antioxidant defense, and Nrf2 has been attracting attention as a target for the treatment of IRI. In this study, we evaluated Nrf2 expression in IRI using OKD (Keap1-dependent oxidative stress detector) mice and investigated the neuroprotective ability of an Nrf2 activator. Our findings indicate that earlier Nrf2 activation protects neurons, possibly via effects on astrocytes. [Cell Death Dis. 5, e1332 (2014)] [Lab. of Molecular Pharmacology] Fluvoxamine Alleviates ER Stress via Induction of Sigma-1 Receptor. Tsubasa OMI, Hitoshi TANIMUKAI, Daisuke KANAYAMA, Yukako SAKAGAMI, Shinji TAGAMI, Masayasu OKOCHI, Takashi MORIHARA, M. SATO, Kanta YANAGIDA, Akira KITASHOJI, Hideaki HARA*, Kazunori IMAIZUMI, Tangui MAURICE, Nathalie CHEVALLIER, Stephan MARCHAL, Masatoshi TAKEDA and Takashi KUDO Fluvoxamine (Flv) is a selective serotonin reuptake inhibitor with a high affinity for sigma-1 receptor (Sig-1R). In the present study, we show that treatment of neuroblastoma cells with Flv induces Sig-1R expression by increasing ATF4 translation directly, through its own activation, without involvement of the PERK pathway. This suggests that Flv could be a feasible therapy for cerebral diseases caused by endoplasmic reticulum stress. [PLoS ONE 9(8), 1315-1328 (2014)] [Lab. of Molecular Pharmacology] Diabetes Mellitus Aggravates Hemorrhagic Transformation after Ischemic Stroke via Mitochondrial Defects Leading to Endothelial Apoptosis. Keisuke MISHIRO, Takahiko IMAI, Sou SUGITANI, Akira KITASHOJI, Yukiya SUZUKI, Toshinori TAKAGI, Huayue CHEN, Yasunori OUMI, Kazuniro TSURUMA, Masamitsu SHIMAZAWA and Hideaki HARA* Chronic hyperglycemia aggravated hemorrhagic transformation after stroke through mitochondrial dysfunction and morphological alteration, partially via matrix metalloproteinase 9 activation, leading to caspase-dependent apoptosis of endothelial cells of diabetic mice. Mitochondria-targeting therapy may be a clinically innovative therapeutic strategy for diabetic complications in the future. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- 84 [Neuroscience 277, 123-131, (2014)] [Lab. of Molecular Pharmacology] Glycoprotein Nonmetastatic Melanoma Protein B (GPNMB) as a Novel Neuroprotective Factor in Cerebral Ischemia-reperfusion Injury. Yusuke NAKANO, Yukiya SUZUKI, Toshinori TAKAGI, Akira KITASHOJI, Yoko ONO, Kazuhiro TSURUMA, Shinichi YOSHIMURA, Masamitsu SHIMAZAWA, Toru IWAMA and Hideaki HARA* Glycoprotein nonmetastatic melanoma protein B (GPNMB) protected neurons against IRI, and phosphor-Akt and phosphor-ERK might be a part of the protective mechanisms, and that the neuroprotective effect of GPNMB was seemingly induced by the extracellular sequence of GPNMB. In conclusion, these findings indicate that GPNMB has neuroprotective effects against IRI, via phosphorylation of ERK1/2 and Akt, suggesting that GPNMB may be a therapeutic target for ischemia-reperfusion injuries. [Curr. Neurovasc. Res. 11, 302-311 (2014)] [Lab. of Molecular Pharmacology] The Phosphodiesterase III Inhibitor Cilostazol Ameliorates Ethanol-induced Endothelial Dysfunction. Toshinori TAKAGI, Keisuke MISHIRO, Masamitsu SHIMAZAWA, Shinichi YOSHIMURA, Toru IWAMA and Hideaki Hara* Intracranial hemorrhage (ICH) remains a devastating disease, and heavy alcohol consumption is an underlying risk factor. The aim of this study was to study the mechanism of ethanol-induced endothelial cell damage and to evaluate the protective effect of cilostazol against ethanol-induced damage. Our results indicate that cilostazol protected endothelial cells against ethanol-induced endothelial dysfunction by inhibiting reactive oxygen spices-mediated activation of matrix metalloproteinase 9. [Pharmacol. Pharm. 5, 37-42 (2014)] [Lab. of Molecular Pharmacology] Crocetin Prevents Amyloid β1-42-induced Cell Death in Murine Hippocampal Cells. Yuta YOSHINO, Mitsue ISHISAKA, Naofumi UMIGAI, Masamitsu SHIMAZAWA, Kazuhiro TSURUMA and Hideaki HARA* Crocetin is an aglycon of carotenoid extracted by saffron stigmas (Crocus sativus L.) and known to have a potent anti-oxidative effect. In this study, we investigated the effect of crocetin on hippocampal HT22 cell death induced by Aβ1-42. Furthermore, to clarify the mechanism underlying the protective effects of crocetin against Aβ1-42- induced cell death, we measured reactive oxygen species (ROS) production by CM-H2DCFDA kit assay. Crocetin at 1 -10 μM protected HT22 cells against Aβ1-42-induced neuronal cell death and decreased ROS production increased by Aβ1-42. These results that crocetin has the potent neuroprotective effect against Aβ1-42-induced cytotoxicity in hippocampal cells by attenuating oxidative stress, suggest that crocetin may provide a useful therapeutic strategy against Aβ-related disorders. [Neurosci. Lett. 559, 174-178 (2014)] [Lab. of Molecular Pharmacology] SA4503, a Sigma-1 Receptor Agonist, Suppresses Motor Neuron Damage in in Vitro and in Vivo Amyotrophic Lateral Sclerosis Models. Yoko ONO, Hirotaka TANAKA, Masafumi TAKATA, Yuki NAGAHARA, Yasuhiro NODA, Kazuhiro TSURUMA, Masamitsu SHIMAZAWA, Isao HOZUMI and Hideaki HARA* Amyotrophic lateral sclerosis (ALS) is a progressive neurodegenerative disease. Recently, it has been reported that a mutation in the sigma-1 receptor causes juvenile ALS. Therefore, the function of the sigma-1 receptor may be important in the pathology of ALS. In the present study, we investigated the effect of SA4503, a sigma-1 receptor agonist, against in in vitro and in vivo ALS models. Our results indicate that SA4503 is effective in suppressing motor neuron degeneration and symptom progression in ALS. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- [Sci. Rep. 4:5223 (2014)] 85 [Lab. of Molecular Pharmacology] Damage of Photoreceptor-derived Cells in Culture Induced by Light Emitting Diode-derived Blue Light. Yoshiki KUSE, Kenjiro OGAWA, Kazuhiro TSURUMA, Masamitsu SHIMAZAWA and Hideaki HARA* Our eyes are increasingly exposed to light from the emitting diode (LED) light of video display terminals (VDT) which contain much blue light. The present study aims to clarify the mechanism underlying blue LED light-induced photoreceptor cell damage. The LED light induced cell damage was wavelength-, but not energy-dependent and may cause more severe retinal photoreceptor cell damage than the other LED light. [Stem Cells Transl. Med. 3:42-53 (2014)] [Lab. of Molecular Pharmacology] Progranulin, a Major Secreted Protein of Mouse Aadipose-derived Stem Cells, Inhibits Light-induced Retinal Degeneration. Kazuhiro TSURUMA, Mika YAMAUCHI, Sou SUGITANI, Tomohiro OTSUKA, Yuta OHNO, Yuki NAGAHARA, Yuka IKEGAME, Masamitsu SHIMAZAWA, Shinichi YOSHIMURA, Toru IWAMA and Hideaki HARA* Adipose tissue stromal vascular fraction contains mesenchymal stem cells, which show protective effects when administered to damaged tissues, mainly through secreted trophic factors. We examined the protective effects of adipose-derived stem cells (ASCs) and ASC-conditioned medium (ASC-CM) against retinal damage and identified the neuroprotective factors in ASC-CM. ASCs and mature adipocytes were isolated from mouse subcutaneous tissue. Our findings suggest that ASC-CM and progranulin have neuroprotective effects in the light-induced retinal-damage model. Progranulin may be a potential target for the treatment of the degenerative diseases of the retina. [Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 55, 6851-6860 (2014)] [Lab. of Molecular Pharmacology] Role of Metallothioneins 1 and 2 in Ocular Neovascularization. Shinsuke NAKAMURA, Masamitsu SHIMAZAWA, Yuki INOUE, Shinsuke TAKATA, Yasushi ITO, Kazuhiro TSURUMA, Tsunehiko IKEDA, Akiko HONDA, Masahiko SATOH and Hideaki HARA* Purpose:The incidence of blindness is increasing, in part, because of the abnormal ocular neovascularization. Anti-VEGF therapies have yielded impressive results; however, they are not a cure for blindness. Recently, metallothioneins (MTs) 1 and 2 have been implicated in the process of angiogenesis. Therefore, we investigated whether MT 1 and MT 2 were also involved in ocular neovascularization. Methods:The concentrations of MT 1 and MT 2 (hereafter MT-1/2) were observed by ELISA. We examined the role of MT-1/2 in ocular neovascularization by using both an oxygen-induced retinopathy (OIR) model and a laser-induced choroidal neovascularization (CNV) model. These results indicate that MTs 1 and 2 are involved in retinal and choroidal neovascularization, and that MT-1/2 might be a new therapeutic target in diseases in which ocular angiogenesis is implicated. [PLoS ONE 9, e84387 (2014)] [Lab. of Molecular Pharmacology] Systemic Simvastatin Rescues Retinal Ganglion Cells from Optic Nerve Injury Possibly through Suppression of Astroglial NF-κB Activation. Seita MORISHITA, Hidehiro OKU, Taeko HORIE, Masahiro TONARI, Teruyo KIDA, Akiko OKUBO, Tetsuya SUGIYAMA, Shinji TAKAI, Hideaki HARA* and Tsunehiko IKEDA Neuroinflammation is involved in the death of retinal ganglion cells (RGCs) after optic nerve injury. The purpose of this study was to determine whether systemic simvastatin can suppress neuroinflammation in the optic nerve and rescue RGCs after the optic nerve is crushed. We conclude that systemic simvastatin can reduce the death of RGCs induced by crushing the optic nerve possibly by suppressing astroglial NF-κB activation. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- 86 [Exp. Eye Res. 129, 24-30 (2014)] [Lab. of Molecular Pharmacology] Hydroxyl Radicals Cause Fluctuation in Intracellular Ferrous Ion Levels upon Light Exposure during Photoreceptor Cell Death. Tomoyo IMAMURA, Tasuku HIRAYAMA, Kazuhiro TSURUMA, Masamitsu SHIMAZAWA, Hideko NAGASAWA, Hideaki HARA* Iron accumulation is a potential pathogenic event often seen in age-related macular degeneration (AMD) patients. In this study, we focused on the relationship between AMD pathology and concentrations of ferrous ion, which is a highly reactive oxygen generator in biological systems. These results suggest that light exposure decreases ferrous ion levels and enhances iron uptake in photoreceptor cells. Ferrous ion may be involved in light-induced photoreceptor cell death through production of hydroxyl radicals. [J. Neurosci. Res. 92, 329-337 (2014)] [Lab. of Molecular Pharmacology] Protective Effects of Placental Growth Factor on Retinal Neuronal Cell Damage. Yuki INOUE, Masamitsu SHIMAZAWA, Shinsuke NAKAMURA, Tomoyo IMAMURA, Sou SUGITANI, Kazuhiro TSURUMA and Hideaki HARA* Placental growth factor (PlGF) is a member of the vascular endothelial growth factor family. Although it has been reported that PlGF protects against neuronal damage in the brain, little is known about the effects of PlGF in the retina. Therefore, we investigated the effects of PlGF on retinal neuronal cells. Our data suggest that PlGF may be an important protective factor in the retina. [Eur. J. Pharmacol. 738, 74-82 (2014)] [Lab. of Molecular Pharmacology] Tissue Kallikrein (Kallidinogenase) Protects against Retinal Ischemic Damage in Mice. Tomomi MASUDA, Masamitsu SHIMAZAWA, Fumiya ISHIZUKA, Shinsuke NAKAMURA, Kazuhiro TSURUMA and Hideaki HARA* Ocular ischemic syndrome is likely stem from retinal ischemia, and which causes visual disorder. The pathological mechanism of ocular ischemic syndrome is still unknown, therefore the optimal treatment for ocular ischemic syndrome remains to be established. Then, this study aimed to evaluate the effects of tissue-derived kallidinogenase in retinal ischemia protection in mice. Our findings suggest that kallidinogenase may prevent ischemia/reperfusion-induced retinal damage, might be through eNOS activation. [Biol. Pharm. Bull. 37, 424-430 (2014)] [Lab. of Molecular Pharmacology] Protective Effect of SUN N8075, a Free Radical Scavenger, against Excessive Light-induced Retinal Damage in Mice. Kazuki OJINO, Masamitsu SHIMAZAWA, Yuta OHNO, Tomohiro OTSUKA, Kazuhiro TSURUMA and Hideaki HARA* Although dry age-related macular degeneration (AMD) is one of the major causes of blindness, no effective therapies are developed. In this study, we investigated the effects of SUN N8075, a radical scavenger with neuroprotective properties, against light-induced retinal damage used as the model of dry AMD in mice. Our findings suggest that the systemic administration of SUN N8075 has protective effects on excess light-induced photoreceptor degeneration, via inhibition of oxidative stress. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- [Chin. J. Pract. Ophthalmol. 32, 512-516 (2014)] 87 [Lab. of Molecular Pharmacology] Effect of Anti-glaucoma Ophthalmic Solutions on Cultured Human Conjunctival Cells. Wenzhong LIN, Yan LU, Yan XU, Wei HE, Kazuhide KAWASE, Tetsuya YAMAMOTO, Masamitsu SHIMAZAWA and Hideaki HARA* The aim of this study was to probe the effects of anti-glaucoma ophthalmic solutions containing preservatives on cultured human conjunictival cells. Anti-glaucoma ophthalmic solutions with preservative (benzalkonium chloride or benzododecinium bromide) may have defferent effect on cultured human conjunctival cells, and the ones with low or free preservative may have less effect on cultured human conjunctival cells. [J. Pharmacol. Sci. 123, 209-218 (2013)] [Lab. of Molecular Pharmacology] The Protective Effects of a Dietary Carotenoid, Astaxanthin, against Light-induced Retinal Damage. Tomohiro OTSUKA, Masamitsu SHIMAZAWA, Tomohiro NAKANISHI, Yuta OHNO, Yuki INOUE, Kazuhiro TSURUMA, Takashi ISHIBASHI and Hideaki HARA* Dietary carotenoids exhibit various biological activities, including antioxidative activity. In particular, astaxanthin, a type of carotenoid, is well known as a powerful antioxidant. We investigated whether astaxanthin would protect against light-induced retinal damage. Our findings suggest that astaxanthin has protective effects against light-induced retinal damage via the mechanism of its antioxidative effect. [BMC Complement. Altern. Med. 14:120 (2014)] [Lab. of Molecular Pharmacology] Protective Effects of Bilberry and Lingonberry Extracts against Blue Light-emitting Diode Light-induced Retinal Photoreceptor Cell Damage in Vitro. Kenjirou OGAWA, Yoshiki KUSE, Kazuhiro TSURUMA, Saori KOBAYASHI, Masamitsu SHIMAZAWA and Hideaki HARA* Blue light is a high-energy or short-wavelength visible light, which induces retinal diseases such as age-related macular degeneration and retinitis pigmentosa. Bilberry and lingonberry contain high amounts of polyphenols and thus confer health benefits. This study aimed to determine the protective effects and mechanism of action of bilberry extract (B-ext) and lingonberry extract (L-ext) and their active components against blue light-emitting diode (LED) light-induced retinal photoreceptor cell damage. Our findings suggest that B-ext and L-ext containing high amounts of polyphenols exert protective effects against blue LED light-induced retinal photoreceptor cell damage mainly through inhibition of ROS production and activation of pro-apoptotic proteins. [BMC Nephrol. 