感染症は 感染源,感染経路,感受性宿主 の3者がそろって初めて成立する 感染源 感染経路 感受性宿主 29 ウイルス感染症予防 の原則 感染症は,感染源,感染経路,感受性宿主 の3者がそろって初めて成立する 1)病原体との接触阻止 2)感染経路の遮断 3)感受性宿主の一掃 30 ウイルス感染予防の原則 1)病原体との接触阻止 患者の早期発見 ex. 検疫(SARS:帰国発熱者の赤外線モニタによる チェック) サーベイランス 患者の隔離 急性感染症では有効 慢性感染では人権の問題が生じうる ex. インフルエンザ流行期の学級あるいは学校閉鎖 SARS:可能性例の原則入院 31 2.感染経路の遮断 性感染症(STD: Sexually Transmitted Disease) HIV, HBV, HSV, HCMV, EBV, HPV,etc. ⇒ 啓発 ベクター(カ,ダニ)(Arbovirus:Arthropod-borne virus) JEV, YFV, DFV, ウエストナイル,リフトバレー, クリミア・コンゴ出血熱, etc. ⇒ カの駆除 ベクター(ネズミ) ラッサ, ハンタ,シンノンブレ,グアナトリ, Junin virus, Machupo virus, etc. ⇒ ネズミの駆除 血液製剤 HBV, HCV, HIV, HTLV-1, etc. ⇒ 検査による汚染血液の排除 32 母乳 HTLV-1 ⇒ ⇒ ⇒ 加熱(56℃, 30min) 凍結融解(-20℃) 人工乳 気道感染 ⇒ ほとんど不可能 経口感染 ⇒ 衛生状態の改善(上下水道) 産道感染 HIV, HBV, HCV, HSV, etc. ⇒ 帝王切開 3.感受性宿主の一掃 予防接種の施行 ヒト 犬,野生動物 ⇒ ⇒ 各種ワクチン 狂犬病ワクチン 33 R0:basic reproductive rate(基本増殖率 ) ある集団内で1名の感染者から次に感染した平均感染者数 流行の閾値は R0 =1 R0 >1 感染は拡大 R0 <1 感染は最終的に消滅に向かう 病原体の毒性あるいは病原体が宿主に及ぼす害悪の物差し にはならない 「例」 ◆狂犬病,ハンタウイルス肺症候群:高い致死率だが,RO は実質的に 0である ◆エイズ,天然痘,栄養不良集団での麻疹:高い致死率だが,RO は1 より大きい 34 基本増殖率 R0 = β×C×D D β:伝播率 C :一定時間における感受性群と感染群の接触頻度 :感染期間 対策 伝播の確率を下げる 接触機会を減らす 感染期間を短縮する 35 人獣共通感染症 ①動物間でのR0 ②動物ーヒト間でのR0 ③ヒトーヒト間でのR0(多くの場合,起きにくい) の三者が絡む 感染動物 ② ヒト感染者 ③ ヒト感受性者 ① 感受性動物 動物間でのR0と動物ーヒト間でのR0を1以下にする。 ⇒ 感染動物と感受性動物を減らす ⇒ 殺処分 36 殺処分の問題点 例 1998-89 マレーシア・ニパウイルス:ブタ110万頭 2002-03 中国・SARSコロナウイルス:大量殺処分 2003-04 中国・トリインフルエンザウイルス: ニワトリ900万羽以上 感染動物 産業動物:経済性と公衆衛生上の効果を検討して殺処分 殺処分の選択は有効な場合が多い 野生動物:殺処分の有効性が期待できるとは限らない 希少動物:選択は困難 殺処分以外の対応 動物の移動禁止,慢性感染動物の廃棄等を含む制限 37 主な新興ウイルス(人獣共通)感染症 発見年 病原体の名称 疾患名 国内への持ち込みの可能性 ヒト ○ 輸入動物 渡り鳥 カ(航空機) ○ 1967 マールブルグウイルス マールブルグ病 1969 ラッサウイルス ラッサ熱 ○ ○ 1977 エボラウイルス エボラ出血熱 ○ ○ 腎症候性出血熱 ○ ○ リフトバレーウイルス リフトバレー熱 1985 クリミア・コンゴ出血熱ウイルス クリミア・コンゴ出血熱 ○ ○ ○ ○ 1988 E型肝炎ウイルス 急性肝炎 ○ ○ 1991 グアナリトウイルス ベネズエラ出血熱 ○ ○ 1993 シンノンブレウイルス ハンタウイルス肺症候群 ○ ○ 1994 ヘンドラウイルス 馬からの感染による肺疾患を ○ 脳炎 ○ 1997 トリインフルエンザウイルス インフルエンザ ○ ○ 1998 ニパウイルス ブタからの感染による脳炎 ○ ○ 1999 ウエストナイルウイルス カを介した感染によるウエスト ○ イル熱・脳炎 ○ 2002 SARSコロナウイルス 動物(?)