B 型肝炎の母子感染を防止するために

『B 型肝炎の母子感染を防止するために』
この度の検査により、あなたは B 型肝炎ウイルスを持っている(キャ
リー)という結果となりました。以下の説明をよくお読みいただき、必
要な検査やお子様にグロブリン、B 型肝炎ワクチンの投与を行い、B 型
肝炎の母子感染を防止するようにしましょう。
【B 型肝炎の母子感染とは】
B 型肝炎は、B 型肝炎ウイルスによっておきます。体内に B 型肝炎ウ
イルスを保持している人(キャリアー)が妊娠した場合、出産時にお母
さんから赤ちゃんにウイルスが感染することがあります。
お母さんがウイルスをたくさん持っていると (HBs 抗原陽性、HBe 抗
原陽性)、赤ちゃんが感染した場合、体の中に長い間ウイルスを持つよう
になり、将来慢性肝炎や肝硬変、肝癌になることがあります。
またウイルスの少ないお母さん (HBs 抗原陽性、HBe 抗原陰性)からの
場合でも赤ちゃんが急性肝炎にかかることがあります。
このため、赤ちゃんが生まれたら、B 型肝炎ウイルスの感染の防止 (B
型肝炎に対する抗体をたくさん含んだグロブリンの投与、 B 型肝炎ワク
チンの接種、検査)をしていくことが非常に重要です。
【B 型肝炎の母子感染を防止するために】
①母子感染の頻度
B 型肝炎ウイルスが赤ちゃんに感染しやすい程度を調べるための検
査 (HBe 抗原検査)を必ず受けましょう。母子感染防止措置を行わなか
った場合、母親が HBe 抗原陽性のとき、赤ちゃんへのウイルスの感染
率は 100%で、このうちの 80~90 %が、HB キャリア (からだのなかに長
い間ウイルスを持つ状態)となります。母親が HBe 抗原陰性のとき (HBs
抗原のみ陽性の場合 )は、赤ちゃんへの感染率は 10%程度ですが、ごく
まれにキャリア化することがありますので母子感染防止措置を行いまし
ょう。
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②母子感染の防止方法
B 型肝炎の母子感染を防止するためには、出生した赤ちゃんに対し
て、B 型肝炎に対する抗体をたくさん含んだグロブリン (HBIG)や B 型
肝炎ワクチンを投与することが必要です。
感染防止の方法は別紙のようなスケジュールに従って行います。
感染防止策を行うことによって、ほとんど母子感染を防止できます。
但し、ごくまれに防止できない場合もあります。出生時すでに胎内感染
をしている場合です。母子感染防止策を始めても問題はありませんが、
2ヶ月以降の対策は中止します。これは1ヶ月時の採血の結果判明しま
すのでその時ご説明します。
【B 型肝炎ワクチンの効果と副反応】
B 型肝炎ワクチンの投与により、ほとんどの人が感染を防止すること
ができます。まれに免疫がつきにくい人がいますが、この場合は必要に
応じてワクチンの追加投与を受けます。B 型肝炎ワクチンによる副反応
は、大人では局所の発赤や軽度の発熱が数 %にみられることがあります
が、小児ではこれらの副反応はまれにしかみられません。
【あなた自身の健康のために】
あなたは B 型肝炎のウイルスを持っていますが、肝炎の症状や肝機能
異常が続かないかぎり健康者と同様に過ごすことができます。しかし、
肝炎、肝硬変など、定期的な検査を受けることをおすすめします。
かかりつけの医師に相談されてもいいですが、できれば肝臓の専門医の
いる病院で継続的に診てもらいましょう。
【その他】
B 型肝炎ウイルスは血液を介して感染するので母乳は問題ありません。
是非、母乳で育てましょう。
B 型肝炎の母子感染予防については、不明な点は当院の小児科医にお
尋ねください。いつでも気軽にご相談下さい。
Tel. (092) 852-0700 (代表)
国立九州医療センター小児科
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