15:98 (2014)] [Lab. of Molecular Pharmacology] Effect of Chitosan Chewing Gum on Reducing Serum Phosphorus in Hemodialysis Patients: a Multi-center, Randomized, Double-blind, Placebo-controlled Trial. Tadao AKIZAWA, Yoshinari TSURUTA, Yoichi OKADA, Yoshihiro MIYAUCHI, Akio SUDA, Hiroshi KASAHARA, Nobuhiro SASAKI, Yoshitaka MAEDA, Takako SUZUKI, Noriaki MATSUI, Jun NIWAYAMA, Toshiaki SUZUKI, Hideaki HARA*, Yasushi ASANO, Sadao KOMEMUSHI and Masafumi FUKAGAWA HS219 (40 mg chitosan-loaded chewing gum) is designed to bind salivary phosphorus as an add-on to available phosphorus binders. We performed a randomized, placebo-controlled, double-blind study to evaluate the efficacy and safety of HS219 in hemodialysis (HD) patients with hyperphosphatemia as an add-on to phosphorus binders. The chitosan-loaded chewing gum HS219 does not affect serum and salivary phosphorus levels in Japanese HD patients with hyperphosphatemia. Our findings do not support previous findings that 20 mg of chitosan-loaded chewing gum reduces serum and salivary phosphorus levels. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- 88 [Food Funct. 13, 2-6 (2014)] [Lab. of Molecular Pharmacology] The Antimicrobial Effect of the Extract of Canavalia gladiata on Periodontal Pathogen. Tomomi MASUDA, Hideki MIYAKUBO, Munekazu IINUMA and Hideaki HARA* Canavalia gladiata is using for prevention bad breath, not only food. Recently, Porphyromonas gingivalis starts to garner attention. Porphyromonas gingivalis produced potent protease, called gingipain, and is involved with a large part of the periodontal pathogen. In this study, we examined the antimicrobial effect of extract Canavalia gladiate on periodontal pathogen. The finding indicates that Canavalia gladiate has the antimicrobial effect on periodontal pathogen. [J. Com. Pharm. Pharm. Sci. 6, 57-61 (2014)] [Lab.of Pharmacy Practice & Social Science] Factors Influencing Pharmacies’ Adoption of a System for Preventing Dispensing Errors. Saori MATSUNAMI, Syuji YAMASHITA, Masafumi KUBOTA, Shigeharu TANEI, Kazuhiro IGUCHI, Yoshihiro NOGUCHI, Emi GOTO and Tadashi SUGIYAMA* We mailed 200 community pharmacies a questionnaire about adoption of computerized checking systems for preventing dispensing errors, frequency and contents of dispensing errors and so on. We found that 42.0% and 14.8% of the pharmacies had adopted systems for powder drug dispensing and tablet dispensing, respectively. Powder systems were adopted in pharmacies of various scales. In contrast, tablet systems were adopted in only pharmacies that were part of a chain. In pharmacies where such systems were introduced, serious dispensing error rarely occurred. Some additional functions, such as confirming the patient’s medication history, indicating drug information, and time keeping, were introduced into the tablet system. Our findings suggest that the usefulness of a checking system for preventing dispensing errors increases when the system performs additional functions. [J. Jpn. Soc. Health care Manag.,16, 90 - 96(2014)] [Lab.of Pharmacy Practice & Social Science] A survey of journal articles related to computerized support systems for cancer chemotherapy in Journal of Japanese Society of Hospital Pharmacists and Japanese Journal of Pharmaceutical Health Care and Science. Makoto NAKASHIMA and Tadashi SUGIYAMA* We surveyed journal articles related to computerized support systems for prescriptions by physicians, prescription checks by pharmacists, and drug mixing in cancer chemotherapy. The articles were divided into 2 groups on the basis of whether the computerized systems were linked with the order entry system. With regard to functions that supported prescriptions by physicians were mostly confirmed in articles reported system linked with the order entry system. A support system for prescriptions by physicians leads to proper use of anticancer agents and decreases the working time spent in prescription checks by pharmacists. Therefore, a computerized system that support prescriptions is useful in safety management and efficiency of clinical practice. [Jpn. J. Drug Inform. 16, 90-96 (2014)] [Lab.of Pharmacy Practice & Social Science] Introducing computer systems supporting works related to cancer chemotherapy and evaluating their effect (the 2nd report): Computer systems linked to electronic medical records. Makoto NAKASHIMA, Takuya GOTO, Yuka Aizawa2, Mie Kominami and Tadashi SUGIYAMA* We introduced two computer systems that utilized data imputed into electronic medical records. The first system was used to check cancer chemotherapy prescriptions, whereas the second system was a preparation support system that facilitates precise mixing of anticancer drugs. Using the prescription checking system, the time required for checking was reduced significantly compared to without using the system. Using the preparation support system, the preparation time required was prolonged significantly compared to that without using the system. However, questionnaire survey revealed that prolonged time was in the allowable range to ensure safety. In conclusion, it is considered that the prescription checking system introduced efficient checking of prescriptions, and that the preparation support system introduced an improvement in the accuracy of preparation. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- [Jpn. J. Pharm. Health Care Sci. 40, 734-741 (2014)] 89 [Lab.of Pharmacy Practice & Social Science] Prognostic factors in patients with unresectable pancreatic cancer treated with gemcitabine: a retrospective analysis. Masahiro HATORI, Daiki TSUJI, Keisei TAKU, Takashi DAIMON, Mana KAMEZATO Midori IKEDA, Ryo MAKUTA, Hideki HAYASHI*, Kazuyuki INOUE and Kunihiko ITOH We retrospectively analyzed the medical records of 88 patients who received gemcitabine mono-therapy for unresectable pancreatic cancer. Multivariate analysis identified gemcitabine total dose (≤ 9075 mg; hazard ratio HR, 3.10; P = 0.001), absence of second-line therapy (HR, 6.30; P < 0.001), stage IV-b (HR, 4.97; P = 0.005), neutrophil counts (> 3979.5 /µL; HR, 3.43; P = 0.003), lymphocyte counts (≤ 1155.5 /µL; HR, 2.94; P = 0.010), and carcinoembryonic antigen (CEA) levels (> 5.95 ng/mL; HR, 2.57; P = 0.034) as prognostic factors. These prognostic factor could help to select treatment for patients in clinical practice, and these risk-adapted treatment strategies shoul be further investigated in a prospective study. [Chemotherapy, 59, 407-413 (2014)] [Lab.of Pharmacy Practice & Social Science] Retrospective analysis of severe neutropenia in patients receiving concomitant administration of docetaxel and clarithromycin. Daiki TSUJI, Mana KAMEZATO, Takashi DAIMON, Keisei TAKU, Masahiro HATORI, Midori IKEDA, Hideki HAYASHI*, Kazuyuki INOUE, Takashi ETO and Kunihiko ITOH The aim of this study was to evaluate whether the risk of severe neutropenia induced by docetaxel was increased by concomitant administration of clarithromycin. Patients with advanced lung cancer receiving docetaxel were identified from an electronic medical record system and divided into 2 groups: concomitant administration of clarithromycin and no concomitant administration of clarithromycin. Multivariate analysis showed that co-administration of clarithromycin [odds