からの感染による重 ○ 急性呼吸器症候群 ○ ハンタウイルス ○ ○ ○ ○ ○ 38 輸入感染症の防御対策 1)ヒト :検疫 2)動物 :動物検疫・輸入禁止 3)渡り鳥:阻止不可能 4)カ :航空機内での補集は可能であるが, すべては不可 39 「感染症の予防と感染症の患者に対する医 療に関する法律」 交付:H10(1998).10.2 施行:H11(1999).4.1 「伝染病予防法」,「性病予防法」および「エ イズ予防法」を廃止・統合して制定。我が国にお ける感染症対策に関する法律は基本的に「感染症 の予防と感染症の患者に対する医療に関する法 律」と「結核予防法」となる。 40 「感染症の予防と感染症の患者に対する医療に関する法律及 び検疫法の一部を改正する法律」 交付:H15(2003).10.16,施行:H15(2003).11.5 1.感染症法の改正内容 1)緊急時における感染症対策の強化 2)動物由来感染症対策の強化 3)感染症法の対象疾病及び疾病分類の見直し等 4)検疫との連携 5)罰則の整備 2.検疫法の改正内容 1)検疫感染症に感染したおそれのある者に対する入国後 の健康状態の確認等 2)新感染症についての医師の診察 3)病原体の検査が必要な感染症の検疫感染症への追加 4)新4類感染症に係る応急措置等 41 5)罰則の整備 輸入動物対策 家畜伝染病予防法,狂犬病予防法,感染症法で規制 偶蹄類,ウマ,ニワトリ,アヒル,ウズラ,シチメンチョ ウ,ガチョウ,ウサギ,ミツバチ,イヌ,ネコ,キツネ, アライグマ,スカンク,サル,ハクビシン,プレーリドッ グ,ヤワゲネズミ(マストミス),イタチアナグマ, コウモリ,タヌキ 感染症法で輸入禁止 これら以外の動物は現在フリーパス 42 平成14年度 検疫対象動物 約 43 1, 500, 000(0.3%) 平成17年夏より 実施予定(農水 省) 44 ヒトサルポックス症(サル痘)の米国内での流行発生 1958 カニクイザルよりサルポックスウイルスを分離 1970-71 アフリカ熱帯雨林地域(ザイール,西アフリカ)で始めて ヒト感染例発見,天然痘と類似の症状 しかし,天然痘と異なる点の存在 死亡率が低い 約10-15% リンパ節腫脹(頚部,腋窩部,鼠径部)の存在 ヒトからヒトへの直接伝播はほとんど見られない 自然宿主不明 1986 大型リスよりウイルス分離 自然宿主は大型ネズミ族が想定された 1996. 2-8 ザイール等で71例のヒト感染が発生 ヒトーヒト伝播が73%で認められた 1997 ザイール等で92例の発生,3名の死亡 種痘の廃止に伴うサルポックスウイルスに対する感受性増加? 45 米国でのアウトブレーク 2003. ウィスコンシン州でペットのプレーリドッグに接触したヒトに 5-6 発熱を伴う発疹性疾患の多発 サルポックスウイルス感染の証明 CDCに71例(ウィスコンシン,インディアナ,イリノイ, ミズーリ,カンサス,オハイオ州)の報告 男性47%,平均年齢27歳(1-51歳) 死亡例はなし ヒトーヒト接触による暴露しかないという症例はなかった。 感染源調査 ◆4月9日アフリカ・ガーナよりテキサス州に80頭の小哺乳動物が輸入 イリノイ州でアフリカオニネズミ(Gambian giant rats)が プレーリドッグの近くに保留されていたことからアフリカオニネズミ ⇒ プレーリドッグ ⇒ ヒトの経路で感染 他に,dormice 3 頭,rope squirrel 2 頭も感染が証明 ◆4月4日に有症で隔離されていた動物のいくつかについても感染が証明 ◆アフリカネズミ族にウイルス感受性があること,輸出前に感染が拡散 していたことが判明 46 ◆米国ではアフリカからのネズミ族の輸入を禁止,プレー リドッグとアフリカネズミ族の飼育を禁止 ◆感染源となったアフリカオニネズミと同居していたアフ リカヤマネ が日本に再輸出されていたことが判明。 幸いにも,日本ではサル痘の発生はなかった。 ◆アフリカ奥地にいた野生動物が数日後には家庭用のペッ トとして居間や食堂をうろうろしているという状況が現 状の日本では起こ りうる。 ◆厚労省 17年10月までに輸入する哺乳類と鳥類のすべてにの相手 国当局による衛生証明書の添付を義務づける。 47
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