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【氏名】 鈴木 渉 【所属大学院】(助成決定時) トロント大学オンタリオ教育

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【氏名】 鈴木 渉
【所属大学院】(助成決定時) トロント大学オンタリオ教育研究所
【研究題目】
自己説明の第二言語学習への効果に関する研究: 認知心理学的・文化心理学的アプローチに基づいて
【研究の目的】
認知心理学では、文章を読んでいる際に考えたことなどを声に出して説明させることが、文章理解
に効果を及ぼすとされ、
「自己説明効果 (self-explanation effect) 」と呼ばれている。自己説明効
果の研究は、算数や理科などの学習において研究が盛んに行われているが、外国語としての英語の学
習に関してはほとんど行われていない。文化心理学では、同様の現象について、私的発話 (private
speech) の観点や、理解や学習が言葉を媒介として内在化 (internalization) されるという観点か
ら、注目されていたが、外国語の学習という点ではほとんど研究されてこなかった。本研究は、自己
説明効果と英語学習の関係を調べる先駆的な研究である。具体的には、英作文の語彙や文法の間違い
に関する教師のフィードバックを理解するプロセスを学習者が自分自身に説明させることが、英語学
習にどのような影響を及ぼすのかを実証的に検証することである。
【研究の内容・方法】
研究の方法としては、日本の大学生を対象にした。実験の期間は 3 週間である。第 1 週目に、大学
生に研究同意書や簡単な英語学習経験に関する質問に答えてもらった。第 2 週目に、大学生にあるト
ピック (会いたい歴史上の人物)に関して約 30 分英作文を書いてもらった (初稿) 。英作文は回収さ
れ、英語母国語話者にフィードバックを与えてもらった。フィードバックの方法は、生徒の誤りに下
線を引き直接間違いを訂正するというものである。第 3 週目に、大学生は訂正された文法や語彙の誤
りに関して、何が間違いだったのかなどを約 30 分説明してもらった (自己説明)。その後、簡単な計
算問題を行ってもらい、フィードバックを見ずに、第 1 週目に書いた作文を 20 分間書き直してもら
った (書き直し)。
分析の方法としては、まず、初稿で見られた語彙や文法の誤りが、書き直しの際に、どの程度減っ
たかを調べた。次に、自己説明のタイプ (語彙に関するもの vs. 文法に関するもの) と書き直しの
関係について調べた。更に、自己説明の質 (深い理解 vs. 浅い理解) と書き直しの関係について調
べた。
【結論・考察】
まず、初稿で見られた語彙や文法の誤りのうち約 90%が書き直しの際に正しくなおされていた。より
具体的には、英語母語話者に訂正された項目に関して説明したものは約 93%近くが正しくなおされおり、
説明されていないものに関しては約 73%しか直されていなかった。この 93%と 73%の差は統計的に有意
であり、自己説明の効果は約 20%に現れたと考えられる。
次に、語彙に関する自己説明の書く直し成功率 (96%) と文法に関する自己説明の書き直し成功率
(91%) はほぼ同じであった。一般に語彙の学習は文法の学習よりも容易であると考えられており、語
彙の書き直し成功率が高いと予想されたが、本研究の結果は予想に反し、書き直し成功率において語
彙と文法の間には有意な差が見られなかった。
最後に、自己説明の質と書き直しの関係に関しては、浅い理解 (表層的な説明に終始している) を
示す説明 の書き直し成功率 (94%)と深い理解 (理由づけやルールについて深く考えている) を示す説
明の書き直し成功率 (92%) はほぼ同じであった。深い理解を示す説明のほうが書き直しに強く影響を
及ぼすと予想されたが、書き直しの成功率は、深い理解と浅い理解の間には有意な差は見られなかっ
た。
本研究では、自己説明の効果を書き直しで測定したが、書き直しが自己説明直後に行われたこと、
書き直しは理解の質を必ずしも反映しないことなどを考慮する必要がある。したがって、今後は、自
己説明の効果を、別のトピックに関する作文で測定したり、語彙や文法テストで測定したりすること
も必要かもしれない。
本研究は、英語を使えるための知識・理解を深める方法のひとつとしての自己説明効果に着目した
研究である。今後の課題は、なぜ自己説明という行為が学習に効果的なのかをより詳細に検証してい
くことである。
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