ratio (OR) 4.98; P = 0.004], pre-treatment absolute neutrophil count (OR 2.62; P = 0.011) and female gender (OR 2.75; P = 0.029) resulted in an increase in the incidence of grade 4 neutropenia. [Epilepsy Res., 108, 1046-1051 (2014)] [Lab.of Pharmacy Practice & Social Science] 4217C>A polymorphism in carbamoyl-phosphate synthase 1 gene may not associate with hyperammonemia development during valproic acid-based therapy. Kazuyuki INOUE, Eri SUZUKI, Toshiki TAKAHASHI, Yoshiaki YAMAMOTO, Rei YAZAWA, Yukitoshi TAKAHASHI, Katsumi IMAI, Kou MIYAKAWA, Yushi INOUE, Daiki TSUJI, Hideki HAYASHI* and Kunihiko ITOH Polymorphisms in the genes encoding carbamoyl-phosphate synthase 1 (CPS1) and N-acetylglutamate synthase (NAGS) were recently reported to be risk factors for the development of hyperammonemia during valproic acid-based therapy. This study aimed to examine the influence of patient characteristics, including polymorphisms in CPS1 4217C>A and NAGS -3064C>A, on the development of hyperammonemia in Japanese pediatric epilepsy patients. CPS1 4217C>A polymorphism may not be associated with the development of hyperammonemia in Japanese population. [Biol. Pharm. Bull., 37, 461-465 (2014)] [Lab.of Pharmacy Practice & Social Science] Endothelin-1 receptors in rat tissues: characterization by bosentan, ambrisentan and CI-1020. Yoshinari YOKOYAMA, Ayaka OSANO, Hideki HAYASHI*, Kunihiko ITOH, Takashi OKURA, Yoshiharu DEGUCHI, Yoshihiko ITO and Shizuo YAMADA The present study aimed to characterize comparatively endothelin-1 (ET-1) receptors in rat tissues by radioligand binding assay using [125I]ET-1 and to examine receptor binding after oral administration of bosentan. The nonlinear least squares regression analysis revealed the presence of high- and low-affinity ET-1 receptor sites in these tissues for ambrisentan and CI-1020. Oral administration of bosentan caused a dose-dependent decrease in specific [125I]ET-1 binding in the rat lung, kidney and bladder, suggesting significant binding of the tissue ET-1 receptors in vivo. In conclusion, it has been shown that a significant amount of pharmacologically relevant ET-1 receptors may exist in rat tissues and that ET-1 receptor antagonists such as bosentan at pharmacological doses may exert some pharmacological effects by binding these ET-1 receptors. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- 90 [Cancer Sci., 105, 396-401 (2014)] [Lab.of Pharmacy Practice & Social Science] Identification of anti-CD98 antibody mimotopes for inducing antibodies with antitumor activity by mimotope immunization. Misa SAITO, Masahiro KONDO, Motohiro OHSHIMA, Kazuki DEGUCHI, Hideki HAYASHI*, Kazuyuki INOUE, Daiki TSUJI, Takashi MASUKO and Kunihiko ITOH We isolated linear and constrained mimotopes from HBJ127, a tumor-suppressing anti-CD98 heavy chain mAb, and determined their abilities for induction of antitumor activity equal to that of the parent antibody. We detected elevated levels of antipeptide responses, but failed to detect reactivity against native CD98-expressing HeLa cells in sera of immunized mice. Phage display panning and selection of mimotope-immunized mouse spleen-derived antibody Fab library showed that HeLa cell-reactive Fabs were successfully retrieved from the library. This finding indicates that native antigen-reactive Fab clones represented an undetectable minor population in mimotope-induced antibody repertoire. [J. Pharmacol. Sci., 124, 86-91 (2014)] [Lab.of Pharmacy Practice & Social Science] Bladder Endothelin-1 Receptor Binding of Bosentan and Ambrisentan. Ayaka OSANO, Yoshinari YOKOYAMA, Hideki HAYASHI*, Kunihiko ITOH, Takashi OKURA, Yoshiharu DEGUCHI, Yoshihiko ITO and Shizuo YAMADA The present study aimed to characterize bladder endothelin-1 (ET-1) receptor binding of clinically used ET-1 receptor antagonists by using [(125)I]ET-1. Bosentan and ambrisentan significantly increased the dissociation constant for bladder [(125)I]ET-1 binding without affecting maximal number of binding sites (Bmax). Thus, bosentan and ambrisentan seem to bind to bladder ET-1 receptor in a competitive and reversible manner. Oral administration of bosentan caused a dose-dependent decrease in Bmax for bladder [(125)I]ET-1 binding, suggesting significant binding of bladder ET-1 receptors in vivo. A significant amount of pharmacologically relevant ET-1 receptors may exist in the bladder. These receptors may be implicated in the pathogenesis of lower urinary tract symptoms and may also be promising targets for the development of therapeutic agents. [Ther. Drug Monit., 36, 406-409 (2014)] [Lab.of Pharmacy Practice & Social Science] Influence of uridine diphosphate glucuronosyltransferase 2B7 -161C>T polymorphism on the concentration of valproic acid in pediatric epilepsy patients. Kazuyuki INOUE, Eri SUZUKI, Rei YAZAWA, Yoshiaki YAMAMOTO, Toshiki TAKAHASHI, Yukitoshi TAKAHASHI, Katsumi IMAI, Seiichi KOYAMA, Yushi INOUE, Daiki TSUJI, Hideki HAYASHI* and Kunihiko ITOH This study aimed to examine the relationships between plasma valproic acid (VPA) concentrations and the -161C>T polymorphism in uridine diphosphate glucuronosyltransferase (UGT) 2B7 genes in pediatric epilepsy patients. Significant differences in adjusted plasma VPA concentrations were observed between carriers of CC, CT, and TT genotypes in the UGT2B7 -161C>T polymorphism. Patients with the CC genotype had lower adjusted plasma VPA concentrations than those with CT or TT genotype. These data suggest that the UGT2B7 -161C>T polymorphism in pediatric epilepsy patients affects VPA concentration. [J. Pharm. Biomed. Anal., 89, 227-232 (2014)] [Lab.of Pharmacy Practice & Social Science] Simultaneous microdetermination of bosentan, ambrisentan, sildenafil, and tadalafil in plasma using liquid chromatography/tandem mass spectrometry for pediatric patients with pulmonary arterial hypertension. Yoshinari YOKOYAMA, Miho TOMATSURI, Hideki HAYASHI*, Keita HIRAI, Yasuo ONO, Yuto YAMADA, Kenichiro TODOROKI, Toshimasa TOYO'OKA, Hiroshi YAMADA and Kunihiko ITOH A simultaneous, selective, sensitive, and rapid liquid chromatography/tandem mass spectrometry (LC–MS/MS) method was developed and validated for the quantification of bosentan, ambrisentan, sildenafil, and tadalafil in 50 μL of human blood plasma. This validated method was applied to a clinical pharmacokinetic study in pediatric patients with pulmonary arterial hypertension (PAH) following the oral administration of PAH drugs. These results indicate that this method is suitable for assessing the risk/benefit of combination therapy in the pediatric population and useful for therapeutic drug monitoring for PAH treatment. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- [Gan To Kagaku Ryoho 41, 975-979 (2014)] 91 [Lab. of Clinical Pharmacy] Analysis of Factors Influencing the Occurrence of Infusion Reaction after Initial Treatment with Rituximab. Masahiro YASUDA, Tomoya TACHI, Michi UMEDA, Kazumasa USUI, Katsuhiro NAGAYA, Tomohiro OSAWA, Atushi ICHIHASHI, Hideko GOTO, Senji KASAHARA, Takeshi TAKAHASHI, Hitomi TERAMACHI* and Chitoshi GOTO We investigated factors influencing the occurrence of infusion reactions after initial treatment with rituximab for B-cell non-Hodgkin's lymphoma. The "2,000 U/mL or less group"of soluble interleukin-2 receptor levels and the "over 2,000 U/mL group"showed significant different (p = 0.014). The "double value or less group"of a standard value (211 IU/L) and "over double value group"showed significantly different lactate dehydrogenase levels (p = 0.017). The "lower limit or less group"of the standard value (men: 13 g/dL, women: 12 g/dL) and the "over lower limit group"showed significantly different hemoglobin levels (p = 0.020). [Gifubyoyaku .56, 4-7 (2014)] [Lab. of Clinical Pharmacy] Investigation for Factors Affecting Clearance of Teicoplanin. Satoshi AOYAMA, Hitomi TERAMACHI*, Yuko NAKASIMA, Tomoya TACHI, Tomohiro OSAWA, Masahiro FUKUTA, Takashi MIZUI, Teruo TSUCHIYA and Chitoshi GOTO Teicoplanin (TEIC) is a renally excreted drug. For clinical treatment with TEIC, factors requiring dose revision are not well defined, apart from renal insufficiency. In this study, TEIC pharmacokinetic parameters in Japanese cancer patients were compared with those in non-cancer patients. The two-compartment Bayesian pharmacokinetic program was used to analyze the parameters in 14 cancer patients (aged 73.4 ± 9.3 years, mean ± SD) and 6 non-cancer patients (aged 75.3 ± 3.9 years) The cancer patients showed 1.3 times higher TEIC clearance (0.0121 ± 0.0043 L/hr/kg) than non-cancer patients (0.0091 ± 0.0017 L/hr/kg) (p<0.05) with increasing clearance by Cockroft-Gault (CrCL). Also the direction of malignancy and male gender are a tendency higher than non-malignancy. These findings suggest that the measurement of TEIC serum concentration is required for patients with malignancy. [Oncol. Lett. 8, 2318-2324 (2014)] [Lab. of Clinical Pharmacy] Oral Anticancer Agent Medication Adherence by Outpatients. Michio KIMURA, Eiseki USAMI, Mina IWAI, Toshiya NAKAO, Tomoaki YOSHIMURA, Hiromi MORI, Tadashi SUGIYAMA and Hitomi TERAMACHI* In the present study, medication adherence and factors affecting adherence were examined in patients taking oral anticancer agents. In June 2013, 172 outpatients who had been prescribed oral anticancer agents by Ogaki Municipal Hospital (Ogaki, Gifu, Japan) completed a questionnaire survey, with answers rated on a five-point Likert scale. The factors that affect medication adherence were evaluated using a customer satisfaction (CS) analysis. In 36.0% (62 out of 172) of the cases, there was insufficient medication adherence; 64.5% of those cases (40 out of 62) showed good medication compliance (4-5 point rating score). The percentage of patients with good medication compliance was 87.2% (150 out of 172). Through the CS analysis, three items, the interest in the drug, the desire to consult about the drug and the condition of the patient, were extracted as items for improvement. [J. Pharm. Health Care Sci. 40, 632-642 (2014)] [Lab. of Clinical Pharmacy] Effect of Patient Education on Discharge for Use of Medication Notebook on Purchasing Over-the-counter Drugs and Health Foods –a Randomized Controlled Trial–. Tomoya TACHI*, Kazuhide TANAKA, Shoko ASANO, Takafumi YOKOI, Kazumasa USUI, Misa KATO, Yoshihiro NOGUCHI, Tomohiro OSAWA, Atsushi ICHIHASHI, Masahiro YASUDA, Takashi MIZUI, Chitoshi GOTO and Hitomi TERAMACHI We investigated the effect of patient education on discharge for medication-notebook use on purchasing OTC drugs and health foods. Patients aged ≥20 years who were hospitalized at the Ophthalmology Department of Gifu Municipal Hospital within a certain period were allocated randomly to an intervention group with the education and a control group without it, and questionnaire surveys were done before the education and at 2 months after discharge. The rate of patients who got to use the notebook on purchasing OTC drugs or health foods in the intervention group (30.0%) was high compared to that in the control group (0%) (p = 0.020). 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- 92 [SAGE Open Med. 2, 2050312114563318 (2014)] [Lab. of Clinical Pharmacy] Influence of Angiotensin II Receptor Blocker Combination Tablet Prescription on Drug Number and Cost. Hitomi TERAMACHI*, Tatsuya TAKAHASHI, Tomoya TACHI, Yoshihiro NOGUCHI, Hiroyuki NAGASAWA, Yoko INO, Takashi MIZUI, Chitoshi GOTO and Teruo TSUCHIYA We conducted a survey on the use of angiotensin II receptor blocker–containing combination tablets as anti-hypertensive drugs, in particular angiotensin II receptor blocker/diuretic and angiotensin II receptor blocker/calcium channel blocker combinations. We performed a retrospective study of patients who visited the outpatient clinic of Gifu Municipal Hospital and received anti-hypertensive agents between June 2006 and December 2011. No reductions in the number of prescribed drugs or drug cost were seen following a change in prescription to an angiotensin II receptor blocker/diuretic. Patients receiving an angiotensin II receptor blocker/calcium channel blocker had a significant reduction in the number of prescribed drugs and a slight decrease in drug cost. [J. Pharm. Commun. 12, 5-10 (2014)] [Lab. of Clinical Pharmacy] Evaluation of Lecture to Students in Clinical Training by Pharmacists using Multivariate Analysis and CS (Customer Satisfaction) Analysis. Tomoya TACHI, Chitoshi GOTO, Kosuke SAITO, Yuki OHNO, Masahiro YASUDA, Takashi MIZUI, Kenji KOBAYASHI, Makoto SAHASHI, Yoshihiro NOGUCHI and Hitomi TERAMACHI* The aims of the study are to clarify factors influencing lecture satisfaction of pharmacy students using multivariate analyses and the influencing degree, and to extract improving items of lectures using customer satisfaction (CS) analysis, in lectures to pharmacy students by pharmacists. At the department of pharmacy in Gifu Municipal Hospital, lectures by pharmacists and questionnaire survey were performed for pharmacy students in 2012 and 2013 academic years. From the multivariate analyses, it was clarified that “ease to understand” and “rousing interest” particularly influenced “lecture satisfaction”. From CS analysis, “rousing interest” and “characterization” were particularly extracted as improving items of lectures. [J. Threm. Anal. Calorim. 115, 2089-2097 (2014)] [Lab. of Clinical Pharmacy] Molecular Dynamics and Energetic Perceptions of Substrate Recognition by Thymidylate Kinase. Mahmoud KANDEEL, Yoshihiro NOGUCHI*, Kentaro OH-HASHI, Hye-Sook KIM and Yukio KITADE Plasmodium deoxyguanylate pathways are an attractive area of investigation for future metabolic and drug discovery studies due to their unusual substrate specificities. We investigated the energetic contribution to thymidylate kinase substrate binding, and the forces underlying ligand recognition. The binding constant varied from 8 × 104 M-1 at 290 K to 6 × 104 M-1 at 310 K for dGMP, and from 16 × 104 M-1 at 290 K to 4 × 104 M-1 at 310 K for TMP. ΔCp was estimated as -1.75 kJ mol-1 K-1 for TMP and +2 kJ mol-1 K-1 for dGMP. In comparison with TMP, the binding of dGMP to PfTMK produced less favorable enthalpy change, positive or favorable entropic contribution at lower temperature, positive heat capacity change, negative ΔSoHE, positive ΔSother, higher total solvent-exposed surface area and more or less rigid body binding. These changes indicate unfavorable conditions for proper binding and lower conformational changes, and suboptimal structural reordering during dGMP binding. [Clin. Pharmacol. Ther. 95, 533-541 (2014)] [Lab. of Drug Informatics] Significant differences in drug-lag in clinical development among various strategies used for regulatory submissions in Japan. Takahiro UENO, Yasuko ASAHINA, Ayumi TANAKA, Hiroaki YAMADA, Mitsuhiro NAKAMURA* and Yoshiaki UYAMA Although the number of global clinical trials (GCTs) conducted in multiple countries including Japan has increased recently, it is not clear how much these GCTs help in reducing the lag in drug development (LDD: difference between the submission dates for new drug applications (NDAs) in the United States and Japan). We examined the effects of various clinical development strategies on LDD because the development period depends on what types of clinical trials were conducted for the Japanese NDA. The inclusion of GCTs in the clinical development strategy is also important; simultaneously, the smaller sample size of the Japanese population should be taken into consideration. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- [Anesth. Analg. 118, 125-131 (2014)] 93 [Lab. of Drug Informatics] Hypergravity exposure for 14 days increases the effects of propofol in rats. Chihiro IWATA, Chikara ABE, Mitsuhiro NAKAMURA* and Hironobu MORITA It is thought that the gravitational environment of space exploration alters the effects of anesthetics; however, no evidence has as yet been reported. In the present study, we sought to provide direct evidence showing that hypergravity exposure for 14 days increases anesthetic effects and to examine the possible causes. The effects of propofol were compared between rats raised in 1g and 3g environment by measuring time taken to induce the burst suppression in an electroencephalogram, nadir of arterial blood pressure, and time taken for the appearance of the righting response to noxious electrical stimulations. The time course of plasma propofol concentrations was also examined. The results provide evidence that hypergravity exposure for 14 days increases the effects of propofol. It is suggested that the results were not caused by differences in plasma propofol concentrations but by increased sensitivity, which was mediated via the vestibular system. [J. Invest. Dermatol. 134, 712-718 (2014)] [Lab. of Drug Informatics] Interferon-gamma decreases ceramides with long-chain fatty acids: possible involvement in atopic dermatitis and psoriasis. Chisato TAWADA, Hiroyuki KANOH, Mitsuhiro NAKAMURA*, Yoko MIZUTANI, Tomomi FUJISAWA, Yoshiko BANNO and Mariko SEISHIMA We aimed to identify the mechanism underlying the alteration of fatty acids (FAs) chain length of ceramides (CERs) in these diseases. Mass spectrometry analysis of CERs in the human stratum corneum showed that the proportion of CERs with long-chain FAs was significantly lower in atopic dermatitis (AD) and psoriasis patients than in healthy controls, and this reduction was more pronounced in psoriasis than in AD. Using cultured human keratinocytes and epidermal sheets, our results suggest that IFN-γ decreases CERs with long-chain FAs through the downregulation of elongase of long-chain fatty acids (ELOVL) and ceramide synthase and that this mechanism may be involved in the CER profile alteration observed in psoriasis and AD. [JJOMT. 62, 322-327 (2014)] [Lab. of Drug Informatics] Study on the work-related stress among hospital pharmacist. Ryoichi INABA, Atsushi HIOKI, Yoshihiro KONDO, Hiroki NAKAMURA and Mitsuhiro NAKAMURA* This study was designed to evaluate the work-related stress among hospital pharmacists. A self-administered questionnaire survey on the related determinants was performed among 314 hospital pharmacists. There were no significant defferences between males (83.3%) and females (85.4%) in the proportion of pharmacists who feel stressful at work. The total health risks read from the figure for judgements of the work-related stress in males and females were 102.3 and 97.4 for 100 of the standard group, respectively. After adjusted for age and carrier of drug compounding, total scores of stress items concerning ‘basic duty’ and ‘employment and future’ were significantly higher in male pharmacists than in female pahmacists (p<0.05). These results suggest that there were significant differences in the work-related stress felt by pharmacisits between males and females. [YAKUGAKU ZASSHI 134, 299-304 (2014)] [Lab. of Drug Informatics] Evaluation of the association between the use of oral anti-hyperglycemic agents and hypoglycemia in Japan by data mining of the Japanese Adverse Drug Event Report (JADER) database. Ryogo UMETSU, Yuri NISHIBATA, Junko ABE, Yukiya SUZUKI, Hideaki HARA, Hideko NAGASAWA, Yasutomi KINOSADA and Mitsuhiro NAKAMURA* The aim of the present study was to evaluate the risk of hypoglycemia due to oral anti-hyperglycemic agents (OHAs) use by using the Japanese Adverse Drug Event Report (JADER) database. To this end, reports of hypoglycemia events included in the JADER database between 2004 and 2012 were analyzed by calculating the reporting odds ratio (OR). Among OHAs, sulfonylureas showed the highest adjusted OR (adjusted OR, 10.13; 95% confidence interval, 9.08-11.26). The adjusted ORs for meglitinides, biguanide, thiazolidinedione, alpha-glucosidase inhibitors, and dipeptidyl peptidase-4 inhibitors were significantly lower than that of sulfonylureas. Data mining of the JADER database was useful for analyzing OHA-associated hypoglycemia events. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- 94 [J. Gifu Byoyaku. 55, 10-14 (2014)] [Lab. of Drug Informatics] A survey of the attiude of pharmacist and pharmaceutical company on the new program of registered drug sellers. Mitsuhiro NAKAMURA*, Yoshihiro KONDO, Honami SUZUKI, Yuri NISHIBATA, Hiroaki URANISHI, Rie NISHIWAKI, Hitomi TERAMACHI, Tadashi HORIUCHI and Teruo TSUCHIYA The new over-the-counter (OTC) drug sales program were introduced in accordance with the revised pharmaceutical affairs law from 2009.This law has permitted registered sellers to sell the OTC drugs of category2, and 3. We conducted a questionnaire survey against 413 pharmacists and 50 pharmaceutical companies to evaluate the role of registered seller in community phramacies in the case of recommendation of OTC drugs for self-medicaiton by patients. Many pharmacists and the compacies concerned about the knowledge of medicine and disease that registered drug sellers actually have. Therefore, it would be necessary to develop an educational system for registered drug sellers. [J. Gifu Byoyaku. 55, 15-17 (2014)] [Lab. of Drug Informatics] Survey of consumer views on the revision of over-the-counter drug sales system. Mitsuhiro NAKAMURA*, Yoshihiro KONDO, Rie NISHIWAKI, Honami SUZUKI, Yuri NISHIBATA, Hitomi TERAMACHI, Tadashi HORIUCHI and Teruo TSUCHIYA Over-the-counter (OTC) drugs were classified into category 1, 2, and 3 by the revised pharmaceutical law introduces in 2009, and new qualifications for the registration of drug sellers was established. The aim of this study was to investgate the views of consumers concerning the revision of the OTC drug sales system. We conducted a questionnaire survey against 312 consumers (male, 184; female, 28). The questionnaire found that 56% of the consumers did not know the term of “registered drug seller.” They realized that pharmacists and/or registered drug seller acquired a special knowledge of OTC drugs and provide appropriate information on safe use of the OTC drugs. These results suggested that appropriate pharmaceutical education programs, which were designed for the achievement of a comprehensive knowledge of self-medication, might be needed for consumers. [J. Gifu Byoyaku. 56, 8-14 (2014)] [Lab. of Drug Informatics] Optimization of sample preparation procedure and analytical column selection in the measurement of anti-apileptic drugs in human plasma with high performance liquid chromatography. Tomofumi OHMORI, Mami KAWAI, Mitsuhiro NAKAMURA*, Kazumi TANIGUCHI, Kazuhiro IGUCHI, Yoshinori ITOH, Shigeyuki USUI and Kazuyuki HIRANO Several methods for the assay of anti-epileptic drugs, using high performance liquid chromatography (HPLC) with UV detection have been reported to detect therapeutic concentrations in plasma. However, these methods have limited throughput and restrict sensitivity. We evaluated the possibility of using a high throughput high-resolution ODS column compatible with aqueous compounds. Furthermore, solid-phase extraction (SPE) and liquid-liquid extraction was evaluated in sample preparation procedure. SPE followed by HPLC-UV, using a short high resolution octadecyl silica column compatible with aqueous compounds, was useful in the development of a robust and specific analysis of anti-epileptic drugs in human plasma. [J. Community Pharm. Pharm. Sci. 6, 150-156 (2014)] [Lab. of Community Pharmacy] Dispensing Errors Made by Pharmacy Students during Pharmacy-based Practical Training at Gifu Pharmaceutical University Pharmacy. Kazuhiro IGUCHI*, Shuji YAMASHITA, Emi ITO, Yoshihiro NOGUCHI, Masafumi KUBOTA, Mitsuhiro NAKAMURA, Hitomi TERAMACHI, and Tadashi SUGIYAMA Prescription dispensing is one of the core practice items for pharmacy students during pharmacy-based practical training. Here, we analyzed the dispensing errors reported by pharmacy students and pharmacists in Gifu Pharmaceutical University Pharmacy. There were 2,697 dispensing errors made by 103 pharmacy students. The most common type of dispensing errors was dispensing the wrong quantity. In particular, the wrong amount of single-dose powder packets, (e.g., magnesium oxide and pantethine) was more frequently found to be dispensed by students than by pharmacists. These results will help when proposing preventative actions for reducing the dispensing errors made by students during pharmacy-based practical training. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- [Jpn. J. School Health 56, 11-20 (2014)] 95 [Lab. of Community Pharmacy] Factors Associated with Medicine Use Behavior among Junior and Senior High School Students. Chihiro SAKAI*, Tetsuro KAWABATA, Kazuya HISHIDA, Meijin LI and Yukiko IMADE The main purpose of this study was to clarify the factors associated with medicine use behavior among junior and senior high school students. Valid respondents were 326 students in the 9th grade of five public junior high schools and 1,369 students in the 10th grade of seven public high schools in Hyogo prefecture. The data were collected between September and October in 2011, using an anonymous self-administered questionnaire. The results of this study suggest that an attitude is one of the most important factors associated with medicine use behavior in junior and senior high school students. Further the results suggest that it is important to enhance students’ family-related self-esteem and problem-focused coping skills to promote an appropriate medicine use behavior. [生薬学雑誌 68, 43-52 (2014)] [Lab. of Herbal Garden] Studies on Gentianae Radix, Gentianae scabra Radix and Gentianae macrophyllae Radix Ryohei NOMURA, Keiko ARIMOTO, Rie ISHIHARA, Michiho ITO, Mamoru OKASAKA, Tomonari KANAYA, Yoichi KAWANISHI, Akiko KAWABATA, Eiji SAKAI, Yasuo SHIMADA, Yoshitaka TAKAI, Takamori TAGAMI, Kayoko TOKURA, Yoichi HISATA, Masataka MORIYASU, Yutaka YAMOMOTO and Tsuguo YOKOKURA According to the Japanese Pharmacopoeia Sixteenth Edition ( JP16), the origin of Gentianae Radix is the root and rhizome of Gentiana lutea (Gentianaceae), and that of Gentianae sucabra Radix is the root and rhizomae of Gentiana scabra, G. manshurica and G. triflora (Gentianaceae). These gentian herbs are used as ingredients of kanpo formuli and bitter stomachics. However the quantitative test for these gentian herbs is not desigenated in JP16 nor non-JPS 2012. In this study, an analytical method using HPLC for Gentianae Radix, Gentianae scabra Radix and Gentianae mocrophyllae Radix was elaborated, and was applied to market samples. [JPS Conf. Proc.1,019008-1-019008-4 (2014)] [Lab. of Mathematics] Dynamics of a Skew Tent Map in the Nonlinear Frobenius-Perron Equation. Daisuke KATSURAGI Return maps of the mean field in globally coupled map Lattices (GCML) with a large system size were compared with those at the limit in a large system size. We adopted a nonlinear Frobenius-Perron equation (NFPE) for the limit in the large system size, and used a skew tent map as a chaotic map to simplify calculations in the NFPE. The return maps of the mean field for direct numerical calculations in the GCML usually fluctuate from those for numerical calculations in the NFPE. However, at some coupling strengths, there are totally different return maps between the GCML and the NFPE. We show that this strongly depends on the initial conditions at some coupling strengths. [NSSU Journal of Sport Sciences. 3, 21-35 (2014)] [Lab. of Health & physical Education] A study of the transition process of the system for Kendo techniques—focus on the shinai—. Taichi SAKAMOTO*,Yusuke YANO and Makoto YAGISAWA The transition process of the system for Kendo techniques were investigated. As the resules, Shinai used before Tominaga Kengo’s “Mottomo Jissaitekina Gakusei Kendo no Sui” (1926) which completed the target-based technique system in Kendo, were similar to those used in the period when Chiba Shusaku’s Kenjyutsu 68 tte was explicitly stated.The type of shinai adopted in Tominaga Kengo’s “Mottomo Jissaitekina Gakusei Kendo no Sui” (1926) was also similar to those used in the past. In regards to the sword’s size; however, a shinai with a longer length of 3-shaku 9-sun (approx. 120.0 centimeters) comes to be acceptable in addition to those of the conventional length of 3-shaku 8-sun (approx. 117.3 centimeters). 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- 96 紀 要 論 文 (1) 信田智哉, 多田教浩, 三浦剛, 伊藤彰近:光 と 酸 素 或 い は 過 酸 化 水 素 を 用 い る 酸 化 反 応 の 開 発 に関する研究. [岐阜薬科大学紀要 63, 33-42 (2014)] (2) 杉原光, 竹内洋文:プランルカスト水和物の経口持続性製剤化を目指した胃内滞留性製剤の設計に関す る研究 [岐阜薬科大学紀要 63, 1-10 (2014)] (3) 田中彦孝, 鶴間一寛, 嶋澤雅光, 原英彰:膜 貫 通 糖 タ ン パ ク 質 GPNMB の ALS 病 態 に 対 す る 神 経保護因子としての可能性. [岐阜薬科大学紀要 63, 11-21 (2014)] (4) 中村信介, 鶴間一寛, 嶋澤雅光, 原英彰:カリジノゲナーゼの血管新生抑制作用. [岐阜薬科大学紀要 63, 22-32 (2014)] 総 説 (1) 奥田健介, 平山祐, 永澤秀子:低酸素・低栄養環境関連分子を標的とする創薬研究の現状. [放射線生物研究 49, 341-357 (2014)] (2) 佐治木弘尚:特定官能基を標的とした接触還元法の開発. [有機合成化学協会誌, 72, 39-50 (2014)] (3) Yuki YABE, Yoshinari SAWAMA, Yasunari MONGUCHI and Hironao SAJIKI: New Aspect of Chemoselective Hydrogenation Utilizing Heterogeneous Palladium Catalysts Supported by Nitrogen- and Oxygen-Containing Macromolecule. [Catal. Sci. Technol. 4, 260-271 (2014)] (4) 多田教浩, 伊藤彰近:光と分子状酸素を利用する酸化反応. [ファルマシア 50, 517-521 (2014)] (5) 竹内洋文:粒子設計を基盤とする新しい医薬品製剤に関する研究 [粉砕,No.57, 27-35 (2014)] (6) Masatoshi INDEN:The Causative Gene of Parkinsonism and its Medical Treatment Strategy. [Yakugaku Zasshi 134, 1253-1258 (2014)] (7) 稲垣直樹:アトピー性皮膚炎とかゆみ. [薬学図書館 59, 84-90 (2014)] (8) 山下弘高, 稲垣直樹:アトピー性皮膚炎の基礎データ. [漢方と最新治療 23, 327-332 (2014)] (9) 山下弘高, 田中宏幸, 稲垣直樹:食物アレルギーと食品添加物. [臨床免疫・アレルギー科 62, 405-410 (2014)] (10) Mitsue ISHISAKA and Hideaki HARA:The roles of diacylglycerol kinases in the central nervous system: review of genetic studies in mice. 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- 97 [J. Pharmacol. Sci. 124, 336-343 (2014)] (11) Yuka IKEGAME, Kentaro YAMASHITA, Shigeru NAKASHIMA, Yuichi NOMURA, Shingo YONEZAWA, Yoshitaka ASANO, Jun SHINODA, Hideaki HARA and Toru IWAMA:Fate of graft cells: what should be clarified for development of mesenchymal stem cell therapy for ischemic stroke? [Front. Cell. Neurosci. 8, 322 (2014)] (12) 嶋澤雅光, 原英彰:視覚を用いた脳科学研究, 小胞体(ER)ストレスと緑内障. [脳 21 17, 66-72 (2014)] (13) 嶋澤雅光:緑内障の病態と薬物治療および今後の展望. [ファルマシア, 50, 207-211 (2014)] (14) 小川健二郎, 原英彰:網膜障害に対する食品色素成分の有効性. [FFI ジャーナル 219, 114-125 (2014)] (15) 田中彦孝, 原英彰:ALS の克服を目指して―ALS のバイオマーカー― [日薬理誌 143, 313 (2014)] (16) Yuri NISHIO and Masako TSUZUKI: Phonological Features of Japanese EFL Speakers from the Perspective of Intelligibility [JACET Journal, 58. 57-78 (2014)] (17) Adam SERAG: The Impact of Using L1 in EFL Classroom on Foreign Language Acquisition in Japan [The 2013 JALT National Conference Proceedings, JALT, 211-221 (2014)] (18) Yuri NISHIO and Masako TSUZUKI: E-learning to Improve English Phonological Features Affecting the Accuracy and Intelligibility of Japanese English Learners [AILA World Congress 2014 Abstract Book, 273 (2014)] (19) Yuri NISHIO: Relations Between Realization of English Intonation by the Japanese Future English Teachers and Intelligibility [The JACET 53rd (2014) International Convention Book, 67 (2014)] 著 書 (1) 永澤秀子(分担執筆):28. 酸化ストレス適応応答を標的としたがん治療創薬 [酸化ストレスの医学(診断と治療社)pp.228-246 (2014) ] (2) Akichika ITOH, Tsuyoshi MIURA, Norihiro TADA (分担執筆):Oxidation of Carbon-Halogen Bonds. [Comprehensive Organic Synthesis, 2nd ed. pp.744-769 (2014)] (3) 田中稔幸,酒井英二,大山雅義,阿部尚仁 (分担執筆): [薬草ガイドブック野外編 (日本植物園協会) (2014)] (4) 田中稔幸,大山雅義,阿部尚仁 (分担執筆): [小石川植物園後援会ニュースレター 第 48 号 (小石川植物園後援会) (2014)] (5) 竹内洋文:粒子径測定、比表面積測定 [薬剤学実験法必携マニュアル (南江堂) pp.77-86 (2014)] (6) 笹井泰志 (分担執筆):第 2 章第 3 節[12] 高分子表面のプラズマ処理による細胞培養基板の機能化設計と 開発. [動物細胞培養の手法と細胞死・増殖不良・細胞変異を防止する技術 (技術情報協会) pp. 151-155 (2014)] 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- 98 (7) Hirokazu HARA and Elias AIZENMAN (分担執筆):Chapter 4. Oxidative stress and neuronal zinc signaling. [Zinc Signals in Cellular Functions and Disorder (ed. by Fukada and Kambe, Springer Japan) pp. 55-87 (2014)] (8) 山田晴生, 足立哲夫, 山田裕一, 今井裕一(分担執筆):腎性貧血に ESA 製剤の切り替え投与に伴う炎症指 標の推移. [腎とフリーラジカル 第 12 集 (東京医学社) pp. 58-61 (2014)] (9) 山田晴生, 足立哲夫, 山田裕一, 今井裕一(分担執筆):Teriparatide 投与による腎での extracellular superoxide dismutase (EC-SOD)産生誘導. [腎とフリーラジカル 第 12 集 (東京医学社) pp. 86-89 (2014)] (10) 神谷哲朗, 服部脩平, 原 宏和, 山田晴生, 足立哲夫 (分担執筆):低酸素状態下の COS7 細胞における EC-SOD 発現調節機構としてのエピジェネティクス. [腎とフリーラジカル 第 12 集 (東京医学社) pp. 100-103 (2014)] (11) 臼井茂之 (分担執筆): [2014 年版 実習に行く前の 覚える医薬品集-服薬指導に役立つ- (廣川書店) (2014)] (12) 北市清幸 (分担執筆):アレルギーに使用される健康食品素材・成分と薬剤の関連について [日本食品安全協会会報 9(1), 18-19 (2014)] (13) 北市清幸 (分担執筆), 中野一子 (分担執筆):糖尿病に関係する健康食品と薬の相互作用について [日本食品安全協会会報 9(4), 11-13 (2014)] (14) 保住 功 (分担執筆): 「神経症候群 V」(第 2 版) Fahr 病 [神経症候群 V (第 2 版) 30, 750-755 (2014)] (15) 杉山剛志 (分担執筆):第 2 章 4. 微細藻類由来多糖による自然免疫活性化作用. [エンドトキシン・自然免疫研究 17 -エンドトキシン・自然免疫の展開:新しい機序、診断、応用- (医 学図書出版) pp.57-60 (2014)] (16) 松永俊之 (分担執筆): [薬学生のための病態検査学 第 2 版 (南江堂) (2014)] (17) 稲垣直樹 (分担執筆):総論 3-2 漢方薬の効かせ方―現代薬理からの解析. [小児漢方治療の手引き (日本小児医事出版社) pp. 20-22, (2014)] (18) Masamitsu SHIMAZAWA and Hideaki HARA (分担執筆):ER Stress. [Neuroprotection and Neuroregeneration for Retinal Diseases (Springer Japan) pp.67-83(2014)] (19) 原英彰(分担執筆):第 4 章 目が劇的によくなる「食品」 ブルーベリー -抗酸化作用で緑内障、糖尿 病網膜症に効果が期待-. [目が劇的によくなる最強辞典 -専門家が教える 26 の視力回復・健康法-(マキノ出版) pp. 152-156,(2014)] (20) 原英彰, 柿野衛(分担執筆):第 3 章 便秘解消 2 沈香(ジンコウ)葉エキスの便秘改善作用 [女性の疾患と美容のための機能性素材の開発、(シーエムシー出版) pp. 61-69 (2014)] (21) 杉山正 (分担執筆): [2014 年版 実習に行く前の 覚える医薬品集-服薬指導に役立つ- (廣川書店) (2014)] (22) 杉山正 (分担執筆): [射剤・経口製剤に代わる新しい薬剤投与デバイスの開発 (技術情報協会) (2014)] (23) 寺町ひとみ (分担執筆): [モデル・コアカリキュラムに沿った わかりやすい薬局実務実習テキスト第 4 版 (じほう) (2014)] (24) 舘知也 (分担執筆): 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- 99 [モデル・コアカリキュラムに沿った わかりやすい薬局実務実習テキスト第 4 版 (じほう) (2014)] (25) 酒井英二 (分担執筆): [薬草ガイドブック野外編 (日本植物園協会) (2014)] (26) 酒井英二 (分担執筆):特集 薬草の宝庫 伊吹山をたずねて [大塚薬報(大塚ホールディングス) No.696, pp. 4-15 (2014)] (27) 酒井英二 (分担執筆):特集 知の宝庫”薬用植物園”を活用しよう [aromatopia(フレグランスジャーナル) No.126, pp. 2-6 (2014)] そ の 他 (1) 竹内 洋文: (巻頭言)薬学教育の進展と製剤機械技術学会, [製剤機械技術, 23,2-3 (2014)] (2) 竹内洋文:製剤と粒子設計の進展 [粉体技術 6,1-6 (2014)] (3) 田原耕平、竹内洋文:平成 24 年度「日本薬局方の試験法等に関する研究」研究報告 高分子医薬におけ る吸入製剤の in vitro 吸入特性評価 [医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス 45(6), 529-533, (2014) (4) 足立哲夫, 原 宏和, 神谷哲朗, 仲原理紗, 安田浩之:コーヒー含有ポリフェノールのエピジェネティク ス制御能. [全日本コーヒー協会平成 25 年度研究助成成果報告書 (2014)] (5) 保住 功:「達人に訊け!岐阜薬科大学のあなたの健康に役立つ話」健康長寿は運動から [中日新聞プラス (2014/6/10)] (6) 保住 功:「達人に訊け!岐阜薬科大学のあなたの健康に役立つ話」パーキンソン病の予防と治療は“ラ ジオ体操”から [中日新聞プラス (2014/6/22)] (7) 保住 功: 「達人に訊け!岐阜薬科大学のあなたの健康に役立つ話」筋萎縮性側索硬化症 (ALS)に運動、 その思いそして創薬研究へ [中日新聞プラス (2014/7/4)] (8) 保住 功: 「達人に訊け!岐阜薬科大学のあなたの健康に役立つ話」解き明かされていく生命現象 その 1:ヒト遺伝子の解明~次世代シーケンサーの到来~ [中日新聞プラス (2014/10/16)] (9) 保住 功: 「達人に訊け!岐阜薬科大学のあなたの健康に役立つ話」解き明かされていく生命現象 その 2:iPS 細胞の作製~再生医療の未来~ [中日新聞プラス (2014/10/21)] (10) 保住 功: 「達人に訊け!岐阜薬科大学のあなたの健康に役立つ話」解き明かされていく生命現象 その 3:集団から個の重視へ ~エビデンスとナラディブ~ [中日新聞プラス (2014/10/30)] (11) 稲垣直樹 (研究分担) , 田中宏幸(研究協力), 山下弘高(研究協力):マウスモデルを用いた掻痒発現機序の 解析と治療戦略の構築. [厚生労働科学研究費補助金 (免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業)平成 25 年度・研究報告書 434-436 岐阜薬科大学紀要 Vol. 64 -研究論文抄録- 100 (2014)] (12) 舘知也:チーム医療における薬剤師の新たな取り組み:血圧テレモニタリング [ファルマシア 4 号, 50 (2014)] (13) 寺町ひとみ:6 年制の卒業生を送って-岐阜薬科大学における 6 年制教育の構築- [薬剤学 74, 301-304 (2014)] (14) 酒井英二 (分担研究):内部形態写真及び植物体栽培情報に関する研究. [厚生労働省科学研究費補助金 (創薬基盤推進研究事業 薬用植物栽培並びに関連産業振興を指向した 総合情報データベースの拡充と情報整備に関する研究)平成 25 年度 総括・分担研究報告書 (2014)] (15) 酒井英二,田中俊弘,後藤稔治,川村智子: [乗鞍スカイライン沿線植物群落-モニタリング調査報告書(平成 25 年度)(2014)] (16) 葛城大介: 「統計」入試問題研究 WG 報告‐英国 S1 レベルからの出題,を受けての大学定期試験への導 入. [2013 年度数学教育学会春季年会発表論文集, 249-251 (2014)] (17) 葛城大介:数学における入学前教育の検証. [2014 年度数学教育学会秋季例会発表論文集, 86-88 (2014)] (18) 杉浦春雄,酒井信江,杉浦浩子:大学生の対人ストレスコーピングと友人関係の築き方が友人関係満足 感に与える影響. [健康レクリエーション研究 10, 5-12 (2014)] (19) 杉浦春雄,杉浦浩子:自尊感情と対人ストレスコーピング,対人恐怖心性と自己愛傾向の関連性. [健康レクリエーション研究 10, 13-19 (2014)] (20) 杉浦浩子,小森美咲,杉浦春雄:大学生における楽観性とストレス認知との関連. [健康レクリエーション研究 10, 33-41 (2014)] (21) 杉浦浩子,曽我祐子,杉浦春雄:看護学生における楽観性・非観性傾向の違いが認知的評価に与える影 響. [健康レクリエーション研究 10, 43-56 (2014)] (22) 八木沢誠,新里知佳野,坂本太一,古澤伸晃,向本敬洋,楠本恭久:剣道における審判員の注視点につ いて. [日本体育大学紀要 43, 27-35 (2014)] 編集委員 足立哲夫, 葛城大介, 酒井英二 田原耕平, 多田教浩, 鶴間一寛 岐阜薬科大学紀要 第 64 号 (非売品) 発行日 平成27年6月30日 発行所 岐 〒501-1196 編集者 発行者 阜 薬 科 大 学 岐阜市大学西1丁目25番地4 足 立 哲 夫 THE ANNUAL PROCEEDINGS OF GIFU PHARMACEUTICAL UNIVERSITY Vol. 64 June 2015 CONTENTS Reviews Epidemiology, Prevention, and Treatment of Congenital Cytomegalovirus Infection ··· Naoki INOUE ···(1) Evaluation of Clinical Pharmaceutical Support Care in Hematological Patients ··· Eiseki USAMI, Hitomo TERAMACHI ···(11) Screening and pharmacological research for anti-glaucoma drugs ··· Hiroyoshi KASAI, Hideaki HARA ···(21) Establishment of Indicators for Pharmaceutical Interventions in Cancer Pharmacotherapy ··· Michio KIMURA, Hitomi TERAMACHI ···(28) Development of Novel C-O and C-C Bond-forming Photochemical Reactions ··· Lei CUI, Akichika ITOH ···(37) Development of Anti-allergic Drugs Using the Physicochemical Properties of a Sulfonium Compound ··· Yukio TADA ···(46) Regular Articles Influence of Differences in Stress Response on Cognitive Appraisal in University Students ··· Haruo SUGIURA, Taichi SAKAMOTO, Hiroko SUGIURA ···(56) Abstracts of Published Reports (January – December, 2014) ············(60) Published Annually by Gifu Pharmaceutical University 1-25-4 Daigaku-Nishi, Gifu 501-1196, Japan
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